中 国 少 数 民 族 地 域 に お け る 地 下 資 源 開 発 と 地 域 社 会 の 変 動
― 内 モ ン ゴ ル 自 治 区 炭 鉱 都 市 ホ ー リ ン ゴ ル 市 の 建 設 過 程 を 通 し て ― 包 宝 柱 博 士 (学 術 ) 滋 賀 県 立 大 学 大 学 院 人 間 文 化 学 部 地 域 文 化 学 専 攻 2013 年 9 月2
目 次
序 章 本 研 究 の 問 題 意 識 と 位 置 付 け ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 9 本 研 究 の 問 題 意 識 と 研 究 の 背 景 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 9 先 行 研 究 と 本 研 究 の 位 置 付 け ・・・・・・・ ・・・・・・・・ ・・ ・・ ・ 16 研 究 対 象 地 域 の 設 定 と 研 究 方 法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・ 23 本 論 の 構 成 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 25 第 一 章 現 代 中 国 少 数 民 族 地 域 に お け る 資 源 開 発 の 歴 史 的 経 緯・・・・・・ 28 は じ め に ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 28 1 中 国 少 数 民 族 地 域 に お け る 資 源 開 発 政 策 ・・・・・・・・・・・・・・ 29 1- 1 中 国 に お け る 少 数 民 族 地 域 の 戦 略 的 意 義 ・・・・・・・・・・・ 29 1- 2 少 数 民 族 地 域 に お け る 資 源 開 発 政 策 ・・・・・・・・・・・・・ 32 2 内 モ ン ゴ ル 自 治 区 に お け る 資 源 開 発 の 経 緯・・・・・・・・・・・・・ 40 2- 1 中 国 に お け る 内 モ ン ゴ ル 自 治 区 の 位 置 付 け ・・・・・・・・・・ 40 2- 2 「 草 原 鋼 城 」― 包 頭 市 の 設 立 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 43 2- 3 内 モ ン ゴ ル 初 の 炭 鉱 都 市 ― 烏 海 市 の 設 立 ・・・・・・・・・・・ 47 お わ り に ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 49 第 二 章 生 産 建 設 兵 団 と 炭 鉱 都 市 ホ ー リ ン ゴ ル 市 の 建 設・・・・・・・・・ 51 は じ め に ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 51 1 生 産 建 設 兵 団 設 立 の 歴 史 的 背 景 と そ の 規 模・・・・・・・・・・・・・ 52 1- 1 新 疆 生 産 建 設 兵 団 設 立 の 歴 史 的 背 景 ・・・・・・・・・・・・・ 52 1- 2 生 産 建 設 兵 団 の 全 国 的 な 広 が り ・・・・・・・・・・・・・・・ 55 2 内 モ ン ゴ ル 生 産 建 設 兵 団 設 立 の 背 景 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 59 3 生 産 建 設 兵 団 に よ る 炭 鉱 開 発 と ホ ー リ ン ゴ ル 市 の 設 立 ・・・・・・・ 62 3- 1 ホ ー リ ン ゴ ル 市 の 概 況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・ 62 3- 2 生 産 建 設 兵 団 に よ る 炭 鉱 開 発 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 66 3- 3 ホ ー リ ン ゴ ル 市 の 設 置 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・ 69 お わ り に ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 72 第 三 章 炭 鉱 都 市 ホ ー リ ン ゴ ル 市 の 建 設 過 程 に お け る 地 方 行 政 の 再 編・・・ 74 は じ め に ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 743 1 「 ジ ャ ロ ー ド 旗 北 部 」と い う 地 域 社 会 ・・・・・・・・・・・・・・・ 76 1- 1 自 然 環 境 か ら み た ジ ャ ロ ー ド 旗 の 特 徴 ・・・・・・・・・・・・ 76 1- 2 ジ ャ ロ ー ド 旗 北 部 地 域 社 会 の 歴 史 と そ の 特 徴 ・・・・・・・・・ 79 2 炭 鉱 都 市 ホ ー リ ン ゴ ル 市 の 建 設 と 地 方 政 府 の 攻 防 ・・・・・・・・・ 88 2- 1 ジ ャ ロ ー ド 旗 政 府 に よ る「 牧 区 建 設 弁 公 室 」の 設 置・・・・・・ 88 2- 2 ア ル ク ン ド レ ン ・ ソ ム の 形 成 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 93 2- 3 ホ ー リ ン ゴ ル ・ ソ ム の 形 成 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 100 お わ り に ・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 106 第 四 章 炭 鉱 都 市 ホ ー リ ン ゴ ル 市 の 建 設 過 程 に お け る 地 域 社 会 の 変 貌・・ 108 は じ め に ・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 108 1 炭 鉱 開 発 に よ っ て 形 成 さ れ た バ ヤ ン オ ボ ー ト 村 と そ の 概 況・・・・・・ 110 1- 1 バ ヤ ン オ ボ ー ト 村 の 形 成 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 110 1- 2 バ ヤ ン オ ボ ー ト 村 の 概 況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 111 1- 3 ア ム ゴ ラ ン 村 の 形 成 と 概 況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 113 2 バ ヤ ン オ ボ ー ト 村 の 実 態・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 115 3 バ ヤ ン オ ボ ー ト 村 の 人 口 動 態 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 117 3- 1 人 口 の 変 化 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 117 3- 2 出 稼 ぎ 者 の 状 況 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 118 4 婚 姻 関 係 に 見 る 村 の ネ ッ ト ワ ー ク・・・・・・・・・・・・・・・・・ 120 5 ホ ー リ ン ゴ ル 炭 鉱 の 開 発 に よ る バ ヤ ン オ ボ ー ト 村 の 変 貌・・・・・・・ 122 5- 1 バ ヤ ン オ ボ ー ト 村 の 生 業 変 化 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 122 5- 2 家 畜 の 構 成 か ら み る 村 の 変 貌 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 126 6 バ ヤ ン オ ボ ー ト 村 に お け る 自 然 環 境 の 変 化・・・・・・・・・・・・・ 130 6- 1 「 砂 利 採 掘 場 」の 設 立 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 130 6- 2 自 然 環 境 の 変 化 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 131 お わ り に ・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 133 第 五 章 牧 草 地 紛 争 か ら み る 地 下 資 源 開 発 ・・・・・・・・・・・・・・・ 135 は じ め に ・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 135 1 炭 鉱 の 探 査 時 期 に お け る 漢 族 と モ ン ゴ ル 族 の 対 立・・・・・・・・・・ 136 2 炭 鉱 都 市 ホ ー リ ン ゴ ル 市 建 設 前 後 に お け る 牧 草 地 紛 争・・・・・・・・ 138 2- 1 ホ ー リ ン ゴ ル 市 建 設 前 の 牧 草 地 紛 争 ・・・・・・・・・・・・・ 138 2- 2 「 石 採 掘 場 」の 設 立 に よ る 不 和 ・・・・・・・・・・・・・・・ 141 3 炭 鉱 都 市 ホ ー リ ン ゴ ル 市 の 膨 張 に よ る 近 年 の 牧 草 地 の 動 向・・・・・ 142
