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急性腹膜炎の治療

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一一一 89 一一 〔綜

説〕

(東京女医日誌。第22巻第3号頁89−93 昭和27年8月)

急性腹膜炎の治療

緒 東京:女子医科大学外科漱室 (主任 榊原仔教授)

助敏授 織

オリ 言 急性腹膜炎の治療に関しては一般に熟知ざれている 所である。それに竜拘らず実際にそれを適用する場合 に,何時,如何に行うか,基準を立てるのに甚だ困難 を感ずることが決して少くない。この事は一つには早 期診断が難しいこと又一つには優秀な化学療法剤の出 現で保存的療法に頼る傾向があるからであろう。 我々外科医としても切らずに治療出来ればこれに越 した喜はないのである。しかし腹膜炎治療の歴史を省 み,又実際手術を行ってみると,やはり早期診断,早 期手術の重要さを痛感する。 嘗って1世紀昔,未だ手術療法の行われない時代に は,保存的療法めみが行われた。従って患者は大部分 死亡したが,た黛稀に腹膜炎が限局して膿瘍をつくり 之が腸管内憂は体外に破れて自然治癒を営むことがあ・ つた。之が暗示となb1848年Hancochによって積 極的に腹膣を切開し,膿を排除する外科手術が行われ 非常な効果をあげた。それ以来外科療法が次第ec一“般 に認めちれ,K6rte1)Kirschner7)Petermann3) 等 の業績により更に急性腹膜炎の研究がす曳み,外科療 法が発達した。我国に於ても大正2年塩田教授4),昭 和12年横Eli5) 河石6) 教授等が外科学会に於いて 「急性腹膜炎」の宿題報告を行っている。従って急性爾 蔓性腹膜炎が三って90%の死亡率を持っていたが, 外科療法によって非常に減少し1930年頃Nordmann によれぽ10∼40%である。その後Sulfamin剤, Penicillin, Steptomycin等抗生物質の進歩は更に之 を減少せしめていることと考えられる。然しながら筒 少数ではあるが死亡例がある事は我々の大いに注目し 且検討を要する点である。

1.我が教室に馳ける約3年間の急性腹膜炎の

統計観察

昭和24年7月より昭和27年3月末まで2年

9ケ月間の開腹手術総数は390名で入院総数1301 名の3⑪%にあたる。之を各疾患別に見ると(第 三 ハタ

ヒデ

オ 1図)の如くである。虫垂炎:258例中,限局性腹: 膜炎は炎:症局所に膿が溜り周囲に癒着があり膿瘍 形成の傾向をもつ例,叉禰蔓性腹膜炎はダグラス 腔にも膿が存在して拡大する傾向のある21例で ある。 300. !

250

200

コ50

10C

50

第 1 図 最近約3ケ年の開腹例の 疾患別にみアこ急性腹膜炎

限斎粧腹膜炎翅

灘蔓紫腹膜炎薩

t

藝鶏難璽蘇

胃疾患38例,之は胃潰瘍及び胃癌を含み,被覆 穿孔で癒着及び周囲炎を伴う限局性のもの3例, 何等被覆されす拡大す傾向の彌蔓性のもの4例で ある。 胆嚢炎9例,中,禰蔓性胆汁性腹膜炎を起せる もの2例がある。

膵臓炎13例,申,ダグラス窩その他に炎症性

滲出液を認めた彌蔓性のもの7例,他は限局性で ある。

一工一

(2)

一〇〇一

腸閉塞36例,屯被覆穿孔をなせる限局性の

もの2例,二次的腹膜炎による彌蔓性のものはな かった。 手術後腹膜炎を起せる例は何れも禰蔓性腹膜炎 である。 其の他の14例中には淋菌性禰蔓性腹膜炎1例, ダグラス膿瘍1例がある。

