敗血症性ショックに対するステロイドの効果:CORTICUS 他(130904)
救急に興味のある学生と一緒に抄読会。 敗血症性ショックに対するステロイドの有効性については議論のあるところと思う。まず、公開さ れている日本のガイドライン 1)上の記載を一部抜き出してみる。 CQ1: 敗血症患者に対するステロイド投与の適応は? A1: 初期輸液と循環作動薬に反応しない成人敗血症性ショック患者に対し、ショックからの早 期離脱目的に投与する(2B)。 ステロイド投与の適応決定に ACTH 試験は不要である(2B)。 副作用として、高 Na 血症、高血糖のほか、新たな敗血症、敗血症性ショックなど重感染の 発生率が有意に高いことに注意する(2B)。 CQ2:ステロイドの投与開始時期は? A2:ショック発症早期に投与する(2C)。 CQ3:ステロイドの投与法と投与期間は? A3: ハイドロコルチゾンで 300 mg/day 以下、5 日以上の少量・長期投与が推奨される(1A)。 ハイドロコルチゾン換算量で 200 mg/day を 4 分割、または 100 mg ボーラス投与後に 10 mg/hr の持続投与(240 mg/day)を行う(2B)。 CQ4:ステロイドは何を用いるか? A4:ハイドロコルチゾンを使用する(1A)。代替としてメチルプレドニゾロンも使用できる(2C)。な お、デキサメサゾンやフルドロコルチゾンは投与すべきではない(2B)。 CQ5:ステロイドはいつまで投与するか? A5:循環作動薬の投与が必要なくなれば、徐々に中止する(2D)。 ガイドラインでは、ステロイドの使用については否定的ではなく、輸液や循環作動薬に反応しな い場合には早期からの使用が勧められているようだ。P:patients with septic shock
E:251 patients to receive 50 mg of intravenous hydrocortisone every 6 hours for 5 days(the dose was then tapered during a 6-day period)
C:248 patients to receive placebo every 6 hours for 5 days
O:At 28 days, the primary outcome was death among patients who did not have a response to a corticotropin test.
敗血症性ショックの患者に対して、6 時間おきに 50 ㎎の hydrocortisone 静注を 5 日間施行(そ の後 6 日間で漸減)すると、プラセボと比較して、ACTH 刺激試験で反応しない患者での 28 日時 点での死亡が減少するかどうかを検討した試験であることが分かる。
●妥当か
抄録中に randomized, double-blind の記載があり、Statistical Analysis の部分に The population was analyzed according to an intention-to-treat principle.の記載がある。狭義の ITT 解析では無 いようだが、解析から除外されているのは 1 例だけのようなのでほとんど問題は無いと思う。
●結果
死亡は減少しなかった。
At 28 days, there was no significant difference in mortality between patients in the two study groups who did not have a response to corticotropin (39.2% in the hydrocortisone group and 36.1% in the placebo group, P=0.69) or between those who had a response to corticotropin (28.8% in the
(参考文献 2 より引用) ステロイドの使用はショックからの回復という点では有効だが、死亡は減少しないという結果で あった。重複感染や新たな敗血症や敗血症性ショック、高ナトリウム血症、高血糖を増やすことも 指摘されており、単純に有効性を評価できない。 参考文献 1 では、有効とする論文との違いについて以下のような記載がある。 「結果の相違は患者の重症度の違い(対照群の死亡率:フランス試験 61%対 CORTICUS study 31.5%)とステロイド投与開始時期の違い(前者:ショック発症 8 時間以内 対 後者:発症 72 時間 以内)によると考えられる。」 より重症と判断される場合には、どうせ使用するなら早期の方がいいのかもしれない。 コクランのシステマティックレビュー3)も眺めてみる。 これによると、少量(1日当たり 300 ㎎以下)、長期(5 日以上)では死亡が減るとされている。
Corticosteroids did not change 28-day mortality (20 trials, n = 2138, relative risk (RR) 0.87, 95%confidence interval (CI) 0.74 to 1.01; random-effects model). There was significant heterogeneity that was partly related to the dosing strategy. Treatment with a long course of low dose corticosteroids significantly reduced 28-day mortality (RR 0.84, 95% CI 0.72 to 0.97; P = 0.02), increased the proportion of shock reversal by day seven (six trials, n = 965, RR 1.35, 95% CI 1.16 to 1.57; random-effects model)
(参考文献 3 より引用)
出版バイアスの可能性も指摘されているため、「効果がある」といっても、結構微妙なところとい う感じなのだと思う。
(参考文献 3 より引用) より重症例、副作用がコントロールできそうな例、ショックを乗り切れば何とかなりそうな例に対し て、使うならより早期、少量、長期で使用するのがいいのかもしれない。 薬自体の効果も重要だが、個別の患者の状態や、使う医師の実力によっても武器になったり害 になったりするような気もする・・・。 参考文献 1. 日 本 集 中 治 療 医 学 会 Sepsis Registry 委 員 会 . 日 本 版 敗 血 症 診 療 ガ イ ド ラ イ ン http://www.jsicm.org/pdf/SepsisJapan2013.pdf
2. Sprung CL, Annane D, Keh D, Moreno R, Singer M, Freivogel K, Weiss YG, Benbenishty J, Kalenka A, Forst H, Laterre PF, Reinhart K, Cuthbertson BH, Payen D, Briegel J; CORTICUS Study Group. Hydrocortisone therapy for patients with septic shock. N Engl J Med. 2008 Jan 10;358(2):111-24. doi: 10.1056/NEJMoa071366. PubMed PMID: 18184957.
3. Annane D, Bellissant E, Bollaert PE, Briegel J, Keh D, Kupfer Y. Corticosteroids for treating severe sepsis and septic shock. Cochrane Database of Systematic Reviews 2004, Issue 1. Art. No.: CD002243. DOI: 10.1002/14651858.CD002243.pub2.