• 検索結果がありません。

社会的視点から見た第二言語習得におけるオンラインコミュニティの可能性と管理者の役割 : -Facebookを用いた実践から-

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "社会的視点から見た第二言語習得におけるオンラインコミュニティの可能性と管理者の役割 : -Facebookを用いた実践から-"

Copied!
18
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

社会的視点から見た第二言語習得における

オンラインコミュニティの可能性と管理者の役割

―Facebook を用いた実践から―

高橋敦

キーワード

自律学習,SNS,社会的存在感,社会的視点,新しい日本語学習者

はじめに

国際交流基金(2013)の 2012 年度海外日本語教育機関調査によると,世界 136 の国・地域 において,398 万人余りが日本語を学習している。しかし,世界的にインターネットが普及 しつつある現在,日本,もしくは日本語に興味をもち,教育機関に属さずに独学で学ぶ「新 しい学習者」も数多く存在していることが予想される。彼らがオンライン上で世界中の日本 語使用者とつながり,日本語使用機会を持つことができれば,彼らの自律的な学習の機会は 大きく拡がる。 他者とのつながりという視点で注目されるのが,近年急速に利用者を増やしているソー シャルネットワーキングサービス(以下 SNS)である。日本語教育に関する研究においても SNS を用いた活動の報告は増えつつある。しかし,まだ新しい分野であり,報告の数は十分 とはいえない。また,実践の多くは大学等に所属する学生を対象に行われたもので,教育機 関に属さない国内外の日本語学習者・使用者を対象とした実践の報告は極めて少ない。そこ で本研究では,世界規模の SNS サービスである Facebook 上に,世界の諸地域の学習者に日 本語使用機会を提供することを目的としたオンラインコミュニティ「にほんごではなそう! nihongo de hanasou !」(https://www.facebook.com/nihongodehanasou)を作成し,実践 を行った。

1. 先行研究

SNS を用いた日本語教育の実践研究は,SNS を教室活動で利用するものと,教室外でのコ ミュニケーションに利用するものと,大きく二つに分類される。教室活動で利用したものと しては,大塚(2005),大塚(2008),日木・Armstrong(2009),中西他(2010),中西他(2011) などがあげられる。 大塚(2005)は中級日本語聴解・会話の授業において,SNS を補助手段として利用し,学 習効果を高めることを試みている。この授業実践では SNS を授業告知や課題提出,発表を録 画した動画のアップデート及び視聴,自己評価等に用い,時間の効率性と教育の質向上を目 指している。また,大塚(2008)は SNS を利用し,韓国の対面授業者と日本の遠隔授業者が

(2)

協同して,韓国にいる日本語学習者に対して日本語作文授業を行った。この研究では SNS を 用い,対面授業と,遠隔授業を並行して行う事で授業が活性化されたこと,さらに日本語母 語話者教授者が不足している地域での遠隔授業の活用可能性が明らかとなった。 大塚の実践が,SNS を主に教授者と学習者のやりとりをサポートするものとして利用して いたのに対し,日木・Armstrong(2009),中西他(2010, 2011)は SNS を主に学習者間での やりとりに利用した実践である。 日木・Armstrong(2009)は,関西外大生とバックネル大生間で行った Facebook を用い たコミュニケーション活動(Facebook プロジェクト)について報告している。e-mail で行っ ていた関西外大生とバックネル大生間のメール交換による授業活動を Facebook に置き換え 行ったところ,メールで活動を行っていた時の課題が解決され,コミュニケーションツール としての Facebook の有用性が確認された。 中西他(2010)は,同一 SNS を利用した,2008 年,2009 年の 2 年間の実践の成果を比較 したものである。日本語学習者と日本語教師を目指す実習生の間で,大学 SNS を利用した交 流授業を行い,2008 年度の実践の結果を元に教師の役割や SNS の機能等の改良を行った結果, 2009 年度は SNS 上のやりとりが活性化されたことを報告している。また,中西他(2011)では, 上記改善について,社会的存在感,ソーシャル・サポートという概念を用い分析している。 教室活動外での実践を試みた研究には阿部(2010),廣澤(2010)などがある。 阿部(2010)は,SNS を用いた日本語を専攻している中国の大学生と日本人の交流活動の 試みについて報告している。SNS を用いた活動では,コメントでの交流が日本語使用にとっ て重要な役割を果たす可能性を示唆すると共に,学習者によって交流の目的と役割が異なる ことを指摘している。 廣澤(2010)は,「日本語学習を主目的としない」日本語使用者でも参加できる,「日本語 による SNS 型異文化交流サイト」構築の目的と可能性について報告している。廣澤の実践は 本研究における実践とほぼ同じ目的で行われたと考えられるが,既存の SNS を用いず,独自 の SNS 構築を試みていた。しかし 2010 年の報告では,サイトの構築に課題があり,本実践 には至っておらず,その後の報告は管見の限り見当たらない。 松浦・中村(2011)は SNS 援用の学習支援システムを開発する上での設計指針について, 授業支援やキャンパスライフ支援等,国内の研究報告を中心にまとめ,SNS 上の機能につい て教育・学習に関する視点から解説を行っている。また,村上他(2011)では,SNS を活用 する意義,SNS を活用した教育,学習の実践,さらにネットワーク分析,社会的存在感を用 いた SNS を活用した教育・学習実践の評価方法についても言及されており,SNS を用いた活 動に関する研究の下地は固まりつつある。 しかし,日本語教育関連の研究としてはまだ新しい分野であり,報告の数は十分とはいえ ない。また,これらの論文で報告されている実践の多くは大学等の教育機関内で行われたも

(3)

るFacebook上に世界の日本語学習者・使用者を対象としたオープンなコミュニティを開設し, 実践を行った。 コミュニティには日本語教育機関がない地域を含む,45 の国・地域から 5000 人を超える Facebook ユーザーの「いいね」が集まり,多くのやりとりが行われた。また,データやコメ ントの内容から,日本語教育機関に所属せず,インターネット等を用い,独学で日本語を学ぶ, 多様な「新しい学習者」の存在が明らかとなった(高橋 2014)。

