アミノ酸を用いた両親媒性分子からなる接着分子の
構築と機能性因子の探索
著者 波多江 真二 学位授与大学 東洋大学 取得学位 博士 学位の分野 工学 報告番号 甲第216号 学位授与年月日 2008-03-25 URL http://id.nii.ac.jp/1060/00003957/ Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja一7︾ 〆 ウ 士 ti 、︸° ピ e チ 一 .・; ︵ 晶 f P ’ ← . = ■
アミノ酸を用いた両親媒性分子からなる
接着分子の構築と機能性因子の探索
東洋大学 工学研究科 応用化学専攻
目次) 第1章 序論 1.1 1.2 1.3 1.4 接着の理論 天然の接着剤 研究構想と総括 参考文献
46
1711
第2章 イガイ接着タンパク質と絹様物質からなる接着タンパク質の 遺伝子組換え法による合成と接着能評価 2.1 繊維タンパク質 2.2 研究の背景 2.3 合成 2.3.1コンピテント細胞の作製 2.3.2クロ・一一一一一ニングベクターへのサンプルDNAの導入 2.3.3サンプルDNAの重合 2.3.4発現ベクターへのサンプルDNA重合体の挿入 2.3.5タンパク質の発現 2.3.6発現タンパク質の精製 2.3.7臭化シアン処理によるHis−tagの除去2.4.5紫外可視吸光分析によるチロシナーゼ反応活性測定 2.4.6表面張力と接触角による接着能評価 2.4.7赤外吸収スペクトル測定による2次構造解析 2.5 結果 2.5.1遺伝子組換え法による組換え実験 2.5.2タンパク質実験 2.5.3吸収スペクトル測定による接着機構と目視による色調の確認 2.5.4接着能評価 2.5.5タンパク質の構造解析 2.6 総括 2.7 参考文献 2.8 調製試薬 第3章 自己集合性分子を用いて構築した新規接着分子の合成と接着評価 3.1 自己集合性 3.2 研究の背景 3.3 合成 3.3.1N(’ −tert− Butoxycarbonyl・・」N“ −pyrenebutyricamide−lysineの合成 3.3.2 Nc’ −tert−Butoxycarbony1−Nε一pyrenebutyricamide−lysine一 礼hydroxy succinimide esterの合成 3.3.3 M−tert−Butoxycarbonyl−N㌧pyrenebutylamide−1ysine− 3,4−dihydroxyphenylalanineの合成 3.4分析 3.4.1核磁気共鳴分光計による分析 3.4.2走査型電子顕微鏡による形状観測 82
3.4.3液体クロマトグラフィーによる分子量測定 3.4.4光散乱測定による粒径測定 3.4.5蛍光分析によるミセル形状評価 3.4.6吸収スペクトル測定によるミセル形状評価 3.4.7接着能評価 3.5 結果 3.5.1水溶液中のBoc−Lys(pyr)−Dopaの自己集合性能評価 3.5.2水溶液中のBoc−Lys(pyr)−Dopaのミセル形状評価 35.3水溶液中のBoc−Lys(pyr)−Dopaの自己集合体表面形状の同定 3.5.4Boc−Lys(pyr)−Dopaの接着能評価 3.6 総括 3.7 参考文献 第4章 接着剤の高機能化を目的とした機能性因子の探索 4.1 研究の背景 4.2 分析 4.2.11H−NMR測定による金属錯体分析 4.2.2走査型電子顕微鏡による金属錯体形成による変化観測 4.2.3Boc−Lys(pyr)−Dopa一金属錯体の色調変化 4.2.4蛍光分析
−︵∠
4.5 参考文献 118 第5章 総括 5.1 5.2 研究の成果 展望 119 120 論文発表状況 学会発表状況 謝辞 122 123 125
第1章
序
訟
ロ冊1.1 接着の理論
私たちの生活の中で接着は快適に暮らすために大いに役立つ現象であ
る。ノリや木工用ボンド,漆,テープ剤,シール剤等が接着を利用した代
表的な物である。これらの物は,私たちの暮らしを快適にする上で必要不
可欠である。接着は生活を快適にするだけでなく,研究対象としても非常
に興味深い現象である。
接着とは2つの同種又は異種の固体が,「ある物質」を介して接合する
現象を表し,2つの固体をつなぐ「ある物質」を接着剤と呼んでいる。接
着剤とは固体表面の凹所を充たして平らな連続膜を作りそれによって表
面の全面的な接触を可能にする物質と定義されている。接着剤は幾つかの
条件を満たすことで接着という現象を起こしている。その条件は,第一に
容易に流動する物質,すなわち液体である。第二に,液体の状態で被着体
の表面を十分に濡らし覆い広がる。第三に,液体の状態ではそれ自体に強
度がないので,接着の効果を発揮するために,最終的に強いゲル,または
固体の状態に固化する。これらの条件を満たすことができる物質が接着剤
となる物質である。1970年代には多くの接着原理に関する仮説が提唱されたが,いずれも
数ある接着の事例を説明する内容でしかなかった。その中でも,近年まで
は吸着説が数ある仮説の中でも有力とされてきた1)。吸着説では,吸着に
は原子間力に基づく化学吸着(化学結合)と分子間力に基づく物理吸着(フ
ァンデルワールス結合)とがあり,物質はこれらの力によって固体表面に
吸着する。同様に,接着剤もこれらの力によって被着体表面に接着すると
している。しかし,現在は,様々な現象によって接着は成されているとの
認識があり,接着の原理はその接着剤の性質によって異なると考えられて
いる。接着という現象には,吸着説に見られる吸着による接着と機械的に
1
行われる接着,分子運動の影響による接着の3つがある2)。接着剤と固体
表面分子とが反応(共有結合)するのが最も結合力が高くなるが,物質表面
と反応によって結合するため,一般的にはあまり利用されていない。一般
的な化学合成接着剤には,吸着現象や機械的現象を利用していることが多
い。物理吸着に働く力は主にファンデルワールスカであり,3つの分力から
構i成されている。すなわち分散力,配向力,誘起力である。分散力は,化
学的な種類に関係なく働く力である。原子周囲にある電子は絶えず運動し
ているので,ある任意の瞬間を考えると,電子の瞬間的分布は常にかたよ
った状態にある。そのため双極子(磁石の+と一のように正の電荷と負の
電荷が存在する状態)を持たない非極性分子でも分極され,相互間に引き
合う力を生じる。分散力のエネルギーは共有結合のそれとは異なり平均エ
ネルギーは約1kcal/molに過ぎないが,接着においては十分な強さを持っ
ている。配向力は,二つの分極分子(極性分子)の永久双極子間に働く力で
ある。配向力は水素結合の場合大きな役割をする。誘起力は極性分子の永
久双極子とそれにより分極性分子に誘起される双極子との間に生ずる引
力である。分散力,配向力,誘起力は分子間の距離に依存し,分子間距離
が大きくなると急激に減少する性質がある。物理吸着は,主に分散力が働
くことで行われていると考えられている。
物理吸着における接着は,熱力学的に考えることが多いが,この熱力学
的概念は1869年にDupreによって導入された考え方である。熱力学では
固体 /∴ン∵二ぴ廷gs{ε・∵/∵’、三,’:’:∵:一:r∵∴㍉う三∵∴二・/、う γS=γSL+γLCOSθ γLCOSθ=γS一γSL COSθ=(γS一γSL)/γL Wa=γs十’Y LM Y SL Wa=γL(1十cosθ) _(1) _(2) _(3) _(4) _(5) Young式 Dupre式 Young−Dupre式 γSL:固体一液体界面張力 γv :固体表面張力 γL:液体表面張力 Wa:接着仕事率(1cm2の固体液体界面を離すのに必要なエネルギー)
