霊総研・研究報告
創 刊 号 平 成 11年
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高ドーズ水素イオン注入シリコンの物性とその
801
製作への町、用
Pro pe rti e s of Hyd rogen一ImplantedSilicon with High Doses and Its Application to Fabricate SOI Wafers
徳田豊
1)岡高木誠
2).岩田博之
3)旬大島久純
4)岡伊藤明
5)Yutaka Tokuda, Makoto Takagi, Hiroyuki Iwata, Hisatugu Ohshima, Akira Ito
Abstract Evolutions of hydrogen-implantation-induced defects in silicon with doses have been studied with various kinds of measurement tech円iquespertinent to the doses applied. In the low dose range (10'0 cm-2), the DL T8 measurements indicate the change of the defect concentration by below-band-gap light illumination. In the middle range (1015 cm-2), carrier concentration and hydrogen depth profile measurements reveal the growth of hydrogen-related shallow donors by annealing at around 300 - 5000C
町 Inthe high does range (10'7 cm-2). TEM observation shows the
formation of four kinds of defects, that is, point-like defects,く100>platelets,く111>platelets and dislocation-like loops. It is found that the defect structures change into larger defect complexes probably containing hydrogen atoms with doses. These results are useful to fabricate the 801 wafers by hydrogen impla円tation
1. はじめに シリコンへの水素イオン注入が、そのデバイス作成 への広範囲な応用の可能性により、注目を集めてき ている。その応用はイオン注入量により低ドーズ倶I1か ら、局所的ライフタイム制御1)、イオン注入燐の活性 化2)、イオン注入欠陥の低減化3)、また最近では SOI ウエーハの作成4)と多岐にわたっている。 特 lこSOI ウエーハ作成では、 1017 cm-2という富ドーズのイ オン注入量が用いられるので、応用のみならず、物性 的な観点からも興味深いものである。 本研究では、上記のような広範囲にわたるドーズ量 1)愛知工業大学電子工学科(豊田市) 2)愛知工業大学機械工学科(豊田市) 3 i愛知工業大学総合技術研究所(豊田市) 4)ヂンソー(日進市) 5)鈴鹿工業高等専門学校(鈴鹿市) による欠陥の進展機構を調べることを目的としている 水素イオン注入量を 10'0から 1017cm-2まで変え、 欠陥量極構造に最適な方法を適用することにより、水 素イオン注入の評価を行った。2 では低ドーズ (10 10 cm-2)の領域をDLTS法で評価した結果を示す。 2では中ド←ズ (10'5 cm-2)の領域をキャリア濃 度分布、水素深さ分布から調べた結果を述べる。 3. では高ドーズ (1017cm-2)の領域をTEM観察した結 果について報告する。 2. DLTSによる導入欠陥の観察 2. 1はじめに 低ドーズの水素イオン注入では、室孔型の欠陥であ るA中心(空孔一酸素対)、複空孔、 E中心(空孔ー燐 対)が、 n型シリコンにおいて電子トラップとして観測さ れる3)4) 5)。それに加えて二つの水素関連欠陥が導 入されることが報告されている。しかしながら、水素関 欠 陥 の 同 定 に 関 し て は 考 え 方 に 相 違 が あ る 。 Sve円ssonらは4)、これらはA中心と水素および複空孔
