Title 高電導性部分酸化クラスター錯体( はしがき ) Author(s) 川村, 尚 Report No. 平成10年度-平成12年度年度科学研究費補助金 (基盤研究(B)(2) 課題番号10554038) 研究成果報告書 Issue Date 2000 Type 研究報告書 Version URL http://hdl.handle.net/20.500.12099/455 ※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。
はしがき 遷移金属クラスター錯体とは、金属原子間化学結合をもつ多核錯体であるが、このよう な錯体は一般に-電子酸化・-電子還元が容易であり、その結果生じる開穀電子構造をも つ錯体(多くの場合、このような錯体はイオンラジカルである)には安定なものが多く、 そのフロンティア軌道は金属原子間結合上に分布している。このような開穀電子構造をも t つ分子のフロンティア軌道を分子の外周部にまで非局在化させた上で、そのような分子の 集合系を構築し、集合系内の全分子のフロンティア軌道を互いに相互作用させると、電導 性や磁性などの物性面で興味深い振る舞いの発現が期待される。本冊子はこのような観点 ・ゝ - ■・・■・一一ご ・・パl・・●∴- -・_-デ了∴.・ -→ から、比較的簡単で基本的な分子構造をもつクラスター錯体の集合系構築法の開発、クラ l、 スター錯体の幾何学的中心部に局在するフロンティア軌道を錯体外周部まで非局在化させl†
る方涜の開琴声試玖羊と汀レて新しいタイプの電導性物質を開発す皐ことを目指して進め
た研羞姦毒鮎、合わせ醸合系の磁性の解析と新規触媒反応開発を行。た成果を纏め
ち′ -‥ 蜃ノ ニ 、たものである。ち融あげた錯体は周期律表で後周期甲4d,叫適移金属申子からなるもの
である。4d,5d遷移金属原子を選択したのは、これら金属原子の化学結合が3d金属原
ハ ーー 1√ f子の結合よりも共有琴合的である1非局在化レやすい)と期待され、卑属原子上のフロン
ティア軌道を配位子上に非局在化させることが容易であるとの期待に基づく。 まず、種やの架橋ならびに軸位配位子をもつロジウム複核錯体とそのカチオンラジカル 塩単臥X線単結晶構造解析を行い、既に報告されている類似錯体の碍準と比較しつ?、▲ 一電子酸化に伴う錯体の幾何構造変化を明らかにし、取りまとめた。一方、生成カチオン ラジカルの電子スピン共鳴スペク1トルの解析に基づいて、錯体のフロンティア軌道の形の 配位子依存性を明らかにし、更に、密度帆関数法に基づく量子化学計算も進め、実験時果 の詳細にわたる理論解析を進めた。その結果、ロジウム複核錯体のフロンティア軌道は架橋ならびに軸位の両配位子に依存して変化し、配位子を選ぶことによって、(り錯体の
_1●フロンティア軌道を制御できること、(2)▲フロンティア軌道の制御の際に重要なのは配 位子のげ供与性のみならず、花供与性も同程度に重要な因子であること(3)配位子の依 存して変化するフロンティア軌道の形は、-電子酸化に伴う結合距離変化に基づいて帰属 可能であることが示された。 これらの結果を基に、花供与性の大きな芳香族架橋配位子をもつ新規ロジウムクラスタ 錯体【円12(hq)4Py](Hhq=2-quino(inoI;Py=Pyridine;図1a参照)とそのカチオンラ ジカルを合成単離し、そのフロンティア軌道を調べた。1日NMRにおける常磁性シフトに I 基づいて、カチオンラジカルの不対電子は金属原子間∂★軌道を占め、この不対電子が、 金属原子・芳香族配位子間の∂・花相互作用によリ4つの芳香族配位子それぞれの上に9%
図1・(a)[RT12(hq)4Py)錯体と
(b)∂・相互推用l主よるフロンティア軌道非局在化の概念図
ずつ、計36%沸点在化することが示された。この結果は∂・ガ相互作用が定量的に評価さ れた初めての例である。また、この結果は金廃土のフロンティア軌道を錯体外周部の配位 子花系上Iご非局在化させ、錯体外部に有効に鹿出させることが出来たことを示しているて図 1b参照)。 一 国1bに示されるようなフロンティナ軌道をもつカチオンラジカル錯体の塩の結晶のX 線構造解析の結果、新たに合成した4つの塩全二てにおいて、芳香族架梧配位子叫の分子間読スタック配置が確醸された。'・この結果は、`結晶において芳香族架橋配位子の汀スタ
ックを通して各錯体分子のフ自ンティア軌道が互いに相互作用することを示唆している(図2参照)。得られた結晶における錯体のフロンティア軌道聞相互作用は磁化率の解析 ヰ t- 孝 一 ぎ ■ から示された。すなわち、スピン密度の高い芳香族配位子炭素虚子同士が分子間で近接し 雪 J ているときのみ、ラジカル間に反磁性相互作用の働くことが、4つのラジカル塩の磁化率 の相互比較から明らかとなった。しかしながら、これら甲塩め室温電導度(ペレット)は 10 8scm●1程度と小さく、電導度の低い半導体であった。この結果は、非整数酸化状態 を作らない限り、高い電導性の発現を望めないことを示している。
ヨー素ドープなど嘩々な方法牢試みたが電導度の上昇を図ることが出束なかったが、こ
のカチオンラジカル塩とその中性錯体【Rh2(hq).py]の機械的混合を試みたところ、電導度の103-104倍といぅ大きな増加が見られた。機榊勺混合により化学的・物理的に何
が起こったのかをX繰回折、E;R磁化率温度変化から調べた。機械的混合物の粉末X線 _5_回折は中性錯体とカチオンラジカル塩の両結晶それぞれの回折昭和になっていて、混合に よって新しい相が生じたのではないことが示された。また磁化率温度変化はキューリ則に 従いパウリ常磁性には従わず、電導が金属電導ではないことが示された。一方で、混合物 のESRは等方的な1本の共鳴線を与え、電導性が界面だけの現象ではなく、カチオンラ ジカル不対電子の全てが混合物全体の複核錯体分子の全てにわたって速い速度で移動して いることが示された。これらの結果は、中性錯体結晶とめ機械的混合がカチオンラジカル■ 套 塩結晶に対する電子ドープをもたらし、絵果として非垂致酸化状恕が創り出され電子の
ラジカル分子間ならびに微粒子間の転勤を可能にな?た結果(図3参照)、電導度の大き
_ ゝ l な上昇がもたらされたと解釈される。中性錯体結晶とq機械的混合がカチオンラジカル塩/=【Rh≡!hq・4P腑
y=[Rh2Pq}4Py・・:分子
図3.中性錯体、カチオンラジカル塩錯体両結晶の機械的混合物における電子、ドープと粒子聞ならびに粒子内分子間色車線動わ概念蘭。
ゝ【結晶に対する電子ドープをもたらすとの結果は少なくとも電導性金属錯体分野では初めて の例である。