以上の如く急性腹膜炎総数は68例で,全開腹

手術例の17%に当る。この中限局性腹膜炎:が46

例,禰蔓性が22例である。腹膜炎による死亡例

は7例で腹膜炎全例の10%を占め何れも禰蔓性

腹膜:炎によるものである。この数は決して少いと はいsきれないものがある。これ等の症例は種々 我’々に教える所がある0 2.各疾患別の死亡例を二心にした考察 虫垂炎258例中,限局性腹膜炎31例(12%), 禰蔓性腹膜炎12例(5.6%)で比較的少数である これは早期発見,早期手術の励行されるためと考 えられる。、 急性虫垂:炎による腹膜炎で死亡せるものは穿孔 熱電蔓性腹膜炎を呈せる1例である。死亡率1.5 %全体のそれに比して甚だ少い。 本症例は26歳女性で,腹痛をもつて発病し,発病 後4日目に手術をうけ,穿孔性禰蔓性腹膜炎であった。 然も当時患者は妊娠7ケ月であった。従来妊娠,産褥 の腹膜炎は予後が悪いとざれている如く,その後の経 .過は果して悪く,横隔膜下膿瘍を合併し7日目に死亡 した。患者は:入院前,発病2・日目に医師の診察をうけ ペニシリンの注射をうけている。之は妊娠中,手術を すると流産するかと心配した為にペニシリンの注射に よって治癒を期待したのであろうが,若し診断がつい ていたとするならば,この為に2日聞遅延したこと1 大なる誤りであったと云1わなければならない。 従来妊娠中の急性虫垂炎に対しては普通人同様 か,或はより一暦悪化が速かで,且つ予後不良な 点より,一一暦速に手術を行うのがよいとされてい る。手術による流産の危険は少く,余り問題とす べきではない。この例では既に手術前,病院の玄 関先で流産をしており,寧ろ腹膜炎そのものが流 産の原因となっているものである。 胃疾患38例,中,穿孔性禰蔓性腹膜炎4例でこ の1申例が死亡し,他は手術によって治癒しアこ。 この死亡例は62才男性,昔から胃が弱かったが 約3ケ月前,腹痛と共に腹部膨隆,圧痛があり, 医師にストレプトマイシンの注射をうけ,精々軽 快しアこそうである。然しその後軽い腹痛,腹部膨 満,嘔気等が続き,3ゲ月後に入院し,腹膜炎:と して開腹しアこ所,腸全体が結合組織性の被膜に覆 われ,腸管を全く認めす,その一部を組織学的に 検査した所,:炎症性結合組織増殖の間に癌細胞を 認めナこ。珍しい経験なので釈然としなかつずこが, 死後剖検により胃癌の穿孔性腹膜炎と分つた。斯 様に急性腹膜炎に対して化学療法を行う.と,診断 ’を誤う且つ手術の時期を失う危険のあることが分 る。他の手術例は何れも治癒しているが皆早期手 術を行っているからである。 胆嚢炎4例で,禰蔓性胆汁性腹膜炎が2例ある。 この申1例が死亡しナこ。 本震茸0オ男性。悪寒戦標と共に38。Cの高熱を発 し黄胆,上腹部の疹痛,悪心嘔吐を来し,以後保存的 治療が続けられ17日後に外科に来た。当時は,黄土強 く,腹部は中等度に膨満し,軽い浮腫を認め,且つ嚢 弱相当甚しく,既に手術の適応をはずれていた。手術 の結果強度のfig“fr性腹膜炎を認め,胆嚢中に又論陣胆 直中には多数の胆石を認め,胆石除去,胆嚢切除及び 『』U導を行った。輸血,輸渡,ペニシリン,強心剤注射 を強力に行ったが11日目に死亡した。 この例は70歳の老人で然も重症腹膜炎であるにも 拘らず,術後11日も謡えでいるのである。若し早期 に手術を行えば恐らく助かったであろうと思われる。 斯様に早期手術は必要であるが,殊に黄胆の場合には 重要である。 膵臓炎に就ては開腹誘導,輸血,輸液,ペニシ リン注射等で何れも治癒しているb