2. 3実験結果および検討 図2. 1は、水素イオン注入後のDLTS信号である。 (a)は光照射無し、(b)は光照射1380分後、(c)は 光照射3900分後の信号である。トラップE1はA中 心、トラップE2は荷電状態- 2の複空孔に対応する。 トラップE4の信号はE中心と荷電状態-1の複空孔 の信号から構成されている。トラップE3は電子線照 射後にも観測されることがあるが、まだ同定されてい ない。トラップH1 (Ec一O.32 eV)とトラップH2(Ec
-0. 49 eV)は既に報告されている水素関連欠陥 である。 トラップE3を除き、各トラップ濃度が光照射により変 化していることがわかる。空孔関連欠陥であるA中心、 複空孔は光照射により減少しているが、水素関連欠 陥Hl,H2は増加を示している。トラップE4はわずか に減少している。
図2.2[二、A中心(E1)、複空孔(E2),E中心(E4 -E2)と水素関連トラップH1, H2の濃度の光照射に よる変化を示した。A中心と複空孔は光照射時間39 00分でその変化が飽和を示している。 E中心は光照 射とともに増加している。また、増加を示す E中心、 H 1, H2も3900分で飽和を示している。しかしながら6 つのトラップ濃度の総和はほぼ一定であることがわか った。この結果は各トラップ濃度の増加と減少の聞の 密接な関係を示唆している。 図2.3[こ、光照射前のトラッフ。濃度からの光照射に 高ドーズ水素イオン注入シリコンの物性とその801製作への応用面創刊号国平成11年 と水素の複合体と考えている。一方Palmetshoferら は水素ー空孔対の可能性を報告している5)。 ここでは、低ドーズの水素イオン注入されたn型シリ コンに導入される電子トラップに観測される光照射効 果について示す。また、光照射によるトラップ濃度の 変化を通して、水素関連欠陥の同定について議論す る。
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2.2実験方法 用いたウエーハは、抵抗率1-2オーム固c mの燐ド ープn型(100)CZシリコンである。水素イオン注入の 注入エネルギーは170keVで、注入量は2xl0'Oc m~2 で、ある。ショットキー電極は金の真空蒸着により 作成した。オーミック電極は裏面にインジュムーガリ ウムを塗る込むことにより得ている。トラップ評価はこ れらダイオードに対してDeep- Level Transient Spectroscopy( DL TS)測定することにより行った6) 7)。インジュムーガリウムを除去後、エネルギーが禁 制帯以下の光を誤料裏面より照射させた。禁制帯以 下の光は、 1.25Wのタングステンランプからの光を、 フィルターとしてのシリコン結晶を通過させることによ り得ている。光照射温度lま室温であり、 3900分まで の照射を行った。 TOTALI2 &'l ~-G0fþー@吋@吋@ー@ー"'-ー@---eー @ーー@←一一@ H2 E center ¥ .D.M ムム企-D.-D.-ムームーム_-6.-".-,ト-D.-ーム--D. 一一柳田ーマー守ーマーーマーーマー-v--v-守害事~:~;;=;=;マー;マー+
マーーマ一一マーマ divacancy 1000 2000 3000 ILLUMINATION TIME (min) 4000 ~65
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(b) (ι) 300 0 50 図 2. 2 光照射時間対トラップ濃度 図2. 1水素イオン注入後のDLTS信号。(a)光照 射無し、(b)光照射1380分、 (c)光照射3900分高ドーズ水素イオン注入シリコンの物性とそのSOI製作への応用
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1000 2000 3000 ILLUMINATION TIME (min) 4000 図2.3光照射によるトラップ濃度変化量 よる濃度変化量を光照射時間に対して示した。その 変化過程は1次オーダの反応で表されることがわか った。反応時定数は各トラップともほぼ同じで、約85 O分であった。さらに、 A中心の減少量はH1の増加量 と、また複空孔の減少量はH2の増加量とほぼ一致し ていることがわかる。 以上の結果は空孔関連欠陥であるA中IL,'と複空孔 は光照射とともに減少し、それに対して水素関連欠陥 であるH1, H2は増加することを示している。空孔ー 燐複合体E中心もまt::.A中心、複空孔問機光照射で 減少すべきと考えられる。従って、E中心の光照射に よる増加は、E
