平成
27年
度
学位論文
小学生 の学級 コ ミュニテ ィ感 覚 と
社会性 の関連
一
学級開きから半年間の縦断的調査
―
兵庫教育大学大学院
学校教育研 究科
人 間発達教育専攻
学校心理・ 発達健康教育 コース
M14038G
池 田 広子
第
1章
問題 と 第2章
研究1目
次
目的・ 。・・・ ・・・ 00・ ・・・・・・・・000・
・・ ・1.目
的2.方
法 ・・000・
・・ ・・ ・・・ 00・ ◆・・ ・・ 。・・ 00・ ・(1)項
目の作成 ・・・・ ・・・ ・・・・00000・
・・・ ・・ ・・(2)調
査 協力者 。・・・ ・ 。・・・・ ・・・・・ ・0000・
0・ ・(3)調
査 内容 (の 調査時期 ・・・・・・・・・・・ 。・・・ 00・ 0・000・
・(5)調
査方法 ・・・・・・・・・・・・・ 。・・・ 00・000。
・(6)倫
理的配慮 ・・・・・・・・ 0・ ・・・・・・・・・・・・・・3.結
果 と考察0◆
・・・ 00・ 0。 ・・・・・・・・・・ 00・ ・・ 第3章
研究 2・ 0・ ・・・ 00。 ・・・・・・・ 00・ ・・・・・・・・1.目
的2_方
法(1)調
査協力者 ・・・・・・・・・・ 0・ ・・・000・
・・・・・(2)調
査内容 ・・ 0・0000・
・・ 。・・・ 。・・・・・ 0。 ・・(3)調
査時期000・
・・ 。000・
・・・ 。00・ ・・・・・・・(0
倫理的配慮 ・・・・・・・ 。・ 。・・・・・・0000・
・・・3_結
果 と考察(1)各
え度の分析結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 00・ ・ ① 学級コミュニティ感覚尺度の因子分析 ・・・・・・・・・・ 0 ② 社会性尺度の因子分析 ・・・ 00・ ・・・・・・000・
0・ ③ 教師の指導行動尺度の信頼性 ・ 0・ ・・・・・・・・ 0・ ・・(2)学
級コミュニティ感覚 と社会性および教師の指導行動の関連 ・・ ① 同時期の学級コミュニティ感覚と社会性の関連 ・・・・・・ ◆ ②4月
から10月 における学級コミュニティ感覚 と社会性の関連 0 ③ 教師の指導行動か ら学級 コミュニティ感覚への影響 ・・・・・ 第4章
総合考察・ 。・0000000・
・・ 。・00e●
●●●●●●・・ 引用文献 ・・・・・・・・・000・
000・
・・・・・・・・・・・・ 資料 1 9 9 9 9 10 10 10 10 11 11 14 14 14 14 14 15 15 16 16 16 18 19 19 23 24 27 29 34第
1章
問題 と目的 ここ数年,自 己中心的な子 どもが増えてきたのではないか と言われている。 さらに,子 どもたちをとりまく環境の変化により,子ども同士が人間関係 を結 ぶ ことが難 しくなつているのではないか とい う指摘もある(杉田,201の。ベネ ッ セ教育総合研究所 「第2回
子 ども生活実態基本調査報告書」0000で
は,子ど もたちが 「友だちと一緒にいたい」,さ らには 「違 う意見をもつた人 とも仲良 くできる」と,人
との交流を前向きにとらえている傾向が示 された。しか し,一 方で 「グループの仲間同士で固まつていたい」 と思 う子 どもたちが小学校全体 の半数以上を占めていることや,「仲間はずれにされないように話を合わせ る」 傾 向が強まつているとい う結果か ら,友
だちとの関係づ くりに苦労 している現 状 も明 らか となつた。今,子 どもたちには,周 囲の人や ものとうま くかかわ り なが ら,主
体的に生きるための力が必要なのではないだろ う力、 同様 のことは,現
行の小学校学習指導要領の特別活動 にも明記 されてお り, その目標は 「望ま しい集団活動を通 して,心身の調和の とれた発達 と個性の伸 長 を図 り,集団の一員 としてよりよい生活や人間関係 を築 こ うとす る自主的, 実践的な態度を育てるとともに,自 己の生き方についての考えを深め,自 己を 生かす能力を養 う」 こととなっている(文部科学省,2000。 また,「学級活動を 通 して,望
ま しい人間関係 を形成 し,集
団の一員 として学級や学校 におけるよ りよい生活づ くりに参画 し,諸
問題 を解決 しよ うとす る自主的,実
践的な態度 や健全な生活態度を育てる」ことが,学
級活動の 目標 とされている(文部科学省, 2000。 これは,学
級や学校 における生活上のさまざまな問題 を話 し合 うことや, 学級内の仕事を分担 してお こな うことな どを通 して,自 ら学級づ くりに参加 し ようとす る意欲や態度を子 どもたちに育てようとい うことであろ う。 さらに,中央教育審議会資料(文部科学省,2003)には,子どもたちの社会性の 育成を図ることが特別活動の特質であると記 されている。では,社
会性 とは具体的にどのような力をさしているのだろ うか。心理学辞典によると
,社
会性 と は,「生を受けてか ら社会の一員になるまでの過程で身につけていくものであり, 人間関係 を形成 し,円 滑に維持する能力」 とある(渡辺,201の。 また,国立教育 政策研究所生徒指導研究センター(2000は,学
校教育で想定 されてい る社会性 を,「集団活動の場で 自分の役割や責任 を果たす,互いの特性 を認め合 う,他者 と協力 して諸問題 を話 し合 う,そ の解決に向けて思考・判断す る等の能力や態 度」としている。さらに田中(2007)は,「社会性 とは,第
一に社会への適応性,第 二に社会 をつ くつていく意欲 と社会を維持,発展 させ るに必要な資質能力であ り,子 どもはそれを自身の成長・発達 とともに身につけてい く」と述べている。 そこで,本
研究では,前
述の中央教育審議会資料(文部科学省,2000等
をもとに, 「社会性」を「よりよい人間関係 を築こうとする力,社
会を自らつ くつていこ うとす る意欲や態度・ 能力」 と定義 し,その育成が学校生活のみならず将来に わたつて子 どもたちが社会で円滑に生きていくために必要である,と い う考え に立って調査・ 検討 を進めた。 ところで,前
述 の杉 田(201のは,学
校 の中での子 どもたちの生活の基盤 は学 級であ り,そこでの集団体験は子 どもたちの成長に大きく影響す ると述べてい る。そ して,社
会全体の風潮 として 日に見える学力を重視す る傾 向があるが, 学力は本来,人
間 としての総合力であ り,学
級集団を通 して育つ社会性や人間 形成能力 も学力の重要な構成要素であるとしている。 このような集団か ら子 ど も個人への影響については,先行研究か らも明 らかである。是常・秋光(2010 は,生徒がクラスメー トとの温かい人間関係 を構築す るためには,学
級に規律 が あ り,優
しく明 るい雰囲気 であることが必要であるこ とを示 した。加藤0000は
,児童に とつて自分の学級 が荒れていない と思えることが,問題行動 を抑 える重要な要因であると述べ,学
級集団の重要性 を指摘 し,三
島・伊藤 (200のは,お互いに良い ところを認 め合 う学級の雰囲気が,児
童個人の学習や 生活面での成長に大きく影響 している可能性を示唆 した。これ らのことか らも,子 どもたちの社会性育成には,それにふ さわ しい学級集団の存在が必要である といえよ う。 では
,具
体的にはどのよ うな学級づ くりを目指 してい くべきなのだろ うか。 これについて越0012)は,学
級 を公共の社会的性質をもつたもの,す
