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(1)

- 99 -

過剰適応傾向の大学生のコラージュ作品の表現特徴に関する検討

人間教育専攻

臨床心理士養成コース 下 原 早 紀

1.  問題と目的

過剰適応とは「環境に適応するために他者か らの要求や期待に沿うべく過剰に他律的な適応 方略をとることJ(石津・粛藤, 2011)である。

過剰適応の問題として,ネガティブな感情の 抑圧が挙げられる。過剰適応的な中学生は,怒 りを抑制しやすく,怒りに対する罪悪感が高い こと(近藤, 2012),過剰適応的な高校生は,反 抗や敵意を悪し、もののように抑圧してしまう傾 向があること(桑山, 2003)が明らかlこされてい る。感情の抑圧は,本音を見失うことにつながるO

本音の存在に気付かないと,これをコントロー ルすることがで、きなくなり,その結果,本音が極 めてグロテスクな形でのさばることになると指摘 されており(土居, 1985),深刻な問題となること が予測される。過剰適応的な大学生と感情抑制 との関連を検討した先行研究は見当たらなし、

が,大学生においても,過剰適応的な者は感 情を抑制する可能性が考えられる。そこで本研 究では,([過剰適応と感情表出の制御との関 連につして検討することを目的とする(研究

I)。

また,杉原 (2001)によると,過剰適応的な 者は,深刻な問題を抱えていたとしても,その ような面を人に見せようとはしないし,見せる ことが求められる場面を避ける傾向にあると予 測されている。そのため,適切な支援を行うた めには,彼らの内界を知る術が必要になる。そ こで本研究では,過剰適応的な大学生の内界を

指 導 教 員 小 倉 正 義

理解する手がかりとしてコラージュ体験を実施 し,⑫開適応的な大学生のコラージュ作品に みられる表現特徴を明らかにすることを目的と する(研究ll)。

2 .

研究

I

( 1 )

調査協力者

:A

大学・

B

大学・

C

大学の大 学3・4年生140名(男子64名,女子75名,不 明 1名)。

(2)  調査時期:2014年7月"‑'11月。

(3)  手続き :A大学および

B

大学では授業時聞 に質問紙への回答を求めた。 B大学の一部お よびC大学では,郵送にて質問紙を依頼・回収 した。

(の質問紙の構成

①フェイスシート:学年,年齢,性別,氏名に ついて尋ねた。⑫晶剰適応尺度:石津・膏藤 (2011)によって作成された大学生用過剰適応

尺度の31項目を用いた。@鴻情表出嗣脚尺度:

星・新井 (1998)によって作成された尺度の 20項目を用いた。

(司結果と考察

'過弟随応スタイルの分類

過剰適応の特徴を特定するため, Ward法に よるクラスタ分析を行い, 5クラスタによる分 類を採用した。全ての下位尺度得点が平均的な

「平均群(CL1)J(N=70),全ての下位尺度得点 がやや高い「過剰適応傾向群(CL2)J(N=32),  全ての下位尺度得点が低い「マイペース群 (CL3)J (N=19),自己抑制得点のみが低い「衝

(2)

- 100 -

- 99 -

動性群(CL4)J(N=12),全ての下位尺度得点が 高い「過剰適見:群(CL5)J(N=ηとした。

ー過弟随応傾向と感情表出の申腕との関連 これらのクラスタパターンを独立変数,感情 表出の制御尺度の下位尺度を従属変数とした一 元配置分散分析を行った結果,有意差が認めら れたので,日keyのHSD法による多重比較を 行った。その結果,言語的被害場面 (p<.05), 友人の不幸経験場面(pく.10),友人の幸福・満 足場面,体面の気になる場面(pく.05)におい て「過剰適応群」が他の群よりも感情表出の制 御を行っていることが明らかになった。このこ とから,過剰適応的な大学生は怒り表出場面で は,怒りを抑制し,悲しみゃ寂しさの般情は抑 制のみでなく,周りの空気や他者の目を気にし て表出も行っていることが明らかになった。

3 .

研究

E

(1)調査協力者:B大学3年生・ 4年生27名。 (劫調査時期:2014年9月。

(劫調査道具:コラージュの統一素材(今村ら,

2014 ;二村ら, 2014),はさみ,のり,八つ切 り画用紙

(の手続き:B大学の授業の一環として実施され た。はじめに過剰適応傾向を測定する質問紙に 回答後,マガ、ジンヒoクチャーコラージュ法によ

りコラージュ制作体験を実施した。

(司結果と考察

過剰適応尺度の下位尺度の組み合わせのパタ ーンから, Ward法によるクラスタ分析を行い,

2クラスタによる分類を採用した。全ての下位 尺度得点が低い「過剰適応低群(以下, CL1)山)J, 全ての下位尺度得

CL2 )Jとした。分析項日の出現の有無と過剰 適応傾向の関連を検討するため,フィッシャー の直接確率法を用いて比較を行った。

形式分析ではタイトル(直接確率法,両担u検 定,p=

0 . 0 2 )

で, CL1がCL2よりも有意に多 かった。過剰適応的な者の「自分が何を求めて いるかをうまく玉里解できない」という特徴から (斎藤, 2012),自分の 表現したいこと"を うまくつかめずタイトルをつけなかった可能性 が考えられるのではないだろうか。また,内容 分析では,人間の切り抜き枚数が, CL2が CL1 よりも有意に少なく

( t

(24) =1.46, 

p

く.10),

「乳幼児・子ども

J

(直接確率法,両損l験 定,

p

=0.99)の切り抜きもCL2が貼らない傾向が認 められた。ここから,過剰適応的な者の人間関 係に対する安心感のなさ(山田, 2010)が表現さ れているのではないかと考えた。「日用品

J

(直 接確率法,両個l険 定,p=

0 . 0 0 2 )

は, CL2がCL1

よりも有意に多かった。また,分析対象者を女 子のみにした結果, CL2は I女性らしさ

J ( t  

(17) =1.93,1<.10), I抽象的なJ

( t

(17) =2.18,  1<.05)印象が強く I男性らしさJ

( t ( l

η=2.71,  pく.05)が弱いことが明らかになった。このこ

とから, CL2はCL1よりも,社会的な「女性 性」をより薪載している傾向がうかがわれた。

4.今後の課題と展望

第一に,材汗究では調査協力者が少なかった ため,一般化することは難しいと考えられる。

今後調査協力者を増やし,より過剰適応的な大 学生のコラージュ作品の表現特徴や性差につい ても検討していく必要があるだろう。

第二に,材汗究では眠Ij跡芯的な者がコラ ージュ制作時に,不企感やしんどさを抱いてい ることがうかがわれた。制作時に抱いた不全感 やしんどさに寄り添うことで,彼らがその気持 ちを語る場が必要であると考えられた。彼らの そのしんどさを共感的に聴いていくことが,感 情表出の手助けとなるのではないだろうか。

参照

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