中心、荷電状態-1
の複空孔に近いエ ネルギー準位をもった水素関連欠陥の増加によるも のと考えられる。 図2.4に、光照射前と照射時間2000分の時の、 全トラップ濃度の深さ分布を示した。各トラップ濃度の 変化はあるものの、濃度だけではなくその分布にもほ とんど変化がないことがわかった。 これらの結果は、 H1はA中心一水素複合体、H2は 複空孔ー水素複合体である可能性を示している。光 照射中に、水素原子はイオン注入誘起欠陥と水素複 合体から解離されたと考えられる。光照射中の水素 の複合体からの解離は、再結合促進欠陥反応あるい は複合体の荷電状態変化により起きる欠陥の不安定 生により生じると考えられるが、検討が必要である。E
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量
出
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ト 1013 0 • : Omin A : 2000min 2 DEPTH (μm) 図2.4
光照射前と光照射2000分時の全トラップ濃 度の深さ分布 2. 4 まとめ 水素イオン注入n型シリコンにおいて、光照射による 空孔関連欠陥の減少と水素関連欠焔の増加が観測 された。水素関連欠陥H1はA中心ー水素複合体、H 2は複空孔ー水素複合体であることが示唆された。 3.浅いドナーの生成 3. 1 はじめに 水素は、シリコン中で最も重要な軽元素の一つであ る。水素の挙動、特に、浅いアクセプタとドナーの不 活性化について、熱心な研究がなされている8)刻。さ らに、水素が、いわゆる水素に関連した浅いドナーを シリコン中で形成することが報告されている。 水素に関連した浅いドナーの形成については、水 素イオン注入2)10)-12)、水素雰閉気中で成長したシ リコンの中性子変換ドーピング12)14)、10000C水素雰 囲気中で熱処理により水素を添加したシリコンへの電 子線照射15)16)と中性子変換ドーピング後に水素プラ ズマ処理を行った場合17)などのいくつかの報告があ る。これらの場合で、同じ種類のドナーが形成されて いるかどうかは,明らかではないが、水素に関連した 浅いドナーの形成温度は、3000Cから5000Cの温度範 囲である。しかしながら、四つの場合について、試料 中に格子欠陥が存在するといった共通の特徴がある。高ドーズ水素イオン注入シリコンの物性とそのSOI製作への応用・創刊号・平成11年 3 2
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一方、チヨクラルスキー(CZ)成長したシリコンに水素 プラズマ中で470.Cの熱処理を行うと、浅い酸素サー マルaドナー(STDs)が発生し、それらは、部分的に水 素で不活性化された酸素サーマル・ドナー(TDs)であ るということが報告されている川。 本章では、100keVで水素イオン注入を行ったn形シ リコンを100.Cから800.Cの温度範囲での熱処理によ る、浅いドナーの形成について調べる。キャリアの深 さ方向分布は、水素原子の分布と比較する。これらの 結果を、イオン注入による格子欠陥と関連づけ議論 する。 800 図3.1ゼロバイアス時の空乏層幅の熱処理による変 化。測定温度は90Kである。 に述べたように、大きなDLTS信号が観測されたとき、 キャリアの深さ分布は測定温度に依存することがわ かっている19).DLTSの測定結果は、別の機会に述 べる予定である。本論文では、キャリア密度の増加が 水素に関連した浅いドナーであり、サーマルドナーの 形成によるものでないことを明らかにするために、 400.C熱処理後の試料のDLTS波形を示す。 二次イオン質量分光(SIMS)分析を、水素イオンの 深さ分布を調べるために、Cameca社 製 IMS-4Fイオ ン・マイクロアナライザで14.5keVのCsイオンビームを 用い行った。水素の深さ分布を、90KでのC-V測定か ら求めたキャリアの深さ分布と比較した。 3. 3. 1 キャリアの深さ分布 図3.1は、水素イオン注入された試料の熱処理温度 に対する90Kでのゼロzバイアス時の空乏唐幅の、変 化の様子を示している。水素イオン注入を行う前の空 乏層幅は、約0.5μmである。イオン注入後、空乏層は 200 400 600 内mealingtemperature (OC) 3.3 実験結果と議論。
