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山崎 幸子氏 博士学位申請論文審査報告書

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2008 年7月7日 人間科学研究科長 殿

山崎 幸子氏 博士学位申請論文審査報告書

山崎 幸子氏の学位申請論文を下記の審査委員会は、人間科学研究科の委嘱をうけ審 査をしてきましたが、2008 年 7 月 1 日に審査を終了しましたので、ここにその結果を ご報告します.

1.申請者氏名:山崎 幸子

2.論文題名: 閉じこもり高齢者の外出行動に対する行動変容理論の適用

3.本論文の構成と内容

本研究の主な目的は,高齢者の閉じこもり改善のために行動変容理論であるトランス セオレティカル・モデル(Transtheoretical Model: TTM)を用いたアプローチの適用 について検討することであった.TTM とは,個人が行動を変容させる過程には段階(変 容 段 階 ) が あ り , そ の 段 階 に そ っ た ア プ ロ ー チ が 重 要 で あ る と い う 理 論 で あ る

(Prochaska & DiClemente,1992).対象者の関心の程度によって 5 つに段階(前熟考期, 熟考期,準備期,実行期,維持期)に分類し,それぞれの段階に応じたアプローチによ って行動変容を図るもので,禁煙,運動,その他の不健康なライフスタイルの行動変容 において成果が報告されている.

先行研究として,諸外国における homebound 研究,わが国における閉じこもり研究に ついての展望を行い,介護予防という視点からわが国における閉じこもり改善に有効な 介入手法の開発に向けて検討した.Homebound は,「家から出るときに介助を必要とす る場合,家から外に出るときにかなりの労力を要する場合,家から外に出てはいけない とされる身体的,精神的状態にある場合」として定義されているが,わが国における閉 じこもりは「身体的障害がなくても家に閉じこもっている状態」であり,廃用症候群な どにより要介護状態へのリスクファクターとしてとらえられている.本研究では,閉じ こもりを「週 1 回未満の外出頻度で,要介護状態の高齢者は除外する」と操作的に定義 した.また,閉じこもりを「家から外に出ない」というライフスタイルとしてとらえ,

不健康なライフスタイルを変容させるアプローチの必要性について言及し,TTM の適用 可能性を検討した.高齢者における TTM を適用した先行研究を展望し,閉じこもり改善 のために TTM を適用する際の課題について,①閉じこもり支援における対応困難点,現

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状の問題点の抽出,②家族関係など社会的側面の検討,③TTM を説明する諸変数の整備 や尺度作成,④変容段階別に今後の閉じこもり改善のための働きかけの示唆を得ること の4点を挙げた.

研究1では,行政保健師ら 7 名を対象に,対応困難点や今後の検討課題についてフォ ーカス・グループインタビューを用いて検討した.その結果,①閉じこもりの問題意識 のなさ,同居家族のバリア,心理的な問題などを,対応困難事例の背景要因として抽出 した.②働きかけが成功した事例からは,閉じこもりのリスクを対象者が認識している こと,家族のバリアがないことなどを背景要因として抽出した.③今後の課題として,

心理的な問題による閉じこもりへの対応方法の検討,家族への情報提供,1 プランのみ 提示するアプローチの 3 点が抽出された.

研究2では,閉じこもりの家族を主とした対人関係の特徴を検討するために,性別,

年齢および移動能力をマッチングさせた閉じこもり群 69 名(男性 42 名、女性 27 名、

平均年齢 70.6 歳)と非閉じこもり群 73 名(男性 41 名、女性 32 名、平均年齢 70.5 歳)

を対象に戸別訪問によるインタビュー調査を行った.その結果,①閉じこもりは同居家 族との家計が一緒の人が多く,家族との会話や家庭内で担う役割の数が少なかった.② 閉じこもりは親しく交流している人が居宅から 30 分以内に留まり,悩み事を聞いてく れるような情緒的サポートや,外出援助が少ないことが示された.

研究 3 では,TTM の適用にあたり測定尺度の整備を行った.地域高齢者 2628 名(男 性 1145 名,女性 1483 名,平均年齢 73.8 歳)を対象に調査を行い,外出に対する自己 効力感を測定する尺度を作成(研究 3-1),外出行動に対する変容段階尺度を作成(研 究 3-2)し,これらの変数間の関係を検討した.その結果,①6 項目からなる信頼性と 妥当性の確認された外出に対する自己効力感尺度を作成した.②外出行動に対する変容 段階尺度は,変容段階が後期になるにつれ,年齢は若く,健康関連 QOL の得点が高くな る傾向が認められた.③変容段階が後期になるにつれ,外出に対する自己効力感の得点 が高くなることが認められた.

