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歯科材料の高温物性に関する研究

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Academic year: 2021

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(1)

〔原著〕松本歯学12:25∼33,1986

       key wor《is :高温物性一貴金属合金一Ni・・Cr合金一埋没材

歯科材料の高温物性に関する研究

永沢栄

松本歯科大学 歯科理工学教室(主任 高橋重雄教授)

Physical Properties of Dental Alloys and

Investments at High Temperature

SAKAE NAGASAWA

1)ePartmen彦q/Denlal Technology,物飢〃toto Dental college        {℃万4:PrOf&Tahahashi)

Summary

  The physicai properties(the coefficient of elasticity, the yield point and the compres・ sion strength)of dental alloys(20K gold alloy, Ag−Au−Pd alloy, Ag・ln alloy, Ni・Cr alloys) and dental investments(phosphate・bonded investments and gypsum bonded investments) were measured by the compression・test at high temperature. The result of the measure・ ments were as follows.   1.As shown in Table 1, the physical properties of alioys(the coefficient of elasticity and the yield point)dropped severely at high temperature.   2.As shown in Table 2, properties of investments did not drop at high temperature.   3.The elastic coefficient of comprisied investments rose several times more than did that of noncomprisied investments at high temperature. This rise of the elastic coefficient is due to the sintering of investments. 緒 言  鋳造体の適合精度,寸法変化,あるいは,メタ ルボンドポーセレンの強度,変形等は,歯科にとっ て重要な問題である.従って,これ等の問題に関 する研究は,すでに精力的に行われており1∼η,あ る程度完成されているとの感が強い.しかしなが ら,歯科製作物は,多種多様に渡っており,研究 室において得られた方法ないしは,条件が必ずし (1986年3月5日受理) も,個々の製作物に対して最適であるとする根拠 はない.またこれらの方法においても,条件と結 果が示されているのみであり,その理由が必ずし も解明されていないものや8・9),条件の適用範囲が 明確に示されていないもの1°}が見うけられる.ま た今までの研究,ならびに実験方法では,新たな 材料に対しては,再び実験を繰り返さざるを得ず, 事前に,最適な材料を予測したり,改善の方向を 示すことは,困難である.従って最終的には,製 作者の経験と工夫にゆだねざるを得ず,これらの 研究結果は,製作者に或程度の指針を示すに留

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26      永沢: まっている.ところで他分野においては,材料の 改善,方法の改善等において,電子計算機による 数値解析が精力的に行われており,大きな成果を 上げている11∼1ρ.著者は,明確にされていない諸 問題を明確にし,改善の方向を示す為には,歯科 においてもこの様な方法を積極的に取り入れる必 要が有ると考える.以上の様な観点に立ち,鋳造 体の適合精度15・16),メタルボンドポーセレンの強 度1η等を論じようとした場合,各々の製作過程が 高温から室温まで,金属ないしはセラミックスの 物性値が大きく変化する温度範囲内で行われてい る為,各材料の高温物性値は必要不可欠なもので ある.しかし,歯科材料におけるこの方面の研究 は,熱膨張に関する報告18∼21)以外,極めて少なく, ヤング率,ポァッソン比,耐力,クリープ等につ いては明確にされていない.この点を補うべく, 鋳造用合金,ポーセレン焼き付け用合金,埋没材 について,ヤング率,耐力等を測定したので報告 する. 材 料 歯科材料の高温物性に関する研究  実験に使用した材料は,現在使われている物の 中から以下の様に選択した.  1.鋳造用合金.20K金合金(Au 83.5%, Ag 6. 0%,Cu 9%),金銀パラジウム合金(キンパラS20 −Au 20.0%, Pd 20、0%, Ag 40%, Cu 17.0%),銀 インジウム合金(ディスクアロイーAg 71.0%, Pd O.7%,In 22.0%, Zn 5.0%), Ni−Cr合金(タイク ラウン.ウルトラソフトーNi82%, Crl3%)の四 種を選択した.  2.ポーセレン焼き付け用合金.Ni−Cr系合金 より,Crの含有量を考慮し,ニクロムボンド(Ni 59%,Cr>20%, Mo 15%),ユニメタル(Ni 77. 0%,Cr14.9%),バイオボンド(Ni 77%, Cr 12%, Mo 4%)の三種を選択した.尚各金属の組成値は メーカー表示値である.  3.埋没材、低融点合金用として,石こう系, GC石英埋没材, GCクリストバライト埋没材と, 高融点合金用として,りん酸塩系,セラベスト埋 没材,セラミゴールド埋没材の四種を選択した. 方 法 1.高温圧縮試験 高温物性の測定には種々な方法があるが,ヤン グ率と耐力を同時に求めることができ,かつ小さ な試験片で行える圧縮試験を採用した.なお室温 におけるデータの一部は,引張試験より求めた. 図1は,実験に使用した,ナートグラフDCS−5000 (東京歯科大学所属)の炉芯部を示したものであ る.圧板間には,差動トランスが取り着けられて おり,試料の歪みを正確に測定できるようになっ ている.測定条件は,荷重速度を毎分ユmmとし, 金属材料の昇温は,オートグラフの電気炉で行い, 埋没材の昇温は,急加熱をさける為に,長時間か けて,別の電気炉内で行い,その後オートグラフ の電気炉に移して行った.また埋没材の高温物性 については,高温においてクリープ変形を受た後 の測定も行った(ただし,クリープ変形の加えか たは,前例が無い為,荷重ならびに変形量を,適 当な値に固定している.従って,クリープ変形に 要する時間は,各温度,各材料によってまちまち である). 2.試験片の作成  金属試験片の作成は,プラスチックの丸棒(貴 図1:オートグラフCDS−5000の試料加熱用炉   心部