なわちコ ミュニティとして認識す ることが,子どもの社会性や役割意識 を うながす と述 べている。 この「コミュニティ」 とい う言葉は一般的に「地域社会」や 「地域 共同体」とい う意味で使われ ることが多いが,Hinery(1955)は,その特徴 として, コミュニティを構成する個人間での社会的相互作用,領
域,共
通の絆の3つ
を 挙げている値 村,2006D。 また,Sarason(197の は,「人が依存することができ, たやす く利用が可能で,お互いに支援的な,関係 のネ ッ トワーク」 と定義 して いる。 さらに,「コミュニティ」には,「地理的コミュニティ」 と「関係的 (機 能的)コ ミュニティ」とい う2つ
の概念があ り,「地理的 コミュニティ」とは「あ る共通 した場所に生活 して,生
活環境を共有 している」 とい う集団をあらわす (植村,2006a)。 一方,「関係的 (機能的)コ
ミュニティ」とは,「場所を問わず, 共通の規範や価値,関心,日 標,同一視 と信頼の感情を共有 している」集団 とす る (植村,2006a)。 つま り「コミュニティ」は,地
域社会だけではなく,学
校や 職場,病
院 な どさま ざまな集 団 をも含 む概念 と して考 え られ てい る(植村, 201の。 これ らのことか ら,「相互支援や相互作用」「生活環境の共有」「共通の 価値 0日標や信頼などの感情の共有」が 「コミュニティ」のもつ大きな特徴で あろ う。 このよ うに考えると,共
通のルールや 目標な どがあ り,子
どもたちが 自主的にクラスメー トとかかわ り合い,お互いを信頼 し合つて活動 している学 級は,コ ミュニティとしての側面をもつ学級,す
なわち「学級 コミュニテ ィ」で あるといえるのではないだろ う力Ъ また,Sarason(197の は,コ ミュニティとして機能 している集団に対 して,そ こに属する人々がもつ感覚を「コミュニティ感覚」 と名付け,その欠如や希薄 さがわれわれの生活を破壊す る原動力になっているとして,こ の概念の重要性を指摘 した。その後
,McMillan&Chavis(1980に
よつて,コ ミュニティ感覚 は 「メンバーがもつ所属感,メ ンバーがメンバー同士あるいは集団に対 してもつている重要性 の感覚,ま た
,集
団にともにコミッ トメン トす ることによって メンバーのニーズを満たすことができるとい う信念の共有」 と定義 され,測定 のための心理尺度 「Sense of Commllnity lndex(SCI)」 が作成 された(植村,2012)。 その構成要素 としては①メンバーシップ (コ ミュニティの境界,情緒的 安定感,所属感,個人がコミュニテ ィに対 してお こな う投資な どの概念で構成) ②影響力 (コ ミュニティと個人 とがお互いに影響 し合っているとい うこと
)③
統合 とニーズの充足 (自 己のニーズの達成が他のメンバーのニーズの達成 と結 びついているとい う感覚)④
情緒的結合の共有 (コ ミュニティ感覚の中でも特 に感情や情動を強調する概念)の4側
面が挙げられている(笹尾,2006)。 これ ら を総合す ると,コ ミュニティ感覚 とは,そこに属する人々がその集団を自分た ちの「コミュニティ」であると認め,大
切に思い,維
持・発展 させていこうとす る意欲である,と 言える値 村,2006b)。 このコミュニティ感覚がメンバーの間 で強 く意識 されているほど好ま しいコミュニティであるとい うことは,多くの 研究や観察で明 らかにされてお り (植村,2006b),教 育現場においても,同様の 効果が示 されている。例 えば越001"は
,コ ミュニティ感覚 と学級活動や級友 への積極的なかかわ りとの関連を明らかにし,学
級に対するコミュニティ感覚 を子 どもたちに育てることの重要性 を示唆 した。 さらに笹尾(2000も ,コ ミュ ニティ感覚得点が高い生徒ほど,学
校や生徒間のネ ッ トワークやサポー トを強 く感 じているとい う報告があることを示 した。 これ らのことか らも,コ ミュニ テ ィとして学級が機能することは,子 どもたちが安心 して 自主的にかかわ り合 える集団をつ くってい く上で大いに助けになると考えられ る。 ところで,こ のクラスの一員であるとい う認識が強 くな り,学
級 に対するコ ミュニティ感覚が高まると,子どもたちの中には同じ目標に向かつて共に進ん でいるとい う,仲間 との一体感が生まれ るだろ う。その時に,ク ラス内のつなが りを大事にするあま り,個人の 自由な意見や行動が認 められな くなるとい う 危険性はないだろ うか。植村(20060は,多様なグループの存在 を認 め,そ れ ら が コミュニティにもた らす独特な価値観やアイデアなどを尊重す ることは,コ ミュニティの真の豊か さの指標 といえるとして,コ ミュニティ心理学における 多様性の尊重の重要性 を指摘 している。お互いを認 め合 う学級集団をつ くり上 げてい くためには,仲間が持つ価値観・信念・感情な どの特性 を異質なものと して避けた り排除 した りす るのではなく
,尊
重 しなが ら相手 と向き合お うとす る姿勢が子 どもたち一人ひ とりに必要なのではないだろ うか。蘭・高橋(2012D は,学
級において,他
者 と協調す ることの楽 しさや難 しさを経験 し,価
値観 を す りあわせて関係性 をつ くつてい くことが,集団への所属感 を高め,信
頼性を 育ててい く基礎的な経験 となるとしている。 もともと学級は,家
庭環境や考え 方,能
力,嗜
好な どが異なつた子 どもたちが集 まって形成 している集団である。 学級の中で 自分 とは異なるもの ともうまく合意点を見つけ,お互いに心地 よく かかわ り合いなが ら,安心 して生活できる環境を共につ くり上げてい く。その よ うな経験を積み重ねることで,子どもたちはものごとに柔軟に対応できる力 を身につけてい くであろ う。つま り,子 どもたちの社会性の育成のためには,McMillan&Cha宙
s(1986)が 示 したコミュニティ感覚の持つ4側
面 とあわせ て,多
様性 を受容す る意識 を持つ ことが必要ではないか と考える。 しか し,こ れまでの研究で使用 されたコミュニティ感覚尺度には「多様性の受容」に関す る項 目が特別には含まれていない と考えた(例えば高橋・森 田・石津,2010;石
盛,2013;越,2010。 そこで本研究では,5つ
目の側面 として「多様性の受容」 を加えた尺度を構成 し,小
学生の学級に対するコミュニティ感覚の測定を試み るもの とする。 また学級は,集団の持つ コミュニテ ィとしての特徴か らみて,ま ず 「地理的 コミュニティ」であるといえよう。出会った当初は,教
室 とい う生活環境を共 有 しているだけの子 どもたちである。 しか し,本
研究で提案す る「学級 コミュニティ」は「地理的コミュニティ」であるだけではなく「関係的機 能的)コ ミュ ニティ」であ り,子どもたちが相互に支援的で信頼などの感情 を共有 している ことが大切であるのだが,自 主的なかかわ り合いや信頼関係 は,自 然発生的に 生まれ るものではないであろ う。だか らこそ,そ のよ うな集団へ と学級を成長 させてい くためには
,教
師の指導が必要不可欠なのである。是常・秋光(201の は,意図を明確 にした注意0指導 と誉めることをおこない,逆
に,意
図の不明確 な注意・指導を しないとい うような教師の 「学級全体への働 きかけ」が,規律 があ り明るく優 しい学級雰囲気を生み出す方向で影響することを明 らかにした。 また,蘭