腸閉塞36例で,2例に被覆性穿孔を認めこの2

例は,手術後,瀟蔓性腹膜炎を起して死亡しt:。 この第1例は62歳男性,夜閲突然腹痛を起し医師 に鎮痛剤の注射をうけたが,疹痛が続き2・一3日して 唾:肚,発熱したσ10∼15分・をぎに呼込むような疹痛 があった。11日後に入院,当時,腹部が膨隆し腸の輪 廓,蠕動不穏を認め,腸閉塞の診断の下に手術を行つ た。小腸に被覆性穿孔があったため,腸を移動する中 に膿汁が溢出し,胆嚢内容も流出し,結果として灘蔓 性腹膜炎となり,手術終了後,種々の治療,轍臨輸 液ジ化学療法等を行ったが遂に死亡した。 この例は老入で,長い聞食事摂取が少く,又腸 閉塞で水分も不足し,衰弱が甚しく,手術に対す

(3)

一’X1 一 る抵抗力の低下が大きな原因と考えられるもので 之も早期であれば或は何とか助けられ7こものと考 える。 第2例は61歳女性で,同様室腸の腹壁えの被覆穿 孔で亜腸閉塞を起し約1週間後に入院し,直に開腹, 腸吻合を行ったが,その部の縫合不全:で瀬蔓性腹膜炎 を起して死亡した。 この例も長時聞に衰弱甚しく,縫合不全を起し易か ったともいえよう。何れも早期手術を行うべきことを 暗宗している。 手術後腹膜炎3例は何れも禰蔓性腹膜炎で皆死

亡している。前記腸閉塞の2例と次にのべる1例

である。 この例は胃潰瘍で胃切除後に2日後位から縫合不全 による腹膜炎の徴を認め,4日目再手術,切開,排膿 誘導を行った。以後毎日ペニシリン60万単位,スト レプトマイシソO.5g,輸血200∼400cc,輸液1500∼ 2000ccを約1週問続け,一旦良好と見えたが誘導部か ら胆汁の流出が強く,栄養に困り,18日目腸痩造設を なし,之から栄養を開始したが20日目全身嚢弱つよ く死亡した。この例は結局死亡したが,相当長期間生 存したものである。斯様に最近の治療法によれば相当 にひどい腹膜炎も,切開誘導のみで,よく軽快するこ とが分るしかし,根源たる病集の除去が行われない時 はやはり予後が悪いということも示唆している。

次に其の他に属する41例中に死亡は1例で淋

菌性彌蔓性腹膜炎である。 本例は24歳,女性,妊娠9ケ月,初め,悪寒戦藻 と共に38−39。Cの高熱,同時1こ腹痛が起り,嘔吐も あった。やがて右下腹部に疹;痛が限局し,2日目に早 産し,4臼目非常に重篤な状態で入院した。笹子腹部 膨隆し,回腸を呈し,腸麻痺の状態であった。手術に より排膿,誘導を行い,ペニシリン注射,輸血』700cc, リソデル氏液1500cc,強心剤,ワゴスチグミンの注射 等によって,ショック状態を乗り切り一時よくなりか けたが,その後,種々治療を行ったが腸麻痺が恢復せ ず,3日目,腸の最も膨満乙た部に自己を造設,嬬動 充進を計ったが威功せず4日目に死亡した。 此の例は手術時期を失して腹膜炎の末期症状の 腸麻痺を呈してから手術をうけ,手術の際はシ・ ック状態であっアこ。こうした例にはショヅクの治 療が重要で,輸血,輸液が最も必要である。乙の 点は充分行つナこ積bであるが,遂に腸麻痺が恢復 せす死亡しtこもので,手術時期を逸しiこことが大 きな原因と讃えられる。 従来,淋菌,による腹膜炎は予後比較的三三と いわれるが,斯様な重症例もあることは大いに心 すべきことである。 次に治癒生存例の代表的2例をあげる。 第1例は胃部疹痛,悪心1嘔吐,発熱で発病,翌日疹 痛は右下晦部に限局入院,手術を行う。穿孔性虫垂炎 性隔蔓性腹膜炎で相当にひどがった。虫垂切除後語導 を右下腹部及び下腹部申央下部に行い,術後,輸液, 輸血の外に大量の化学療法,ペニシリン40,GGO単樹4 時間8日聞,ストレプトマイシン。.59!日5日聞,オ オレヲマイシソ500加g!6蒔問7日間つL・けた。経過 は非常に順調で,6日目には,入院時39.8。Cが37。C 以下に解熱し,誘導部の肉芽三鼎も速く,治癒日数ヵミ 非常に短いのに驚いた。 この例は相当な重症であったが現在用いられる最高 級の治療によって短期に治癒したもρで,之1ま化挙療 法の効果を如実に示したものといえるσ 第2例は腹部外傷で,自動車衝突で突然腹部1こ重圧 をうけた。直に入院し約4時聞後に開腹手術を行った 所,腹膣内出血,腸聞膜動脈の損傷,小腸の破裂があ った。手術は鍮液楡血のもとに行われ,破れた1血管の 結紮,穿孔小腸切除,腸吻合を行い,一次的に閉鎖し た。その後順調に経過した。ペニシリン注射は術後2 旧聞与えただけである。 この例は胃腸損傷でも早期手術なれば急性腹膜炎の 心配が非常に少いことを物語っている。即ち,耳期手 術が如何に手術の結果をよくするものかうか§い知る ことが出来る。 以上代表的例として色々の死亡例及び治癒例を あげ7二が,死亡例は総てが,発病後の経過が長く 甚だ進行し7:末期的状態になってから手術をうけ て旧り,手術の時期を失しずこものといわざるを得 ない。そのあるものは慈恵療法に頼つ7r一結果,時 日を経過しナ;例もあり,必ずしも化学療法に頼り 得ないことを明示している。早期手術であれば, 殆ど必要がないが,稚・々遅い重症例には術後の化 学療法が相当に有効である乙ともうかS’える。