Figure 1−1.熱力学的な接着能力評価法であるYoung−Dupre式
3Dupre式が表しているのは,自由エネルギーの変化である。相1と相2
とが付着した状態における界面エネルギーをYSLで表し,その接着面を引
き離すことで新しい相1と相2の表面が現われる。Dupreはこのときの自
由エネルギー変化量を接着仕事率としている。Young式は固体表面と液体
表面(液滴の表面)が形成する角度(接触角)を液体表面張力,固体表面エネ
ルギー,液体と固体の界面エネルギーの3つのエネルギーの関係を表して
いる。接着力の熱力学的評価において,一般的に用いられている
Young−Dupre式は,エネルギー変化から接着力を求めるDupre式に,液体
表面エネルギー(表面張力)と液体と固体の接触角の関係を表すYoung式
を導入することで,液体表面張力と接触角から,接着仕事率を算出する式
となっている。Young・・Dupre式から,接着仕事率(接着力)は接触角を小さくし,表面張力を高くすることで接着力が強くなることがわかる。
熱力学的評価法は,zisman3)によって臨界表面張力を導入した計算方法
へと進展し,その後Fowkes4)やOwens5)により分散力と極性力成分,さら
に水素結合力が北崎,畑6)によって導入され,より詳細な算出法へと進展
している。しかし,多くの場合,複雑なファクターを導入せず,熱力学的
評価法の基本となる表面エネルギーと接触角の関係から接着力を導く
Young−Dupre式が使われている7)。これは,複雑なファクターを導入する
よりも古典的な方法の方が,様々な条件下で行われた評価データを比較検
討する際に有効であるのがその理由である。
機械的な接着とは,液体が物質表面の凹凸に入り込み固化することで錨
を下ろすような効果によって接着する「投錨効果」と呼ばれる接着である。
木材を固定する。しかし,木工用ボンドの様な接着剤は,プラスチックや
金属など表面に凹凸が少ない固体への接着力は低い場合が多い。その反面,
接着剤自体の破断強度が強い(伸びが良い,又は非常に堅く強靭である)接
着剤が多い。分子運動による接着は同化効果,又は自着と言われている。自着による
接着は,ガラスやゴム,ガラス転移点の低いポリマーに見られる。自着は,
分子運動により,分子鎖が固体間で移動し,一つの固体を形成するため,
接着強度はその材質の破断強度に近い値となる。しかし,自着がおこる条
件は限られており一般的な接着剤には用いられることは無い。自着現象は,
分子運動による拡散であるため,非常に時間がかかる現象である。
接着は様々な相互作用や物理的性質によって,高い接着力を生み出して
いる8)。zismanは熱力学的な理論を基に,接着の最適条件を次のように
述べている。1)液状接着剤と被着体間の接触角をできるだけ小さくするようにし,応
力の集中を最小にして表面の濡れを増大する。
2)表面はできるだけ平滑で,低エネルギー物質やほこりを除き気泡や空
隙の発生を防ぐ。
3)接着剤の粘度はできるだけ低くし,気孔や割れ目への流入を容易にす
る。
4)接触角が小さく,そしてできるだけ表面張力の大きい接着剤を使用す
る。
5)被着体の表面を粗面にする必要がある場合には,表面に形成される気
孔が同一平面に並ばないようにする。
5この5項目の内3項目が接着剤自体の最適条件である。この理論から理
想的な接着剤とは粘度が低く,表面張力が高くて,接着される固体(被着
体)と高い親和性を持ち,被着体表面を均一に覆う(接触角が低くなる)物
質と言える。この条件を満たす接着分子を構築することが出来れば,優れ
1.2 天然の接着剤
自然界には,優れた接着剤を作り出す能力を持った生物が数多く存在し
ている9)。その生物達は,作り出した接着剤を巧みに利用することで,自
然界の過酷な環境下で繁栄している。代表的な生物として,フジツボ
(Ba la nus per fo ra tus)やゴカイ(Nereis/aρonica),ムラサキイガイ(ルlytilus edulis),多毛類(Ph eragma top oma californica),肝吸虫(Fa・sio/a h epa tica)等がおり,それらの研究報告がある10)。貝類にはMytilus edulis以外にも,
カシュウガイ(Mytilus californianus)や,ヒバリガイ(Geukensia demmidsa), マゼランイガイ(Aula comya ater)等が作り出す接着剤が研究されており,その多くがタンパク質で構成されていることが明らかになっている。貝類
が作り出すタンパク質接着剤(接着タンパク質)は,その研究テーマとして
付着阻害の研究を中心に行われて来た。その研究から,接着タンパク質に
はその能力を効率よく発揮するために,機能中枢となる規則的なアミノ酸
配列(繰り返しアミノ酸配列)を有しているものが多いことが明らかにな
っている。報告されている接着タンパク質のアミノ酸配列11)をTable 1−1
に示した。Table 1−1にまとめたのは,繰り返し配列が知られている接着
タンパク質である。フジツボ(Balanus pθrforatus)は繰り返し配列の報告がないためN末端側の一部の配列を示した。
7Table 1−1接着タンパク質を作る生物と接着タンパク質の繰り返しアミノ酸配列 生物名(学術名) 繰り返しアミノ酸配列 Dopa含有型接着タンパク質 ムラサキイガイ(ルァ加sθdα1Zs) カシュウガイ(ルllytilus calif()rnianus) ヒバリガイ(Oeukensia demmldsa) マゼランイガイ(/inlacomya a ter? 多毛類(Pheragmatoρoma californica) 肝吸虫(、Fa siola heρa tica) Dopa非含有型接着タンパク質 フジツボ(Ba lanus perf()ra・tUS)* Ala−Lys−Pro−Ser−Tyr−Hyp・・Hyp−Thr−Dopa−Lys Hyp−Lysl・Lys−Y−Thr−Dopa−Hyp−Hyp−Thr−Dopa−Lys X−Thr−Gly−Dopa−Y−Z−Gly−Dopa−Lys Ala−Gly−Dopa−Gly−Gly−Y−Lys Val・・Gly・・Gly−Dopa−Gly−Dopa−Gly−Ala−Lys Gly−Gly−Gly−Dopa−Asp−Ser−Dopa−Gly−Lys NH2−Thr−Tyr−Phe−Pro−Val−Leu−Ser−Tyr−Gly−Cys Ser−Ser−Ser−Leu・・Na−Pro−Val−lso・・ X:アミド Y:疎水性アミノ酸 Z:イミノ酸 *フジツボの接着タンパク質は規則的な繰り返し配列が決定されていないためN末端側の アミノ酸配列を掲載した。
淡水系生物は肝吸虫のみで,多毛類は淡水から海水,残りの生物は海水
系生物である。興味深いことに,淡水系の生物が作り出す接着タンパク質
の方が海水系の接着タンパク質よりもグリシン(Gly)を多く含んでいる。
アミノ酸組成の違いからも,生物は周りの環境に合わせて接着剤を作り出
していることが伺える。淡水系では塩分などが少なく,塩析効果等の凝集
作用が少ない。そのため,淡水系の生物が作り出す接着タンパク質は,凝
集しやすいアミノ酸組成から成っていると考えられる。Glyを多く含むタ
ンパク質にシルクタンパク質があるが,シルクタンパク質は構造変化によ
る高い凝集性を有している12)。淡水系接着タンパク質にはシルクタンパ
ク質の凝集に近い機構で固体形成を容易にしている可能性が考えられる。