4 3- 1 「 霍 煤 希 望 小 学 校 」の 設 立 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 142 3- 2 近 年 の ホ ー リ ン ゴ ル 市 周 辺 に お け る 牧 草 地 紛 争・・・・・・・・ 143 お わ り に ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 146 第 六 章 地 下 資 源 開 発 に よ る 環 境 汚 染 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 148 は じ め に ・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 148 1 地 下 資 源 開 発 に よ る 人 口 増 加 と 経 済 成 長 ・・・・・・・・・・・・・ 148 1- 1 炭 鉱 開 発 に よ る 人 口 増 加 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 148 1- 2 炭 鉱 開 発 に よ る 経 済 成 長 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 150 2 地 下 資 源 開 発 に よ る 環 境 問 題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 152 2- 1 家 畜 頭 数 の 変 化 と そ の 原 因 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 152 2- 2 環 境 汚 染 の 実 態 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 155 2- 3 被 害 状 況 に 関 す る 政 府 の 説 明 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 159 お わ り に ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 162 終 章 結 論 と 今 後 の 展 望 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 163 謝 辞 ・・ ・・ ・・ ・・ ・・・ ・・ ・・ ・・ ・ ・・・ ・・ ・・ ・・ ・ ・・・ ・ 167 参 考 文 献 ・・・・・・ ・・・・・・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・・・ 168
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表 ・ 図 ・ 写 真 一 覧
表 1- 1 中 国 の 各 地 域 に お け る 主 要 な 地 下 資 源 の 埋 蔵 量 と 地 域 分 布 ( 2010 年 )・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 31 表 2- 1 中 国 全 土 に お け る 生 産 建 設 兵 団 の 建 設 状 況・・・・・・・・・・ 57 表 2- 2 内 モ ン ゴ ル 生 産 建 設 兵 団 の 状 況 ・・・・・・・・・・・・・・・ 61 表 3- 1 ジ ャ ロ ー ド 旗 の 気 侯 状 況 の 対 照( 1987~ 2009 年 )・・・・・・・ 78 表 3- 2 ジ ャ ロ ー ド 旗 北 部 四 つ の 人 民 公 社 の 基 本 状 況( 1981 年 )・・・・ 81 表 3- 3 ジ ャ ロ ー ド 旗 北 部 地 域 生 産 大 隊 の 基 本 状 況( 1981 年 )・・・・・ 82 表 3- 4 ア ル ク ン ド レ ン・ソ ム に 配 置 さ れ た 各 村 の 基 本 状 況( 1984 年 )・ 95 表 3- 5 ホ ー リ ン ゴ ル・ソ ム の 各 村 の 基 本 状 況・・・・・・・・・・・・ 101 表 4- 1 バ ヤ ン オ ボ ー ト 村 の 各 戸 の 基 本 状 況・・・・・・・・・・・・・ 115 表 4- 2 バ ヤ ン オ ボ ー ト 村 の 出 稼 ぎ 世 帯 の 基 本 状 況・・・・・・・・・・ 119 表 5- 1 ハ ラ ガ ー ト 村 に お け る 企 業 に よ る 牧 草 地 の 占 用 状 況・・・・・・ 144 図 0- 0 中 国 の お も な 民 族 分 布 図 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 8 図 0- 1 中 国 少 数 民 族 自 治 区 の 2006 年 と 2010 年 の GDP の 比 較・・・・・ 10 図 0- 2 中 国 の 各 省・市・自 治 区 に お け る GDP の 比 較( 2010 年 )・・・・ 11 図 0- 3 中 国 の 中 の 内 モ ン ゴ ル 自 治 区 の 位 置 ・・・・・・・・・・・・・ 14 図 2- 1 中 国 の 中 の ホ ー リ ン ゴ ル 市 の 位 置 ・・・・・・・・・・・・・・ 63 図 2- 2 内 モ ン ゴ ル の 中 の ホ ー リ ン ゴ ル 市 の 位 置・・・・・・・・・・・ 63 図 2- 3 ホ ー リ ン ゴ ル 市 全 体 図 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 64 図 2- 4 通 遼 市 の 中 の ジ ャ ロ ー ド 旗 の 位 置 ・・・・・・・・・・・・・・ 65 図 2- 5 内 モ ン ゴ ル 自 治 区 ジ ャ ロ ー ド 旗 北 部 地 図・・・・・・・・・・・ 65 図 3- 1 内 モ ン ゴ ル 自 治 区 の 中 の ジ ャ ロ ー ド 旗 の 位 置・・・・・・・・・ 77 図 3- 2 ジ ャ ロ ー ド 旗 北 部 地 域( 1984 年 以 前 )・・・・・・・・・・・・ 83 図 3- 3 ア ル ク ン ド レ ン ・ ソ ム の 形 成 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 97 図 3- 4 ジ ャ ロ ー ド 旗 北 部 ア ル ク ン ド レ ン・ソ ム の 形 成・・・・・・・・ 99 図 3- 5 ホ ー リ ン ゴ ル ・ ソ ム の 形 成 ・ ・ ・ ・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・ 102 図 3- 6 ジ ャ ロ ー ド 旗 北 部 ホ ー リ ン ゴ ル・ソ ム の 形 成・・・・・・・・・ 103 図 4- 1 ウ ラ ン ハ ダ・ソ ム チ ャ ガ ン エ ン ゲ ル 村 か ら 形 成 さ れ た 二 村・・・ 111 図 4- 2 ジ ャ ロ ー ド 旗 の 中 の バ ヤ ン オ ボ ー ト 村 の 位 置・・・・・・・・・ 1126 図 4- 3 バ ヤ ン オ ボ ー ト 村 の 人 口 と 戸 数 の 推 移 ・・・・・・・・・・・ 117 図 4- 4 バ ヤ ン オ ボ ー ト 村 の 出 稼 ぎ 者 世 帯 と 牧 民 世 帯 の 比 較・・・・・・ 118 図 4- 5 バ ヤ ン オ ボ ー ト 村 の 婚 姻 関 係 図・・・・・・・・・・・・・・・ 121 図 4- 6 チ ャ ガ ン エ ン ゲ ル 生 産 大 隊 の 牧 草 地 利 用 図 (1986年 以 前 ) ・・・・ 123 図 4- 7 バ ヤ ン オ ボ ー ト 村 の 牧 草 地 利 用 図 (1986以 後 ) ・・・・・・・・・ 123 図 4- 8 バ ヤ ン オ ボ ー ト 村 に お け る 馬 の 頭 数 推 移・・・・・・・・・・・ 127 図 4- 9 バ ヤ ン オ ボ ー ト 村 に お け る 牛 の 頭 数 推 移・・・・・・・・・・・ 127 図 4- 10 バ ヤ ン オ ボ ー ト 村 に お け る 羊 の 頭 数 推 移・・・・・・・・・・ 128 図 4- 11 バ ヤ ン オ ボ ー ト 村 に お け る ヤ ギ の 頭 数 推 移・・・・・・・・・ 128 図 4- 12 バ ヤ ン オ ボ ー ト 村 の 家 畜 頭 数 合 計 推 移・・・・・・・・・・・ 129 図 6- 1 ホ ー リ ン ゴ ル 市 に お け る 人 口 推 移・・・・・・・・・・・・・・ 149 図 6 - 2 ホ ー リ ン ゴ ル 市 に お け る 都 市 住 民 と 農 牧 民 の 純 収 入 の 推 移 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 151 図 6- 3 ウ ン ド ル デ ン ジ 村 の 家 畜 頭 数 の 変 化・・・・・・・・・・・・・ 152 図 6- 4 ナ ラ ン ボ ラ ガ 村 の 家 畜 頭 数 の 変 化・・・・・・・・・・・・・・ 152 図 6- 5 メ ン ギ ル ト 村 の 家 畜 頭 数 の 変 化・・・・・・・・・・・・・・・ 153 図 6- 6 ウ ン ド ル デ ン ジ 村 の 家 畜 被 害 の 統 計・・・・・・・・・・・・・ 154 図 6- 7 ナ ラ ン ボ ラ ガ 村 の 家 畜 被 害 の 統 計・・・・・・・・・・・・・・ 154 写 真 4- 1 バ ヤ ン オ ボ ー ト 村・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 125 写 真 4- 2 バ ヤ ン オ ボ ー ト 村 か ら み た ホ ー リ ン ゴ ル 市・・・・・・・・・ 125 写 真 4- 3 洪 水 に よ っ て で き た ガ リ ー ・・・・・・・・・・ ・・ ・・・ 131 写 真 4- 4 バ ヤ ン オ ボ ー ト 村 の オ ボ ー・・・・・・・・・・・・・・・・ 131 写 真 4- 5 炭 鉱 都 市 ホ ー リ ン ゴ ル 市・・・・・・・・・・・・・・・・・ 132 写 真 4- 6 ボ タ 山 と 石 炭 を 列 車 に 積 む 様 子・・・・・・・・・・・・・・ 132 写 真 5- 1 「 石 採 掘 場 」の 跡 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 143 写 真 5- 2 廃 校 と な っ た「 霍 煤 希 望 小 学 校 」・・・・・・・・・・・・・ 143 写 真 6- 1 炭 鉱 開 発 に よ る ボ タ 山 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 153 写 真 6- 2 健 康 的 な 家 畜 の 歯 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 155 写 真 6- 3 異 常 が 起 こ っ た 家 畜 の 歯・・・・・・・・・・・・・・・・・ 155 写 真 6- 4 炭 鉱 開 発 現 場 の 様 子 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 156 写 真 6- 5 ア ル ミ ニ ウ ム 工 業 付 近 の 排 水 口・・・・・・・・・・・・・・ 156 写 真 6- 6 ア ル ミ ニ ウ ム 工 業 付 近 に 放 牧 す る 家 畜・・・・・・・・・・・ 158 写 真 6- 7 積 み 出 さ れ る 石 炭 の 様 子・・・・・・・・・・・・・・・・・ 158