0高橋(2011)は,多 くの教師たちが悩んでいる学級経営を改善す るため には,教
師が中心 となって活動的な取 り組みをお こなった り,逆
に放任す るよ うな学級集団のタイプか ら脱 して,教
師 と生徒が ともに共同体をつ くり上げて いくとい うイメージをもつことが必要であるとした。さらに蘭・高橋(2012Dは, 活動や行為,発
言などを通 して 自由に互いが交流 し合い,触
発 し合 う集団へ と 学級 を成長 させ てい くために教師に必要なのは,生
徒 の特性 を見極 めなが ら, 成長を見守 るプロデューサー としての役割である,と 指摘 している。 コミュニ テ ィの一員 として ともに学級をつ くつてい くとい う意識 を持ちなが ら,と きに は リーダー として学級が進むべき方向を子 どもたちに示 してい く。そのような 教師の明確な姿勢が子 どもたちに与える影響は大きいのではないか と考える。 では具体的には,教
師の どのような指導行動が学級 をコミュニティヘ と効果 的に変 えてい くのだろ うか。教師の指導行動については,日 標達成行動(リ ーダ ーシップP行
動)と集団維持行動(リ ーダーシップM行
動)とい う,PM理
論に基 づ く研究(三隅・吉崎・篠原,197つが よく知 られてお り,三隅 ら(1977)が言 うと ころのM行
動 とP行
動の二つの機能を重視する研究は多い。これに対 して,弓 削・松 田(2003)は,小学校中学年の学級 の一 日を観察・記録 し,従
来の研究では 取 り上げられなかつた指導行動 を見出 した。その一つが,大人に依存 させない ことで児童に自ら課題に向かわせ る働 きを持つ 「突き放す行動」 と言われるものである。さらに,弓削(2012)は,突き放す行動以外にも「追い込む」「任せる」 「待つ」といつた児童生徒に課題を突きつける指導行動を「突きつけ」と称 し, これ らは児童生徒の学力や社会性 を 「ひきあげる」機能
,す
なわち問題達成機 能であるP行
動 に含まれると述べている。しか し,それ らは単なるP行
動では な く,子どもの特性や能力 を見極めた上でお こなわれ るべきものであ り,さ ら に,指導者 に依存できないこのような状況が成員の課題意欲 と連帯性 をともに 高めることができることを示唆 している(弓削,2012)。 子 どもがクラスメー トと かかわ りなが ら主体的に動き,教
師 とともに学級 をよりよい集団へ とつ くり上 げようとする,す
なわち学級 をコミュニティ化す るためには,子
どもの資源や 要求を受容・理解 した上で 自ら課題に向かわせ る上記のような2つ
の指導行動 が,不可欠なのではないだろ うか。弓削・新井(2000でも,教
師は,こ の「ひき あげる」機能 と,児童生徒の要求や現状を尊重 して受容・理解す る「養 う」機能 の両方を果たす ことが必要であると示 されている。 以上,本研究は,「子 どもたちの社会性を育てる学級経営」とい う視点か ら学 級 をコミュニティ化す ることを提案す るために,学
級 コミュニティ感覚 と社会 性,および教師の指導行動 との関連について検討 しようとするものである。そ こで,ま ず,学
級 コミュニテ ィ感覚尺度 を作成 し,児童対象 に現在の学級をど の程度 コミュニティとして とらえているのかを調べ,あわせて,瀧
口・森 田・山 田(2010に よつて作成 された 「児童の社会性 自己評価シー ト」を用いて社会性 を調査 した。 さらに,学
級担任の指導行動が子 どもたちのコミュニティ感覚に 与える影響について検討す るため,弓削(2012)の教師の「指導行動尺度」を用い た質問紙調査を学級担任対象にお こなつた。なお,学
級の状態 と子 どもたちの 社会性,および教師の指導行動 との関連 を,学
級が集団 として成長 してい く過 程の中で明らかに したい と考え,調
査時期は 4月 か ら 10月 までの半年間 とし た。児童への調査は1学
期の初め(4月)01学
期の終わ り(7月)・2学
期の途 中 (10月)の3回
お こなった。教師の指導行動については,学
級開きの時期 と,子どもたち一人ひ とりの個性や資源 を把握 したあとでは
,変
化す る可能性が考え られ る。そこで,学
級担任への調査は,4月
の学級編成直後 と,そ
の年の学級 に対する指導行動が定着 していると考えられ る 10月,の 2回
実施することと した。 以上のことか ら,本
研究では以下の2つ
の仮説を検討する。 子 どもの学級 コミュニティ感覚は,個人の社会性 に対 して正の影響を与える (仮 説 1)。 教師の 「ひきあげる」機能 と「養 う」機能の2つ
の指導行動が,子
どもの学 級 コミュニティ感覚に対 して正の影響を与える (仮説2)。 コミュニティとなつた学級の子 どもたちは,自分たちのクラスを大切に思い, 維持発展 させてい こうとす る意欲をもち,主
体的に活動をおこな うであろ う。 さらには,多
様 な考え方 をもつた友だち とかかわる中で,お互いを認め,高め 合 うよ うになるのではないだろ う力、2つ
の仮説を検討す ることにより,子ど もたちが居心地よくつなが り合い,社
会性 を身につけてい くことができる学級 集団についての示唆を得 られると考える。第
2章
研究11.目 的
Cha宙
s,Lee&Acosta 0000に
よつて作成 された汎用性のあるSENSE OF
COMMUNITY INDEX
Ⅱ(SCI Ⅱ)を基に学級 コミュニティ感覚尺度 を作成 し,妥当性 と信頼性 を検討す る。
2.方
法(1)項
目の作成SCIⅡ (Cha宙s et al.,2000の 原語版 と植村 (201カによる 日本語版試案を参 考に
,学
級・ 学校の特徴 を取 り入れた表現を検討 して,学
級 コミュニティ感覚 に適切な項 目を作成 した。さらに,廣岡・元吉・小川・斎藤(2001)の ク リティカ ルシンキング志向性尺度の うち「人間多様性理解」に関する項 目を参考にして, 「多様性の受容」の項 目を作成 した。また,McMinan&cha宙
s(1980の
定義 には,コ ミュニティ感覚が個人の心理的変数であるのか,あるいは,コ ミュニ ティの状態 を記述す る変数であるのかが明示 されていない とい う批判があ り(Chipuer&Pret壌
1999,SCIⅡ にも両者 を測定する項 目が混在 していた。そ こで,学
級の状態を調査・ 検討す る本研究では,項
目のすべてを学級の状態に 対す る評価に統一 して作成するもの とした。 これ らの手続 きにより,「メンバーシップ」「影響力」「ニーズの強化」「情緒的 結合の共有」「多様性の受容Jの
5側
面に関 して各6項
目を作成 した。 さらに, 大学院で学校心理学を学ぶ現職教員 4名 と心理学を専門とする大学教員 1名 に よつて項 目の内容の妥当性 をチェックした うえで,30項
目か らなる尺度原案を 作成 した。 9("
調査協力者X市
内の公立A小
学校6年
生4学
級の児童 162名を対象に調査をおこなっ た。(D
調査内容 上記の手続きで作成 した30項
目に対 して「下のそれぞれの文章は,あなたが この クラスについて感 じていることを,どれ くらい うま く表 していますか ? あてはまる数字(3・ 201・0の
どれか一つ)に○をつけて ください。」とい う教示 のもと,「0。 まったくそ う思わない」から「3。 とてもそ う思 う」までの4件
法 で回答を求めた。 ④ 調 査 時期 1回 目を2015年
3月 9日∼13日 に実施 した。 さ らに,再
