睡眠健康講座
良い睡眠で心も体も健康に
医療法人社団 輔仁会
嬉野が丘 サマリヤ人病院
普天間国博
演者プロフィール
琉球大学医学部卒業後、東京医科大学病院メンタルヘルス科入局。
睡眠総合ケアクリニック代々木で睡眠医療に従事。
平成30年5月より嬉野が丘サマリヤ人病院で睡眠外来を担当。
医学博士
精神保健指定医
精神科専門医・指導医(日本精神神経学会)
日本睡眠学会専門医
日本医師会認定産業医
昭和薬科大学附属高校
沖縄県浦添市
野球部に在籍
一橋大学経済学部
東京都国立市
同期の約半数は銀行員に
琉球大学医学部
西原町
沖縄協同病院
那覇市
分類
代表的疾患
(1) 不眠症
慢性不眠障害、短期不眠障害など
(2) 睡眠関連呼吸障害群
閉塞性睡眠時無呼吸、カタスレニアなど
(3) 中枢性過眠症群
ナルコレプシー、特発性過眠症など
(4) 概日リズム睡眠・覚醒障害群 睡眠・覚醒相後退障害、交代勤務障害など
(5) 睡眠時随伴症群
レム睡眠行動障害、睡眠時遊行症など
(6) 睡眠関連運動障害群
レストレスレッグス症候群など
睡眠障害の分類
睡眠障害国際分類第
3版
不眠症以外にも様々な睡眠障害がある
症状:不眠、過眠、起床困難、睡眠中の異常行動
東京医科大学病院
西新宿
睡眠学講座
睡眠総合ケアクリニック代々木
PSGカンファレンス
嬉野が丘 サマリヤ人病院
沖縄県南風原町
平成28年(2016年)睡眠専門外来を新設
琉球大学医学部
附属病院
ネイチャー、サイエンスの9割は嘘
10年経ったら残って1割
京都大学特別教授 本庶佑
ノーベル医学・生理学賞受賞
(2018年)
教科書
学術論文
噂・迷信・言い伝え
専門家による検証
(調査や実験)
正確性の高い情報
嘘と真実
iPS細胞
(山中教授)
STAP細胞
(小保方さん)
100%が真実ではないが嘘は少ない
真実もあるが嘘が多い
教科書記載の境界
「睡眠」の教科書
「THE PRINCIPLES AND PRACTICE OF SLEEP
MEDICINE」(KRYGER教授,DEMENT教授)
「睡眠学」(朝倉書店)
「最新臨床睡眠学」(日本臨床社)
教科書はもっとも信頼性の高い情報。
ただし医学の専門書であるため読みこなすには「生理
学」「生化学」「解剖学」「病理学」「薬理学」など基
礎医学の知識が前提となるため一般向けとはいいがたい。
睡眠健康のサイエンス
「睡眠12ヵ条」
(http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000042749.html)
厚生労働省と日本睡眠学会が作成
一般向けの信頼性の高い情報
(2014年3月に11年ぶりの改定)
15・体の病気の予防
・心の病気の予防
・事故の予防
・規則的な食事と運動
・早寝早起き朝ごはん
・カフェイン、ニコチン、アルコールに注意
良い睡眠で、からだもこころも
健康に
適度な運動、しっかり朝食、
ねむりとめざめのめりはりを
18・心の病気の予防
・うつ病→不眠症
・不眠症→うつ病
良い睡眠で生活習慣病予防
睡眠による休養感は
心の健康に重要
19・体の病気(生活習慣病・肥満)の予防
・睡眠不足と不眠症に注意
・睡眠時無呼吸症候群にも注意
・睡眠の長い人、短い人
・年をとると短縮、
朝型化(男性では特に)、
季節でも変化
・自分にあったリラックス法
・室温、照明、騒音に注意
睡眠時間は人それぞれ
日中の生活で困らなければよい
良い睡眠のための
環境づくり
20・睡眠リズム障害が多い
・夜更かししない
・規則正しい生活
・光で生体時計のリセット
・睡眠不足が多い
・疲労回復、能率アップのために
毎日十分な睡眠時間を確保