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添 付 資 料 一 覧
添 付 資 料 1 ホ ー リ ン ゴ ル 炭 鉱 の 開 発 に 対 す る 周 恩 来 総 理 の 指 示 文 書 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 179 添 付 資 料 2 ホ ー リ ン ゴ ル 炭 鉱 の 開 発 に 関 す る 国 家 計 画 委 員 会 の 文 書 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 180 添 付 資 料 3 『 人 民 日 報 』 に 掲 載 さ れ た 雲 曙 碧 な ど の 内 モ ン ゴ ル 選 出 の 代 表 に よ る ホ ー リ ン ゴ ル 炭 鉱 の 開 発 と 自 主 権 を 主 張 し た 意 見・・181 添 付 資 料 4 炭 鉱 開 発 に つ い て 『 人 民 日 報 』 に 掲 載 さ れ た ホ ー リ ン ゴ ル 炭 鉱 の 反 論 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 182 添 付 資 料 5 ホ ー リ ン ゴ ル 炭 鉱 に お け る 第 四 十 四 支 隊 の 廃 止 に 関 す る 国 務 院 の 返 答 文 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 183 添 付 資 料 6 ホ ー リ ン ゴ ル 炭 鉱 が 占 有 し た 牧 草 地 の 補 償 金 に 関 す る ジ ャ ロ ー ド 旗 政 府 の 報 告 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 184 添 付 資 料 7 ホ ー リ ン ゴ ル 炭 鉱 、 ウ ラ ン ハ ダ ・ ソ ム と ホ ル チ ン 右 翼 中 旗 の 土 地 紛 争 に 関 す る 報 告 書 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 187 添 付 資 料 8 ホ ー リ ン ゴ ル 市 の 成 立 に 関 す る 内 モ ン ゴ ル 自 治 区 政 府 の 通 知 書 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 190 添 付 資 料 9 新 設 さ れ た ホ ー リ ン ゴ ル ・ ソ ム 各 村 の 辺 境 線 の 決 定 に 関 す る ソ ム 政 府 の 文 書 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 191 添 付 資 料 10 辺 境 紛 争 に 対 す る ジ ャ ロ ー ド 旗 政 府 の 返 答 文・・・・・・ 197 添 付 資 料 11 環 境 汚 染 に よ る 家 畜 の 被 害 状 況 を 訴 え た 牧 民 の 拇 印 入 り の 統 計 資 料 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 200 添 付 資 料 12 環 境 汚 染 に 対 す る 通 遼 市 政 府 の 返 答 文 ・・・・・・・・・ 2018
図
0
-
0
中国のおもな民族
分布図
出典:
『民族の世界地図』文藝春秋
、
平成
12
年
より
筆者作成
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序 章 本 研 究 の 問 題 意 識 と 位 置 付 け
本 研 究 の 問 題 意 識 と 研 究 の 背 景 本 研 究 は 、 地 下 資 源 開 発 が 進 む 中 国 の 少 数 民 族 地 域 で あ る 内 モ ン ゴ ル 自 治 区 を 事 例 に 、 地 域 社 会 が ど の よ う に 変 動 し て い る か を 明 ら か に す る も の で あ る 。 本 研 究 の 背 景 を 知 る た め に ま ず 、 2011 年 の 5 月 11 日 に 起 こ っ た あ る 象 徴 的 な 事 件 を と り あ げ た い 。 内 モ ン ゴ ル 自 治 区 シ リ ン ゴ ル ( 錫 林 郭 勒 ) 盟 の 西 ウ ジ ュ ム チ ン ( 烏 珠 穆 沁 ) 旗1は 、炭 鉱 開 発 が 急 速 に 進 ん で い る 地 域 で あ る 。そ こ で あ る 遊 牧 民 1 人 が 石 炭 を 積 ん だ 漢 族 が 運 転 す る ト ラ ッ ク に ひ き 殺 さ れ る 、 と い う 事 件 が 起 こ っ た 。 こ の 事 件 は 、 あ る 牧 民 が 牧 草 地 を 昼 夜 問 わ ず 無 断 で 走 行 す る 漢 族 の 石 炭 運 搬 ト ラ ッ ク を 阻 止 し よ う と し 、 ト ラ ッ ク の 前 に 立 ち ふ さ が っ た 。 と こ ろ が 、 漢 族 の 運 転 手 は そ の モ ン ゴ ル 人 牧 民 を そ の ま ま ひ き 殺 し て 逃 げ た 、 と い う も の で あ る 。 こ の 事 件 を き っ か け に 、 内 モ ン ゴ ル の 各 地 で モ ン ゴ ル 人 に よ る 大 規 模 な 抗 議 活 動 が 相 次 い で 発 生 し た 。 さ ら に 、 こ の デ モ は 内 モ ン ゴ ル 全 土 に ま で 広 が っ た だ け で な く 、 モ ン ゴ ル 国 を は じ め 、 世 界 各 国 で モ ン ゴ ル 人 に よ る 中 国 政 府 に 対 す る 抗 議 活 動 が 行 わ れ た 。 こ れ を 受 け て 、 中 国 政 府 は デ モ の 鎮 静 化 を は か る た め 、 迅 速 に 動 い た 。 引 き 殺 さ れ た 牧 民 の 遺 族 に 賠 償 金 を 支 払 う こ と や 容 疑 者 の 身 柄 を 拘 束 す る こ と を 発 表 し た 。 内 モ ン ゴ ル 自 治 区 の ト ッ プ で あ る 自 治 区 共 産 党 書 記 の 胡 春 華2は 、事 件 の 発 生 現 場 で あ り 大 規 模 な デ モ が 続 く 西 ウ ジ ュ ム チ ン 旗 に 駆 け つ け 、 デ モ に 参 加 し た 教 員 や 学 生 と の 対 話 を 行 っ た 。 そ し て 、 西 ウ ジ ュ ム チ ン 旗 党 書 記 を 更 迭 し 、 司 法 手 続 き を 経 て 容 疑 者 の 漢 族 運 転 手 に は 死 刑 、 助 手 席 に 同 乗 し て い た 者 に 無 期 懲 役 の 判 決 を そ れ ぞ れ 言 い 渡 し た 。 一 方 で 、 内 モ ン ゴ ル 各 地 に 起 き た モ ン ゴ ル 人 に よ る デ モ に 対 し て 、 多 数 の 警 官 や 武 装 警 察 を 投 入 し 、「 臨 戦 態 勢 」で 臨 ん だ 。特 に 、公 園 や モ ン ゴ ル 族 が 多 く 通 う 学 校 に 対 す る 警 戒 が 強 化 さ れ 、 携 帯 の ネ ッ ト 接 続 も 制 限 さ れ た 。 中 に は 、 一 部 地 域 に お い て 戒 厳 令 が 敷 か れ る 程 で あ っ た 。こ う し て 、モ ン ゴ ル 人 に よ る デ モ が 延 べ 20 1 旗 は モ ン ゴ ル 語 で 「 ホ シ ョ ― 」 と い う 。 清 朝 の 八 旗 制 度 に よ っ て モ ン ゴ ル 人 を 組 織 し た 行 政 単 位 の 一 種 で あ る 。 現 代 中 国 に お い て 、 内 モ ン ゴ ル 自 治 区 の モ ン ゴ ル 族 が 集 中 的 に 居 住 す る 地 域 の み に 使 わ れ て い る も の で 、 中 国 の 「 県 」 に 相 当 す る 行 政 単 位 で あ る 。 2 中 国 共 産 主 義 青 年 団 出 身 の 政 治 家 で あ る 。 2009 年 11 月 に 内 モ ン ゴ ル 自 治 区 党 委 書 記 に 抜 擢 さ れ 、 そ し て 2012 年 1 1 月 に 第 18 回 党 大 会 後 の 中 央 委 員 会 で 、 中 央 政 治 局 委 員 に 選 ば れ た 。 翌 12 月 に 広 東 省 の 党 委 書 記 に 任 命 さ れ た 。10 日 間 に わ た っ て 行 わ れ 、 次 第 に 鎮 静 化 し て い く こ と に な っ た3。 さ て 、 今 回 の デ モ の 原 因 は 単 に ひ き 逃 げ 事 件 に 対 す る 不 満 だ け で は な い 。 そ の 背 景 に は 資 源 開 発 問 題 も 密 接 に 関 係 し て い る 。 こ の よ う に 資 源 開 発 が 民 族 問 題 に ま で 発 展 す る ケ ー ス は 、 ほ か の 少 数 民 族 地 域 で も し ば し ば 見 ら れ る 。 そ の 多 く が 、少 数 民 族 側 が 社 会 的 弱 者 と し て 、マ ジ ョ リ テ ィ 側 か ら 何 ら か の「 搾 取 」 を 受 け て い る と い う 状 況 に あ る の だ 。 内 モ ン ゴ ル の 場 合 、 モ ン ゴ ル 族 が 暮 ら し の 頼 り に し て き た 牧 草 地 が 「 搾 取 」 の 対 象 で あ っ た 、 と 言 え る 。 と に か く 資 源 開 発 ブ ー ム に よ っ て 内 モ ン ゴ ル の 牧 草 地 が 次 々 と 姿 を 消 し て い る 。 本 研 究 で 論 じ る ホ ー リ ン ゴ ル ( 霍 林 郭 勒 ) も そ の 一 例 だ 。 牧 草 地 は 、 牧 畜 を 生 業 の 中 心 と す る モ ン ゴ ル 族 に と っ て 、 生 活 そ の も の で あ る と 言 っ て も 過 言 で は な い 。 つ ま り 、 牧 草 地 を 破 壊 す る 行 為 は 牧 畜 を 営 ん で い る モ ン ゴ ル 牧 民 の 生 存 を 脅 か す も の で あ り 、 彼 ら の 最 低 限 の 権 利 を 否 定 し て い る に 等 し い 。 し か も 、 ひ き 逃 げ に よ っ て 一 人 の モ ン ゴ ル 人 若 者 の 命 ま で 奪 わ れ て い る 。実 は 、こ う し た 資 源 開 発 に よ る「 搾 取 」 行 為 は 、 2011 年 の デ モ が 発 生 す る 以 前 か ら 存 在 し て い た 。 本 研 究 の 動 機 は 、 こ う し た 資 源 開 発 に よ っ て 生 じ る 少 数 民 族 地 域 に お け る 諸 問 題 を 、 学 術 的 に 位 置 づ け る 必 要 性 が あ る と 感 じ た と こ ろ に あ る 。 図 0- 1 中 国 少 数 民 族 自 治 区 の 2006 年 と 2010 年 の GDP の 比 較 出 典 :『 中 国 統 計 年 鑑 2011 年 』 の 電 子 版 を も と に 筆 者 作 成 。 3 『 朝 日 新 聞 』 2011 年 5 月 2 8~ 31 日 、 6 月 3 日 と 『 毎 日 新 聞 』 2011 年 5 月 30 日 な ど 。 0.00 1000.00 2000.00 3000.00 4000.00 5000.00 6000.00 7000.00 8000.00 9000.00 10000.00 11000.00 12000.00 内モンゴル 広 西 新 疆 寧 夏 チベット 2006年 2010年 (億元)
