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期間限定商品によるブランドの延命方法の解明
~適合性の低さが与える影響とは?~
〈目次〉 ① はじめに 1.研究テーマ、研究動機 ② 現状分析 1. 製品プロダクトライフサイクルの短縮化 2. 期間限定商品の定義 ③ 先行研究レビュー1 1. 期間限定商品の位置づけ 2. ブランド拡張 3. フィードバック効果 4. 知覚適合性 5. まとめ ④ 問題意識の提示 ⑤ 先行研究レビュー2 1. 期待不一致モデル ⑥ 仮説設定 ⑦ 仮説の検証 1. 調査概要 2. 調査結果 3. 分析結果 (1)検証結果 (2)検証結果まとめ ⑧ インプリケーション ⑨ おわりに 参考文献小菅瑛彦 鈴木凌
原田大地
小菅班① ―――はじめに
1. 研究テーマ、研究動機 近年、巷には非常に多くの商品が溢れている。 それにもかかわらず、毎日のように新商品が発売 されている。しかし、それらの新商品はほどなく して市場から消えてしまう。それらの多くは厳し い競争に晒され、短いライフサイクルで市場から の撤退を余儀なくされてしまうのである。消費者 が簡単に思い出せるようなロングセラー商品まで 育つものはほんの一握りである。 企業間の競争が激しくなる中、多くの企業は市 場に投入した製品のライフサイクルをいかにして 伸ばし、製品のブランド力を築くかに注力してい る。そこで企業は大々的なプロモーション活動を 行う事で、なんとか製品の寿命を延命させようと している。 そんな中、今日の市場でロングセラー商品とし てある方法によってブランドの寿命を延ばしてい るのではないかと思うブランドがある。それは「ガ リガリ君」や「カルピス」といったブランドである。 それらは一体どのような方法でブランドの寿命を 延命させているのだろうか その方法とは「期間限定商品」を頻繁に出すこと ではないかと私たちは注目した。多くの企業がブ ランドの寿命の延命のために、市場で長続きでき るような商品を投入するのに対して、あえて短期 間の市場投入を目的として商品を発売するのであ る。 期間限定商品にはいくつかの種類が存在するが、2
その主な目的は既存ブランドの延命が目的となっ ているのではないかということである。例えば、「ガ リガリ君」というアイスのブランドは、前述したよ うに様々な期間限定商品を投入することで有名で ある。最近発売されたものとしては「ガリガリ君 コ ーンポタージュ味」、「ガリガリ君 梨味」、「ガリガリ君 シ チュー味」などがあり、過去販売されたものも数え るととても多くの期間限定商品が販売されている。 これらの商品は通年を通して発売される既存ブラ ンド(一番初めに発売された商品、ここではガリガリ君 ソーダ味を指す)とは異なり、企業側の意図である 一定の期間で市場から撤退してしまう。しかし、 期間限定商品が市場に残していくもの、特に既存 ブランドに与える影響は大きいと考え、多くの期 間限定商品の市場投入が既存ブランドの寿命の延 命に役立っているのではないかという問題意識に 着目していく。以上から、私たちは「期間限定商品」 をテーマとして研究を進めていった。 さて上記したように、短縮化する製品ライフサ イクルの中、あえて短いライフサイクルの商品で ある期間限定商品をある種プロモーション的に投 入することで、既存ブランドの延命を図る戦略が 存在しているのではないかと私たちは考えている。 しかし、実際は新規投入される期間限定の新規ブ ランドが既存ブランドのブランド延命に役立って いるのだろうか。いくつかの先行研究を見た結果 そういった期間限定の新規ブランドが既存ブラン ドに対して与える影響について具体的に述べられ ているものは尐なかった。ブランドレベルで製品 プロダクトライフサイクルが短くなる中で、既存 ブランドのブランドを延命させる為の具体的な方 法を提示することができれば、学術的にも実務的 にも意義のあるものだと感じこの研究を進めるこ とを決定した。② ―――現状分析
まず、期間限定商品の市場環境や定義を整理す る。 1. 製品ライフサイクルの短縮化 製品ライフサイクルとはMBA 用語集によると、 「一般的な製品に見られる、時間の推移に伴う売 上高の変化。」とある。言い換えると、製品が市場 に投入されてから消えるまでの期間を表す。一般 的に、製品ライフサイクルは時間の経過を軸に4 つの段階、「導入期」、「成長期」、「成熟期」、「衰退 期」に分類される。 この製品ライフサイクルだが、近年短縮化の傾 向がみられるという。小川(2011)によると「製品 ライフサイクルは年々短縮化している」と述べられて いる。つまり、商品が市場に投入されても売上が 伸びず販売中止になり市場から消えてしまうので ある。以下で詳しく見ていこう。 ■図表―――1 プロダクトライフサイクルの推移 (出典 中小企業研究所) 図表1 は商品が市場に投入されてから消えるま での期間の平均を年代ごとに表したものである。 ここで述べているように、1970 年代は多くの商品 が5 年以上のライフサイクルの期間であったが、 2000 年代に入るとライフサイクルの期間が 5 年を 超えるものは1 割程にまで減尐している。そこか3
