• 検索結果がありません。

スナガニOcypode stimpsoni Ortmann の警戒距離と警戒解除時間

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "スナガニOcypode stimpsoni Ortmann の警戒距離と警戒解除時間"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

スナガニOcypode stimpsoni Ortmann の警戒距離と

警戒解除時間

著者

黒江 修一

雑誌名

Nature of Kagoshima

40

ページ

257-259

別言語のタイトル

Early warning system of Ocypode stimpsoni

Ortmann in Kagoshima Prefecture, Japan

(2)

RESEARCH REPORTS Nature of Kagoshima Vol. 40, Mar. 2014

257

 はじめに

スナガニ Ocypode stimpsoni Ortmann は,外洋に 面した砂浜の高潮線上部に深さ 20–30 cm の巣穴 を掘って生活する(三宅,1983).眼柄が太く, 発達した眼と脚をもつので,ヒトやシギ・チドリ などの天敵が近づくと慌てて巣穴に隠れ,動く物 体が遠ざかるまで巣穴の中にじっと潜む.安心す ると,やがて巣穴から姿を現し活動を再開する(図 1).スナガニ科の仲間でも警戒心が特に強いと いわれるスナガニは,一体どれくらいの距離まで ヒトが近づくと警戒して巣穴に戻るのか,また, 警戒心を解いたスナガニが活動を再開するまでに どれくらいの時間を要するのか併せて調べてみ た.今回の調査で,スナガニ個体群の警戒行動に ついてその一部を明らかにすることができたので 報告する. なお,「警戒距離」は,「動く物体(筆者)を 発見したスナガニが警戒して巣穴に戻る行動を起 こした地点と,そのときの動く物体までの直線距 離」とした.また,「警戒解除時間」は,「活動し ていたスナガニが,動く物体を発見し慌てて巣穴 に戻る行動を始めた時刻から,一定時間巣穴に身 を潜めた後,動く物体の気配がなくなったことを 察して,巣穴から出て周囲の様子を伺いながら, 再び採餌等の活動を始める時刻までの経過時間」 とした.  材料と方法 調査は 2013 年 8 月と 9 月の大潮の日を選び実 施した.調査地は,鹿児島県薩摩半島の西部に位 置する折口海岸(阿久根市)である(図 2).干 潮になると折口海岸には,広大な干潟が現れ,ス ナガニ個体群の活動を随所で観察することができ る.ここを調査地に選んだ理由は,隣接する脇本 海水浴場のような賑わいもなく,また潮干狩りに 訪れる人の姿もほとんどないことから,自然状態

スナガニ Ocypode stimpsoni Ortmann の警戒距離と警戒解除時間

黒江修一

〒 890–0056 鹿児島市下荒田 4–50–20 鹿児島大学水産学部

   

Kuroe, S. 2014. Early warning system of Ocypode stimpsoni Ortmann in Kagoshima Prefecture, Japan. Nature of Kagoshima 40: 257–259.

Faculty of Fisheries, Kagoshima University, 4–50–20 Shimoarata, Kagoshima 890–0056, Japan (e-mail: kuroe@

fish.kagoshima-u.ac.jp). 図 2.調査地(折口海岸)の位置.

(3)

258

Nature of Kagoshima Vol. 40, Mar. 2014 RESEARCH REPORTS

に近いスナガニの行動が観察できるのではないか と考えたからである.なお,観察する個体は,干 潟で盛んに活動している成体のみを調査の対象と した.調査日の現地の天候はいずれの日も晴れで あった. 警戒距離は,筆者がスナガニに極力振動が伝 わらないようゆっくりした速度で直線的に近づい たとき,スナガニが警戒して巣穴に戻る行動を始 めた地点とそのときの筆者の観察位置にそれぞれ 角材を立てて目印とし,2 箇所間の直線距離を巻 尺で測定した(図 3).また,警戒解除時間は, 活動中のスナガニが巣穴に戻り始めた時刻から, 再び巣穴から地上に現れて活動を再開する時刻ま での経過時間をストップウォッチで測定した.1 個体の警戒距離と警戒解除時間の観察・記録には 約 20 分を要した. なお,スナガニが巣穴に戻り始めた地点に目 印として角材を立てた後は,スナガニの警戒心を 解くため巣穴から急いで後退し,巣穴から約 50 m 離れた地点で,双眼鏡および望遠鏡を使用して スナガニの行動を観察し記録した(図 4).  調査結果 スナガニの警戒距離 筆者が,活動しているスナガニに近づいてい くと,警戒心が最も強いと思われる個体は,スナ ガニとの直線距離が 41 m 80 cm の距離で巣穴に 戻る行動を取り始めた.30 m の距離に近づくと, それまで活動していたスナガニの 16.3% の個体 が,20 m の距離に近づくと 68.8% の個体が巣穴 に戻り始め,10 m の距離に近づくと 98.7% の個 体が巣穴に戻り始めた.8 m 30 cm まで接近する と,全ての個体が巣穴の奥深くに身を潜めた(図 5).個体群の中で,観察したスナガニ 80 個体の うち,最も近づくことができた個体と筆者との距 離は 8 m 30 cm,次いで 11 m 10 cm であった. スナガニの警戒解除時間 観察したスナガニ 75 個体のうち,72.0% の個 体が 5 分以内に警戒行動を解除して採餌を始め た.最も早く活動を再開した個体は,警戒行動を とり始めた時刻から 1 分 5 秒後に,次いで 1 分 16 秒後に巣穴から出て採餌を始めた.一方,1 分 以内に巣穴から出て活動する個体は観察できな かった.警戒行動後 10 分経過すると 92.0% の個 体が干潟での活動を再開した.しかし,8.0% の 図 3.警戒距離の調査(スナガニが巣穴に戻る行動を始めた 地点とそのときの観察位置にそれぞれ角材を立てて目印 とし,2 箇所間の直線距離を巻尺で測定した). 図 4.観察方法(スナガニの警戒心を解くため観察には望遠 鏡を用いた). 積 算 割 合 % 個 体 数 100 100 98.7 90 68.8 37.5 16.3 5.1 1.3 0 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 0 5 10 15 20 25 30 0-5 5-10 10-15 15-20 20-25 25-30 30-35 35-40 40-45 45-50 警戒距離(m) 図 5.スナガニの警戒距離.活動している個体にヒトがどれ ぐらいの距離まで近づくと,巣穴へ完全に隠れるかを 5 m 間隔で示す(5–10 は,5 m 以上 10 m 未満の意味).