3.急性腹膜炎の治療法

先ず早期の診断が治療上等も大切であり,之が 治療の第一歩となる。そして急性腹膜炎を起す原 発巣の除去ということが最も理想的な治療法であ る。 ’ 勿論原発巣の部位によって急性虫垂炎,胃穿孔 一 3一

(4)

一一一 92 一 胆嚢炎或は膵臓炎等症状が異り叉手術方法も異る が,現在の如く手術の安全性が確立された以上は 早期に手術療法を行うことが最も望ましく且つ正 しいこと5考える。 最近数年,ペニシリン,ストレプトマイシン, オオレオマイシン,クロロマイセチン,テラマイ シン等と続々薪抗生物質が登場し,それ以前盛に 使用しt: Sulfamin剤に代って,細菌性疾患治療 の寵児の感がある。急性腹膜炎も対象の一つとし て取上げられているが,我々は専ら外科的治療, 即ち病巣除去後の腹膜炎その他を防止し,一次的 治癒を促進する意味に使用する。 然るに一部保存的療法を好む人が,手術療法を 二義的に考え,専ら化学療法剤に頼ろうとするの は余りに無謀である。化学療法発達以前に急性虫 垂炎の相当数が保存的に治癒し,残りの少数が重 症となつナこのである。即ち化学療法がなくても治 るものがあるので,必ずしも化学療法をやつナニか ら治ったということはいえないのである。叉残り の重症例が果して化学療法で治るものかどうか大 いに疑問としている。事実前に述べ忙症例の如く 必ずしも化益療法で治らす,悪化するものがある。 従って少数でも不治のものがあるならば,之を 治療するのに安全且つ確実な手術療法を選ぶのは 当然であろう。 化学療法剤は腹腔内に移行し難い,叉膿瘍内に ミも這入り難いといわれる,従って腹膜炎に対する 効果は甚だ期待が薄く,勿論膿瘍の吸収消滅を期 待することは出来ないと老えられる。膿瘍が破れ て炎症が拡大する可能性を考えると,化学療法に は自から限界があり,それ単独では急性腹膜炎治 療の最良の方法でないことは明かである。從って 原発巣と共に膿蕩を除去ずることが最も望ましい ことであう,こ∼に手術の価値がある。化学療法 は手術療法の補助的手段として用ヒる方がよいと 考える。 我々は臨床及び実験上,腹腔滲出液は原発巣に 近い程菌を多数含み,離れると減少し,叉局所附

