ApplicationNote Vol.1 BioStation ID
Time-Lapse Analysis of Apototic Cells by FRET-based indicator
蛍光タンパク質FRETプローブを用いたアポトーシスのタイムラプス解析
サンプル提供:理化学研究所脳科学研究センター 宮脇敦先生
はじめに
Fluorescence Resonance Energy Transfer (FRET) を応用することにより、分子間相互作用やタンパク質の構造変化 など様々な生体分子の挙動を定量的に可視化することができる。特に、Green Fluorescent Protein (GFP)に代表され る蛍光タンパク質を用いた FRET センサーを用いることにより、Ca2+濃度やタンパク質のリン酸化、プロテアーゼの活 性化などを生細胞中でリアルタイムに検出することが可能である。
本報では、リアルタイムイメージアナライザーBioStation ID と、アポトーシス検出用 FRET プローブである、SCAT3.1 を用い、生体組織が形成、成長する上で重要な役割を果たしているプログラミング細胞死(アポトーシス)の蛍光 Time-Lapse Imaging と定量解析を行った。
アポトーシスとは
プログラミング細胞死(アポトーシス)は生体組織が一定の秩序を保ちながら形成、成長していく上で重要なイベント であることが知られている。細胞がアポトーシスを誘発する過程において重要な役割を果たしているのが、Caspase ファミリーの活性化である。Precursor form として発現した Caspase は上流の酵素により切断されて活性型 Caspase となる。Caspase-3 はこのシグナル伝達の下流に位置し、上流の Caspase によって活性化された後に、下流の様々 なターゲットタンパク質を切断し、最終的にアポトーシスが誘導される。
SCAT3.1 FRET プローブ
活性型 Caspase-3 用 FRET プローブである SCAT3.1 は、蛍光ドナー(ECFP)と蛍光アクセプター(Venus)とを Caspase-3 の基質となるプロテアーゼ認識配列を含むリンカーでつないだアポトーシスセンサーである。通常、 SCAT3.1 を ECFP の励起波長付近である 435nm で励起した場合、ECFP から Venus への FRET が起こり、Venus の 蛍光である 530nm の蛍光が検出される。しかし、活性型 Caspase-3 によりリンカーペプチドが切断されると、ECFP と Venus が切り離され FRET が解消されることにより、ECFP の蛍光である 475nm 付近の蛍光が観察される(Fig.1)。こ の原理を利用して、アポトーシス誘導に伴う Caspase-3 の活性化を 530nm と 475nm の蛍光強度の比より算出するこ とが出来る。
Cleaved by activated caspase Cleavage site ECFP Venus
FRET
435nm 530nm ECFP Venus 435nm 475nm実験内容
使用した試薬、機器
細胞株:HeLa 細胞
Lipofectamine 2000 (Invitrogen)、anti-Fas monoclonal antibody (Ch-11, Medical Biological Laboratory, Japan)、 Hanks’ balanced salt solution buffer (Gibco)、BioStationID (GE Healthcare Bio-Sciences)
Cell culture and transfection
SCAT3.1 DNA は Lipofectamine 2000 を用いて HeLa 細胞にトランスフェクションした。アポトーシス誘導は、100ng/ml anti-Fas monoclonal antibody と 10ug/ml cyclohexamid を培地に添加して実施した。
Imaging
トランスフェクション後、35mmガラスボトムディッシュを用いて 2 日間培養し、培地をHanks’ balanced salt solution bufferへ置換し、Imagingを行った。37℃でプレインキュベートされた、BioStationIDのCO2チャンバーに 35mmデッシュ
をセットし、タイムラプス測定を開始した。開始後、490sec後に、100ng/ml anti-Fas monoclonal antibody / 10ug/ml cyclohexamid添加によるアポトーシス誘導を行った。 FRET イメージングの測定条件は以下の通り。 ・対物レンズ:40 倍(NA0.8) ・2min 毎 4hr、5 視野のタイムラプス測定 ・FL1:Ex=435nm/Em=475nm FL2:Ex=435nm/Em=530nm Ph:位相差 結果 35mm デッシュ中 5 つのポイントを、40 倍の対物レンズを用いて、2 分毎のタイムラプス測定を行った。そのうちの視 野 1 に関して 1hr26min から 1hr40min までの蛍光及び位相差イメージを Fig.2 に示す。矢印で示した細胞において、 1hr32min 付近で、Venus に由来する赤色の蛍光強度が減少し、ECFP に由来する青色の蛍光強度が上昇している のが確認された。また、その約 4 分後において細胞自身がアポトーシスを起こしている様子が、蛍光及び位相差像よ り確認された。
Fluorescence
Phase-contrast
1hr26min 1hr28min 1hr30min 1hr32min
1hr34min 1hr36min 1hr38min 1hr40min
1hr26min 1hr28min 1hr30min 1hr32min
1hr34min 1hr36min 1hr38min 1hr40min
