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Academic year: 2021

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論文内容の要旨

A New Method for Assessment of Retronasal Olfactory Function

(訳)レトロネイザル嗅覚機能の新たな評価方法

日本医科大学大学院医学研究科 頭頸部・感覚器分野 研究生 吉野 綾穂

The Laryngoscope (2020)掲載

(2)

嗅覚は、オルソネイザル(前鼻孔から嗅球へ)とレトロネイザル(口腔から後鼻孔 を経由して嗅球へ)の

2

つの経路で知覚される。これらの

2

つの経路は、嗅覚誘発脳波 や、磁気共鳴機能画像法(functional magnetic resonance imaging, fMRI)により、情報処 理法が異なることが報告されている。

オルソネイザル嗅覚研究は多数報告があるのに対し、レトロネイザル嗅覚研究は非 常に少ない。嗅覚障害患者の多くが味覚障害も同時に訴えることが知られているが、これ はレトロネイザル嗅覚が障害されたことによる風味障害が関係している。そのため、嗅覚 障害患者の嗅覚機能を評価する際に、オルソネイザル嗅覚の評価だけでなくレトロネイザ ル嗅覚も評価することが重要である。

レトロネイザル嗅覚の評価方法として、Taste powdersを用いる方法が挙げられる。

これは、市販のスパイスやインスタントスープなど二十種類の風味パウダーを用いて、口 腔内に投与されたパウダーが何かを同定し、その正解数の合計をスコアとするレトロネイ ザル嗅覚検査方法である。しかし、食品を用いているため、味覚刺激や食感が正答の手掛 かりとなってしまう欠点が指摘されていた。そのため本研究では、味覚刺激を最小限に抑 えるために“無味”の風味パウダーを用いることで、新たなレトロネイザル嗅覚検査法を確 立することを目的とした。

対象は、2018年にドレスデン工科大学の嗅覚味覚外来を受診した

150

名(男性

40

名、女性

110

名、平均年齢

40±15.7

歳)とした。100名の健常ボランティア(男性

23

名、女性

77

名、平均年齢

34.0±12.6

歳)と

50

名の嗅覚障害患者(男性

17

名、女性

33

名、平均年齢

52.3±14.3

歳)を比較した。嗅覚障害の原因の内訳は、特発性(男性

6

名、

女性

6

名、平均年齢

56.3±16.1

歳)、感冒後嗅覚障害(男性

6

名、女性

19

名、平均年齢

53.5±12.8

歳)、頭部外傷後嗅覚障害(男性

3

名、女性

3

名、平均年齢

37.8±8.8

歳)、副 鼻腔炎(男性

2

名、女性

5

名、平均年齢

53.6±14.8

歳)であった。

オルソネイザル嗅覚は Sniffin’ Sticks を用いて評価した。Sniffin’ Sticks は、フェル トペンの中に嗅素が入っているペン型の検査キットで、同定検査、識別検査、検知域値検 査で構成されている。これらの検査結果の合計点(1〜48点)から、嗅覚脱失、嗅覚低 下、嗅覚正常の診断を行った。

また、レトロネイザル嗅覚検査には、味覚刺激を最小限に抑えた二十種類の“無味”

の風味パウダー(Givaudan Schweiz AG, Dubendorf, Switzerland;以下風味パウダーと称す る)を用いた。被験者に目隠しをして、鼻翼を指で両側から圧迫した状態で挺舌させた後、

0.05g

の風味パウダーを舌背に留置した。その後閉口させ、鼻翼圧迫を解除、鼻腔から

呼気排出を行わせ、4つの選択肢から何の香りかを回答させた。風味パウダー投与間隔は 約

30

秒とし、パウダー投与後は毎回水で口腔内をゆすぐよう指示した。正解数の合計を レトロネイザルスコアとして算出した。

健常者は検査の信頼性の検討のため、1週間以内に

2

回(テスト、再テスト)、嗅覚 障害患者では

1

回のみ、オルソネイザル嗅覚検査、レトロネイザル嗅覚検査を行った。

(3)

100

名の健常ボランティアのうち、オルソネイザル嗅覚検査で嗅覚正常と診断され た

94

名において、1)2回の測定で、正答・誤答の一貫性のない風味パウダーを除外、2)

テスト、再テストの相関分析、3)Bland-Altman plotの作成、4)級内相関係数

(Intraclass correlation coefficient; ICC)の算出を行い、レトロネイザル嗅覚検査の信頼性 の解析を行った。

その結果

2

回の測定で正答・誤答の一貫性が低い風味パウダー(レモン、ヨーグル ト、チョコレート、チェリー)を除外した。レトロネイザル検査のテスト、再テスト間で の

Pearson

相関係数は

0.6(p<.001)であった。Bland-Altman plot

はテスト、再テストの 測定値の差を

y

軸、平均値を

x

軸にプロットした散布図である。ICCは

0.73

であり、これ らの結果から、レトロネイザル検査法の信頼性は適正であると考えられた。

次に、オルソネイザル嗅覚検査結果とレトロネイザルスコアの相関分析、嗅覚正常 群、嗅覚低下群、嗅覚脱失群の

3

群でのレトロネイザルスコアの比較、ROC曲線

(receiver operating characteristic curve)の作成を行い、レトロネイザル検査の有効性の 検討を行った。

その結果、レトロネイザルスコアはオルソネイザル嗅覚機能と有意な相関を認めた

(r150=0.88、p<0.001)。レトロネイザルスコアは、嗅覚脱失群、嗅覚低下群、嗅覚正常 群の

3

群比較で有意差を認めた。レトロネイザルスコアは

3

群においてそれぞれオーバー ラップがあり、カットオフ値を定めるにあたって嗅覚低下群の

25

パーセンタイル(11.5 ポイント)、嗅覚脱失群の

75

パーセンタイル(8ポイント)に注目した。カットオフ値

11.5

ポイントでは、感度

100%、偽陽性率 35.7%、ROC

曲線下面積(Area under curve;

AUC)0.93

であった。同様に嗅覚低下群と嗅覚脱失群のカットオフ値

8.5

ポイントでは、

感度

96%、偽陽性率 12.9%、AUC0.97

であった。

以上のことから、レトロネイザルスコア

0

から

8

をレトロネイザル嗅覚脱失、9か ら

12

をレトロネイザル嗅覚低下、13以上をレトロネイザル嗅覚正常と提唱する。

参照

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