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学位論 文審査の要旨 主査

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) 北 川    巌

学 位 論 文 題 名

圃場の総合的な排水改良技術の確立に関する研究 学位論文内容の要旨

  排水が不良な農地においては、圃場の排水性を抜本的に改善するため、地下排水法である暗渠によ る改良が施されてきた。北海道において排水改良を必要とする農地面積は、全体の48.6%に及ぶ。こ れまでに暗渠が施工された面積は全排水不良地に匹敵するが、耐用年数30年以内の暗渠施工面積は全 排水不良地の半分である。主要な水田と畑地帯では暗渠の再整備が行われているが、一方で耐用年数 を超過 した暗 渠は増加 傾向に あり、暗 渠の排 水機能を 回復する 対策の 必要性が増している。

  また、これまでの排水改良は暗渠単独に偏っていた。その暗渠排水の設計基準は、計画排水量を重 要視しており、暗渠間隔を狭くすることで排水量の増加を導いている。しかし、実際には排水量が増 加せず排水性が改善されていない問題がある。圃場の排水性向上には暗渠よりも土壌の物理性を改善 する土層改良が必要とされるが、土層改良を組合せた暗渠の導入は進んでいない。そのため、圃場の 排水性向上を図るには、土壌の物理性を考慮した土層改良を組合せた暗渠による排水改良技術を確立 する必要がある。

  そこで本研究では、主要な排水改良である暗渠の排水機能低下の要因を明らかにし、その対策とし て暗渠排水の改善策や新しい土層改良法を開発した。加えて、排水不良土壌の物理性を全国統一的な 土壌評価区分を用いて排水改良の観点から整理するとともに、土壌を考慮した土層改良を積極的に活 用する排水改良技術の適用区分にっいて提案した。

  1.暗渠の排水機能低下の要因を解明して改善策を確立するため、暗渠施工の実態調査から要因別 の排水機能低下の発生割合を明らかにした。暗渠の排水機能が十分に発揮されない要因には、@暗渠 施工時に埋戻した部位の土壌構造の消失と暗渠周辺への耕盤層形成による透水性低下など、土壌物理 性の関与が大きいこと。◎暗渠自体による排水機能低下の要因には、1998年以前に施工された暗渠で は暗渠管周辺の通水を促進する資材である疎水材の使用率が43.4%と低いこと。◎暗渠管への沈積物 堆積の発生率が13.5%と若干高いこと。@泥炭土において暗渠管が経年的に浅くなること。◎暗渠の 維 持 管 理 と 営 農 に よ る 排 水 対 策 が 不 十 分 な こ と 、 な ど が 明 ら か に な っ た 。   暗渠の排水機能低下の主要因である暗渠施工時に埋戻した部位の土壌の透水性低下に対しては、疎 水材を敷設することで改善できる。疎水材には、モミガラ以外に地域発生資材である木材チップや伐 根チップ、火山礫と火山灰、砂利、ホタテ貝殻を利用することが有効と考え、素材の特性と機能性、

素材の経年変化、作物生育や排水水質への影響などを実験的に明らかにして、疎水材としての適用性′

を示した。

  また、暗渠の排水機能低下要因のーっである暗渠管が閉塞する現象に対しては、発生要因を解明し て対策技術を開発した。十勝岳噴火に由来する泥流と泥炭が存在する酸性硫酸塩土壌では、暗渠施工

‑ 126

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後の1年という短期間で暗渠管が閉塞した。化学分析により暗渠管の閉塞物質には鉄とイオウの含有量 が多く、鉄酸化細菌により生成された酸化鉄であることが判明した。この現象は、還元条件の泥炭層 に蓄積していた硫化鉄が溶けて、暗渠に含鉄酸性水として集水され、暗渠管内で鉄酸化細菌が急速に 繁殖し、酸化鉄として暗渠管を閉塞するというプロセスが考えられた。そこで、対策技術としては、

ケィ酸カルシウムが主成分であるロックウールを疎水材に使用して排水を中和・除鉄し、鉄酸化細菌 の 繁殖を抑 制する ことで、 暗渠管の酸化鉄による閉塞を防止する技術を考案して実用化した。

  2.圃場の排水性を左右する土壌物理性の改善には、土層改良が必要となる。そこで、資材を利用 した新しい土層改良法であるカルチタイン式心土改良耕を開発した。これは、心土が堅密な土壌や耕 盤層が形成された土壌に対して、心土をへピーカルチにより耕耘破砕すると同時に完熟バーク堆肥を 混和し膨軟にすることで、心土の物理性を改良する土層改良法である。本工法では、心土への有機物 投入量を心土の土壌硬度が0. 72〜1. 37 MPaの場合には完熟バーク堆肥4kgやとし、土壌硬度が1.37 MPa以上の堅密な場合には完熟バーク堆肥5〜6 kgやとすることで、改良効果を高めて、効果を持続 させることが可能であった。さらに、本工法には、心土の物理性改善によって根の養分吸収を改善し、

