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46 図 1 spinal manual therapy の分類 脊椎徒手治療法 spinal manual therapy は muscle, nerve, facet, disc technique に四大別するが 特に facet への手技が主体となる 内塗りは急性腰痛に適応 表 1 腰痛の保

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Academic year: 2021

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特集●急性腰痛に対する脊柱矯正法の現況─適応,手技,効果,限界─

急性腰痛に対するファセットテクニック

伊藤不二夫

Key words 椎間関節嵌頓(Facet locking),高速スラスト法(High velocity thrust),

滑走性の回復(Restoration of mobility)

Fujio ITO : Facet technique for acute low back pain

伊藤整形・内科クリニック〔〒 480-0102 愛知県丹羽郡扶桑町高雄郷東 41〕 は じ め に  脊椎には,①motor segment(椎間関節・ 椎間板),②神経保護器官(脊柱管・神経孔), ③脊椎支持機構(筋・靭帯・関節包)としての 三大構造と機能がある.それぞれの破綻は初 期では機能異常のため,各種保存療法で対処 する.病理的変化へと発展すれば,手術的手 段を時に選択する.急性腰痛症(ギックリ腰) の多くは椎間関節(一部仙腸関節)の微小な位 置的異常(mal alignment)からなり,関節可 動性低下・嵌頓locking(fixation)状態とな るが,医師が行うmanipulationが治療法の第 一選択となる.なお,筋攣縮性急性腰痛は理 学 療 法 士PTに よ る 等 尺 収 縮 後 筋 弛 緩 法 (post isometric relaxation-P・I・R)が 有 益 といえる.急性腰痛は1週以内に治癒せしめ ることが整形外科医としての信頼をうる第一 条件となる.

Ⅰ.Spinal manual therapy(脊椎徒手治 療法)の位置づけと適応および手技の 実際(図 1)

 脊椎疾患のspinal manual therapyは生体 情報を直接運動学的に評価でき,治療上も有 益である.ターゲットから筋・神経・椎間関 節・椎間板に対する徒手治療法が各々存在 し,また急性と慢性腰痛では手技の選択が異 なる.器質的病的疾患は適応外となる(表1).  ①muscle techniqueのうちP・I・Rは急性 筋攣縮性腰痛に対し,当該筋をいったん等尺 性に抵抗をかけ収縮(α系)させた後,神経反 射により弛緩(γ系)した筋を介助伸張させる 方法である.急性筋性腰痛には多くは多裂筋・ 腰方形筋を選択し,急性臀部大腿部痛には梨 状筋・腸腰筋・大腿筋膜張筋・ハムストリン グ・内転筋などを選択する.医師による圧痛 筋ブロックや仙骨硬膜外ブロックの麻酔剤で 筋緊張を一時的に緩解するのも同様の目的で ある.一方筋力増強は慢性期倦怠腰下肢痛に 対して行うが,腹筋・大殿筋・中殿筋・大腿 直筋・脊柱起立筋等を重点的に強化する.

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介助自動運動 自動運動 抵抗運動 等張性運 動 等速性運 動 等尺性運 動

R.O.M ② nerve ③facet technique ④disc technique distraction  mobilization manipulation

(stretch) (oscillation)   (thrust)

段階 Ⅱ 段階 Ⅲ 段階 Ⅲ 段階 Ⅱ 段階 Ⅳ 漸増 法 段階 Ⅰ

}

}

}

} ↓ 可動域初期 可動域中期 可動域終期 manipulation 生理的可動域 解剖的可動域 脱臼・捻挫 段階 Ⅰ 等尺収縮後筋弛緩 法 運動髄節外運動  筋・腱・神経 運動髄節運動   関節包・靭帯・椎間板 医 師 に よ る 治 療 法

Post Isometric Relaxatio

n スプリングテスト (関節面離開) (関節包緊張) (関節包伸張) (靭帯伸張) } ↓ ① muscle technique technique Nerve mobilizaton 神経モビリゼーション