近にはFibrinを認め内部に多数の菌が捕捉され

ており,このFibrin中の菌は2週間以上生存す

るという事実を知っている◎從って原発巣除去の

後に護る程度,膿及びFibrin中に含まれて細菌

がばらまかれることは当然である。之に対し化学 療法剤を直接に腹腔注入或は聞接に筋肉内注射等 を行って術後の腹膜炎或は創の感染の防止に当っ ている訳である。 次に腹膜炎の際,手術後一次閉鎖にするか,開放 誘導とするかの問題は,その予後と関連して昔か ら議論のある所で完全な一致には達していない。 結局結論を先にのべると腹膜炎の程度に応じて手 術者が経験的に判断を下す以外に方法はない。然 し大体の基準をあげるならば,一つは発病より手 術迄の時鰍こ関し,もう一つはその拡がりの程度 に関する点にある。 急性腹膜炎の外科的治療は発病後時間の短い程 成績がよい。長い場合は臓器組織の癒着変生等の 為に手術が難しくなり,腹膜炎の為に全身的障碍 が起り治癒が妨げられる等で予後が不良となる。 :又限局性のものが禰蔓性となって悪化するQ從っ て腹膜炎の診断がつき次第手術を先ず老増せねば ならない。特に胃穿孔の際は早期手術が肝要で, 発病後6時間以内なちば手術成功率は非常に高い のである。発病後時間が早い場合}S,’術後の腹膜 炎,創の化膿という危険は比較的少い,例えば症例 の外傷性腸穿孔の如く,早期に完全な原発巣除去 が行われ,特に汚染がひどくなければ一次閉鎖で 治癒している。斯様に軽い腹膜炎では一次閉鎖が 可能であ.る。勿論,ペニシリン,其他の抗生物質 の併用は甚だ有効である。化学療法剤の腹膣内注 入は既に昭和20年頃東大,都築教授了)が,スル ファミンの腹腔注入を腹部手術の後に行いよい成 績をあげている。その後,ペニシリン,更にスト レプトマ・fシン等の腹腔内局所へ直接投与が行わ れ予後をよくし,且つ一次閉鎖の安全性を増して いる。腹膜炎が長びいて拡大し,禰蔓性腹膜炎と なり膿潴溜の著しい時は,通常,原発巣の除去, 膿汁の排除の後に誘導を設置するのが常である。 膿のi排除一毒中には多数の菌及び毒素が含ま れるので,その排除は原発巣除去と同様重要であ る。完全に排除することは理想であるが仲々難し い。方法としては液体で洗い流す方法,ガーゼで 丁寧に拭う方法とがある。

前者は1887年Mikuliczが端緒を開き,最初

は蟻酸水を用い7:。その後Kutzenstein u Sbluz

(5)

一一 93 一一

は4000倍RivanG1も用いすごが,1892年K6rte

は防腐剤は組織傷害作用があるから感心しないと いい,現在では温い生理的食塩水叉はリンゲル氏 液が多く用いられている。之はガーゼで膿を拭う 場合に比し,より広汎なものに適し,徹底的に洗 いうるし,腸管の運動を刺戟して然も組織をいた めす又水分補給の利点もある。一:方ガーゼで拭う のは限局性のものに適し時聞がか∼らす,腹腔全 般に菌を散布する危険が少く,叉自然の治癒機転 を妨げない利点もあって一概にい5きれないもの がある。我々は殆ど灘條せす,自然治癒機転を重 視レて,注意深くガーゼで拭うことを実施してい る。 腹腔の誘導一誘導の最:初の目的は膿の連続的 排除にあっ九と考えられるが,実際は,ガーゼの 毛管硯象による吸引及びゴム管の膿汗排除作用は 短時間でFibrinが網目をふさぎ:叉管の穴を閉す

