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アメリカにおける先例変更の基準――リジン判決における当然違法ルールの変更を中心に―― 利用統計を見る

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(1)

アメリカにおける先例変更の基準――リジン判決に

おける当然違法ルールの変更を中心に――

著者

宮原 均

著者別名

MIYAHARA Hitoshi

雑誌名

東洋法学

58

2

ページ

47-73

発行年

2014-12

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00006917/

(2)

《 論     説 》

アメリカにおける先例変更の基準

――リジン判決における当然違法ルールの変更を中心に――

 

    

はじめに   一般に、 アメリカは判例法の国として、 先例拘束の理論 stare decisis に基づき裁判が行われてきたとされている。 しかしながら、 実際には、 合衆国最高裁判所 (最高裁) においても、 先例変更 overrule が行われることは稀ではなく、 特に憲法問題については、これが比較的頻繁に行われているといえ る ( 1 ) 。では、先例拘束の理論は既に形骸化してし まい、今や現実の実務においてはほとんどその役割を果たしていないのであろうか。   確かに、先例拘束の考え方は、新しい時代への柔軟な対応やそれにふさわしい法的解決を阻む場合もあるであろ う。しかしながら、その一方で、先例拘束は、社会に安定性・確実性をもたらし、裁判所への信頼を確保している ことも間違いない。そこで、実際の裁判においては、先例拘束のもたらす安定性・確実性を重視するのか、それと も時代に即した柔軟性・妥当性を優先して先例変更を行うのか、判断が求められることになるのであ る ( 2 ) 。

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  この点を考えさせるものとして、 反トラスト法として有名なシャーマン法の解釈を変更したリジン事件 (二〇〇七 年) ( Leegin Creative Leather Products INC. v. PSKS, INC., 551 U. S. 877 ( 2007 ))がある。同法一条は、取引に 関する「不合理な制約」を禁止しているが、垂直規制である「再販最低価格維持行為」がこれに該当するかについ て、最高裁は、ドクター・マイルズ事件(一九一一年) ( Dr. Miles Medical Co. v. John D. Park & Sons Co., 220 U. S. 373 ( 1911 )) 以 来、 「 当 然 違 法 」 per se illegal と 考 え て き た。 し か し な が ら、 一 世 紀 ほ ど 経 過 し た の ち、 リ ジ ン 事件(二〇〇七年)において先例の変更が行われ、 「合理の基準」 rule of reason に基づいて判断すべきとした。す なわち、再販最低価格維持という行為(再販維持)の存在が認められれば、直ちに違法と判断する「当然違法」の 考え方を改めて、諸状況を総合的に考慮し、この行為が「競争促進的効果」をもたらしているならば違法とはいえ ない、とする「合理の基準」に基づいて判断することとしたのであ る ( 3 ) 。   こ の 事 件 は 五 対 四 と い う 僅 差 の 判 決 で あ る が、 い ず れ の 基 準 が 再 販 維 持 を 考 え る の に ふ さ わ し い か だ け で な く、 既に「当然違法」とする先例があるにもかかわらず、これを変更して「合理の基準」により審査することの是非が 問われているのである。つまり、裁判とは、全くの白地に新しい判断を示すのではなく、既に確立した、社会も当 事者もそれに信頼・依拠しているプレートの上に判断を示すものである。したがって、先例変更にあたっては、判 決内容そのものが客観的に妥当であるだけでなく、既に確立しているルールを覆すことがもたらす混乱等も考慮し た上で、その判断がなされなければならないということである。   そこで本稿においては、先例拘束とその変更について激しく対立したリジン事件(二〇〇七年)を中心に、先例 変更を原則としつつも、その例外として先例変更を行う場合にはどのような要素が満たされていなければならない かを検討していきたい。そのために、まず、リジン事件(二〇〇七年)について、主として先例拘束の観点から紹

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介し、次に、アメリカにおける先例拘束の理論一般についての概要を示し、リジン事件(二〇〇七年)の先例拘束 の理論をこれに位置づける形で整理・検討していきたい。 第一章   リジン事件(二〇〇七年)   事実の概要   「リジン」は、皮革製品やアクセサリをデザイン・製造・販売し、 「ブライトン」のブランド・ネームにより、女 性 の 様 々 な フ ァ ッ シ ョ ン・ ア ク セ サ リ を 販 売 し て い る 会 社 で あ る。 合 衆 国 全 体 で 五 〇 〇 〇 以 上 の 小 売 店 舗 を 有 し、 それらの大部分は小規模の独立したブティックや専門店であった。リジンは、これらの店舗において、他社の大規 模店舗とは異なる顧客サービスを提供してもらいたいと考えていた。   「PSKS」は、テキサス州 ・ ルイビルにおいて女性の衣類等を販売する会社であるが、その経営下にある「ケー ズ・ ク ロ ゼ ッ ト 」 に お い て、 ブ ラ イ ト ン が 宣 伝・ 販 売 さ れ、 店 内 で は「 ブ ラ イ ト ン の 日 」 を 設 け る な ど し、 「 こ の 地域でブライトンを買うならこの店」といわれ、一時その利益の四〇~五〇%はブライトンで占められていた。   一九九七年、リジンは、値引きはブライトンのブランド・イメージを傷つけるとし、一部商品を除き、指示価格 suggested prices よ り も 値 引 き す る 小 売 店 に は ブ ラ イ ト ン を 販 売 し な い 方 針 を 打 ち 出 し た。 そ の 一 方 で、 他 社 大 規 模小売店にはないサービスを提供してもらうため、十分なマージンを提供していた。   更に、リジンは、ハート ・ ストア ・ プログラムにより、加盟店に対して指示価格での販売を約束させた。ケーズ ・ クロゼットは、いったんはハート・ストアとなったが、一九九八年末に脱退し、ただその後もブライトンの販売は

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継続して行い、売り上げを伸ばしていた。二〇〇二年、ケーズ・クロゼットは、近隣の小売店によるブライトンの 値引きに対抗するため、すべてのブライトンを二〇%値下げして販売していた。これを知ったリジンは、この値引 きをやめるよう申し入れたが受け入れられなかったため、ケーズ・クロゼットへの販売を中止した。   これによりケーズ・クロゼットの収益は大きく落ち込み、PSKSはリジンを相手として、合衆国のディストリ クト・コートに訴えを提起した。リジンが、固定された価格のみで販売を求める契約を小売店と締結することは反 トラスト法に違反する、というのが理由である。ディストリクト・コートは、この問題はドクター・マイルズ事件 ( 一 九 一 一 年 ) で 確 立 さ れ た「 当 然 違 法 」 の ル ー ル に 基 づ い て 判 断 さ れ る と し、 陪 審 は P S K S の 主 張 を 認 め、 リ ジンに対して四〇〇万ドル近い額の賠償金を命じた。   第 五 巡 回 区 控 訴 審 は デ ィ ス ト リ ク ト・ コ ー ト の 判 断 を 支 持 し た。 こ の 控 訴 審 に お い て リ ジ ン は、 垂 直 的 価 格 固 定の協定を小売店と締結した「事実」は争わず、この協定には「合理の基準」で判断されるべきであると主張した が、控訴審は、この問題は合衆国最高裁において、一貫して「当然違法」により判断されてきたとした。   最高裁は、ドクター・マイルズ事件(一九一一年)を変更し、合理の基準に基づいて判断されるとした。     一   シャーマン法適用に関する「合理の基準」と「当然違法」   シャーマン法一条は、州際における取引又は通商を制約するあらゆる契約 every contract … in restraint of trade

or commerce among the several states

を禁止しているが、 具体的な行為がこれに違反するかどうかについては 「合 理の基準」が用いられ、その事件におけるすべての状況を衡量する weigh all of the circumstances of a case こと