・20~30分の昼寝効果
若年世代(中、高生ら)
勤労世代(20~60代前半)
21・総睡眠時間と臥床時間を近づける
・若者や健常者→早寝早起き
・高齢者や不眠症→遅寝早起き
熟年世代(60代後半~)
眠くなってから寝床に入り、
起きる時間は遅らせない
・不眠症が多くなる
・長すぎない就寝時間
・メリハリのある生活
・適度の運動
22・いびき、呼吸停止、手足のピクツキ、
昼間の強い眠気
・専門家に相談することが第一歩
・薬剤は専門家の指示で使用
いつもと違う睡眠には、
要注意
眠れない、その苦しみを
かかえずに、
専門家に相談を。
23睡眠に関する誤った理解
トマス・エジソン「睡眠は愚かしい悪習」
受験戦争時代の迷信:四当五落
右肩上がりの経済成長の時代:リゲインCM
覚醒 レム睡眠 N1 N2 N3 ノ ン レ ム 睡 眠 22:00 23:00 0:00 1:00 2:00 3:00 4:00 5:00 6:00 ノンレム睡眠、レム睡眠の順 で交互に出現する。 一つのサイクルで90~120分 夜間前半は深い睡眠 (徐波睡眠)が多い 夜間後半にかけて 睡眠は次第に浅くなる。 レム睡眠も多くなる 徐波睡眠 短い覚醒は 健康な人でも一晩に 数回出現する
睡眠中の脳波からみた睡眠構築
27睡眠・覚醒のメカニズム
睡眠系(恒常性)機構
睡眠中枢:視床下部前部
体内時計
リズム中枢:視交叉上核
夜 間 睡 眠
覚醒系機構
覚醒中枢:視床下部後部
オレキシン
、セロトニン、アセチルコ
リン、ヒスタミン、ドパミン
メラトニン
、光
睡眠関連物質
プロスタグランジンD2
アデノシン
GABA
免疫物質、疲労物質
ヘルペスHHV6
βアミロイド
不眠症:覚醒系>>睡眠系
過眠症:睡眠系>>覚醒系
リズム障害:メラトニン機能不全
視交叉上核
(生体時計)
縫線核
(N-REM)
青斑核
(REM)
眼球
松果体
(suprachiasmatic nucleus: SCN)視神経
視床下部
睡眠 / 覚醒のメカニズム
睡 眠
覚 醒
29睡眠時間
長い
短い
年齢による睡眠の変化:
高齢者と若者で分けて考える必要がある
睡眠の質
良い
悪い
ただし若者も油断してはいけない
【若者に多い睡眠障害】
睡眠不足症候群→睡眠の量が足りない
睡眠相後退症候群→睡眠のリズムが乱れる
【睡眠の3要素】
睡眠の量(睡眠時間)
睡眠の質
睡眠のリズム
若者は眠りの質は良い。
しかし睡眠の量とリズム
に問題があることが多い
睡眠不足による最初の症状
・起床困難(朝起きれない)
・日中の眠気
・集中力の低下
・倦怠感
しかし、慢性化するとこれだけでは済まなくなる
JSC
睡眠と記憶の関係
341. 眠ると記憶がよくなる
眠らないと忘れっぽくなる、思い出せない
2. 思い出す、新しく覚える(記憶機能)は
脳の海馬(ヒポカンバス)と関連する
3. よく眠ると海馬が大きくなる
眠りが足りないと海馬が育たない(子供)
慢性的な睡眠不足、不眠症、認知症では
海馬が小さい
睡眠と学業成績
22 22.5 23 23.5 6.5 7.0 7.5 8.0 A評価 B評価 C評価 D、F評価 睡眠時間 就床時刻 睡 眠 時 間 就 床 時 刻 成績 (n=3120) 23:30 23:00 22:30 22:00成績がよい生徒ほど、十分な睡眠をとっている
寝る時刻が遅くなるほど、成績が振るわない
睡眠不足の慢性化(睡眠負債の蓄積)で精神運動機能は徐々に低下する
が、自覚的な眠気は実際よりも低く評価される傾向
→眠気には慣れてくることがあるので睡眠不足が自覚されにくい
Van Dongen HPA et al. Sleep. 2003; 26(2): 117-126.