11 少 数 民 族 地 域 に お け る 開 発 の 目 的 は 、資 源 開 発 に よ っ て 豊 か な 生 活 を 実 現 し 、 そ れ に よ っ て 、 少 数 民 族 が 政 府 に 対 す る 抵 抗 や 分 離 独 立 の 思 想 を 撲 滅 さ せ る 狙 い が あ る 、と い う 意 見 が あ る4。し か し 、上 記 の デ モ の 経 緯 か ら も 分 か る よ う に 、 少 数 民 族 地 域 に お け る 資 源 開 発 は 、 結 果 と し て 彼 ら の 生 活 を 豊 か に す る も の で は な く 、 か え っ て 少 数 民 族 の 不 満 や 反 発 を 高 め て い る の で は な い か 、 と 考 え ら れ る 。 図 0- 2 中 国 の 各 省 ・ 市 ・ 自 治 区 に お け る GDP の 比 較 ( 2010 年 ) 出 典 :『 中 国 統 計 年 鑑 2011 年 』 の 電 子 版 を も と に 筆 者 作 成 。 確 か に 、 中 国 経 済 の 急 成 長 に と も な い 、 少 数 民 族 地 域 の 経 済 も 急 成 長 し て い る 。 こ の 点 で は 、 中 国 政 府 が 少 数 民 族 地 域 に 進 め て い る 資 源 開 発 に よ る 効 果 と 言 え る の か も し れ な い 。 図 0- 1 は 中 国 の 五 つ の 少 数 民 族 自 治 区 に お け る 2006 年 と 2010 年 の GDP の 成 長 状 況 を 示 し た も の で あ る 。 図 0- 1 か ら こ れ ら の 少 数 民 族 自 治 区 の GDP が 、 2006 年 に 比 べ る と 2010 年 に は 大 幅 に 増 加 し た こ と を 見 て 取 れ る こ と が で き る 。 し か し 、 こ れ ら の デ ー タ を そ の ま ま 鵜 呑 み に す る こ と は 出 来 な い 。 も し 、 こ の デ ー タ の 通 り 、 少 数 民 族 地 域 に お け る 経 済 が 発 展 し て い る と す る な ら ば 、 な ぜ 西 ウ ジ ュ ム チ ン の 牧 民 は 自 分 の 命 を 捨 て て ま で 、 炭 鉱 開 発 の ト ラ ッ ク の 前 に 立 ち ふ さ が っ た の で あ ろ う か 。 こ の 点 が 大 き な 疑 問 と し て 残 る 。 こ の よ う な 少 数 民 族 地 域 の GDP の 成 長 状 況 を 示 す デ ー タ は 、 中 国 政 府 4 王 柯 ( 1998 ) 55 頁 。 0.00 5000.00 10000.00 15000.00 20000.00 25000.00 30000.00 35000.00 40000.00 45000.00 広 東 江 蘇 山 東 浙 江 河 南 河 北 遼 寧 四 川 上 海 湖 南 湖 北 福 建 北 京 安 徽 内 モ ンゴ ル 黒竜江 陝 西 広 西 江 西 天 津 山 西 吉 林 重 慶 雲 南 新 疆 貴 州 甘 粛 海 南 寧 夏 青 海 チ ベ ット (億元)
12 に よ る 水 増 し が あ り 、 GDP の 上 昇 を デ ー タ で 示 す こ と で 少 数 民 族 の 「 反 発 や 抵 抗 」 を 弱 め よ う と す る ね ら い が あ る 、 と い う 見 解 も あ る5。 ま た 、仮 に こ の 図 0- 1 が 示 す 通 り 少 数 民 族 地 域 の GDP が 急 成 長 し て い た と し て も 、 本 研 究 で 詳 し く 論 じ る が 、 少 数 民 族 地 域 に お け る 資 源 開 発 の ほ と ん ど が 地 方 政 府 と 大 企 業 の 結 託 に よ っ て 行 わ れ て お り 、 そ の 主 役 は 漢 族 と 言 わ ざ る を 得 な い 。 し た が っ て 、 資 源 開 発 に よ る 利 益 が 少 数 民 族 の 人 々 の 利 益 に な っ て い る と は 思 え な い 。 言 い 換 え る な ら ば 、 少 数 民 族 地 域 は 豊 か な エ ネ ル ギ ー 資 源 を 有 し て い る に も か か わ ら ず 、 大 規 模 な 資 源 開 発 に よ る 利 益 を 享 受 で き て い な い の で あ る 。 図 0- 2 は 、 2010 年 の 中 国 各 省 ・ 市 ・ 自 治 区 の GDP の 状 況 を 比 較 し た も の で あ る 。図 0- 2 か ら は 中 国 各 省・市・自 治 区 の 中 で は 、少 数 民 族 が 集 中 的 に 居 住 し て い る 五 つ の 自 治 区 や 地 域 の GDP は 後 ろ か ら 数 え ら れ る 順 位 に 甘 ん じ て い る こ と が 分 か る 。 こ の よ う に 、 私 は 少 数 民 族 地 域 に お け る 資 源 開 発 に 深 く 関 心 を 持 つ よ う に な っ た の は 、少 数 民 族 地 域 は「 地 大 物 博 」( 土 地 は 広 大 、資 源 は 豊 か ) と 言 わ れ て い る に も か か わ ら ず 、 少 数 民 族 の 人 々 は 貧 し い 生 活 を 送 っ て お り 、 豊 か な 資 源 が 生 活 向 上 に 寄 与 し て い な い こ と に 疑 問 を 覚 え た か ら で あ る 。 近 年 、中 国 や イ ン ド な ど の 新 興 国 と 呼 ば れ て い る 国 々 の 経 済 の 急 成 長 に 伴 い 、 資 源 エ ネ ル ギ ー の 需 要 が 急 速 に 拡 大 し 、 世 界 各 地 で 資 源 エ ネ ル ギ ー の 開 発 権 を 獲 得 す る 戦 い が 激 化 し て い る 。 そ の た め 、 中 国 は 隣 国 の 資 源 大 国 で あ る モ ン ゴ ル 国 は も ち ろ ん の こ と 、 ア フ リ カ や 東 南 ア ジ ア の 豊 富 な 資 源 を 有 す る 発 展 途 上 国 に 進 出 し 、 そ こ で 資 源 争 奪 戦 に 乗 り 出 す と 同 時 に 、 資 源 外 交 に も 力 を 入 れ て い る 。 国 内 に お い て は 、少 数 民 族 地 域 に お け る 地 下 資 源 開 発 に 一 層 力 を 入 れ て お り 、 そ の 結 果 、 少 数 民 族 地 域 に お い て 資 源 開 発 の ブ ー ム が 起 こ っ て い る 。 こ の 資 源 開 発 が 形 容 で き な い ほ ど 大 規 模 に 行 わ れ て い る た め 、少 数 民 族 地 域 の 広 い 草 原 、 広 大 な 牧 草 地 が 、 次 々 と 以 前 の 面 影 す ら 分 か ら な く な っ て い る 。 そ れ ほ ど の 近 代 的 な 工 業 団 地 や 都 市 に 変 貌 す る な ど 、 大 き な 社 会 変 動 を 引 き 起 こ し て い る 。 こ う し た 社 会 変 動 は 、 少 数 民 族 社 会 の 在 り 方 を 大 き く 変 え る と 同 時 に 、 今 後 に つ い て も 予 想 で き な い 状 況 と な っ て い る 。 し た が っ て 、 少 数 民 族 地 域 に お け る 資 源 開 発 を 研 究 の 対 象 と し 、 資 源 開 発 に よ っ て 少 数 民 族 社 会 は 如 何 に 変 化 し て い る の か を 示 し 、 少 数 民 族 社 会 の 今 後 を 展 望 す る こ と が 重 要 に な っ て き て い る の で は な か ろ う か 。 で は 、「 開 発 」と は 一 体 何 を 指 す も の で あ ろ う か 。第 二 次 世 界 大 戦 後 、植 民 地 5 小 島 麗 逸 ( 2011) 72 ~ 7 5 頁
13 支 配 か ら 独 立 し た 国 々 に お い て 、「 開 発 独 裁 」 と い う 形 態 で 重 点 的 に 行 わ れ た 。 こ れ ら の 国 々 は 独 立 後 国 家 建 設 や 経 済 開 発 を 行 い 、 新 た な 政 治 思 想 や 開 発 体 制 を 模 索 し た 。特 に 、ア ジ ア 、ア フ リ カ 、ラ テ ン ア メ リ カ な ど の 多 民 族・多 宗 教 ・ 多 文 化 圏 の 国 々 は 多 民 族 を 束 ね て 国 全 体 の 統 合 を は か る た め に 、「 開 発 」は 実 に 都 合 の よ い も の で あ っ た 。 こ の よ う な 開 発 主 義 は 「 工 業 化 の 推 進 を 軸 に 、 個 人 や 家 族 や 地 域 社 会 で は な く 、 国 家 や 民 族 な ど の 利 害 を 最 優 先 さ せ 、 そ の た め に 物 的 人 的 資 源 の 集 中 的 動 員 と 管 理 を 図 ろ う と す る イ デ オ ロ ギ ー 」 で あ る と 言 わ れ て い る6。こ の 種 の「 開 発 」の 目 的 は 国 家 の 統 治 力 を 強 化 し 、経 済 を 成 長 さ せ 、 国 民 の 生 活 を 向 上 さ せ る こ と に あ る 。 し か し 、 結 果 的 に 必 ず し も そ う な っ て い な い 場 合 も 多 く 、 そ れ ら は 現 在 に い た る ま で 多 く の 問 題 を 抱 え た ま ま で あ る 。 中 国 の 場 合 は ど う で あ ろ う か 。多 民 族 国 家 で あ る 中 国 に お い て も 、「 開 発 」は 国 家 の 統 合 を 支 え る 重 要 な 役 割 を 有 し て い る 。 