Table 1−1上でヒドロキシプロリン(Hyp)はプロリン(Pro)の転換体であ るtrans−2,3又はcis−3,4−dihydroxyprolineや4−hydroxyproline13)を表してお り,ドーパ(Dopa)はチロシン(Tyr)の転換体で3,4−dihydroxyphenylalanine’‘)を表している。Hypはコラーゲンにも存在するアミノ酸である15)。 Dopa
は脳神経物質でるドーパミンの前駆体としても知られている。これまでの
研究で,このDopaがこれらの接着タンパク質が接着能力の機能性因子で
あることが明らかにされている16)。他にも,アミノ酸配列が明らかにな
っている接着タンパク質があり,その中には,Dopaを含まない接着タン
パク質も存在する。Dopaを持たない接着タンパク質はシステイン(Cys)に
よるS−S架橋を機能性因子として用いている。このような接着タンパク質
を作る代表的な生産生物としては,フジツボがあげられる。しかし,フジ
ツボの接着タンパク質のアミノ酸配列からは繰り返し配列が見つかって
いない。接着力は,最大でフジツボ(Ba la nus perfora tus)の1,140 kgf/cm2 であるのに対して,ムラサキイガイ(Mytilus edulis)が作り出す接着タンパク質の接着力は200∼2,000kgf/cm2であり,平均値としては共に優れてい
るが,繰り返しアミノ酸配列を有する点で,Mytilusθdulisの作り出す接
9
着タンパク質の方が接着剤として応用し易い。
Figure l−2にルlytilus edu/isの足糸構i造17)と接着タンパク質のアミノ酸 配列(mefp−1)を示した。 Mytilus edulisの足糸は複数のタンパク質によって 構成されている。足糸の骨格となる繊維タンパク質(pre Co1−D)と面盤タンパク質(mefp−2)の周りをmefp−1が覆っている。mefp−1中のProは全体の約
10%がtrans−2,3一またはcis−3,4−dihydroxyprolineに,約20%が
4−hydroxyprolineに変換され13), Tyrは約10∼15%がDopaへと転換されて
いる17)。DopaやHypへの変換はタンパク質が合成された後に酵素反応に
よって行われる。mθ孕一2の周辺にはmefp−1に加えて, mefp−4やDopaを
20・一・ 25%含むmefp−3が存在している18)。足糸接着タンパク質であるmefpの中で繰り返し配列が明確にされているタンパク質はmθfp−1のみである。
接着タンパク質に含まれるDopaの接着因子としての働きを明らかにし
た報告がある19)。Dopaは基板の組成や極性等の性質に応じて,接着する
側鎖の領域が異なることが判っている。基板の性質によるDopa側鎖の接
着形態図をFigure 1−3に示した。 Dopa側鎖は,ガラス表面の様に水素結
合形成ができるような極性表面においては,側鎖ヒドロキシル基による接
着形態をとる。それに対して,疎水的な表面である有機高分子においては,
主鎖に近い,β炭素から芳香環の領域が接着する形態をとる。金属表面で
は,錯体形成やイオン性結合などによって接着するほか,側鎖が全体で接
着する形状等が報告されている2°)。ムラサキイガイ(ルlytilus edttiis) ’ 一 \/ 、 /、! ∼ ’/ / ノー/、 、/\∼こ \/ / 、・ −・\, !//一. ’\、 /、’ \、’1 〆〆 、、 ノ 一\ー!\一/ F:一ご’こーこ /二・ 1び 「 ♪こ、㌧・/二 ・∼ 足糸タンパク質(ρ惚Cθ/.D) f妾宇;タンノ・ク㍗f(川C/7戸1 ンハク質(〃1ψ一2) 接着タンパク質 (川{イ1,−1.〃7句P−3」ηφ一 \ 、 ∼ \ 、 一 \ 、 、 \ 、 接着タンパク質(mefP− 1)の繰り返しアミノ酸配列 一Ala−Lys. −Pro−Ser−Tyr−Hyp−Hyp−Thr−Dopa−Lys− Figure l−2.ムラサキイガイ(Mytilus edulis)足糸構造とアミノ酸配列 HO OH
Figure 1−3.基板表面性質の相違によるDopa側鎖の接着形体変化
11TyrをDopaへ転換する酵素はチロシンオキシダーゼ(チロシナーゼ)で
ある。Figure l−4にDopaへの転換反応とそれに伴う反応経路21)を示した。 Tyr(i)はチロシナーゼの作用によってDopa(li), Dopa一キノン(垣)へと転換される。このうち,Dopa一キノン(i五)は,同じタンパク質分子上,ま
たは他のタンパク質分子上の塩基性アミノ酸とイミノ化(iv)やアミノ付
加(v)によって架橋形成する。ラジカル化したDopa一キノンやDopa(Vi)が
反応することで架橋形成(w)する場合もある。Dopaのラジカル化に伴う
カップリング反応による架橋の形成22)も考えられているが,接着タンパ
ク質の不溶化のほとんどは,キノンへ転換された後に塩基性アミノ酸との
反応によって行われているとされている23)。Dopa一キノンへの転換は完全
には進まず,Dopaとして残るものがおり,それらが接着タンパク質の接
着力に関与している。Dopa側鎖は,金属イオンと錯体形成(Vll1)を行う事
ができる。そのため,ル1γtilus edulisの足糸接着タンパク質は金属イオン
を含んだ状態で接着剤として働いている。船底等への付着被害の原因も
Dopaの働きによると言える。
生物が作り出す接着タンパク質は優れた接着因子を持ち,環境に応じて
性質を変化させる優れた機能性高分子の一つである。
∼ 「i‘H CH−C l H・ °=
P
OH CH、 「H vvvC−CH−N∼い♂い ll . 0 (1) HO 0 o 一};’e ’ (而) 錯体形成〔⇒
チロシナーゼ ㎝ OH OH CH、 「H vv−C−CH−Ntw ll .. 0 (11) グN
㌃\c‘: N (vii) HN ノ カップリング 喋・寸く1===: 0 = H多N−ClC
H 一2 CHラジカル化 0・ HO@ 、 J CH, H 」W・C−CH−N・w》い ‖ 0 (Xl) (iv) イミノ化 0
1∠
CH、 1−H 0 vvvC−CH−Nへ} 6i (iii) アミン付加反応 s NH、 OH グ O x 1多 N H CH、 lH 」W℃−CH−Nへ《∼M 8 (v) Figure 橋反応1−4.チロシナーゼによるチロシン(Tyr)の酸化反応とそれに伴う架
131.3 研究構想と総括
接着タンパク質は優れた接着剤である。その接着力は非常に強力で幅広
い素材への利用が期待される。そこで,優れた接着剤の機能中枢である
Dopaに注目し, Dopaを用いた新規接着剤の構築を試みた。
Zismanの理論による理想的な接着剤とは,粘度が低く,表面張力が高
くて接着される固体(被着体)と高い親和性を持った分子によって被着体
表面を均一に覆う(接触角が低くなる)ことが必要である。Dopaは被着体
表面の状態によって異なる形状と相互作用によって接着しているが,タン
パク質であるため溶媒に水を使用する。水は疎水的な有機高分子基板への
接触性が悪く,zismanの理論でいう「被着体表面を均一に覆う」の条件
を満たすことが難しい場合がある。この問題を改善することが出来れば,
タンパク質接着剤の多用途化ができると考えられる。水は,生体適合性と
環境低負荷に最も優れた溶媒である。水を有機溶媒に変えることで接触性
の問題は改善できるが,有機溶媒のほとんどは有害なものである。多用途
化を目的とする上では有機溶媒の使用は好ましくない。「溶媒に安全な水
を使用したまま有機基板への接触性を高める」この条件を満たす分子構造
として,本研究では両親媒性分子に注目した。
両親媒性分子は疎水領域と親水領域からなり,周囲の環境の変化に応じ