作物収量を良好にする効果も認められた。

  資材を利用しない新しい土層改良法であるトレンチャ掘削式穿孔暗渠は、深さ60〜120 cmの任意の 深さに直径20 cmの円形空洞とその上方に幅7cmの縦溝の空洞を掘削して、縦溝の途中から溝壁面を寄 せて重ねた土蓋により溝を閉じて、これにより通水する溝空洞を保持する工法である。本穿孔暗渠は、

暗渠管を用いる暗渠と同じく余剰水を圃場外に排除でき、作物の湿害回避に効果的であった。泥炭土 では、10年後で溝空洞が半分程度まで小さくなったが、通水する円形空洞が維持されていた。粘質な 低地土では5年後で溝空洞の変形が顕著になる。本穿孔暗渠は、泥炭土と低地土で長期間、通水するた めの溝空洞が維持される。しかし、台地土では半年で溝空洞が崩落するため適用できない。本穿孔暗 渠は暗渠管を用いる暗渠の施工費の4分の1以下と低コストであった。

  3.圃場の排水改良の農業生産性への具体的な影響にっいては、1996年の冷湿害年においてテンサ イとバレイショ、アズキの収量が排水改良区において低下しなかった結果から、その効果が大きいこ とを明らかにした。

  畑と水田における排水不良土壌の物理性に対応した排水改良技術を設定するにあたっては、水田土 壌のグライ土、灰色低地土、泥炭土、畑土壌のグライ土、多湿黒ボク土、灰色台地土の代表土壌の物 理性を定量化した。これらの土壌に対し、暗渠を一般的な10〜12m間隔と試験的に高密度な5〜6m間隔 で設置して、土壌水分や暗渠排水量の変化を計測し、各土壌における暗渠の排水効果から必要性を検 討した。その結果は、土壌の全国統一的な分類法である農耕地土壌分類第2次案改訂版の土壌区分に対 応する暗渠の要否と適切な暗渠間隔として提示した。これに加えて、土壌物理性を抜本的に改善して 圃場の排水性を向上させる土層改良法にっいては、資材を利用するモミガラ心土破砕や有材心土改良 耕、新しい改良法であるカルチタイン式心土改良耕、資材を利用しない低コストである心土破砕や弾 丸暗渠、新しいトレンチャ掘削式穿孔暗渠などの適用条件を整理した。

  以上のように本研究では、暗渠の排水機能低下にっいて要因別の発生割合を解明し、改善策として 地域発生資材を利用した疎水材や暗渠管の閉塞防止技術を開発して暗渠の機能向上を図った。また、

土壌を考慮した圃場の排水性向上の必要性から、新たな土層改良法を開発するとともに、適切な土層 改良法と暗渠の組合せにっいての排水改良区分を策定し、総合的な排水改良技術として確立した。

    ―127―

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学位論 文審査の要旨 主査

副査 副査

教授 教授 助教授

長谷川 長澤 相馬

学 位 論 文 題 名

周一 徹明 尅之

圃場 の総合的な排水改良技術の確立に関する研究

  本 論 文 は6章 か ら な り , 図59, 表35, 写 真7, 引 用 文 献225を 含む133ぺー ジ の和 文論 文で あ る 。 他 に 参 考 論 文9編 が 添 え ら れ て い る 。

  排 水 が 不 良 な 農 地 に お い て は , 圃 場 の 排 水 性 を 抜 本 的 に 改 善す るた め, 地 下排 水法 であ る 暗 渠 に よ る 改 良 が 施 さ れ て き た 。 現 在 も 暗 渠 の 再 整 備 が 行 われ てい るが , 耐用 年数 を超 過 し た 暗 渠 は 増 加 傾 向 に あ り , 暗 渠 の 排 水 機 能 を 回 復 す る 対 策の 必要 性が 増 して いる 。ま た , 圃 場の 排水 性向 上 には 暗渠 より も土 壌の 物理 性を 改善 する 土層 改良 が必 要 とさ れる が,

土 層 改 良 の 導 入 は 進 ん で い た い 。

  そ こ で 本 研 究 で は , 暗 渠 の 排 水 機 能 低 下 の 要 因 を 明 ら か に し, その 対策 と して 暗渠 排水 の 改 善 策 や 新 し い 土 層 改 良 法 を 開 発 し た 。 加 え て , 排 水 不 良 土壌 の物 理性 を 統一 的な 土壌 評 価 区 分 を 用 い て 排 水 改 良 の 観 点 か ら 整 理 す る と と も に , 土 壌を 考慮 した 土 層改 良を 積極 的 に 活 用 す る 排 水 改 良 技 術 の 適 用 区 分 に つ い て 提 案 し た 。

