• 検索結果がありません。

巻頭言「身近になった人工知能 」

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "巻頭言「身近になった人工知能 」"

Copied!
1
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

153 人 工 知 能  32 巻 2 号(2017 年 3 月) 人工知能への注目は,現在も衰えることなく続いています.本学会員数の増加,全国大会や各種研究会などの参加 者の伸びなどから見ても,日本でも 1980 年代に起こった第二次人工知能ブームをしのぐ勢いです.著者は,ちょう ど 1980 年代後半に大学で自然言語処理を学び,90 年代は企業内で研究開発をしていましたので,前回の人工知能ブー ム(とその後の苦難)を経験しました.最近またこの分野が注目を集め,かつ実際に成果が出ていることを目の当た りにし,改めて人工知能研究が,学問的にも社会的にも重要なものであることを実感しています. 前回の人工知能研究の盛り上がりと今回とでは,違うと思うことがいくつかあります.もちろん,中核となる技術 が論理から膨大なデータを用いた機械学習や深層学習に移ったということもありますが,これとは少し違った観点か ら考えてみたいと思います. 一つ目は,社会を変革する技術から見た,現在の人工知能研究,開発.利用を支えるネットワーク(エコシステム) の拡大です.80 年代に起こった人工知能ブームでは,大学や研究機関で研究された技術を大手 IT 企業が製品化する という図式が典型的だったように思います.現在では,人工知能を研究開発しサービスとして提供する企業や組織の すそ野が大きく広がっています.これは,本学会にご協力いただいている賛助会員の広がりにも見て取れます.これ は取りもなおさず,人工知能の適用分野が大きく広がり,社会的なインフラを担っていくものとして認識されている ことにほかなりません.昨年 12 月にアメリカ政府が公開した報告書“Artificial Intelligence,Automation,and the Economy”では,これから 10 ∼ 20 年の間に,人工知能により,9 ∼ 47%の職業が脅かされる可能性があることを指 摘しています.一方で,新しい雇用が生まれることで,失業率については大きく変わらないとしており,これは,社 会構造の変化に人工知能が大きく寄与することを意味しています.人工知能技術が社会的なプラットフォームとなっ ていくときに,本学会が果たす役目は何なのかは,学会としてもこれから考えていかなければならないことの一つです. 二つ目は,ソフトウェアとしての人工知能技術の広がりです.80 年代における人工知能ブームの際には,開発され たソフトウェアは一部の研究者や開発者の間で共有されるのみで,誰もが使ってみることができるというわけではあ りませんでした.現在は,複数の企業や組織が関連ソフトウェアを無償あるいは有償で公開しています.さらに,こ れらソフトウェアは,単体のアプリケーションではなく,複数の機能を組み合わせることを前提とした API や Web サー ビスとして提供されていますので,人工知能分野以外の研究者や開発者であっても,これらの API を組み合わせるこ とで,高度な技術を開発できるようになっています.例えば,利用者との自然な対話を実現するチャットボットのよ うなサービスが簡単に作成できるようになり,新しいビジネスチャンスを迅速に具現化したいスタートアップ企業や 自社のコールセンターに活用したい企業が増えています.今後,人工知能研究から派生した技術が,さまざまなビジ ネスシナリオの中に組み込まれて当たり前のように使われるようになるでしょう. 人工知能ソフトウェアの開発や運用にあたっては,特に機械学習や深層学習を用いた場合に,そのやり方そのもの が変わっていきます.例えば,従来の if-then 規則ベースのプログラムであれば,入力に対していつも同じ出力が返る ことが想定されています.しかし,継続的にデータを追加し学習を行うプログラムでは,データの更新とともに違う 出力が返ることがあり得ます.この場合,ソフトウェアとしての品質をどのように保つべきか,どのようにテストを 行うかという問題が生じます.また,システムをどのようにチューニングするのかは,これまでと違ったスキルが必 要になります.これは,要件や工数を明確化して開発を行う従来型の開発方式ではうまく捉えられないことを意味し ています. 現在の状況がいつまで続くのかはわかりませんが,ここで得られた成果をもとに,人工知能分野は,確実に社会基 盤を支える技術としての一歩を踏み出しています.さまざまな議論を経て,何十年か後に,今の時代が人工知能にとっ て最も重要であったといわれていて,それに我々は立ち会ったのだとなるよう,今を過ごしたいと思っています.

身近になった人工知能

巻頭言

浦本 直彦

(日本アイ ・ ビー ・ エム(株)ソフトウェア & システム開発研究所)

参照

関連したドキュメント

[r]

1年生を対象とした薬学早期体験学習を9 月に 実 施し,辰巳化 学( 株 )松 任 第 一 工 場,参天製薬(株)能登工場 ,

ビッグデータや人工知能(Artificial

11 Properties of a Complex Logistic Equation and... 13 Properties of a Complex Logistic

建設関係 (32)

水道施設(水道法(昭和 32 年法律第 177 号)第 3 条第 8 項に規定するものをい う。)、工業用水道施設(工業用水道事業法(昭和 33 年法律第 84 号)第

物質工学課程 ⚕名 電気電子応用工学課程 ⚓名 情報工学課程 ⚕名 知能・機械工学課程

1月中に企画概要をきめ、2月にクラウドファンディングスタート、3月には告知開始くらい