。
3. 2 実験手j順 本研究で用いた鼠料は、リン添加 n形 菌 方 位(100) CZ成長シリコンで、抵抗率は1Qcmから2Qcmの聞 のものである。100keVで水素イオンをシリコンウエー ハへドーズ量1x1 015cmすだけ室温で打ち込んだ。ドー ズレートは、2.5x1011cm-2s→である。熱処理は、窒素 雰囲気中で100.Cから800.Cの間で行った。 容量一電圧(C-V)特性を測定するために、ショット キイー接触を真空中で金を蒸着する事で作成した。容 量測定は、 Boonton社 製 72B容量計(測定周波数 1MHz)を用いて行った。本研究のように、高い密度の 欠陥を含む試料のC-Villl定からキャリア深さ分布を 求める場合には、注意が必要である19)。深い準位の 放出速度が測定周波数1MHzと竜圧掃引速度に追従 するのに充分大きいとき、C-V測定は見かけ上のキャ リア深さ分布を与える。本研究において、キャリアの 深さ分布を測定する際にできるだけ深い準位の影響 を避けるために、 C-V測定は90Kで行った。事実、イ オン注入後の試料などでは、室温のC-V測定から求 めたキャリアの深さ分布は室温でのilll定から求めた ものと異なる。幸いにも、水素に関連したドナーが形 成される熱処理温度では、深い欠陥密度の浅いドナ ー密度に対する比が減少しているので、illl定温度に 関わりなくキャリアの深さ分布は互いに一致する。そ のような試料ではC-V測定温度を30Kまで下(
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、キャ リアの深さ分布が30Kから300Kの測定温度範囲でほ ぼ同じであることを確認した。さらに、この結果は、既 に報告されているように水素関連ドナーが実際に浅 いドナーであることを示している。 方形波重み関数を用いた深い準伎の過渡分光法 (DLTS)6)ヲ)の予備的なi
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定を、作成したシヨトキイー ダイオード中の深い準位を観測するために行った。上高ドーズ水素イオン注入シリコンの物性とその801製作への応用
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2.4μmまで増加している。このことは、アクセプタ形の 欠陥が非常に多く導入されたことを示している。 ゼロEバイアス時の空乏層幅は、 1000Cから2500C の温度範囲の熱処理でイオン注入前の値まで回復し、 3000Cから4500Cの熱処理ではより小さくなっている。 1000Cから2500Cの範囲でのゼローバイアス時の空乏 層帽の減少は、水素に関連した浅いドナーの生成が 生じる温度は2500C付近であると報告がなされている 2) 1 0)-14)ので、水素によるイオン注入により導入され たアクセプタ形欠陥の不活性化が原因であると考えら れる。ゼロ,バイアス時のより小さな空乏層幅は、 3000Cから5000Cの範囲でリンドナー密度以上のドナ ーの存在を示している。そして、水素関連の浅いドナ ーの形成温度と矛盾していない。水素によるアクセプ タ形の欠陥の不活性化と水素に関連した浅いドナー の成長の両方が2000Cから2500Cの温度範囲で生じ ていると思われる。 5000Cから6000Cの温度範囲の熱処理において、ゼ ロ・バイアス時の空乏層幅は熱処理温度と共に増加 1017 1016 1015 14 ~ 10 E O --; 1016 0 U , _~
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1016 1015 1014 3000CI
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4000C ド している。これは、水素に関連した浅いドナーの消滅 に対応し、5500Cから6000Cの範囲の熱処理でイオン 注入前の値を超えている。このことは、水素イオン注 入により導入されたダメージが6000C以下の熱処理で はまだ存在していることを示している。ゼ口圃バイアス 時の空乏層幅6500Cから8000Cの範囲の熱処理温度 でイオン注入前の値にほぼ近い値になっている。この ことは、イオン注入ダメージのアニールを示している。 イオン注入前の試料に対して、キャリアの深さ分布 は平坦で、その値は、 1.5x1015cm-3である。水素イオ ン注入後300,350,400,450,500,5500Cの、熱処理後の キャリアの深さ分布は、図3.2に示しである。キャリア 密度の増加が3000Cの熱処理で観測され、そのピー クは、後で図3.31こ示すようなSIMS分析から明らかに なったこの実験でイオン打ち込みされた水素イオンの 投影飛程 (Rp)O司86μm付近であるoこのことは、以前 に報告されているように2)10)-12)、水素に関連した浅 いドナーが成長していることを示している。キャリア密 度の増加は、 Rpより浅い領域で見られることがわる。~l