検 査 法 に よる信頼 性 を検討す るため,1学
級 のみ 1週間後 に2回
目を実施 した。(D
調査方法 調査は,各学級担任が授業時間を用いてそれぞれの教室で実施 した。紙面に は,こ のアンケー トは学校生活 をよ りよい ものにす るための資料 にす ること, 正解がある質問ではないこと,学
校の成績には全 く関係がないこと,内容 を友 だちや家族に知 らせるようなことは しないことなどを明記 した。また,回答後 の用紙は子 どもたち自身が個別に配 られた封筒 に入れ,封
をして提出す るよう に した。 これ らの調査の方法における注意事項は明文化 し,事
前に学級担任に 説明・ 依頼をおこなつた。調査は無記名でおこなつたが,再検査法による信頼 性 を検討す るため,1回
目の回答 と2回
目の回答 を照合できるよ うに,1学
級の み,出 席番号を記入するよう求めた。得 られた結果の統計処理には,SPSSを
使 用 した。(0
倫理的配慮 調査は学校長,職
員および保護者の許可を得てお こなった。保護者に対 して は,事
前に調査の目的・内容・方法を明記 した丈書を作成 し,児童を通 じて各家 庭に配布 した。また児童に対 しては,ア ンケー トの回答は強制ではないことを 伝えた。3.結
果 と考察 学級 コミュニティ感覚尺度30項目の平均値,標準偏差を算出 し,得
点分布を 確認 した。その結果,「13みんなは,こ のクラスの人たちが 自分のことをどう思 つているか気になる」「15み
んなは,こ のクラスの人がなぜそ うい う行動をと ったのかを考えることがある」「18こ
のクラスの人たちの意見や行動は,ク ラ ス全体に影響を与える」の3項
目で高得点側に分布が偏つていた。 しか し,こ れ らの項 目で得点が高いのは,調
査対象が卒業式を目前に控えた6年
生であっ たためではないか と考えられた。また,IT相
関を算出 した結果,す
べての項 目 において有意であつた。そこで,こ こではどの項 目も除外せず,30項
目すべて に対 して因子分析をおこなつた(主因子法,プ
ロマ ックス回斡 。この尺度は5側 面か ら構成 されていたことか ら,最
初 に 5因 子を指定 して回転を試みた ところ, 各因子の固有値は,第
1因
子以下 10.549,1.754,1,690,1.221,1.213,1.162, 1.0450¨ とい う値を示 し,1因 子性を うかがわせる結果 となった。このことか ら, この尺度は1因子構造であると判断 して主成分分析をおこなった結果,30項
目 の うち27項
目にお いて主成分負荷 量が 。40以
上で あるこ とが示 された CTablel)。 また,尺度の信頼性 を確認す るために算出 したクロンバ ックの信頼 性係数では30項目で α=。931,主
成分負荷量の低い 3項 目を除いてもα=。935 と大きな違いはなかった。また,1回目の調査 と2回
目の調査の30項
目による 相関は F。763と
十分に高かつた。 これ らの結果はおおむね許容できる範囲 と 判断 し,一定程度の信頼性および時間的安定性が確認 された。なお,本
来のSCI 11Ⅱには含まれていなかった 「多様性の受容」
6項
目が全体のまとま りの中に含 まれているとい うことか ら,こ の領域 もコミュニティ感覚のひ とつであると考 えてよい と判断 した。 さらに,大
学院で学校心理学を学ボ現職教員4名
と心理 学を専門 とする大学教員1名
によつて,表現の検討・修正を再度おこない,項 目内容の妥当性 をチェックした。その際,得
点分布の偏 りが見 られた り,主
成 分負荷量が十分でなかった項 目については削除す ることも検討 したが,最
終的 には,いずれの項 目もコミュニテ ィ感覚の測定には欠かせない と判断 し,慎
重 に妥当性 を確認 した上で,30項
目すべてによる尺度 を完成 させた。 以上の結果より,研
究1で
作成 された,「メンバーシップ」「影響力」「ニーズ の強化」「情緒的結合の共有」「多様性の受容」の 5カ テゴリーか ら構成 される 「学級 コミュニティ感覚尺度」(30項 目)を
研究2で
使 うこととした。Lblel学
級 コミュニテ ィ感覚尺度 の主成分分析結果 14みんなはずつとこのクラスの一員でいたいと思う 12みんなはおた力tもヽを、クラスの一員として認めている んなは このクラスの一員だと感 じている 9このクラスの人たちはみんなといつしょに過ごすこと楽 しい 10みんなはこのクラスの人たちと話をして、いろいろなこと知 りたいと思う このクラスの人たちはおたがいを気にかけている (無視 しない) これから先、このクラスはもつといいクラスになると思う i6みんなは、このクラスになつてよかつたと思っている 8このクラスは、ほかの学年やクラスのために役立つことができる このクラスの人たちは、同じような願いや大事にしていること、日標を持つている 2このクラスの人たちはおたがいを信頼することができる ラスで問題が起きた時、このクラスはそれ を解決することができる 5このクラスは、たくさんの人の意見を聞いてから大事なことを決める 1このクラスは、一人一人のしたいことができるクラスになつてきている んなはこのクラスの一員としてやるべきこと努力している 1こまつたことがあるとき、みんなはこのクラスの人にそれを話すことができる 19このクラスは、大切なイベン トや行事 をいつ しよににがんばってきている んなは、このクラスの中の、意見が合わない人の話も聞こうとする 1この クラスの人たちは、同 じ事が ら (ルールなど)を大切に している 17このクラスには、ほかのクラス とは違 うもの (クラスロ標や歌 や旗など)がある 6このクラスの一員だか ら、みんなはや りたいことができている 4このクラスの―員であることは、一人ひとりにとつて、とても大事なことである 7みんなは、このクラスのだれ とでも、気軽に話 をす ることができる 28このクラスには、みんなをうま く引つばつていって くれ る人がいる 3みんなで居心地 よ く過 ごしてい くことは、 このクラスの人たちみんなにとつて大事なことである 5みんなは、このクラスの人たちの、自分 とはちが う考えをおも しろいと思 う 20このクラスには、いろいろな考えを持 つている人たちがいる 15みんなは、このクラスの人がなぜそ ういう行動 をとつたのかを考 えることがある 18このクラスの人たちの意見や行動は、クラス全体に影響 を与える 13みんなは、このクラスの人たちが自分の ことをどう思 つているか気になる 成 分 739 682 .677 670 .668 .667 .666 .661 .348 .195 13第
3章
研究 21.目
的 研究1で
作成 した尺度 を用いて,学
級 コミュニティ感覚 と社会性 との関連, および学級担任の指導行動が子 どもたちの学級 コミュニティ感覚に与える影響 について検討する。2.方
法(D
調査協力者X市
内の公立A小
学校4年
生 3ク ラス 106名,5年
生 6ク ラス208名,6年
生 4ク ラスの 154名 の合計468名の児童 と各学級担任 13名 を対象に調査をお こなつた。 ② 調査内容 調査は,各学級担任が授業時間を用いてそれぞれの教室で実施 した。児童用・ 教師用 ともに無記名だが,児童に関 しては継時的な得点変化等を検討す るため, 学年・組 とあわせて出席番号の記入 も求めた。その他の手続きは予備調査 と同 様であ り,統計処理には,SPSSと Amosを
使用 した。 ① 学級 コミュニティ感覚尺度 (児童対象) 予備調査で作成 した 「学級 コミュニティ感覚尺度」の30項
