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Academic year: 2021

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全文

(1)

銀河系内のダストによる減光について

研究者名:済藤 祐理子 担当教諭:湯川 歩

.研究目的

昨年、東京大学木曽観測所で行われた銀河学校2005に参 加し、銀河系で、アームと呼ばれる銀径223°方向(図1)の G型星(太陽型の星)を選び出し、その密度を求めた。しかし、 その時距離にかかわらず密度が一定になると推測していた が、実際は距離が遠くなるにつれて密度が減少している事 が分かった。 その後銀河学校で出た結果に対して疑問を持ち、このよ うな結果になったのは、銀河系内のダストにより光が吸収されているからではないかと考え、そうであ るとしたらG型星の光がダストによってどれくらい減光しているかを調べる研究を行った。(共同研究: 森下樹里,長野県教育委員会主催第一回プレゼンテーションコンクールに参加) そこで、今回の研究では今までの研究の結果をさらに発展させ、新たな視点として光の色によってダ ストによる吸収のされ方が異なる事も考慮して、ダストが及ぼす影響を調べることにした。

.研究方法

(1) 銀河学校において、 V-band(緑色のフィルター)で観測した標準星(標準星とは、距離と明るさが分 かっている星のこと。)のカウント(星の明るさを数値化したもの)が100光年で150000カウントであっ た事と、G型星のB/V比(B-bandのカウントをV-bandのカウントで割った値。B/Vを計算することによ って、その星がどれくらい青いか、つまりその星の色が分かる。)を0.85~0.91と仮定したことをもと に、B-band(青色のフィルター)で観測した場合の標準星の100光年でのカウントの範囲を求める。計 算した結果、B-bandでの標準星の100光年でのカウントの範囲は1275000~1365000となった。 (2) G型星のV-bandの光が、100光年につき5%,10%,15%カットされると考えた場合のV-bandと B-bandの100光年ごとのカウントを求め、B/V比を求める。この時、ダストは赤い光よりも青い光を より吸収し、B-bandは、ダストによる吸収がV-bandの約1.33倍である(*)事を考慮して求める。 以下に、G型星のV-bandの光が100光年につき10%カットされると考えた場合を例にとり、カウン トの求め方を述べる。 ① ダストによる影響を考える 例えば100光年の距離に、 明るさが1の星があるとする。 宇宙空間に何も無い場合は、 1の明るさがそのまま見える。 しかし、ダストによって光が 10%カットされると、1の明る さだった星は0.9の明るさに 見えてしまう。さらに距離を 2倍にすると、100光年で0.9 になってしまうのだから、0.92の明るさが見える事になる。(図2) ・ダストなし ・ダストあり 1 0.9 1 0.9 1 1 0.81 銀径 223° [図 1] [図 2]

(2)

② 距離による影響を考える 例えば距離が1の時、光は1の面積を照らす。しかし、距離が2倍になると4倍の面積を照らす 事になるので、単位面積あたりの明るさは1/4になってしまう。(図3) ③ カウントを求める式 これまでの事を考慮すると、カウントを求める式は以下のようになる。 ただし、この式はV-bandの光が10%カットされた場合なので、5%や15%カットされる場合は、 この式の0.9の部分を0.95や0.85にすればよい。 また、B-bandのカウントはV-bandのカウントが10%カットに対して、その1.33倍の、13.3% カットになるので、上の式の0.9の部分を0.867にする事で同じように計算することができる。 (3) 実際に銀径223°方向を観測し、画像処理ソフトmakaliiを用いて測光したカウントをもとに、測光 したすべての星についてB/V比を求める。(観測データは東京大学木曽観測所からお借りした。) (4) V-bandのカウントを基準にし、(2)で計算によって求めたカウントと、(3)で測光により求めたカウ ントを対比して、観測した星の大まかな距離を求める。 (5) (3)のB/V比を、(4)で求めた距離ごとに(2)のB/V比と照らし合わせて、(2)のB/V比の範囲に当てはま るもの(=G型星)を選び、その数を500光年ごとの領域に区切って数える。 (6) 観測した領域の体積を、500光年ごとの領域に区切って求める。 体積の求め方 観測領域は下のようになっている。(図4) この円の中心が望遠鏡。望遠鏡によって異なるが、望遠鏡には見える範囲の限界(視野)がある。 つまり実際に見える範囲というのは視野で決まる事になる。今回は東京大学木曽観測所の105cmシ ュミット望遠鏡で得た画像をもとに研究しているため、視野は5/6度である。また、この図では底面 の1辺はカーブしているが、実際には星までの距離は非常に長いため、直線と見なす事ができる。 そこで、観測領域は四角錐であると考え、体積を求める。(図5) すると、四角錐の体積は底面の面積×距離×1/3で、底面の四角形の一辺の長さは以下のようにな る。 100 2 2