中 華 人 民 共 和 国 建 国 当 初 か ら 、 辺 境 の 少 数 民 族 地 域 が 中 国 の 重 要 な 原 材 料 の 供 給 地 と し て 位 置 づ け ら れ て き た 。 つ ま り 、そ も そ も 少 数 民 族 の 居 住 地 域 は 豊 富 な 地 下 資 源 を 有 し 、「 開 発 」を 行 う う え で 重 要 な 場 所 で あ っ た 。 と こ ろ が 、 少 数 民 族 の 人 々 は 豊 か な 地 下 資 源 の 恩 恵 を 享 受 で き て い た と は 言 い 難 い 。 い っ た い 、 な ぜ 享 受 で き な い で い る の だ ろ う か 。 そ こ に は ど ん な 問 題 が あ る の だ ろ う か 。 そ し て 、 こ の 地 下 資 源 開 発 が 少 数 民 族 地 域 に 如 何 な る 影 響 を 与 え て い る の だ ろ う か 。 こ れ ら の こ と は 、 検 討 す べ き 重 要 な 課 題 で あ る 。 そ こ で 本 研 究 で は 、 ま ず 中 国 政 府 が 少 数 民 族 地 域 に お い て 行 っ て き た 地 下 資 源 開 発 が 、 具 体 的 に ど の よ う に 行 わ れ て い る か を 炭 鉱 都 市 ホ ー リ ン ゴ ル 市 の 事 例 か ら 明 ら か に す る 。 そ う し た う え で 、 地 下 資 源 開 発 が ホ ー リ ン ゴ ル 市 及 び そ の 周 辺 地 域 に ど の よ う な 影 響 を 与 え て い る か を 総 合 的 に 分 析 し て い き た い 。 そ れ と 同 時 に 本 来 牧 畜 ・ 狩 猟 な ど を 営 み な が ら 生 計 を 立 て て き た 少 数 民 族 で あ る モ ン ゴ ル 人 が 地 下 資 源 開 発 に よ っ て 、 そ の 社 会 経 済 的 地 位 が ま す ま す 弱 体 化 し て い く 社 会 構 造 を 明 ら か に し た い 。 た だ し 、 本 研 究 は 中 国 共 産 党 政 権 が 進 め る 地 下 資 源 開 発 政 策 を 一 方 的 に 批 判 し よ う と す る も の で は な い 。 こ こ で は 、 ま ず 地 下 資 源 開 発 が 行 わ れ て い る 当 該 地 域 に お け る 文 献 資 料 、 デ ー タ 資 料 、 聞 き 取 り 調 査 に 基 づ き 、 で き 得 る 限 り 客 観 的 に 論 じ る こ と を 目 的 と し て い る 。 中 国 の 目 覚 ま し い 経 済 成 長 は 世 界 各 国 か ら 注 目 を 集 め て い る 。 そ の よ う な 中 国 の 一 部 と し て 統 合 さ れ て い る 少 数 民 族 の 居 住 地 域 が ど の よ う な 状 況 に あ る の か 。 あ る い は 、 経 済 成 長 を 支 え る た め に 進 め ら れ て い る 資 源 開 発 と は 如 何 な る も の で あ る か 。 こ う し た 問 題 意 識 か ら 、 本 6 末 廣 昭 ( 1998b) 2 頁 。
14 研 究 で は 、 中 国 の 少 数 民 族 地 域 を 対 象 地 域 に 定 め た の だ 。 図 0- 3 中 国 の 中 の 内 モ ン ゴ ル 自 治 区 の 位 置 本 研 究 の 対 象 地 域 は 、 少 数 民 族 地 域 の 中 で も 特 に 内 モ ン ゴ ル 自 治 区 で あ る 。 内 モ ン ゴ ル 自 治 区 は 中 国 の 北 部 辺 境 に 位 置 し ( 図 0- 3 を 参 照 )、 北 部 に ロ シ ア と モ ン ゴ ル 国 に そ れ ぞ れ 隣 接 し て い る 。自 治 区 の 地 形 は 北 東 か ら 南 西 に 細 長 く 、 東 北 部 に 大 興 安 嶺 山 脈 が 南 北 に 横 切 り 、 南 部 に 陰 山 山 脈 と 黄 河 を 境 と し て 高 原 が 広 が っ て い る 。 自 治 区 面 積 は 118 万 3 千 平 方 キ ロ で 、 中 国 で は 新 疆 ウ イ グ ル 自 治 区 、 チ ベ ッ ト 自 治 区 に 次 い で 三 番 目 の 広 さ を 有 し て い る 。 自 治 区 の 総 人 口 は 2010 年 現 在 2472.18 万 人 で 、少 数 民 族 自 治 区 と は い え 漢 族 が 総 人 口 の 78.3% を 占 め て お り 、モ ン ゴ ル 族 は わ ず か 18.0% 弱 を 占 め る に 過 ぎ な い7。し か し 、「 内 モ ン ゴ ル 自 治 区 」 と い う 地 名 か ら も わ か る 通 り 、 モ ン ゴ ル 族 は こ の 地 域 に お け る い わ ゆ る 「 主 体 的 民 族 」 で あ る 。 ま た 、 彼 ら は こ の 地 域 に 早 く か ら 根 を 下 ろ し 、 こ の 地 域 の 自 然 や 資 源 と 共 に 生 き て き た 。 と こ ろ が 、 昨 今 の 資 源 開 発 は 彼 ら に 十 分 な 利 益 分 配 が 行 わ れ て い る と は 言 え な い 状 況 に あ る 。
7 各 地 域 の 経 済 概 況 、 政 策 動 向 お よ び 事 業 環 境 ( 各 論 ) Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 7 7 頁 。
15 内 モ ン ゴ ル 自 治 区 を 対 象 に 研 究 を 行 う 理 由 は 次 の 通 り で あ る 。 第 一 に 、 内 モ ン ゴ ル は 中 国 初 の 少 数 民 族 自 治 区 で あ り 、 少 数 民 族 政 策 を 先 導 す る 場 と し て の 役 割 を 果 た し て き た 点 を あ げ る こ と が で き る 。 資 源 開 発 に 関 し て も 建 国 後 間 も な く 包 頭 に お い て 鉄 鉱 床 が 発 見 さ れ 、 こ れ に 伴 い 建 設 さ れ た 包 頭 市 が 各 少 数 民 族 地 域 に お け る 工 業 化 の モ デ ル 的 な 存 在 と な っ て い る 。 こ の こ と か ら も 、 内 モ ン ゴ ル 自 治 区 は 少 数 民 族 地 域 に お け る 資 源 開 発 政 策 を 先 導 す る 場 で あ る こ と が わ か る 。 第 二 に 、中 国 の 少 数 民 族 自 治 区 の 中 で 経 済 の 成 長 が 最 も 高 く( 図 0- 2 を 参 照 )、 ほ か の 自 治 区 と 比 べ る と 比 較 的 に 政 治 的 や 経 済 的 に も 安 定 し て い る 点 が あ げ ら れ る 。 資 源 エ ネ ル ギ ー が 豊 富 で 且 つ 資 源 開 発 が 盛 ん に 行 わ れ て お り 、 少 数 民 族 地 域 に お け る 資 源 開 発 に よ る 社 会 変 動 を み る う え で も 欠 か せ な い 存 在 だ と も い え る 。 第 三 に 、大 規 模 な 資 源 開 発 に よ り 、2009 年 に 内 モ ン ゴ ル 自 治 区 の 石 炭 生 産 量 は 山 西 省 を 抜 き 全 国 第 1 位 と な っ た8。石 炭 だ け で な く 、多 く の 鉱 物 資 源 の 鉱 床 が 次 々 に 発 見 さ れ る な ど 内 モ ン ゴ ル 自 治 区 の 各 地 で 大 規 模 な 開 発 プ ロ ジ ェ ク ト は 、 今 後 も 引 き 続 き 行 わ れ 続 け る も の と 思 わ れ る 。 そ し て 、 こ の よ う な 資 源 開 発 は 大 き な 社 会 変 動 を 引 き 起 こ し て お り 、 ほ か の 少 数 民 族 地 域 社 会 の 今 後 を 占 う う え で も 重 要 で あ る 。 こ う し た 資 源 開 発 の 一 環 と し て 、 内 モ ン ゴ ル に 建 設 さ れ た の が 、 本 研 究 の 対 象 地 域 で あ る 炭 鉱 都 市 ホ ー リ ン ゴ ル 市 で あ る 。 本 研 究 で は 、 ホ ー リ ン ゴ ル 市 を 事 例 に 草 原 の 真 ん 中 に 炭 鉱 都 市 が 建 設 さ れ た こ と に 伴 い 、 牧 草 地 か ら 追 い 出 さ れ た モ ン ゴ ル 人 社 会 の 変 化 と 石 炭 開 発 に よ る 土 地 紛 争 、 環 境 汚 染 な ど を 考 察 す る 。 そ も そ も ホ ー リ ン ゴ ル の 牧 草 地 は 、 ジ ャ ロ ー ド ( 扎 魯 特 ) 旗 北 部 地 域 の モ ン ゴ ル 族 が 遊 牧 す る 夏 営 地 で あ っ た 。し か し 、こ の 地 域 で 石 炭 鉱 脈 が 発 見 さ れ 、 開 発 が 始 ま る と 、 モ ン ゴ ル 人 牧 民 の 牧 草 地 が 炭 鉱 側 に よ っ て 占 有 さ れ る よ う に な っ て し ま う 。 そ し て 、 そ の 規 模 は 徐 々 に 拡 大 し て い っ た 。 そ の 後 ホ ー リ ン ゴ ル 炭 鉱 の 開 発 が 本 格 化 さ れ る に つ れ て 、 1985 年 に ホ ー リ ン ゴ ル 市 が 建 設 さ れ 、 そ し て そ の 都 市 の 規 模 は 急 速 に 膨 張 し て い っ た 。 こ う し た 中 、 炭 鉱 開 発 に よ る 牧 草 地 の 更 な る 占 有 を 恐 れ た ジ ャ ロ ー ド 旗 政 府 は 牧 草 地 を 保 護 す る 目 的 で 、 炭 鉱 側 の 占 有 地 に 接 す る ジ ャ ロ ー ド 旗 管 轄 の 牧 草 地 地 帯 に 、 緩 衝 地 帯 と し て 新 た に 数 多 く の 牧 畜 村 を 設 置 し 、 炭 鉱 側 の 占 有 地 拡 大 の 防 波 堤 の 役 割 を 負 わ せ た 。 と こ ろ が 、 新 設 の 牧 畜 村 に 移 住 さ せ ら れ た 牧 民 た ち は 、 牧 草 地 の 縮 小 化 と 大 興 安 嶺 の 寒 冷 な 地 帯 で 越 冬 す る と い う 二 つ の 課 題 に 突 き 付 け ら れ た 。 あ る 意 味 で 8 田 暁 利 ( 2011 ) 101 頁 。