て立体構造を変化させる性質を持っている24)。両親媒性分子は,主に界
面活性剤などと同じ性質を有している。界面活性剤の能力には,界面エネ
ルギーを下げることによって接触性を良くする働きがある。接着は,固体
た物質への親和性を高めることができる。
機能性を有する化合物,芳香族系蛍光物質や,血液やクロロフィルに見
られるポルフィリン類,フラーレンなどは疎水的な化合物でありアミノ酸
には無い機能を有している。界面活性剤と同様に疎水的な物質を水に溶解
する働きのある両親媒性分子は,疎水的な機能性化合物を接着剤へ複合す
る方法としても有用であり,機能分子と接着分子を複合した機能性接着剤
の開発への発展も期待することができる。現在のところ,両親媒性分子に
よる接着剤の有用性を検証した報告は無い。そこで,新たな可能性を考え
て研究テーマを決定し行った。第2章では,疎水性相互作用を強め,より
多くの基板への接着を目的とした研究内容「イガイ接着タンパク質と絹様
物質からなる人工タンパク質接着剤の遺伝子組み換え法による合成と評
価」についてまとめた。
第3章では,接着因子であるDopaと疎水性相互作用による自己集合性
を持った有機化合物とを複合した機能性接着剤のモデル化合物の研究,
「自己集合性分子による接着性繊維形成と接着能評価」にっいてまとめた。
第4章では,機能として導電性を接着剤に付与するための機能性因子の
探索についてまとめた。
第5章では得られた結果のまとめと機能接着剤の構築への展望を「総
括」をまとめた。以上,本報告は全5章からなり,アミノ酸を用いた両親媒性分子からな
る接着分子を構築し,機能を有する化合物の中から,接着剤に有用な機能
性因子の探索を行った研究を取りまとめた。
151.4 参考文献 1︶ 2) 3)
︶︶ ︶︶
8) 9) 10) 11) 12) 13) 14) 柴崎一郎, 「接着百科(上)」,高分子刊行会,3(1975)井本稔, 「接着の基礎理論」,高分子刊行会,105(1993)
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︶︶
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(2001) 17第2章
イガイ接着タンパク質と絹様物質からなる接着タンパク質の 遺伝子組換え法による合成と接着能評価
2.1繊維タンパク質 生物は多くの種類のタンパク質を作り出し,その機能や物性を巧みに利用してい る。その数あるタンパク質の中でも繊維タンパク質は,普段の生活において馴染み の深いタンパク質の一つである。繊維タンパク質と総称されるタンパク質は,一般 的にはシルク(絹)とコラーゲン,エラスチンの名で知られている。 シルク(絹)は,古くから,衣類の繊維として用いられてきた。その肌触りの良さ から一般的に人に喜ばれ高価格で取り引きされる,一般的にも馴染み深い繊維であ る。シルクタンパク質は,生体適合性に優れたタンパク材料の1つであり,古くか ら縫合糸として医療分野にも用いられ,眼科領域等の周辺組織が繊細な部分におい ては合成繊維の豊富な現在でも使用されている。 コラv−一一一ゲンやエラスチンは,近年になって注目されているタンパク質である。化 粧品や美容関連製品に多く用いられ,今では良質のコラーゲンを摂取する(食べる) ことは肌を若く保つための方法の大原則の様な雰囲気もある。もともと,コラーゲ ンは哺乳類の表皮細胞を維持するための骨格の役割を果たす繊維タンパク質で,弾 性繊維であるエラスチンと合わせて皮膚組織の形状維持を担っている。 繊維タンパク質は,一般的に注目されているタンパク質であるが,学術的にも興 味深いタンパク質である。生体内(または細胞内)では水に対して溶解した状態で存 在し,生体外(または細胞外)に出てから繊維状態になる性質がある1)。化学繊維は, 熱による融解や溶媒に溶かすことで液状化し再生できるが,繊維タンパク質は一度, 繊維化すると限られた条件にしないかぎり2)溶かして再生することは出来ない。組 成が同じであるにも関わらず,元の液体状態に戻らない性質を持っている。この性 質は,タンパク質特有の高次構造がもたらしている3)。繊維タンパク質のアミノ酸 組成は酵素などの機能性タンパク質に比べて非常にシンプルな組成から成っており 4),繊維タンパク質に多く含まれるアミノ酸は主に,アラニン(Ala),グリシン(Gly), プロリン(Pro),セリン(Ser),チロシン(Tyr),バリン(Val)で構成されている。この6 種類のアミノ酸が,タンパク質によって異なる順番で並び,様々な物性を持った繊 維を形成している。 18
蚕が作り出している繭は,繊維であるフィプロインとその繊維を束ねるノリの役 目を果たすセリシンの2種類のタンパク質からなっている(Figure 2−1)。フィプロイ ン中にはmefP− 1と同じように規則的なアミノ酸配列, Gly−Ala−Gly−Ala−Gly−Serを多 く含んでいる5)。この配列は,シルクタンパク質において繊維形成を行うための機 能性配列とされ盛んに研究がされている6)。その構造は詳細に分析されてβシート 構造を形成しやすい配列であることが分かっている7)。 シルクの繊維化には,複雑な機構によって行われておりその原理の詳細は不明な 点が多い。紡糸機構は,絹フィプロインが持つ性質と蚕がもつ特殊な器官によって 可能となっていると言われている。繊維化に伴いフィプロインタンパク質の周りの の環境変化によるとの知見もある8)。環境面やエネルギー面を考えても、生物の紡 糸機構は人工繊維のそれとは比較に成らないほど巧みであると言える。 一般的にシルクと呼ばれているタンパク質は蚕の作り出すものであるが他にも存 在する。蜘蛛が作り出している糸もシルクである。蜘蛛が作り出すシルクは蚕が作 るシルクと区別するためにスパイダーシルクと称されている。蜘蛛はその用途に応 じて性質の異なる繊維を作り出す能力があり9),蜘蛛糸はその用途に応じた名で呼 ばれている(Figure 2−2)。巣網の中心部から放射線状に伸びている「縦糸」,渦巻上に 張られた「横糸」がある。さらに巣を取り囲んでいる「枠糸」,枠糸と木を繋いでい る「繋留糸」,蜘蛛が危険に遭遇した時に逃れるために使う「牽引糸」,獲物を捕獲 する時に使用する「捕獲帯糸」,巣の中心部はを構成する「こしき」,卵を保護する ための「卵のう糸」である。蜘蛛は数種類の物性が異なるタンパク質繊維を巧みに 利用している。その中でも「牽引糸」は非常に高い強度を持っ繊維である。 牽引糸(Dragline Silk)は同じ太さのスチールより強く,防弾チョッキに使用されて いるアラミド繊維と同等の強さを持っている。近年,この牽引糸に関する研究が盛