図 1 spinal manual therapyの分類

脊椎徒手治療法spinal manual therapyはmuscle, nerve, facet, disc techniqueに四大別するが,特にfacetへの手 技が主体となる.内塗りは急性腰痛に適応

      脊椎徒手治療法( Spinal manual therapy )

部位別治療法    手  技         目  的   Musle technique 等尺収縮後筋弛緩法    急性攣縮筋の緩和:(多裂筋・梨状筋・                腰方形筋・腸腰筋・大腿筋膜張筋・               内転筋・ハムストリング etc)         筋力強化         筋力低下筋の補強:(腹筋・大殿筋・          stabilization       中殿筋・大腿直筋・脊柱起立筋 etc) Nerve technique 神経モビリゼーション  神経根・硬膜周囲の微小癒着剥離         疼痛自制内での振幅   および神経滑走性 mobility の向上           性神経ストレッチ   SLR・Brudzinski・FNST 徴候の緩和 Facet technique distraction   関節面離開・関節包伸張

         mobilization   生理的範囲内の振幅運動・慢性腰痛 manipulation   解剖的範囲内の椎間関節 locking 解除          (high velocity thrust)   医師による急性腰痛の顕著有効治療法 Disc technique   垂直荷重減圧法      棘間靭帯局所的伸張・骨盤徒手牽引          水平圧迫緩和法      後縦靭帯緊張化・椎間板膨隆軽減化          神経根位置的回避法    非疼痛側棘突起回旋          神経根癒着剥離法   神経ストレッチ ( post isometric relaxation ) 温熱療法・鍼灸 仙骨ブロック 筋圧痛点注射 筋力運動・体操 腰痛学校・歩行 仙骨ブロック 神経根ブロック 椎間板内注入 牽引・90-90 度牽引 椎間関節注射・AKA 椎間関節内注射 仙骨ブロック 牽引・減量 仙骨ブロック 神経根ブロック 椎間板内注入 その他の治療法 表 1 腰痛の保存的治療法

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 ②nerve techniqueは神経の滑走性を向上 させる手技である.SLR(足関節背屈・股内 転で増強)・頚部屈曲テストBrudzinski・大 腿神経伸展テストFNSTなどは神経根・硬 膜の滑走性を評価するが,これらの陽性所見 は,突出椎間板との接触部分における摩擦抵 抗の増加を示唆する.神経周辺の炎症・浮 腫・循環障害・微小癒着による.神経mobi-lizationは中度の快いテンションをかけなが ら神経の可動性を増していくが,疼痛は絶対 起こさず,筋肉は弛緩位で治療することが大 切である.慢性期腰痛の神経症状改善のリハ ビリである.  ③facet techniqueのうちdistractionやmo-bilizationは慢性期腰痛に対して椎間関節面 を離開し,関節包を伸張することにより, facetのhypomobilityを改善する方法である. PTによるAKA(関節運動学的治療法)も同 様であり,いずれも生理的可動域内での振幅 運動である.これに対し,manipulation(high velocity thrust)は瞬間的な靭帯性関節包の ストレッチ法であり,椎間関節のロッキング (雨戸が引っかかった状態)を瞬時に解除する 方法である.生理的可動域を超えるが解剖的 可動域は超えないことが大前提である.椎間 関節滑液内の発泡によるクラック音が聞か れ,同時に靭帯・筋反射により当該分節筋の 攣縮が解除され,微小な位置異常が修復され ①頚椎矯正により全身筋緊張を緩解     ②胸椎矯正により傍脊柱筋を緩解 ④胸椎矯正により椎間関節の  semi-fixation を解除

③腰椎 locking facet を manipulation で解除

図 2 急性腰痛のmanipulation

頚椎・胸椎の一般thrust法で全身の筋緩和を同時に施行しておく.腰椎のfacet lockingがmanipulationでre-leaseされやすくなる.

