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ウェアラブルデバイスおよびInternet of Thingsを用いた透析患者血圧/脈拍遠隔モニタリングシステムの確立

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緒 言 本邦における血液透析療法(hemodialysis)施行 患者の割合は上昇傾向を維持し 2017 年時点におい て全透析患者の 97.3%を占め約 33 万人とされてい る1)。腎機能が正常の 10 〜 15%以下に低下し尿毒 症症状を呈する慢性腎不全患者において腎代替療法 が必要となる。透析導入について,以前は 1992 年 に厚生省科学研究班の川口らより示された透析導入 基準が広く使用されていた2)。現在は 2013 年日本 透析医学会(JSDT)より発表されたガイドライン が一般的に活用されている3)。透析における合併症 のなかで予後不良と指摘されているものに透析関連 低血圧症(intradialytic hypotension:IDH)がある。 IDH とは K/DOQI のガイドライン4)で提言され「透 析中の(坐位における)収縮期血圧の 20mmHg 以 上の低下,あるいは症状を伴う平均血圧の 10mmHg 以上の低下」と定義されている。主な症状は全身の

原  著

ウェアラブルデバイスおよび Internet of Things を用いた

透析患者血圧 / 脈拍遠隔モニタリングシステムの確立

倦怠感,生あくび,吐き気,頭痛,眩暈,動悸,息 切れ,冷や汗,こむら返りなどがあげられる。JSDT 発行のステートメント5)においても言及され IDH の血圧コントロールは重要課題となっている。そう したなかで透析患者の QOL を考えるにあたり,血液 透析管理中の全身状態を把握し安全に施行すること は必要不可欠である。近年のインターネットを媒介 とした情報技術(information technology:IT)を用 いることで物理的距離の問題を解決しうる新しい医 療システムとしてテレメディスン(telemedicine:遠 隔医療)技術が注目されている。われわれは 2000 年 よりテレメディスンのシステム開発を始め6 〜 9),いく つかの血圧動態の臨床研究を報告してきた10 〜 12)。こ れらはいずれも測定結果をテレメディスンのシステ ムを介して共有化するもので,Internet of Things (IoT)の先駆的な位置づけの研究13)であった。し かし,当時の通信機能が現場の要求に順応しきれな いなどの物理的要因により広く普及することは困難 埼玉医科大学総合診療内科1),埼玉医科大学病院血液浄化ユニット2),埼玉医科大学腎臓内科3) 医療法人幸生会北坂戸ファミリークリニック4) 小林威仁1,2),青柳龍太郎1),齊藤航平1),草野 武1),中谷宣章1),友利浩司2,3) 飯田慎一郎1),廣岡伸隆1),内山昌秋4),岡田浩一1,2,3),中元秀友1,2) 論文受付 2020 年 1 月 24 日 同 受理 2020 年 8 月 30 日 連絡先 小林威仁 〒 350-0495 埼玉県入間郡毛呂山町毛呂本郷 38 キーワード テレメディスン(遠隔診療),血圧管理,経時生体モニタリング,ウェアラブルデバイス,インターネッ ト情報技術 要旨:【背景】血液透析療法を安全に施行するためには循環動態の安定が重要である。今回われわれは,遠隔での血圧 ならびに脈拍の連続モニタリングシステムを開発した。【目的】本システムの有用性を検証する目的で,透析患者を対 象としたvalidation studyを施行した。方法として腕時計型の小型モニター装置を使用して,透析患者の脈波を連続記録, 脈波から血圧,心拍数を連続測定した。また,その測定結果は Internet of Things(IoT)システムを用いて自動サー バ保存した。【結果】血圧,脈拍の測定値は既存の医療器具での測定値と比較し妥当であり,従来の医療器具と同等の 検出精度であった。また,測定結果は IoT システムを用いてサーバ管理し,アラート発動が可能となった。【結語】脈 波の連続測定による透析患者の循環動態把握は,透析患者に過度なストレスを与えず経時的にモニタリング,サーバ管 理することが可能となった。さらにアラート発動するシステムを臨床現場に導入し,治療環境の充実・改善を図ること で透析患者の包括的な安全管理に繋がる。