2. 研究目的

高橋(2014)では,教育機関に所属せず,独学で学習している多様な新しい日本語学習者 の存在と,オンラインコミュニティへの需要の一端が明らかとなった。では,SNS はそれら の新しい学習者に日本語使用機会を提供するツールとなり得るのだろうか。本研究ではコミュ ニティ上で参加者が行ったやりとりを分析し,日本語使用機会としての SNS の可能性を明ら かにすることを試みた。なお,コミュニティの作成過程や,経過については高橋(2014)に 詳述されているので,そちらを参考にしていただきたい。

3. 分析

分析は 2013 年 1 月 6 日(1)から,2013 年 3 月末までにコミュニティに投稿されたトピック および,トピックに対する返信を対象に行った。トピックのたてられた日付が基準となって いるため,返信に関しては一部に 2013 年 4 月以降,かなり遅くに投稿されたものが含まれる。 分析はまず,期間内に行われた発話の数,投稿されたトピック数,1 トピックあたりの平 均発話数,1 トピックあたりの平均発話者数を集計し,コミュニティが日本語使用機会とな り得るのか,また,発信に何か傾向がみられるのか,数値面から明らかにすることを試みた。 集計は参加者のたてたトピックと管理者のたてたトピックに分けて行い,比較を行った。 次に,行われた発信が,どのようなものなのか,内容面についても分析を行うため, Garrison(2011)の社会的存在感のカテゴリ分類(表 1)を援用し,定量的分析を試みた。 Garrison のカテゴリは非同期のテキストによるコミュニケーションを分析することを目的に 「感情表現」「自己開示」「質問する」といった 12 の指標で構成されており,各指標の定義に従っ て分類,集計する事で,発信されたテキストから参加者の社会的存在感の表出の程度を定量 的に評価することが可能となる。Garrison et al(2000:94)は社会的存在感を「使用している コミュニケーション媒体を通じて,探求の共同体(community of inquiry)において実際に その場にいる人間(real people)のように社会的に,且つ感情的に自己投影出来る能力(訳: 山田・北村(2010)」と定義しており,参加者がコミュニティ上で社会的存在感を表出できて いるのであれば,オンライン上でのテキストのやりとりであっても,発信はライティングに とどまらず,SNS は日本語使用機会を提供するツールとなり得ると考えた。

(4)

表 1 Social Presence Classification and Indicators (GARRISON 2011)

Category Indicators Definition Example Interpersonal

communication

Affective expression Conventional expressions of emotion, or unconventional expressions of emotion, including repetitious punctuation, conspicuous capitalization, emoticons

“I just can’t stand it when …!!!!”

“ANYBODY OUT THERE!”

Self-disclosure Presents biographies, details of personal life outside of class, or expresses vulnerability

“Where I work, this is what we do…” “I just don’t understand this question”

Use of humor Teasing, cajoling, irony understatements, sarcasm

“The banana crop in Calgary is looking good this year ;-)”

Open communication

Continuing a thread

Using reply feature of software, rather than starting a new thread

Software dependent, e.g., Subject: Re” or “Branch from”

Quoting from other’s messages

Using software features to quote other’s entire messages, or cutting and pasting selections of others’ messages

Software dependent, e.g., “Martha writes:” or text prefaced by less-than symbol < Referring explicitly to other’s message Direct references to contents of others’ posts

“In your message, you talked about Moore’s distinction between…” Asking

questions

Students ask questions of other students or the moderator

“Anyone else had experience with WEBCT?” Complimenting, expressing appreciation Complimenting others or contents of others’ messages

“I really like your interpretation of the reading”

Expressing agreement

Expressing agreement with others or content of others’ messages

“I was thinking the same thing. You really hit the nail on the head” Cohesive

communication

Vocatives Addressing or referring to participants by name

“I think John made a good point.” ”John, what do you think?” Addresses or refers to the group using inclusive pronouns

Addressing the group as we, us, our, group

“Our textbook refers to …”, ”I think we veered off track…”

Phatics, salutations

Communication that serves a purely social function: greetings, closures

“Hi all,” “That’s it for now,” “We’re having the most beautiful weather here”

(5)

表 2 発話データ

管理者トピック(61 トピック) 参加者トピック(229 トピック) 全体(290 トピック) 総発話数 平均発話数 平均 発話者数 総発話数 平均発話数 平均 発話者数 総発話数 平均発話数 平均 発話者数 参加者 501 8.2 6.1 911 4.0 2.5 1412 4.9 3.3 管理者 293 4.8 402 1.8 695 2.4 合計 794 13.0 1313 5.7 2107 7.3 3.1 発信データ分析 集計した発話データを表 2 に示す。期間中,2107 件の発話があり,そのうち,管理者であ る稿者の発話が 695 件,参加者の発話が 1417 件であった。参加者から 1417 件の発話が行わ れたことからも,コミュニティが日本語を使用する機会となっている事は間違いない。期間 中にたてられたトピック数は 290 トピックで,229 件が参加者によりたてられており,参加 者が受身の発信にとどまらず,積極的にコミュニティに参加していることが分かる。また,1 トピックあたりの平均発話数は 7.3(参加者 4.9,管理者 2.4)で,トピック内での発話が単発 で終わらず,ある程度継続したやりとりが発生していることを示している。日本語使用機会 としてのオンラインコミュニティの可能性が十分に感じられる結果である。 一方で,トピック毎の平均発話者数を見ると,管理者のたてたトピックでは 6.1 人,参加 者のたてたトピックでは 2.5 人とかなり差が出ている。ほぼ全てのトピックに対し,管理者 が返信を行っていることを考えると,参加者のたてたトピックでは管理者1人と参加者平均1.5 人でやりとりが行われていることになり,参加者と管理者の一対一に近いやりとりが中心に なっていることが分かる。また,管理者のたてたトピックでは平均発話者数は多いが,平均 して 5.1 人(管理者のたてたトピックでは管理者が必ず発信をおこなっているため)の参加 者が合わせて 8.2 回の発話を行っていることになり,1.5 人の参加者が合わせて 4 回の発話を 行っている参加者のたてたトピックと比べると,相対的に一人あたりの発話数は少なく,や りとりの継続性は低い。つまり,いずれのトピックでも参加者同士での継続したやりとりが 少ないという傾向が明らかとなった。このような傾向となった要因の一つには,Facebook ペー ジの仕様の問題が考えられる。Facebook ページは元々,企業や著名人とユーザーとの交流を 目的として設計されているため,参加者同士のやりとりに向いていないように思われる。例 えば,稿者が発信を行った際には発信を行った事が他の参加者に周知されるのに対し,参加 者の発信は稿者以外には通知されない。しかし,学習機関に所属していない参加者を対象と したため,機能よりも,コミュニティを周知し,多くの参加者を集める機能を持っているこ とを優先する必要があった。この点については今後,コミュニティから広く情報を発信する ことができるので,Facebook ページ以外のツールに参加者を誘導することで,参加者同士の やりとりを活性化することができる可能性があるのではないかと考えられる。 やりとりの継続性の問題について,より深く分析するため,期間中の参加者別の発話回数 の集計を追加で行った。集計の結果,期間中発話を行ったのは 284 名であった。最終的にペー