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る.急性腰痛の速効的緩解,脊椎の可動域の 向上,筋性SLRの向上,疼痛性側弯・筋性 防御が目に見えて激減する.  急性腰痛であっても筆者は頸椎,胸椎の一 般的manipulationを加え,semi-fixationして いる他椎間関節の可動域増強をあらかじめ軽 く行っておく.頸椎性の全身筋緊張をまずリ ラクゼーションさせ,胸椎脊柱起立筋の関連 性緊張も緩解しておくことが,腰椎facet lockingの解除をよりスムーズにしてくれる からである.筋緊張が異常に高く,十分解除 されそうにない場合は,硬膜外腔や椎間関節 内に局麻剤を注入しておくのも補助となる. manipulationは整形外科医が行う準手術行為 であり,PTや他のパラメディカルスタッフ が行うのは望ましくない(図2).

12゜

37゜

40゜

10゜

5゜

45゜

28゜

45゜

28゜

治療前 治 療 2 日 後 図 3 症例1(側屈制限例) painful scoliosisが顕著であり左側屈が強く制限されていた.2日間のmanipulationで脊椎の可動性が増し,強腰 痛も激減.

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 ④disc techniqueは椎間板性の腰下肢痛に 対する徒手治療法であるが,急性期には効少 なく,慢性期にPTが行うリハビリの一法で ある.垂直加重を軽減すべく,骨盤の徒手牽 引や,特殊テーブルを用いた下肢・骨盤牽引 は疼痛緩解の方向へ三次元的に施術できる点 で,単純な一方向の器械牽引とは異なる.腹 臥位で棘突起を開くように挙上するのも一法 である.水平後方への圧迫を緩和するために は,疼痛が生じない方向で股・膝を屈曲して 後縦靭帯を緊張させ椎間板の膨隆を軽減化せ しめたり,棘突起を非疼痛側へ回旋させ神経 根とヘルニアとの位置関係を微妙に変化させ たりする.神経根の滑走性を向上すべく.神 経ストレッチもよい.いずれも疼痛を起こさ ない方向を捜しながら,PTが行うとよい. Ⅱ.効果(代表的症例提示による)  症例1(側屈制限例):48歳男性.物を持 ち 上 げ よ う と し て 急 激 な 腰 痛 が 発 症 し,

L4

8゜

8゜

左側屈 直立位 右側屈

8゜

8゜

4゜

3゜

治療前 治 療 2 日 後 図 4 症例1 : 機能撮影 L4は右傾斜8°にlockされており,両側屈にても不動でfixationを示す.治療2日後L4のmobilityが出現,疼痛 も激減した.

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painful scoliosisを呈して来院.左側屈制限 が強く,伸展制限もあり強痛が生ずる.SLR に異常はない.manipulationは頸椎・胸椎・ 腰椎に施行.半減するも疼痛残存のため,翌 日も施行.結果はVAS10の疼痛は2に激減 したため治療を終了した.  動画からの脊椎可動性比較(図 3)  上段は治療前,下段は治療2日目のムー ビーからの写真である.治療前中間位ですで に脊椎は10°の右方painful scoliosis を示し, 右側屈では45°の側屈を疼痛なく行えた.し かし左側屈では強痛のため強く制限された. 2日目のmanipulation後,中間直立位では側 屈5°に軽減した.右側屈は術前と同様制限は ない.左側屈では12°→37°(208% up)と可 動域が増し,疼痛は激減した.なお,前屈制 16゜ 63゜ 31゜ 42゜ 67゜ 67゜ (40%↑) 10゜ 22゜ 45゜ 伸展 94゜ 左側屈 (60%↑) 治療前 治 療 2 日 後 図 5 症例2 : 伸展側屈制限例 伸展制限と疼痛が強く,側屈も制限されていた.頸・胸・腰部thrust法で直ちに腰痛軽減と可動域が増強した.