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であった。しかし昨今の通信環境の向上により通信 処理能は格段に向上しており,臨床現場の要望に即 したシステムの開発に適した状況になっている。 今回われわれは最新の IoT 技術を用いた遠隔診 療システムの開発を行った。この新しく開発した遠 隔管理評価システムを用いて,透析などの血液浄化 療法における体外循環施行時の循環動態把握システ ムの構築と活用の意義を検討した。 Ⅰ.方 法 1.ウェアラブルデバイス(スマートウォッチ型) の仕様 製品開発として株式会社 WithUS 協力の下,自社 開発製スマートウォッチを使用した(ディスプレイタ イプ:0.96TFT カラー,解像度:160×80dpi,重さ: 25g,サイズ:250×20×12mm,防水レベル:IP67, バンド材料:TPU,バッテリー容量:105mAh,バッ テリータイプ:ポリマーリチウム電池,待機時間: 5 〜 7 日,温度:−10 〜 50 度,通信規格名:IEEE 802.15.1(Bluetooth 5.0),光電式容積脈波記録法 (photoplethysmography:PPG) セ ン サ(Realtek 社製,品番 HX3313))(図 1)。 2.ウェアラブルデバイスをもちいて IoT を活用し た血圧・脈拍測定システム (1)脈波測定システムについて PPG より動脈容積の変化を光学的にとらえ14) 光源として酸化・脱酸化ヘモグロビンの吸収係数お よび等吸収点の観点15)より緑色 LED(波長 195 〜 570nM) を 2 機 搭 載 し, 光 検 出 器(photodiode: PD)として生体が強散乱体である特性16)を活用し た反射型17,18)のスタイルを選択した(図 2A)。 (2)センサ測定前処理について 測定組織部の血流低下による血管容積変化および モーションアーチファクトによる誤差要因19)に対 するセンサ感受性の調整として,① PPG 信号の高 周波成分(電源など)と,毛細血管密度や静脈血量 の変化,温度変動などの低周波成分の両方を除去す る目的でバンドパス・フィルタ処理(0.4 〜 4Hz) する。②信号振幅レベルを選択ピークとして検証・ 制限するための自動ゲイン制御(AGC)にて信号 レベルを±V ボルト変換する。③永続的な PPG 測 定プロセスを目的として,ベースライン変動のよう なアーチファクト発生に対して,ローパス有限イン パルス応答処理を行い,PD からの脈波を平滑化し, ベースライン変動ノイズ除去を行った(図 2B,C)。 (3)脈波からの脈拍測定システム20) 脈波波形により心拍数を測定するにあたり,人体 の「動き」が機能を妨げる要因になるため,動きに よる影響を取り除く目的でまず初めに前述の前処理 を行った。次に光学式脈波センサと皮膚の間の動き は,光信号の感度を低下させた。 (4)脈波からの血圧換算システム21,22) PPG 波形から収縮期脈波の立ち上がり時間,拡張 期時間,パルス伝播時間の 3 つを検出して,線形回 帰された公式により収縮期血圧と拡張期血圧を測定 する。PPG 波形から拡張期時間(DT),収縮期ピー クと拡張期ピークの時間遅延(T1)を検出する。こ れらの時間パラメータは,血圧が上昇するにつれて 減少する。DT は収縮期血圧(systolic blood pres-sure:SBP)との相関が高く,T1 は拡張期血圧(di-astolic blood pressure:DBP)との相関が高い。こ の DT および T1 を線形回帰方程式により,SBP お よび DBP を推定している(図 3)。 (5)データ換算・送信・集積・確認システム ウェアラブルデバイス(スマートウォッチ型)内 で前述方法にて脈波を脈拍・血圧へ変換し,変換デー タをデジタル近距離無線通信機器(Bluetooth 5.0) を用いてモバイル向けオペレーティングシステムを 備えた携帯電話(smartphone)と連動させる。そ のデータは無線通信システムを介し中央サーバへ転 送,中央サーバ内においてアラートプログラミング (後述)を適応し,集積データに対して評価を行う。 以上,共同研究施設(株式会社 WithUS)の協力の 下,ウェアラブルデバイスを開発・製品化し,運用 アプリケーション・ソフトの開発プログラミング含 め IoT システムを構築した(図 4)。また,集積デー タは中央サーバ内において用途に応じて適宜経時モ ウェアラブルデバイス センサ接触面 光学式脈波センサ 緑色LED 光検出器 緑色LED 図 1 ウェアラブルデバイス(スマートウォッチ型)の 接触面センサ 左図:本研修に際し新規開発したデバイス(With-US 社製品)。バンド固定は穴フックタイプで任意 固定可能。 右図:皮膚接触面のセンサ面の拡大図で緑色 LED 2 機,間に光検出器を搭載した光学式脈波セ ンサを企画開発した。

