博士課程用(甲)
- 1 -
(様式6-A)A. 雑誌発表論文による学位申請の場合
中澤 拓郎 氏から学位申請のため提出された論文の審査要旨
題 目 Wide expression of ZEB1 in sarcomatous component of spindle cell carcinoma of the esophagus (食道癌肉腫の肉腫様成分におけるZEB1発現の検討)
Pathology International, 65: 635 - 643, 2015.
Takuro Nakazawa, Sumihito Nobusawa, Hayato Ikota, Hiroyuki Kuwano, Izumi Takeyoshi and Hideaki Yokoo
論文の要旨及び判定理由
上皮間葉移行(EMT)は、胎生期発生、創傷治癒、線維化等のメカニズムに関して重要な役割を担 っており、腫瘍浸潤部における芽出、腫瘍細胞の脱分化、また腫瘍における肉腫様変化などにおい ても、その役割が注目されてきている。一方で食道癌肉腫は癌腫成分と肉腫様成分が共存する稀な 組織型であり、その病理発生について不明な点が多い。
そこで食道癌肉腫においてEMT関連転写因子が肉腫様成分の発生に関与しているかを検討する ため、外科的に切除された食道癌肉腫14例のホルマリン固定パラフィン包埋標本を用いて、癌及 び肉腫様成分に対して、Slug, Twist, ZEB1, ZEB2及び、その消失がEMTの特徴とされるE-cadherin の発現を免疫組織化学的に比較検討した。各分子の発現は、陽性細胞の割合を5段階評価でスコア リングした。さらに、癌成分と肉腫様成分のmonoclonalityの検討、ならびに肉腫様成分と腫瘍浸 潤に伴う線維化との鑑別を目的として、p53の免疫染色、TP53遺伝子変異解析を両成分間で行っ た。TP53の遺伝子解析は、検体量の多かった13例について、癌及び肉腫様成分から別々にDNA を採取し、変異のHot Spotが存在するとされるExon5-8についてシークエンスを行った。
症例の男女比は13:1、年齢は55〜85歳、平均は68歳であった。腫瘍は13例でポリープ状の肉 眼形態を呈していた。Slug, Twist, ZEB1, ZEB2, 及びE-cadherinのうち、Twist (P = 0.0303) , ZEB1 (P< 0.0001) は肉腫様成分に有意に広く発現していた。またE-cadherin (P< 0.0001) は肉腫様成分で 有意に発現が消失していた。さらにTwist, ZEB1で、腫瘍浸潤部と肉腫様成分間で免疫染色による 発現を比較すると、ZEB1 (P < 0.0001) にのみ有意差が認められた。p53免疫染色では、5例におい て癌および肉腫様の両成分間で陽性であり、染色強度及び陽性率はほぼ両成分間で一致していた。
TP53 遺伝子変異は、7 例において両成分間で完全に一致したパターンの変異が認められた。また、
通常の食道扁平上皮癌でHot spotとされるExon5において変異は認められなかった。
以上より、食道癌肉腫においてZEB1が有意差をもって肉腫様成分に広範に発現していることが 明らかにされ、ZEB1発現を介して肉腫様成分が癌成分から分化してくる可能性が示唆された。ま た、p53の免疫染色及び遺伝子変異解析により、癌および肉腫様成分のmonoclonalityが強く支持さ れるとともに、Exon5の変異回避が食道癌肉腫の生物学的特徴である可能性が示唆された。
本研究は、食道癌肉腫の肉腫成分が、EMT関連転写因子のZEB1の発現を介して癌成分から発 生した可能性を示すと同時に、食道癌肉腫の特徴的なTP53変異様式を明らかにし、博士(医学)
の学位に値するものと判定した。
平成28年1月7日
博士課程用(甲)
- 2 - 審査委員
主査 群馬大学教授(医学系研究科)
耳鼻咽喉科・頭頸部外科学分野担任 近松 一朗 印
副査 群馬大学教授(医学系研究科)
病理診断学分野担任 小山 徹也 印
副査 群馬大学教授(医学系研究科)
機能形態学分野担任 依藤 宏 印