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2 0 2 Depth (!-lm) 図3.2熱処理温度300、350、400、450、500、5500Cで のキャリア濃度の深さ分布102 寓ドーズ水素イオン注入シリコンの物性とその801製作への応用・創刊号圏平成11年 よ り 浅 い 領 域 で の キ ャ リ ア 密 度 の 増 加 は 、 350,400,4500Cの熱処理でより顕著である。一方、Rp 付近ではキャリア密度が減少しいる。このことは、こ の熱処理温度で月)1の種類の浅いドナーの成長が生じ ていることを示唆している。 以降、二種類の浅いドナーを、HS1とHS2とそれぞ れ呼ぶことにする。 HS1ドナーは、以前報告されてい る水素に関連した浅いドナーであり、それは、3000C 付近で形成され3500C付近の熱処理温度で消失し始 めると報告されている2)1 0)-12) 0 HS2ドナーは、3500C から4500Cの温度範囲の熱処理で、表面付近で成長 するドナーに対応する。しかしながら、何種類かの水 素に関連した浅いドナーがこの熱処理温度範囲付近 で形成されると報告されているけれども12)14)ー17、) HS2ドナーが水素に関連しているかど、うかは明らかで 1020 1019 1018 1017 1019
三
1018 0 5 1 7 長 10 出 よ コ 己 申 19 ~ 10 0 0 1018 1017 1019 1018 1017 1017 ない。この点については、SIMS分析の結果と関連づ け議論をする。 二種類の浅いドナーの間には、その成長温度の違 いの他に、密度分布の違いがある。図3.2に示すよう に、 HS2ドナーが成長している領域のキャリア密度の 深さ分布は、Rp付近に密度のピークを持つHS1ドナー に比べ、平坦である。 HS2ドナーのアニールは、4500C以上の熱処理で生 じる。5000Cの熱処理では、HS2ドナーの顕著な現象 が観測され、Rp付近の深さにピークを持つキャリア密 度の深さ分布が、より深い領域に現れる。この深さ分 布は、三つ自の浅いドナーの形成によるものかも知 れない。 5500Cの熱処理温度では、先に述べたように 1.1μmより深い領域が測定でき、キャリア密度はイオ ン注入前と閉じ密度で平坦である。。
2 0 2 D巴pth(μm) 図3.3注入後及び熱処理温度250、300、350、400、450、 500、5500Cで水素原子の深さ分布高ドーズ水素イオン注入シリコンの物性とその801製作への応用 103 3. 3. 2水素の深さ分布 図3.3は、イオン注入後とその後!こ2500C、3000C、 3500C、4000C、4500C、5000C、5500Cの熱処理を行っ た試料の水素の深さ分布を示している。2000Cまでの 熱処理では、水素の深さ分布に顕著な変化は観測さ れない。表面へ向けての拡散は、2500Cから明らかに 観測され始め、3500Cの熱処理まで観測されている。 水素の深さ分布が、 3500C、4000C、450DCの熱処 理温度でほとんど同じであることは、注目すべきこと である。Rpよりわずかに浅い領域には、水素のイオン 注 入 に よ り 導 入 さ れ た 高 密 度 の 欠 陥 が あ る16)。 350DCから450DCの温度範囲での熱処理で水素の深 さ分布が顕著な変化を示さないことは、水素は250DC の熱処理で表面へ向けて拡散をし始めるので、水素 原子をイオン注入で導入された欠陥が捕らえることで 拡散を抑えたためであると考えられる。この現象が、 水素原子とイオン注入により導入された欠陥との復合 欠陥を生じる。その欠陥は、 350DCから450DCの温度 範囲の熱処理ではアニールされず安定に存在する。 500DCの熱処理では、水素の外方拡散が再び始ま り、イオン注入された領域からのはっきりわかる量の 水素が減少している。