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によって、判断されてきた。   もっとも、その制限行為が明らかに反競争的な効果を有し、考慮されるべきなんらの利点もない場合には「当然 違法」とされてきた。 二   再販最低価格維持と競争促進的効果   約一〇〇年前のドクター・マイルズ事件(一九一一年)においては、再販最低価格維持行為(再販維持)は当然 違法とされたが、これには今日のアメリカ経済において、以下のような、競争促進的な効果が認められる。 ①   製造業者による垂直価格制限はブランド間における価格競争を除去する傾向があるが、このことは小売業者に 有 形・ 無 形 の 顧 客 サ ー ビ ス に 投 資 さ せ る こ と を 促 す。 再 販 維 持 は、 消 費 者 に 対 し て 選 択 肢 を 増 や す こ と に な る。 すなわち、低価格・低サービス、高価格・高サービス、そして両者の中間、これらをいずれのブランドから選択 するか、ということである。 ②   再販維持はブランド内でのフリーライドを防ぐことができる。値引き業者が、顧客サービス(ショールームの 設置による商品の展示、専門知識を有する者の雇入れまたは研修等)を提供する業者に ただ乗り 4 4 4 4 して、提供され たサービスによってもたらされた需要を横取りしてしまうことがあり得るからである。 ③   再販維持は、製造業者の新規参入を増加させる。製造業者は、再販維持を行う代わりに小売業者にマージンを 保 証 し、 も し も 期 待 す る 売 上 げ が 得 ら れ な け れ ば 契 約 を 打 ち 切 る と す る こ と に よ り、 小 売 業 者 は 率 先 し て 顧 客 サービスを提供し、結果として製造業者は最も効果的に市場を拡大する。 ④   再 販 維 持 に は、 カ ル テ ル の 形 成 を 助 長 し、 流 通 コ ス ト を 下 げ よ う と す る 努 力 を 妨 げ る 等 の リ ス ク が 存 在 す る。 しかし、再販維持が、ほとんど常に競争を制限する、と確信をもっていうことができない以上、当然違法とはい

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えない。 三   コモンロー制定法とゆるやかな先例拘束   先例が制定法の解釈に関する場合、その変更は議会に委ねられるのが一般であり、したがって、先例拘束は強く 及ぶ。しかしながら、このような一般的推定は、シャーマン法については必ずしも妥当しない。同法は、当初より コモンロー上の制定法として扱われ、禁止される「取引制限」の内容は、その時々の経済状況に適合するよう動態 的に発展してきた。合理の基準によってケース・バイ・ケースで判断がなされてきたのは、このコモンローのアプ ローチが実践されてきたからである。 四   「当然違法」から「合理の基準」への動態的発展   再販維持に合理の基準が用いられるべきは、シャーマン法の動態的な発展がもたらしたものである。 ①   再販価格維持には競争促進的な効果が生じうることは、経済学において、広く同意が得られるようになってき た。 ②   司法省及びFTCは最高裁が当然違法に変えて合理の基準を用いるように勧告している。 ③   ドク タ ー ・ マ イ ル ズ 事 件 ( 一 九 一 一 年 ) で 示 さ れ た 「 当 然 違 法 」 の 基 準 は 、 後 の 最 高 裁 の 判 断 に よ り 浸 食 が 進 ん で い る 。 コ ン チ ネ ン タ ル ・ テ レ ビ 事 件 ( 一 九 七 七 年 )( C on tin en ta l T . V ., I nc . v . G T E S ylv an ia In c., 43 3 U . S . 36 ( 19 77 )) に お い て は 、 垂 直 的 非 価 格 制 約 が 、 カ ー ン 事 件 ( 一 九 九 七 年 )( Sta te O il C o. v. K ha n, 52 2 U . S . 3 ( 19 97 )) では、再販上限価格維持行為がそれぞれ、先例である当然違法を変更して、合理の基準により判断されている。 ④   再販維持に関する議会立法の変遷も多数意見の結論を変えることはない。連邦議会は大恐慌の時代に、各州に 対して再販維持を認めた立法を行う権限を認める法律を定めたが(ミラー・タイディングス法、マクガイア法) 、

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一 九 七 五 年 に そ の 立 法 を 廃 止 し た( 一 九 七 五 年 法 )。 し か し、 こ の こ と は 当 然 違 法 が 再 販 価 格 維 持 に 適 用 さ れ る こ と を 意 味 し な い。 一 九 七 五 年 法 は、 再 販 維 持 が 当 然 違 法 で あ る と 明 文 化 し て い る わ け で は な く、 こ の 制 限 を、 再度、シャーマン法一条の問題にし、コモンローの伝統に従って発展させることを裁判所に認めたのである。   ブライヤー裁判官の反対意見(スチーブンス・スータ・ギンズバーグ裁判官同調)   ブライヤー裁判官は、再販維持に対しては、現在においても合理の基準ではなく、当然違法に基づいて判断する ことの正当性を主張した 後 ( 4 ) 、先例拘束の観点から多数意見を批判している。 一   コモンロー制定法と先例変更のファクター   多数意見は、シャーマン法はコモンロー制定法として取り扱われるとした。しかし、コモンローの考え方によれ ば、ドクター・マイルズ事件(一九一一年)は変更されない。なぜなら、コモンローは、これまでに確立したルー ルを一気に違法として変更することはめったになく、徐々にルールの範囲と効果が浸食され、最後に休止されるに 至った場合に、変更するのである。この点について、スカリア裁判官が述べてきた先例変更のファクター(スカリ ア ・ ファクター)を参考に本件を検討すると(以下、 〈   〉内がスカリア ・ ファクター) 、 先例の変更は認められない。 二   スカリア・ファクターによる分析 ① 〈先例拘束の理論は、憲法よりも制定法において厳格に適用される〉    本件は制定法の解釈が問題になっている。 ② 〈 比 較 的 最 近 に 下 さ れ た 、誤 っ た 判 断 de cid ed w ro ng ly o nly a re as on ab ly sh or t t im e a go 対 し て 変 更 が な さ れ る 〉    本件は、一〇〇年前の判決であり、この間、多くの判決の支持を受けてきた。 ③ 〈機能しない法的な体制

unworkable legal regime

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    当然違法による審査が前世紀を通して機能していることは証明されてきた。逆に合理の基準には多くの複雑さ を伴い、合理の基準の方がどの程度審査しやすくなるのかは administrable を明らかにされていない。 ④〈判決が法を不安定にしている

unsettles the law

場合の変更〉    当然違法は確立した法 well-settled law であり、多数意見による変更は法を不安定にする。 ⑤〈財産権や契約上の権利が含まれ、信頼が損なわれる場合には変更に消極的〉     本件は契約上の権利や財産権も問題になっている。再販維持が当然違法であることを信頼して新規の販売業者 は時、資金、労働力を投入してきた。 ⑥〈国家の文化への浸透が認められるならば、そのルールを変更することには強い抵抗がある〉     再販維持が当然違法であることは、反トラストに法に根を張っている。こうしたものを変更することには問題 がある。 *         *         *         *         *   以上のように、最高裁は再販維持に関して多数意見と反対意見に分かれて激しく対立している。多数意見は、そ もそもシャーマン法の解釈には、 先例拘束はそれほど強くは及ばないとする。議会は、 その文言を広汎なものとし、 ケース・バイ・ケースにより、裁判所にその内容の具体化を委ねている。再販維持について、その時々の経済の動 態に即して判断がなされてきており、先例変更により「合理の基準」がとられるようになったのは、まさにこの動 態的発展の結果であり、 「当然違法」への浸食は相当程度まで進んでいたとした。   これに対して、反対意見は、先例拘束・変更一般について、それぞれのメリット・デメリットを踏まえて提示し たスカリア・ファクターに基づいて本件を分析し、多数意見を批判している。そこで、両者の対立について検討す