ら見ても分かる通り現在の市場において商品のラ イフサイクルを確保することが難しいということ が見て取れる。 こういったライフサイクルを生み出す要因とし て消費者ニーズの多様化があげられる。多様化す る消費者ニーズに対応しようと企業は様々なマイ ナーチェンジされた商品を投入してきた。新規顧 客を獲得しようと、短期間で商品を市場に投入し てきたのである。その結果として2 つの現象を引 き起こした。まず1 つ目は、商品間の違いがなく なり、製品のコモディティ化を引き起こしたこと である。恩蔵 (2007)によると、コモディティ化と は「企業間の技術的水準が同質的となり、供給される製 品やサービスの本質的部分での. 差別化が困難で、顧客 側からはほとんど違いを見出すことのできない状況」と 定義されている。つまり消費者が商品間の違いを 知覚できなくなり、代替可能な商品が市場に溢れ ることで1 つの商品に拘らなくなったということ である。これは製品ライフサイクルの短期化に観 閲的に影響を与えている。もう1 つは、短期間で 商品が投入されることで、その前に出された商品 が市場から淘汰されてしまう。これが製品ライフ サイクルの短期化に直接影響を与えている。一般 的に、新商品が出されるときには既存にある商品 のモデルチェンジとなることがほとんどである。 このようにすることで、新規購買者は既存にある 商品には目を向けず、新商品の購買に動くだろう。 その結果、既存の商品が市場から淘汰されてしま うのである。 ■図表―――2 業態別 過去5 年間のライフサイクルの短縮率 (出典 2007 年度版ものづくり白書) 今度は、製品ライフサイクル短期化を違う側面 から見ていく。図表2 は業態別の過去 5 年間のラ イフサイクルの短縮率を表したものである。この 図表を見ると、ライフサイクルが短縮化を起こし ていないものは鉄鋼のみである。一方で食品、家 電の短縮率が著しいことが見て取れる。消費者の 生活の中で身近に感じるものほど、製品ライフサ イクルの短縮率が高い印象がある。 2. 期間限定商品の定義 鈴木(2008)によると、期間限定商品とは「販売 期間を限定する商品」となっている。例えば、先述した 「ガリガリ君」でいうと、「ガリガリ君 コーンポタージ ュ味」、「ガリガリ君 梨味」、「ガリガリ君 シチュー味」 がこれに当たる。また、「カルピス」では「カルピス蒸し パン」、「カルピスもち」などである。さらに、図表3 の ような紅茶花伝も期間限定商品を出している。このよう に、期間限定商品はあらゆるブランドで販売されている。 期間の長さは商品毎によって異なっているがどの 長さの販売期間でも期間限定商品と呼ぶことにす る。また、私たちのイメージする期間限定商品を 明確にするために、私たちで期間限定商品の定義 をする。また、期間限定商品に対する既存ブラン4
ドについても同様に定義する。定義は以下である。 期間限定商品=商品がある一定期間だけ販売され ること。 既存ブランド=市場にもともと販売されているブ ランド。ここでは、期間限定商品のブランドのこ とをいう。 以上の定義で、本論文では期間限定商品を扱か っていく。 ■図表―――3 期間限定商品の事例 (筆者作成) また、期間限定商品の目的として(中村・渡辺・杉 山[1997])は「ベース商品が存在する限定商品の目的は主 に話題作りやライフサイクルの促進といった販売促進の 面が強い。ベース商品が存在しない限定商品はメーカー が新たに狙うイメージを付加することを目的としたイメ ージ戦略であるといえる。」と述べている。一般的に、 期間限定商品はプロモーションとしての役割を担 うことが多いことが見て取れる。 以上の様に企業が商品を出す目的は、既存商品 の認知を再び消費者に促す目的と、新たなイメー ジを企業ブランドに付与する目的で行われると言 うことができる。 また現在では前述した「ガリガリ君コーンポタージ ュ味」や「Fit’s おいシソーダ」など既存ブランド・ イメージとかけ離れたある種、ネタ的な期間限定 商品も多く登場している。③ ―――先行研究レビュー1
ここで、期間限定商品という概念を整理するた めに先行研究を行う。 1. 期間限定商品の位置づけ ■図表―――4 期間限定商品の位置づけ (筆者作成) 図表 4 にブランドの製品の全体像から見た期間 限定商品の位置づけを示した。この図でいう「期 間」が期間限定商品に当たる。詳しく見ていくと、 製品ラインには「マスターブランド」と「サブブラン ド」があり、期間限定商品は「サブブランド」に属す る。コカ・コーラを例に取ると、マスターブラン ドは「コカ・コーラ」、サブブランドは「コカ・コ ーラゼロ」となる。サブブランドとはブランド用 語集によると、「製品ラインの一部を区別するために用 いられるブランドのこと」とある。つまり、企業が出 す新製品をサブブランドと呼ぶ。さらに、サブブ ランドは「長期」と「短期」に分類され、期間限定 商品は「短期」である。これは文字通り、短期で商 品を販売することをいう。過去発売された「コカ・ コーラ チェリー味」がそれに該当する。このう ち、「期間」を操作して短期の販売を実現するもの を期間限定商品という。図表5 に、図表 4 の中の 各定義を提示するので、確認してほしい。5