9

.

0

100

9

.

0

1500000

距離

距離

×

×

視野 星までの距離 観測する星 6 5 360 2 × ⎟ ⎠ ⎞ ⎜ ⎝ ⎛ × 距離 ×π [図 4] [図 5] [図 3]

(3)

よって、観測した領域の体積を求める式は以下のようになる。 この式をもとに、500光年ごとの領域に区切った体積を求める。 (7) 密度=個数/体積である事から、500光年ごとのG型星の密度を求め(図6)、グラフ化する。

.結果

当初、5%、10%、15%を求める予定であったが、5%と10%を求めた時点で、15%よりも5%と10%の 間の所を詳しく調べる必要があると判断したため、15%は調べなかった。 ① 5%cutの場合 ②10%cutの場合 ・傾きは緩やかではあるが、距離が遠くなる ・途中傾きが水平に近い部分があるが、全体的 につれて密度が減っている。(G型星は61個) に見ると傾きがある。(G型星は38個) ③ 6%cutの場合 ④7%cutの場合 ・4000光年辺りまでは傾きがかなり緩やか ・全体的に密度が減っている。(G型星は44個) な線になっている。(G型星は55個) 5%cut 500光年ごと 0.0000001 0.000001 0.00001 0.0001 0.001 0.01 0.1 1 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000 4500 5000 5500 [光年] [個/光年3] 3 1 6 5 360 2 2 × × ⎭ ⎬ ⎫ ⎩ ⎨ ⎧ × ⎟ ⎠ ⎞ ⎜ ⎝ ⎛ × × 距離 π 距離 6%cut 500光年ごと 0.00 00 00 1 0 .0 00 00 1 0.00 00 1 0 .0 00 1 0.00 1 0 .0 1 0.1 1 5 00 10 00 1 50 0 2 00 0 25 00 30 00 3 50 0 40 0 0 45 00 [光年] [個/ 光年3 ] 7%cut 500光年ごと 0.000001 0.00001 0.0001 0.001 0.01 0.1 1 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000 [光年] [個/光年3] 10%cut 500光年ごと 0.0000001 0.000001 0.00001 0.0001 0.001 0.01 0.1 1 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 [光年] [個/光年3] 500光年 500光年 500光年 [図 6]

(4)

⑤ 8%cutの場合 ・途中グラフが右上がりになる部分もあるが、 全体的に見ると減っている。(G型星は52個)

