博 士 ( 工 学 ) 千 葉 恒 彦
学 位 論 文 題 名
移動体通信ネットワークにおける 情報経路の最適化技術に関する研究
学位論文内容の要旨
近年,無線方式の高速化にともない,広帯域かつ実時間性の高いアプリケーションの普及が進ん でいる.一方,これまでの移動体通信ネットワークにおいては,移動管理機能や呼制御機能がその基 幹部分にあたるコアネットワークに配置されているため,すべての呼制御メッセージやユーザデー タがこのコアネットワークを経由することにをり,今後予想される無線方式の更をる高速化への追 従が困難教状況と教っている.本研究では,この課題を解決するために,これまでコアネットワーク を経由していた種々の情報の経路を柔軟に設定し,かつ最適化するための技術について可能叔アプ
‑ ーチを示し,実装を通した検証と評価を行うとともに,将来に向けた新しいアーキテクチャについ て提言した.
第1 章の 研究の 背景に 引き続 き,第 2 章では,移動管理プロトコルの評価と複数経路への対応技 術に関する提案を行っている.SIP (Session Initiation Protocol) を用いた呼制御システムとして注目 されて いるIMS (IP Multimedia Subsystem) では,アクセスネットワーク間のモビリティを確保す るため にアプ リケーションレベルで実施するSIP ベースモピリティ,IP レベルで実施するモバイル IP ,プロキシモバイルIP などの移動管理プロトコルが用いられる,しかしをがら,移動管理プロトコ ルをIMS に 適用す る場合 ,ハン ドオフ 時間の短 縮だけ でをく SIP 制御情 報に用 いるIP ア ドレスの 秘匿,メディアデータの転送遅延の軽減,無線帯域の有効活用,および端末における処理負荷の軽減 といった課題を解決する必要がある,本課題に対しては,IMS ネットワークにおける移動管理プロト コルのハンドオフ評価と課題の分析,およびメディアデータの経路最適化を考慮し,複数経路に対 応した プロキ シモバイルIP の拡張方式の確立と実装評価を行った,第3 章では,移動管理プロトコ ル適用 時のデ ータ経路 最適化 方式の 提案を行っている.IMS を含めた移動体通信ネットワークにお いて, 移動管 理プロトコルとしてモバイルIP やプロキシモバイルIP 蘊どを利用すると,SIP の制御 情報は 位置管 理装置で あるHA (Home Agent) ヘ転 送され た後に IMS ヘ転送 される .よっ て,HA と IMS の距離が大きくをると冗長経路が発生し,呼設定時間やハンドオフ時間に影響する.また,これ らの移動管理プロトコルは,移動管理装置とアクセスルータの間でトンネルを確立し,すべてのメ ディアデータをこのトンネルを介して送受信するため,端末間の通信をどの際には冗長経路とをる.
本課題 に対し ては,モ バイル IP やプロ キシモバイルロを移動管理プロトコルとして用いた移動体 通信ネ ットワ ークにおいて,SIP の制御情報やメディアデータの経路最適化方式の確立と実装評価 を行った.第4 章では,レイヤ・コン′ヾインによる情報経路最適化方式の提案を行っている.従来の 移動体通信ネットワークでは,ダウンロード型やアップロード型がデータ通信の主流であったが,近 年,無線方式や有線回線が高速化するにっれ,端末間でデータ通信の送受信を行うピア・ツー・ピア
―960ー
型が普及し,これらを効率的に提供するためのネットワークが求められている.このためには,従来 の コアネットワーク経由型の転 送制御に対し,をるべくユ ーザに近いL2デバイスでロレイヤを終 端 して転送制御を行える枠組みが必要とをる.本課題に対しては,一例としてIPレイヤを終端した フ ェムトセルを用い,コアネットワークを介さずにフェムトセル間でメディアデータの送受信を行 う 情報経路最適化方式の確立とその実装評価を行った.第5章では,分散配置されたレイヤ・コンバ イ ン型基地局間の移動管理方式の提案を行っている,第4章のアーキテクチャにおいて,スケーラビ リティ向上のため,フェムトセルに代表される小型基地局を分散配置した場合,ユーザが移動しをが ら データ通信を継続するためには,フェムトセル間のハンドオフ技術が要求される.とりわけVoIP (Voice over IP)をど実時間性の高いアプリケーションでは,フェムトセル間の高速をハンドオフ技 術が重要教課題とをる.本課題に対しては,複数のプロトコル実装にともをうフェムトセルの負荷増 大 を軽減し,かつフェムトセル 間ハンドオフを実現する方式の確立と実装評価を行った.