16 牧 草 地 を 保 護 す る た め に 炭 鉱 都 市 ホ ー リ ン ゴ ル 市 に 近 づ い て き た 彼 ら は 、 限 ら れ た 牧 草 地 を 草 刈 り 地 と 放 牧 地 に 分 け る な ど 牧 草 地 を 巧 み に 利 用 し 、 家 畜 も 大 型 家 畜 か ら 小 型 家 畜 へ 変 え る な ど の 方 法 で 、 新 し い 課 題 に 対 応 し た 。 さ ら に 、 彼 ら は 隣 接 す る 都 市 社 会 と も 関 わ り を 持 ち な が ら 生 計 を 立 て て い く こ と に な る 。 と こ ろ が 、 炭 鉱 の 拡 大 は そ の 後 も 続 き 、 わ ず か に 残 っ た 牧 草 地 の 中 に も 炭 鉱 関 連 の 企 業 な ど に 占 有 さ れ る 事 例 が 後 を 絶 た な い 。 こ れ ら の 勝 手 な 牧 草 地 の 収 奪 に 牧 民 た ち は 反 発 し て お り 、土 地 紛 争 が 頻 繁 に 起 こ っ て い る 。牧 草 地 の 収 奪 は 、 牧 民 の 生 活 を 窮 地 に 追 い 込 む こ と に 等 し い も の だ 。 ま た 、 炭 鉱 関 連 企 業 で あ る ア ル ミ ニ ウ ム 工 場 の 稼 働 や 大 規 模 発 電 所 な ど に よ る 多 様 な 工 業 活 動 に よ っ て 新 た な 環 境 汚 染 が 深 刻 化 し 、 牧 民 の 生 活 に 大 き な 打 撃 を 与 え て い る 。 本 研 究 は 、 こ れ ら の 問 題 に つ い て 論 じ る も の で あ る 。 先 行 研 究 と 本 研 究 の 位 置 付 け 資 源 開 発 研 究 は 、 す で に 様 々 な 学 門 分 野 か ら 多 様 な ア プ ロ ー チ に よ り 行 わ れ て お り 、 数 多 く の 研 究 実 績 が 蓄 積 さ れ て い る 。 そ も そ も 、「 開 発 」と は 、植 民 地 主 義 の 延 長 線 に あ る も の で「 正 義 」を 他 者 に 押 し 付 け る 側 面 が あ る 。 例 え ば 、 川 田 順 造 は 「 開 発 が 、 人 類 の 生 ん だ 文 化 の 一 部 と し て 、現 在 の よ う な 意 味 を 帯 び る よ う に な っ た 背 景 に は 、15、16 世 紀 の ヨ ー ロ ッ パ 人 の い う「 大 発 見 時 代 」を 通 じ て 顕 著 に な る ヨ ー ロ ッ パ の 世 界 進 出 と 、 そ れ に つ づ く 西 洋 近 代 の 形 成 、 の ち に ア メ リ カ 合 衆 国 も 加 わ っ て の 、 欧 米 列 強 に よ る 非 欧 米 社 会 の 植 民 地 支 配 が あ る9」 と 論 じ て い る 。 中 国 に お い て 、「 開 発 」と い う 概 念 は 、ヨ ー ロ ッ パ で 生 ま れ 日 本 を 経 由 し て 中 国 に 入 っ て き た と 考 え ら れ る 。「 開 発 」と い う 言 葉 は 中 国 の 古 代 文 献 に よ く 使 わ れ て い た こ と か ら 、 日 本 語 か ら の 逆 輸 入 で は な い こ と は 明 ら か で は あ る が 、 現 代 中 国 で は 、 一 時 期 「 開 発 」 と い う 語 が 死 語 と な り 、 再 び 使 わ れ 始 め た と き 、 漢 字 を 使 う 日 本 語 の 影 響 を 受 け た こ と が き っ か け と な っ た こ と が 考 え ら れ る と 趙 宏 偉 が 述 べ て い る1 0。 こ う し た 中 、 佐 々 木 信 彰 ( 1988) は 、 中 国 の 少 数 民 族 問 題 を 世 界 上 の 南 北 問 題 と の ア ナ ロ ジ ー で 中 国 国 内 の 「 南 北 問 題 」 と 捉 え 、 経 済 的 側 面 か ら 考 察 し て 9 川 田 順 造 ( 1997) 12 頁 。 1 0 趙 宏 偉 ( 1997 ) 249 頁 。『 新 詞 新 語 詞 典 』( 1993 ) を 参 照 。 趙 宏 偉 に よ れ ば 、 1949 年 、 中 華 人 民 共 和 国 が 成 立 し て か ら 、 お よ そ 1980 年 代 初 頭 ま で の 間 、「 開 発 」 と い う 言 葉 は 使 わ れ な く な り 、死 語 と な っ た 。当 時 、現 わ れ た 新 語 は 社 会 主 義「 建 設 」で あ っ た 。「 開 発 」 と い う 言 葉 は 再 び 使 わ れ る よ う に な る の は 、『 当 代 中 国 流 行 語 辞 典 』( 1992 )に よ る と 1983 年 だ っ た 。
17 い る 。 そ し て 、 民 族 問 題 が 経 済 問 題 と 重 な り 、 さ ら に 複 雑 に な っ て い る と 指 摘 し て い る 。 以 上 の こ と か ら 、「 開 発 」 を 巡 る 問 題 を 扱 う と き 、「 開 発 」 の も つ 植 民 地 主 義 的 性 格 に 留 意 し な が ら 、「 開 発 を す る 側 の 論 理 」と「 開 発 を さ れ る 側 の 論 理 」に 分 け た う え で 、 議 論 を 整 理 し て い く 必 要 が あ る だ ろ う 。 ま ず 、「 開 発 す る 側 の 論 理 」を ま と め た 研 究 と し て 費 孝 通( 1986)1 1、王 柯( 1998、 2001) な ど が 挙 げ ら れ る 。 費 孝 通1 2は 、 彼 の 「 辺 区 開 発 包 頭 篇 」 と い う 論 文 の 中 で 、 内 モ ン ゴ ル 自 治 区 包 頭 地 域 に お け る 資 源 開 発 や 工 業 化 を 高 く 評 価 し 、 そ れ を さ ら に ほ か の 少 数 民 族 地 域 へ 拡 大 さ せ て い く こ と を 主 張 し て い る 。 一 方 で 辺 区 地 域 の 自 然 環 境 の 悪 化 と 包 頭 か ら の 人 材 の 流 出 が 深 刻 だ と も 指 摘 し 、 こ の 問 題 は 克 服 す べ き 課 題 で あ る と 主 張 し て い る 。 ま た 、 原 材 料 価 格 が 低 く 設 定 さ れ て い る 問 題 に も 目 を 向 け 、 価 格 の 見 直 し を 訴 え 、 そ れ が 少 数 民 族 地 域 の 収 入 に 影 響 を 与 え て い る と 力 説 し た 。そ の 一 方 で 、少 数 民 族 地 域 の 資 源 開 発 が 少 数 民 族 の 利 益 に な る こ と が 、 各 民 族 の 共 同 繁 栄 を 実 現 す る 、 と 述 べ て い る 。 総 じ て い え ば 、 費 孝 通 は 1950 年 代 に 全 国 各 地 か ら の 支 援 の 下 で 、 建 設 さ れ た 工 業 都 市 包 頭 を 肯 定 的 に 捉 え つ つ も 、 そ こ で 生 じ る 利 益 が 少 数 民 族 に 配 分 さ れ る 必 要 性 を 説 い た と い っ て 差 し 支 え な い だ ろ う 。 し か し 、 中 国 中 央 の 要 職 に あ っ た 費 孝 通 は 自 身 の 政 治 的 立 場 を 守 る た め か 、 少 数 民 族 地 域 で 発 生 し て い る 資 源 開 発 に 伴 っ た 諸 問 題 に つ い て は 正 面 か ら 言 及 す る こ と を 避 け て い た 。 言 い 換 え れ ば 、 資 源 開 発 や 工 業 化 が 少 数 民 族 地 域 に 与 え る マ イ ナ ス の 影 響 に つ い て 直 接 触 れ な か っ た 、 と 言 え よ う 。 し か し 、包 頭 地 域 に お け る 開 発 は 早 い 段 階 か ら 少 数 民 族 側 と の 摩 擦 が あ っ た 。 1 1 1985 年 6 月 10 日 に 包 頭 及 び 1985 年 6 月 15 日 に フ フ ホ ト に 行 っ た 講 演 に 基 づ い て ま と め た も の で あ る 。 1 21910 年 生 ま れ の 費 孝 通 は 1935 年 に 清 華 大 学 の 大 学 院 を 卒 業 し た 。 そ し て 、 こ の 年 か ら 中 国 の 少 数 民 族 地 域 に お け る 調 査 に 携 わ る よ う に な る 。 1936 年 か ら は ロ ン ド ン 大 学 に 留 学 し 、 マ リ ノ フ ス キ ー に 師 事 し た 。 そ し て 、 1938 年 に イ ギ リ ス 留 学 か ら 帰 国 す る と 、 雲 南 大 学 に て 教 鞭 を と り な が ら 農 村 地 域 や 少 数 民 族 地 域 に お け る 調 査 を 行 っ て い た 。 1949 年 に 中 華 人 民 共 和 国 が 建 国 さ れ る と 、 中 央 の 民 族 訪 問 団 に 加 わ り 、 少 数 民 族 に 対 す る 調 査 と 民 族 識 別 工 作 に 参 加 す る こ と に な る 。 そ の 後 の 中 国 中 央 に よ る 事 業 に 参 加 し 、 1950 年 代 に 全 国 人 民 代 表 大 会 に よ っ て 組 織 さ れ た 少 数 民 族 社 会 歴 史 大 調 査 に 加 わ る こ と に な っ た 。 と こ ろ が 、 文 化 大 革 命 が は じ ま る と 批 判 の 対 象 と さ れ 失 脚 す る 。 そ の 間 は 、 研 究 活 動 も 一 切 禁 じ ら れ た 。 1970 年 代 末 頃 に な っ て よ う や く 名 誉 が 回 復 さ れ 、 公 職 に 復 帰 す る 。 そ の 後 の 費 孝 通 は 、 中 国 人 民 政 治 協 商 会 議 全 国 委 員 会 副 主 席 ( 第 6 回 ) や 全 国 人 民 代 表 大 会 常 務 委 員 会 副 委 員 長 ( 第 7 、 8 回 ) な ど 中 国 政 府 の 要 職 を 務 め な が ら 、 少 数 民 族 地 域 の 調 査 や 研 究 に 積 極 的 に 参 加 す る 。こ の よ う に 、一 時 は 失 脚 の 憂 き 目 を 見 た も の の 、 基 本 的 に は 中 国 中 央 権 力 の 近 い と こ ろ で 研 究 を 続 け て き た 。 そ の た め 、 彼 の 研 究 は 現 代 中 国 に お け る 民 族 理 論 や 民 族 政 策 の 形 成 に 多 大 な 影 響 を 与 え て き た の だ 。 ち な み に 、 そ の 後 の 費 孝 通 は 1988 年 1 1 月 に 香 港 中 文 大 学 に 行 わ れ た 講 演 に お い て 「 中 華 民 族 の 多 元 一 体 構 造 」 論 を 提 起 し 、 今 日 で は 彼 の 「 中 華 民 族 」 論 は 公 式 イ デ オ ロ ギ ー 的 存 在 と し て 現 在 に ま で 大 き な 影 響 を 与 え て い る 。