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ニタリンググラフ,および,記録用データグラフに 表しながら研究解析を行う(図 5A,B)。 (検討 1)健常者における validation study 23 〜 25) 対象は無治療随時正常血圧者 30 人。血圧は 80 サン プルにて評価を行い測定範囲は SBP90 〜 129mmHg, DBP60 〜 79mmHg,心拍数(pulse rate:PR)の測 定を行った(男性:女性=23:7,25 〜 64 歳:年齢 平均値(±標準偏差)は,42.3±5.6 歳)。右上腕に て血圧計(オシロメトリック法自動血圧計,テルモ 社製:エレマーノ 2-H56)を用いて,SBP,DBP, PR を 3 回測定してその平均値と同側上腕に装着し たウェアラブルデバイスを用いた実験測定結果を比 較した。

ABPM(ambulatory blood pressure monitoring) 測定手技を標準化するため,さらに装置の精度評価 の た め に The British Hypertension Society の 勧

告24,25)に準拠した解析を行った。データの解析・ 評価法として ABPM パラメータの定義と基準値を 基に数学的解析法(時間帯血圧の平均と偏差を評価 し,平滑化手法を参考に定点測定をする)を用いて 評価した。 (検討 2)透析患者における経時的モニタリング validation study について 対象患者は外来維持透析患者 50 人。73 サンプル にて評価を行い測定範囲は SBP:90 〜 129mmHg (36 サ ン プ ル ),130 〜 159mmHg(37 サ ン プ ル ), DBP:60 〜 79mmHg(50 サンプル),80 〜 100mmHg (23 サンプル),さらに PR の測定を行った。男性:女 性=35:15,25 〜 64 歳:年齢平均値(±標準偏差)は, 51.3±4.8 歳。非シャント側の上腕において血圧計(テ ルモ社製:エレマーノ 2-H56)を用いて,透析中に血 圧を定期測定した。血圧計による SBP,DBP,PR の 値と非シャント側上腕に装着したウェアラブルデバ n n+1 (PPG 信号) 収縮期ピーク 拡張期ピーク DT 心周期開始点 T1 振幅(mV) n+2 n+3(秒) 図 3 脈波からの血圧換算後の波形の図解 図 4 IoT を活用した経時モニタリングシステムの図解 ヒトの皮膚 血管 ヘモグロビン (PPG 信号) 脈波間隔 n n+1 S C D P T1 n+2 n+3(秒:sec) 血管(動脈) 緑色 LED 14:59:23 14:59:24 14:59:25 光検出器 脈波センサ 30,000 20,000 10,000 0 振幅 振幅 ︵ mV ︶ A B C A: 光学式脈波センサのしくみ(腕時計タイプ内蔵型) B: 脈波の生データ波形。種々のモーションアーチファクトにて 脈波のブレ(ノイズ)を生じる。 C: 前処理にて①➡②➡③処理をして脈波の円滑化 S:動脈波動波の開始点:大動脈弁開起点。P:衝撃波:左心 室駆出最大点。C:ノッチ部(重複切痕):心収縮期の終点, 血管床の相対的な硬直性・弾性により影響を受ける((T:潮 浪波:小動脈の跳ね返り波)が混入する場合がある。実検証 時はフィルター処理)。D:重拍波:大動脈の血圧により大動 脈弁へかかる血液から生じる周波数振動波。P-S:心収縮によ る相対的血液増加量を表す脈拍振幅。 図 2 脈波測定システムと測定前処理補足説明の図解