Fluorescence
1hr26min 1hr28min 1hr30min 1hr32min
1hr34min 1hr36min 1hr38min 1hr40min
Phase-contrast
1hr26min 1hr28min 1hr30min 1hr32min
1hr34min 1hr36min 1hr38min 1hr40min
Fig.2 BioStation ID で取得したタイムラプスイメージ (上段)蛍光像:Venus(赤)、ECFP(青)、 (下段)位相差像
また観察された FRET 変化及び形態変化を定量的に評価するために、IN Cell Investigator ソフトウェアを用いて解析 を行った。まず、Fig.3A に示すように、SCAT3.1 を発現した HeLa 細胞を認識させた。認識したオブジェクトに関して、 経時的にトラッキングを行い、細胞毎の時間変化を定量した。Fig.3B には視野 1 における、4hr の間の各細胞の経時 的な動きを示す。
次に、各細胞における FRET 変化を Venus/ECFP の蛍光強度比の変化としてプロットした(Fig.4A)。これにより、細胞 毎の Caspase-3 の活性化のタイミングの違いを明確に可視化することができた。均一な条件でのアッセイにもかか わらず、細胞 1 と細胞 4 では、Caspase-3 の活性化に 3hr 以上の時間差が生じていることが解る。
最後に、細胞 3 において Caspase-3 の活性化に伴う細胞の形態変化(Form Factor:真円率、Cell Area:面積)をプロ ットし、それぞれの時間的な相関を確認した(Fig.4B)。この結果より、細胞 3 においては、Caspase-3 が活性化してか ら約 4min 後にアポトーシスによる顕著な形態変化が生じていることが解った。また、Venus/ECFP のレシオイメージと 照らし合わせることにより、定量解析により得られた経時的な値の変化と細胞のイメージ変化との相関を明確に確認 することが出来た(Fig.5)。
Fig.3 IN Cell Investigator による細胞認識 A.(左)位相差と蛍光イメージのオーバーレイ、(右)蛍光イメージから の細胞認識 B.細胞毎のトラッキング解析(二次元表面上の細胞の動き)
1
2
3
4
5
Scatter Plot Ch 2, Pos X - pixel 0 0 0 0 0 180 180 180 180 180 360 360 360 360 360 540 540 540 540 540 720 720 720 720 720 900 900 900 900 900 1080 1080 1080 1080 1260 1260 1440 1620 1620 1800 2160 2520 2700 3780 4320 4860 5040 5220 5940 6120 6660 6840 7020 7200 7560 7740 9000 9360 9360 9540 9540 9720 9720 9900 10080 10080 10440 10620 11520 12240 12420 12420 12600 12780 12960 13140 13140 13500 13680 13860 14040 14220 1440014580 14760 15480 15660 15840 15840 16020 16380 16380 17460 17640 18360 18900 19620 19800 200 300 400 500 600 0 100 200 300 400 500 Pos Y -pix el Pos X-pixel1
2
3
4
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Scatter Plot Ch 2, Pos X - pixel 0 0 0 0 0 180 180 180 180 180 360 360 360 360 360 540 540 540 540 540 720 720 720 720 720 900 900 900 900 900 1080 1080 1080 1080 1260 1260 1440 1620 1620 1800 2160 2520 2700 3780 4320 4860 5040 5220 5940 6120 6660 6840 7020 7200 7560 7740 9000 9360 9360 9540 9540 9720 9720 9900 10080 10080 10440 10620 11520 12240 12420 12420 12600 12780 12960 13140 13140 13500 13680 13860 14040 14220 1440014580 14760 15480 15660 15840 15840 16020 16380 16380 17460 17640 18360 18900 19620 19800 200 300 400 500 600 0 100 200 300 400 5001