(6)

ジへの「いいね」が 5000 件ついたことを考えると,284 名は少ないようにも思えるが,「いいね」 をつけた参加者が必ずしも,日本語使用を目的としているとは限らないため,判断は難しい。 参加者の中には,稿者の発信する日本についての情報を受信する為だけに「いいね」をつけ た者も数多く存在することが考えられる。 参加者数を発話回数別に集計しグラフ化したものが,表 3 である。284 名中,127 名は期間 中一度きりしか発話を行っておらず,半数以上の参加者が 5 回までの発話にとどまっていた。 この結果から,継続的なやりとりを行っていたのは参加者の一部であったことが分かる。参 加者の発話の継続性は課題として検討する必要がある。

表 3 発話回数別参加者数

127 47 31 14 9 0 20 40 60 80 100 120 140 1 2 5 6 10 11 20 21 40 一つの要因として,コミュニティ内に日本語母語話者が極めて少なかった点があげられる。 コミュニティ参加者は,稿者以外の母語話者と接する機会がほとんどなかった。稿者一人では, 返信頻度,対応できる話題にも限界がある(やりとり例 1)。コミュニティの目的は日本語使 用者同士の対話であったが,参加者の多くは日本語母語話者との対話を望んでいる。多様な 日本語母語話者との交流の機会が増えれば,状況が変わる可能性がある。 やりとり例 1 対応できる話題の限界 97 <参加者 186 > 1 月 2 日 12:21 たかはしさんは東方神起知っているの? 101 <管理者 1 > 1 月 2 日 12:31 東方神起は知ってますよー…けどあまり詳しくはないのです。 Takahashi 102 <参加者 186 > 1 月 2 日 12:34 そうですか!あまり好きじゃないね ( ⌒ - ⌒ ; ) 発話回数の少ない参加者が目立った一方で,21 回以上発話を行った参加者も 9 名,217 回 発話を行った参加者も1名いた。どのような要因が参加に影響を与えるのか,今後は参加者 個人に焦点をあてたニーズ分析が必要であろう。

(7)

3.2 Garrison(2011)による分析 表 1 の指標に基づき,発信を分類した結果が表 4(各指標は稿者訳)である。なお,日本 語を含まないコメントは今回集計対象外とした。結果からは参加者がテキストであっても自 分の存在感を表出できていること,他者を意識して発信を行っていることが確認できた。

表 4 Garrison(2011)による分類結果

対人コミュニケーション 開かれたコミュニケーション コミュニケーション凝集性のある 総発話数 感情表現ユーモアを言う 自己開示スレッドを続ける 他者の 発言を 引用する 明示的に 他者の 発言を 参照する 質問を する 賞賛・ 好意的な 評価の 表明 同意の 表明 参加者を 名前で 呼ぶ グループ を包括 代名詞 でよぶ あいさつ 参加者 1412 544 38.5% 10 0.7% 248 17.6% 1183 83.8% 2 0.1% 14 1.0% 251 17.8% 46 3.3% 19 1.3% 180 12.7% 1 0.1% 288 20.4% 管理人 695 371 53.4% 1 0.1% 64 9.2% 634 91.2% 2 0.3% 62 8.9% 146 21.0% 24 3.5% 12 1.7% 288 41.4% 1 0.1% 161 23.2% 全体 2107 915 43.4% 11 0.5% 312 14.8% 1817 86.2% 4 0.2% 76 3.6% 397 18.8% 70 3.3% 31 1.5% 468 22.2% 2 0.1% 449 21.3% 3.2.1 表出の多かった指標について まず特に多く見られた「感情表現」「質問をする」「あいさつ」について分析を行う。 参加者の多くは参加にあたり,はじめにあいさつとじこしょうかいのトピックを立てるこ とが多く,あいさつは特に参加者のトピックで多く見られた。本林(2011)は,学習歴の短 い学習者がブログで「読まれる可能性」を持つ発信を行うことのハードルの高さを指摘して いる。コミュニティ上であいさつを行うということは,他の参加者を認識しているというだ けではなく,別の参加者から返信がある可能性があるということである。しかもコミュニティ ではほとんどの発信に対し,稿者や他の参加者が返信を行っており,新しい参加者もそれを 容易に確認することができる。つまり,参加者は他者が読み,かなりの確率で返信があるこ とを理解,もしくは期待し発信を行っていると考えられる。 参加者が他者を認識してコミュニティに参加していることは,コミュニティ上で多くの「質 問」が行われていることからも分かる。質問は,日本についての質問や,管理者への質問,語彙・ 文法に関する質問など,その内容は多岐にわたる(発話例 1)。 発話例 1 多岐にわたる質問の例 「インドネシアは一年中暖かいです。しかし、今は雨季なのでちょっと涼しいです。 東京ではよく雪が降っていますか。」 「高橋さんの仕事は何ですか?」 「先生こんばんは!「限定公開動画」は Public Video でいいですか?適切な英語は 何でしょうか?すみません。。。」

(8)

管理者に対する質問が多いが,やりとり例 2 のように,参加者同士で質問,解答が行われ る事も少なくない。初めて話す相手に,踏み込んだ質問はしづらいためか,参加者間では国籍, 住んでいるところについての質問が多い(やりとり例 3)。 やりとり例 2 参加者同士の質問の例 1212 <参加者 31 > 1 月 15 日 23:29 <参加者 41 >さん、今、。あちらは何時ですか。 1213 <参加者 41 > 1 月 15 日 23:40 今ブラジルにいますから、こちらは 12 時半です。 お昼ごはんの時間です^^ やりとり例 3 他の参加者の居住地をたずねる

1017 <参加者 39 > 1 月 3 日 22:49 <参加者 48 > san doko ni imasu ka? 1018 <参加者 48 > 1 月 3 日 23:18 ima Malang ni imasu..