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るために、先例拘束理論一般についてその展開と問題点を、学説を中心に明らかにした上で、本件を位置づけてい こう。 第二章   先例拘束理論の展開と問題点     アメリカの母国イギリスにおいては、先例拘束は一三世紀のエドワード一世の治世頃に始まり、イヤーブックの 期間を通して、厳格な先例拘束の伝統が築かれてきたとされる。アメリカにおいても、これが継承されたが、二〇 世紀に入り、先例拘束に関する考え方がイギリスとは異なることが明らかになってき た ( 5 ) 。   先例拘束の利点と法の成長   先例拘束については、当初より「法における安定性と確実性」が利点として挙げられていた。法の確実性は、法 の 合 理 性 よ り も 一 層 重 要 と 考 え ら れ た の で あ る ( 6 ) 。 次 に、 「 利 便 性 」 で あ る。 先 例 拘 束 の ル ー ル は、 当 面 の 問 題 を 最 初から考察する手間を裁判官から省かせ、 弁護士には、 その依頼人へのアドバイスを可能にし、 一般人に対しては、 契 約 そ の 他 の 権 利 が 裁 判 所 に お い て 守 ら れ る こ と を 確 実 に す る ( 7 ) 。 更 に、 「 恣 意 的 判 断 の 排 除 」 で あ る。 判 事 は、 そ の恣意的な意思ではなく、法に基づく判断を下していることを示すことが可能になるのであ る ( 8 ) 。   しかし、先例への拘束を絶対とする考え方は、アメリカにおいては比較的早い時期から採られてこなかっ た ( 9 ) 。そ の理由は、先例拘束が有する価値は、法の成長及び変革に、時としてその道を譲らなければならないとされたから であ る )(( ( 。完全な安全性・画一性・予測可能性と同時に、完全な柔軟性を示すことは不可能である。両者のバランス

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を維持することが課題として意識されていたのであ る )(( ( 。   と こ ろ で、 英 語 圏 に お い て は、 「 裁 判 官 に よ る 法 」 と「 制 定 法 に よ る 法 」 の 二 つ に 分 け ら れ、 前 者 は、 古 来 よ り 存在していた一般的な慣習を裁判所が「証明」したものであり、先例拘束の理論によってその内容が確定的となる の で あ る )(( ( 。 も っ と も、 こ の 理 論 に お い て も 先 例 変 更 は 必 ず し も 否 定 さ れ て お ら ず、 先 例 が「 法 」 を 正 し く「 証 明 」 していなかったのでこれを改め、したがって「法」そのものを変更したのではなく、変更された先例は悪法ではな く法ではなかった、とされ た )(( ( 。   制定法解釈と議会の沈黙   後者の、制定法解釈に関する先例を変更する場合には、裁判所と議会との関係が問題になる。もしも、裁判所に よる解釈に不満があれば、 議会は改正の手続をとるはずである。それにもかかわらず議会が「沈黙」している場合、 議会は先例の解釈を支持しており、これを裁判所が変更することは、議会の立法権を侵害することになるのではな いかということであ る )(( ( 。この場合、先例への拘束は強く裁判所に及ぶことになる。   しかしながら、このような形式的な考え方は、最高裁の多数意見を構成することはなく、現実にも、先例変更は 頻繁に行われている。その理由として、第一に、最初の解釈が、議会の意図するところを誤解していたならば、裁 判所がこの先例を変更しても、議会の立法権を侵害することにはならない。第二に、制定法への以前の解釈が、後 にとられた政策と一致していない場合、以前の解釈への固執は、進行中の立法府の意図を損なうことになる。第三 に、以前の解釈が機能しないことが判明した場合にも、これに固執することは、議会を軽んずることになるからで あ る )(( ( 。 そ し て、 何 よ り も、 政 治 プ ロ セ ス は 多 様 で あ る の で、 議 会 の「 沈 黙 」「 不 作 為 」 が 実 際 の と こ ろ 何 を 意 味 す

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るかを判断するのは困難である、とするのであ る )(( ( 。   不確定な憲法の文言と段階的な意味の確定   以上は制定法解釈に関する先例変更の問題であるが、憲法解釈に関する先例変更の場合には、これをより緩やか に認めていく傾向があるとされている。その理由として、まず、憲法そのものの機能と特徴を確認しておくと、そ の文言は一般的で、不確定であり、その具体的な意味を明らかにしなければならない。しかし、裁判所は、完全な 定義を下すことなく、先例の集積の中で、あるものは採り入れ、あるものを排除しながら段階的に意味内容を確定 しようとす る )(( ( 。これにより、憲法の改正が困難であっても、継続的・平和的に社会変革に対応することが可能にな るのであ る )(( ( 。   先例の区別・浸食と事後法の禁止   このような柔軟性が憲法の特徴であるが、 最高裁が憲法の解釈を変更する場合、 先例への「説明」 「区別」 「限定」 という方法が用いられるのが一般であ る )(( ( 。そして、この「区別」等が、実質的には先例変更につながる。法に突然 の変化をもたらすのではなく、先例の浸食が「区別」により徐々に進んでいき、既成事実となった法の変化を最終 的に確認することになるのであ る )(( ( 。   しかしながら、憲法においても「区別」等によらない直接の「変更」も行なわれてい る )(( ( 。この変更の場合に特に 問題になるのが、遡及的な不利益であり、先例変更のおかげで財産や契約上の権利を失った訴訟当事者への救済を いかにはかるか、問題となる。

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  これについて、憲法は事後法の禁止によって対応しようとしてい る )(( ( 。しかし、この規定は、その明文からいって も、議会を拘束するものであって、裁判所が、先例変更により事後的に不利益をもたらした場合には直接には適用 されない。   しかし、行為時の法に信頼したところ、遡及的に思わぬ不利益を受けた場合、それが裁判所による先例変更であ るというだけで一切の救済が認められないでよいか、問題とされるべきである。変更判決の遡及適用は、商取引の 安全を害し、権利は不安定になり、裁判所の判断に対する信頼が破壊され る )(( ( 。更に、刑事法の分野では、犯罪者を 生み出すための罠となるおそれもあ る )(( ( 。そこで、裁判所にも適用可能なデュープロセス条項により、この問題に対 処することが考えられる。   もっとも、前提となる「信頼」は法的なフィクションにすぎない場合も少なくな い )(( ( 。また、先例が明らかに誤り である場合には、合理的な人間であれば、それが現在または将来の裁判所の審査に耐えられないことをあらかじめ 警告されていることになる。従来からのルールへの「合理的な期待」及び「正当な信頼」が、先例変更により打ち 破られることにならないか、考察されるべきであろ う )(( ( 。   以上が、先例拘束・先例変更に関する理論の展開と問題点であるが、リジン事件の提起している先例変更はこれ らの理論の展開のいずれに位置づけられるか、次に検討してみよう。

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第三章   先例拘束理論とリジン事件の位置づけ   コモンロー制定法としてのリジン事件   まず、 この事件においては、 シャーマン法という制定法の解釈が問題になっている。この場合、 一般論としては、 先例変更は強く及ぶとされてい る )(( ( 。しかしながら、多数意見は、シャーマン法はコモンロー的な理解が必要である としている。その根拠として、法律の文言は広汎・不確定であり、その意味するところは、具体的な事件解決を通 して、時代・事態に即して動態的に決定される。つまり、議会は、法律の具体化を裁判官が行うことを予定してい るのだとしている。このような、コモンロー制定法という性格づけを前提に、シャーマン法に関する先例拘束は強 くは及ばない、とするのが多数意見であ る )(( ( 。この考え方は、上述の、憲法に関する先例拘束の議論とかなり類似し ているといえる。   しかしながら、コモンロー制定法としての性格づけがなされても、直ちに先例拘束が及ばないとはいえない。コ モンローの基本に横たわる「法宣言説」は、むしろ強度の先例拘束を予定し、だからこそ、現実の要請に応える柔 軟な判断を示すために、先例との「区別」等の方法が発達してきたのである。この「区別」等を駆使し、先例の浸 食を進め、形骸化した時点をとらえて「変更」を行ってきたのである。そして、このプロセスを経ることが、変更 に際しての不意打ちを当事者に被らせることを緩和し、ひいてはデュープロセス違反となることを防いできたとい える。