目について,「下 のそれぞれの文章は,あなたが このクラスについて感 じていることを,どれ く らい うまく表 していますか?あてはまる数字(3020100の
どれか一つ)にOを
つけてください。」 とい う教示のもと,「0。 まつたくそ う思わない」か ら「3. とてもそ う思 う」までの4件
法で回答を求めた。 ② 社会性尺度 (児童対象) 瀧 口ら(201のの社会性 自己評価シー トVe■2を
参考に,学級 コミュニティ感覚 との関連 を調べるため,どの項 目にも学級内限定であることがわかる表現を 加え
,作
成 した。瀧 口ら(201のの尺度は,「機能面」 と「情緒面」の2下
位尺度 (各7項
目)で構成 されている。「下のそれぞれの文章は,ク ラスの人たちといつ しょにいる時・話 し合つている時・活動 している時の 自分の行動や気持 ちに,ど のくらいあてはま りますか?あてはまる数字(302・ 1・0の
どれか一つ)に○を つけて ください。」とい う教示のもと,「0。 まった くあてはま らない」か ら「3. よくあてはまる」までの4件
法で回答を求めた。 ③ 教師の指導行動尺度 (学級担任対象) 弓削(2012)の指導行動尺度を使用 した。 この尺度は,ひ
きあげる機能に対応 する指導行動である「注意指示」「突きつけ」と,養 う機能に対応す る指導行動 である 「受容」「理解」の4下
位尺度(全34項
目)で構成 されている。「先生が, 日頃クラスの中で,子どもたちにどのよ うな声かけや働 きかけをお こなつて学 級経営 されているかをお訊ね します。以下の項 目は,ご
自身の子 どもたちへの 声かけ 。指導の仕方に,どの程度あてはま りますか?あ
てはまる数字に,○ を つけて ください。」 とい う教示のもと,「1.全
くあてはま らない」か ら「5。 と てもあてはまる」までの5件
法で回答を求めた。(D
調査時期 児童への調査は2015年
4月 中旬,2015年
7月 中旬,2015年
10月 上旬の3 回にわたつて実施 し,教
師への調査は2015年
4月 中旬,10月
上旬の2回
実施 した。0
倫理的配慮 予備調査の実施時 とは年度および対象学年が異なるため,再
度学校長および 職員の許可を得て,保
護者 の理解 を得 るために,予
備調査 と同様,事
前 に調査 の 目的 0内 容・方法を明記 した文書を作成 し,当 該学年の各家庭に配布 した。また,調査の実施について,回答 は強制ではない とい うことを各担任か ら子 ど もたちへ伝えた。
3.結
果 と考察(1)各
尺度の分析結果 ① 学級 コミュニテ ィ感覚え度の因子分析 学級 コミュニティ感覚尺度30項
目について,4月 07月 010月データをまと めて因子分析 をおこなつた (主因子法,プ
ロマ ックス回転)。 この尺度は5側
面 か ら構成 されていたことか ら,最
初に5因
子を指定 して回転を試みたが,想
定 通 りの因子構造 とはならなかつた。そこで,因子数を2,3,4と
指定 し,それぞ れ因子分析をおこなった (主因子法,プ
ロマ ックス回転)。 その結果,3因
子の 場合でコミュニテ ィ感覚の特徴に対応 した因子が認 め られたため,こ れを採用 す ることとした。ただ し,負 荷量が .40以 下の項 目と2つ
の因子に高い負荷量 を示す項 目があつたため,それ らを除外 したのち,再
度,因子分析 をおこなつ た。回転後の各項 目の負荷量及び平均値 と標準偏差を Table2に 示す。 第1因子は,“みんなはずっとこのクラスの一員でいたい と思 う"“「このクラ スになつてよかつた」 と私 もみんなも思っている",な
ど5項
目の負荷量が高 く,学級に対す る愛着や所属感 を表 していると考えられたので,「所属感」の因 子 と命名 した。 この因子には,コ ミュニティ感覚の5側
面の うち 「情緒的結合 の共有」「メンバーシップ」「ニーズの強化」が含まれた。第2因
子は,“このク ラスは,たくさんの人の意見を聞いてか ら大事なことを決 める"“みんなは,こ のクラスの中の,意見が合わない人の話 も聞こうとする"な
どの4項
目の負荷 量が高 く,友
だちと主体的にかかわ りなが らお互いに理解 し合お うとする行動 を表 していると考えられたので,「相互理解」の因子 と命名 した。この因子には, コミュニティ感覚の5側
面の うち「多様性の受容」「影響力」が含まれた。第3 因子は,“このクラスの人たちは同 じ事が ら (ルールなど)を
大切に している"“この クラスの人 た ちはお互 い を信 頼す るこ とがで きる
"な
ど3項
目の負荷 量 が高 く,お互 い の考 えや行 動 を大事 に しなが ら歩調 を合 わせ てい こ うとす る行 動 を表 してい る と考 え られ たので,「協調」の因子 と命名 した。この因子 には,コ ミュニテ ィ感覚 の5側
面 の うち 「ニー ズの強化 」「メ ンバー シ ップ」「影 響 力」 が含 まれ た。 そ の後,各月 (4月 07月 010月)ご
とに12項
目,3因
子 で確認 的 因 子 分 析 を お こ な つ た と こ ろ,4月
デ ー タ が GFI=.959,CFI=.962,RMSEAF.049,7月
デー タが GH=。949,CFI=。970,RMSEAF.060,10月
デー タ がGH=.937,CFI=.958,RMSL卜
.072と,お
お むね満 足 で きる適合度 が得 ら れ た。そ こで,今回 は,この結果 を も とに,各因子 に負 荷 量 の高い項 目を一つ に ま とめて下位 尺度 とす る こ とと した。 下位 尺度 ご との信 頼性係 数 は,「所 属感 」 が α=.864,「相 互理解 」が α=.765,「協調 」が α=.728と な り,内的整 合性 も確 認 され た。 Table2学級コミュニティ感覚の因子分析結果及び平均値 と標準偏差 (主因子法・プロマックス回転) 項 目 I I I 共通性 平均 SD i所 属感(α=.864) Dみんなはずつとこのクラスの―員でいたいと思う 0「このクラスになつてよかつたJと私もみんなも思つている Dこ れから先、このクラスはもっといいクラスになると思う Dこのクラスの人たちは、いつしょに楽しく過ごしている Aみんなは、このクラスの一員だと感じている I相互 理 解 (α=.765) Eこの "スは、たくさんの人の意見欄 して か駄 事なこと薇 “ Eみんなは、この "スの中の、意見が合わない人の話も聞こうとする Bこの "スでは、一人ひとりの意見や行動が大事にされる Eこのクラスのみんなは、人によつて考え方がちがうとしうこ壁 、わかつている I協日 (α=.728) Cこのクラスの人たちは同じ事がら(ルールなど)を大切にしている Aこのクラスの人たちはおたがいを信頼することができる .856 .014 -.083 .656 2.16 .870 .331 ‐.017 -.023 .645 2.22 .853 .614 .212 -.020 .584 2.50 .760 .540 -.143 .369 .538 2.50 .755 .469 .228 .075 .504 2.45 .750 .051 .651 -.006 .467 2.37 .771 .045 .648 .009 .472 2.18 .855 .133 .540 .074 .502 2.24 .797 -.043 .523 .151 .380 2.35 .752 -.078 .114 .632 .443 1.08 .701 .220 -.019 .562 .516 2.15 .771 Bみんなは "スの中で、おたがいのことを考えて行動している―.058 .303 .511 .517 2.03 .829 因子間相関