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イスを用いた同時間の SBP,DBP,PR の測定結果 を比較した。検証サンプル抽出においては validation study に耐えるサンプル数を無作為に 295 サンプル 中 4 サンプルに 1 サンプル抽出した。測定結果集積 評価は前記 validation study 評価に準じて実測デー タを,既存の透析施設の透析記録値と比較検証した。 (検討 3)前処置なしにて同一患者において同様 に測定を行った場合の検討 透析患者の皮膚は健常人と比し乾燥状態にあり, 透析コントロール状況に応じて皮膚の乾燥状態に個 人差が認められる26)ことやセンサ接面の乾燥や発汗 などで液面を形成する場合には測定誤差を生じうる27) ことが指摘されているため,前処置の必要性を検証 した。 測定開始時に計測前処置として,医療従事者によ りウェアラブルデバイスの装着の確認(スマート ウォッチ型ベルトの留め金固定位置について,PD 面を接着させウォッチベルトと留め金部と皮膚の隙 間を 5mm 程度の位置にて留め金位置を決定),お よび検査前に PD 部位の濡れガーゼによる用手的皮 膚清拭を行った。この装着状況確認と皮膚清拭の計 測前処置を行う場合と行わない場合で検討 2 に準じ て検証した。 (検討 4)血液透析中の血圧低下時のアラートプ ログラミング発動の確認 アラート機能発動による IDH と思われる透析中 血圧低下の早期発見検証として,透析患者より血圧 低下症状の訴え(頭痛,悪心,気分不快など)前に ウェアラブルデバイスおよび IoT システムを用い て血圧低下アラートを検出しうるか否かを検証し た。透析患者 50 人(男性:女性=35:15,25 〜 64 歳:年齢平均値(±標準偏差)は,51.3±4.8 歳) に対して,計 2 回の加療中(N=100)における血 圧低下時において,従来の透析機器備え付けの血圧 異常アラームと検証システムアラートの発動につい て後方視的に検出頻度および検出タイミングを確認 し時間的呼応性を検証した。1 分(≒60 秒)未満を 差異なしと見なし,適正呼応とし,その割合を評価 した。また,血圧低下アラート機能発現について先 の患者群において計 2 回(N=100)透析加療中患 者の IDH 様の血圧低下の発現状況を確認した。中 央サーバにてアラート発現確認時に透析スタッフの 手持ち端末にアラート信号を送る。既存透析機器の 血圧低下アラーム発動が無い場合において,透析中 患者に声かけにて頭痛,悪心,気分不快などの臨床 症状および血圧低下の有無を確認した。 以上の本研究は埼玉医科大学病院 IRB 委員会承 認下に施行した。(承認番号:18007,18148) 3.解析 各測定群間の平均値をノンパラメトリック検定 (Wilcoxon 検定)で検証し,有意確率(両側)とし て棄却域の 5%未満(P < 0.05)の場合,帰無仮説 は棄却され 2 変数間に有意差有りと評価する。

Validation 評 価 に つ い て British Hypertension 14:39:14 14:39:15 14:39:16 14:39:17 14:39:18 14:39:19 14:39:20 14:39:21 14:39:22 14:39:23 14:39:24 14:39:25 14:39:26 14:39:27 14:39:28 14:39:29 14:39:30 14:39:31 14:39:32 14:39:33 14:39:34 14:39:35 14:35:36 14:39:37 14:39:38 14:39:39 6/20(土) 6/21(日) 6/22(月) 6/23(火) 6/24(水) 6/25(木) 6/26(金) 6/27(土) 6/28(日) 6/29(月) 160 140 120 100 80 60 40 20 0 140 120 100 80 60 40 20 0 8 7 6 5 4 3 2 1 0 収縮期血圧(mmHg) 拡張期血圧(mmHg) 心拍数(拍/分) 歩数(歩/100) 収縮期血圧(mmHg) 拡張期血圧(mmHg) 心拍数(拍/分) 血中酸素(%) 睡眠(h:右目盛) A B 図 5 中央サーバ内の集積データの目的に応じたグラフ化の様式例 A: 本研究で用いた血圧・脈拍数リアルタイムグラフの形式。機械の機能限界として 1 秒毎で対応することも可 能である。しかし,電池の蓄電量の許容からすると現実的ではない。モニタリングの目的に応じて測定間隔 は変更可能である。 B: 横軸の時間単位の設定においては任意に調整可能であり,表示は間隔あたりの平均値にて表示される。例と して日別に平均値(および最大値,最小値)の把握が可能であり,その他のセンサ設定と解析応用を行えば 血圧・心拍数・血中酸素・睡眠・歩数の測定が可能である。