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  再販維持に関する現在の評価   そして、シャーマン法に関するこのような理解と先例拘束の在り方については、多数意見と反対意見との間にそ れほどの違いはない。それぞれの結論に影響を与えているのは、 再販維持を 「当然違法」 とする先例を変更する 「現 在の」必要性、及び、そこに至る「浸食の程度」に関して、その認識に違いが生じているのである。多数意見は、 「当然違法」に強い疑問を抱くだけでなく、 「浸食」も相当程度に進んでいるとする。   一 方、 反 対 意 見 は、 再 販 維 持 を「 当 然 違 法 」 と す る こ と は 現 在 に お い て も 正 当 で あ り、 「 合 理 の 基 準 」 に よ っ て 判断することこそ問題であると反論する。これに加えて、議会が当然違法を支持しているにもかかわらず、再販維 持に競争促進的な効果があるとの経済学説を支持することは、司法の限界を超えているとして多数意見を批判して いる。   このように、先例拘束の問題は、判決当時に通用していた先例理論の妥当性をいかに考えるのかと密接な関係が あることが分かる。更に、先例の内容が妥当性を欠くとしても、その変更が当事者にとって予想外の不意打ちをも たらすことについてどう考えるかの問題も重要である。これについて、先例が著しく妥当性を欠くに至っているな らば、変更によるリスクを当事者に負担させることは必ずしもデュープロセスに違反せず、また、先例への浸食が 進んでいるかどうかは、この不意打ちという観点からも重要であり、多数意見と反対意見もこの点を意識して見解 が分かれているといえる。   そこで、この対立を考える上で、ドクター・マイルズ事件(一九一一年)からリジン事件(二〇〇七年)までの 関連判例の流れを確認し、先例理論の浸食がどのように進行しているかを知ることが重要になる。この点について は、以下のような整理が可能であ る )(( ( 。

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第四章   先例である「当然違法」理論の浸食   関連判例の動向   まず、 シャーマン法一条の意味についてランドマークとなる最高裁の判例はスタンダード ・ オイル事件(一九一一 年) ( Standard Oil Co. v. United States, 221 U. S. 1 ( 1911 ) )である。この判決で、最高裁は同法一条が禁止して いるのは、 コモンローに由来する不合理な制約 unreasonable restraints のみであるとした。競争を抑制する契約す べてが違法というわけではなく、独占を形成し、又はその結果として価格を高騰させ、供給を減らし、品質を下げ る等をもたらす協定が不合理な制約にあたるとした。   逆 に、 そ の 行 為 の 性 質・ 特 徴 等 が、 一 見 し て on their face 不 合 理 で あ り、 現 実 に ど の よ う な 結 果 を 生 じ さ せ て いるかを検討するまでもなく非難されうる協定が存在することも示唆していたことは重要である。   更に最高裁は、 同条の文言である「取引制限」 restraint of trade の意味について、 柔軟なアプローチ、 すなわち、 経済学上の概念に照らしながら理論を再形成していくコモンローのアプローチを採ることを明らかにした。具体的 には、 合理の基準を用いて判断がなされ、 支持されている経済理論が反トラスト法に反映しうるということである。   スタンダード・オイル事件(一九一一年)の六週間前に下されたのがドクター・マイルズ事件(一九一一年)で ある。製造業者が再販価格をコントロールするため、ひとつには、流通業者と委託契約を結び、指示価格により販 売する小売業者のみに製品を卸すことを協定し、もうひとつは、小売業者の指定をおこなった。そして、指定を受 けていない小売業者が、指定小売業者及び受託業者に対して、指示価格よりも低い価格で販売するように説得した ところ、製造業者がこれを禁止しようとしたという事件であ る )(( ( 。

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  最高裁は、再販維持は、当然違法とされている小売業者間の水平協定と同等であるとし、この判例がリジン事件 (二〇〇七年)の先例となった。   しかしながら、 この事件から一〇年もたたないうちに、 最高裁はこの判決の範囲を少しずつ限定してきた。まず、 製造業者は価格を示し、値引きした業者との契約を打ち切ることは、再販価格を固定するあらかじめの協定が締結 されていないならば、 許されるとした( See United States v. Colgate & Co., 250 U. S. 300 ( 1919 )) 。七年後、最高 裁は、委託契約により、製造業者が製品の所有権を保持しているならば、再販維持は当然違法とはいえない、とし た(

See United States v. Gen. Elec. Co., 271 U. S. 476

( 1926 )) 。   こ の 後、 大 恐 慌 の 時 代 に 入 り、 こ れ を 乗 り 切 る た め、 い っ た ん は 再 販 維 持 を 認 め る 立 法 及 び 行 政 上 の 措 置 が 採 ら れ た。 し か し、 こ れ ら が 立 法 に よ り 再 度 廃 止 さ れ た の を 受 け て、 最 高 裁 は ア ー ノ ル ド 事 件( United States v. Arnold, Schwinn & Co., 388 U. S. 365 ( 1967 ))において、非価格垂直規制である排他的地域や顧客配分について、 それが、製造業者から販売業者への所有権の移転を伴う場合には、常に、当然違法であるとした。   しかしながら、最高裁はコンチネンタル ・ テレビ事件( 1977 年) (

Continental T.V., Inc. v. GTE Sylvania, 433 U.

S. 36 ( 1977 ))において、 非価格制限行為に関しては必ずしも当然違法とはいえないと判断した。その理由として、 このような制約が当然違法とされるためには、考慮されるべき価値が欠けているということが必要である。しかし ながら、本件のような非価格規制がなければ販売者は、望むままの地域で販売するなどが可能になり、期待されて いる販促を行わない業者にフリーライドを許してしまう。これにより、販売者による販促活動は躊躇され、ブラン ド間競争が阻害されてしまうとし た )(( ( 。   カーン事件( 1997 年) ( State Oil Co. v. Khan, 522 U. S. 3 ( 1997 ))において最高裁は、三〇年間にわたり先例で

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あった再販上限価格規制が当然違法であるとの考え方を変更した。これを当然違法とする考え方はもはや確立した 経済学に一致していないが、先例拘束の理論によってこのルールに固執することを強いられるか、問題とされたの である。そして、先例拘束は一般には制定法律が問題になっている領域では強くはたらくことを前提に、反トラス ト法の領域においては、 議会は、 裁判所にコモンローの伝統に従って法を形成することを期待しているとした( see K ha n , 522 U. S. at 20 ― 22. )。   以上が、ドクター・マイルズ事件(一九一一年)以降の判例の流れであるが、再販維持が当然違法であるとの先 例には浸食が進み、 形骸化され、 これを変更しても当事者に「不意打ち」をもたらさないといえるか、 問題となる。 この点について検討する前に、再販維持に関し、議会と行政府はどのような措置を採ってきたかを確認し、その流 れに裁判所がどのような理解を示し、当然違法を考えてきたのか確認しておこ う )(( ( 。   再販維持に関する立法の流れ   ドクター・マイルズ事件(一九一一年)で示された、再販維持が「当然違法」であるとの考え方は、大恐慌が始 まった時にはこの国の法であった。しかし、大恐慌を乗り切るため、連邦政府は各州に対して実験的に、再販維持 を 行う こ とを 認 めた。 すな わ ち、 一九 三三 年、 連邦 議 会は 国 家産 業 回復 法 National Industrial Recovery Act ( NI R A ) を 通 過 さ せ、 大 統 領 の 署 名 も 得 た。 N I R A は 産 業 ご と に 公 正 な 競 争 を 実 施 さ せ る た め、 規 則 code 制 定 権 を 大 統 領 に 認 め た。 そ の 結 果、 再 販 維 持 を 義 務 づ け る 約 八 〇 の 規 則 が 定 め ら れ た )(( ( 。 こ れ に 対 し て、 合 衆 国 最 高 裁 は、 再販維持の義務づけを無効としたが(