I I
Ⅲ I 一 .708 .698 Ⅱ ― .738 注1)項目の前のアルフアベッ トは.SCI Iのカテゴ リーを表す。 Aは “メンパーシップ".Bは “影響力",0は “ニーズの強化",Dは"情緒的結合の共有",こは “多様性の受害"である。 17② 社会性尺度の因子分析 社会性尺度
14項
目についても学級 コミュニティ感覚尺度 と同様に,4月
07 月・ 10月 データをまとめて因子分析をお こなった (主因子法,プ
ロマ ックス回 転)。 その結果,先行研究 とほぼ同 じ因子構造の2因
子が抽出された。ただ し, 負荷量が .40以下を示す項 目があつたため,それ らを除外 したのち,再
度,因 子分析をおこなった。回転後の各項 目の負荷量及び平均値 と標準偏差を Table3 に示す。第 1因子には,“クラスの中で困つている人がいると,助けるようにし ている"“クラスの中で手伝いが必要な時には進んでや る"な ど9項
目の負荷量 が高 く,学級内での役割を果たす 「機能面」の因子 と考えられた。第2因子は, “このクラスになれてよかつた",“自分のクラスは仲が良い と思 う"な
ど3項
目の負荷量が高 く,お互いの気持ちが通 じる「情緒面」の因子 と考えられた。 その後,各月 (4月・7月 ・ 10月)ご
とに12項
目,2因
子で確認的因子分析を おこなったところ,4月 データがGH=.943,CΠ
=.927,RMSI弘こ063,7月 デー タが GFI=.921,CH=。914,RMS聖
卜.082,10月 データが GFI=。924,CFI=.927,RMSL卜
.081と,おおむね満足できる適合度が得 られた。そこで,今回は,こ の結果をもとに,各因子に負荷量の高い項 目を一つにま とめて下位尺度 とする こととした。下位尺度 ごとの信頼性係数は,「機能面」が α=.845,「情緒面」がTable3社会性 の因子分析結果及 び平均値 と標 準偏差 (主因子法・ プロマックス回転) 項 目 I 共通性 平均 1機能面(α=.345) Aクラスの中で困つている人がいると.助 けるようにしている Aクラスの中で手伝いが必要な時には進んでやる Aクラスの中で、人がいやがることれ ている人には注意をする Aクラスの中でひとりばつちで活動している子に声をかけて仲間に入れようとする Aクラスの仕事接 後までやり通す Aクラスで何かを決める時、自分とちがう考え方も大切にする Bクラスで作業や活動をするときには、たくさんの人たちと声をかけ合う Bクラスのだれとでもいつしょに作業や活動することができる Aクラスで決めた日欄勧 ざして努力している I情精面(α=.769) Bこのクラスになれてよかつた B自分のクラスは仲が良いと思う Bクラスの人たちといっしょ:こ作業や活動することが楽しい _703 -.043 .691 -.047 .679 -.124 .654 -.077 .600 .079 .582 .031 .574 .102 .504 .216 .426 .108 -.137 .867 -.027 .731 .288 .527 .460 2.29 _698 .441 2.18 .733 .376 2.09 786 .374 2.16 810 .423 2.48 667 .361 2.42 ,702 .410 2.17 .305 .430 2.20 .301 .248 2.32 .804 .629 2.35 885 .512 2.27 .815 .542 2.45 778 因子 間相 関 I I 一 Π ・ 5 注1)すべての項 目の文頭に、「わたしは」の言葉がつく。 注2)項目の前のアルフアベッ トは,瀧口ら(2010の 社会性 自己評価 シー トVer.2のカテゴリーを表す。 Aは “機能面",Bは “情緒面"である。 ③ 教師の指導行動尺度の信頼性 教師の指導行動尺度については,回答者の人数が少ないため因子分析を実施 せず
,先
行研究で示 された下位尺度(「ひきあげる」機能 と「養 う」機能)を構成 す る項 目によるα係数を算出した。その結果,4月 「ひきあげる」機能 α=。778, 「養 う」機能 α=.745,10月 「ひきあげる」機能 α=。823,「 養 う」機能 α=.877 と,いずれにおいても信頼性が確認 された。そこで,両
機能それぞれに含まれ る項 目の合計得点を「ひきあげる機能得点」「養 う機能得′点」として分析に使用 す ることとした。("
学級 コミュニティ感覚 と社会性および教師の指導行動の関連 コミュニティとしての側面を持つ学級集団が個人の社会性に及ぼす影響,さ らに,教
師の指導行動が子 どもの学級 コミュニティ感覚に及ぼす影響について 検討す るため,仮
説 に基づいてモデル を作成 し(Fむ町el),共
分散構造分析 に より検証をお こなつた。なお,こ の分析には,3回 分すべてのデータが揃ってお り,な おかつすべての変数に欠損が見 られなかつた394名(4年 生 84名,5年生 19178名
,6年
生 132名)のデータを用いた。 分析に際 しては,以下のよ うにモデルを構成 した。まず,学
級 コミュニティ 感覚については,各
月 ごとに「所属感」「相互理解」「協調」を観測変数 とし,「学 級 コミュニティ感覚」をそれ らの潜在変数 とした。社会性 についても,各月 ご とに 「機能面」「情緒面」を観測変数 とし,「社会性」をそれ らの潜在変数 とし た。各観測変数に関 しては,それぞれの項 目合計点を用いた。 さらに,「教師の 指導行動」の「ひきあげる」機能 と「養 う」機能に関 しては,それぞれの下位尺 度得点を観測変数 としてモデルに収めた。次に,1回目の調査データは学級編成 後の間もない時期のものであるため,4月 の「学級 コミュニティ感覚」と4月 の 「社会性」は同一水準にあると考え,2つ
の潜在変数間には共分散を想定 した。 また,
ひきあげる機能は単独でお こなわれ るものではな く,養 う機能 とともに お こなわれ るため両者 には相関関係があると考え,2つ
の変数間にも共分散を 想定 した。そ して,ま ず,「教師の指導行動」→「学級 コミュニティ感覚」→「社 会性」,4月→7月 →10月 とい う影響過程を想定 した。また,コ ミュニティ化 さ れた学級によつて育まれた社会性は,次第に学級全体のコミュニティ感覚を高 めてい くのではないか と考え,7月 の 「社会性」か ら 10月 の 「学級 コミュニテ ィ感覚」への正のパスも想定 した。さらに,4月 の学級の雰囲気はその後の学級 にも影響を与えると考え,4月 の「学級 コミュニティ感覚」か ら7月 だけでなく, 10月 の 「学級 コミュニティ感覚」への正のパスも想定 した。なお,4月
におこ なつた児童への1回
目の調査は,現
担任教師の影響をほとん ど受けていない集 団全体 と個人の状態を把握す ることを目的 としていた。そのため,4月 の指導行 動の影響は,4月 の学級の状態ではなく,指
導が子 どもたちにある程度浸透 した 7月 のコミュニティ感覚に現れているのではないか と考えた。一方,10月
の調 査データは,す
でに子 ども一人ひ とりの様子を把握 し,その年の学級 に対す る 対応が定着 している時期の ものであると考えて収集 したので,
同時期の学級 コミュニティ感覚に対 して十分影響を与えていると判断 した。そこで,4月 の指導行動か らは 7月 の「学級 コミュニティ感覚」に,10月 の指導行動か らは10月 の「学級 コミュニティ感覚」にそれぞれ正のパスを想定 し