Cole et al, Am J Psychiatry, 2003
睡眠不足が肥満をひき起こす
グレリン 濃度上昇 レプチン 濃度低下空腹感増強
食欲亢進
Ann. Intern. Med. 2004.; 141: 846-850
不眠
睡眠不足 肥 満
摂食抑制物質
摂食促進物質
• 3歳児の時点で睡眠時間が10.5時間未満だった場合、7歳
での肥満リスクは1.5倍(Reilly, BMJ 2005)
0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 9時間未満 9時間台 10時間台 11時間台 睡眠時間 オ ッ ズ 比 0 5 10 15 20 25 肥 満 発 生 率 ( % ) オッズ比 肥満発生率 1 .5 9 1 .2 4 1 .0 0 1 .0 0 2 0 .0 1 5 .1 1 2 .1 1 2 .2• 平成元年生まれの児童1万人を対象とした出生コホート研究
睡眠不足は肥満の危険因子(関根ら、2007)
寝ぬ子は太る39
糖尿病発症の危険因子(男性)
Mallon L et al:Diabetes Care.2005;28:2762-2767
0
1
2
3
4
5
6
7
危
険
率
飲酒
睡眠障害
肥満
【対象】スウェーデン在住の45~65歳 男性550名 【方法】1983年および1995年に睡眠状況、考えられる糖尿病の危険因子10項目につき 質問票を送付し、新規に糖尿病を発症する相対的危険率を求めた。※
※ p<0.05(Multiple Logistic Regression Analysis)
世界18ヶ国における1日の平均睡眠時間
日本人成人の約1割が慢性的な眠気を自覚
交通事故・産業事故の原因の一つ
睡眠習慣の問題・・・短時間睡眠
(国民生活時間調査(NHK放送文化研究所)) 42 7:00 8:00 9:00 ’70 ’75 ’80 ’85 ’90 ’95 ’00 ’05 平日 7時間14分 土曜 7時間37分 日曜 7時間59分 日本人の睡眠時間 ’10出典:NATIONAL GEOGRAPHIC 日本版 2018年8月号
睡眠不足による経済的損失
それではいったい
何時間眠ればいい
のか?
【若者と高齢者で異なる睡眠時間】
推奨される睡眠時間の目安
個人差が大きく絶対的な基準はない
一般的に若い人ほど睡眠が必要
睡眠時間は加齢とともに減少
若者:
夜は可能な限り長く寝た方が
いい
高齢者:
5~6時間しか眠れなくても日
中、元気に自分の好きなこと
を楽しむことができればそれ
ほど心配する必要はない
トップアスリートの睡眠時間
NBA
レブロン・ジェームズ
12時間
陸上・サッカー
ウサイン・ボルト
10時間
テニス
ロジャー・フェデラー
12時間
ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校の調査。
夜間にツイッターに投稿していた選手の翌日の試合での
成績が下がる傾向を確認。
2009~10年シーズンから2015~16年シーズンまでの7年
間にわりNBA選手112人を対象に行った調査では、前夜に
投稿をしていた場合、その選手には試合中のパフォーマ
ンスが振るわなくなり、チームも負けることが多かった。
深夜のツイートで成績低下?
DEMENT WC.
SLEEP EXTENSION: GETTING AS MUCH EXTRA SLEEP AS POSSIBLE.
CLIN SPORTS MED. 2005 APR;24(2):251-68, VIII.