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松本歯学 12(1)1986 金属用,直径6㎜,Ni−Cr用,直径5mm)を一 定の長さ(貴金属用,長さ12 mm,18 mm, Ni℃r 用,長さ10mm,15㎜)に切断後,石英埋没材 (貴金属合金),セラベスト埋没材(Ni−Cr合金) にて埋没,鋳型温度650℃(貴金属合金,銀合金の み室温),800℃(Ni−Cr合金)にて,遠心鋳造機 を使用し,鋳造して行った.

埋没材の試験賭,内径20mm,高さ30㎜の

ステンレス製割型に,各埋没材泥を流し込むこと によって作成した. 3.ヤング率の算出方法  圧縮試験によるヤング率の測定は,現在では, ほとんど行われていない.その原因は,試料VC−一一 様に応力がかからない為,得られたデータより直 接値を算出しても精度の良い値が得られない為で ある.精度の高い値を得る為には,JIS K7208 −1975に示されている様に,同一の材料につい て,長さの異なる試験片を用いて試験を行い,(1) 式によって試験機の歪み,試験端面より生ずる誤 差を補正しなけれぽならない.

  Ee=EaA*EaB*(hB−hA)/(EaA*

hB−EaB*hA)………(1)  なお,EaA, EaBは,長さhA, hBの試験片よ り個々に求めた見かけのヤング率であり,Eeは, 材料の真のヤング率である.  本来は,各々の試料間で(1)式を適用すべきであ るが,誤差の拡大が生じる為,今回は各長さにっ き3個の試料の平均をとり,その平均値間におい て(1)式を適用した.ただし埋没材にっいては,(1) 式を使わず,直接ヤング率を算出し,各温度につ き6個の平均をとった.これは,試験機の最大試 料長が約35mmと短かった為と,埋没材のヤング 率が小さい事から,試料端面による誤差が少ない と判断した為である(勿論この場合も,試験機の 歪みは,補正してある). 4.耐力の測定方法  耐力の測定は,ヤング率の測定によって得られ た記録紙より,永久歪みが0.2%になる点を求める ことによって行った. 結 果 1.非貴金属系合金について  図2は,Ni℃r合金のヤング率を示したもので ある.ユニメタル,ニクロムボンド,バイオボン 27 ドは,ポーセレン焼き付け用合金,タイクラウン・ ウルトラソフトは,鋳造用合金である.室温にお いては,10000から40000kg/mm2程度と高いヤ ング率を示すが,600℃から700℃付近において急 激に低下し,900℃以上では,4000から数百kg/ mm2になっている.  図3は,Ni−Cr合金の耐力を示したものであ る.  耐力も図2と同様な傾向にあり,室温において は,ユニメタル,72.1,ニクロボンド,47.6,パ イオボソド,34.8,タイクラウン・ウルトラソフ ト,16.5(単位は,何れもkg/mm2)と高い値を 示しているが,ヤング率よりほぼ100℃程度高い温 度から低下し,900℃では,ポーセレン焼き付け用 合金では25kg/Mm2程度,タイクラウン・ウルト ラソフトでは,5kg/mm2となり,1100℃におい ては,6−3kg/㎜2と,室温の約1/10tこ低下す る. 2.