,分
析をおこなった。 モデルの検討段階では,ま ず,想
定通 りにパスを導入 して分析 をお こなった が,不適解を引き起 こすパス,有
意水準5%で
有意でないパスが示 されたため, それ らを順次削除 した。また,4月 の「社会性」か ら7月 の「社会性」に対 して は,5%水
準で有意なパスが見 られたが,パス係数が。10以
下であつたため,削 除 した。 さらに,4月
の教師行動 「ひきあげる」機能 「養 う」機能については, どちらか らも有意なパスが得 られなかったため,観
測変数 を含めて削除 した。 次に,各誤差間に想定 した共分散の うち,5%水
準で有意なもののみ導入 し,適 合度指標に従つて修正 した。最後に,モデルの解釈可能性が保たれているか ど うかを検討 した。 Fi劉囀2に
最終モデル のパス と標準化係数 を示す。本モデルの適合度は,GFI=.952,CH=.983,RMS助
■.050とな り,おおむね収集データに適合 したモ デル と判断できる。 21Fivel
G日=.952 0日=。983
RMS酔
.050Fipe2学
級 コミュニテ ィ感覚 と社会性お よび教師の指導行動 の関連 の最終モデル ① 同時期の学級 コミュニティ感覚 と社会性の関連 4月 の「学級 コミュニティ感覚」と「社会性」との相関係数は .92と な り,高 い正の相関関係がみ られた。学年が一つ上がったことや新 しい教室,新
しい友 だちなどといつた環境の変化が,集
団内に新学級への期待感や活発な交流を生 み出 し,同時に個々の子 どもたちの社会性の表出を うなが したのではないか と 考えられ る。また,7月 と 10月 の,「学級 コミュニティ感覚」か らそれぞれの月 の 「社会性」へのパス係数はどちらも 。97と 非常に高い正の値が示 された。こ れ らのことか ら,子どもたちの社会性は,その時々の学級 コミュニテ ィ感覚か ら非常に強い影響を受けることが示 され,仮
説1は
支持 されたと考える。学級 に対す るコミュニテ ィ感覚が高い子 どもほど,主体的に友だちとかかわ り,活
動 を楽 しんでいるといえるだろ う。個人 と集団 との関係 について,酒井(2012) は
,他
者や集団に対す る援助行動は,周囲の大人や仲間 との共感的な人間関係 の中でこそ育まれていくのではないか と述べている。本研究の結果か らも,一 人ひ とりの居場所があ り,お互いを理解 し合いなが らともに学級 をつ くつてい こうとする集団の雰囲気が,子 どもたちの役割意識や情緒的な結びつきを強め, 相互援助を含めた積極的なかかわ りを うなが してい くと推測 される。小学校の 中学年か ら高学年にかけては友だち との心理的な結びつきが強 くなる時期であ り,子
どもたちの考え方や行動は,所
属す る学級のもつ雰囲気か ら,それ まで 以上に強い影響 を受けるだろ う。学級や仲間を大切に思い,自 治的な集団に発 展 させてい こうとす るコミュニテ ィ感覚 を持てるクラス,す
なわち,学
級がコ ミュニテ ィ化 された集団 となることが,よ りよい人間関係 を築 こ うとする子 ど もたちの意欲を高め,社
会性の育成を うながす可能性が示唆 されたと考える。 ②4月
から 10月 における学級 コミュニティ感覚 と社会性の関連 まず,4月・7月・ 10月 ともに,潜
在変数 「学級 コミュニティ感覚」に対 して, 観測変数「所属感」「相互理解」「協調」のいずれのパス係数 も高い値を示 した。 中でも「所属感」は 4月 。95,7月 。94,10月
。89と 非常に高い値を示 し,こ の変 数が 「学級 コミュニティ感覚」に対 して最 も大きな影響 を及ぼ していることが 明 らか となった。しか し,4月 から7月 ,さ らに 10月 へ と時期を追 うごとに「相 互理解」「協調」のパス係数 も大きくな り(「相互理解」4月 =.63,7月 =。73,10 月=.79,「協調J4月
=。60,7月 =.70,10月=.79,次
第に 「学級 コミュニティ感 覚」への影響が強まってい くことが示 された。学級編成後まもない 4月,学
級 の中に自分の居場所があるとい う安心感や,こ のクラスになれてよかつたとい う満足感を得 ることは子 どもたちにとつて非常に大切なことであろ う。「所属 感」が示すパス係数の高 さか ら,子
どもたちが,友
だちとかかわ り合いなが ら ともにクラスをつ くつていこうとする意欲であるコミュニティ感覚をもつためには
,新
しい集団に対す る所属感 を得ることが重要であると考えられる。 また,3変数の中では「所属感」に比べると値の小 さかつた「相互理解」や「協 調」も,時
間の経過 とともに,次
第に「学級 コミュニティ感覚」にとって大事な 要素 となつていくことが示 された。学級 コミュニティの維持・発展のためには, 「このクラスの一員である」 とい う所属感 とともに,「お互いのことがわか り 合える」 とい う相互理解や,「お互いのことを考えて行動 している」 とい う協 調が,よ リー層必要になって くると考えられる。 次に,潜
在変数「学級 コミュニティ感覚」同士のつなが りを,時
期を追って見 てみると,4月
の 「学級 コミュニティ感覚」か ら7月 の 「学級 コミュニティ感 覚」へは .63,10月 の 「学級 コミュニティ感覚」へはわずかではあるが 。24と い う正のパスが示 された。これ らのことか ら,4月 の学級の状態は,そ の後の学 級集団にも影響を及ぼす ことが示唆 された。4月
の 「学級 コミュニティ感覚」 は特に「所属感」の影響を強 く受けているとい う結果 とあわせて考えると,4月 の学級への所属感 と,そ の後の学級 コミュニティ感覚 との因果関係が説明でき るのではないだろうか。すなわち,学
級がコミュニティ化 されてい くためには, まず,4月 の学級開きの時期に,「このクラスになれてよかつた」「ずっとこのク ラスの一員でいたい」 と子 どもたちが思える雰囲気が,学
級内に醸成 されてい ることが大切であるといえるであろ う。そのよ うな安心感 を得 ることで,子 ど もたちは主体的に動 くことができるよ うにな り,相互交流が活発になつてい く と推測 される。 なお,10月 の 「学級 コミュニティ感覚」に対 しては,7月 の 「学級 コミュニテ ィ感覚」か らのパスは有意ではなく,7月の 「社会性」か ら有意な正のパスが示 された(.5a pく.Ool)。 宮下0019は
,自 分の良 さに気づいた子 どもが′い理的な 強 さとゆ とりを持ち,ま わ りに対 して配慮できるようになることは,学
級全体 の成長にもつながる,と 述べている。本研究における 7月 「学級 コミュニティ 感覚」→7月 「社会性」→10月 「学級 コミュニティ感覚」 とい う影響過程か らも,同 様のことが推測 される。すなわち,ま ず
,所
属感 。相互理解・協調 とい う 要素をもつた学級の雰囲気 (7月 「学級コミュニティ感覚」)が
,仲間への愛着 とかかわ りに対する意欲 を一人ひ とりに育む (7月 「社会性」)。 意欲はやがて 実際の行動を生み出 し,身
近な友だちとのや り取 りの中で,子 どもたちは人 と のかかわ り方を学び,自 信 を強め,主
体的な動 きをさらに活発化 させてい く (7 月 「社会性」の高ま り)。 やがて,個人の肯定的な態度は,集団全体の自治的な 雰囲気 (10月 「学級 コミュニティ感覚」)を高め,学