(西野精治 スタンフォード式「最高の睡眠」から引用)
N=10(大学生)
実験開始前の平均睡眠時間
は7時間30分
蓄積された睡眠負債を解消
するのに数週間かかる
→
数日では解消されない
【睡眠負債解消の目安】
・
起床困難の改善
・日中の眠気の改善
・集中力の向上
若者に多い睡眠障害
1日のメラトニン分泌リズム
睡眠
体内時計と睡眠:眠りはリズムも大切
眠るためにはメラトニン分泌が必要
朝の光がメラトニン分泌リズムを整える
普段の睡眠習慣:睡眠表で確認
50
横軸が時刻
概日リズム睡眠・覚醒障害:メラトニンの分泌リズムが崩れてしまう
正常パターン:夜にメラトニンが分泌 極端な宵っ張り・朝寝坊 (若年者型)→ 睡眠相後退型 極端な早寝・早起き (高齢者型)→ 睡眠相前進型 認知症、脳障害 → 不規則睡眠覚醒型 全盲の者、引きこもりなど → 自由継続型(non-24) 海外出張の多い者 → 時差障害(jet lag) 夜勤を含むシフトワーカー → 交代勤務障害 【症状】メラトニン分泌が極端に後退 ・夜眠れない ・朝起きれない ・起きたとしても眠くてだるい ・日中は疲れて集中力も落ちてしまう →夜になると元気になるが眠れない 【症状】メラトニン分泌が極端に前進 ・朝まで眠れない ・寝つきはいいが途中で目が覚めるリズムが乱れてしまうと、元に戻
るまで数か月かかることがある
ため注意が必要
明るさとメラトニン分泌抑制
Zeitzer JM et al. J Physiol .2000
52 照度(ルクス) 照度(ルクス)
光を浴びる時間帯や活動の周期は太陽のリズムに合わせた方がいい
朝の光:〇(必要なもの) 夜間にメラトニンがうまく分泌されるため には朝の光が必要 朝の光を浴びて約16時間後(夜間)にメラ トニンが分泌される 夜の光:×(良くないもの) 夜に強い光を浴びると体が昼だと勘違い して眠れなくなる出典:NATIONAL GEOGRAPHIC 日本版 2018年8月号
現代人の睡眠リズムの乱れ
【若者は多忙で夜の誘惑も多い】
・TVの深夜放送
・インターネット
・ネットゲーム
・SNS
・夜遊びの誘い
・アルバイト
・部活や塾
・試験勉強
光の中でもスマホやパソコ
ンなど液晶画面のブルーラ
イトはメラトニン分泌を阻
害する作用が大きい
就寝前のカフェイン摂取について
Burke TM et al. Sci Transl Med (2015) 就寝3時間前のダブルエスプレッソ飲用で40分夜型に (カフェインには即時的な覚醒効果だけでなく、概日リズムも後退させてしまう) P=0.011 P=0.0007 P=0.0003 メラトニン位相 の変動(h) 54
睡眠リズムが乱れないように気を付けること
→
光の浴び方と睡眠・活動のリズムを太陽の周期に合わせる
【規則正しい生活を】
・夜更かしを控える
・起床時間を固定化する(休日も同じ時間に起床)
【光の浴び方に注意】
・朝起きたら明るい場所で過ごす
・夜は強い光やブルーライトを避ける
【昼と夜で活動のメリハリを】
・日中は活動性を上げる(休日も長時間の昼寝は控える)
・夜は頑張りすぎないようにする
【高齢者に多い睡眠障害】
不眠症
睡眠時間
長い
短い
年齢による睡眠の変化:
高齢者と若者で分けて考える必要がある
睡眠の質
良い
悪い
睡眠不足と心臓疾患のリスク(米国)
(Ayas NT, et al., 2003.) (兼板ら 2006)健康にはほどほどの睡眠
CHD(冠動脈性心疾患) ≦5 6 7 8 ≧9 1.5 1.4 1.3 1.2 1.1 1.0 睡眠時間(時間/日) 相 対 危 険 率 睡眠不足と心臓疾患のリスク(米国)年齢別の睡眠時間とCES-D scaleの関連
10 15 20 25 20-29 40-49 70-睡眠時間 ~5 5~6 6~7 7~8 8~9 9~10 10~ (うつ評価) (N=32,700) (N=930) HbA 1 c 高値 者の 割合 (%) 睡眠時間 ~6 6~7 7~8 8~9 9~ 14.0 12.0 10.0 8.0 6.0 4.0 2.0 0.0 睡眠時間とHbA1c高値者の関係 (Nakajima H, et al., 2007) 58 昼夜を問わず長く寝すぎるのも良く ない 昼と夜のメリハリが大切 日中は活動性を上げて夜間はぐっ すりと眠るべき ※体重(BMIや体脂肪率)に関して も同様のU字パターンがみられるただしほどほどというのは人