550DCの熱処理では、わずかな 量の水素が残っている。7500C以上の温度の熱処理 では、水素密度は本実験で用いたSIMSの検出感度 (約1018cm-3)以下である。 3. 3. 3 キャリアの深さ分布と水素の分布との比較 既(こ3.1で述べたように、HS1ドナーはその成長温度 を考慮すると、既に報告されている水素に関連した浅 いドナーである2)10)-12)0 HS1ドナーの深さ分布は、 図3.2、図3.3に示したような水素の深さ分布と矛盾し ない。 HSlドナーは比較的低温で成長し、水素原子と イオン注入で、導入された欠陥との問の短い距離の聞 の相互作用を通して形成されるようである。このこと が、HSlドナーをRpの周りの狭い範囲だけに閉じこめ ている。 HS2ドナーは、 HSlドナーに比べてより高い熱処理 温度で形成される。HS2ドナーの成長領域は、表面側 へ広がっている。HS2ド、ナーが観測される熱処理温度 範囲は、図3.2と図3.3で示したように、より低温で水素 の拡散が始まっているにもかかわらず水素の深さ分 布が顕著な変化を示さない温度範囲によい一致を示 している。図3.2で示したように、イオン注入で導入さ れた欠陥は、拡散している水素原子をとらえると思わ れる。このことは、350DCから450DCの熱処理温度範 囲で安定な複合欠陥の形成を生じる。この水素原子 とイオン注入により導入された欠陥を含む複合欠陥 は、HS2に対応している。つまり、 HS2ドナーは、水素 に関連した浅いドナーと仮に同定する。HS2ドナーは、 500DCの熱処理で消滅し始める。その時、水素は図 3.3に示すように、再び外方拡散をし始める。このこと は、水素原子は複合欠陥から解放され、表面へ向け て鉱散することを示す。これは、HS2が水素に関連し た浅いド、ナーで、あるといった考えを、再び支持する。 キャリアと水素密度の熱処理に対する挙動は、 3500Cから450DCの聞の熱処理温度において表函付 近では一致しているけれども、 Rp付近での深さ分布 に違いがある。多量の水素がまだ残っているにもか かわらず、HSlドナーがアニールされた後Rp付近にお いて、 HS2ドナーの生成は観測されない。水素深さ分 布が変化していないことを考慮すると、よく似た熱処 理挙動を示す少なくとも2種類の水素原子とイオン注 入により導入された欠陥を含む複合欠陥があるかも しれない。一つはドナーとして働き、残りのものは電気 的に不活性であると思われる。実験結果は、ドナーと して働く複合欠陥、つまり、HS2の表面付近での生成 を示している。このことは、電気的な活性度は複合欠 陥の中の水素原子と欠陥の数で決定される可能性を 示しているようである。水素原子の数について、この ことは、図3.2と図3.3で示したように、水素密度はHS2 ドナーやHSlドナーよりもまた2桁か3桁大きいという 事実によって支持されるかもしれない。ほとんどの水 素原子は水素に関連した浅いドナーの形成に関与し ないけれども、水素原子の一部は欠陥との複合欠陥 に電気的な活性度を与えるために必要なのかもしれ ない。 酸素サーマルEドナー(TDs)は、HS2ドナーが形成さ れる熱処理温度範囲で形成されることがよく知られて いる20)0 HS2ドナーがTDsに対応していないかという 疑問がまだ残っている。さらに、TDsの生成は水素原 子によって促進されるという報告がある21)0DLTS測 定を、この点を明らかにするために行った。図3.4は、 水素イオン注入後4000Cの熱処理を行った試料の時 定数9.6msでのDLTS測定波形である。DLTS測定は、 HS2ドナーが観測された0.2μmから0.7μmの深さ領 域で行った。この実験に用いたDLTS時定数では、 TDsl二対応するDLTS信号のピークは60K付近に観測 されるはずである22)。幅の広いDLTS信号が60K付
104 高ドーズ水素イオン注入シリコンの物性とその801製作への応用・創刊号‘平成1j年 40 30 E ミP