A.L.A. Schechter Poultry Corp. v. United States, 295 U. S. 495

1935

))

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一九三七年までには、四二州が、州内取引において再販維持を認めていた。   そ こ で、 連 邦 議 会 も 同 年、 ミ ラ ー・ タ イ デ ィ ン グ ス 法( 三 七 年 法 ) を 定 め、 州 際 取 引 に お け る 再 販 維 持 を 免 責 とすることにより、これらの法律に実効性を与えた。更に、一九五二年にはマクガイア法(五二年法)を制定して 三 七 年 法 を 強 化 し、 契 約 に サ イ ン を し て い な い 小 売 業 者 に 対 し て も 再 販 維 持 を 課 す こ と を 可 能 と す る 立 法 権 限 を 州 に 認 め た。 こ れ に 基 づ く 立 法 は、 公 正 取 引 諸 法 律( fair trade laws ) と 呼 ば れ、 反 ト ラ ス ト 法 の 適 用 除 外 と さ れ た )(( ( 。   し か し な が ら、 一 九 七 〇 年 代 の 半 ば ま で に 消 費 者 は 再 販 維 持 が も た ら す 結 果 に つ い て 大 い に 不 満 を 感 じ る よ う に な り、 各 州 の 公 正 取 引 諸 法 律 は 廃 止 さ れ て い っ た。 ま た、 連 邦 議 会 も、 停 滞 し た 経 済 と 激 し い イ ン フ レ に 直 面 し、 一 九 七 五 年、 消 費 者 に 低 価 格 の 商 品 を 提 供 す る と の 明 確 な 目 的 の 下 に、 消 費 者 商 品 価 格 法 Consumer Goods Pricing Act of 1975 (七五年法)を制定し、再販維持に認められていた反トラスト法の適用除外を廃止した。   こ の よ う な 立 法 の 沿 革 に 照 ら し 、 再 販 維 持 に つ い て 現 在 の 立 法 者 は ど の よ う に 考 え て い る か に つ い て 議 論 が あ る 。   ひとつは、七五年法は、当然違法を全面的に復活させたという理解である。コマナーは、最高裁は一九一一年に 再販維持を当然違法とし、 その後、 連邦議会がこの判決を覆して、 再販維持はビジネスの方法として許されるとした。 しかし、七五年法は、この立法を廃止したのであるから、最高裁の当初の考えである当然違法は実質的に維持され ているとし た )(( ( 。同様にハーバーは、七五年法が定められた理由は、公正取引諸法律が失敗であったと連邦議会が判 断したからであるとする。すなわち、再販維持は、消費者価格を上昇させ、流通、小売における改革を妨げ、新し い競争者及び製品の参入の機会を減らし、販売店当たりの販売水準を制度的に引き下げ、ブランド内・外の競争の レベルを下げる、つまり、再販維持の正当化理由である、小規模店の促進、付加的サービスの提供、フリーライド

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の防止は認められないとしたのであ る )(( ( 。   こ れ に 対 し て イ ー ス タ ー ブ ル ッ ク は、 七 五 年 法 は 直 ち に 当 然 違 法 の 復 活 を 議 会 が 意 図 し た わ け で は な い と す る。 すなわち、連邦議会はこの立法に際して、再販維持は当然違法であると宣言することも可能であったにもかかわら ず、これを行っていない。七五年法は、再販維持を当然違法と考えるのか、それとも、コモンローに従い、裁判所 によるルールの変更の余地を認めているのか、いずれとも理解することは可能であるとするのであ る )(( ( 。   こ の 考 え 方 は、 リ ジ ン 事 件( 二 〇 〇 七 年 ) に お け る 多 数 意 見 の 考 え 方 で あ る が、 マ ク ミ リ ア ン は 批 判 し て い る。 す な わ ち、 多 数 意 見 は、 七 五 年 法 は、 再 販 規 制 を 当 然 違 法 で 審 査 す る こ と を 定 め た の で は な く、 単 に 三 七 年 法 と 五二年法が認めていた適用除外を廃止しただけであり、議会はドクター・マイルズ事件(一〇一一年)の「当然違 法」を固定しようと思えばできたにもかかわらず、より柔軟な判断を行う余地を最高裁に認めているとする。しか しながら、このように主張する根拠は七五年法には何等示されていない、と主張してい る )(( ( 。   まとめ   以上、再販維持に関する審査方法として「当然違法」に基づき判断する先例を変更して「合理の基準」によるこ とについて、先例変更の理論という観点から検討してきた。そして、先例変更に関して、時代に即した柔軟な対応 の必要性から先例変更も認められる が )(( ( 、その際には、先例拘束がもたらす安定性及び変更がもたらす不意打ちの問 題が重要である。そこで、先例の変更にあたっては、先例の妥当性を現在の状況に照らして検討することのみなら ず、その「浸食」の程度を考察することが必要である。更には、制定法解釈の問題であるので、議会による法改正 等の動きも重要である。こうした観点からリジン事件(二〇〇七年)をまとめてみると、次のような整理が可能で

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あるように思われる。   まず、ドクター・マイルズ事件(一九一一年)での「当然違法」は現在においてはかなり「浸食」がすすんでい る こ と が 指 摘 で き る。 ま ず、 シ ャ ー マ ン 法 は 制 定 法 で あ る が、 文 言 を あ え て 広 汎 な も の と し、 裁 判 所 に よ る 具 体 化・ 明 確 化 が も と め ら れ て い る( コ モ ン ロ ー 制 定 法 )。 最 高 裁 は、 当 初 よ り、 何 が 違 法 と さ れ る 取 引 制 限 に あ た る かは「合理の基準」に基づいて判断されるべきとし、このことが事例に即した判断を可能にしてきた。ただ、競争 促進的な効果は一切認められない協定等をカテゴリカルに括って、これについては「合理の基準」によるまでもな く「当然違法」とした。そのひとつが再販維持である。   しかしながら、当初は 「 当然違法 」 とされたにもかかわらず、再販維持には競争促進的な側面が見えてきた。そ こで、省力的な「当然違法」にかえて、より慎重に諸事情を検討した上で結論をしめす「合理の基準」が採られる ようになってきたのである。このことは、再販維持と同じ垂直的規制としての非価格規制(地域・顧客)及び再販 上限価格維持に関して、最高裁は「合理の基準」に基づく判断を示すようになってきたことと共通している。この ことは、再販維持においても「合理の基準」が適用されうること予想させ、リジン事件(二〇〇七年)での先例変 更 は 全 く の 不 意 打 ち を 当 事 者 に 与 え た と は い え な い の で は な か ろ う か。 そ う し た 意 味 で、 「 浸 食 」 は す す ん で い た と思われ る )(( ( 。   また、先例変更は「審査方法」に関するものであることも重要である。先例変更は再販維持を一気に「違法」か ら「適法」へと転ずるものではない。その審査を従来のカテゴリカルに「違法」とするのではなく、諸事情を考慮 し た 上 で「 違 法 」「 適 法 」 の 結 論 を 下 す 審 査 方 法 に 関 す る も の で、 こ の 変 更 に よ り 当 事 者 が 不 意 打 ち を 受 け る 不 利 益はそれほど大きいとはいえないのではないだろうか。