それぞれ
必要な睡眠時間は個人差が
大きく、年齢によっても異なる
【若者と高齢者で異なる睡眠時間】
推奨される睡眠時間の目安
個人差が大きく絶対的な基準はない
一般的に若い人ほど睡眠が必要
睡眠時間は加齢とともに減少
若者:
夜はなるべく長く寝た方がいい
高齢者:
5~6時間しか眠れなくても日中、
元気に自分の好きなことを楽し
むことができればそれほど心配
する必要はない
一番多いのが不眠症
日本人の一般人口における
不眠を有する人の率:
約15~25%
不眠+日中の機能障害(=不眠症)の有病率は、
約10%
と推測されている
→
日本人の
4~7人に1人
に不眠があり、
その半数程度に日中の障害を合併する不眠症がある
(なお比較として、うつ病の有病率は約5%、糖尿病は約10%、高血圧は約20%)60
Doi Y et al.: J Epidemiology ;10(2);79, 2000より作図 20~ 29 0 30 40 20 10 80~ 50 女性平均 21.5% 男性平均 17.3% (%) 30~ 39 40~ 49 50~ 59 70~ 79 60~ 69 30.5 40.3
不眠症の有病率
(歳) 20.526.3 21.9 20.3 17.0 19.6 19.0 13.7 12.6 23.8 14.9 16.8 20~ 29 0 30 40 20 10 80~ 50 女性平均 5.4% 男性平均 3.5% (%) 30~ 39 40~ 49 50~ 59 70~ 79 60~ 69 10.2 21.8睡眠薬の使用率
(歳) 8.7 11.7 7.5 6.5 1.4 8.8 3.6 3.6 1.0 0.0 2.6 2.1不眠症の有病率(日本人)
20歳以上の日本人成人1,871名を対象に、睡眠障害の実態と睡眠薬の使用率を調査。61
不眠症を放置すると睡眠不足と同様に心身に様々な悪影響
・生活の質が低下:疲労感、集中力の低下
・精神疾患:うつ病、認知症など
・身体疾患:肥満、高血圧、糖尿病
その他多くの心血管病変
数時間しか眠れない日が続いて疲れが取れなければ
治療した方がいい
うつ病リスク要因としての不眠
0.01 0.1 1 10 100
不眠があるとうつ病の発症リスクが2倍高い
Baglioni C et al. J Affect Disord 2011; 135:10-19
アルツハイマー型認知症の海馬萎縮
健康者
認知症患者
64海馬
大脳皮質
大脳皮質の
高度萎縮
著明な
海馬の
萎縮
脳室の
高度
拡大
(Noh HJ et al ; J Clin Neurol. 2012; 8: 130-138)
不眠症が長く続くと海馬容積が小さくなる
65 海 馬 容 積 不眠の持続期間(年) (mm3)不眠症
20名
平均年齢 50歳
睡眠薬中断 1ヶ月
βアミロイドの蓄積は
認知症状の進行と共に増加する
(Ong K et al. Alzheimers Res Ther. 2013; 5(1): 4.)
66
There was a significant correlation between β-amyloid (Aβ) burden and memory impairment, which was
independent of hippocampal volume. Dotted line, threshold between high and low Aβ burden. amMCI, amnestic multidomain mild cognitive impairment; asMCI, amnestic single-domain mild cognitive impairment; naMCI,
nonamnestic mild cognitive impairment; SUVR, standard uptake value ratio.