コミュニティ全体を意識して,他の参加者全員に質問を行う例も見られた(やりとり例 4)。 やりとり例 4 他の参加者全員に質問を行った例 1188 <参加者 253 > 1 月 14 日 皆さん、にほんの なかで ぜひ 行きたい 所は どこ ですか ? 私は いせじんぐう(伊勢神宮)です (^_^)v 1189 <管理者 1 > 1 月 14 日 19:05 先生も伊勢神宮行ってみたいです!まだ行ったことがありません。 先生は「屋久島」に行ってみたいなー。7200 歳の木があるそうです。 Takahashi 1190 <参加者 271 > 1 月 14 日 19:06 私は大阪に行きたいです (o^_^o) 後は、北海道にも行ってみたいですが、ちょっと寒そうですね 笑 1191 <参加者 253 > 1 月 14 日 19:35 高橋先生、屋久島おもしろい所ですね。木は 7200 歳もですか! 1192 <参加者 253 > 1 月 14 日 19:36 <参加者 271 >さん 返事ありがとうございます!私も北海道行って みたいです。雪祭り見に行きたいです。 1193 <参加者 253 > 1 月 14 日 19:38 がいこくじん の 友達 も こたえて くれたら、 うれしい です。 1194 <管理者 1 > 1 月 14 日 19:59 先生は子どもの頃、北海道に住んでいました。雪祭りも見ましたよ! 北海道は外は寒いけど、建物の中は暖かいです。 Takahashi 1195 <管理者 1 > 1 月 14 日 20:01 先生も嬉しいです。 <参加者 271 >さん、<参加者 253 >さんありがとうね! みなさんもどんどん答えてみて! Takahashi 1196 <参加者 253 > 1 月 14 日 20:06 みなの答えを 待って います ( ≧∇≦ ) これは,彼らが,直接話している相手だけでなく,コミュニティに日本や日本語に興味を持っ た多くの仲間が存在していることを認識している証である。しかし前述の通り,参加者のた てたトピックには他の参加者からの返信が少なかった。参加者は不安と期待を持って発信を 行っており,返信の少なさは継続意欲に悪影響を及ぼしている可能性がある。管理者以外の

(9)

テキストベースでのやりとりの最大の特徴が「感情表現」である。参加者の発信の 4 割弱 になんらかの感情表現が含まれている(発話例 2)。 書き込みが日本語かローマ字かは関係なく,レベル別にみても,日本語学習歴がまだそれ ほど長くないと思われる学習者も顔文字や句読点の連続,感嘆符などを用い発信を行ってい る(発話例 3)。 これらの表現はおそらく,参加者達が母語でもメールや SNS 上のやりとりで用いているも のなのであろう。また,異言語,異文化の相手と非対面で学習言語を用いて話すという環境 がそれらの多用につながっている可能性もある。いずれにしても,参加者はただ例文を真似 て機械的に文字を入力しているのではないことが分かる。 発話例 2 顔文字を用いた豊富な感情表現 「ズジョウは言いにくいです! >_<」 「じゃ。。“なやむ“と“しんぱい“はどう違いますか。<( _ _ *)>」 「あっ!出来ました!本当に嬉しいです!どうもありがとうございます (^^)」 発話例 3 ローマ字での書き込みでの感情表現 「con ni chi wa !!」

「Jakaruta wa mainichi ame ga futte tsudzuite orimasu....Oame ga futtara kouzui ni natte shimaimashita....」

「koto ,shamissen to kokyuu wo sukoshi naraimashita ! Tottemo suki dessul」 「Sore wa yuki desuka? Watashi wa yuki ga mittakonai desu ,,,,,, mitaino desu,,,,,,」 「Haai,aru...anoo...Oosaka ni “Ookini” ga arimasu neh...demo,oosaka no sotto ni,kono kotoba ga nanimonai neh ^^」

本コミュニティは「にほんごではなそう! nihongo de hanasou !」というタイトルだが, 厳密にいえば参加者はテキストを書いて(さらにいえば,入力して)投稿している。しかし, ここで見られるような感情表現をともなう文章は,いわゆる教室活動での「書く」とは一線 を画するものである。ブログや SNS で用いられるテキストは書き言葉と話し言葉の中間的存 在(国立情報学研究所報道発表 08__2-1)と考えられているが,SNS のような双方向的コミュ ニケーションを目的として設計されたツールにおいては,より現実の会話に近い表現が用い られている可能性が高いのではないだろうか。 ただし,これら感嘆符や顔文字,絵文字による感情表現は手軽だが,伝わる内容が世界共通 とは限らない。コミュニティが世界とつながっていて,必ずしも自分の意図したように伝わら ないという点について学ぶこと,考えることは重要になってくるだろう。異文化間の授業活動

(10)