■図表―――5 期間限定商品の位置づけ~用語の説明~ 用語 意味と出典 マスター ブランド ある製品カテゴリー内で支配的な位置 を占め、強力なブランド・エクイティ を確立したブランドのこと 【ブラン ド用語集】 サブブラ ンド 製品ラインの一部を区別するために用 いられるブランドのこと 【ブランド 用語集】 限定商品 販売する期間、数量、地域、チャネル などを企業が限定することによって、 消費者が商品を自由に入手しにくい状 態で販売される商品 【鈴木 2008】 期間限定 販 売 期 間 を 限 定 す る 商 品 【 鈴 木 2008】 2. ブランド拡張 次に、期間限定商品の原理を説明するものとし て、「ブランド拡張」というものを見ていく。ブラン ド拡張とは、Keller(1988)によると、「既存製品が 新製品を導入する際、既に確立しているブランド・ネー ムを用いること」とある。例えば、「ガリガリ君 コー ンポタージュ味」が「ガリガリ君」という既に確立し ているブランド・ネームを用いて販売していると いったような現象のことをいう。一般的に、期間 限定商品が市場に投入される際には、ブランド拡 張が行われる。つまり、期間限定商品は既存のブ ランドをベースとして販売されるのである。また、 中村(2001)によると、ブランド拡張には2 種類あ る。ライン拡張とカテゴリー拡張である。ライン 拡張とは中村(2001)によると、「既存のブランドネ ーム(親ブランド)を利用して既存カテゴリー内で新しい サイズやパッケージ、および新しいフレーバーの追加」 することとある。一方、カテゴリー拡張では、中 村(2001)によると、「新しいカテゴリーに既存の ブランド(親ブランド)の名前を利用」とある。前 述した例に当てはめると、「ガリガリ君」のブラン ド拡張の期間限定商品はライン拡張にあたり、「カ ルピス」はカテゴリー拡張にあたる。主に、この2 つの拡張の仕方で出された期間限定商品を本論文 では扱っていくこととする。 3. フィードバック効果 ■図表―――6 フィードバック効果 出典 小林(1994) ここで、期間限定商品と既存ブランドの関係を 深く見ていくために、「フィードバック効果」とい う概念を紹介する。期間限定商品のような新規ブ ランドが既存ブランドに対して与える影響につい ては図表6 で記載したように直接フィードバック と間接フィードバックに分けることができる。 洪(2010)によると、直接フィードバック効果と は「拡張新製品が既存製品に直接影響を与えるこ と」ととある。その結果、既存製品と拡張新製品 がカニバリゼーションを起こし、既存製品の売上 が上がったり、下がったりといったことが挙げら れる。 一方、間接フィードバック効果とは洪(2010)に よると、「拡張新製品が既存ブランドに影響を及ぼ しその後既存ブランドを経由して既存製品に影響6
を及ぼすこと」である。例として既存商品と類似 したカテゴリーを持つ拡張新製品の失敗は既存商 品の売り上げにつながるといった事が挙げられる。 フィードバック効果については、図表7 にまとめ る。 ■図表―――7 フィードバック効果の種類 言葉 内容 例 直接フィ ードバッ ク効果 拡張新製品が既存製品に直 接影響を及ぼす。 →お互いが強い代替関係や 補完関係にある場合に発生 カニバ リゼー ション 間接フィ ードバッ ク効果 拡張新製品がまず既存ブラ ンドに影響を及ぼし、既存 ブランドを経由して既存製 品に影響を及ぼす。 →お互いの製品カテゴリー が類似しているほど、成否 が移転する可能性が高い 新製品 の成否 が既存 ブラン ド・製品 に及ぼ す影響 (小林,1994) 4. 知覚適合性 期間限定商品には様々な種類がある。第 3 章で 紹介したフィードバック効果によると、期間限定 商品のイメージの高低により既存ブランドへの影 響が変化してくることが考えられる。その種類を 明確に分類するために、知覚適合性という概念を 使用する。 知覚適合性は、第 3 章で紹介したブランド拡張 の際に考慮される。知覚適合性とは、洪(2010)に よると、「既存ブランドと新製品との何らかの類似性を 示すもの」と定義されている。新製品が既存ブラン ドの何かの特徴を保有しているかということであ る。しかし、知覚適合性については様々な記述が あり、明確な類似性の基準などは定まっていない。 例えば、Aaker and Keller(1990)によると、知覚適 合性の基準は「代替性」、「補完性」、「移転性」として おりこれにより類似性を測るのに対して、Martin and Stewart(2001)は「製品特徴ベースの類似性」、「使 用ベースの類似性」、「ブランドコンセプトの一致度」、「目 標ベースの類似性」で知覚適合性の類似性を測る。 今回は、知覚適合性の類似性の測りやすさやイメ ージのしやすさなどから、後者の類似性の基準を 扱う。その中でも、期間限定商品が既存ブランド から拡張して販売された直後に、消費者が実感で き、最も消費者が類似性の尺度として感じやすい、 またフィードバック効果はイメージに左右される ことから、「ブランドコンセプトの一致度」を知覚適合 性を測るうえで採用することにした。「ブランドコン セプトの一致度」をより明確にあらわしたものとし て、Bhat & Reddy(1997)は「品質を含むブランド固 有属性の類似性及びブランドコンセプトの一致度」とい っている。