リッチ領域はAla。の繰り返し配列によって構成されている。この繰り返し配列は Spidroin1とSpidroin2の両方に存在しており,Ala。はβシート構造12・13)を形成して いる。グリシンリッチ領域のアミノ酸配列はSpidroin1とSpidroin2で異なるアミノ 酸配列を持っている。Spidroin1のグリシンリッチ領域は, Gly−Gly−XとGly−X−Gly(X =Ala, Gln, Tyr, Lue等)の繰り返し配列によって構成される。それに対して,Spidroin2 はGlyl・Pro−Gly−Xa−Xa(Xa=Tyr, Gln, Ser)の繰り返し配列によって構成されβ一スパイ ラル14)構造を形成している。β ・・スパイラルは他の伸縮性に富んだ繊維にも多く見ら れる構造で伸縮性に関与しているアミノ酸配列と言われている。 生物の皮膚組織にはその形状を維持するために,繊維タンパク質が細胞骨格とし ての役割を果たしている。その骨格タンパク質がコラーゲンであり,コラーゲン繊 維同士を架け渡すような働きをもっているのが弾性繊維のエラスチンである。 (Figure 2−3)コラーゲンやエラスチンにもシルクと同じ様に繰り返し配列が存在する。 コラーゲンの配列は,Gly・・Pro−Xcで表され,Xcには主にProかHyp(4−hydroxyproline) である15)。エラスチンの配列はVal−Pro−Gly−Xe−Glyである。 XeにはPro, Val, Lue 等の疎水性アミノ酸が主なアミノ酸である16)。コラーゲンはシルクとは異なり特殊 な高次構造を形成することが知られている。3つのコラーゲン分子が螺旋状に絡み 合った構造,トリプルヘリックス構造を形成する。複雑な高次構造であるが,コラ ーゲンの高次構造形成は,シルクの高次構造形成とは異なり,水溶液中で円滑に進 む。 エラスチンは機能性配列であり,熱応答性を有していることが判っており,この 性質を利用した機能性材料の開発などがされている17)。 繊維タンパク質は機能と物性に富む機能性材料として注目されている。これまで にも,これらのモチーフ配列を利用した研究が多く行われて来た18)。タンパク質中 の繰り返し配列の使用は,その基になるタンパク質に近い性質を発現することがで きる。繊維タンパク質の様な骨格,または形状タンパク質は,シンプルな組成であ ってもその破断強度は優れている。その配列は,様々な分野において有効に利用す ることができる多様性に富んだ材料と言える。 20
セリシン フイブロイン
フィプロインに多く含まれるアミノ酸配列:一 Gly−Ala−Gly−Ala−Gly−Ser−
縦糸 卵のう糸 竺
/
き 横糸 引糸捕獲帯糸 ノ(\
牽引糸アミノ酸配列モチーフ Gy一リッチモチーフ Spidroin l:−Gly−Gly−Xa Gly−Xa−Gly− Xa= Gln,Scr、 Tyr Spidroin 2:−Gly−Pro−Gly−Xb−Xb− Xb=Ala、 Gln,Lcu.Tyr Alaリッチモチーフ Spidroin 1, Spidroin 2共通:−Ala−Ala−Ala−Ala−Ala−Ala一 Figure 2−2.蜘蛛(Nephila c1∂吻θ5)牽引糸の繰り返しアミノ酸配列モチーフ 22皮膚組織 弾性繊維(エラスチン) グルコサミノグルカン(GAG) コラーゲンのアミノ酸配列モチーフ: Gly−Pro−Xc (Xc=Pro or Hyp) エラスチンのアミノ酸配列モチーフ: Val−ProGly−Xe−Gly (Xe=Pro、 Val、Llle) Figure 2−3.コラーゲンとエラスチンのアミノ酸繰り返し配列モチーフ ノ \、/、 〉\ / ’ン、、 、、》’
怐怐怐怐怐怐怐
上皮細胞層→ @ 基底層→ }クロファージ @維芽細胞・ N’・
@ \挙
コラーゲ ム細血管 e性繊維 ● @ \\×’ \, 一2.2 研究の背景 ムラサキイガイ(Mytilus edulis)は過酷な環境下で岩盤などに足糸接着タンパク質 (Mytilus edulis foot protein:me孕)によって付着することで生息している。、me孕の一 成分であるMytilus edulis foot protein 1(meip−1)は, Ala−Lys−Pro−Ser−Tyr−Hyp−Hyp− Thr−Dopa−Lys繰り返し配列を多く含んでいる19・2°)。 HypとDopaはProとTyrの転 換体であり,その割合は,mefP−1全アミノ酸配列中のProの約30%がHypに変換さ れていることが明らかにされている21・22)。Tyrはmefp−1全体の約10・−15%がDopaへ と転換されている23)。TyrとProの変換はタンパク質が合成された後にそれぞれ行 われる。Dopaは接着に大きく関与しており,転換反応はチロシン酸化酵素によって 行われている。また,チロシン酸化酵素はDopaにも作用し, Dopa一キノンに転換す る24)。このDopa一キノンがムラサキイガイの作り出す接着タンパク質の固化機構を 担っている。Dopa一キノンは同一分子上,又は異分子上のLys側鎖のε一アミノ基と 架橋を形成することで接着タンパク質は不溶化によって固体を形成する25)。 m吻一1に多く含まれるDopaは接着タンパク質の接着力に大きな役割を果たして いる26)。Dopaの接着力への関与とその接着力の有用性は明らかにされており,Dopa を利用した接着剤の研究が行われている27・28)。Dopaを接着因子とする接着タンパク 質モチーフの接着力は水中でスレート等に21∼70kgf/cm2と高い接着強度を持ち,水 存在下で何年間も耐久性を保っている29)。そこで,優れた接着力をもっ水系接着剤 であるmθ孕一1が接着する基板を多様化することを目的としてmeiP− 1の改質を試み た。 有機基板の特性として,表面エネルギーが低く,表面分子の性質も比較的,疎水 性である。タンパク質からなる接着剤は,溶媒が水であるため,有機基板との接触 性が悪い。タンパク質接着剤は溶媒には水を使用するしか無いため有機基板への接 触性が問題となる。この問題を解決するために,疎水的なアミノ酸配列を接着タン パク質と複合し,両親媒性から成る接着タンパク質を構築することで,有機基板へ の接触性の向上を試みた。 疎水的なアミノ酸配列として,本テーマでは繊維タンパク質の繰り返しアミノ酸 24
配列に注目した。繊維タンパク質の中でβ構造を形成する繰り返し配列は,
Gly−Ala−Gly−Ala−Gly−Ser, Gly−Gly−XとGly−X−Gly, Gly−Pro−Gly−Xa−Xaの4種類が知 られている。Gly−Gly−XとGly−X−Gly, Gly−Pro−Gly−Xa−Xaの配列は,高い破断強度 を有しているが,Xに入るアミノ酸の種類によって性質が変化する恐れがあるため, そのアミノ酸の選定には十分配慮しなければならない。Gly−・Gly−xを用いてβ構造 を形成しやすい絹タンパク質を遺伝子組換え法によって合成した報告例もある21)が, 繰り返し配列を短くした場合に構造特性が出るかどうか明らかではない。絹フィプ ロインのGly−Ala−Gly−Ala−Gly−Ser配列は配列が決まっており,繰り返しアミノ酸配 列によって構成された配列は絹の物性に近い性質を有していることも明らかになっ ている。そこで,本研究では4っの配列の内,アミノ酸配列が決まっておりシルク の性質が出やすいと思われる絹フィプロインのGly−Ala−Gly−Ala−Gly−Ser配列を疎水 領域アミノ酸配列として適用した。絹フィプロインのGly−Ala−Gly−Ala−Gly−Ser配列 はβ構造を形成する性質があり,β構造が持つ配向性によって,固体化速度向上も 期待できる。 新規接着タンパク質は,me牟1と絹フィプロインタンパク質の繰り返し配列を2 回ずつ繰り返した32残基からなるThr−Ser[(Ala−Lys−Pro−Ser−Tyr−Pro−Pro−Thr−Tyr− Lys)2(Gly−Ala−Gly−Ala−Gly−Ser)2Ala−Ser]。(Adhesive Silk−like Protein:AdSP)を繰り返し 配列として設計した。meiP−1における転換されているアミノ酸であるHyp, Dopa はタンパク質が合成された後に転換酵素によって生じるアミノ酸であるため,設計 したアミノ酸配列においては,転換前のアミノ酸であるProとTyrを使用した。合 成した後,Tyrのみをチロシン酸化酵素(チロシナーゼ)によって接着因子である Dopaや,固化機能因子であるDopa一キノンへの転換を試みた。