貴金属系合金について  図4は,貴金属合金のヤング率を示したもので 50000 ヤ400DO ン グ30川 率  20Doo  lOOOO (Kg/mmり   100    90    80  耐 70    60  カ 50    40    30    2旺 (Kg/mmり10 O−一◇ ユニメタル    ニクロムポンド    パイオポンド    タイクラウン・ウルトラソフト ゜ID°2°°3°° メ5°°6°°川崖゜∼6°ヂ゜川゜°】2°° 図2:Ni−Cr合金ヤング率の温度変化 ユニメタル ニクロムポンド バイオポンド タイクラウン・ ウルトラソフト       ∼∼蚕一□∼壬♪ °1°°川3°°‘ ト5°°6°°7°冨゜1ε;川川゜田2°° 図3:Ni−Cr合金耐力の温度変化

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永沢 歯科材料の高温物性に関する研究 ある. 室温においても,これらの合金のヤング率は,Ni

−Cr合金と比べて,かなり低く,10000から

5000kg/mm2となっている.金銀パラウム合金 は,600℃,20K金合金は800℃,銀合金は,500℃ 以上において値が2000から10kg/mm2程度と極 めて低くなっている.  図5は,貴金属合金の耐力を示したものである.  耐力は,室温において約20∼60kg/mm2と,Ni −Cr合金と大差は無いが,400℃度以上において急 激に低下し,金銀パラジュウム合金,20K金合金 では800℃以上において,銀合金では500℃以上に おいて3kg/㎜2以下と極めて低くなる. 3.埋没材について  図6は,石こう系埋没材の,ヤング率を示した ものである. 100℃までは,石難没材(161kg/㎜2)と,ク リスト・ミライト埋没材(32kg/㎜2)のヤング率 間に大きな差があるが,石こうの脱水温度以上で は,差が縮まり,両埋没材とも10から30kg/mm2 程度となる.また,600℃においてクリープを加え た試料は,クリープを加えない物に比べ60kg/ mm2と約3倍に値が上がっている.  図7は,石こう系埋没材の耐力を示したもので ある.  100℃においては,ヤング率同様,両埋没材間に 大きな差が有るが,300℃以上においては,両埋没 材共,約0.3kg/mm2と,ほぼ一定な値となってい る.またヤング率の場合と異なり,耐力は,クリー プを加えても変化しない.  図8は,石こう系埋没材の圧縮強さを示したも のである.耐力と,ほぼ同一な値となっており, 1分間に3.3%程度の歪み速度においてすら,永久 歪みが殆ど生じない内に容易に破壊されることを 示している.  図9は,りん酸塩系埋没材,セラミゴールドの ヤング率を示したものである.  セラミゴールド埋没材は,250℃において,約 550kg/mm2と石こう系埋没材と比べて20倍程度 も,ヤング率が高く,350℃以上においても200 】5000 ヤ  10000 グ 率   5000 (Kg/mmり S20 O  lOO 200 300 400 500 600 700  800 900 1000 1100 1200       温    度(’c) 図4 貴金属合金ヤング率の温度変化  lOO   go   80   7o

耐60

力50

  40   30   20 (Kg/mmi)10 S20 ゜1°°2°°’°°‘メ5°°‘°°7°違゜樹1°°°II°°12°° 図5 貴金属合金耐力の温度変化 ヤ ン グ 200