本論文では、この定義に沿って知覚適 合が高いか低いかを測定し、それぞれで既存ブラ ンドおよび新製品の購買への結び付きに影響が出 るかといったことを解明していく。 具体的に商品を提示して説明していきたい。こ こでは、「ガリガリ君」を題材とする。例えば、「ガ リガリ君」というブランドから、「ガリガリ君 梨味」 が期間限定で販売されたとする。そうすると、既 存ブランドのイメージと比較して、「ガリガリ君 梨 味」に対して消費者はこのように思うはずである。 「なるほどね。」や「まあね。」と。「ガリガリ君 梨味」 の登場は「ガリガリ君」のイメージからして当然な のである。一方、「ガリガリ君 コーンポタージュ味」 が販売されたとしよう。消費者は「なんじゃこりゃ?」 や「えっ!!」と思うはずである。「ガリガリ君 コー ンポタージュ味」は「ガリガリ君」のイメージとかけ 離れていたためこのように思ったのである。 ここでいう例の「ガリガリ君 梨味」は適合性が高7
い(以下、適合性大)、「ガリガリ君 コーンポター ジュ味」は適合性が低いと呼ぶのである。多くの ブランド拡張の研究者より、上記で記した知覚適 合性が高いと、既存製品と新規ブランド双方に正 の影響をもたらすことが分かっている。逆に知覚 適合性の低いブランド拡張は既存製品と新製品に 負の影響をもたらす。(洪 2010)それでは、期間 限定商品の種類が具体的にイメージできたところ で、これらがそれぞれ期間限定商品や既存ブラン ドにどのような影響を与えるのかを見ていく。 5. まとめ 以上から、先行研究の流れを整理していく。 ・期間限定商品はサブブランドを短期販売で展開 し、特に期間を操作する商品に位置付けられる。 ・ライン拡張とカテゴリー拡張といった期間限定 の拡張の仕方があり、本論文ではこれを扱う。 ・期間限定商品の市場投入は既存ブランドに影響 を与える。 ・ブランド拡張には知覚適合性という概念があり、 適合性が高いと消費者の知覚に正の影響を及ぼす これらを整理したうえで、次章では問題意識を 提示する。④ ―――問題意識設定
先行研究において既存ブランド(前章でいう、マ スターブランドのこと)と期間限定商品の間に、時と してネガティブな影響を与え合うことに関して指 摘があった。具体的には適合性の低い期間限定ブ ランド拡張が行われると、既存の製品に対して府 の影響をおよぼすことである。先行研究では知覚 適合性大の側面が注目されているが、現状分析似 合ったように、企業は時として適合性小と思われ る期間限定ブランド拡張を行っている。ここの先 行研究と現状分析の矛盾を感じ、私たちは研究の 目的としての問題意識を以下のように設定した。 ≪問題意識≫ 適合性小の期間限定商品※が既存および新製品の 購買に有効な影響を及ぼすのか。また、その方法 は何か。 ここでいう、期間限定商品とは、既存ブランドが 存在するブランド拡張新製品のみとし、かつ販売 期間が限定された「食品」とする。財を食品に絞 った理由としては、他商品と比べて製品ライフサ イクルが短くなっていること、期間限定商品が多 数販売されていることがあげられる。 また本研究の意義としては以下のことが挙げら れる。 学術的意義:期間限定商品による短期的製品投入 が長期的に見てブランド全体の製品にどういった 要素をもたらすのかという購買プロセスの解明。 実務的意義:期間限定商品による高い再購買率の 構築の方法を解明することにより、厳しい市場環 境で利益を得る方法の提示を行うことができる。⑤ ――先行研究レビュー2
本研究では適合性小の商品を知覚した消費者が どのようなプロセスを経て「再購買」に至るのか を見て行きたい。そこで消費者が再購買をするま でのプロセスを、期待と不一致のギャップにより 生じる顧客満足の側面から説明している期待不一 致モデルを援用し研究を進めていく。 1. 期待不一致モデル 本論文では、期間限定商品が消費者の購買行動 に有効的に働いているのかを視覚化するために、8
消費者行動モデルを使って説明していく。私たち が、本論文で採用したモデルは「期待不一致モデル」 である。期待不一致モデルとは、Oliver(1980)に よると、「顧客の製品・サービスに対する満足度がどの ように形成されるのかという心理的プロセスを説明する モデル。」とある。期待不一致モデルを図表 8 に示 した。 ■図表―――8 期待不一致モデル 出典:Oliver(1997) 私たちは、このモデルで既存ブランドおよび期 間限定商品の再購買の有無を見ることで、本論文 の問題意識にこたえることができるのではないか と考えた。 期待不一致の概要は以下のとおりである。まず、 消費者は市場にある商品に対して最初の期待を抱 く。この期待は様々な要因から形成されており、 例えば消費者の経験、周りの反応など多岐にわた る。次に、消費者はその商品を購買し消費する。 そして、消費を経たうえでその商品のパフォーマ ンスについての知覚、つまり成果を形成する。そ れとほぼ同時に成果と期待を算定し、事後態度を 形成する。その事後態度により消費者の今後の行 動が左右されるのである。つまり、 ・期待が成果を上回った場合:負の不一致が起こ り、消費者はその商品に対して不満を抱く。 ・成果が期待を上回った場合:性の不一致が起こ り、消費者はその商品に対して満足する。 ・期待と成果が同等であった場合:満足を形成す る。 のである。また、評価が曖昧にしか下せないよう な製品やサービスにおいては、期待が満足に影響 するといわれている。その後、満足した消費者は その商品への再購買意図が形成され、一方満足し なかった消費者はその商品から離れてしまう。期 待不一致モデルは満足の程度により再購買意図が 形成されるのである。 図表 9 に期待不一致モデルの各要素を示す。次 章からはこのモデルを応用し、仮説を出していく。 ■図表―――9 期待不一致モデルの各要素の説明 言葉 説明 期待 消費者が形成する特定の製品ないしサ ービスに対する最初の期待や事前態度。 成果 消費者が製品ないしサービスを消費。そ の購買経験にもとづいて、その製品ない しサービスのパフォーマンスについて の知覚を形成すること。 確認 成果と最初の期待を算定。 満足 期待>成果⇒負の不一致、不満を抱く。 期待<成果、期待=成果⇒正の不一致、 満足する。また、評価が曖昧にしか下せ ない場合、期待が直接満足に影響。 再 購 買 意図 満足によって再購買が発生。 また、より実務的な意義を達成するために、「期 待」を細分化することで、具体的略を立てやすく する。様々な文献を見た結果、消費者が期待を懐 きやすい事柄として、「品質」、「パッケージ」、「ネ ーミング」、「機能」に絞られた。例えば、品質は All About によると、消費者の消費トレンドは「品 質の高い」(安部)商品にあるという。以上のこと から、「期待」を上記4 つに細分化して分析する。9
⑥ ―――仮説設定
上記で記した現状分析と先行研究を踏まえ、私 たちは下記に仮説を 11 提唱した。 仮説 1;適合性小の「味」に対する期待は確認に対 し負の影響を及ぼす 仮説 2;適合性小の「パッケージ」に対する期待は 確認に対し負の影響を及ぼす 仮説 3;適合性小の「ネーミング」に対する期待は 確認に対し負の影響を及ぼす 仮説 4;適合性小の「機能」に対する期待は確認に 対し負の影響を及ぼす 仮説 5;適合性小の「味」に対する成果は確認に対 し正の影響を及ぼす 仮説 6;適合性小の「パッケージ」に対する成果は 確認に対し正の影響を及ぼす 仮説 7;適合性小の「ネーミング」に対する成果は 確認に対し正の影響を及ぼす 仮説 8;適合性小の「機能」に対する成果は確認に 対し正の影響を及ぼす 仮説 9; 適合性小の確認は満足に対し正の影響を 及ぼす 仮説 10;適合性小の満足は新製品の再購買に対し 負の影響を及ぼす 仮説 11;適合性小の満足は既存製品の再購買に正 の影響を及ぼす 〈1〉仮説 1、 2、3、4 について 仮説 1;適合性小の「味」に対する期待は確認に対 し負の影響を及ぼす 仮説 2;適合性小の「パッケージ」に対する期待は 確認に対し負の影響を及ぼす 仮説 3;適合性小の「ネーミング」に対する期待は 確認に対し負の影響を及ぼす 仮説 4;適合性小の「機能」に対する期待は確認に 対し負の影響を及ぼす 上記の 4 つの仮説は、消費者が商品の購入前に 抱く「期待」を 4 つの属性に細分化したものである。 期待と一口に言っても多くの要素を含む言葉であ るため、本研究では「食品」という最寄品に属する 製品属性として、先行研究より「味」「パッケージ」 「ネーミング」「機能」の 4 つに細分化し仮説として 提唱した。なお消費者に実際に商品を体験しても らった後の知覚である「成果」でも比較するために 同様の属性を聞いている。 〈2〉仮説 5、6、7、8 仮説5;適合性小の「味」に対する成果は確認に対 し正の影響を及ぼす 仮説6;適合性小の「パッケージ」に対する成果は 確認に対し正の影響を及ぼす 仮説7;適合性小の「ネーミング」に対する成果は 確認に対し正の影響を及ぼす 仮説8;適合性小の「機能」に対する成果は確認に 対し正の影響を及ぼす 上記の4 つの仮説にある属性は、上記の仮説 1、 2、3、4 で聞いた属性を同じく含んでいる。そして これらは、実際に消費者が商品を購入し、「体験」 した後に抱く商品への知覚を検証していくために 「成果」として仮説を提唱している。後述するが、 本調査では実際に被験者に適合性小の商品を体験 してもらい、事前に商品に対して抱いた「期待」と、 調査で体験し知覚した実際の商品の味である「成果」 と2 つに分けて行っている。 〈3〉仮説 9 について 仮説9; 適合性小の確認は満足に対し正の影響を 及ぼす この段階では、実際に商品を試して貰った結果、10
食べる前の期待を上回り、満足にどのような影響 をあたえるのかを見るものである。一般的に期待 不一致モデルにおいて、期待の水準と、それを満 足の水準が上回った場合、正の満足が生まれ、期 待と満足のギャップが大きいほど満足度は大きく なると述べられている。その為適合性小の製品の 場合は使用前の水準は低く、期待の水準を超える のが容易であると考えられるので仮設9 において 正の影響を及ぼすと設定した。 〈4〉 仮説 10、11 について 仮説10;適合性小の満足は新製品の購買に対し負 の影響を及ぼす 仮説11;適合性小の満足は既存製品の購買に正の 影響を及ぼす 仮設10 と仮設 11 では新製品を経験した満足の 結果、再購買が既存製品に向かうの、新製品に向 かうのかを検討する仮説である。適合性小の商品は 往々にして消費者の興味を引くような商品であるために 継続購買に向いていないのではないかと私たちは考えて いる。ガリガリ君シチュー味やペプシきゅうり味などを 考えても、それ単体は一回の購買で終了する場合が 多いと考えられる。したがって新製品に対する再 購買に負の影響が与えられると考えられ、馴染み のある既存商品に購買意識が向くと考えられるた め仮説11 では既存商品の購買に正の影響を与える と設定した。⑦ ―――仮説の検証
