田中啓陽,井上裕雄
〔Ⅰ〕ま え が き 鴨の越地先は香川県詫間に突出する半島の西岸中央部に位置し燵灘に直接面し潮流特性が良く,工業,都 市汚廃水の影響を受けないため,浅海養殖に適した水域と推盈される‖ 今回は本水域をとりあげて一環境工学的に調査したh 主な調査頃日は,(1)平面・深浅測量(2)潮位潮流特性 (3)海水交流盈である. 〔Ⅱ〕調 査 方 法 測盈 大潮の低潮時,湾内は殆んど干出する.平板測盈にて計画水域平面図を,また計画水域への流 出,入意算定のため西側潮ロと南側区切り線に沿って高低測塵を行ない通水断面図を作製した..同時に地区 内を約10m間隔で網削犬に結び,高低測盈を実施し,St1(Figl)のGroundLevelを±0とし,等高線の 形で,高低を表示した.. 流動 簡易漂流瓶(1)を浮遊させ,トランシットにて追跡した、 観測日ほ昭和39年9月5日の大潮期である.. 海水流出・入量 (1)南側に発達した砂洲上予定区切り線の中央部..(2)西側潮口Aの中央瓢.(3)西側 潮ロBの中央部の3ケ所にて流速,流向を上,中,下層で05∼1時間々隔で測定した.観測時における水 位からそれぞれの通水断面積を求め上中下層の3屑に区分して直角流速成分を乗じ計画水域への流出・入塁 を算出した..使用した流速計は東邦電探KK・製CM一柑型電気流測計である..機測は昭和39年9月7∼ 8日の大潮期である. 〔Ⅲ二】結果および考察 1)水域の概況 本水域は香川県の西部詫間に位牒する半島の燵灘に画した詫間叫鴨の越地先と丸山島 に囲まれた水域である.西は潮口一A,Bを通じて,南ほ発達した砂洲を経て潮流が出入するい 計画水域面積 は約54,3×103m2である(Fig1)り 西側潮口Aは大潮の低低潮においても完全には干出しないが潮口Bの1evelほ,St1より約1/7m高い. ⊥ゝ,B潮口では岩石が編出し季節風の影響の大きいことを物語っている.南側は砂洲が非常に発達し,その 砂洲は鴨の越より更に南の地域の海岸線に連らなっているい この砂洲はかなり古くから存在するようであ るい 水位と水面積,水容積との関係を示したのがFig2であるい また9月7∼8日の潮汐変化による計画水域 内水容積の変動をFig5に与えたい高潮時には水面横約15ヰ×103m2,水客観的12×104m8であり,水位低下 に伴ない水面硫,水容概共に著しく減少し,大潮期においては低潮時を含む約2時間ほ殆んど干出するり 2)潮流特性 計画水域内での流れの様相が場所によってどの位変るか,養殖場として使用可能な面硫 はどの程度かを決定するために,フロートを用いて2回表層の海水流動の模様を観測した.その結果をFig, 3に与える、.この図によれば水域は丸山島の堤防を中心に扇状を呈し,潮流は,ほぼSt・2を中心として弧 状に流れる..そこでFig1に示すように0◇,30),600,90つ−1ineを仮定しフロ・−トがこれ等の線上を通過す るときの直角流速成分を求めて図示したのがfig・4であるい香川大学農学部学術報告 104 ㌢≧dLl〓] Fig1Bathymetricmap 用 高潮前=時 本測定時間内における潮流は,一般的に云って,南方の観音寺方面より沿岸に沿って北上し,計画水域南 側砂洲を越えて流入し,西側の湖口■AおよびBより流出する. 潮流の流向はFig・3に示すことく,計画水域が扇状を呈しているため,St2附近を中心にほほ円弧状を なして西側2ケ所の潮口より流れ出る.St2よりの距離120mを大体の境界として,120m未満は潮口A より,それ以遠の奥水域では潮口Bより流出する傾向がある. 潮ロAは,その断面積が大きく,St2より約120m未満の水域の流速とほぼ同じ速さ(020∼Ol25m/SeC) で通過流出する.しかし,St2より約120m以遠の奥部水域の流速は著じるしく低く004∼008m/−secであ る.潮口Bで0。1mノSeCと幾分速いのは,この潮口断面積が小さいにもかかわらず,奥部の水盛が比較的大 きいことから理解し得る.結局,計画水域内流速は奥部に行くに従って,特にSt2より約120mのあたり を境界として低下する傾向を認める.. (B)高潮後1時 本測定時間になると高潮を過ぎ,引き潮に移行している..しかし,全体的な潮流の様相は前述した高潮前
相∈も︼×扇せ‘nJO人出国トく>ケ 8 6 2 ATea Volume 3 ′﹂† り′︼ 朋∈ぁー×ぞ再出く出国ト<>∼ 0 1 2 】 RELATIVEWArERLEVEL,m Fig.2Watervolumeandareainthepro】eCtedfishfarm Fig3Featuresofcurrentsintheprojectedarea(A)onehourbefbrehightide (B)onehourafterhightide
香川大学農学部学術報告 106 .UUS\已ゴ国国∧読トZ河出出nU
Fig41SurfacecurrentsacrossthearbitrarylinespICturedinFig1
1時と余り相違はない小 St2より約85m附近を通過する水塊ほ比較的速い.これは本水域中央部を円弧状 に流動する水塊の主流部分であろう1. 以上のように(可の上げ潮時,(B)の下げ潮時ともに潮流は一・様に南側砂洲を越えて流入し,潮口A,Bから 涜出すること,奥部に行くに従って特にSt・2より約120mを境界として,その流速が減少する傾向がある と結論できる‖ ヱ掛こ奥部の水の流動は糊口Bに負う所が大きいが,この潮ロBの1evelが高いため潮汐の 約半周期が干出されるので,千出後の奥水域が比較的死水域状態に近くなることが想像される. 3)海水交流 本水域で海水交流を司どるのは,西側の潮口A,Bと南側の砂洲である..しかしFig5 に描かれているように,これ等の潮ロ1evelは著じるしく異なるため,海水の流出,入は水位変動によって特徴ずけられる.海水交流の様相をFig5に与え,上げ潮,下げ潮時に分けて検討するい