(手続き記憶) Neoc or ti cal SU V R ( β アミロイド)
短時間睡眠はアミロイド沈着を促進する
(Spira AP et al;JAMA Neurol 70:1537,2013)7時間以上
6~7時間 6時間以下
67健康高齢者 70名
(男性33名, 女性37
名)
平均年齢 76歳
(53~91歳)
MMSE 28.9
不眠症治療の流れ
治
療
の
進
行
診断:治療が必要な不眠症かどうか
環境改善:睡眠薬の前に睡眠衛生改善
薬物療法:副作用の少ない薬を優先に
減薬・休薬:睡眠薬は適正使用で調整
不眠症
治 癒
68
鑑別:不眠症以外の睡眠障害はないか
不眠症の鑑別:睡眠障害は不眠症だけではない
睡眠時無呼吸症候群
概日リズム睡眠障害
Restless legs症候群
(むずむず脚症候群)
不眠症以外にも眠れなくなる睡眠障害がある
周期性四肢運動障害
「睡眠薬」はあくまでも「不眠症」の治療薬
それぞれの睡眠障害ごとに治療法が異なる
無呼吸症ならCPAPという医療機器
・閉塞性の無呼吸症で筋弛緩作用のある睡眠
薬を使うと、無呼吸が悪化してしまう
・睡眠相後退症候群でも長時間作用型の睡眠
薬で起床困難が悪化
3
1
2
次の1~3項のすべてを満たすもの
適切な睡眠環境でも1と2が生じる
夜間の不眠症状がある
不眠により日中の機能障害(疲労感など)を生じる
不眠症の診断(定義)
・
不眠症治療のゴールは単純な睡眠時間の延長ではなく日中機能の改善
・5~6時間の睡眠時間でも日中の疲れがなければ大丈夫
・数時間しか眠れず疲労も残るときは不眠症を放置せずにしっかり治療を
日常生活と光の浴び方 昼と夜のメリハリを。朝は明るい場所で過ごして日中は活動性を上げて長
時間の昼寝は控える。夜間は強い光やブルーライトを避けてリラックスを
寝室環境
快適な湿度、温度を保つ。騒音を防止し光刺激を避ける。寝室での
TVや
スマホは控える
。
規則正しい食生活
規則正しい⾷生活を。朝⾷はしっかり⾷べて夜⾷は⾷べすぎないように。
就寝前の水分
就寝前に水分を取りすぎないように。夜間のトイレで目が覚めやすくなる。
就寝前のカフェイン
就寝の4時間前からはカフェイン(例:日本茶、コーヒー、紅茶、コーラ、
チョコレートなど)を控える
就寝前のお酒
寝酒は逆効果。飲酒は一時的に眠くなるが、徐々に効果は弱まり、眠りも
浅くなる。利尿作用もあるのでトイレでも目が覚めやすくなる。
就寝前の喫煙
ニコチンには興奮作用があるため夜間は控える。
寝床での考え事
考え事はメモに書き残して翌日に先送り(寝室に悩み事を持ち込まない)
睡眠薬を使う前に適切な睡眠環境を整えてみる
不眠恐怖による不眠症の慢性化・重症化
心配事があると寝付きが悪くなる
いやなことを思い出すと寝付きが悪い
ストレスで眠れなくなる
72
眠れない恐怖にとらわれる
寝室に行くと緊張する
また眠れないのではないかという
不眠恐怖
繰り返すうちに不眠恐怖が条件付けされる
→ベッドに入ると不安・緊張が高まってしまう
(Eric A et al. Am J Psychiatry 2004;161:2126–2129.より改変) 視床 視床下部 上行性網様体賦活系 近心側頭皮質 前帯状皮質 島 近心側頭皮質 視床下部 上行性網様体 賦活系
不眠症の病態:中枢の過覚醒
情動活動(不安・緊張)が高ぶった状態が続く
73
遅寝早起きのすすめ(あくまでも不眠症が対象)
睡眠スケジュール法:刺激制御法+睡眠制限法
不眠恐怖やストレスを軽減するための工夫
入眠困難 睡眠 中途覚醒 睡眠 早朝覚醒 就床 起床 22時 8時 睡眠 睡眠 就床 起床 0時 6時 入眠禁止ゾーン一般に不眠症患者は少しでも長く眠ろうと臥床時間が長くなる傾向がある(
実は逆効果
)
【早起きのすすめ】 ・起床時間は固定化を ・朝起きたら朝日を浴びる ・二度寝や昼寝が長すぎると 夜眠れなくなるので注意 【遅寝のすすめ】 ・入眠禁止ゾーンを避ける ・眠気をためてベッドに入る ・就寝前はリラックスする環境を ・就寝前のブルーライトは避ける ・臥床時間と総睡眠時間を近づける ・ベッド上で眠れない時間を減らす ・中途覚醒で15分以上眠れなければ いったんベッドから離れて気分転換 ・気分転換は熱中しすぎないように睡眠薬はボケるのか?
75
1.3年間追跡調査 (Fastbom, 1998)
睡眠薬服用群にアルツハイマー発症が低い
2.5年間調査 (Billioti de Gage et al, 2012)
ベンゾジアゼピン系睡眠薬服用群で発症リスクが
1.5倍高い
3.7年間調査 (MuraT et al, 2013)
睡眠薬は認知機能に影響するが、促進するわけで
はない
4.10年間調査 (Billioti de Gage et al, BMJ, 2014)
最近のカナダでの大規模コホート研究では高用量、
長時間作用型、長期間服用などがアルツハイマー
病発症と有意に関連していることが報告された。
睡眠薬はボケるのか?