18 た と え ば 、1950 年 代 に 牧 民 の 聖 な る 山 で あ る バ ヤ ン オ ボ ー( 白 雲 鄂 博 )山 に お い て 、 鉄 鉱 床 の 調 査 や 測 量 が 行 わ れ た 際 に 、 モ ン ゴ ル 人 牧 民 が 地 質 調 査 隊 に 不 満 を 覚 え 、 反 発 し て い た と 言 わ れ て い る1 3。 こ の よ う に 、 開 発 が 行 わ れ て い る 現 場 で 暮 ら す 、 少 数 民 族 の 立 場 か ら 資 源 開 発 の 問 題 を 検 討 す る こ と は 大 変 重 要 な こ と で あ る 。 し か し な が ら 、 経 済 の 急 成 長 を 遂 げ て い る 中 国 で は 開 発 の 肯 定 的 側 面 に 着 目 す る 傾 向 が 強 く 、 中 国 本 土 で は 、 資 源 開 発 を 直 接 批 判 す る 研 究 者 は 少 な い 。 と に か く 、 中 国 建 国 当 初 少 数 民 族 地 域 に 行 わ れ た 大 規 模 な 資 源 開 発 及 び そ の 結 果 と し て 作 ら れ た 資 源 都 市 包 頭 の 持 つ 意 味 が 大 き い 。 こ の 包 頭 市 の 建 設 に 関 す る 論 考 の 中 で 、 少 数 民 族 の 立 場 に 着 目 し 、 資 源 開 発 を 批 判 的 に 捉 え た 数 少 な い も の の 一 つ に イ ギ リ ス の モ ン ゴ ル 人 人 類 学 者 オ ラ デ ィ ン・E・ボ ラ グ が あ る 。彼 は 労 働 者 階 級 を 持 た な い モ ン ゴ ル 人 の 生 活 の 中 に 中 国 共 産 党 が そ の 触 手 を 伸 ば し 、 辺 境 の 資 源 を 搾 取 し 、 そ し て 辺 境 を コ ン ト ロ ー ル し よ う と し て い る 、 と 説 い た1 4。 ま た 、 ブ レ ン サ イ ン は 包 頭 製 鉄 所 が 建 設 さ れ る こ と に よ っ て 、 モ ン ゴ ル 人 は 自 民 族 の 労 働 者 階 級 を つ く り 上 げ る こ と が で き な か っ た ば か り か 、 逆 に 多 く の 移 民 を 招 き 入 れ て し ま い 、 バ ヤ ン オ ボ ー で は 永 遠 に 放 牧 で き な く な っ て し ま っ た 、と 指 摘 し て い る1 5。阿 拉 坦 宝 力 格( 2011) は 、 民 族 地 域 に お け る 資 源 開 発 を 内 モ ン ゴ ル 自 治 区 の シ リ ン ゴ ル 盟 の シ ョ ロ ー ン フ ヘ ( 正 藍 ) 旗 を 事 例 に 考 察 し た 。 そ し て 、 資 源 開 発 に よ る 民 族 の 伝 統 文 化 の 消 失 に 危 機 感 を 抱 き 、 さ ら に 資 源 開 発 の 持 続 性 が 確 立 さ れ て い な い 点 を 指 摘 し 、 資 源 開 発 の 過 程 に お け る 「 文 化 参 与 」 の 必 要 性 を 提 唱 し た 。 王 柯 ( 1998) は 、 新 疆 に お け る 経 済 開 発 の 現 状 を 分 析 し 、 そ の 必 要 性 を 強 調 し た 。 そ し て 、 新 疆 に お け る 経 済 開 発 に 多 く の ウ イ グ ル 人 が 参 加 し て お り 、 こ れ に 参 加 で き て い な い 者 た ち が 「 取 り 残 さ れ る 」 と い う 危 機 意 識 を 持 ち 、 こ れ が 民 族 独 立 と 民 族 対 立 を 導 い て い る と 指 摘 し て い る 。 さ ら に 王 柯 ( 2001) は 、 経 済 統 合 は 国 民 統 合 を 実 現 さ せ る 最 も 適 切 な 方 法 で あ る と 主 張 し な が ら そ の 限 界 を 分 析 し て い る 。 そ の 限 界 と は 文 化 の 相 違 に あ る と 言 い 、 民 族 区 域 自 治 制 度 に よ る 優 遇 が 民 族 意 識 を 最 大 限 に 鼓 舞 し て い る 、 と 指 摘 し て い る 。 中 国 の ほ と ん ど の 研 究 者 は こ の 立 場 に た っ て い る 。 こ れ よ り 以 下 で は 費 孝 通 以 外 に 、 費 孝 通 の 影 響 を 受 け た 研 究 者 及 び 近 年 の 資 源 開 発 研 究 の 成 果1 6に つ い 1 3 林 田 ( 1957)。
1 4 Bulag, Uradyn. E. (2010) Collaborative Nationalism: The Politics of Friendship on China's Mongolian Frontier.pp167 ~ 198.
1 5 ボ ル ジ ギ ン ・ ブ レ ン サ イ ン ( 2011 ) 53 ~ 54 頁 。
1 6 中 国 に お け る 少 数 民 族 地 域 の 資 源 開 発 を め ぐ る 研 究 は 、 多 く の 研 究 蓄 積 を 重 ね て き た 。 た だ し 、 こ れ ら の 研 究 成 果 の ほ と ん ど は 、 改 革 開 放 政 策 が 実 施 さ れ る よ う に な っ て か ら の も の で あ る 。 な ぜ な ら 、 中 国 で は 少 数 民 族 地 域 の 社 会 状 況 を 研 究 す る 社 会 学 研 究 が 、 長 い 間 行 う こ と が で き な か っ た か ら だ 。 二 十 世 紀 前 半 に は 一 定 程 度 行 わ れ て い た 社 会 学
19 て 紹 介 し た い 。 賀 学 礼 ( 1986) は 、 内 モ ン ゴ ル 自 治 区 西 部 の 烏 海 市 の 石 炭 開 発 を 事 例 に 、 知 力 ・ 労 働 力 ・ 財 力 の「 三 力 支 辺( 三 つ の 力 で 辺 境 を 支 え る )」政 策 が 、辺 境 地 域 の 経 済 開 発 に 果 た す 役 割 に つ い て 考 察 し た 。そ し て 、「 三 力 支 辺 」が 烏 海 の 石 炭 開 発 に 欠 か せ な い も の で あ っ た 、 と 説 い た の で あ る 。 雲 布 霓 ( 1986) は 、 内 モ ン ゴ ル 自 治 区 フ ル ン ボ イ ル 盟 の イ ミ ン ( 伊 敏 ) 炭 鉱 の 開 発 に お け る 鉱 区 と 民 族 地 方 の 関 係 を 事 例 に 、 辺 境 地 域 の 資 源 開 発 及 び 社 会 主 義 民 族 関 係 の 在 り 方 に つ い て 検 討 し た 。 そ し て 、 イ ミ ン 炭 鉱 の 開 発 が 民 族 地 域 の 経 済 成 長 を 促 し 、 民 族 団 結 に 役 に 立 っ て い る と 述 べ て い る 。 鄭 睿 川 ( 1986) は 、 包 頭 鋼 鉄 公 司 の 建 設 を 事 例 に 、 辺 境 地 域 の 資 源 開 発 を 検 討 し た 。 そ し て 、 包 頭 鋼 鉄 公 司 の 建 設 に よ っ て 、 内 モ ン ゴ ル 自 治 区 、 特 に 包 頭 市 の 経 済 成 長 を 大 き く 促 進 し た と 論 じ て い る 。 周 星( 1993)は 、1960 年 代 に 国 防 の 観 点 か ら 行 わ れ た「 三 線 建 設 」 に よ る 工 業 化 に つ い て 考 察 し た 。 そ し て 、 こ の 「 三 線 建 設 」 が 西 部 地 域 の 工 業 化 の 建 設 に 大 き な 役 割 を 果 た し た 、 と 指 摘 し て い る 。 程 志 強 ( 2009) は 、 内 モ ン ゴ ル の オ ル ド ス ( 鄂 爾 多 斯 ) 市 を 事 例 に 、 石 炭 開 発 と 地 方 産 業 、 石 炭 開 発 と 地 方 投 資 環 境 の 建 設 、 石 炭 開 発 と 人 民 生 活 向 上 な ど の 相 互 影 響 、 相 互 作 用 を 検 討 し た 。 そ し て 、 資 源 開 発 地 域 に お け る 持 続 可 能 な 発 展 モ デ ル を 提 起 し て い る 。 以 上 み て き た よ う に 、 中 国 に お け る 開 発 研 究 は 、 開 発 を 肯 定 的 に 捉 え 、 中 国 の 民 族 政 策 に よ っ て 少 数 民 族 地 域 が 如 何 に 工 業 化 の 道 を 歩 み 、 よ り 良 い 生 活 を 送 っ て い る の か に つ い て 論 じ 、 鉱 区 や 民 族 地 域 の 関 係 も 順 調 だ と す る 記 述 が ほ と ん ど で あ る 。 こ れ ら の 研 究 は 、 開 発 が 現 地 社 会 に 与 え る マ イ ナ ス の 影 響 を 無 視 す る 傾 向 が あ り 、 こ れ で は 開 発 を 客 観 的 に 捉 え る こ と が で き な い 、 と 言 わ ざ る を 得 な い 。 も っ と も 近 年 、 阿 拉 坦 宝 力 格 ( 2011) の よ う に 少 数 民 族 地 域 に お け る 資 源 開 発 の 多 大 な 影 響 に 危 機 感 を 抱 く 研 究 も み ら れ る よ う に は な っ て き た 。 た だ し こ れ ら の 研 究 で も 、 開 発 を 完 全 に 否 定 す る も の で は な く 、 何 ら か の 形 で 「 少 数 民 族 に と っ て も 良 い 開 発 」 に 導 こ う と す る 思 惑 が 見 ら れ て い る 。 だ が 、 こ の よ う な 視 点 で す ら ほ と ん ど 少 数 民 族 出 身 の 研 究 者 に 限 ら れ て い る 。そ こ で 、 先 に も 述 べ た こ と で は あ る が 、 本 研 究 で は 出 来 得 る 限 り 客 観 的 に 少 数 民 族 地 域 に お け る 開 発 の 問 題 を 論 じ る こ と を 目 的 と し て い る 。 で あ っ た が 、 中 華 人 民 共 和 国 が 建 国 さ れ る と 1950 年 代 初 頭 に 社 会 学 が 一 旦 廃 止 さ れ 、 そ の 後 は 民 族 識 別 を 行 う 目 的 で 民 族 地 域 調 査 が 行 わ れ る 程 度 に な る 。 そ の 後 、 社 会 学 が 復 興 す る の は 文 化 大 革 命 が 終 わ っ た 後 の 1970 年 代 末 頃 だ 。 文 化 大 革 命 な ど に よ っ て 、 事 実 上「 骨 抜 き 」状 態 と な っ て い た 民 族 政 策 が 1980 年 代 に な る と 、比 較 的 に 穏 健 だ っ た 1950 年 代 の よ う な 状 況 に 戻 り 、 少 数 民 族 地 域 に お け る 開 発 に 関 す る 研 究 が 可 能 と な っ た の だ 。