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Scatter Plot Ch 2, Pos X - pixel 0 0 0 0 0 180 180 180 180 180 360 360 360 360 360 540 540 540 540 540 720 720 720 720 720 900 900 900 900 900 1080 1080 1080 1080 1260 1260 1440 1620 1620 1800 2160 2520 2700 3780 4320 4860 5040 5220 5940 6120 6660 6840 7020 7200 7560 7740 9000 9360 9360 9540 9540 9720 9720 9900 10080 10080 10440 10620 11520 12240 12420 12420 12600 12780 12960 13140 13140 13500 13680 13860 14040 14220 1440014580 14760 15480 15660 15840 15840 16020 16380 16380 17460 17640 18360 18900 19620 19800 200 300 400 500 600 0 100 200 300 400 500 Scatter Plot Ch 2, Pos X - pixel 0 0 0 0 0 180 180 180 180 180 360 360 360 360 360 540 540 540 540 540 720 720 720 720 720 900 900 900 900 900 1080 1080 1080 1080 1260 1260 1440 1620 1620 1800 2160 2520 2700 3780 4320 4860 5040 5220 5940 6120 6660 6840 7020 7200 7560 7740 9000 9360 9360 9540 9540 9720 9720 9900 10080 10080 10440 10620 11520 12240 12420 12420 12600 12780 12960 13140 13140 13500 13680 13860 14040 14220 1440014580 14760 15480 15660 15840 15840 16020 16380 16380 17460 17640 18360 18900 19620 19800 200 300 400 500 600 0 100 200 300 400 500 Pos Y -pix el Pos X-pixelB
A
Detection of Cell Area
1 2 3 4 5 1 2 3 4 5
Scatter Plot 0 2500 5000 7500 10000 12500 15000 17500 20000 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6 1.8 2
No.1
No.2
No.3
NO.4
No.5
Ve nu s/ ECFP Inte ns ity Ratio Fig.4 FRET 効率及び細胞形態の経時変化A. 細胞毎の FRET の経時変化 B. No3 細胞の FRET 変化と形態変化の相関
Time (sec)
Dose apply (480sec) Time (Sec)
Scatter Plot
A
B
Line Chart
Line Chart
Line Chart0.27 0.4 0.5 0.62 0.74 0.86 0.97 4500 7000 9600 12000 14700 17300 20000 0.4 0.7 1.04 1.4 1.7 2.03 2.36 0 2500 5000 7500 10000 12500 15000 17500 20000
Cell No.3
Venus/ECFP Intensity Ratio
Cell Form Factor Cell Area
Dose apply (480sec) Time (Sec)
Cell No.3
Venus/ECFP Intensity Ratio
Cell Form Factor
Line Chart 0.27 0.4 0.5 0.62 0.74 0.86 0.97 4500 7000 9600 12000 14700 17300 20000 0.4 0.7 1.04 1.4 1.7 2.03 2.36 0 2500 5000 7500 10000 12500 15000 17500 20000 Cell Area
Line Chart
Cell No.3
Venus/ECFP Intensity Ratio
Cell Form Factor 0.27
0.4 0.5 0.62 0.74 0.86 0.97 4500 7000 9600 12000 14700 17300 20000 0.4 0.7 1.04 1.4 1.7 2.03 2.36 0 2500 5000 7500 10000 12500 15000 17500 20000 Cell Area
Dose apply (480sec) Time (Sec)
Fig.5 FRET 変化と細胞形態変化の時間差および FRET の蛍光レシオイメージ 赤ライン:Cell Area、緑ライン:Cell Form Factor、青ライン:FRET レシオ
まとめ
FRET プローブ SCAT3.1 と BioStation ID を組み合わせることにより、アポトーシスの経時的な誘発を、様々なパラメ ーターを用いてより定量的に評価することが可能であることが示唆された。 BioStation ID は生細胞の時間に依存した種々の変化を、細胞毎に定量的に評価することが可能なシステムである。 また、FRET に限らず蛍光タンパク質プローブは、国内外の研究グループが精力的に開発している。 本実験の結果は、それら蛍光タンパク質プローブと BioStationID を組み合わせることにより、細胞に起こる経時的な 現象の変化をより定量的にかつ簡便に評価できる可能性が大きく広がることが示唆された。 参考文献
1) Takeharu Nagai and Atsushi Miyawaki, BBRC. 319, (2004) 72-77
A high-throughput method for development of FRET-based indicators for proteolysis 2) Kiwamu Takemoto et.al. JCB. 60, Number 2, (2003) 235-243