第6章で設定した仮説の妥当性を確かめるため に、アンケートによる消費者調査を行った。本研 究では、期待不一致モデルの「成果」の部分の測定 するため、実際の商品を用いた実験形式の消費者 調査を行うことにした。そのために、まず実験で 使用する商品の適合性の大、小を判別するための プレ調査、その後適合性が小さい商品を選定し、 仮説の検証をするための本調査をした。 1. 調査概要 <プレ調査概要> 調査日:2013 年 10 月 5 日~8 日 調査対象:大学生95 名(男60 名、女 35 名) サンプルサイズ(有効回答数):95(95) 実施方法:Web 上でのアンケート/対面での調査 質問内容:適合性が高いと感じるか、低いと感じ るか。 本研究では、まず適合性の程度を測り、調査と して使用する適合性が低い商品の選定を行った。 適合性の程度を測る際に、アンケート調査期間中 に一般の小売店で発売されている期間限定商品を 6 つ選択し、「『既存ブランド』の製品特徴との間に違和 感がありますか。」という質問項目を行った。本調査 で実験形式を用いる予定であるため、実際に入手 が可能である商品を選抜した。詳しくは、巻末に 補録として載せておく。 結果として「Fit's おいシソーダ(シソ&ソーダ味)」 に適合せいの低さが見られた。したがって、本研 究では下記の商品を採用する。 ■図表―――10 プレ調査結果 (筆者作成)11
<本調査概要> 調査日:2013 年 10 月 20 日~22 日 調査対象:大学生98 名 サンプルサイズ(有効回答数): 98(98) 実施方法:実験 質問内容:①期間限定商品への「期待」について ②期間限定商品の「成果」について ③期間限定商品の「確認」について ④既存ブランド/期間限定商品への満足について ⑤既存ブランド/期間限定商品の再購買について 本調査は、実験形式で行い、被験者に期間限定 商品に対してどこにどの程度「期待」するのかを測 定した後、実際に食べさせその「成果」を調査した。 また、食べたうえでの「満足」や「再購買意図」を聞 いた。このようにすることで、仮説が妥当かどう か重回帰分析をした。2. 検証方法と手段
本研究における仮説の検証には重回帰分析を用 いることとする。回帰分析とは、1 つ(単回帰分析) または複数(重回帰分析)の説明変数と、1 つの目的 変数の関係を求め、説明変数から目的変数を推定 する統計分析手法である。今回の調査では仮説で 提唱した要素である「期待」や「成果」をアンケ ート項目で具体的に聞くことで変数化し、それら の因果関係を分析していく必要があるため、回帰 分析のうち、複数変数との因果関係を分析するこ とが出来る重回帰分析と 1 つの変数同士の因果関 係を見る単回帰分析を採用する。 具体的な手段としては、 ①前章で現状分析や先行研究をもとに提唱した仮 説に合わせたアンケート項目を作成。 ②アンケート項目で得られたデータをIBM の統計 解析ソフトである「IBM SPSS Statistics Version 20」を使用し、重回帰分析と単回帰分析 を併用。 ③重回帰と単回帰を組合わせ、本研究における 仮説モデル全体の因果関係を検証。 以上3 つの手順より検証を進めていく。 3. 分析結果 (1)分析手順分析手法
目的
変数
説明変数
重回帰分析
確認
事前 味
事前 パッケージ
事前 ネーミング
事前 機能
事後 味
事後 パッケージ
事後 ネーミング
事後 機能
単回帰分析
満足
確認
重回帰分析
満足
新製品 再購買
既存 再購買
以上3 つの分析手法を用いて図表 11 の仮説モデ ル全体の因果関係を検証する ■図表―――11 統合仮説モデル図12
■図表―――12 重回帰分析(期待→確認) 図表12 に期待から確認の部分のみのモデル、 図表13 に出力結果を示した。 <全体モデルの解釈> ここではモデルの全体評価を行う。調整済み決 定係数R2乗は1 に近いほど相関が高いことを表 す指標であり、今回のモデルは0.701 であること から相関が高いと言える。さらに分散分析におけ る有意確率0.000 であり、0.005 以下が有意となる ため、このモデルは統計的に意味のあるものを判 断される。 <仮説の解釈> 続いてモデルの部分的評価を仮説の順序に従っ て検証していく。まず有意水準が5%以下を記録し なかった「事前ネーミング」「事前機能」「事後ネ ーミング」「事後機能」の4 つは説明力にかける項 目と判断されたため、ここでは有意な影響を与え ていないと考えられる。 一方、有意水準が5%以下を記録した項目は「事 前味」「事前パッケージ」「事後味」「事後パッケー ジ」という結果となった。以上を仮説と踏まえる と下記の表のような結果となった。 <仮説検証の結果> 項目 仮説 説明しない 仮説3、4、7、8 実証 仮説2、5、6 棄却 仮説1 ■図表―――13 SPSS による出力結果 (出典;SPSS の結果より引用)13