研究4では、地域高齢者の 1 年間フォローアップ調査対象者 1071 名のうち,閉じこ もり状態から非閉じこもりに改善した閉じこもり改善群 5 名(男性 2 名,女性 3 名)と 非閉じこもりから閉じこもり状態になった閉じこもり移行群 6 名(男性 2 名,女性 4 名)

に半構造化面接を用いて外出に対する意思決定バランスの探索的検討を行った.その結 果,外出に対する意思決定バランスとして,恩恵カテゴリー8,負担カテゴリー9 を抽 出した.

研究 5 では,閉じこもりの改善に関する要因を抽出するために,研究4の対象者に半 構造化面接を行い,閉じこもりの移行および改善に関する要因カテゴリーと変容段階と の関連を探索的に検討した.その結果,①外出の必然性のなさや,家族の代行サポート が閉じこもり状態への移行と関連し,②外出の必然性があること,一緒に行ってくれる 外出援助に関するサポートが閉じこもりの改善に関連するカテゴリーとして抽出され

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た.③前熟考期から準備期では,家族からの外出の援助はなく,反対に,代わりにやっ てあげるという代行サポートのカテゴリーが認められた.

総合考察では,全ての研究の成果についてのまとめおよび TTM の適用による閉じこも り改善のための示唆,今後の課題について論じた.閉じこもり改善において,各変容段 階で効果的であると考えられる働きかけを,本研究で得られた結果から示唆し,加えて 同居家族へのアプローチも同時に検討する必要性があることを考察した.今後の課題と して,本研究はインタビュー者の数が少なかったことから,対象者を増やしてのさらな る検討が望まれること,また,本研究結果を基に閉じこもり改善のための介入を実施し,

効果検討を行うことが課題であることを論じた.

4.本論文の評価

本研究は,これまで有効な介入方法が確立されていない閉じこもり研究の中で,閉じ こもりを不適切なライフスタイルと捉え,ライフスタイル変容のために行動変容理論で ある TTM を背景にした介入方法を検討した点は,閉じこもり研究に大きな貢献を果たし たといえる.本研究をベースに,実際の介入による行動変容を試み,その成果をエビデ ンスとして蓄積することが望まれるが,閉じこもり研究に新たな視点と基礎資料を提供 したことは,本研究の特筆すべき成果であると考える.

したがって,本審査委員会は,山崎幸子氏の学位申請論文「閉じこもり高齢者の外出 行動に対する行動変容理論の適用」が博士(人間科学)に値する研究であるとの結論に 至った.

5.山崎 幸子氏 博士学位申請論文審査委員会

主任審査員 早稲田大学 教授 博士(医学)(東京大学) 野村 忍 印 審 査 員 早稲田大学 教授 Ed.D.(ボストン大学) 竹中 晃二 審 査 員 早稲田大学 教授 博士(人間科学)(早稲田大学) 嶋田 洋徳 審 査 員 早稲田大学 教授 植村 尚史

参照

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研究対象者の概要は、 独居者は 16 名 (男性 8 名、女性 8 名) 、 平均年齢は 76.1 歳 (SD 5.3) 、 家族と同居者は 22 名(男性 14 名、女性 8 名) 、平均年齢は 75.9

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文科系の大学生 114 名(男性 33 名,女性 81 名) ,平均年齢 19.4 歳(s =0.61) ,および文科 系の短期大学生 16 名(男性 2 名,女性 14 名) ,平均年齢 18.2

 内訳は、男性 49 名、女性 161 名、年齢 23 歳~ 62 歳(平均 30.2 歳)であった。大学院 修士課程在学者 100 名、修了者が 107 名(無 回答 3 名)であった。うち、修士 1

女性 6 名、平均年齢 56.3±16.1 歳) 、感冒後嗅覚障害(男性 6 名、女性 19 名、平均年齢 53.5±12.8 歳) 、頭部外傷後嗅覚障害(男性 3 名、女性 3 名、平均年齢

女性 110 名、平均年齢 40±15.7 歳)とした。100 名の健常ボランティア(男性 23 名、女性 77 名、平均年齢 34.0±12.6 歳)と 50 名の嗅覚障害患者(男性 17 名、女性

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 本研究では,健常大学生 20 名(女性 10 名,男性 10 名,平均年齢 21.2