にオンラインコミュニティを用いる際は,予め教えておくことも必要かもしれないし,実際の やりとりの中で参加者が試行錯誤を経て学ぶことができれば素晴らしい経験になると思われる。 3.2.2 表出の少なかったカテゴリーについて 一方,「ユーモアを言う」「他の参加者の発言を明示的に参照する」「賞賛・好意的な評価の 表明」「同意を表明する」「包括代名詞を使用し,グループを意識する」については表出が極 めて少なかった。特に「他の参加者の発言を明示的に参照する」「賞賛・好意的な評価の表明」 「同意を表明する」という「開かれたコミュニケーション」に属する指標の表出が少ないこと が目立つが,コミュニケーションが開かれているかというより,Garrison(2011)が分析対 象としている「Community of Inquiry(探求の共同体:稿者訳)」と,本実践におけるコミュ ニティの質の違いが原因ではないかと考えられる。 やりとり例 5 は「同意の表明(発話番号:1673)」「賞賛・好意的な評価の表明(発話番号: 1675)」が見られたやりとりの例である。 やりとり例 5 同意の表明,賞賛・好意的な評価の表明がみられたやりとり 1666 <参加者 280 > 2 月 25 日 12:39 やっぱり面白い。それぞれの国によると、習慣は異なっていて、言葉 の解釈に影響を与える可能性がある。 1667 <管理者 1 > 2 月 25 日 22:49 違うから面白いと思います。でも先生をしていると時々怖いです。 思っていることが、伝わっているのか?違う解釈をされていないか? Takahashi 1668 <参加者 280 > 2 月 27 日 5:06 我々はさまざまな方法で文章を書くことができるな意味でしょうか ? 1669 <管理者 1 > 2 月 27 日 6:11 同じ文章でも人によって違う意味だと思ってしまう、ということです。 怒っていないのに、怒ってる、と思われたり。 文章は顔が見えないので… Takahashi 1670 <参加者 280 > 2 月 27 日 6:16 それで面白いじゃないですか? 1671 <管理者 1 > 2 月 27 日 6:22 面白い。でも怖いと思うこともあるのです。 気持ちが伝わらない、間違って伝わる。 そのままになってしまったら悲しい。 Takahashi 1672 <参加者 280 > 2 月 27 日 6:29 でも翻訳する場合、我々は注意しなければならない。直訳した場合は、 時々文章が変な意味になります。 1673 <参加者 280 > 2 月 27 日 7:00 その怖い事が私は知っているかもしれません。でも我々は人間ですか ら、様々な考えかたがあります。それで面白い。 1674 <管理者 1 > 2 月 27 日 23:01 怖い、から勉強します。自動車の免許と同じかもしれないですね。 便利、だけど危ない、だから勉強します。 Takahashi 1675 <参加者 280 > 2 月 27 日 23:13 そんな高橋さんの気持ちは一番大切な事。常に知識を向上させるため に勉強して一番です。 サンプルが少ないので断言はできないが,このような議論が活発に行われるコミュニティ であれば表出される数も増えるのではないかと考えられる。例えば吉村・宮副(2009)は日

(11)

「それに、佐藤さんのメールに書いてある「島国根性」に対して、私の考え方も言わせてい ただきましょうか。日本人の中に自分のこと島国根性の人間だと思い込みすぎる傾向がある かなと思います。昔はそうだったかもしれませんが、国際交流によって、海外からの情報が 流入するに従って、国際的視野を持つ方も沢山いると私は思いますね。(エリー@香港)」 上記のメールの中では「佐藤さんのメールに書いてある「島国根性」に対して」と,「明示 的に他者の発言を参照」している。コミュニティの目的と適切な評価についても一考の必要 があるだろう。 「グループを包括代名詞でよぶ」が少ない点については,コミュニティの規模の大きさが原 因ではないかと思われる。同じ「凝集性のあるコミュニケーション」のカテゴリーに属する「あ いさつ」や「人を名前で呼ぶ」は表出が少なくないことから考えると,参加者はコミュニティ に多くの人が集まっていることは認識しているが,「私たち」と呼ぶほどの凝集性は感じてい ないのだろう。少人数で深く長くコミュニケーションを取るコミュニティであればまた違っ た結果になると思われる。 「ユーモアを言う」については「teasing(からかう)」「cajoling(おだてる)」「irony(皮肉)」 など,相手とある程度親しい関係にならないと表出が難しいものである。ただ,やりとり例 6(発話番号:486)のようにユーモアに関する発話は非常に生き生きとした発話が多い。 やりとり例 6 参加者が管理者(稿者)をからかったやりとり 481 <管理者 1 > 2 月 15 日 お菓子(おかし)もかわいかったのでもう一枚(いちまい)。 okashi mo kawaikatta node mou ichimai.

いるかは人気(にんき)がありますね! iruka wa ninki ga arimasu ne! Takahashi

482 <参加者 144 > 2 月 15 日 20:30 kawaiiiiii...^^

483 <参加者 178 > 2 月 15 日 20:32 可愛いからまだ食べていませんか先生 (^。 ^) 484 <管理者 1 > 2 月 15 日 20:35 どうしよう? (・ω・)

Takahashi

485 <参加者 144 > 2 月 15 日 20:45 Tabenai de kudasai... hiks…

486 <参加者 178 > 2 月 15 日 21:04 ぜったい食べちゃったね先生 ? ハハ (*^^*) 私日本のオカシが好きけどベトナムであまり売っていません。 487 <管理者 1 > 2 月 15 日 22:13 Σ (  ̄。 ̄ノ ) ノ Takahashi なぜ,このようなやりとりが少ないのか。また,増やすためにはどうすればいいのか。注 目されるのは,参加者の「ユーモアを言う」対象がほぼ管理者であったことである。コミュ ニティでは管理者である稿者の発言数が圧倒的に多い。対象とした全 2107 発話のうち,695 発話が管理者のものであり,その中には 62 件の「自己開示」を含む。参加者も「自己開示」

(12)

を行っているが,参加者の数値は全参加者合わせてのものであり,長期間,定期的に投稿を 続ける稿者について開示される情報は圧倒的に多い。自己開示はコミュニティ内における稿 者の存在感を高めているだろう。結果として,稿者は信頼関係を構築しやすい存在となって いたのではないか。同様に各参加者間の存在感が高まるならば,参加者間でも信頼関係が構 築され,「生きたやりとり」が増えていくのではないかと考えられる。