率川

(Kg/mmり 0.2kg/Mmtクリープ0,3% 0.2kg/mm雰クリ∼プ1.0% 0   100  200  300  100  500  ‘00  700       温    度(℃) 図6 石膏系埋没ヤング率の温度変化 耐 1. 力o・ (Kg/mm2) o. 0.2kg/MmtクIJ 一ブLO% O.2kg/Mm2クリープ0.3% O   lOO   200   300   400   500   600   100       温   度(℃) 図7 石膏系埋没耐力の温度変化

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松本歯学 12(1)1986 kg/mm2と,約10倍の値となっている.また,高 温になっても,そのヤング率は,極端な低下を示 さない.混液比を,0.30と高くすると,標準混液 比の場合と比べ1/5程度にヤング率は減少するが, 900℃以上の温度ではその差が縮まり,ほぼ同程度 となっている.さらに,この埋没材も,高温にお いてクリープを加えた場合には,5から,10倍程 度のヤング率の上昇が見られた.  図10は,セラミゴールド埋没材の耐力を示した ものである.  100℃(L/P=0.16,2.47kg/mm2, L/P=0.30, 0.53kg/mm2)から,温度が上昇するに従い徐々に 減少(L/P=0.16,650℃,1.73kg/mm2, LIP= 0.30,800℃,O.66 kg/mm2)して行くが,混液比 0.16では,800℃(2.94kg/㎜2),0.30では900℃ (1.09kg/㎜2)⊇・て逆に上昇する.しかしそ れ以上の温度においては再び急激に低下し1000℃ では,1kg/mm2程度である.また,セラミゴール ド埋没材の耐力も,石こう系埋没材の場合と同様 1, 圧 縮 強 さo・s (Kg!mmり o石英埋没材 W/P=O.31 ●クリストパライト埋没材     W!P=0.33 0.2k91m㎡クリープ1.0% 0.2kglmm: クリープ0、3% 0,  ロ    Ieo   2o    ヨロロ   4 a   うoe   るoo   アロo        温    度(℃) 図8:石膏系埋没材圧縮強さの温度変化 29 に,クリープを加えた後もほとんど変化していな い.  図11は,セラミゴールド埋没材の圧縮強さを示 したものである.この場合も,耐力とほぼ同じ値 になっており,埋没材の永久変形は,クリープに よって生じている事になる.  図12は,りん酸塩系埋没材セラベストのヤング 率を示したものである.この埋没材の場合,250℃ においてヤング率は,100kg/mm2とセラミゴー ルド埋没材の1/5程度の低い値を示すが,高温に なってもほとんど変化せず,900℃以上では,ほぼ 同一の値となっている.また,図9と同様に,ク リープを加えると7倍程度,値が上昇する.また 1000℃においてクリープを加えた後,700℃に冷却 した場合のヤング率も高くなっている事より,一 旦高温でクリープ変形を受ると温度が下がって も,ヤング率は,低下しない事がわかる.  図13は,セラベスト埋没材の耐力を示したもの 1500 ヤ ン 1000 グ 率   500 (Kg/mmり   セラミゴールド   L!P=O.15 L/P=0.30   1kg/m㎡ クリープ      0.1%      e.15%      0.5%       2kg/mm2クリープ     K 1・°% }一一与

/ぺ1・㌢霊・一ブ

 0 100200300400500‘0070080e 900100011001200        温    1度1(℃) 図9 りん酸塩系埋没材,セラミゴールド,ヤン    グ率の温度変化 耐 4. 3. 力2. 1. セラミゴールド L/P=0.15 L/P=0.30 lkg/m㎡ クリープ    0.1%    0.15%    O.5% 2k91m㎡ クリープ El』% (Kg/mmり   0.0:    ロ   ロ  2oo 3oo ぺoo 5ロロ 6oo 7eロ soり  ロ ロooロoo 12oo          温    度(℃)  図10:りん酸塩系埋没材セラミゴールド,耐力の     温度変化   セラミゴールド   L/P=0.15 L/P=O.30 4. 圧3・ 縮 強2.o さ 1.o 2kg/m㎡ クリープ N1.0% (K9/mmり   0.    0 100200300400500600700800900100011001200          温    度(ec)  図11:りん酸塩系埋没材セラミゴールド,圧縮強     さの温度変化