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  「 合 理 の 基 準 」 は、 最 高 裁 を し て そ の 能 力 を 超 え た 経 済 学 の 領 域 に 踏 み 込 ま せ る こ と に つ な が る と の 指 摘 は、 現 実の問題としてその審査方法を採ることが妥当か否かの実体的な問題であり、先例変更の限界の議論とは区別され るように思われる。同様に七五年法について、これが再販維持を合法化する大恐慌時代の法律を無効としたことは 確かであるが、その後のシャーマン法の発展については基本に戻りコモンロー的な発展に委ねるのが議会意図であ るとし、半世紀近く前の「当然違法」への復帰に固執しているとすることはできないと考える。   以上、再販維持行為をカテゴリカルに違法と判断するのではなく、諸事象考慮の上で判断するとする審査方法の 変更は、判例拘束の理論に反するものとはいえないと思われる。 ( 1)   例 え ば ダ グ ラ ス は、 裁 判 官 が 擁 護 す る こ と を 誓 っ た の は 憲 法 で あ っ て、 先 達 が 示 し た 憲 法 解 釈 に 対 し て で は な い と し、 憲 法 における先例変更を説明している。 Se e William O. Douglas, Sta re D ec isis , 49 C OLUM . L. R EV . 735, 736 ( 1949 ). ( 2)   先 例 拘 束 の 問 題 に は 二 つ の 側 面 が あ る と 思 わ れ る。 一 つ は、 法 の 安 定 性 等 の 観 点 か ら、 い っ た ん 確 立 し た 法 は 安 易 に は 変 更 さ れ ず、 そ の 上 に 新 た な 活 動 を 安 心 し て 積 み 上 げ て い く こ と を 可 能 に す る と い う こ と で あ る。 本 稿 で は、 こ の 側 面 を 扱 う の で あ る が、 も う 一 つ の 側 面 は、 先 例 に よ り、 法 の 具 体 的 内 容 が 裁 判 所 に よ っ て 明 ら か に さ れ て い く と い う こ と で あ る。 特 に、 制 定 法 の 場 合、 そ の 文 言 の 抽 象 性 は 避 け ら れ ず、 現 実 の 事 件 解 決 に 即 し て そ の 意 味 が 確 認 さ れ る こ と は 少 な く な い。 先 例 と は、 ま さ に こ う し て 形 成 さ れ る 法 の 具 体 的 意 味 で あ り、 学 説 や 実 務 家 に よ っ て 先 例 が 重 視 さ れ る の は こ の た め で あ る。 し か し、 こ の 意 味 で の 先 例 が 尊 重 さ れ る こ と と、 先 例 拘 束 の 問 題 と は イ コ ー ル で は な い。 先 例 の 研 究 は、 事 例 に 則 し た 法 の 具 体 的 意 味 を 理 解 す る こ と に 役 立 つ が、 こ こ で 探 り 当 て た 内 容 が、 い か な る 拘 束 を 生 じ、 あ る い は 生 じ さ せ る べ き か に つ い て は、 別 途 考 慮 が 必 要 で あ る。 先例を参照しつつ現実の問題を考察しようとする場合、 先例の示す内容――主として、 先例が示された当時において――そのもの に つ い て の 研 究 の み な ら ず、 こ れ と は い っ た ん 区 別 す る 形 で、 先 例 の 拘 束 ま た は 変 更 に つ い て の 議 論 が な さ れ る べ き で あ る。 先 例研究にあたり、先例の内容そのもののみならず先例の維持・変更のための視点・基準の確立が求められている。

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(3)   リジン事件を紹介するものとして、 佐藤宏 「リージン事件米最高裁判決 (再販判決) の法廷助言者 (エコノミスト) 意見書 〔訳 文〕 」国際商事法務三六巻九号一一四三頁(二〇〇八年) 、 同「リージン事件米最高裁審理における司法省 ・ FTC法廷助言意見書」 国 際 商 事 法 務 三 六 巻 五 号 五 八 一 頁( 二 〇 〇 八 年 )、 小 畑 徳 彦「 再 販 売 価 格 維 持 行 為 に 関 す る 米 国 の 判 例 変 更 と 流 通 業 へ の 影 響 上  下  リ ー ジ ン 事 件 連 邦 最 高 裁 判 決 」 流 通 科 学 大 学 論 集 流 通・ 経 営 編 二 一 巻 二 号 一 頁、 二 二 巻 一 号 一 七 頁( 二 〇 〇 九 年 )。 な お、 再 販 価 格 維 持 を 合 理 の 基 準 で 判 断 し よ う と す る 場 合、 そ の 立 証 責 任 は 次 の よ う に な る。 ま ず、 原 告 は、 再 販 維 持 行 為 が 反 競 争 的 傾 向 を も た ら す 状 況 に あ る こ と に 加 え て、 協 定 の 存 在 と そ の 協 定 の 機 能 す る 範 囲 に つ い て 主 張 し な け れ ば な ら な い。 こ れ に よ っ て 再 販 維 持 行 為 が 反 競 争 的 で あ り、 不 法 で あ る こ と に つ い て 一 応 有 利 な 証 拠( 反 論 な け れ ば 通 用 す る ) を 示 す こ と が で き る。 次 に 証 明 責 任 は 被 告 に 転 じ、 再 販 維 持 行 為 の 協 定 は、 単 に 理 論 的 に で は な く、 現 実 に 競 争 促 進 的 で あ る こ と、 又 は、 市 場 に 関 す る 原 告 の 理 解 が 誤 っ て い る こ と、 い ず れ か を 証 明 す る こ と が 求 め ら れ る。 い ず れ に せ よ、 被 告 の 証 明 責 任 は、 原 告 の 証 明 の 強 さ と 同 等 で あ る も の と さ れ る。 再 販 維 持 行 為 が、 実 際 の と こ ろ は 競 争 促 進 的 で あ る こ と を 確 立 す る た め に、 被 告 が 最 低 限 度 証 明 し な け れ ば な ら な い の は、 再 販 維 持 行 為 は、 競 合 す る 製 造 業 者 と の 競 争 に 打 ち 勝 つ た め で あ り、 再 販 維 持 行 為 が、 そ の 競 争 促 進 的 な 目 的 を 達 成 す る た め の 合 理 的 な 手 段 で あ る こ と、 で あ る。 Se e Christine A. Varney, A P os t-L ee gin A pp ro ac h to R es ale P ric e M ain te na nc e U sin g a S tru ctu re d R ule of R ea so n , 24 Antitrust A BA 22 ( 2009 ). (4)   その主張するところは以下のようにまとめることができる。再販維持は深刻な反競争的効果をもたらしうる。この行為は、 ブ ラ ン ド 内 / 間 の 販 売 業 者 に よ る 価 格 競 争 を 減 少 さ せ、 消 滅 さ せ る か も し れ な い。 集 中 化 の 進 む 産 業 で は 製 造 業 者 の 競 争 も 減 少 さ せうる。一九七五年、 連邦議会は、 それまで再販維持を適法とする立法を定めることを各州に認めていた二つの法律を廃止したが、 FTCは再販維持が価格を上昇させていたとの調査結果を発表し、 ほとんどのエコノミストもこれらに同意している。再販維持は 有害/有益いずれの効果も生じさせる。いかなる効果が、 どのような頻度で発生するのか、 合理の基準が用いられるべきだとする 前 に、 問 題 と す べ き で あ る。 経 済 学 上 の 議 論 は こ の 問 題 に 役 立 つ か も し れ な い が、 反 ト ラ ス ト 法 に お い て、 エ コ ノ ミ ス ト の 見 解 を正確に再現することはできないし、 すべきものでもない。なぜなら、 法は経済学とは異なって現実に実施されるシステムであり、 そ の 効 果 は、 裁 判 所 に お け る 判 事 や 陪 審 員 及 び 依 頼 人 に ア ド バ イ ス す る 弁 護 士 に よ っ て 適 用 さ れ る ル ー ル と 先 例 の 内 容 に 依 存 し