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Society grading criteria24,25)に準じて評価を行う。 オシロメトリック法自動血圧計による測定値と本研 究使用機器の測定値(mmHg)の差異が≦|5|, ≦|10|,≦|15| の 範 囲 に 含 ま れ る 割 合 に て grading を行う。おのおの Grade A:60%,85%, 95 %,Grade B:50 %,75 %,90 %,Grade C: 40%,65%,85%,Grade D:Grade C を満たさない, の基準により評価を行う。解析データの正規分布評 価を統計的仮説検定としてコルモゴロフ・スミルノ フ検定を用いて検証する。正規分布を仮定しても大 きな問題にはならないことを確認した上で下記の相 関関係を検定する。 相関係数と相関関係有意差検定 相関関係についてピアソンの積率相関係数の公式 に準じる。 相関関係の強さについては−1≦相関係数≦1 と し,0=相関なし,0 <│相関係数│≦0.2 にて「ほ とんど相関なし」,0.2 <│相関係数│≦0.4 にて「低 い相関あり」,0.4 <│相関係数│≦0.7 にて「相関 あり」,0.7 <│相関係数│≦1.0 にて「高い相関あ り」,1.0 または−1.0=完全な相関とする。 相関分析の有意性について無相関検定(帰無仮説 に準じる)を行う。 二群間は独立で有り,相関係数の分布を Z 変換 法を用いて下記の検定公式を用いて検定を行った。 有意確率(両側)として棄却域の 5%未満(P < 0.05) の場合,帰無仮説は棄却され 2 変数間に相関がある, 有意差有りと評価する。 Ⅱ.結 果 (検討 1)健常者における validation study について オシロメトリック法自動血圧計測定群の血圧平均 値(±標準偏差)は,117.0(±11.1)/74.5(±4.8) mmHg,ウェアラブルデバイス群は,118.0(±8.3) mmHg/72.5(±3.5)mmHg であった。 次に,その相関関係については収縮期血圧につい ては平均差=−0.44,標準偏差=7.8,相関係数(r)= 0.7,P < 0.05 で 評 価 は≦|5|,≦|10|,≦|15|= 52%,83%,93%:Grade=B であった(図 6A)。また, 拡張期血圧については平均差=1.8,標準偏差=4.1,r= 0.5,P < 0.05 で 評 価 は≦|5|,≦|10|,≦|15|= 78%,100%,100%:Grade=A であった(図 6B)。 また,同対象群において,脈拍検証も行った。オ シロメトリック法自動計測定群の脈拍平均値(±標 準偏差)は,76.0(±0.5)bpm,ウェアラブルデバ イス群は 76.8(±0.5)bpm であった。その相関関係 については平均差=−0.8,SD=3.8,r=0.7,P < 0.05 で評価は≦|5|,≦|10|,≦|15|=89%,99%, 99%:Grade=A であった(図 6C)。 平均差=−0.4375 標準偏差(SD)=7.851 r=0.6641, p<0.05 平均差=1.800 標準偏差(SD)=4.107 r=0.5003, p<0.05 平均差=−0.761 標準偏差(SD)=3.754 r=0.7073, p<0.05 スマートウォッチ validation study 健常者

systolic blood pressure

diastolic blood pressure (mmHg) オシロメトリック法自動血圧計(mmHg) オシロメトリック法自動血圧計の脈拍 (bpm) オシロメトリック法自動血圧計(mmHg) pulse rate スマートウォッチ 血圧(mmHg) スマートウォッチ 血圧(mmHg) スマートウォッチ 脈拍(bpm) 140 130 120 110 100 90 80 80 90 100 110 120 130 140 40 50 60 70 80 90 110 100 90 80 70 60 50 40 100 90 80 70 60 50 40 40 50 60 70 80 90 100 110 A C B A: 収縮期血圧の従来測定器による実測値 (横軸)とスマートウォッチ測定値(縦 軸)における相関の分布図。 B: 拡張期血圧の従来測定器による実測値 (横軸)とスマートウォッチ測定値(縦 軸)における相関の分布図。 C: 心拍数の従来測定器による実測値(横 軸)とスマートウォッチ測定値(縦軸) における相関の分布図。 図 6  無治療随時正常血圧者におけるウェアラブル機器(スマートウォッチ)によるプレ validation study(検討 1)