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限はないが,伸展制限が同時にあった.治療 後頚胸腰椎伸展合計は40°→65°(63% up)に 増加した.  XP 正面機能撮影による比較(図 4)  治療前の機能撮影ではL4椎体の可動性が 全くなく,右傾斜8°に固定されたままであっ た.側屈は上位椎間関節で行われている.2 日治療後の機能撮影ではL4椎体の可動性が 出現し,中間起立位では4°の傾斜に軽減し, 特に左側屈では左へ3°の傾斜がみられ,全 体的にも脊柱の左側屈が大きく改善した.限 局性にL4 facetの左側屈方向のlockingが解 除され,同時に伸展制限も軽減した症例で あった. 左 SLR 右 SLR 65゜ 85゜ 48゜ 65゜ 治療前 治療後 図 6 症例3(筋性SLR改善例) manipulationの結果,関節-筋反射により筋緩和が生じ筋性要素部分のSLRが増加した.  症例2(伸展制限例)(図5):50歳男性. 物を拾おうとしてかかんだ瞬間に腰が抜けた ような感じがして,特に腰をそらす場合さら に左側屈時に強痛を感じて動きが制限され た.頸椎・胸椎・腰椎のmanipulation を施 行した直後より疼痛はVASで10→3となり, 胸腰椎伸展は16°が治療後31°(94% up)に 向上し,頸椎も51°→61°と改善し,合計全脊 椎可動域は伸展において67°→94°(40% up) と直ちに向上した.脊柱前屈も楽に行え,頸 胸腰椎合計屈曲は105°→120°(14% up)に増 加した.右側屈合計は73°→89°(22% up)と 向上.左側屈合計は術前42°→術後67°(60% up)と向上.強い伸展制限および中程度側屈 制限の複合タイプといえる.

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前後屈が強く制限され強痛であった.頚椎・ 胸腰椎矯正直後より,右SLR65°→85°(31% UP),左SLR48°→65°(35% UP)と向上し た.SLRには微小癒着性の神経滑走性の低下 と後背部筋緊張による筋性要素が混在する が,manipulation で facet locking が release されると,反射機序によりSLRの筋性要素 部分が改善する.他に全脊椎屈曲は 50°→ 58°(16% up),全脊椎伸展は60°→95°(58% up),右側屈は55°→77°(40% up),左側屈 は50°→70°(40% up)に改善した. Ⅲ.限 界  発症2週以内の急性腰痛では椎間関節への high velocity thrust法(manipulation)がfirst choiceの治療法となるが,医師の手により1 ∼2回の操作で1週間以内に完了すべきであ る.  MRIで中等度以上のヘルニアがあったり, 強痛が2週以上持続すれば,各種神経ブロッ クにきりかえる.多量の液体(仙骨硬膜外ブ ロック:生食8cc+0.5%リドカイン8cc.椎 の滑走性mobilityを高めることを主たる目的 と す る.thrust以 外 のmanual therapyは 理 学療法士が行うが,筋・神経・椎間関節・椎 間板などの正常なmobilityを回復することが 主眼であり,他の理学療法との組み合わせで 慢性期腰痛に対処していく. 文  献 1) 伊藤不二夫.カイロプラクティック.産婦人科 シリーズ 34.東京:南江堂;1983:31–44. 2) 伊藤不二夫.関節モビリゼーションの神経学的 背景.理療 . 1984; 13: 23–30. 3) 伊藤不二夫.腰痛に対するマニピュレーション 法.ペインクリニック . 1986; 7: 302–312. 4) 伊藤不二夫.スポーツによる腰痛とマニピュ レーションの実際.臨床スポーツ医学 . 1986; 3: 787–797. 5) 高橋長雄編.腰痛・腰下肢痛の保存療法 8. マニ ピュレーション.東京:南江堂;1991. 6) 伊藤不二夫.腰痛に対する力学的治療法の適応 と臨床考察.理学診療 . 1993; 4: 66–71. 7) 伊藤不二夫.腰痛に対する力学的徒手治療法. 日本腰痛会誌 . 1995; 1: 57–66. 8) 伊藤不二夫.脊椎徒手治療法.脊椎脊髄 . 2000; 13: 606–613. *         *         *

図 1 spinal manual therapyの分類
図 2 急性腰痛のmanipulation

参照

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