20 中 国 に お い て は 、 い ず れ の 研 究 も 中 国 に よ る 少 数 民 族 地 域 の 開 発 を 正 当 化 す る た め の ロ ジ ッ ク で あ る こ と は 間 違 い な い と い え る 。 し か も 、 こ れ ら の 研 究 か ら は 「 開 発 さ れ る 側 」 = 少 数 民 族 の 論 理 が 見 え て こ な い の で あ る 。 こ れ に 対 し て 、 オ ラ デ ィ ン ・ ボ ラ グ は 、 開 発 す る 側 に 焦 点 を あ て な が ら 、 開 発 に よ っ て 生 じ る 矛 盾 を 批 判 的 に 検 討 し 、 内 モ ン ゴ ル に お い て 開 発 問 題 が 民 族 問 題 と な っ て し ま う 構 造 を「 労 働 者 階 級 の 流 産 」と い う 用 語 を 使 っ て 説 明 す る 。 ボ ラ グ は 、少 数 民 族 地 域 で あ る 内 モ ン ゴ ル に 漢 民 族 を 中 心 と し た 大 規 模 な「 辺 境 支 援 隊 」 を 送 り 込 ん で 開 発 を 行 う こ と で 、 モ ン ゴ ル 人 「 労 働 者 階 級 」 が 誕 生 す る 機 会 を 奪 っ て し ま う と い う 矛 盾 ( パ ラ ド ク ス ) を 描 き 出 し た 。 本 来 、 マ ル ク ス が 考 え た 共 産 党 と い う も の は 労 働 者 階 級 の 政 党 で あ る は ず だ が 、 中 国 革 命 の 主 体 は 労 働 者 階 級 で は な く 、 農 民 大 衆 で あ っ た 。 建 国 後 も こ の 状 況 が 変 わ ら な か っ た 。と こ ろ が 、「 辺 境 支 援 」と い う 名 の も と に 大 勢 の 漢 族 を 労 働 者 と し て 内 モ ン ゴ ル で 資 源 開 発 に 従 事 さ せ た 。 遊 牧 を 伝 統 と す る モ ン ゴ ル 族 は 尚 更 労 働 者 階 級 が 存 在 し た わ け で は な く 、 当 時 の 内 モ ン ゴ ル の 指 導 者 で あ っ た ウ ラ ン フ は こ の 包 頭 鋼 鉄 所 の 建 設 過 程 を 通 し て 、モ ン ゴ ル 族 自 身 の 労 働 者 階 級 を 作 っ て 、 社 会 主 義 の 「 先 進 」 民 族 に な ろ う と 努 め た と い う 。 皮 肉 な こ と に 結 果 と し て 内 モ ン ゴ ル に お い て 新 た な 「 漢 族 労 働 者 」 が 誕 生 し た の で あ っ て 、 モ ン ゴ ル 族 労 働 者 は 「 誕 生 」 で き な か っ た の だ1 7。 で は 、 こ う し て 共 産 党 に よ っ て 生 み 出 さ れ た 漢 族 : モ ン ゴ ル 族 = 労 働 者 階 級 : 牧 畜 民 の 対 立 構 造 の 結 果 、 ど の よ う な こ と が 現 地 で 起 こ っ て い る の か 。 こ れ に つ い て の フ ィ ー ル ド 調 査 は 、 ボ ラ グ の 研 究 で は な さ れ て い な い 。 一 方 、 少 数 民 族 の 立 場 か ら 「 開 発 さ れ る 側 の 論 理 」 を 明 ら か に し た も の と し て 先 に 述 べ た ボ ラ グ や 以 下 に 論 じ る 楊 海 英 、 小 島 麗 逸 、 ブ レ ン サ イ ン の 研 究 が 挙 げ ら れ る 。 楊 海 英 ( 2011) は 、 中 国 政 府 が 進 め て い る 西 部 大 開 発 を 、 中 国 の 漢 人 た ち が 豊 か さ を 夢 み 、 国 家 の 繁 栄 を 希 求 す る 民 な ら で は の 愛 国 心 の あ ら わ れ で あ る と 強 く 批 判 し て い る 。 そ し て 、 中 国 政 府 は 西 部 大 開 発 で い わ ゆ る 地 域 間 格 差 や 民 族 間 格 差 を 是 正 し よ う と し て い る と 指 摘 し 、 開 発 と 発 展 は 、 民 族 問 題 を 根 本 か ら 解 決 す る 良 薬 で は な い 、 と 主 張 し て い る 。 そ の 理 由 は 、 開 発 さ れ る 側 す な わ ち 西 部 に 居 住 す る 少 数 民 族 の 人 た ち は 逆 に い ま ま で 以 上 に 同 化 さ れ る 危 険 性 を 危 惧 し て い る 、 と 解 釈 し て い る 。 開 発 と 発 展 と い う 圧 倒 的 な 力 を 用 い て 最 後 の 完 成 、 す な わ ち あ ら ゆ る 民 族 の 「 文 化 的 ジ ェ ノ サ イ ド 」 の 完 成 に む け て 中 国 は 突 進 し て い る 、 と い う 。 つ ま り 、 中 国 の 少 数 民 族 地 域 に お け る 資 源 開 発 を 少 数
1 7 Bulag, Uradyn. E. (2010) Collaborative Nationalism: The Politics of Friendship on China's Mongolian Frontier.pp167 ~ 198.
21 民 族 の 「 文 化 的 ジ ェ ノ サ イ ド 」 と 捉 え て い る の が 、 彼 の 特 徴 で あ る 。 楊 海 英 は 資 源 開 発 が 少 数 民 族 地 域 の 民 族 文 化 に 与 え て い る 影 響 を 、 鋭 く か つ 厳 し い 目 線 で 考 察 し て い る と 言 え よ う 。 小 島 麗 逸 ( 2011) は 、 エ ネ ル ギ ー 資 源 の 取 得 が 今 日 の 中 国 経 済 の 最 大 の 課 題 と な っ て い る た め 、 エ ネ ル ギ ー 資 源 の 埋 蔵 量 が 豊 富 な 少 数 民 族 地 域 に お け る 資 源 開 発 が 、 少 数 民 族 地 区 政 策 の 中 核 と な っ て い る と 指 摘 し て い る 。 そ し て 、 中 国 の 資 源 関 係 の 統 計 年 鑑 を 用 い て 、 中 国 政 府 が 少 数 民 族 地 域 に お け る 資 源 開 発 を 強 化 し て い る こ と を 示 し た 。 一 方 で 、 少 数 民 族 地 域 の 経 済 が 急 成 長 し て い る デ ー タ に 対 し て 、 そ の 信 ぴ ょ う 性 を 疑 問 視 し 成 長 率 の 水 増 し が 想 定 さ れ る の で は な い か と 、 述 べ て い る 。 ま た 、 中 国 政 府 が 少 数 民 族 地 域 に お け る 資 源 を 獲 得 す る た め 実 施 し た こ れ ま で の 政 策 を 再 検 討 し 、 資 源 開 発 に よ っ て 少 数 民 族 の 伝 統 文 化 が 破 壊 さ れ て ゆ く こ と に よ っ て 残 る 「 怨 念 」 に も 注 目 し て い る 。 ボ ル ジ ギ ン ・ ブ レ ン サ イ ン ( 2011) は 、 モ ン ゴ ル 人 の 間 に 伝 わ る 地 名 を 取 り 上 げ な が ら 、 少 数 民 族 地 域 に お け る 資 源 開 発 を 少 数 民 族 自 身 の 生 存 と 結 び 付 け て 考 察 し た 。 そ し て 、 開 発 と い う 言 葉 は 長 年 「 正 義 」 と し て 受 け 止 め ら れ て き た と 批 判 し 、 さ ら に こ の よ う な 開 発 が 地 方 や 少 数 民 族 の 利 益 を 犠 牲 に す る こ と を 前 提 と し て き た 、 と 指 摘 し た 。 こ れ ら の 研 究 は 、 中 国 の 御 用 学 者 た ち が 無 視 し て き た 少 数 民 族 側 か ら の 視 点 を 導 入 し た と い う 点 で 高 く 評 価 さ れ る べ き で あ ろ う 。 た だ し 、 こ う し た 開 発 さ れ る 側 の 論 理 に 関 す る 研 究 は 、 往 々 に し て 彼 ら 少 数 民 族 を「 被 害 者 」と し て 描 き 出 す 傾 向 が 強 い こ と に も 注 意 し な け れ ば な ら な い 。 重 要 な の は 、 開 発 さ れ る 側 = 少 数 民 族 を 被 害 者 と し て 単 純 化 す る の で は な く 、 開 発 す る 側 と し て の 主 体 性 に も 注 目 し 、 現 地 調 査 を 踏 ま え た 詳 細 な 分 析 が 必 要 で あ ろ う 。 こ の よ う な 研 究 の 一 例 と し て 、 白 福 英 ( 2013) は 、 内 モ ン ゴ ル 牧 畜 地 域 に お け る 資 源 開 発 に 焦 点 を 当 て 、 シ リ ン ゴ ル 盟 西 ウ ジ ュ ム チ ン 旗 の S ガ チ ャ ー ( 嘎 查 )1 8の 実 態 調 査 に 基 づ き 、 開 発 に 対 す る 少 数 民 族 側 の 「 適 応 」 を キ ー ワ ー ド に 、 開 発 に 対 す る 地 元 社 会 の 対 応 に 着 目 し て 考 察 し た 。 そ し て 、 個 人 や ガ チ ャ ー が 開 発 に 否 定 的 な 態 度 を 取 り な が ら 開 発 を 積 極 的 に 利 用 し て 、 自 ら の 生 活 を 向 上 さ せ る 「 非 伝 統 的 価 値 観 」 の 対 応 の 存 在 を 指 摘 し て い る 。 白 の 研 究 は 、 少 数 民 族 を 単 な る 無 能 な 被 害 者 で は な く 、 開 発 に お い て 積 極 的 に 関 わ る と い う 複 雑 な 構 造 を 描 い て い る 点 に お い て 評 価 に 値 す る 。 し か し な が 1 8 ガ チ ャ ー ( 嘎 查 ) と は 、 村 民 委 員 会 に 等 し く 、 ソ ム ( 蘇 木 ) 下 位 の 行 政 単 位 で あ り 、 内 モ ン ゴ ル 自 治 区 西 部 の モ ン ゴ ル 人 地 域 で は バ ガ ( 巴 嘎 ) と も 呼 ば れ て い た 。 内 モ ン ゴ ル 自 治 区 の 場 合 は モ ン ゴ ル 人 が 集 中 的 に 居 住 し て い る 村 落 を ガ チ ャ ー と 呼 び 、 漢 族 が 集 中 的 に 居 住 し て い る 村 落 を 村 と 呼 ぶ 場 合 が 多 い 。