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(検討 2)透析患者における validation study につ いて オシロメトリック法自動血圧計測定群の血圧平均 値(±標準偏差)は,124.7(±7.8)/68.0(±10.0) mmHg および 136.5(±6.21)/82.2(±3.4)mmHg, ウェアラブルデバイス群は 123.9(±6.0)/71.3(±4.0) mmHg,133.9(±4.1)/81.5(±1.4)mmHg であった。 次に,その相関関係については SBP(90 〜 129)に ついては平均差=0.8,標準偏差=4.4,r=0.8,P < 0.05 で評価は≦|5|,≦|10|,≦|15|=85%,91%, 100%:Grade=A であった(図 7A)。SBP(130 〜 159)については平均差=2.5,SD=5.3,r=0.5,P < 0.05 で評価は≦|5|,≦|10|,≦|15|=70%,90%, 100%:Grade=A であった(図 7B)。また,DBP (60 〜 79)については平均差=−3.5,標準偏差=7.8, r=0.7,P < 0.05 で評価は≦|5|,≦|10|,≦|15|= 64 %,76 %,92 %:Grade=B で あ っ た( 図 7C)。 DBP(80 〜 100)については平均差=0.7,SD=2.9, r=0.5,P < 0.05 で評価は≦|5|,≦|10|,≦|15|= 90%,99%,100%:Grade=A であった(図 7D)。 また,同対象群において,脈拍検証も行った。オ シロメトリック法自動計測定群の脈拍平均値(±標 準偏差)は,71.7(±0.8)bpm,ウェアラブルデバイ ス群は 73.2(±0.7)bpm であった。その相関関係に ついては平均差=−1.5,標準偏差=7.3,r=0.8,P < 0.05 で 評 価 は≦|5|,≦|10|,≦|15|=89 %, 91%,93%:Grade=B であった(図 7E)。 (検討 3)前処置なしにて同一患者において同様 に測定を行った場合 オシロメトリック法自動血圧計測定群の血圧平均 値(± 標 準 偏 差 ) は,121.8(±4.8)/67.6(±8.8) mmHg および 143.7(±6.8)/84.8(±4.7)mmHg,ウェ アラブルデバイス群は 124.6(±10.8)/70.6(±10.3) mmHg,130.4(±9.8)/76.7(±9.5)mmHg であった。 次に,その相関関係については SBP(90 〜 129) については平均差=−2.8,標準偏差=11.2,r=0.2, P > 0.05 であった(図 8A)。SBP(130 〜 159)につ いては平均差=13.3,SD=10.9,r=0.2,P > 0.05 で あった(図 8B)。また,DBP(60 〜 79)については 平均差=−3,標準偏差=9.6,r=0.3,P > 0.05 であっ た(図 8C)。DBP(80 〜 100)については平均差=8.1, SD=9.2,r=0.2,P > 0.05 であった(図 8D)。 また,同対象群において,脈拍検証も行った。オ シロメトリック法自動計測定群の脈拍平均値(±標 準偏差)は,73.1(±14.4)bpm,ウェアラブルデバ イス群は 77.4(±13.7)bpm であった。その相関関 係については平均差=−4.4,標準偏差=20.3,r= 0.06,P > 0.05 であった(図 8E)。 (検討 4)血液透析中の血圧低下時のアラートプ ログラミング発動(IDH の検出) 血液透析患者において,血液透析中に IDH 様の 血圧低下をきたしたタイミングとウェアラブルデバ イスにて経時モニタリングによる血圧低下検出の整 合性について検証を行った。 血液透析中 50 人に対する計 2 回の観察期間(N= 100)中に血圧低下に伴う従来の透析機器内備え付 けの血圧低下異常アラーム発動に際し,中央サーバ 内の生体モニタリング記録におけるアラートプログ ラミング発動の発生頻度を確認した。発動件数は 5 件確認され,うち平均血圧 10mmHg 以上の低下ア ラートは 4 件,収縮期血圧 20mmHg 低下アラート 1 件であった。そして,その発現のタイミング(時刻) においては,従来の透析機器における検出時間と ウェアラブルデバイスを用いた経時モニタリング記 録の時刻に分の単位における適正呼応率は 100%で あり(中央サーバ 5 件検出 / 従来透析機器 5 件記録), 検出タイミングに時間的差異は認めなかった。 次に,中央サーバ内の生体モニタリング記録にお ける血圧低下を検出し,アラート機能発動時に医療 従事者所持のタブレットへアラート信号表示し,医 療従事者が患者さんに臨床症状確認した。9 件のア ラート信号表示に対してすべての患者は症状を訴え るタイミングを図っている状況であった。 Ⅲ.考 察 本研究の第一の目的としてウェアラブルデバイス の「脈波による血圧測定が,実際の臨床現場での使 用に対応しうるか?」という点がポイントであった。 とくに脈波による血圧測定は実測値ではなく,あく まで計算上の血圧測定値である。その限界として, 測定状況・変化による測定結果の精度があげられる。 その点を検証する意味で健常者と慢性腎不全患者の validation study を行った(検討 1,2)。その結果は 十分臨床使用に対応できうるものであった。また, 測定システムとして透過型と反射型があり,透過型 は装着様式より着脱は簡便であるが血液浄化療法中 の数時間単位の装着は困難である。その点において 反射型はスマートウォッチ型のウェアラブルデバイ スにすれば長時間装着は可能であるが,装着状況の 固定化に不安が残る。そこで,従来の反射型機器は シングル光源で製品化されているものがほとんどで あるが今回われわれはデュアル光源によるモデル開

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validation study 透析患者 前処置あり ∼収縮期血圧:systolic blood pressure∼