4.考察

(1) ダストによる光の吸収について 結果のグラフより、6%カットの場合のグラフが一番傾きが緩やかで水平に近いグラフになって いる事から、銀径223°方向においての100光年ごとのダストによる光の吸収は、V-bandが6%カッ ト、B-bandが7.98%カットであると考えられる。 (2) G型星の密度について ダストによる光の吸収が6%とした時の、銀径223°方向のG型星の密度を求める。 密度が極端に減っている4500光年をのぞく1500光年~4000光年の密度を平均すると 約0.0000161個/光年3になる。 よって、銀径223°方向のG型星の個数密度は1.6×10-5/光年3であると言える。 さらにこの事から、G型星同士の平均距離を求める事ができる。 密度1.6×10-5個/光年3は言い換えれば62500光年3に1個のG型星があるという事になる。すると、 G型星同士の距離は62500光年3の立方体の1辺の長さと等しくなる。3√62500≒39.685なので、銀 径223°方向のG型星同士の平均距離はおよそ39.7光年であると言える。(図7) (3) 色の補正を加えた場合と加えない場合の違いについて 色の補正を加えない場合は、距離に関係なくG型星のB/V比は常に一定であるという事になる。 つまり、今回の場合G型星を選ぶ際に、観測したすべての星のB/V比の中から0.85~0.91の範囲にあ るものをG型星とする事になる。 それに比べて、色の補正を考える場合は、距離によってG型星のB/V比は異なる。今回の場合で 言うと、基準となるのは100光年の距離でG型星のB/V比は0.85~0.91であるが、V-bandもB-band も100光年ごとにダストによる吸収があるためカウントが小さくなっていく。そのカウントからB/V 比を求めるため、G型星のB/V比の値は100光年ごとに異なった値になる。すると、色の補正を考え る場合、観測したすべての星について距離とB/V比を求め、そのB/V比がその距離におけるB/V比の 範囲内にあるものをG型星とする事になる。 8%cut 500光年ごと 0.0000001 0.000001 0.00001 0.0001 0.001 0.01 0.1 1 500 1000 1500 2000 2500 3000 [光年] [個/光年3] 62500光年3 [図 7] 39.7光年 39.7光年 39.7光年 39.7光年

(5)

対比した結果、色の補正を加えた場合と加えない場合とでは、G型星の数や密度に違いが出た。 なお、密度はともに4000光年までの平均値とした。 (ⅰ)色補正あり (ⅱ)色補正なし G型星の個数…55個 G型星の個数…222個 密度…1.6×10-5個/光年3 密度…6.5×10-5個/光年3 グラフの傾きに大きな違いが出たわけではないが、色の補正ありとなしで違いが出たという事 は、色によって何らかの影響がある、つまりダストによる吸収を考える際には、色により吸収の され方が異なることを考慮する事で、より正確な結果を導く事ができると考えられる。 (4) ダストの個数密度について ダストによる光の吸収が6%であると した時、銀径223°方向のダストの個数 密度を求める。 星の光が、まっすぐに、直径D[km]の 円柱状に進むとする。この円柱の中に半 径a[km]のダスト(今回はダストは球形 であると仮定する)が、密度P[個/km3]あ るとする。さらにこのダストは真っ黒で、 ダストに当った光は吸収されてしまうと する。(*) この光が100光年進む場合、つまり長 さ100光年(=1×1015[km])の円柱を考える。(図8) この円柱の体積から、この円柱の中に入ってくるダストの個数Nは、 P=N/体積であるから、 P=N/{(D/2)2×π×1015} =N/{(2.5×1014)D2π} よって、 N=(2.5×1014)PD2π ……① また、ダストはきわめて小さいので、円柱を円方向から覗いた 時に、ダスト同士は重ならないとする。(図9) すると、覗いた時に見えるダストの数は円柱に含まれるダスト の数Nと同じになる。光全体は、直径Dの円の範囲を通ってくる ので、もしこのダストが覆い隠す面積が直径Dの円の面積と同じ ならば、光は100%ダストに吸収され、面積が半分ならば光は50% 吸収されるという事になる。今回、ダストによる吸収は6%だった ので、ダストが覆い隠す面積は直径Dの円の面積の6%という事になる。これらを式にすると、 ダスト1個の面積は a2π であるから、 ダストN個の面積は N a2π ……② 色あり6%cut 500光年ごと 0.0000001 0.000001 0.00001 0.0001 0.001 0.01 0.1 1 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000 4500 [光年] [個/光年3] 色なし6%cut 500光年ごと 0.00 00 00 1 0 .0 00 00 1 0.00 00 1 0 .0 00 1 0.00 1 0 .0 1 0.1 1 5 00 10 00 15 00 20 00 2 50 0 3 00 0 35 00 40 00 45 00 5 00 0 [光年] [個/光年3 [図 9] [図 8] a a a a a ダストN個の面積 =直径Dの円の面積の6% 100光年 a a a a a D[km] 光 N個(密度P[個/km3])