■図表―――14 単回帰分析(確認→満足度) 図表14 に確認から満足へのモデル、図表 15 に 出力結果を示した。 <全体モデルの解釈〉 ここではモデルの全体評価を行う。調整済み決 定係数R2乗は1 に近いほど相関が高いことを表 す指標であり、今回のモデルは0.785 であること から相関が高いと言える。さらに分散分析におけ る有意確率0.000 であり、0.005 以下が有意となる ため、このモデルは統計的に意味のあるものを判 断される。 <仮説の解釈> 続いてモデル内の変数間の因果関係を見ていく。 このモデルでは従属変数の「確認」と独立変数の 「満足度」の関係を分析したものであり、双方の 有意確率は0.000 であることからモデルは適して いると考えられる。さらに標準化係数ベータの値 が0.887 と 1 に近いことから、「確認」から「満足 度」に対して正の影響を及ぼしていることがわか る。 <仮説検証の結果> 項目 仮説 説明しない 実証 仮説9 棄却 ■図表―――15 SPSS による出力結果 (出典;SPSS の結果より引用)14
■図表―――16 重回帰分析(満足度→新・既存への再購買率) 図表16 に満足から再購買意図のモデル、図表 17 には、出力結果を示した。 <全体モデルの解釈> ここではモデルの全体評価を行う。調整済み決 定係数R2乗は1 に近いほど相関が高いことを表 す指標であり、今回のモデルは0.474 であること から相関が高いとは言えないが、分散分析におけ る有意確率0.000 であり、0.005 以下が有意となる ため、このモデルは統計的に意味のあるものを判 断される。 <仮説の解釈> 続いてモデルの部分的評価を行う。まず有意水準 が5%以下を記録しなかった「新また買いたい」の 項目は説明力にかけると判断されたため、ここで は有意な影響を与えていないと考えられる 一方、有意水準が5%以上を記録した「既 ま たた買いたい」の項目は有意な影響を受けている と考えられ、さらに標準化係数ベータの値も1 に 近いことから、従属変数である「満足感」に正の 影響を及ぼしていると言え、仮説11 は実証された と判断できる <仮説検証の結果> 項目 仮説 説明しない 仮説10 実証 仮説11 棄却 ■図表―――17 SPSS による出力結果 (出典;SPSS の結果より引用)15
(2)検証結果まとめ <仮説検証の結果まとめ> 項目 仮説 説明しない 仮説3、4、7、8、10 実証 仮説2、5、6、9、11 棄却 仮説1、 <実証された仮説> 仮説 2;適合性小の「パッケージ」に対する期待は 確認に対し負の影響を及ぼす 仮説 5;適合性小の「味」に対する成果は確認に対 し正の影響を及ぼす 仮説 6;適合性小の「パッケージ」に対する成果は 確認に対し正の影響を及ぼす 仮説 9; 適合性小の確認は満足に対し正の影響を 及ぼす 仮説 11;適合性小の満足は既存製品の再購買に正 の影響を及ぼす <仮説図> ■図表―――18 <考察> 図表18 は仮説モデルの検証結果である。 左記で検証された結果をもとに考察をしていく。 まず期待について、消費者は「味」に対する事 前期待を強く抱く一方、パッケージなどの他の属 性に対してはマイナスの期待を抱くことが分かっ た。今回の調査では 7 ポイントスケールの尺度で 「おいしさ」というまだ抽象的な質問項目を採用 したため、消費者が味に対し、具体的にどのよう な思いを抱いているのかはわからなかった。おい しさに対して好奇心をもっているのか、もしくは 純粋に味覚に対して魅力を感じているのかなど、 まだ研究の余地がある領域であると言える。 成果については、消費者が実際に体験する以前 に感じていた「期待度」よりも高い水準で正の影 響が見られたことより、事前に適合性が低い商品 に対して無意識的に商品に対する心理的なハード ルを下げており、実際に知覚するとハードルを越 えるため、次の項目である「確認」に対して強い 影響を及ぼしていることが考察される。そしてそ の「確認」が商品に対する「満足度」に正の影響 を及ぼしていることが仮説から検証されている。 ここまでの全体プロセスのメカニズムを整理す る。適合性小という商品の魅力に対するハードル を下げる商品を投入することで消費者の新商品に 対する「期待値」を下げる。そして最寄品という 衝動的購買が起こりやすい商材であるため、比較 的容易に購買がなされる。そして実際に商品を知 覚して事前に感じていた「期待値」を上回る商品 の魅力度に対し、消費者が「期待以上」という評 価を製品に下し、それが満足度につながる。しか し適合性が小さい商品は往々にしてユニークでは あるが、日常的に購買したり、おいしさを感じる ような商品は尐ない。そのため期間限定の新商品 購買後、同商品を再購買するという流れは起きず、 その商品のもととなった既存製品への再購買とい16