ので通常12∼14時間,長くとも24時間以内に

は大網,腸管壁などの癒着と相帯って本来の誘導 の作用を失い後に異物として障碍作用を残すにす ぎないように見える。然し誘導があると比較的短 時間で周囲に大網,腸管が癒着をつくり腹膜炎が その内部にだけ限られ,一般健康腹腔から閉鎖さ れるという非常な利点がある。 この点に関し家兎腹腔にモルヨドールを注入し 実験的腹膜炎を起し,誘導を行い「レ」線透視で 調べた結果誘導はFibrinの析出を促進し,特に 直接した周囲に多:量に生成し,同時にそのFibrin 中に菌及び毒素を捕捉している。 即ちFibrinは菌及び毒素を或程度捕捉して, それの急激なる吸収をさけるという一種の生休防 禦の作用がある。そして大網及び周囲腸管との癒 着を来し,腹:膜炎限局化の傾向を強める◎ 腹腔の駈収について家兎,マウス等を用いメチ レンブラウ,エづンスブルウを注入して検査した 結果,吸収は誘導の内部及び直接した周囲,大網 腸管で囲まれ尤所は非常しに遅いが,その他の一般 腹膣では寧:ろ詠進している。(第2図,第3図)o 叉腹膜炎:の腹腔滲出液には葡萄糖脱水素酵素が 存し,誘導を行うと著しく増加することを知った (第1表)。同時に腹腔滲出液中には白血球が;増加 しそれ等の喰菌作用も増している。此等の事実か 第 2 図 クロトン抽腹膜炎マウス腹 腔に注入ぜるイソチゴカル ミンの腹腔内残留率(%)

腿置劉

李:内残留率%

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第 3 図 5 クロトン抽腹膜炎マウス腹 腔に注入ぜるエバンスブル Fの腹腔内残留牽(%)

1筋

1正

t’/ ノ 〆 −t〆 50

第 1 表

クPトソ油腹膜炎マウス腹腔滲 出液のメチレソブラウ還元時間

筍悩

実〕 験l No. 誘 導

例1非誘導例i

平均還元時問 平均還元時間

回1 15/30” 30! 回 4’35f’ 15!1st, 回1 四「 i回: IS’・

110ノ 15ノ 33ノ 35ノ 13/6” 「平1 .i均 ’一r”i 20!30t, 11/13” 1 21/47,t ら実際の腹膜炎の場合に誘導局所では細菌や毒素 が析出するEibrin内に捕捉され,白血球の侵入 等によって徐々に処理され,吸収は抑制される。 5 一

(6)

一94一

他方菌及び毒素の少い一般腹腔では機能の充進が あb,吸収促進,白血球喰菌作用の充進等により 速に細菌及び毒素の処理が行われるものと老えら れる。 然し腹膜炎の末期で生体の反応が非常に乏しい 時鯨こは,こうした誘導の効果は非常に弱いと老 えられるので自ら治療の重点が異る。原発巣除去 排膿誘導或は腸管麻痺の恢復等も必要であるが, 先ず全身的療法,輸血,輸液を盛に実施しシ。ッ ク状態の恢復をはかb.,心臓,肝臓,腎臓の庇護 に意を注ぐことが大切である。 誘導は余り長く置くと,腸狭窄,腸穿孔,痩孔 等を起すことがあるので,何時抜くべきかという 抜去の時期が問題である。我々の実験では,排膿 Fibrin析出による限局化,及び吸収促進其他から みて略48時間が適当と老える。勿論症状によっ ては時間を延長する必要もあり衙臨床上の検討を 要する問題である。 結 語 以上教室に於ける我々の経験例を中心に急性腹 膜炎の治療の一部を述べiこにすぎないが,結論と しては最初のべた如く,昔からいわれているが急 性腹膜炎の治療には,早期診断,早期手術が最も 大切であるという語につきる。徒らに化学療法等 割存的療法に頼って時間を延ばすことは炎症拡大 の危険を増大し,予後を不良にする原因となる。 (欄筆に臨み,榊原教授の御指導,及び教室員多数の 御協力を深謝する) 献

1) K6rte: neue deutsch. Chir. Bd 39, 1927 2) Kirschner: Arch, f, Kl, Chir., Bd, 142, 1926 3) Petermann: Die Chirurgie Bd. V. P. 129

4)塩 田:.日本外科学会誌14回 5)横 田:日本外科学会誌39回 6)河 石:日本外科学会誌37回 7)高,金子:日本外tty学会志47回

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