4. 考察

近年,第二言語習得研究において,従来の認知的視点に加えて,「相互行為への参加」を習 得の母体と考える社会的視点への注目が高まっている(義永 2009)。情報技術の発展により, 学習環境は多様化し,日本語学習者は教育機関に頼らず,独学で学ぶことが可能となった。 しかし,社会的視点からみた場合,習得と使用が切り離されているインターネット上の受容 的なコンテンツを利用した学習だけでは十分とはいえない。例えば稿者は本実践中,相手の 表情が見えないテキストベースでのやりとりで,自分の意図が相手に伝わっているのかが分 からず,コメントに顔文字を多用するようになった。やりとりに参加する中で,自分の発信 に欠けている点に気付き,利用可能なリソースを用い,メッセージを伝えようとしたことは, まさに社会的視点における学習のひとつと言えるのではないだろうか。 参加者についても同様の学びが発生していると考えられる。実践中,管理者に倣いローマ 字と漢字かな交じり文を併記する参加者が多く存在した。彼らはコミュニティの中に漢字を 読むことができない参加者がいることを認識し,そのような参加者ともコミュニケーション をとりたいと考えローマ字を併記した。つまり,明らかに多様な成員によって構成されたコ ミュニティという社会の中にいることを自覚し,それに合わせた発信を行ったのである。こ の学びは上級の日本語使用者だけに当てはまるものではない。まだ日本語学習歴が浅い初級 の学習者も,感情表現等,様々なリソースを用い,自分のメッセージを伝えようと発信を行っ ているのである。 本実践の目的は世界の日本語学習者,使用者に対して日本語の使用機会を提供することで あり,語彙や文法の学習を目指したものではなかった。しかし,彼らはオンラインコミュニ ティという文脈の中で相互行為に参加することで,語彙や文法とは異なる「オンライン上で 他者とつながるための日本語」を学ぶ機会を得ているのではないか。また,社会的視点で本 実践について考える際には,高橋(2014)でみられた,成員の多様性についても無視できない。 コミュニティの成員が一人の日本語教師と学習者では社会的な参加における学びを得ること は難しい。 もう一点,コミュニティ参加者には日本語使用機会への需要があり,オンラインでのコミュニ ティに参加する手段を持っていたにも関わらず,多くの参加者がこれまで,ネット上で日本語を 用いた他者とのコミュニケーションを行っていなかったことには注目が必要である(発話例 4)。

(13)

発話例 4 日本語使用機会のない日本語使用経験者(高橋 2014)

「2011 年10月自国ベトナムに帰りました。それから、ずっと日本語を使う機会 がないので忘れてしまったと気づいた。もったいないので、これからまた勉強しよ うと決心します。 高橋先生と皆さんたち、よろしくね。 じゃまた、お話ししましょ う。 <参加者 109 >」 そこで,本研究では日本語使用機会を求める参加者と,使用機会としての SNS をつなぐサ ポーターとしての管理者の必要性を提言したい。梅田(2005)は成人教育における教師の役 割を述べている(表 5)が,この役割は,サポーターの役割について考える際にも参考にす ることが可能である。

表 5 成人教育における教師の役割(

クラントン 2003 をもとに梅田が作成)(梅田 2005,p.71) 役割 主な特徴 使う場面 専門家 • 専門知識を伝える • 詳しい説明と洞察を提供する • 学習者に学習経験がない • 教材を開発する 他者決定的 計画者 • 企画する • 学習者に学習経験がない • 教材を開発する 教授者 • 何をすべきか教える • 指示する,指導する • 特定の技能に関する目的がある • 学習者に学習経験がない ファシリテーター • ニーズに応える • 奨励する,援助する • 学習者が自己決定的である • 学習者に学習経験がある 自己決定的 情報提供者 • 教材を提供する • 個別的な一括プログラム • 上級学習者 学習管理者 • 記録する,評価する,準備する • 個別教育と遠隔教育 • 学習者が自立している モデル • 行動や価値観のモデルになる • ほとんどの場合 ( 特に価値観や複雑な認識にかか わる学習 ) メンター • 助言する,指導する • 長期にわたる関係 • 個人が互いに認め合って,それぞれ自立してい る 相互決定的 協同学習者 • 学ぶ,学習者とともに計画する • 教育者と学習者が到達目標を共有する • 上級学習者 改革者 • 問い直す,問いを引き出す, 意識を変容させる • 到達目標が個人の意識変容や社会の変化である • エンパワーメントをめざす 省察的実践者 • 実践を検討する • 考え方や理論を展開する • どんな場合にも 研究者 • 観察する • 仮説を立てる • 実践の理論を作る • どんな場合にも

(14)

第一に,「計画者」としての役割が必要である。誰もが最初から日本語母語話者とのやりと りに混じることができるわけではない。日本語使用の機会を計画,実施し,周知することで, インターネットで日本語を使用してやりとりを行うきっかけが創出される。 コミュニティを発見した参加者の中にはどのように参加したらいいのか戸惑うものもいる。 時に教授者として,何をすべきか教える必要もあるだろう(やりとり例 7)。教授者はコミュ ニティ上でのやりとりが活性化するよう,参加者を導く必要がある。 やりとり例 7 教授者としての役割 809 <参加者 47 > 2012 年 12 月 29 日 11:06 ここで何の話? 810 <管理者 1 > 2012 年 12 月 30 日 20:04 みんなの好きなことを話します。 インターネット上には利用者が日本語を学習したり,日本語の文章を読むための補助にな るツールが数多く存在する。それらに精通し,情報を伝えることができれば,ファシリテー ター,情報提供者として,参加者のオンライン上での日本語を用いた活動が豊かになるよう 援助することが可能である(やりとり例 8)。

やりとり例 8 参加者の自立的な活動の援助

368 <参加者 271 > 1 月 27 日 22:50 あの、ウエブサイトのテキストにふりがなをどうやって付けますか? 369 <管理者 1 > 1 月 27 日 23:08 URL を入れるとふりがながつきます。 http://www.hiragana.jp Takahashi ふりがな 付けます www.hiragana.jp 370 <参加者 271 > 1 月 27 日 23:11 あっ!出来ました! 本当に嬉しいです! どうもありがとうございます (^^) 管理者が漢字かな交じり文とローマ字を併記したことに倣って,同様の書き込みを行った 参加者がいたことから,モデルとしての役割を持っている可能性が高い。 今後,言語の使用機会が日本国内や,国内外の日本語教育機関のみでなく,世界中の個人 へと拡がっていくことは間違いない。しかし,この分野における研究の蓄積は十分ではなく, 省察的実践者としての立場がかかせないだろう。オンラインコミュニティ上の日本語使用に 関しては,母語話者といえど,常に疑問を持ち,振り返り内省する姿勢が大切である。例えば, やりとり例 9 では日本語母語話者と思われる<参加者 197 >が発話番号:1986 の「Sakka」を「作 家」と判断し「作家“です”」に直しており,やりとり例 10 では稿者が発話番号:826 の「eiga sensei」に対し「映画の先生なんですか!?」と返している。

(15)

やりとり例 9 「Sakka」を「作家」と判断

1986 <参加者 16 > 3 月 7 日 Konbanwa! Watashi wa Sakka Shimasu. Anata no nani o shimasu ka. 1987 <参加者 197 > 3 月 7 日 21:49 konbanwa! Watashi wa Sakka “desu”. Anata “wa” nani wo shite

imasu ka. <-better 1988 <参加者 16 > 3 月 7 日 22:26 <参加者 197 > ..Domo.