設計したAdSPのi接 着能力を評価することで疎水性相互作用の導入の影響と新規接着剤として評価した。2.3 合成 AdSPの合成は,大腸菌をホストとした遺伝子組換え法によって行った。詳細な 反応条件以外の手順は一般的な手法3°)によって行った。プラスミド抽出法であるア ルカリーSDS法の手順と使用試薬をFigure 2−4に示した。 培養した液体培地をエッペンドルフチューブに移し,遠心分離(14,000rpm,4℃, 10分)によって菌体をペレット状にした。エッペンドルフチューブ内の培地をマイク ロピペットで完全に除去したのち,Solution Iを加え,菌体ペレットが均一に分散す るまで懸濁した。溶液にSolution Hを加え,穏やかに混合した。アルカリ性である Solution Hを加えた状態で,溶液を激しく混合するとプラスミドの分解が起こる場 合があるため注意が必要である。また,溶液温度が高い場合も同様にプラスミドの 分解を招くため,溶液温度が高い場合は,氷上で冷却する必要がある。溶液を混ぜ たら速やかにSolution HIを加え,激しく撹?¥した後14,000 rpmで遠心分離し,不溶 物を沈澱させた。沈澱した不溶物を残して,上層を別のエッペンドルフチューブに 静かに移した。 アルカリー・SDS法によって得られたプラスミド溶液には大腸菌由来のタンパク質 が溶解している。タンパク質を含んだままの状態で濃縮すると,プラスミドとタン パク質が凝集し,得られたプラスミドが溶液に溶解しにくくなるため,タンパク質 を除去する必要性がある。本実験では,タンパク質の除去にフェノ・一一・一ル・クロロホ ルム・イソアミルアルコール(PCI)処理によってタンパク質を変性させ先に沈澱する ことでプラスミド溶液から除去する方法で行った。PCI処理の試薬と作業手順を Figure 2−5に示した。 サンプル溶液と等量のPCI試薬を加え,ボルテックスミキサーで良く混合した。 4℃,14,500rpmで遠心分離を行い,上層を別のエッペンドルフチューブに採取した。 このとき,中間層にあるタンパク質を採らないように注意した。使用試薬であるPCI 試薬は,保存期間が長いと劣化し,リガーゼ反応(ライゲーション反応)の効率が著 しく落ちるため,使用する試薬の管理には十分注意し,定期的に調製し直した。 フェノール・クロロホルム・イソアミルアルコール処理(PCI処理)によってタンパ 26
ク質を除去したプラスミド溶液は,その状態では濃度が低いため濃縮した。濃縮に はエタノール沈澱法を用いた。エタノール沈澱法の作業手順と使用試薬をFigure 2−6 に示した。 プラスミド溶液の2∼2.5倍量の100%エタノールを加え,ボルテックスミキサーで 良く混合した。4℃,14,500rpmで30分間,遠心分離でプラスミドを沈澱させた。 プラスミドを捨てないように,静かに上層を除去した。得られたプラスミドに70% エタノール1mLを加え,ボルテソクスミキサーで懸濁した後,4℃,14,500 rpmで 10分間遠心分離した。遠心が終わったらすみやかに上層を取り除きエッペンドルフ チューブの蓋を開いた状態で恒温槽などに入れ乾燥したのち,任意の量の滅菌水や TE溶液(0.10 M Tris−HCI(pH 8.0),0.01 M EDTA)で再溶解した。 本研究では,大腸菌からプラスミドを得る方法は全て,アルカリーSDS法で行い, 精製はPCI処理,濃縮は,エタノール沈澱法の順で行っている。以後,本論文では, アルカリーSDS法による工程を「プラスミド回収」とし,プラスミドの精製作業であ る,PCI処理,エタノL−・一・一ル沈澱の2工程作業を「精製」と表記した。また本文中で は,生物学実験や遺伝子組換え実験において一般的に使用されている試薬名で記載 し,試薬の正式な化合物名と使用培地組成等は,本章の2−8試薬組成にまとめた。
使川試薬 GTE溶液(Solution I) O.50 M Glucose O.25 M Tris−HC1(pH 8.0) 0」OMEDTA(pH 8.0) SDS−NaOH溶液(Solution II) 0.20NNaOH LOO%SDS CH3COOK溶液(Solution III) 3.00 M CHスCOOK 12.()%Acetic acid 蓋をしてボルテックスミキサーで懸濁する 大腸當/SDS.N。。H、ti1ifa (solutio。H) を200μLを加える
罐轡農軽㌶冒=二v
稔(_液_m)
を150μL加える 半透明な溶液 ・ 蓋をしてボルテックスミキサーで ↓懸濁する ↓ → / 沈澱物 ピペッターを使用して上清を 別のチューブに移す Figure2−4.アルカリーSDS法の作業手順と使用試薬組成 28イ吏月」試薬糸11J,父 フェノール・クロロホルム ・イソアミルアルコール試薬(PCI試薬) 50C/e Tris−HCI飽和phenol(pH 8.0) 48%Chloroform 2%Isoamyl alcohol 蓋を閉じてボルテックスミキサーで 懸濁し、遠心分離機で遠心分離をする
←
境界面に沈澱が生じる ← ピベッターを使用して上清を 別のチューブに移す Figure 2−5.フェノール・クロロホルム・イソアミルアルコール処理(PCI処 理)の作業手順と使用試薬組成使川試薬 1009(o Ethanol(試薬特級) 70e/o Ethanol(試薬特級・Milli−Q使用) 100e/・エタノールを750μL加える 補助試薬 3 M CH3COONa(pH 5.2) 塩濃度が低い場合に使川全体量 の1/10量を添加することによって 沈澱効率が良くなる。 蓋をしてボルテックスミキサーで懸濁 冷却条件下で遠心分離をする
←
14000 rpm、 30分間.4℃←
←
エタノールをデカンテーション で除く 70c/,エタノールをlmL加える 蓋をしてボルテックスミキサーで懸濁 冷却条件下で遠心分離をする 14000 rpm,30分間.4℃ Figure 2−6.エタノール沈澱法の作業工程と使用試薬組成 302.3.1 コンピテント細胞の作製 本実験で使用した大腸菌はクローニングホストとDH5α,【F−,φ80dlacZ△M15,△ (lacZ YA−argF)U169, deoR, recA1, endA1, hsdR17(rk−mk+), phoA, supE44,λ一, tin−1, gyrA96, relA1.Takara shuzo】を使用し,発現ホストとしてBL21(DE3)pLysS,[F−, ompT, hsadSB(rB−mB−), ga1(λ cl857, ind, Sam7, nin5, lacUV5−T7 gene1), dcm(DE3), pLysS(CmR). Nobage]をイ吏用した。コンピテント細胞作製の全作業行程は,クリー ンベンチ内で無菌的に行い,どちらの菌体も同じ方法でコンピテント細胞を作製し た。 クリーンベンチ内でフリーズストックから菌体をピックアップし,5mLの2×YT
培地で7時間,予備培養した。予備培養した菌液50μLを5mLの2×YT培地に植
え継ぎ18時間の前培養した。前培養した菌体溶液2mLを200 mLのSOB培地に植
え継ぎ,600nmの吸光度(OD6。。)が0.4になるまで30℃で本培養した。菌体溶液を植え継ぐ前のSOB培地300μLを採取し,H20を加え全量3mLに測定
したときの吸光度(OD6。。)を0基準とした。培養は15分毎に300μLの培養液を採取 し,水を加え全量を3mLにして測定した値を10倍換算した。吸光度(OD6。。)が0.4 に達した後,培養溶液を容器ごとクラッシュアイスで冷却し,そのまま10分間冷却 した。あらかじめ冷やしておいた50mL遠心管に培養液を移し,3,000 rpm,4℃, 10分間の遠心分離を行い,菌体をペレット状にして上層を除去した。 以下の作業行程は氷上で行い,菌体の増殖を押さえながら作業した。得られた菌体ペレットを150mLのFTBで懸濁した。懸濁にはホールピペットを使用し,静か