  暗 渠 の 排 水 機 能 が 低 下 す る 要 因 に は , @ 暗 渠 施 工 時 に 埋 戻 した 部位 の土 壌 構造 の消 失と 暗 渠 周 辺 へ の 耕 盤 層 形 成 に よ る 透 水 性 低 下 な ど , 土 壌 物 理 性 の関 与が 大き い こと 。◎ 暗渠 管 周 辺 の 通 水 を 促 進 す る 資 材 で あ る 疎 水 材 の 使 用 率 が43.4% と低 いこ と。 ◎ 暗渠 管へ の沈 積 物 堆 積 の 発 生 率 が13.5% と 高 い こ と 。 @ 暗 渠 の 維 持 管 理 と 営農 によ る排 水 対策 が不 十分 な こ と , な ど が 明 ら か に な っ た 。

  暗 渠 の 排 水 機 能 低 下 の 主 要 因 で あ る 暗 渠 施 工 時 に 埋 戻 し た 部 位 の 土 壌 の 透 水 性 低 下 に 対 し て は , 疎 水 材 を 敷 設 す る こ と で 改 善 で き る 。 疎 水 材 に は ,従 来か ら用 い られ てき たモ ミ ガ ラ 以 外 に 地 域 で 発 生 す る 資 材 の 特 長 や 経 年 変 化 , 作 物 生 育や 排水 水質 へ の影 響等 を検 討 し , 木 材 チ ッ プ や 伐 根 チ ッ プ , 火 山 礫 な ど が 利 用 可 能 で あ るこ とを 明ら か にし た。  ′   ま た , 暗 渠 自 体 の 排 水 機 能 低 下 の 要 因 で あ る 暗 渠 管 閉 塞 に 対し ては ,発 生 要因 を解 明し て 対 策 技 術 を 開 発 し た 。 噴 火 泥 流 と 泥 炭 が 存 在 す る 酸 性 硫 酸 塩 土 壌 で は , 暗 渠 施 工 後 の1 年 で 暗 渠 管 が 閉 塞 し た 。 暗 渠 管 の 閉 塞 物 質 に は 鉄 と イ オ ウ の 含有 量が 多く , 鉄酸 化細 菌に     ―128―

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より生成された酸化鉄であることが判明した。この現象は,還元条件の泥炭層に蓄積して いた硫化鉄が溶けて,暗渠に含鉄酸性水として集水され,暗渠管内で鉄酸化細菌が急速に 繁殖し,酸化鉄として暗渠管を閉塞するというプロセスが考えられた。そこで,対策技術 ど して は, ケイ酸 カル シウ ムが主成分であるロックウールを疎水材に使用して排水を中 和・除鉄して,鉄酸化細菌の繁殖を抑制することで,暗渠管の酸化鉄による閉塞を防止す る技術を考案して実用化した。

  

圃場の排水性の改善に必要となる新しい土層改良法を開発した。資材を利用した新しい 土層改良法であるカルチタイン式心土改良耕は,心土が堅密な土壌や耕盤層が形成された 土壌に対して,心土をへビーカルチにより耕耘破砕すると同時に完熟バーク堆肥を混和し 膨軟にすることで,心土の物理性を改良する土層改良法である。一方,資材を利用しなぃ 新しい土層改良法であるトレンチャ掘削式穿孔暗渠は,深さ60 〜120 cm の任意の深さに円 形空洞とその上方に縦溝の空洞を掘削して,縦溝の壁の土を寄せて蓋をして空洞を保持す る工法である。いずれの土層改良法も排水性の改善に大きく寄与することを現地実証試験 により明らかにした。

  

排水が不良な土壌の物理性に対応した排水改良技術を設定するにあたって,水田のグラ イ土,灰色低地土,泥炭土,畑のグライ士,多湿黒ポク土,灰色台地土の物理性を定量化 した。これらの土壌に対して暗渠を一般的な10 〜12m 間隔と試験的な高密度の5 〜6m 間隔で 設置して,土壌水分や暗渠排水量の変化を計測することで,各土壌における暗渠の排水効 果から必要性を検討した。その結果は,土壌の統一的な分類法である農耕地土壌分類第2 次案改訂版の区分に対応する適切な暗渠間隔として提示した。これに加えて,土壌物理性 を抜本的に改善する土層改良法については,資材を利用する有材心土改良耕やカルチタイ ン式心土改良耕,資材を利用しない心土破砕や弾丸暗渠,トレンチャ掘削式穿孔暗渠など の適用条件を整理した。

以上のように本論文は,暗渠の排水機能低下にっいて要因別の発生割合を解明し,改善策 として地域発生資材を利用した疎水材や暗渠管の閉塞防止技術の開発による暗渠の機能向 上対策を提示している。また,圃場の排水性向上の必要性から,新たな土層改良法を開発 するとともに,土壌を考慮した適切な土層改良法と暗渠の組合せについての排水改良区分 を策定して,総合的な排水改良技術として確立する提案をしており,関連学会においても 高く評価されている。よって審査員一同は,北川巌が博士(農学)の学位を受けるのに十分な 資格を有するものと認めた。

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(5)

慮しても、利他行動の進化条件式は満たされていることが示され、血縁淘汰による異世代聞利他行 動の維持が検証された。

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参照

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