∼拡張期血圧:diastolic blood pressure∼

∼脈拍:pulse rate (bpm)∼ (90∼129mmHg) 平均差=0.833 SD=4.443 r=0.8185, p<0.05 平均差=−3.462 SD=7.813 r=0.6752, p<0.05 平均差=0.769 SD=2.920 r=0.5224, p<0.05 平均差=−1.514 SD=7.279 r=0.8128, p<0.05 (130∼159mmHg) (60∼79mmHg) (80∼100mmHg) 平均差=2.513 SD=5.310 r=0.5223, p<0.05 スマートウォッチ 血圧(mmHg) オシロメトリック法自動血圧計 (mmHg) オシロメトリック法自動血圧計 (mmHg) オシロメトリック法自動血圧計(mmHg) オシロメトリック法自動血圧計(mmHg) オシロメトリック法自動血圧計(bpm) スマートウォッチ 血圧(mmHg) 140 130 120 110 100 90 150 145 140 135 130 125 100 90 110 120 130 140 125 130 135 140 145 150 75 80 85 90 95 100 55 60 65 70 75 80 85 110 100 90 80 70 60 50 40 40 60 80 100 120 A B C D E 85 80 75 70 65 60 55 100 95 90 85 80 75 スマートウォッチ 血圧(mmHg) スマートウォッチ 脈拍(bpm) スマートウォッチ 血圧(mmHg) 図 7 外来維持透析患者におけるウェアラブル機器(スマートウォッチ)による血圧の validation study(検討 2) A: 収縮期血圧(90 〜 129mmHg)の従来測定器による実測値(横軸)とスマートウォッチ測定値(縦軸)にお ける相関の分布図。 B: 収縮期血圧(130 〜 159mmHg)の従来測定器による実測値(横軸)とスマートウォッチ測定値(縦軸)にお ける相関の分布図。 C: 拡張期血圧(60 〜 79mmHg)の従来測定器による実測値(横軸)とスマートウォッチ測定値(縦軸)におけ る相関の分布図。 D: 拡張期血圧(80 〜 100mmHg)の従来測定器による実測値(横軸)とスマートウォッチ測定値(縦軸)にお ける相関の分布図。 E:心拍数の従来測定器による実測値(横軸)とスマートウォッチ測定値(縦軸)における相関の分布図。

(8)

発を試みた。結果,シングル光源モデルより「測定 不可」状況は軽減できた(非開示)がそれでも体動 に伴うノイズの除去処理については改善の余地があ る。今回われわれはノイズ削減のための前処置を行 うことの必要性を検証する目的で(検討 3)を行っ た。今回のわれわれの検討では,前処置を行わなく とも測定結果は十分臨床使用に耐えうることが明ら かとなった。さらに精度を高める目的で,われわれ はさらなる検討を行っている。例えば,ノイズの除 去法について AI による機械学習を用いることを検 討している。PPG による脈波生データを中央サー バ側で AI 処理前に従来の大まかなノイズ除去を実 施し,AI は従来処理(正規化)された PPG 波形か ら特異点を探し血圧を推定する方法である。もしく は,特異点探しを AI の前処理とする手段も理論上 は可能と思われる。いずれにせよ更なる改良が望ま れる。本研究の第二の目的として中央サーバ使用に おける管理維持費用軽減である。本稿の製品・シス テム開発費用と,他に運用に関する維持費がかかる。 この維持費を継続的に捻出し続けることは現実的で validation study 透析患者 前処置なし

∼収縮期血圧:systolic blood pressure∼

∼拡張期血圧: diastolic blood pressure∼

∼脈拍: pulse rate(bpm)∼ オシロメトリック法自動血圧計(mmHg) 平均差=−2.769 SD=11.247 r=0.2475, p>0.05 (90∼129mmHg) 平均差=−2.9818 SD=9.5516 r=0.3490, p>0.05 (60∼79mmHg) R2 = 0.0613 平均差=8.1333 SD=9.2296 r=0.1838, p>0.05 平均差=−4.357 SD=20.286 r=0.0574, p>0.05 (80∼100mmHg) R2=0.0338 平均差=13.2727 SD=10.8956 r=0.1507, p>0.05 (130∼159mmHg) オシロメトリック法自動血圧計(mmHg) オシロメトリック法自動血圧計(mmHg) オシロメトリック法自動血圧計(mmHg) オシロメトリック法自動血圧計(bpm) スマートウォッチ 血圧(mmHg) スマートウォッチ 血圧(mmHg) スマートウォッチ 血圧(mmHg) スマートウォッチ 血圧(mmHg) スマートウォッチ 脈拍(bpm) 150 140 130 120 110 100 90 85 80 75 70 65 60 55 100 95 90 85 80 75 120 110 100 90 80 70 60 50 40 90 100 110 120 130 140 60 55 65 70 75 80 85 75 80 40 60 80 100 120 85 90 95 100 150 145 140 135 130 125 135 125 145 155 165 A B C D E 図 8 検討 2 と同様の検証において経時測定前にウェアラブルデバイス装着時に被検者の上腕装着部位表面に対して前 処置なしでの測定結果(検討 3) A 〜 E:表示内容情報は検討 2(図 7)と同様である。

(9)