(6)

また、直径Dの円の面積の、6%がダストで覆われるから、 (D/2)2π×0.06 =(0.03D2π)/2 ……③ ②と③は等しいはずだから、 N a2π=(0.03D2π)/2 この式の、Nの部分に①を代入して、 (2.5×1014)PD2π×a2π=(0.03D2π)/2 (5.0×1014)P D2 a2π2=0.03D2π (5.0×1014)P a2π=0.03 よって、 P=0.03/{(5.0×1014) a2π} ……④ ダストの半径aを、1μm(=1×10-9km)とする(*)と、これを④式のa2に代入し、π=3.14として計算 すると、ダストによる吸収が6%である時のダストの個数密度は、19.1個/km3である事が分かった。 さらに、この事から、ダスト同士の平均距離を求める事ができる。密度19.1個/km3=19.1×10-9個/m3 だから、これを言い換えると、52356020m3に1個のダストがあるという事になる。すると、ダスト同 士の距離は、52356020m3の立方体の1辺の長さと等しくなる。3√52356020≒374.101であるから、 銀系223°方向のダスト同士の平均距離はおよそ374mであると言える。 また、1km3の立方体にダストが占める体積の割合も求められる。球の体積V=(4/3)πr3であるから、 ダスト1個の体積は(4/3)π×(10-9)3 km3となる。今回の場合1km3あたりに19.1個の星があると分かっ たので、ダスト19.1個の体積は、19.1×(4/3)π×(10-9)3≒8.0×10-26km3となる。よって、1km3の立方 体にダストが占める体積の割合は、0.000000000000000000000008%(=8.0×10-24%)と言える。

5.今後の課題

(1) 今回の研究を行う際に、銀系223°方向の星の密度は一定であるとか、G型星のB/V比の範囲は 0.85~0.91など、様々な仮定をして結果を求めたが、これらの仮定が本当に正しいと言えるかどう かを確かめる必要がある。 (2) 今回は、G型星とダストの個数密度を求めたが、G型星とダストが宇宙空間においてどれぐらい の重さがあるのかを知るために、G型星とダストの重さ密度を計算してみたい。 (3) この研究の結果をさらに正確にするため、V-band、B-bandに加え、R-band(赤色のフィルター) も加えてやり直してみたい。

.研究を終えて

私は今回の研究をやって、今までに行った研究の結果で確かめたかった事や、宇宙に関する事を研究 する際の考え方など、今まで知らなかった事をたくさん知ることができました。特に一番感動した事は、 宇宙は遠くて、簡単には行くことができないような所なのに、たった2枚の星空の写真から銀河系内に 漂うガスや塵がどれくらいあるかを計算によって推測できた事でした。これからさらに勉強して、もっ ともっと宇宙の事を知りたいと思いました。また、今回の研究でも課題が残ったので、これで終わりに しないように、さらに継続して研究を行っていきたいと思います。

.謝辞

今回の研究にあたっては、東京大学木曽観測所から銀河学校2005の観測データをお借りする事ができ ました。また、研究を進める過程で東京大学木曽観測所の方々に大変お世話になりました。とりわけ、 宮田隆志先生には、研究の進め方についてご指導頂き、疑問点についても色々と教えて頂きました。尚、 本文中の(*)の部分は、宮田先生のご教示によるものです。 本当にありがとうございました。

参照

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