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20 40 60 80 100 120 140 Temperature (K) 図3.4 4000C熱処理後のDLTS信号 近で観測されており、その信号強度は小さい。 102Kに 観測されるDLTS信号でさえJ心yクグラウンドの浅いド ナー密度に比べたった2x10-'の比しかないことは注 目すべき点です。TDsのキャリア密度深さ分布への寄 与は無視できることが結論づけられます。しかしなが ら、 HS2ドナーが水素を含んだ浅い酸素サーマル・ド ナー(STDs)に対応している可能性がある12)OSTDs のエネルギー準位は非常に低いので、HS2とSTDsと の関係を明らかにするためには、DLTS以外の実験を 行わなければならない。 い〈つかの研究者は、熱処理温度に依存して、いく つかの種類の水素に関連した浅いドナーが導入され ると主張している12)14)ー17)0 Markevichらは、遠赤外 吸収測定を用いて、電子線照射したCZSi!こ水素を飽 和させた試料で、水素に関連した浅いドナーの変化を 調べた15)16)。彼らは、水素に関連したD1,D2,D3と名 付けた三種類の浅いドナーの導入を報告しており、そ れらは生成と消滅の温度がそれぞれ、 2500Cから 4250C、3500Cから6000C、4250Cから6000Cである。D1 とD2が観測された熱処理温度は、HS1とHS2が観測 された温度にそれぞれよい対応をしている。3.1で示し たように、500度の熱処理でRp付近に三つ自の浅いド ナーがある。 Rp付近の領域にはかなり高い濃度の水 素が残っているので、このドナー(HS3)もまた水素に 関連している可能性はある。観測されたHS3のアニー ル温度は、D3で観測された温度範囲内である。この ことは、HS3ドナーがD3と名付けられた水素に関連し た浅いドナーに対応していることを示す。 D2,D2,D3は、フローティング(FZ)成長シリコン中で 観測される水索、酸素、空孔を含む複合欠陥であると 報告されている河)16))。その報告では、水素に関連し た浅いドナーは観測されていない。しかしながら、水 素に関連した浅いドナーの成長が、水素をイオン注入 したFZとエピタキシャル飼シリコン10)-12)、中性子変 換注入されたFZシリコンに水素が含まれた試料で観 測されている12)14)17)。水素を導入方法の違いによっ て、水素に関連した浅いドナーの複合欠陥の構造に 何らかの違いがあるのかもしれない。本実験の水素 をイオン注入したシリコン中で観測された水素に関連 した浅いドナーは、水素を添加した電子線照射シリコ ンで観測されたものと対応するとここで示されている が、水素に関連した浅いドナーのより詳細な理解を得 るために、さらなる研究が必要である。 3. 4 まとめ 水素イオン注入されたn形シリコン中の浅いドナー の生成について、製作したショットキイーダイオードのC
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測定とSIMS分析を通して調べた。キャリアと水素 の深さ分布の聞で比較を行った。 二種類の浅いドナー(HS1ドナー,HS2ドナー)の成長 と消滅が、それぞれ3000Cと4000C付近で観測された。 HS1ドナーは、水素に関連していることが示された。 表面付近のキャリアと水素の熱処理に対する挙動か ら、HS2ドナーも水素に関連したドナーと仮に同定した。 ここに示した水素をイオン注入したn形シリコンのアニ ール温度の範囲と、既に報告されている電子線照射 され水素で飽和されたn形シリコンのものとの聞で、類 似が見られた。 4. TEMによる欠陥観察 4. 1はじめに 浮遊容量の減少,絶縁物分離による完全素子分離 等の特徴を持つSOIウエハの形成法には,酸素イオン 注入法,張り合わせ法など数種の技術が開発されて いるが,電気特性,省資源等の観点から望ましくない など問題点があった。 これらの問題を克服しうる技術として水素イオン注入 を用いる手法が1995年に提案された23.24)。この手法 の最大のポイントはアニール時に高ドーズ水素イオン寓ドーズ水素イオン注入シリコンの物性とその501鍛作への応用 図4.1XTEMによる観察した結晶欠陥(ドーズ、:1.0x1017) 図4.2 XTEM像(ドーズ量:8.0x1016) 図4. 3 4750C加熱後のXTEM像