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永沢:歯科材料の高温物性に関する研究 である.  この埋没材の場合には,セラミゴールド埋没材 と異なり,クリープを加えると40∼50%程度の耐 力の増加が見られた.特に,900℃において,2kg/

㎜2の淀随でクリープ変形を加え場合に

は,約2.8kg/㎜2と高い耐力を示してし・る.図14 は,セラベスト埋没材の圧縮強さを示したもので ある.図13と同様に,この埋没材の場合には,ク リープ変形を加えると圧縮強さも増大する. 考 察  ヤング率の測定方法には,超音波位相比較法22), 超音波共振法23・24),引張試験16),圧縮試験の4種類 がある.この内,前2者は,応力と歪みの関係を 直接使うものではなく,それぞれ,材料の音速, ないしは,固有振動数よりヤング率を算出するも のであり,精度も3桁以上と十分に高い.しかし ながら,超音波共振法は,振動を与える部分,感 1500 ヤ ン グIDoo 率 500 5=、1 (Kg/mmり    0    リ ロoo 2co ロ4oo 5oo 6oo 7co 8oo goo 1oooロ oo  ロロ          温    度(℃)   図12:りん酸塩系埋没材セラベスト,ヤング率の     温度変化 知する部分を試料近傍にとらなくてはならない 為,高温では,ほとんど使われていない.超音波 位相比較法は,一回の測定に最低でも50g程度の 金属を必要とし,高価な歯科用金属の測定には適 していない,また多孔質材料に対しては,超音波 の減衰が激しく,歯科用埋没材の様な材料におい ては,超音波の振動数を下げねばならず,試料寸 法を巨大なものにしないかぎり,測定することは できない.従って,高温における測定は,極めて 困難である(ただし,他分野における高温測定に おいては,もっぱらこの方法が使われている).一 方,後2者は,試料に歪みを与えてしまう為に, 温度を連続的に追た測定はできない.また大きな 歪みを加える為,器具の歪み(例えば,圧縮試験 の場合,圧板そのものの歪み等)が現れてしまい, 精度の高い測定は望めない.また,脆性材料の場 合には,引張試験は不適当である.従って,今回 の測定には,圧縮試験を採用したが,座屈等の現 象も加わり,たとえ(1)式によって,補正をしたと しても,精度は,せいぜい一桁か,一桁半程度し かない.しかし,歯科材料の,高温におけるヤン グ率の測定データは,今のところ笠原による報 告16)が有るのみであり,この程度の精度であった としても,その存在価値は有ると考える.また, りん酸塩系埋没材に,クリープを加えた後の値は, 埋没材の変形が,ほとんどクリープ変形によると 考えられる為,非常に興味深いが,何分にも長時 間を必要とする為(今回の測定において,最大2 時間),より詳しい測定は,次の機会に@だねざる をえない.  ところで,鋳造体の適合精度,変形等において, 耐 カ   セラベスト 4   L/P=0.24 3. 2. 1』 (Kg!Mml)   ⑰. 1kg/Mm2  クリープ     0.1%         2kg/Mm2クリープ 1。。。。1:㍑、Mm2, p,.プ、.,%王…%  ロ  ロロ2DO 3oo 4oo 5oo 6eo 7oo soo goo ロロ パロロ12oo        温    度(℃) 図13二りん酸塩系埋没材セラベスト,耐力の温度

  変化

 セラベスト 4.  L/P=0.24 圧3・o 縮 強2. さ lkg!Mmi     O.1%      2kg/mm2クリープ  1。。。e、.:::㍍_.プ、.,%11・・%       1kg/mm2   L       ク1」一ブ       1.0% (Kg/mm’)   0.    o  oo 2oo 3oo 4eo soe 6oo 7oo  ロgoo Iooo loo t2oo          温    度(℃)  図14:りん酸塩系埋没材セラベスト,圧縮強さの     温度変化

