第10回高木レクチャー
平成24年5月26日(土)
11:30–12:30, 15:20–16:20 京都大学数理解析研究所 大講義室420号室
リーベ・プログラム — 超距離スケルトン
Assaf Naor
(Courant Institute of Mathematical Sciences)
Abstract
Talk 1:
リーベ・プログラムM.
リーベの1976
年の定理は、ノルム空間の有限次元の線形的性質は一様連続同相写 像で保たれることを主張している。よって、ノルム空間は強い剛性を示す。すなわち、距離空間としての性質が、有限次元部分空間の線型的性質を決定する。このことは明 らかに、ノルム空間の幾何について多くのことを導くが、グラフ、多様体、群など、線 形空間と何の関係もない距離空間の構造を理解するのにもこのことが使えるのである。
結局のところ、バナッハ空間の有限次元線形不変量については、深く豊かな理論があ り、構造についての遠大な結果を導いている。リーベの定理の視点からは、これらの 不変量は「定量的に連続」な同相写像で保たれることがわかり、原理的には距離の概 念だけを用いて、線形構造は一切使わずにこれらを再定式化できる。これができれば、
もともとは線形空間でだけ意味があった洞察を用いて、一般の距離空間でこれらの性 質を研究し、これらの洞察を使ってもともとはノルム空間と関係のなかった分野の問 題を解くことができる。このように、リーベの剛性定理は、
1986
年にブルガンによっ て定式化されたリーベ・プログラムを導いた。その目的は、ノルム空間の理論の重要な 概念や定理を明示的に距離空間の問題として再定式化することである。過去25
年にわ たり、多くの数学者の多大な努力により、このプログラムで多くのすばらしい成果が 得られた。その応用は、群論、調和解析、コンピュータ科学に及ぶ。この講演は、リー ベ・プログラムへの独立した初等的イントロダクションである。このプログラムの画 期的な成果を説明し、最近の進展について述べ、挑戦的な未解決問題について議論す る。Talk 2:
超距離スケルトンこの講演ではリーベ・プログラムのあるステップの一例を示す。
(X, d)
をコンパクト 距離空間とし、µ
をX
上のボレル確率測度とする。このような距離測度空間(X, d, µ)
は常に超距離スケルトンを持つことを示す。すなわち、X
のコンパクト集合S
で、X
から誘導される距離が近似的に超距離であり、S
上に台を持つ確率測度ν
で、距離測度空間
(S, d, µ)
が元の空間(X, d, µ)
の有用な性質とよく似た性質を持つもののことである。この幾何学的描像を正確にし、超距離スケルトンの、解析、幾何、コンピュー タ科学、確率論における様々な応用を説明する。