はない。今後は仮想サーバ(クラウドコンピューティ ング)を用いた運用が費用面での打開策として期待 できる。加えて,データ管理システム(クラウド化) を構築することで,その得られた結果を現場にいな くても中央サーバにアクセスすることにより on time で状況を遠隔で把握することができ,集積データに 対して目的に応じたプログラミングを融合すること ができる。これらは,従来の電子カルテなどの elec-tronic health record あ る い は personal health re-cord などの機能に加えて,IoT を活用することで必 要に応じて「データ・情報のオンデマンド化」や遠 隔アプローチを可能にしている。本研究システムに より透析中の血圧・脈拍経時モニタリングを施行す ることで,透析中の血圧低下の検出が可能となった。 血圧低下を即時に検出することで IDH によるリス ク28,29)を軽減しうることに期待をするが,本質的 には IDH を引き起こさない除水コントロールが重 要であり,今後は脈拍や血圧変化動態を分析するこ とで IDH の発生予防に結び付くような解析プログ ラミングを引き続き行っていくことが今後の課題で ある。 最後に,測定結果をクラウド化する最大意義とし て「透析管理の情報集約と利便性」がある。本シス テムを用いることで経時モニタリングが可能となり, その変動にアラート機能を働かせることでリスクマ ネジメントに貢献しうることを期待する。そして, 急性血液浄化療法施行時の安全性を重視する際にお いて循環動態把握は必須であり,その経時モニタリ ングデータにアラート機能を設定発動できることに より加療中の血行動態安定性向上は十二分に期待で きると思われる。本システムは IoT の発展に併せて, 時代のニーズ,医学の発展に呼応する関係で医療現 場の種々の問題に応用できる可能性を秘めている。 謝辞:本研究に関して,専用のスマートウォッチ および IoT 活用システムの開発にご協力いただい た株式会社 WithUS(WithUS Co., Ltd)の大森次 男代表取締役はじめ開発チーム一同,ならびに各種 アドバイス・協力いただいた埼玉医科大学病院血液 浄化ユニットスタッフ一同,小林内科医院小林竜也 院長,山口健夫氏に深謝申し上げます。 本論文において,開示すべき利益相反はない。 研究グラント: 文部科学省科学研究費助成事業  18K12115 埼玉医科大学病院 2019 年学内グラント 文  献 1) 日本透析医学会:わが国の慢性透析療法の現況 2017 年 12 月 31 日現在. 2) 川口良人,二瓶宏,平沢由平,他:透析導入ガイド ラインの作成に関する研究.平成 3 年度厚生科学研 究腎不全医療研究事業報告書 1992;125-32. 3) 日本透析医学会:維持血液透析ガイドライン:血液 透析導入.日透析医学会誌 2013;46:1107-55. 4) K/DOQI Workgroup:K/DOQI clinical practice

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Takehito Kobayashi1,2), Ryutaro Aoyagi1), Kohei Saito1), Takeru Kusano1), Nobuaki Nakaya1),

Koji Tomori2, 3), Shinichiro Iida1), Nobutaka Hirooka1), Masaaki Uchiyama4), Hirokazu Okada1,2,3), Hidetomo Nakamoto1, 2) Establishment of blood pressure/pulse remote monitoring system using wearable device and IoT during dialysis

Saitama Medical University Department of General Internal Medicine1)

Saitama Medical University Hospital Blood purification unit2)

Saitama Medical University Department of Nephrology3)

Association of Healthcare Co. Kousei-kai KitaSakado Family Clinic4)

【Background】Maintaining hemodynamic stability is vital for safe hemodialysis (HD) therapy. At present, circulato-ry dynamics are measured as appropriate. In this study, pulse and blood pressure are tracked via an automatic monitoring system to secure safer HD treatment and to enable remote monitoring and control via the detection and issuance of alerts. This study also aims to assist the development of instruments for remote monitoring and control. 【Method】We developed a wristwatch-like device that measures blood pressure and pulse and conducted a

valida-tion study on its effectiveness. We also constructed an IoT-type setup in which the measurement results are auto-matically sent to and stored on a server. 【Results】Each measurement item in our device provided the same level of detection accuracy as existing medical devices. Measurement results were managed on a server using an IoT sys-tem, and alerts were successfully triggered. 【Conclusion】There is potential for our system to be adopted in clinical practice to enable less stressful or demanding monitoring of patients and to ensure that the necessary alerts are is-sued by managing data using servers. We anticipate that more comprehensive safety management can be achieved by enhancing and improving the treatment environment for dialysis patients in this way.

key words  telemedicine, blood pressure management, continuous biological monitoring, wearable device,

参照

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