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松本歯学 12(1)1986 埋没材による,金属収縮の抑制がしばしば問題に なる.そこで,以上得られた結果より,この様な 現象の可能性について,定性的にではあるが少し 考察を加えてみる.  まず,図9のセラミゴールド埋没材のヤング率 と,図2のNi−Cr合金のヤング率を比べて見る. 表1 歯科金属材料の高温物性 (単位・kg/mm2) 材料名 温度 ヤング率 耐力 圧縮強さ 20K金合金 室温 9300 21.9 一一一∼ 400℃ 9300 17.8 一一一一 600℃ 7700 9.1 一一一一 800℃ 490 1.9 一一一一 900℃ 78 1.0 一一一、 950℃ 7.8 0.04 一一一∼ キンパラ 室温 11000 59.8 一一一∼ S20 400℃ 13000 52.1 一一一∼ 600℃ 2100 15.4 一一一← 800℃ 270 2.7 一一一一 900℃ 200 1.5 一一一一 950℃ 11 0.05 一一一← ディスク 室温 5600 26.6 一一一∼ アロイ 500℃ 570 2.3 一一一∼ 550℃ 130 0.48 一一一∼ 600℃ 16 0.11 一一一一 650℃ 16 0.06 一一一一 タイクラウン 室温 8800 16.5 一一一一 ウルトラソフト 500℃ 一一一一 10.2 一一一∼ 800℃ 1950 6.1 一一一一 900℃ 一一一一 7.6 一一一一 1000℃ 300 5.0 一一}一 1100℃ 600 2.8 一一一、 ニクロムボンド 室温 26000 47.6 一一一} 400℃ 一一一一 38.6 一一一∼ 500℃ 一一一一 39.5 一一一∼ 600℃ 16000 31.2 一一一一 700℃ 6300 35.9 一一一一 900℃ 3100 19.5 一一一一 1100℃ 2300 5.7 一一一} ユニメタル 室温 42000 72.1 一一一、 400℃ 一一一一 70.3 一一一、 600℃ 38000 70.5 一一一、 700℃ 14000 67.8 一一一一 900℃ 3100 23.5 一一一一 1100℃ 410 5.3 一一一一 バイオボンド 室温 22000 34.8 一一一一 400℃ 25000 32.8 一一一、 600℃ 2200 33.3 一一一一 700℃ 4200 27.1 一一一一 900℃ 1900 20.2 一一一一 1100℃ 2400 3.2 一一一→ 31 この両老の場合の600℃以下の低温においては,2 桁,800℃以上の高温においても1桁以上Ni−Cr 合金が高く,このままでは,金属の収縮をいちじ るしく抑制するとは,考えられない.ところが, 埋没材に高温でクリープが掛かると,埋没材と, 金属間のヤング率の差は2,3倍程度に縮小する. ヤング率が,この程度に近接して来ると,埋没材 と金属の耐力の関係が問題になって来る.そこで, セラミゴールド埋没材とNi−Cr合金の耐力を比 表2歯科埋没材の高温離(鞄・kg/㎜2) 材料名 温度 ヤング率 耐力 圧縮強さ GC石英 100℃ 161 0.65 0.66 埋没材 300℃ 32 0.30 0.30 400℃ 31 0.30 0.32 (W/P=0.31) 500℃ 23 0.27 0.28 600℃ 22 0.24 0.29 * 600℃ 64 0.25 0.27 GCクリスト 100℃ 32 0.27 0.28 バライト埋没材 250℃ 18 0.27 0.28 350℃ 15 0.21 0.21 (W/P=0.33) 400℃ 29 0.22 0.22 500℃ 13 0.22 0.22 600℃ 11 0.25 0.26 ** 600℃ 56 0.27 0.28 セラミゴールド 250℃ 532 2.47 2.47 埋没材 350℃ 195 1.89 1.89 500℃ 192 2.00 2.02 (L/Pニ0.16) 650℃ 185 1.73 1.79 800℃ 168 2.94 2.95 900℃ 106 2.43 2.91 *** 900℃ 899 3.12 一一一一 1000℃ 56.1 1.06 1.61 250℃ 49.6 0.53 0.54 350℃ 37.8 0.47 0.48 (L/Pニ0、30) 500℃ 43.7 0.48 0.49 650℃ 39.1 0.63 0.66 800℃ 24.4 0.66 0.69 900℃ 50.1 1.09 1.42 1000℃ 28.2 0.65 0.93 セラベスト 250℃ 82.6 0.87 0.92 埋没材 350℃ 76.5 0.93 0.94 500℃ 102.0 1.25 1.25 (L/P=0.24) 650℃ 83.8 1.30 1.44 800℃ 99.4 1.28 1.41 900℃ 83.8 1.77 1.96 *** 900℃ 650 2.78 2.78 1000℃ 65.7 1.15 1.59 * ** *** 0.2kg/mm2・0.3%クリープ変形後,再測定 02kg/㎜2・1.0%クリープ変形後,再測定 2kg/mm2・1.0%クリープ変形後,再測定

