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長瀬川及び猪苗代湖における各種イオン特性と pH の関係について

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Academic year: 2022

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長瀬川及び猪苗代湖における各種イオン特性と pH の関係について

       日本大学大学院 学生員 ○山田 章子 日本大学工学部 正 員  長林 久夫 日本大学工学部      平山 和雄 1.  はじめに

猪苗代湖は長瀬川上流の桧原湖、小野川湖、秋元湖と湖周辺からの自然水と、長瀬 川、酸川上流における硫黄川源流の強酸性水の流入により硫酸酸性の栄養状態になっ ている。しかし、ここ20年の間にわずかながらpHの上昇がみられ、平成5年から は湖岸付近で黒色浮遊物の発生が報告されている。猪苗代湖の中性化が進むと有機性 汚濁物質が沈降しなくなり、リン濃度に影響が出て富栄養化となり水質を悪化させる 要因となる。長林 1),2)、藤田 2)らは長瀬川、猪苗代湖における硫酸をもとにした pH の推定式を構築したが、pH6近傍での湖内 の変化について解析できていない点があ る。そこで本研究では猪苗代湖と主要な流入河川である長瀬川の含有元素の特性から pHの推定式を求めた。

 

2. 調査方法 図1 猪苗代湖流域概要図

  図1に猪苗代湖流域の概要図を示す。長瀬川、及び猪苗代湖周 辺の河川のイオン負荷特性を検討するため、長瀬川においては上 流から湯川橋、酸川野、沼ノ倉、長瀬川橋、小金橋、周辺河川にお いては舟津川、菅川、常夏川、原川、また猪苗代湖で現地観測を 行った。調査内容は各地点で流量観測を行い、採水した試料をホ リバD21からpHを、高感度イオンクロマトグラフィー(日立製作所)

から、陰イオン、陽イオン濃度を、誘導結合プラズマ発光分光分析 装置(ICP-AES Optima4300DV Perking Elmer)から含有元素濃度 を測定した。

Mg

0 10 20 30 40 50

湯川橋 酸川野 沼ノ倉 長瀬川橋 小金橋

Mgイ負荷量(g/

Fe

0 10 20 30 40 50

湯川橋 酸川野 沼ノ倉 長瀬川橋 小金橋

Feイ(g/s)

Al

0 20 40 60 80 100

湯川橋 酸川野 沼ノ倉 長瀬川橋 小金橋

Alイ負荷量(g/s)

SO4

0 500 1000 1500

湯川橋 酸川野 沼ノ倉 長瀬川橋 小金橋

SO4負荷量(g/s) Ca

0 50 100 150 200

湯川橋 酸川野 沼ノ倉 長瀬川橋 小金橋

Caイ負荷量(g/s)

Na

0 50 100 150

湯川橋 酸川野 沼ノ倉 長瀬川橋 小金橋

Naイ(g/s)

3.  長瀬川における各種イオン負荷量の検討

  図2に2004 年度に日本大学で計測した長瀬川における各地 点でのイオン負荷量の平均値を示す。この図より、Ca,Na,Mgは 流下に伴い負荷量の平均値が高くなっていることがわかる。また、

Feは酸川野から沼ノ倉にかけてFeイオンがリンや汚濁物質と吸 着しフロックを形成しているため流下に伴い負荷量が減少してい ると推測できる。SO4と Al については計測点による変動はほぼ 一様である。また、猪苗代湖周辺河川の含有元素の負荷量を図 3に示した。各種イオン負荷量について各々の特徴はあるものの 含有量は長瀬川に比べると非常に小さい。また、表 1 より、長瀬 川にくらべ河川でのpHは7前後と中性をしめしている。

図2長瀬川における各種イオン負荷量の平均値

舟津川

0 2 4 6 8 10

SO4 S Cl Al Fe Mg Ca Na K

イオ(g/s) 菅川

0 1 2 3 4

SO4 S Cl Al Fe Mg Ca Na K

イオ(g/s)

常夏川

0 3 6 9 12

SO4 S Cl Al Fe Mg Ca Na K

負荷量(g/s)

原川

0 1 2 3 4 5

SO4 S Cl Al Fe Mg Ca Na K

負荷量(g/s)

図3 猪苗代湖周辺河川の水質 1 猪苗代湖流域河川におけるpHの平均値

長瀬川 舟津川 常夏川 菅川 原川

3.52 7.00 6.73 6.96 7.18

土木学会第60回年次学術講演会(平成17年9月)

-541- 2-271

(2)