第6章で は,無線アクセス教どに用いられるPPP (Point‑toーPoint Protocol)リンクの高速リンク確立方式につ いて提案するとともに実装評価を行い,総合的をハンドオフ時間の短縮に関して議論を行った.最後 に ,第7章では本 研究に関する総合結論として ,第2章から第6章で述べた ,情報経路の最適化方 式 と効率的を移動管理方式を活用し,従来コアネットワークに配置されている機能要素をアクセス ネ ットワークヘ分散配置可能とする新しいアーキテクチャの実現形態「ミニマムコア」について提 言した.さらに,今後の無線方式の更なる高速化にともをう,広帯域かつ実時間性の高いアプリケー ションを効率的に提供可能な機能分散型,かつ情報の経路最適化を実現したミニマムコアにより,災 害や障害にも強いシステムを構築可能と結論付け,本論文をまとめる,
ー 961―
学位論文審査の要旨
主 査 教 授 宮 永 喜 一
学 位 論 文 題 名
移動体通信ネットワークにおける 情報経路の最適化技術に関する研究
近年,無線方式 の高速化にとも極い ,広帯域かつ実時 間性の高いアプリケーションの普及が進んでいる。一 方,これまでの移 動体通信ネットワー クにおいて艫,移 動管理機能や呼制御機能がその基幹部分にあたるコア ネットワークに配 置されているため, すべての呼制御メ ッセージやユーザデータがこのコアネットワークを経 由することになり ,今後予想される無線方式の更をる高速化への追従が困難を状況とをっている。本研究では,
この課題を解決す るために,これまでコアネットワークを経由していた種々の情報の経路を柔軟に設定し,かつ 最適化するための 技術について可能をアプローチを示し,実装を通した検証と評価を行うとともに,将来に向け た新しいアーキテ クチャについて提言 している。
第1章の研究 の背景に引き続き ,第2章で は,移動管理プロ トコルの評価と複数 経路への対応技術 に関する 提案を行っている ふSIP (Session Initiation Protocol)を用いた呼制御システムとして注目されているIMS (lP Multimedia Subsystem)で独 ,アクセスネット ワーク間のモビリテ ィを確保するため にアプリケーションレベ ルで 実施 す るSIPベー スモ ピリティ,lPレ ベルで実施するモ バイル毋プロキシモ バイルIPをどの移 動管理プ ロトコルが用いら れる。しかしをがら ,移動管理プロト コルをIMSに適用する場合, ハンドオフ時間の短縮だ けでをくSIP制御情報に用い るロアドレスの秘 匿,メディアデータ の転送遅延の軽減 ,無線帯域の有効活用,
および端末におけ る処理負荷の軽減と いった課題を解決 する必要がある。 本課題に対しては,IMSネットワー クにおける移動管 理プロトコルのハンドオフ評価と課題の分析,およびメディアデータの経路最適化を考慮し,
複 数 経 路 に 対 応 し た プ ロ キ シ モ パ イ ルmの 拡 張 方 式 の 確 立 と 実 装 評 価 を 行 っ て い る 。 第3章で は. 移 動管 理プ ロ トコ ル適 用 時の データ 経路最適化方式の 提案を行っている 。IMSを合 めた移動 体通 信ネットワークにお いて,移動管理プ ロトコルとしてモ パイルロやプロキシ モバイルIPをどを 利用する と,SIPの 制御 情 報は 位置 管理装置であるHA (Home Agent)ヘ転送され た後にIMSヘ転送される。よ って,HA とIMSの距 離が大きくなると 冗長経路が発生し ,呼設定時間やハン ドオフ時間に影響 する。また,これらの移 動管理プロトコル は,移動管理装置とアクセスルータの間でトンネルを確立し,すべてのメディアデータをこの トンネルを介して 送受信するため,端 末間の通信をどの 際には冗長経路とをる。本課題に対しては,モバイル ロやプロキシモバ イルlPを移動管理プ ロトコルとして用 いた移動体通信ネ ットワークにおいて,SIPの制御情 報やメディアデー タの経路最適化方式 の確立と実装評価 を行った。
第4章で は,レイヤ・コン バインによる情報 経路最適化方式の提 案を行っている。 従来の移動体通信ネット ワークでは,ダウ ンロード型やアップロード型がデータ通信の主流であったが,近年,無線方式や有線回線が高 速化するにつれ, 端末間でデータ通信の送受信を行うピア・ツー・ピア型が普及し,これらを効率的に提供する ためのネットワー クが求められている。このためには,従来のコアネットワーク経由型の転送制御に対し,をる べく ユー ザ に近 いL2デ バイ スで ロ レイ ヤを 終 端して転送制 御を行える枠組みが 必要とをる。本課 題に対し