にペレットがなくなるまで行った。懸濁液の入った遠心管を3,000rpm,4℃で10 分間,遠心分離を行い,再度ペレット状にした。ペレット状の菌体から培地を完全2.3.2 クローニングベクターへのサンプルDNAの導入 サンプルDNAはムラサキイガイ接着タンパク質領域をコードするDNA配列(AK) と絹フィプロイン領域をコードするDNA配列(GA)の二つに分け,旭テクノグラス (株)にオリゴヌクレオチドの状態で合成を依頼した。 オリゴヌクレオチドにTE溶液(pH 8.0)を濃度が1.0μ9/μLになるように加え溶解 した。このサンプルオリゴヌクレオチド溶液を相補するもの同士を等モルになるよ うに混合し,アニール化反応を行った。アニール化反応は99℃で30秒,1時間かけて 37℃にまで下げ,37℃で30分間保持の条件でサーマルサイクラー[PC−801 Program Temp Control System/ASTEC]を使用して行った。設計DNA配列(AKGA)124残基(base pair:bp)をFigure 2−7に示した。 クローニングには,ベクターにpUC118(Figure 2−8),ホストにDH5αを使用した。
1μgのpUCll8を100 Uの制限酵素EcoR 1とBamH Iによって37℃,18時間,全
量20μL,付属緩衝液のK−bufferを使用した条件で反応した。反応終了後,溶液に 10×Lording bufferを2.2μL加え,酵素反応溶液を全て使用してアガロースゲル電気 泳動によって泳動した。酵素によって切断されたpUC118(pUC−Eco/Bam)のバンドを ゲルから切り出し,Millipore, Ultrafree−DA:range 100−10,000 bpを使用して抽出した。ゲルから抽出したpUC118溶液は約10分の1量の3M酢酸ナトリウムを加えて精製
した。得られたpUC−Eco/Bamは5μLの滅菌水に溶解し,再度,アガロースゲル電 気泳動によって濃度を確認した。 pUC−Eco/BamとAK, GAをモル比で1:10割合になるようにして全量を10μL とした。この混合溶液にDNA Ligation Kit Ver:2のsolution I(T4−DNA Iigase, ATP, reaction buffer)を等量加え,16℃で3時間から一晩,リガーゼ反応によるDNA連結 反応(ライゲーション反応)をした。本実験で行ったライゲーション反応は全てこの試 薬を使用し,同一条件で反応した。 ライゲーション反応溶液に100μLのDH5αを加えpUC−118ベクターと同じように 形質転換を行い,200mM IPTG(isopropyl−thio一β一D−galactoside),20 mg/mL X−gal (5−bromo−4−chloro−3−indolyl一β一D−galactoside)をそれぞれ40μL添加したアンピシリン 32(Amp)を添加したLBプレート培地(Amp−LB培地)を使用し,カラーアッセイ(ブル ー・ zワイトセレクション)培養した。 Amp−LB培地上で培養された大腸菌のコロニー中で白色を呈しているコロニーを ピックアップし,Amp−2×YT液体培地で培養を行い,プラスミド回収と精製をした。 回収したプラスミドを10∼20μLの水に溶解し,この内1μLを使用してNhelで制限 酵素処理を行い,アガロースゲル電気泳動によって制限酵素によるプラスミドの切断 を確認した。 切断が確認されたプラスミドは,RNase処理によってRNAを分解した後Microcon filter(YM−100. Membrane NMWL 100,000 MILLIPORE)を使用してRNAの分解物, 残存タンパク質,残存塩を除去した。精製したプラスミドはEcoR Iで処理を行い, アガロースゲル電気泳動によってλ一HindMマーカーとの比較から濃度を求めた。こ の値を参考として,1.0μg・−1.5μgのプラスミドをシーケンス反応に使用した。 シークエンス反応の試薬はABI PRISMTM Dye Terminator Cycle Sequencing Ready Reaction Kit(PE Applied Biosystems)を使用し,反応条件は95℃で5分間熱処理した
後,95℃で30秒,55℃で15秒72℃で30秒を30サイクルの条件で反応した後,
72℃で4分間保持し,4℃まで冷却し保持した。このシークエンスサンプルをDNA シークエンサーによって挿入されたDNAの塩基配列を確認した。シークエンサーは ABI Prism 377 DNAsequencerを使用した。塩基配列が構築した配列と同じであるプ ラスミドをpUC−AKGAIとして, DH5αを使用してクローニングして重合実験に使 用した。確認されたAKGA4は発現ベクターへの挿入のために設計したアダプター DNAをpUC118に組み込んだpUC−linkerへ挿入した。 pUC−linkerは発現ベクターへ の挿入とMet残基の導入を目的として構築されたAdapter−DNAを導入したプラスミ ドベクターである。pUC−linkerは農工大,朝倉研究室で構築されたものを使用したントであるAKGAnは10μ9のpUC−AKGAnからSpe lとMθ1で処理し
pUC−linker−Spe/Meと同じ様にしてAKGA1を得た。得られたpUC−1inker−Spe/Nheと
AKGAnを混合し,ライゲーション反応を行った後,クローニングし,プラスミド回 収と精製を行い,得られたプラスミドの塩基配列をシーケンサーによって確認した。
5, GAA TTC ATAA ACT AGT GCT AAA CCG TCT TAT CCA CCG ACC CTT AAGTATT TGA TCA CGA TTT GGC AGA ATA GGT GGC TGG EcoR I Stop Nhe I Thr Scr Ala Lys Pro Ser Tyr Pro Pro Thr AAG GCA AAA CCG TCC TAT CCT CCC ACT TAC AAA GGC GCT TTC CGT TTT GGC AGG ATA GGA GGG TGA ATG TTT CCG CGA Lys Ala Lys Pro Scr Tyr Pro Pro Thr Tyr Lys Gly Ala 3’ GCA GGC TCC GGT GCG GGT GCC GGC TCT GCT AGC GGA TCC CGT CCG AGG CCA CGC CCA CGG CCG AGA CGA TCG CCT AGG SoθI Ba・mH I AIa Gly Scr Gly Ala Gly Ala Gly Scr Ala Scr Figure 2−7.設計したAdSPモノマー配列とDNA塩基配列(AKGA)
TAC
ATG
TyrGGT
CCA
Glv ノ マルチクローニングサイト 5’ 3’GACCTGCAGGCATGCAAGCTTGGC
2.3.3 サンプルDNAの重合
DNAの重合は,タンパク質の鋳型となるDNAの塩基配列をhead・・to−tail