(a)上げ潮時 Fig5で解かるように,低潮時に本水域は殆んど千・出しており,そのため低潮時以後水位が上昇し砂洲が 没するまでは糊口Aからのみ一・方的に海水が流入する“砂洲潮口が丁度水面下に没するのは低低潮時から 約25時間後で,その時の貯水盈は約12×104m3である一 砂洲潮口が水面下に没してから潮口Bが没する 迄の約1時間は,潮口Aおよび砂洲を越えて2方向から流入する.その後潮口Bが没すると,海水は砂洲 を越えて一方的に流入し,A,B潮口より流出する..潮口Bより海水が流出し始めるのは低潮時から約3・5 時間後である‖ (b)下げ潮時 高潮時から下げ潮に移ってもなお砂洲を越えての一方的な海水流入が持続し,潮口A,Bから流出する. 水位が潮ロBの1evel以下に下降すると砂洲から流入し潮口Aを通じて流出するが,砂洲が露出する約15 時間前からは,本水域への流入は全く認められず砂洲部分および潮ロAの両者から流出する‖ 低潮時前約 2時に砂洲が露出すれば,それ以後は潮口・丸からのみ流出する..叩∈もー×
れ国∑nJOA出国↑くき
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Fig5DiurnalvariationinquantltYOfⅥ・ater月owinglntOandoutfkomtheprq】eCted
fish fまrm and tidalcharacteristics
本観測を実施した大潮期では,計画水域全体が完全に千出している時間は潮汐日周期で約3時間,B潮口 が働いている時間は約10時間,また砂洲区切り線の露呈している時間は約7時間となる.. Tablelには約12時間のMl(高々潮含む)およびM2(低高潮を・含む)の2っの潮における各潮ロからの 流出,入監を与えている..各潮における流入農と流出丑の算術平均値を交流盈と呼べば,Ml潮では交流慮 は8う×104m8,M2潮では65×104m3となる.本水域は低潮時完全に干出してしまうため,海水交流盈を高 潮時の貯水見で割った商を海水交流率と定為すれば,Ml潮では‘7OM2湖では5“7回′1潮(高潮基準)を 与えるい 本水域は非常に海水交換の良好な地域と考えられる.、
香川大学農学部学術報告 潮口Bを通じての流出盈ば全交流量 の約10∼15%と数値的にはやや小さい が,奥部水域の海水交流にかなりの役割 を演じている.もし潮口Bがなければ, 水域奥部はかなり死水域に近くなるであ ろう Ⅳ あ と が き 以上の結果から本水域に養殖場を築造 する場合,次の間題点が考えられる..第 108 Tablel.Hydrauliccharacteristics ー・に潮口A,Bは季節風を真正面に受け 風波,うねりが大きいためそれに充分耐え得ること,第2に潮口A,Bは本水域の海水交流に大きな役割を 演じるため,流出,入室を低下させないことであるい したがって潮ロA,Bでの施工はこれらを考慮して 充分検討されねばならない〃 第3に潮口A,Bに構造物を設けたとき潮流と季節風に伴う風波,うねりに大 きな変化を与えるであろうい この場合南側に発達した砂洲がどのように移動するかである.第4として本水 域は低潮時全般的に干出するため養殖場として開発する場合まず堀さくによって低潮時にある程度の水深を 保たねばならない〃 しかし,余り大きな水深を望むことば出来ない.このような比較的浅い水域に適する養 殖対象水族の選定が重要になってくる‖ 文 献 (1)井上裕艶.田中啓陽,斎藤 突:日水詰,32(う),384−392(1966)
PreliminaryenglneerlngStudiesonenvironmentalcharacteristicsof
SeaareaPrCueCtedfbrmarineculture
II AninletsituatedinfiOntOfKamo−nO−koshiatTakuma
YoshiakiTANAKA andHirooINOUE
Aninletinvestlgatedislocatedin f王Ont OfKamo−nO・koshion the east coastof Hiuchi−
nada.Becauseofthevariablenatureof nearshorecurr・entS,adiscrlPtlOn Ofcurrent patter・nS
intheprqjectedseaareamustbe重r・Stmade,PrlOrtOCOnStruCtionofthe五shfarm・
Theprevailing curTentSin theinlet runtraclng・Circular arcs rounnd St・2ataspeedof
20cm/sec.Atornearthefuutide,Withinadiatanceof120mfiOm St・2・Current runSat
ag・00dspeedandgoesoutthroughtheentranceAlHowever,beyond this rang’e,Sea Water
flowsveIySlowlyandgoesoutthroughtheentranceB・
Duringtheexposureofthesandbar,SeaWatergOeSinoroutonly throughthe entrance
A.Whenever thesand barlies under・Water,CurrentS flowin overit,run traClng Circular ar・CSintheinletandthenflowoutthr・Oughtheentr・anCeSAandB・Inthesprlngtide,Water