0 1 2 3 4 5 6 7 8

0.0 0.1 0.2 0.3 0.4

Ca比率

pH

0 1 2 3 4 5 6 7 8

0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 Al比率

pH

0 1 2 3 4 5 6 7 8

0 0.1 0.2 0.3 0.4

Na比率

pH

0 1 2 3 4 5 6 7 8

0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 Fe比率

pH

0 1 2 3 4 5 6 7 8

0 0.05 0.1

Mg比率

pH

4.  長瀬川における硫酸濃度と含有元素の比率との関係 4に長

    図 瀬川流域におけるpHと、硫酸イオンと主な含 有元素の比率の比率の関係を示した。Ca,Na.MgではpH の上昇に伴い含有元素の比率も大きくなり、水中に溶けや すい元素だといえるだろう。図5に長瀬川における硫酸イオ ン濃度と主な含有元素との比率の関係を示した。図 5 より、

Ca,Na,Mg においては、硫酸濃度が低くなると、含有元素

の比率が高くなる傾向が見られるが、Fe や Al の比率に おいては硫酸濃度との関係は見られない。そこで本研究

ではCa,Na,Alの中和反応を考慮して、長瀬川における

pHと硫酸イオン濃度との関係式を求める。

4 長瀬川における含有元素比率のpHの関係

4.長瀬川流域におけるpHと硫酸イオン濃度の関係 本調査と福島県 3)による測定結果から得られた結果を 次式に示す

 

pH = 12 . 5 ( SO

42

)

0.285         式(1) 次に主要な含有元素の中和反応を考える。

Ca2+が全てCaOとH2SO4による中和で生じたとすると、

O H SO

Ca SO

H

CaO +

2 4

 →

2+

+

42

+

2 式(2) 同様にNa、Mgの中和反応を計算式に加えると

式(4)

よって、pHの推定式は次式のように求められる。

[ ] [ ] [ ] [ ]

3 2

2 2

4 10

24 2 23 40

2 96

log 2

+ +

+

×

= SO Ca Na Mg

pH

式(5) 以上の計算結果を図 6 に表す。このグラフから、硫酸のみ を考慮して計算した場合と、Ca の中和を計算に加えた計 算式では実測値との差が大きい。しかし Na の中和を考慮 に加えると計算式は実測値に近づく。Mg については、硫 酸イオンに対する含有比率が0.1未満とCaやNaに比べ ると小さいため大きな影響は与えないが、わずかではある がさらに実測値に近づく。

 5. まとめ

 Ca,Na,Mgの中和を考慮することで、硫酸イオン濃度から

pH を推定した。計算値は実測値に近づき pH6近傍の猪 苗代湖内 の変化も概ね表すことができた。そして硫酸イオ ンの他に、Ca,Na などの比率の大きなものが湖内 の中性 化に影響を与えていることがわかった。今後さらに他の含

有元素と特性を調べpH上昇の要因を解明し、計算の精度 をあげていく必要がある。

参考文献:

1) 長林・藤田:猪苗代湖におけるpHの推移に関する検討,

東北地域災害研究第36巻,pp.135-140, 2000.

2) H.NAGABAYASHI, et al: Simulated Analysis of Water Quality Transition in a Sulfuric-acid Lake, Proc. 13th IAHP-APD, Singapore, pp.931-935, 2002.

3) 福島県生活環境部:福島県水質年報 5 硫酸濃度と含有元素比率の関係

O H SO Mg

SO H

MgO +

2 4

2+

+

42 2

1 3 5 7

0 200 SO42- (mg/l) 400 600

pH

実測値 SO4濃度 Ca中和

Ca,Na中和 Ca,Na,Mg中和 実測値の近似線  pH = 12.5 (SO42-)-0.285

O H SO

Na SO

H O

Na2 + 2 4 → 2 ++ 42+ 2

6 長瀬川、猪苗代湖におけるpHと硫酸イオン濃度の関係

0.0 0.1 0.2 0.3

0 500 1000 1500 2000

SO4濃度(mg/l)

Ca/SO4

0 0.1 0.2

0 500 1000 1500 2000

SO4濃度(mg/l)

Na/SO4

0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1

0 500 1000 1500 2000

SO4濃度(mg/l)

Fe/SO4

0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1

0 500 1000 1500 2000

SO4濃度(mg/l)

Al/SO4

y = 0.323 x-0.512

0 0.02 0.04 0.06

0 500 1000 1500 2000

SO4濃度(mg/l)

Mg/SO4

0.4 0.4 0.1

y = 1.200 x-0.500 0.3 y = 1.100 x-0.600 0.08

式(3)

土木学会第60回年次学術講演会(平成17年9月)

-542- 2-271

参照

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