construction strategy method28)(Figure 2−9)により重合した。 head−to−tail construction strategy methodは,異なる制限酵素配列で同じ切断面をもつ制限酵素配列を利用し て,DNAを重合する方法である。購入できる制限酵素配列の中で,確認できた組み 合わせとしては8通りほどあり,内1っは終止コドンとなるため使用できない。こ の方法の特徴として,異なる2つの制限酵素配列を結合して構成された配列は,そ のどちらの制限酵素でも切断されない配列になる点である。そのため,切断と重合 を繰り返し,効率よく重合したDNAを得ることができる。本研究では,7通りの組 み合わせの1つであるSpθ1とMe lの制限酵素配列を使用した。この二つの制限 酵素配列は結合が可能でありSpe lとMe lが結合した場合の配列は両制限酵素で 切断されないため,重合したサンプルDNAの回収にSpe lとMe lを繰り返し使用 することができる。 挿入される側であるpUC−AKGA1を1μgをMe lとHind皿で制限酵素処理した後, リン酸モノエステル加水分解酵素(Alkaline phosphatase calf intestine:CIAP)で処理し た。反応溶液は全てアガロースゲル電気泳動を使用して切断バンドを切り出し回収,精製してpUC−1−Me/Hindを得た。挿入する側のDNAフラグメントであるAKGA1
は10μgのpUC−AKGA1からSpe lとHind皿で処理しpUC−1−Me/Hindと同じ様にし てAKGA1を得た。得られたpUC−1−Nhe/HindとAKGA1を混合し,ライゲーション 反応を行った後,クローニングし,プラスミド回収と精製を行い,得られたプラス ミドの塩基配列をシーケンサーによって確認した。この手順を繰り返し行い,AKGA1, AKGA2, AKGA4,の順に重合した。 36「 A ‘} C 一一∼「c 「h(’1 ∼∼:.CG、、 Hi,id m
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Spe I 制曝処理AKGA li:呂編 AKGA
Nhe I Figure 2−9. Head−to−tail construction strategy methodによる重合方法2.3.4 発現ベクターへのサンプルDNA重合体の挿入 大腸菌内でタンパク質を合成するためのプラスミド(発現ベクター)には, pET30a(+)を使用した(Figure 2−10)。使用するpET30a(+)のクローニングホストは DH5αを使用し,培地は抗生物質カナマイシンを添加したLB培地(Kan−LBプレート 培地)を使用した。 シングルコロニーをKan−2×YT液体培地で培養して回収と精製をした。得られた pET30a(+)はlPt Lを使用してアガロースゲル電気泳動によって濃度確認した。残りの 9μLを使用して制限酵素BamH IとHind皿によって37℃,18時間,酵素反応した 後にCIAP処理した(pET−Bam/Hinの。反応溶液は全てアガロースゲル電気泳動後に ゲルからの抽出と精製をした。pUC−linker−AKGA4, pUC−linker−AKGA8及び pUC−linker−AKGA12はクローニングして,回収精製した。この溶液10μLを使用し て制限酵素BamH IとHind皿によって37℃,18時間,酵素反応した後に反応溶液 を全てアガロースゲル電気泳動で泳動し,ゲルからAdapter−AKGA4(ap−AKGA4), Adapter−AKGA8(ap−AKGA8), Adapter−AKGA12(ap−AKGA4)を抽出,精製した。 ap−AKGA4, ap−AKGA8, ap−AKGA12, pET− Ba nt Hindを10:1の割合で混合してラ イゲーション反応した。クローニングホストとしてDH5αを使用してTFを行い,
Kan−LBプレート培地によって一晩培養した後,回収,精製した。得られた
pET−ap−AKGA4, pET−ap−AKGA8, pET−ap−AKGA12はそれぞれMe lで処理を行い, アガロースゲル電気泳動によって確認した。切断が確認されたpET−ap−AKGA4, pET−ap−AKGA8, pET−ap−AKGA12をタンパク質の発現実験に使用した。 38oSN pET30a(+) (5,422bp) \ ⑳ ↑ マルチクローニングサイト GCCATGGCTGATATCGGATCCGAATITCGAGCTCCGTCGACAAGenGCGGCCGCACTCGAG Ncol εcoRV BamHI EcoRI ∫acl Sall Hind皿I Ea,g I Xho I NOf I Figure 2・・10.発現ベクターpET30a(+)とマルチクローニングサイト
2.3.5 タンパク質の発現 pET−ap−AKGA4, pET−ap−AKGA8, pET−ap−AKGA12を発現ホストBL21(DE3)pLysS に対して形質転換して培養した。培地は抗生物質クロラムフェニコール(Cm)とカナ マイシン(Kan)を添加したLBプレート培地を使用した。 前日にコロニーをピックアップし,CmとKanを添加した5.O mLの液体YT培地 (Cm−Kan液体YT培地)で前培養した。
前培養iした培地を10mLのCm−Kan液体YT培地に100μLを植継ぎ1時間45分
を育成時間とし,その後の発現誘導から3.5時間までを培養時間とした条件で発現 確認を行った。残った前培養溶液は50%グリセロール溶液を等量加えフリーズスト ック化して保管した。このフリーズストックを使用して大量培養とタンパク質を発 現した。 本実験ではファーメンターによる大量培養とフラスコによる大量培養の2つの培 養系によって大量培養を行っているため,次節(2.35.1節と2.3.5.2節)に2つの大 量培養法をまとめた。 2.3.5.1培養槽を使用した大量培養と発現 大量培養に使用したファーメンターは丸菱バイオエンジMDL200型,2L(MDL−6c) を使用して行った。大量培養の条件は,撹#回転数を450∼600 rpm,通気圧を1atm で行った。ファーメンターに900mLのTB培地を調整し,ファーメンターに入れた状態 でオートクレープ滅菌処理した。抗生物質等の酸化分解しやすい試薬は使用する直 前で加えた。発現の確認した菌体のフリーズストックからピックアップし,1.5mL のCm−Kan液体YT培地で前々培養を7∼8時間行った。前々培養した菌体液を10 mL のCm−Kan液体YT培地に100μL植え継ぎ15時間,培養した。ファーメンターに作 製しておいた900 mLのTB培地にリン酸カリウム緩衝溶液を100 mLと抗生物質Cm,Kanを1mL,グリセロールを5mL,消泡剤を80μL加えた後,撹i絆と通気を開始
し,培養温度37℃にまで昇温した。温度が一定なったことを確認し,培養槽に前培 40養溶液を加え培養を開始した。吸光度(OD6。。)が0.6に達した時点で200 mM−IPTGを 最終濃度0.2mMになるように1,000μL加え,発現誘導した。発現誘導後の培養時 間は35時間行った。培養終了後,培養液を500mL遠心チューブに移し,3,000 rpm, 4℃で15分間の遠心分離した。ペレット状の菌体を別の50mLの遠心チューブに移 しディープフリーザーで凍結保存した。 2.3.5.2 三角フラスコを使用した大量培養と発現 3Lの羽根つきフラスコに900 mLのTB培地を調整し,オートクレープ滅菌処理 した。抗生物質等の酸化分解しやすい試薬は使用する直前で加えて使用した。発現 の確認した菌体のフリーズストックから,1.5mLのCm−Kan液体YT培地で前々培 養を7∼8時間行った。前々培養した菌体液を10mLのCm−Kan液体YT培地に100μL 加え前培養した。羽根つきフラスコに作製しておいた900mLのTB培地に,リン酸