う流れが起きると考えられる。今回の仮説では、 満足度から、新商品再購買への流れは統計的に説 明することが出来なかったが、一方の満足度から 既存製品への再購買意図は非常に高い正の影響を 及ぼしていることから、今回の研究で得られた知 見は、実際の消費者購買行動への示唆につながる ものであると思われる。⑧ ―――提案
今回の分析で出た結果を元に私達が提案するの が「適合性小の商品が既存商品のブランドを延命する手 段として限定的に使用すべきであり、味の特徴を際立た せるプロモーションを行なうべき。」である。 具体的な例として現在発売されている「ガリガリ 君シチュー味」(図表19)を挙げる。 ■図表―――19 ガリガリ君シチュー味 発売日 2013 年 10 月 29 日 種類別 ラクトアイス 内容量 110ml (筆者作成) こういった適合性小さい製品をより効果的に宣 伝し消費者の間で話題にするプロモーションを行 なう為には味を前面に出したものが重要になると 考えられる。つまり「ガリガリ君シチュー味」の場合 は「クレアおばさんとコラボ」を押し出すのでは なく、「アイスなのにシチュー味」や「ガリガリ君 がシチュー味に」といった様に味を前面に押し出 したプロモーションを行なうべきである。また実 際に食べた人の感想を載せるなど、味に対して消 費者が尐しでも興味を向くようにプロモーション を行うことが必要である。⑨ ―――おわりに
私たちは研究の目的として、商品の製品ライフ サイクルの長期化、つまりブランドの寿命の延命 方法を掲げた。その際、私たちは期間限定商品の 中でも適合性が低い商品が既存ブランドに与える 影響を見てきた。結果は、期間限定商品の特に味 の部分が消費者に多くの影響を与え、期間限定商 品の再購買意図が次第に下がるにもかかわらず、 既存ブランドの再購買意図は上がっていた。した がって、適合性が低い期間限定商品を出す際には、 期間を限定したほうが期間限定商品の購買意図低 下の影響を受けることなく、既存ブランドへの再 購買を促すことができるということが導けたので ある。しかし、研究上の限界や課題についても指 摘しておかなければならない。 今回の研究では、既存ブランドへの再購買意図 への影響の解明をゴールとして見据えていた。た しかに、ブランドの寿命の延命方法を導くために は、再購買意図への影響を考えなければならなか った。しかし、再購買意図が高くなったり低くな ったりする原因を追求していない。なぜ適合性が 低い期間限定商品は既存ブランドの再購買意図を 高くしたのか。それは、ブランド・イメージの向 上か、もしくはブランド自体に新鮮さがましたの かもしれない。このことを追求しなかったことは 今後、実務的な面で弊害を及ぼす可能性がある。17
つまり、期間限定商品を出すことで既存ブランド の再購買意図を高くするものの、その裏側にある ものが既存ブランドそのもののイメージを崩して しまう場合がある。今後はこのような側面につい ても考える必要がある。 また、消費者調査での対象を大学生に絞ってし まったところにも課題がある。当然、例外を除け ば期間限定商品を含むあらゆるブランドはほとん どの年代に消費される。このことを考えれば、消 費者調査では全年代を対象に行うべきであった。 最後に、本研究に御協力、御支援をいただいた 全て方々に、この場を借りて多大なる感謝の意を 表したい。 参考文献 赤城乳業「赤城乳業株式会社」(http://www.akagi.com/) アクセス日時:2013 年 11 月 1 日。 青木幸弘,恩蔵直人 (2006)『製品・ブランド戦略』有斐閣 アルマ。 小川長(2011)「製品ライフサイクルは年々短縮化してい る」『尾道大学経済情報論集』 11(1),177-209。 恩蔵直人(2007)『コモディティ化市場のマーケティング 論理』有斐閣。 経済産業省(2007)「我が国製造業の海外展開の現状と国 内拠点の役割」『ものづくり白書』22-62。 小林哲(1994)「ブランド拡張の基本概念と戦略課題」『経 営研究』45(3),63-80。 鈴木(2008)「限定商品に対する消費者行動の理論的・実 証的研究―心理的リアクタンス理論と独自性理論を中心 に―」『企業研究2008』14,201-223。 中小企業研究所「難しいライフサイクルへの対応、経営 者に求められる志向」 (http://imaginary-dynamics.com/2012/06/224/)、アク セス日時:2013 年 9 月 2 日。 中村多美子,渡辺誠,杉山和雄(1997)「限定商品における 『限定』の役割」『研究発表大会概要集』(44),116。 中村博(2001)『新製品のマーケティング』中央経済社。 洪延和(2009)「ブランド拡張における適合性概念の再検 討」『経営研究』60(1),55-72。 ―――(2010)「ブランド拡張のフィードバック効果:拡 張新製品が及ぼす既存ブランドの希薄化に焦点をあてて」 『経営研究』61(2),43-58。Aaker, D. A. and K. L. Keller(1990),”Consumer Evaluations of Brand Extension,” Journal of Marketing, 54,27-41.
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