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永沢:歯科材料の高温物性に関する研究 較する.  図10のセラミゴールド埋没材の耐力は,標準混 液比の場合,900℃以下の温度において,2∼3 kg/mm2である.一方のNi−Cr合金の耐力は,図 3に示したとうり,900℃以上において3∼20kg/ ㎜2程度である.700℃以下の温度においては,ほ とんどのNi−Cr合金は,30 一一 70 kg/mm2と耐力 が高く,埋没材の10から30倍程度ある為,この温 度以下では,鋳型による鋳造体の永久変形がおこ るとは,考えにくい.しかしそれ以上の温度にお いては,鋳型と,鋳造体の温度が同一でない事も 考えあわせると,耐力の差は1∼5倍程度に減少 する.この程度の耐力の差並びにヤング率の差に おいては,鋳造体の形態によっては,明らかに鋳 型による永久変形が表れると考えられる.  ところで,埋没材に高温でクリープ変形を加え ると,ヤング率が向上することは,既に述べたが, この現象は鋳造体の変形を招いたり,内側の埋没 材の撤去が困難になる等,歯科鋳造にとって好ま しいものではない.  そこでクリープによるヤング率の向上の原因を 考えてみる.図12に示した如く,このヤング率の 向上は,高温において一旦生ずると,温度を下げ ても回復しない.従ってこの現象は,埋没材がな んらかの構造的変化を受ている為と考えられる. またりん酸塩系埋没材,セラミゴールド(図9) とセラベスト(図12)を比較してみると,セラベ スト埋没材の方がより顕著に表れる.こめ両者の 埋没材の違いは,耐火材の粒径とその形状にあり, セラミゴールドが最初からより密に充填されてい るのに対し,セラベストは,その耐火材が,あま り密1こは充填されていない.この事を考え併せる と,高温においてクリープを加える事によって生 ずる,ヤング率の向上は,埋没材の結合材が高温 かつ応力下において,焼結し,耐火材をより密に 充填させた結果と考えられる.従って,室温にお ける,埋没材の強度を低下させても,鋳造体の変 形を抑える効果は少なく,かつ内側埋没材の撤去 も容易にはなり難い.この様な効果を狙うならば, 結合材の耐火性を向上させねばならないと思われ る. 結 論 歯科材料の,高温におけるヤング率,耐力,圧 縮強さを測定した結果以下の結論を得た.  1.歯科材料の高温物性は,表1(金属材料), 表2(埋没材)に示す如くである.  2.金属材料のヤング率並びに耐力は,高温に おいて極端に低下する.  3.埋没材のヤング率並びに耐力は,金属材料 程極端には低下しない.  4.埋没材に高温において,応力が働くと,そ のヤング率は数倍に上昇し,その後温度を下げて も低下しない.  5.埋没材の,高温度,圧縮クリープ後におけ るヤング率の上昇は,結合材の焼結によって耐火 材が密に充墳された為である. 謝 辞  本研究に当り,オートグラフDCS 5000の借用 を快く認めていただいた,東京歯科大学理工学教 室 金竹哲也教授,住井俊夫教授,並びに御助言 をいただいた小田豊講師に深く感謝いたします. また,本研究に,終始御指導御助言をいただいた, 松本歯科大学理工学教室 高橋重雄教授並びに教 室員の方々に心より感謝いたします.  尚本研究は,昭和58年度文部省科学研究費の補 助の下に行われたものである. 文 献 1)上新和彦,薗 淳三(1970)りん酸塩を結合材と  した埋没材の諸性質とその適合性について.歯理  工誌,11⑪:124−133. 2)北総文弘,鎌田悦郎,篠崎茂男(1977)ニッケル・  クロム合金による鋳造冠の適合性一第1報一.歯  科技工,5(4}:79−86. 3)石川宏(1980)歯科用ニッケルクロム合金によ  る小型鋳造物の精度に関する研究一鋳造体の寸法  精度について一.歯材器誌,36(4):499−506. 4)山田剛一,横井次郎,武田みどり(1976)陶材熔  着鋳造冠の適合精度について一第2報 加熱処理  による鋳造体の変形一.歯科技工,4(5):69−79. 5)安藤進夫,中村健吾,並木 暢,菅田忠昭,鈴木  利夫,森山京介(1972)市販ポーセレン焼付用合  金の焼成時における変形.歯理工誌,13㈱:  237−248. 6)宮田修(1976)陶材焼付貴金属合金に関する基  礎的研究 第1報.歯理工誌,1600:38−46. 7)西山嘉重(1970)金属ポーセレンの焼付強度に及  ぼす因子について.歯科学報,70:759−777. 8)伊藤充雄,永沢 栄,高橋重雄(1978)鋳造精度  に関する研究 その7 Co−Cr−Ni系合金を低温