76
「認知症のリスクが高まる」と報告する研究者もいれば
「認知症のリスクは高まらない」と報告する研究者も多い
両者ともデータが不十分で一致したコンセンサスは得られていない
→
睡眠薬で本当にボケるかどうかはまだわかっていない
ただし不眠症や睡眠不足が
うつ病
や
アルツハイマー型認知症
の
発症リスクが高まることは明らかになってきている
→不眠症は放置せずに、
睡眠薬を適正使用することが重要
睡眠薬は適正使用であれば安全
【睡眠薬に頼りすぎず怖がりすぎない】
睡眠薬で単純な睡眠時間の延長ではなく日中機能の
改善を目標とする。(疲労感や倦怠感の改善)
5~6時間の睡眠でも、日中元気に自分の好きなこと
を楽しむことができればOK
【頼りすぎ】
睡眠時間にこだわり
すぎて長時間眠るた
めに副作用の強い薬
を何剤も使用するの
は良くない
【怖がりすぎ】
数時間しか眠れず
疲れが取れないの
に睡眠薬を怖がっ
て不眠症を放置す
るのは良くない
×
×
適正使用
不適切
不適切
〇
睡眠薬の3つのタイプ
睡 眠
体内時計機構規則正しい睡眠‐覚醒リズム
=概日リズム
「夜になったので眠くなる」
恒常性維持機構疲労・睡眠不足による
睡眠物質の蓄積
「疲れたから眠くなる」
ラメルテオン
ベンゾジアゼピン系睡眠薬
非ベンゾジアゼピン系睡眠薬
覚醒機構睡眠と覚醒のスイッチ
「必要な時に目が覚める」
スボレキサント
78適正使用で使い分け
日本国内での睡眠薬の登場ライン
2014 suvorexant (ベルソムラ) オレキシン受容体拮抗薬睡眠薬の改良
2010年以降
依存性がない
睡眠薬も登場
・副作用の少ない
薬を優先
・適正使用なら
安全性が高い
この3剤は安全性が高い
沖縄の睡眠専門医療機関
サマリヤ人病院(南風原町)
・睡眠障害全般に幅広く対応
・呼吸器専門医と精神科専門医が在籍
ナカムラクリニック(浦添市)
・睡眠時無呼吸症候群に強い
・精神科専門医は不在
睡眠学総論
睡眠学の歴史
アリストテレス(Aristoteles:古代ギリシア)
「睡眠と覚醒について」 (BC350年)
フロイト(Sigmund Freud:オーストリア)
「夢判断(The Interpretation of Dream)」( 1900年)
ハンス・ベルガー(Hans Berger:独)
脳波の発見(1924年)
クレイトマン(Nathaniel Kleitman:米)ら
REM睡眠の発見(1953年)
ヤング(Michael W. Young:米)
時計遺伝子の発見(1995年)→2017年ノーベル賞受賞
ハンス・ベルガー(HANS BERGER:1873~1941)
ドイツの神経科学者、精神科医。
イェーナ(JENA)大学医学部教授。
人間の被験者で初めて脳波を記録しアルファ波を
発見した。ノーベル賞候補にノミネートされてい
たが、ナチス政権下の1941年に自殺。
【脳波発見の契機】
脳神経機能への興味から、彼は神経学において多くの面で研究意
欲を示したが、中でも脳における循環器、神経生理学、脳温度の
研究を行った。これらの研究が結果的に脳波の発見につながった。
エドガー・ダグラス・エイドリアン(英)
EDGAR DOUGLAS ADRIAN 1889年~1977年
イギリスの電気生理学者。ケンブリッジ大学教授。
神経細胞の機能に関する発見により、1932年の
ノーベル生理学・医学賞を受賞。
【1934年の脳波公開実験(ケンブリッジ大学)】
実験開始 目を閉じる 暗算(13の3乗) 「だめだ。できない」浅い 深い 覚醒 (開眼) 覚醒 (閉眼) ステージ1 ステージ2 徐派睡眠期 (ステージ3・4) レム睡眠 頭頂部鋭波(vertex waves) K-複合
(K-complex) 睡眠紡錘波 (sleep spindle)
鋸歯状波(sawtooth waves) 1秒 50μV
ヒトの睡眠・覚醒の脳波パターン(睡眠ステージ)