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ているのである。 (5)   Se e Albert Kocourek & Harold Koven, R en ov ati on o f t he C om m on L aw th ro ug h S ta re D ec isis , 29 I LL . L. R EV . 971, 974-77 ( 1935 ). [hereinafter K oc ou re k & K ov en ] (6)   Se e C ha rle s W alla ce C olli ns , Sta re D ec isis a nd th e F ou rte en th A m en dm en t , 1 2 C O LU M . L . R E V . 6 03 19 12 ). [hereinafter C olli ns ] (7)   Se e R ob er t v on M os ch zis ke r, Sta re D ec isis in C ou rts o f L as t R es or t , 3 7 H A R V . L . R E V . 4 09 , 4 10 19 24 ).) [h er ein aft er M os ch zis ke r ] (8)   Se e Orvill C. Snyder, R etr os pe cti ve O pe ra tio n o f O ve rru lin g D ec isio ns , 35 Illinois Law Review of Northwestern University 121, 123 ( 1940 ). [hereinafter Sn yd er ] (9)   Se e K oc ou re k & K ov en , supra note 5, at 977. ( 10)   Se e William N. Eskridge, O ve rru lin g S ta tu to ry P re ce de nts , 76 G EO . L. J. 1361 ( 1988 ). [hereinafter E sk rid ge ] ( 11)   Se e R os co e P ou nd , W ha t o f S ta re D ec isis ? , 1 0 F O R D H A M . L . R E V . 1 , 1 1 ( 19 41 ).  オ グ リ ベ イ も 、先 例 拘 束 の 背 後 に あ る 考 え 方 は 、 訴 訟 当 事 者 へ の 取 扱 い の 画 一 性 及 び 法 に お け る 安 定 性・ 確 実 性 で あ る と し つ つ も、 そ の ル ー ル が も と も と 誤 っ て い た り、 状 況 が 変 化 し た 場 合 に は、 先 例 か ら 離 れ る こ と に よ っ て も た ら さ れ る 不 利 益 と 利 益 と を 比 較 し、 後 者 が 明 ら か に 勝 る と い う 場 合 に は 先 例拘束は及ばないとしている。 Se e Robert Stephen Oglebay, T he S up re m e C ou rt, Sta re D ec isis a nd L aw of th e C as e , 21 T EX . L. R EV . 514, 539-40 ( 1943 ). 更に Daniel M. Tracer, Sta re D ec isis in A nti tru st: C on tin uit y, E co no m ics , a nd th e C om m on L aw Sta tu te , 12 D EPAUL B US . & C OMM . L. J. 1, 8 ( 2013 )は、考慮されるべき要素を次のようにまとめている。①古い判断が実務的に機 能しなくなったか、 ②古い判断に大きな信頼が寄せられてきたか、 ③新しい法発展により、 古い法はもはや拘束的なものではなく なったか、④事実に関する発展が、 古い法がもっていた正当理由を除去してしまったこと、 更に最近になって、 ⑤先例の古さ、 ⑥ 信頼を寄せることの利益、⑦古い判断の合理性、⑧先例の持つ欠点が、経験則により明らかにされたこと。 [hereinafter T ra ce r ] ( 12)   Se e Edward B. Whitney, T he D oc trin e o f S ta re D ec isis , 3 M ICH . L. R EV . 89, 91 ( 1904 ).

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( 13)   Se e R ob er t H . F re em an , T he P ro tec tio n A f o rd ed ag ain st th e R etr oa ctiv e O pe ra tio n o f a n O ve rru lin g D ec isio n , 1 8 C O LU M . L . R EV . 230, 232-33 ( 1918 ). [hereinafter F re em an ] Se e Note, Pr os pe cti ve O ve rru lin g a nd R etr oa cti ve A pp lic ati on in th e F ed er al C ou rts , 71 Y ALE L. J. 907-08 ( 1962 ).  ( 14)   制 定 法 と 判 決 と の 関 係 に つ い て、 例 え ば、 コ コ レ ッ ク & コ ー ベ ン は 次 の よ う に 説 明 し て い る。 議 会 は 事 件 に 適 用 さ れ る た め の ル ー ル を 定 め、 こ れ を 裁 判 所 は 無 視 す る こ と は で き な い。 し か し、 こ れ ら の ル ー ル に 欠 落 や 不 十 分 な と こ ろ が あ れ ば、 裁 判 所 は 自 ら の 判 決 を 合 理 的 に 説 明 す る た め に ル ー ル を 定 め る こ と が で き る。 し か し、 こ の ル ー ル は 法 と は い え な い。 法 は あ く ま で 三 権 分 立 の 下 で は 議 会 が 定 め る 権 限 を 有 し、 裁 判 所 の 権 限 は 判 決 に 限 定 さ れ て い る。 こ の 判 決 に お け る 合 理 的 な 説 明 は 重 要 で は あ るが法に付随するものにすぎない、としている。 See K oc ou re k & K ov en , supra note 5, at 998. ( 15)   Se e E sk rid ge , supra note 10, at 1399. ( 16)   Se e id. at 1405. ( 17)   Se e C olli ns , supra note 6, at 604-06. ( 18)   Se e Fred W. Catlett, T he D ev elo pm en t o f t he D oc trin e o f S ta re D ec isis a nd th e E xte nt to w hic h i t S ho uld b e A pp lie d , 21 W ASH . L. R EV . 158, 167 ( 1948 ). [hereinafter C atl ett ] ( 19)   Se e C olli ns , supra note 6, at 607. ( 20)   Se e D ou gla s , supra note 1, at 747. ( 21)   Se e John D. Noland, Sta re D ec isis a nd th e O ve rru lin g o f C on stit uti on al D ec isio ns in th e W ar re n Y ea rs , 4 V AL . U. L. R EV . 101, 128 ( 1969 ). ( 22)   合 衆 国 憲 法 第 一 条 第 九 節 一 項 三 項 は、 「[ 合 衆 国 議 会 は ]… 遡 及 処 罰 法 を 制 定 し て は な ら な い。 」、 同 条 第 一 〇 節 一 項「 い か な る 州 も … 遡 及 処 罰 法 も し く は 契 約 上 の 債 権 債 務 関 係 を 害 す る 法 律 を 制 定 し … て は な ら な い。 」 と 規 定 し て い る。 高 橋 和 之 編『 新 版   世界憲法集』五九―六〇頁(岩波文庫、二〇〇七年) 。 ( 23)   Se e Sn yd er , supra note 8, at 150-51 ( 1940 ).