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松本歯学 12(1)1986   鋳型で作製する鋳造体の改善方法について.松本   歯学,4:9−18. 9)住井俊夫,平山道子,有坂はる子,柏瀬昌世,中   西哲生,小田 豊,吉成正雄(1975)埋没材をテ   ストする一埋没材の特性と鋳造体の精度.DE,   32:20−29. 10)山田隆司,奥野善産,野首孝,西山,山賀 保   (1977)コバルト・クロム鋳造の適合性に関する   研究.補綴誌,21(2):246−253. 11)西沢泰二,長谷川光弘(1981)鉄合金の状態図の   コンピュータ解析.鉄と鋼,67:1887. 12)山崎道夫,原田広史(1983)コンピュータを使っ   たNi基超合金の合金設計,金属,53(lo):11−15. 13)新山英輔(1983)鋳造法案設計におけるコンピュー   タの応用.金属,53(1》:16−21. 14)鷲津久一郎,宮本 博,山田 昭,山本善之,川   井忠彦(1983)有限要素法ハソドブック 応用編,   培風館,東京. 15)永沢 栄,伊藤充雄,中西哲生,市川明彦,高橋   重雄(1978)精密鋳造に関する研究 その8.有   限要素法による鋳型の熱変形の解析.松本歯学,   4(2):138−149. 16)笠原 紳(1984)合金および埋没材の高温物性値 33   が鋳造体寸法に及ぼす影響.歯科材料・器械,3:   122−139. 17)浅岡憲三,桑山則彦(1982)金属焼付陶材の機械   的性質に関する検討 第2報 焼成後の残留応力   と変形について.歯科材料・器械,1:10−16. 18)歯科理工学会編(1982)歯科理工学,第2版,医   歯薬出版,東京. 19)岡本 三(1982)焼付用陶材の物理化学的性質に   ついて.歯科材料・器械,1(2):138−171. 20)河合達志,久田和明,北岡 正,河村訓陸,長谷   二郎,加藤 誠(1984)歯科用金合金の凝固収縮   並びに熱収縮.歯科材料・器械,3:826−832. 21)久田和郎(1985)歯科用Ni−Cr系合金の凝固収縮   並びに熱収縮.歯科材料・器械,4:430−454. 22)高橋仙之助,山本英爾(1973)超音波による高温   におけるニヅケルの弾性定数の測定.日本金属学   会誌.37(4):373−375. 23)大泉貞治,桂啓文,市丸俊夫(1971)アマルガム   の動的測定におよ弾性率,歯理工誌,12⑬:1   −3. 24)市丸俊夫,大泉貞治(1973)充墳用Resinの動的   弾性率の測定,歯材器誌.30(4):283−285.

参照

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