覚醒
ノンレム睡眠
レム睡眠
アルファ波
予備:不眠症以外の睡眠障害
(時間があれば紹介)
分類
代表的疾患
(1) 不眠症
慢性不眠障害、短期不眠障害など
(2) 睡眠関連呼吸障害群
閉塞性睡眠時無呼吸、カタスレニアなど
(3) 中枢性過眠症群
ナルコレプシー、特発性過眠症など
(4) 概日リズム睡眠・覚醒障害群 睡眠・覚醒相後退障害、交代勤務障害など
(5) 睡眠時随伴症群
レム睡眠行動障害、睡眠時遊行症など
(6) 睡眠関連運動障害群
レストレスレッグス症候群など
睡眠障害の分類
睡眠障害国際分類第
3版
不眠症以外にも様々な睡眠障害がある
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閉塞性睡眠時無呼吸症候群
(obstructive sleep apnea syndrome:OSAS)
・睡眠中、上気道の閉塞のために鼻、口での
呼吸が出来ない状態
・胸部や腹部の呼吸運動は行われているにも
関わらず、無呼吸となる。
・大きないびきを伴う
・中高年男性に多い
1.過眠症状による居眠り、ひいては事故の可能性
2.認知機能・作業能力・精神機能への影響
3.心血管障害発症リスクの上昇
4.内分泌・代謝系への影響
閉塞性睡眠時無呼吸死症候群は
なぜ診断・治療が必要なのか?
89
重症例ではCPAP治療を!SRBD(OSAHS)患者のAHI別にみた事故率の比較
30
20
10
(%)
(12.2)
(7.3)
(9.2)
(8.3)
(12.2)
(25.5)
全患者 75/616 2.36 5~15 9/123 1.34 15~30 11/119 1.73 30~45 7/84 1.54 45~60 12/98 2.37 60以上 36/192 3.93(5.5)
一般人口 49/883 事故者数/総数 オッズ比 JSC鼻腔持続陽圧呼吸施行風景
歯科装具治療に用いるマウスピース
閉塞性睡眠時無呼吸低呼吸症候群の治療とその特徴
1. 鼻腔持続陽圧呼吸…
2. 歯科装具治療 …
3. 外科的治療 …
効果は確実だが、長期使用に耐えら
れない者が30~40%存在する
有効例は60~70%、顎の疼痛を訴
えることがある
アデノイド、扁桃肥大によるものでは
絶対的適応。
しかしこれ以外での効果は50~60%
に過ぎない。但し、1,2のような長期
治療を要さないという利点がある
但し、減量、鼻閉の治療、アルコールや睡眠薬などの摂取
を減らすことなどが必要となる
JSCレストレスレッグス症候群(RLS)
Allen RP :Restless legs new insights
特発性RLS(原因不明)と二次性RLS(腎不全,貧血など)
レストレスレッグス症候群とは?
• 脚を動かしたいという強い欲求が不快な下肢の異常感
覚に伴って、あるいは異常感覚が原因となって起こる
こと。
• その異常感覚が,安静にして,静かに横になったり座っ
たりしている状態で始まる,あるいは増悪する。
• その異常感覚は運動によって,改善すること。
• その異常感覚が,日中より夕方・夜間に増強すること。
レストレスレッグス症候群の診断基準
(International Restless Legs Syndrome Study Group)
IRLSSG/NIH work shop;Sleep Medicine 4(2003)101-119
RLS の不眠臨床における重要性
1) 不眠患者の 10%程度,特に睡眠薬非反応症例に多い
2) 自然治癒はごくまれ,進行性増悪することが多い
3) 不安・抑うつなどの精神症状を合併しやすく、QOL悪
化の重要要因となる
JSC頤筋運動図 左 中 心 右 中 心 眼球運動図 左前脛骨筋 左長母趾伸筋 左 足 関 節 右前脛骨筋 右長母趾伸筋 左 母 趾 右 足 関 節 右 母 趾 脳波 筋電図 運動曲線