雄 則
孝
俊 正
恭
島 柴
川
野 小
小
授 授
授
教 教
教
査 査
査
副 副
副
て は ,一 例 と し てlPレイ ヤ を 終 端 し た フ, エ ム ト セ ル を 用い , コ ア ネ ッ ト ワ ークを 介さ ずにフ ェム トセル 間で メ デ ィ ア デ ー タ の 送 受 信 を 行 う 情 報 経 路 最 適 化 方 式 の 確 立 と そ の 実 装 評 価 を 実 施 し た 。 第5章 で は , 分 散 配 置 さ れ た レ イ ヤ ・ コ ン バ イ ン 型基 地 局 間 の 移 動 管 理方 式 の 提 案 を 行 って い る 。 第4章 の ア ー キテ ク チ ャ に お い て ,ス ケ ー ラ ビ リ テ ィ向 上 の た め , フ ェム ト セ ル に 代 表さ れる小 型基 地局を 分散 配置し た 場 合 ,ユ ー ザ が 移 動 し を がら デ ー タ 通 信 を 継続 す る た め に は ,フ ェ ム ト セ ル 間の ハンド オフ 技術が 要求 される 。 と り わ けVop(VbiceoverIP) を ど 実 時 間性 の 高 い ア プ リ ケー シ ョ ン で は , フ ェム ト セ ル 間 の 高 速な ハ ン ド オ フ 技 術 が 重 要 な 課題 と 橡 る 。 本 課 題に 対 し て は , 複 数 のプ ロ ト コ ル 実 装 にと も を う フ ェ ム トセ ル の 負 荷 増 大 を 軽 減 し , か つ フ ェ ム ト セ ル 間 ハ ン ド オ フ を 実 現 す る 方 式 の 確 立 と 実 装 評 価 を 行 っ た 。 第6章 では , 無 線 ア ク セ ス橡 ど に 用 い ら れ るPPP(PointIto‐PointProtocol)リン クの 高速リ ンク 確立方 式に つ い て 提 案 す る と と も に 実 装 評 価 を 行 い , 総 合 的 を ハ ン ド オ フ 時 間 の 短 縮 に 関 し て 議 論 を 行 っ た 。 最 後 に , 第7章 で は 本 研 究 に 関 す る 総 合 結 論 とし て , 第2章 か ら 第6章 で 述 べ た, 情 報 経 路 の 最 適 化方 式 と 効 率 的 を 移 動 管 理方 式 を 活 用 し , 従来 コ ア ネ ッ ト ワ ー クに 配 置 さ れ て い る機 能 要 素 を ア ク セス ネ ッ ト ワ ー ク ヘ 分 散 配 置 可 能 と する 新 し い ア ー キ テク チ ャ の 実 現 形 態 「ミ ニ マ ム コ ア 」 につ い て 提 言 し た 。さ ら に , 今 後 の 無 線 方 式 の 更 春 る 高速 化 に と も を う ,広 帯 域 か つ 実 時 間 性の 高 い ア プ リ ケ ーシ ョ ン を 効 率 的 に提 供 可 能 顔 機 能 分 散 型 , か つ 情 報 の経 路 最 適 化 を 実 現し た ミ ニ マ ム コ ア によ り , 災 害 や 障 害に も 強 い シ ス テ ムを 構 築 可 能 と 結 論 付 け た 。
以 上 の こ と よ り , 本論 文 で は , コ ア ネッ ト ワ ー ク を 経 由し て い た 種 々 の 情 報の経 路を 柔軟に 設定 し,か つ最 適 化 す るた め の 技 術 に つ い て可 能 脅 ア プ ロ ー チを 示 し , 実 装 を 通し た 検 証 と 評 価を 行うと とも に,将 来に 向けた 新 し い ア ー キ テ ク チ ャ を 提 案 し た 。 こ れ に よ り 安 定 で高 速 を 次 世 代 ネ ット ワ ー ク シ ス テ ムに 関 す る 研 究 に お い て , 十分 を 成 果 を 上 げ て いる 。
こ れ を 要 す る に , 筆者 は , 次 世 代 ネ ット ワ ー ク シ ス テ ムの 最 適 化 及 び 高 速 化問題 につ いて, 新た を方式 の提 案 と そ のア ー キ テ ク チ ャ 実 現を 行 い , そ の 有 効性 を 示 し た 。 こ れに よ り , 次 世 代ネ ットワ ーク システ ム技 術に関 す る 多 く の 有 益 を 知 見 を 得 て お り , 工 学 の 分 野 に 貢 献 す る と こ ろ 大 を る も の が あ る 。 よ っ て 筆 者 は , 北 海 道 大 学 博 士 ( 工 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 あ る も の と 認 め る 。
―963―