(4)

RESEARCH REPORTS Nature of Kagoshima Vol. 40, Mar. 2014 259 個体は 10 分以上経過しても巣穴から出てこな かった.炎天下の調査であったため,こうした個 体の 10 分経過後の観察は打ち切った(図 6). スナガニ各個体の警戒距離と警戒解除時間 警戒距離と警戒解除時間を同じ個体でそれぞ れ調べた結果を示す(図 7).警戒距離と警戒解 除時間の間には相関関係はみられなかった.警戒 距離の長短は 68.8% の個体が巣穴に戻り始める 20.0 m の距離を基準に,また,警戒解除時間の長 短を,72.0% の個体が警戒行動を解除する 5 分 00 秒を基準にすると,スナガニ個体群の中には, 警戒距離と警戒解除時間の双方が短い個体(A 群),警戒距離は長いが警戒解除時間が短い個体 (B 群),警戒距離は短いが警戒解除時間が長い個 体(C 群),警戒距離と警戒解除時間の双方が長 い個体(D 群)の 4 つの行動パターンがみられた.  考察 遠方で動く物体を識別するスナガニの視力が どの程度発達しているのか,今回の調査で明らか になった.スナガニに 41 m 80 cm の距離に近づ いた時点で,警戒心の強い個体は巣穴に待避する ことが分かった.反面,8 m 30 cm まで近づくこ とができる個体もおり,折口海岸のスナガニ個体 群における各個体間の警戒距離には最大 33.5 m もの個体差があることが分かった. また,1 分 5 秒経過すると活動を再開する警戒 解除時間が比較的短い個体がいる反面,警戒行動 を解除するには 10 分以上を要する個体がいるな ど,その時間には 8 分 55 秒以上の個体差がある ことも判明した . さらに,同じ個体で警戒距離と警戒解除時間 を調べた結果,その長短に相関はみられなかった. すなわち,警戒距離の長いスナガニ個体が警戒解 除時間も長いとは限らないことが判明した.ただ し,こうした行動の差異が遺伝的に組み込まれて いるのかどうか,個体群密度の違いによる警戒行 動に差があるのかどうか,環境条件(日照時間, 温度,湿度)の影響があるのかどうか等は,今後 の研究課題の一つである.  引用文献 三宅貞祥.1983.原色日本大型甲殻類図鑑 II.保育社,東京. 161 pp. 積 算 割 合 % 個 体 数 0 20.0 41.3 61.3 72.0 74.7 82.7 90.7 90.7 92.0 100 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 0-1 1-2 2-3 3-4 4-5 5-6 6-7 7-8 8-9 9-10 10-警戒解除時間(分) 0 2 4 6 8 10 12 0 10 20 30 40 50 警 戒 解 除 時 間( 分) 警戒距離(m) 警戒距離68.8% 警戒解除 時間72.0% A 群 D 群 B 群 C 群 図 7.スナガニ各個体の警戒距離と警戒解除時間.警戒距 離と警戒解除時間の間には相関関係はみられない. 図 6.スナガニの警戒解除時間.スナガニが巣穴に戻り始 めた時刻から,再び活動を再開する時刻までの経過時間 を 1 分間隔で示す(1–2 は,1 分以上 2 分未満の意味).

参照

関連したドキュメント

海なし県なので海の仕事についてよく知らなかったけど、この体験を通して海で楽しむ人のかげで、海を

体長は大きくなっても 1cm くらいで、ワラジム シに似た形で上下にやや平たくなっている。足 は 5

としても極少数である︒そしてこのような区分は困難で相対的かつ不明確な区分となりがちである︒したがってその

となってしまうが故に︑

夜真っ暗な中、電気をつけて夜遅くまで かけて片付けた。その時思ったのが、全 体的にボランティアの数がこの震災の規

自分ではおかしいと思って も、「自分の体は汚れてい るのではないか」「ひどい ことを周りの人にしたので

たこともわかっている。この現象のため,約2億3,000万年前から6,500万年

私たちは、2014 年 9 月の総会で選出された役員として、この 1 年間精一杯務めてまいり