論 文 要 旨 等 報 告 書
氏
授 与 し た 学 位 専 攻 分 野 の名 称 学 位 授 与 の番 号
植博歯博
田 ・紘 貴
甲
士学83
第 3 7号
学位 授 与 の 日付 平.成 2 ‑1 年 3 月 2 5 日
学 位 授 与 の 要 件 医歯薬学総合研究科機能再生 ・再建科学専攻 (学位規則第4粂第1項該 当) 学 位 論 文 題 名 ラット上唾液核ニューロンにおけるセビメリンの興奮性作用に関する電気生理
学的解析
,散 文 審 査 委 員 教授 北 山 滋雄 教授 松尾 龍二 准教授 市川 博 之
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
【落書】
セ ビメ リ′ン(C10H17NSO:(±トcis‑2一methylspiro[1,3‑0Xathiolane‑5,3'‑quinuclidine])は ムスカ リン様受容体作動薬である。当初、脳神経変性疾患であるAl血eimer病の記憶 ・学習 ・罷 知機能庫害の改善を目的に開発が進められた。しか し、第一相路床試験および一般薬理試験にお いて副次的に唾液分泌の促進を罷めたごとか ら、 口腔乾燥症治療薬 として承認 されている。
その作用機序は、唾液腺に存在するムスカ リン様受容体に結合することにより唾液分泌を促進 すると考えられている。しか し、中枢神経作動薬 として開発 された経緯や血液脳関門を通過す る ことか ら;'セ ビメ リンが中枢神経系を介 して唾液分泌に影響を与えている可能性が考えられ る が壷霊器 差詣 諾窪に諭 枢性に制御 さ隼 いる。上唾液核ニュー。ンは延髄外側網様体の 吻側に位置する副交感神経の起始核であり、顎下神経節 を介 して顎下腺、舌下腺の唾液分泌を支 配す る。近年、ラッ ト上唾液核ニュー ロンにおける興奮性入力がグル タミン酸受容体 (NMDA 受容体およびnon‑NMDA受容体)を介す ることが明 らかになった。 しか し、ムヌカ リン受容体 についての報告はない。
本研究では、セ ビメリンが中枢神経系を介 して唾液分泌に影響を与える可能性 を検討す るた め、ラッ トを使用 し上唾液核ニューロンに対するセ ビメ リンの影響を電気生理学的に検討 した。
さらに、免疫組織化学的に上唾液核ニューロンに存在す るムスカ リン様受容体のサブタイプを検 討 した。
【材料および方法
】
1
:上唾液核ニューロンの逆行性蛍光標識およ●び新鮮脳スライス標本の作製生後67‑10日齢のWiぬr系ラ\ッ ト(n=28)の鼓索・舌神経に5・10% Dextran1TexaSRed・lyBine を注入 し、逆行性に上唾液核ニューロンを蛍光標識 した。手術2日後、ハ ロセン麻酔下にて断頭 後、速やかに脳を掃出 し、厚 さ200〟mの矢状断スライス標本を作製 した。
2:神経活動の記録
ホールセルパ ッチクランプ法により、上唾液核ニューロンの電気的活動を記録 した。保持電位 ニー70mV、≠5'〃Mテ トロ ドトキシ㌢存在下で、セ ビメリン (10‑1000〃M)により誘発 さ れる微小興奮性シナプス後電流 (mimitweexcitatorypost8ynaPticcu∬ent,mEPSC)お よび膜 電流を測定 した。また、ムスカリン様受容体の阻奮剤が上唾液核の興奮性に与える影響を検討したO 阻害剤は全て2pMで使用した。薬物は、電磁弁を用いたMacroYtube法により15藤 間投与 し たb膜電位は、静止膜電位 (I‑70mV)か ら電流注入を行い (‑50mV)に維持 して測定 した。
3:免疫組織化学的二重染色
生後9日齢のIwiStar系ラッ ト(A‑4)の鼓索骨 神経にl0/oFluoroGold(FG).を注入 し、逆行 性に上唾液核ニューロンを蛍光療織 した。手術2日後、上唾液核を含む凍結切片 (8〃m)を作 成 し、ムスカ リン様受容体 (Ml・M5)に対す る一次抗休を反応 させた後、RhodamineRed・Ⅹで 蛍光標織 した二次抗体を反応 させた。
4:統計分析
結果は平均値土標準敵差 にて示 した。有意差検定はStudentfSt検 定 を行 い、危険率5%以下 を 有意差 あ りと判定 した。
【結果
】
1
)観察 した全ての上唾液核 ニ ュー ロン (n=14)におい て、セ ビメ リンに よ り内向き電流が発 生 した。 また、内向尊宅帝 は用量依存的 に増大 した。2)セ ビメ リンに.よ りmEPSCの発 生頻度 が上昇 した (n=8/14).
3)セ ttLl,メ リンに よ り膜電位 が脱分極方 向‑上昇 し発火 したh=3).
4) Ml受容体遮断薬 の存在下で、セ ビメ リンに よ り誘発 され る内向き電流 の大 き さが有意に減 少 した (p<0.05 8tudenttte8t)。
5)免疫組織化学的実験(n=4)において,FG陽性細胞であ る上唾液核 ニュー ロン とMl,M3受容 体 陽性細胞が一致 した.
【考察
】
1
) 観察 した全ての上唾液核 ニ ュ丁 ロンにおいて、セ ヂメ リンに よ り内向き電流が発生 し、その 大 き さは用量依存的に増大 した ことか ら、上唾嘩核 ニュ∵ ロンのシナプス後膜 にムスカ リン様\ 受容体が存在す るこ とが示唆 された。2)14例 中 8例において、セ ビメ リンによ りmEPscの発生頻度が上昇 した ことか ら、これ らの ニ ュー ロンではシナプチ前膜 に もムスカ しリン様受容勧 ミ■ 存在す る可能性 が示唆 され た。
3)セ ビメ リンに よ り膜電位 の上昇 と発火 が静 め られた こ とか ら、興奮性 の作用 を有す ることが 示唆 された。
4)Ml受容体遮断薬 の存在 下で、セ ビメ リン によ り誘発 され る内向き電流 の大 きさが有意 に減 少 した ことか ら、Ml受容体 が上唾液核 ニ ュー ロンの興奮性 の促進 に関与 してい る可能性 が示 唆 された。
5)免疫組織化学的実掛 こおいて、二FG陽性 細胞 と.Ml,M3受容 体陽性細胞が一致 した ことか ら、
上唾液核 ニュー ロンにMl受容体お よびM3受容体が存在す ることが示唆 された。
【結
倫】
1
.セビメリンは上唾液核ニューロンの興奮性を促進する。2.観 察した全ての上唾液嘩ニューロンのすべてのシナプス後膜 にムスカリン様 受容体 が存在する。そ のうち、約60%のニューロンにおいては、シナプス前膜においてもムスカリン様受容体 が存在する。
3.上唾液核ニューロンに存在するムスカリン様受容体 はMlおよびM3受容体である。このうちMl受 容体を介した反応が大きい。
以 上の ことか ら、‑顎下腺 ・舌下腺 の唾液分泌 の一次 中枢 である上唾液核 ニ ュー ロンにはMl受 容体お よびM3受容体が存在 し、その うち、.セ ビメ リンは主 にMl受容体 を介 して上唾液核ニ ュ ー ロンの興奮性 を促進す る可能性 が示唆 された。