級のコミュニティ化 を促進 させ る。 このような推測を基に 4月 から 10月 における学級 コミュニティ感覚 と社会性の関連を考えるな らば,コ
ミュニティ感覚を継続 して育んでい くため には,4月
の時点で子 どもたちが所属感 をもてることと同時に,一人ひ とりの 社会性が高ま り,行
動 となつて表出され ることが重要であるといえるのではな いだろ うか。 一方,潜
在変数 「社会性」 については,4月 か ら7月 に対 しても,7月 か ら10 月に対 しても有意なパスが示 されず,関連が認 め られなかった。また,7月 010 月 ともに「社会性」の重相関係数の平方は ,94と い う高い値が示 された。お互 いに助 け合い,自 ら行動す ることを良 しとす る集団の中で,仲間を排除す る, あるいは攻撃するといつたような学級の雰囲気 とは相反するような行動をとる ことは,友
人関係を悪化 させ る原因 となることが考えられ る。小学生にとって, 学級内での人間関係 は,充
実 した学校生活 を送 るための重要な要因である(古 市,1997)。 自分の学級 を,「一人ひ とりの考えや行動が大事にされ,ク ラスの一 員 としてみんなが楽 しく活動 しているクラス」 ととらえる子 どもは,自 分 も同 じように人 とかかわつて楽 しく生活 したい と考え,雰
囲気に合つた行動をお こ な うのではないか と推測 され る。学級集団 と子 どもたちの成長 との関連につい ては,こ
れまでに多 くの先行研究によつて明らかにされてきたが(例えば是常・ 秋光,2014;三
島 0伊藤,2000,本
研究の結果か らも,子
どもたちの社会的な 行動や感情は,そ の時々の学級がもつ雰囲気に大きく左右 され ることが示唆 された。 ③ 教師の指導行動か ら学級 コミュニティ感覚への影響 指導行動に関す る
4つ
の変数の うち,10月
の 「ひきあげる」機能か ら 10月 の「学級 コミュニティ感覚」へのみ 。12と 小 さな値ではあるが有意な正のパス が示 された。さらに,10月 の「ひきあげる」機能 と「養 う」機能の相関係数は 。77 と高 く,二つの指導行動には強い相関関係 があることが示 された。 これは,両 機能それぞれに対応す る指導行動が相互に関連付 けてお こなわれる時,児童の 規律遵守意欲や学級連帯性が高まるとした弓削0012Dの
見解 を支持す るもの であるといえるだろ う。これ らのことか ら,「養 う」機能 と高い関連性をもつた 「ひきあげる」機能を含む指導行動は,学
級 コミュニティ感覚に対 して正の影 響を与えることが示 され,仮説2は
一部支持 された と考える。 しか し,4月
の指導行動に関 しては両機能 とも有意なパスが示 されず,10月
の「養 う機能」か らも十分な適合度が得 られ るパスは示 されなかった。4月,教
室 とい う生活環境 を共有するだけの 「地理的コミュニティ」である学級 を,共 通の規範や価値,日 標,信頼の感情 を共有す る「関係的機 能的)コ ミュニティ」 へ と変えていくためには,学級担任の指導が欠かせないであろ う。同様のこと について,蘭 (2010は,教
育活動 とは,子
ども同士が出会 う場 を教師が仕組む ことで,子
ども自身が人 とのかかわ りを通 して自分を見直 してい くプロセスで あると述べてい る。 これ らのことか ら,学
級のコミュニティ化 には,や
は り教 師の明確な指導が必要であると考 え,本
研究で有意なパスが示 されなかつた理 由を以下のように推測する。 まず,学
級担任に対する4月
調査の時期が,新
学級スター ト直後であつたと い うことが原因の一つ となつた可能性が考えられ る。すなわち,調
査時期が早 かったため,新
学級ではなく,直
前の3月
まで担当していた学年やクラスに対 する指導行動を想起 して質問紙の回答がお こなわれ,その後実際にお こなわれ ていた指導行動 と調査内容に,ず
れが生 じていたのではないだろ うか。西谷・秋光(2000は ,同僚か らの助言によつて教師行動が変化 し,その結果
,学
級全 体の状態の向上が可能 となることを示 した。 このように,教
師が 日の前の子 ど もたちの実態を把握 した上でよ り良い指導行動を模索 してい くことは,日 常的 にお こなわれていることであろ う。本研究においても,実
際に,4月
調査 と 10 月調査では「ひきあげる機能得点」「養 う機能得点」が ともに変化 している担任 教師が複数名いた。以上のことか ら,4月 の教師指導行動 と7月 の「学級 コミュ ニティ感覚」の各変数には関連が見 られなかったのではないかと考えられる。2つ
目は,教
師の指導行動について,児童 と教師の間に認知のずれが生 じてお り,そ のことが原因 となつた可能性である。倉嶋(1996)は,指
導行動に対す る児 童 と教師の認知には差があ り,そ の差が児童の学級適応感に影響 を及ぼす こと を明 らかに した。また,藤
原・大木(2000は,教
師の 自己評価 と児童の教師評価 には,教
師の指導類型によつては大きなずれが認め られることを明 らかに した。 これ らのことか らも,指
導行動の調査対象 を学級担任本人 とした場合 と,児童 とした場合 とでは,分
析結果に差が生 じる可能性が考えられ る。すなわち,こ のような認知のずれが,本
研究において 「学級 コミュニティ感覚」に対す る教 師の指導行動の影響が十分には見 られない原因 となつたのではないだろうか。第
4章
総合考察本研究は,コ ミュニティとしての側面を持つ学級集団が個人の社会性に及ぼ す影響,さ らに
,教
師の指導行動が子 どもの学級 コミュニティ感覚に及 ぼす影 響について検討す ることが 目的であった。まず研究1では,Cha宙
s,Lee&Acosta(2000に
よつて作成 されたSENSE
OF COMMuⅥ
貿 恥DEXⅡ
(SCIⅡ)を基に学級 コミュニティ感覚尺度を作成し
,質
問紙調査 をお こなったのち,信
頼性 と妥当性 を確認・検討 した。因子分析 の結果,コ ミュニティ感覚の本来の4側
面 「メンバーシップ」「影響力」「ニー ズの強化」「情緒的結合の共有」だけでなく,新
たに加 えた「多様性の受容」に 関す る項 目も全体のま とま りの中に含 まれ ることが示 された。石 田(2010は, 集団が一つの考えに固執することな く発展 してい くためには,多数派には異質 な成員を受け入れ る寛容 さが必要であ り,少数派には自分たちの考えに自信 を もち,積極的に表明す ることが必要だ と述べている。本研究における因子分析 の結果か らも,学
級が社会性を持つた集団 として成長 してい くためには,その 一つの要因 として,多
様性 を受け入れる態度が必要であることが示 された とい えるのではないだろ うか。 研究2で
は,研
究1で
得 られた学級 コミュニティ感覚尺度,児童の社会性尺 度,教
師の指導行動尺度を使用 して半年間に児童対象に3回
,教
師対象に2回
の質問紙調査 をお こなつた。因子分析の結果,学
級 コミュニティ感覚は 「所属 感」「相互理解」「協調」の3因子構造であることが示 された。また,社
会性は, 「機能面」「情緒面」の2因
子が抽出され,こ れは瀧 口ら(201のと一致する結果 であった。教師の指導行動尺度は「ひきあげる」機能0「養 う」機能 ともに信頼 性が確認 された。 続いて,コ ミュニティとしての側面を持つ学級集団が個人の社会性に影響を 及ぼ し,そ のような学級集団に対 しては2つ
の機能を含む教師の指導行動が影響す ると想定 したモデル を検証す るために