Title
三次元有限要素法を用いた回転機の磁界解析のための並列
計算に関する研究( 内容の要旨(Summary) )
Author(s)
中野, 智仁
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(工学) 甲第438号
Issue Date
2013-03-25
Type
博士論文
Version
none
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/47937
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。41 -氏 名 ( 本 籍 ) 学 位 の 種 類 学 位 授 与 番 号 学 位 授 与 日 付 専 攻 学 位 論 文 題 目 学位論文審査委員 中 野 智 仁(愛知県) 博 士(工学) 甲第 438 号 平成 25 年 3 月 25 日 電子情報システム工学専攻 三次元有限要素法を用いた回転機の磁界解析のための並列計算に関する 研究
(Parallel computing of magnetic field analysis for rotating machines) (主 査)教 授 田 中 嘉津夫 (副 査)教 授 河 瀬 順 洋 准教授 山 口 忠 論 文 内 容 の 要 旨 国内で消費される電力のうち,その 50%以上が回転機によって消費されていると言われており,回転機の 効率向上は環境問題・エネルギー問題において避けることのできない課題のひとつであると言える。 回転機の研究開発では,近年の計算機の性能向上と数値解析技術の進歩に伴い,有限要素法等を用いた磁 界解析技術の有用性が認められるようになり,従来の試作・試行を中心とした研究開発に代わり広く取り入 れられるようになった。その結果,試作コストの削減や開発期間の短縮に大きく貢献している。 一方,磁界解析の普及に伴い,これまで解析が困難であった複雑かつ大規模な問題がその対象となるよう になったため,現在の計算機の性能をもってしても,計算時間が数週間から数ヶ月以上に及ぶ場合も珍しく なくなってきている。また,今後さらに計算機の性能が向上したとしても,それに応じて,あるいはそれを 上回る勢いで,解析対象となる問題が高度化し,要求される計算時間および主記憶容量が増大することは想 像に難くなく,磁界解析技術は常に高速化・大規模化することが要求され続ける運命にある。 このような問題を解決する技術の一つとして,領域分割法に基づく並列計算手法が挙げられる。領域分割 法は,解析領域を複数の小領域に分割し,小領域ごとに計算機を割り当てて並列に計算を行う手法である。 この手法では,単独の計算機の性能が限られていても,計算機の台数を増やすことで高速化を実現できる。 また,主記憶容量の観点から一台の計算機では解析が困難な大規模な問題に対しても,計算機の台数を増や すことで対応できる。しかしながら,本研究の開始時には,回転機の磁界解析に上記の手法が適用された例 は報告されていなかった。そこで本研究では,回転機の磁界解析に適した領域分割法による並列計算手法を 提案し,計算の高速化・大規模化の実現を目指す。 本研究の目的は,回転機の磁界解析のための領域分割法に基づく並列計算手法を開発し,計算の高速化・ 大規模化を達成することである。このために,磁界解析で広く用いられている辺要素有限要素法に適した領 域分割法を開発し,さらに回転機の解析に必要となる手法(電圧方程式との連立,回転子の回転に伴うメッ シュの修正等)に開発した手法を対応させる。また,開発した手法を用いて PC クラスタおよびスーパーコン ピュータ上で回転機の実用的な解析を行い,その有用性を検証する。 論文審査結果の要旨 本論文では,回転機の磁界解析を高速化・大規模化するために,領域分割法を用いて三次元辺要素有 限要素法を並列化する手法を提案した。また,PC クラスタおよびスーパーコンピュータ上で,提案手 法を用いて回転機の実用的な解析を行い,その有用性を検討した。本研究で得られた成果を要約すると 以下のようになる。 (1)数値解析手法の一つである有限要素法を用いて,マクスウェルの電磁方程式から得られる基礎方 程式をもとに,三次元非線形解析を行うための離散化・定式化について示した。また,鉄などの磁性体 の磁界に対する非線形性を考慮する方法として,ニュートン・ラフソン法による非線形解析手法を示し た。さらに,磁界の基礎方程式と回路方程式とを連立させた解析手法,回転機の要素分割図作成法につ いて示した。 (2)領域分割法を用いて磁界解析を並列化する方法について述べた。辺要素有限要素法のための領域 分割法を提案し,オーバーラップ要素に含まれる辺・節点上のポテンシャルを通信することによって領 域全体のポテンシャルを計算できることを示した。また,周期境界条件を有する解析領域,電圧方程式 との連成,および回転子の回転に伴うメッシュの修正を,領域分割法による並列計算の中でどのように
42 -扱うかについて述べた。 (3)PC クラスタを用いて IPM モータの磁界解析を行い,並列計算手法の有用性を検討した。CPU 数が 増えると通信量が増加するため,並列化効率が低下することが分かった。また,要素数が大きいほど, ポテンシャルを通信する辺の割合が低下するため,並列化効率が向上することが分かった。8 台の PC で並列計算した場合には約 85%,16 台の PC で並列計算した場合には約 69%の並列化効率が得られてお り,並列計算の有用性が確認できた。 (4)海洋研究開発機構が所有するベクトル型スーパーコンピュータ「地球シミュレータ」を用いて IPM モータの磁界解析を行い,並列計算手法の有用性を検討した。地球シミュレータで採用されている ベクトルプロセッサ上で効率よく計算するために,行列の格納方式として DJDS 方式を,CG 法の前処理 として対角スケーリングを採用した。CPU 数が増加するにしたがい,全計算量に対する通信量の割合が 大きくなるため,並列化効率が低下することが分かった。また,同じ CPU 数による計算では,未知数が 多いほど並列化効率が高くなることが分かった。1 台の PC では約 310 日を要する計算を, 8 ノード (64CPU)用いて約 58 時間で完了させることができた。 以上,本論文は回転機の磁界解析のための並列計算手法を提案し,実用的な回転機の磁界解析を通し て提案手法の有用性を示したものであり,学術上,実際上寄与することが少なくない。また,本論文の 主たる部分は査読付き論文として発表されている。以上から,本論文は博士(工学)の学術論文として 価値あるものと認める。 最終試験結果の要旨 公聴会後に,学位論文に関する口頭質問を行い,これを最終試験に代え,合格と判定した。