1989 <参加者 16 > 3 月 7 日 22:42 <参加者 197 > ..watshi wa shitsumon minasan . anata wa nani o shimasu ka.

やりとり例 10 「eiga」を映画と判断

826 <参加者 174 > 2012 年 12 月 31 日 Hajimemashite! Watashi wa eiga sensei desu - I need Japanese friends so add me! Arigato gozaimasu xx

827 <管理者 1 > 2012 年 12 月 31 日 9:03 <参加者 174 >さんはじめまして!<参加者 174 >さんは映画の先生 なんですか!?

<参加者 174 > san hajimemashite! <参加者 174 > san wa eiga (movie)no sensei nandesu ka!?

Takahashi どちらも後から考えれば,「サッカー」と「英語」であることは明らかであり,対面でのや りとりであれば,おそらく間違いに気付いたはずである。しかしテキストでのやりとりでは, 対面でのやりとりで当たり前にできることができない可能性がある。 理論に基づき評価を行い,仮説を立て,実践にフィードバックしていく,研究者としての 視点は,今後のオンラインコミュニティの発展に欠かせないものだろう。コミュニティ上で のやりとりの活性化など,解決しなければならない課題は多い。観察して得られたデータか ら理論を作ることが,今後の実践につながっていくはずである。 コミュニティ内には日本語母語話者と話したいと考える参加者が非常に多い。参加者は将 来,他のコミュニティで日本語母語話者とのコミュニケーションに挑戦するかもしれない。 世界の日本語使用者と日本語母語話者の交流が活発になれば,オンライン上での日本語使用 の可能性は大きな拡がりを見せるだろう。

おわりに

本研究では,これまで日本語教育の中心とされてきた教室を離れ,オンライン上にゼロか らコミュニティを作成し,大規模,長期的,双方向的な活動を行いデータを収集し,日本語 使用機会としての SNS の可能性を明らかにすることを試みた。また,社会的存在感の概念を 用い,参加者の発信を定量的に分析することを試みた。分析の結果,オンラインコミュニティ が日本語使用機会となり得ること,そして参加者が発信するテキストを通じて自身の存在感 を表出できていることが明らかとなった。直接相手の姿をみることができないオンラインコ ミュニティにおいて,参加者が他者の存在感を感じられるか,自身の存在感を表出できるか どうかは活動の成否に直結する。本実践においても,参加者の存在感の表出で,やりとりが より活性化される可能性が示唆された。オンラインコミュニティを設計する際は,コミュニ

(16)

社会的存在感という概念は設計の際の指針となりうる。 日本語学習者が教室の外に飛びだしていることはもはや疑いようがない。彼らは周囲に日 本語使用者が全く存在しない状況でも,日本語学習への意欲を失わず,自律的に学習を続け ている。考察では「オンライン上で他者とつながるための日本語」とオンライン上の日本語 使用者のための「サポーター」の必要性について提言した。彼らがオンラインコミュニティ という文脈で使用する日本語に気づき学べば,彼らの日本語学習,及び使用機会は無限に拡 大する。オンラインコミュニティの実践・研究は,彼らの自律的な学びを支援するものであ ると確信している。 しかし本実践には限界もある。まず分析・考察の対象は稿者の作成した一つのコミュニティ のみである。コミュニティは稿者が管理者として運用を行っているが,稿者の考え方,ビリー フが参加者のやりとりに大きな影響を与えていることは間違いない。また,コミュニティの 目的が「学習」ではなく「使用」であること,日本語母語話者の参加が極端に少ないこと, Facebook 上でコミュニティを運営していることなど,やりとりや参加に影響を与える個別の 要素が多数存在する。本研究で明らかとなった分析結果がオンラインコミュニティの特徴な のか,コミュニティの個別要因によるものなのかは本研究のみでは判断することができない。 オンラインコミュニティを設計し,運営するには多大な労力が必要となり,一人で行える 研究には限界がある。今後,様々なコミュニティに対して横断的な研究を行うためには,研 究者同士のネットワークが必要となるであろう。オンラインコミュニティは日本語使用者だ けでなく,研究者同士をつなぐことも可能とする。専門分野の異なる研究者が協力することで, より効率的に研究をおこなうことが可能となるはずである。 次に個人に注目した分析が少ない点が挙げられる。本研究での分析は,発話者ではなく, 発話の内容に注目し分析を行ったものであり,参加者個々の多様なアイデンティティが参加 にどのような影響を与えるのかについては分析できていない。どのような要因が,参加者の 参加態度に影響を与えるのか,参加者個人に注目した分析が必要になるだろう。 最後に参加者視点での評価の欠如が挙げられる。本研究では管理者の立場から分析を行っ たが,参加者が何を求めてコミュニティに参加し,何を得ることができたのか。またコミュ ニティへの参加が,参加者の日本語学習やアイデンティティにどのような影響を与えたのか, 今後コミュニティを企画,運営する際には参加者視点からみたコミュニティの評価が欠かせ ないだろう。稿者は日本語使用のためのオンラインコミュニティの研究が進まない原因の一 つに,コミュニティでのやりとりが参加者にとってどのようなメリットがあるのかという点 が明らかにされていない点があるのではないかと考える。現状はメリットが明らかでないた め,実践が少なく,実践が少ないのでメリットも明らかにされないという悪循環に陥ってい るのではないだろうか。 インターネットを通じて日本語は世界中に拡がっている。その実態は今後少しずつあきら

(17)

ないのではないだろうか。稿者はビジネス日本語やアカデミックジャパニーズと同様に「オ ンライン上で他者とつながるための日本語」へのニーズはこれからますます高まっていくと 確信している。これからも実践と検証を繰り返し,「新しい日本語学習者」の参加と学びの支 援方法の模索を続けていく必要があるだろう。「オンライン上で他者とつながるための日本語」 が「世界とつながる日本語」として発展していくことを期待している。

(1) 実践中,コミュニティを周知するため世界の Facebook ユーザーに対しページの宣伝を行った。宣 伝を行う前は参加者がほとんどいなかった為,分析は宣伝が終了し,ページに一定の「いいね」が 集まった 2013 年 1 月 6 日からとした。