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高ドーズ水素イオン注入シリコンの物性とその801製作への応用・創刊号・平成11年 注入層において膜厚均一に剥離現象が発現すること である.本手法は現在産業応用の面で急速に開発が 開始され,作成プロセスおよび作成後の損傷程度な ど,実用化への開発研究は盛んである,しかし本手 法に用いられる技術には未解明の基礎的物理現象 が多く残されている,たとえば,水素イオンがある注 入量以上注入された層が加熱等の条件によって剥離 を起こすことは既知であるが『そのメカニズムは明ら かになっていないE またイオン注入により生ずる結品 欠陥の様子が注入量により大きく異なること温度に よる欠陥の変化など興味深く未解明な現象が多く存 在する目 ここではこの剥離のメカニズムを解明するため行なっ た実験結果の中から,最)1離発現前後の結晶欠陥が持 つ各種物理特性の変化について述べる. 4. 2実験方法 試料としてシリコン単結晶基板に水素イオンを8,Ox10 16~ 1 ,Ox 1017 atoms/cm2注入を行ったものを使用した 表面層剥離のメカニズムを解明するために,加熱前 および加熱後(350oC~ 47 50C)の試料を準備した. 分析手法として透過型電子顕微鏡を用いた断面観察 (XTEM)を行なった,また結晶欠陥を原子レベルで観 察する高分解能観察も行った.これによりイオン注入 における欠陥種類・分布・量・方向を分析,クラックの 発現を観察した, XTEMと並行し, 2次イオン質量分析 (8IM8)を行ない断面における水素分布状態の分析 を行なった.シリコンと水素の結合状態の分析にはフ ーリェ変換遠赤外線分光器(
F
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I
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)
を用いたI 4. 3結果及び検討 図4.1にイオン注入量1,Ox1 017atoms/ cm2による欠 陥層のXTEM観察結果を示す.この欠陥層の深さは 飛程距離の計算値(Rp)と一致する,欠陥層近辺に存 在する結晶欠陥は大きく以下の4種に分類することが できる:(1)Rp近傍に表苗と平行して存在するく100>プ レートレット, (2)Rp部とそのやや深部域に分布する く111>プレートレツト, (3)Rp近傍とその浅い領域にか けて広く分布する点型欠陥(4)Rpの深部に点在する転 位 ル ー プ 状 欠 陥 図4色 2に 注 入 量 を8,Ox1016 atoms/ cm2へ減少させた誌料の観察結果を示すそ れぞれの欠陥の数は大きく減少し,特に深い領域に 存在する転位ループ状大型欠陥は消滅した.つぎに 8.0x1016 atoms/ cm2注入された試料を3750Cおよび 0.0 図4,4SIMS
による水素密度分布 ね 的 γ J J γ iuh ド 九 円 J H 4 i h ι u l as 1.1. 2400 FTIR results wuve1ength[cm.IJ 1700 函4
,5 F
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H
結合状態 4750CIこ加熱後観察を行なった3750C加熱後,Rplこ位 置するく100>プレートレットは膨張しクラックへと変化 したそして図4,3に示すように4750C加熱の後く111> プレートレットは消滅した. SIMSを用いて断面方向の水素濃度分布の測定を行 った水素密度の高い領域の深さは,結晶欠陥の多い 領域と一致している.図4.4に示すイオン注入直後 の水素密度分布と4000C加熱後の水素密度分布を比 較するとz加熱により水素密度のピーク値は減少する がピーク付近の高密度領域は表面方向に向かって広 がっている.イオン注入直後, 3000C加熱後そして 4750C加 熱 後 のF丁目分析結果を図4,5に示す 2070[cm-1]付近での値の大きさはSi2-H6結合の大き さをあらわす.加熱によりこの結合が減少していく様子 はく111>プレートレットの減少の様子と一致するこの ことからく111>プレートレットはSi2H6結合を含んでい ることがわかる高ドーズ水素イオン注入シリコンの物性とその801製作への応用 107 4. 4まとめ XTEMにより 4種の欠陥(転位ループ型,点欠陥型, く100>プレートレット,く 111>プレートレット)が観察さ れた.そのうち転位ループ型欠陥はドーズ量を Bx1016 に減らすことにより消滅した加熱によりく 111>プレート レツトは消滅した SIMS結果から結晶欠陥が存夜す る領域と水素濃度が高い領域が一致することがわか った. FTIRの結果からく 111>プレートレットの存在と Si
,
H6結合を関連づけることができた. 室主主iIi~1) A. Mogro-Camepero, R.P. Love, M. F. Chang and
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