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( 24)   刑事法の分野においては、 行為時において適法であったとされる先例を信じて行動した者を、 先例変更により処罰することは 正義に反する、 との主張がなされている。 Se e Note, T he E f e ct of an O ve rru lin g D ec isio n u po n A cts D on e i n R elia nc e o n t he D ec isio n o ve rru led , 29 H ARV . L. R EV . 80, 82. ) ( 25)   Se e C. Sumner Lobingier, Pr ec ed en t in P as t a nd P re se nt Le ga l S ys te m s , 44 M ICH . L. R EV . 955, 981-84 ( 1946 ) . 更に、実 際 に は 法 を 知 ら な か っ た 者 に 対 し て「 信 頼 」 を 認 め る こ と は 正 義 に 反 す る、 と の 主 張 も な さ れ て い る。 Se e Note, Pr os pe cti ve O pe ra tio n o f D ec isio ns H old in g S ta tu te s U nc on stit uti on al or O ve rru lin g P rio r D ec isio ns , 60 H ARV . L. R EV . 437, 440 ( 1947 ). ( 26)   Se e Note, Pr os pe cti ve O ve rru lin g a nd R etr oa cti ve A pp lic ati on in th e F ed er al C ou rts , 71 Y ALE L. J. 907, 945 ( 1971 ). ( 27)   Lance McMillian, T he P ro pe r R ole of C ou rts : T he M ist ak es of th e S up re m e C ou rt in L ee gin , 2008 W IS . L. R EV . 405 ( 2008 ). [hereinafter M cM illia n ] 連 邦 法 律 を 解 釈 す る 判 決 に 対 し て は、 後 か ら の 裁 判 所 に よ る 敬 譲 を 一 層 受 け る こ と に な る。 こ の 理 由 は、 制定法律への裁判所の解釈に対しては、 議会は、 常に、 法律を新たに制定することによって変更できるのだということから生じて い る。 こ の 原 理 を 最 高 裁 は 長 き に わ た り 尊 重 し て き た が、 こ の こ と は 野 球 の メ ジ ャ ー リ ー グ に 関 す る 事 件 に よ く あ ら わ れ て い る。 最 高 裁 は 先 例 を 変 更 す る こ と を 拒 否 し て き た が、 そ の 理 由 は 専 ら、 議 会 が 最 高 裁 の 先 例 に 応 じ て 立 法 し な け れ ば な ら な い と い う ことであった。 Se e id . at 437. ( 28)   T ra ce r , supra note 11, at 1. ( 29)   判例のながれを整理するものとして Se e William S Comanor, V er tic al Pr ice -F ixin g, V er tic al M ar ke t R es tric tio ns , a nd th e N ew A nti tru st Po lic y , 98 H ARV . L. R EV . 983 ( 1985 ) [hereinafter C om an or ], Se e Alan j. Meese, A sso rte d A nti -L ee gin C an ar ds : W hy R es ist an ce Is M isg uid ed a nd F uti le , 40 F LA . S T . U. R EV . 907 ( 2013 ). [hereinafter M ee se ] 谷原修身「米国における再販価格 維持行為規制の再検討⑴ ― 最近の判例変更を契機として ― 」青山法学論集五〇巻一号二五頁以下参照。 ( 30)   ドクター ・ マイルズ事件(一九一一年)それ自体は反トラスト法の事件ではなくて、不法行為的な干渉が問題になった事件で ある。すなわち、 ある流通業者が、 製造業者が具体的に示した再販最低価格での販売の契約を結ばず、 製造業者の製品を他の流通 業者や小売業者から購入しようとして、 彼らが製造業者と結んだ契約を破るように誘引した、 というものである。最高裁は製造業

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者 と 流 通 業 者 間 の 契 約 が 無 効 で あ る と し た 。 Se e E dw ar d D . C av an ag h, V ert ica l P ric e R est ra int s a fte r L ee gin , 2 1 L O Y . C O N SU M E R L . R EV . 1, 4 ( 2008 ). [hereinafter C av an ag h ] ( 31)   Pamela Jones Harbour, A T ale of T w o M ar ks , a nd O th er A nti tru st C on ce rn s , 20 L OY . C ONSUMER L. R EV . 32 ( 2007 ). リジン 事件(二〇〇七年)は、三〇年前のコンチネンタル ・ テレビ事件(一九七七年)で確立した、垂直規制を二つに区別する考え方を 廃 止 し た。 垂 直 価 格・ 非 価 格 規 制 と の 区 別 で あ る。 前 者 に つ い て は 当 然 違 法、 後 者 に つ い て は 合 理 の 基 準 で あ っ た。 こ れ が、 と も に 合 理 の 基 準 に よ り 判 断 さ れ る こ と に な っ た の で あ る。 Se e C om an or , supra note 29, at 983. 垂 直 規 制 に 対 し て は、 肯 定 的 な 意 見 が 増 え て き た が、 ボ ー ク 判 事 が 最 初 に 示 し た 経 済 分 析 に 大 い に 依 存 し て い る。 ボ ー ク に よ れ ば、 製 造 業 者 は、 販 売 者 が 消 費 者 へ の サ ー ビ ス 提 供 を 促 す た め に 垂 直 規 制 を 行 う。 消 費 者 が そ の 製 品 の 購 入 を 増 や す の は、 料 金 が 上 が っ た こ と を 上 回 る サ ー ビ スの向上があった場合である。 See id. at 983. ( 32)   立 法、 行 政、 司 法 の 対 応 の 流 れ を フ ォ ロ ー す る も の と し て se e C om an or , supra note 29, at 983. 谷 原・ 前 掲 注( 29)一 三 頁 以 下参照。 ( 33)   垂直的な地域制限であるが、 一九四〇年代、 司法省はこれを当然違法と考えていた。一九四〇年代後半、 司法省はその見解を 述 べ、 垂 直 的 に な さ れ る 排 他 的 テ リ ト リ は 当 然 違 法 で、 こ れ を 禁 止 す る 多 く の consent decrees   が 出 さ れ た。 Se e M ee se , supra note 29, at 918. ( 34)   Se e H ar bo ur , supra note 31, at 43. ( 35)   Se e C om an or , supra note 29, at 984. ( 36)   Se e H ar bo ur , supra note 31, at 43-44. ( 37)   Se e F ra nk H . Easterbrook, A nti tru st La w E nfo rc em en t in th e V er tic al R es tra in ts A re a: V er tic al A rra ng em en ts an d t he R ule of R ea so n , 53 A NTITRUST L. J. 135 ( 38)   Se e M cM illia n , supra note 27, at 435. ( 39)   反 ト ラ ス ト 訴 訟 に お い て、 先 例 拘 束 の 理 論 に 柔 軟 性 を 持 た せ る こ と に は 大 き な 利 益 が あ る。 先 例 に 拘 束 さ れ な い こ と に よ っ

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て、 古 く な っ た 反 ト ラ ス ト 法 を 現 代 的 な も の に し、 こ れ を 休 息 さ せ、 新 し い 経 済 学 に 適 応 す る こ と に よ っ て 消 費 者 に 利 益 を も た らすことができる。 反トラスト法訴訟における先例拘束の上に築かれたものは不安定な土台の上に築かれたものである。 その時々 の 経 済 学 と 並 行 し て い く こ と へ の 依 存 が 高 ま っ て い る。 最 高 裁 は 先 例 拘 束 の 原 理 以 上 に 経 済 学 の 考 え 方 に い っ そ う 依 拠 し て い る よ う に 見 え る。 多 く の 事 例 で は 法 は 正 し い よ り も 確 定 し て い る こ と の 方 が 望 ま れ る が、 反 ト ラ ス ト 法 に お い て は 確 定 し て い る こ と よ り も 正 し く 確 定 す る こ と の 方 が 望 ま れ る の で あ る。 Se e Ryan T. Jardine, C as e N ote : E co no m ic La w ― V er tic al M ini m um Pr icin g i n L ee gin ― A dr ift w ith th e R ule of R ea so n; Sin kin g w ith S ta re D ec isis ; L ee gin C re ati ve L ea th er P ro d., In c. v. PS K S, In c., 12 7 S .C t. 2 70 5 20 07 ), 8 W YO . L. R EV . 683, 701 ( 2008 ). ( 40)   カ バ ナ フ は、 裁 判 所 は 先 例 を 安 易 に 変 更 し て い な い、 と り わ け 一 世 紀 に わ た る 先 例 に つ い て は、 と し て い る。 そ し て、 先 例 変更にあたって裁判所は、 対象となっているルールが耐えがたく機能不全に陥っているかどうか、 それが拒否されると困難や不公 平が生じてしまうような信頼をそのルールがもたらしているかどうか、 そのルールは廃棄された理論の残滓となってしまう程に法 が 発 展 し て い る か ど う か、 ル ー ル が 不 正 で あ る と 見 え る ほ ど に 事 実 が 変 化 し て い る か ど う か、 と し て い る。 Se e C av an ag h , supra note 30, at 28. ―みやはら   ひとし・法学部教授―

参照

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