引用文献

阿部啓子(2010)「SNS(Social Networking Service)を使用した日本人との交流活動の試み―中国にお ける日本語学習者を対象として―」『日本語教育方法研究会誌』Vol.17,(1),14-15. 梅田康子(2005)「学習者の自律性を重視した日本語教育コースにおける教師の役割―学部留学生に対す る自律学習コース展開の可能性を探る―」『言語と文化』第 12 号,59-77. 大塚薫(2005)「インターネットコミュニティを利用した日本語学習者参加型授業の試み : 発表のスキル 向上を目的とした授業の構築」『高知大学総合教育センター修学・留学生支援部門紀要』第 1 号, 47-63. 大塚薫(2008)「SNS を利用した日本語作文授業の試み―対面教育及び遠隔教育を統合した授業―」『高 知大学総合教育センター修学・留学生支援部門紀要』第 2 号,58-72. クラントン(2010)入江他訳『おとなの学びを拓く―自己決定と意識変容をめざして―(6 版)』鳳書房(原 著:Cranton, A Patricia, “Working with Adult Learners”, 1992.)

国際交流基金(2013)『海外の日本語教育の現状―2012 年度 日本語教育機関調査より』くろしお出版 高橋敦(2014)「グローバルネットワーク時代における「新しい日本語学習者」とオンラインコミュニティ への需要」『桜美林言語教育論叢』(10),139-156. 中西久実子・村上正行・上田早苗(2010)「大学 SNS を活用した日本語教育ピア・レスポンス―SNS 上 での交流を活発にする要因とは―(ネットワークコミュニティにおける学習・教育支援)」『教育 システム情報学会誌』Vol.24,(7),44-51. 中西久実子・村上正行・上田早苗(2011)「SNS を活用した日本語教育実習生と日本語学習者の協働学習 ―SNS 上での交流を活発にする要因とは―(特集 ネットワークコミュニテイにおける学習・教育 支援)」『教育システム情報学会誌』Vol.28,(1),61-70.

日木くるみ・Armstrong Elizabeth(2010)「関西外大―バックネル大学 Facebook プロジェクト 2009― Facebook を使った実践的コミュニケーションの試み―」『関西外国語大学研究論集』92, 171-184. 廣澤周一(2010)「日本語による実践的コミュニケーションを促進する学びの場 ~ブログとコミュニティ を活用した SNS 型異文化交流サイトの構築とその可能性~」『教育システム情報学会誌』Vol.24, (7),32-35. 松浦健二・中村勝一(2011)「SNS を用いた学習・教育支援システムの設計・開発」『教育システム情報学会誌』 Vol.28,(1),21-35. 村上正行・山田政寛・山川修(2011):「SNS を活用した教育・学習の実践・評価」『教育システム情報学 会誌』Vol.28,(1),36-49. 本林響子(2011)「重層的公共圏群への参入をめざして:「教室の外へ出て行く」日本語教育実践を考える」 佐藤慎司・熊谷由理(編)『社会参加をめざす日本語教育 社会に関わる、つながる、働きかける』

(18)

山田政寛・北村智(2010)「CSCL 研究における「社会的存在感」概念に関する一検討」『日本教育工学 会論文誌』Vol.33,(3),353-362. 義永美央子(2009)「第二言語習得研究における社会的視点―認知的視点との比較と今後の展望―」『社 会言語科学』第 12 巻,(1),15-31. 吉村弓子・宮副ウォン裕子(2009)「日本と香港をつなぐヴァーチャル教室の映画批評―異文化理解にお ける映画の効用と外国人留学生の役割―」『北海道言語文化研究』7, 29-40.

Garrison, D. R., Anderson, T., & Archer, W. (2000). Critical inquiry in a text-based environment: Computer conferencing in higher education. Internet and Higher Education, 2(2-3), 87-105. Garrison, D. R. (2011). E-Learning in the 21st century: A framework for research and practice (2nd Ed.).

London: Routledge/Taylor and Francis.

引用 URL

国立情報学研究所(2008)「大規模ブログデータの研究基盤の構築―「Yahoo! ブログ」の研究利用 による言語研究の新展開―」『国立情報学研究所報道発表 08__2-1』(2008 年 4 月 23 日発表) (http://www.nii.ac.jp/kouhou/NIIPress08_2-1.pdf)(2014 年 8 月 17 日最終確認)

実践ページ

にほんごではなそう! nihongo de hanasou ! (https://www.facebook.com/nihongodehanasou)

表 1 Social Presence Classification and Indicators (GARRISON 2011)
表 2 発話データ 管理者トピック(61 トピック) 参加者トピック(229 トピック) 全体(290 トピック) 総発話数 平均発話数 平均  発話者数 総発話数 平均発話数 平均  発話者数 総発話数 平均発話数 平均  発話者数 参加者 501 8.2 6.1 911 4.0 2.5 1412 4.9 3.3管理者2934.84021.86952.4 合計 794 13.0 1313 5.7 2107 7.3 3.1  発信データ分析 集計した発話データを表 2 に示す。期間中,2107 件の発話があ

参照

関連したドキュメント

 TV会議やハンズフリー電話においては、音声のスピーカからマイク

前章 / 節からの流れで、計算可能な関数のもつ性質を抽象的に捉えることから始めよう。話を 単純にするために、以下では次のような型のプログラム を考える。 は部分関数 (

また、支払っている金額は、婚姻費用が全体平均で 13.6 万円、養育費が 7.1 万円でし た。回答者の平均年収は 633 万円で、回答者の ( 元 )

交通事故死者数の推移

平均的な消費者像の概念について、 欧州裁判所 ( EuGH ) は、 「平均的に情報を得た、 注意力と理解力を有する平均的な消費者 ( durchschnittlich informierter,

話者の発表態度 がプレゼンテー ションの内容を 説得的にしてお り、聴衆の反応 を見ながら自信 をもって伝えて

関西学院大学手話言語研究センターの研究員をしております松岡と申します。よろ

今回の調査に限って言うと、日本手話、手話言語学基礎・専門、手話言語条例、手話 通訳士 養成プ ログ ラム 、合理 的配慮 とし ての 手話通 訳、こ れら