博 士 ( 農 学 ) 羅 会 明
学 位 論 文 題 名
作物生育におけるりンとアルミニウムの相互作用の解析 学位論文内容の要旨
酸性 土壌 では 作物 の生 産性 が低く,これは主にアルミニウム(心 )毒性とりン(P) 欠 乏に 起因 する 。本 研究 は, 低P耐性とAl耐性を異にするルーピン,ナタネ,トマトを 供 試し て, 水耕 系と 土壌 系に おける低P耐性と心耐性の種間差の両系間差異を明らかに す るこ とに よっ て, 土壌 系で の作物の低P耐性とAl耐性における根分泌物の役割を明ら か にし た上 で,PとAlの相 互作用の機構 を解析することを目的として実施した。得られ た 結果 の概 要は 以下 の通 りで ある 。
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1)低P耐性は水耕系ではルーピン冫ナタネ与トマ トであり,土壌系ではルーピン>ナタ ネ>冫ト マトの 順であった。ルーピンとナタネの低P耐性は土壌系で水耕系より高く,ト マト では 両系 間に 大差 なか った 。低P条件 でルーピンは根を細長く伸長し,単位根当た り のP吸 収 表 面 積 を 増 大 す る 機 能 が 強 く , ナ タ ネ と ト マ ト はこ の機 能が 弱か っ た。
2)低P耐性の作物種間差は主にP要求性と個体当たりのP吸収能の差異によって決定さ れた。P要求性は作物固 有の特性であって,水耕系で判定した結果ではナタネ≧トマト冫 ルーピンであった。個体当たりのP吸収能は根の生育と単位眼当たりのP吸収能の積によっ て決 定さ れる。低P条件での個体当たりのP吸収能は,水耕系ではルーピン>ナタネ与ト マトであり,土壌系ではルーピン>ナタネ>〉トマトであった。ルーピンとナタネのP吸収 能は 土壌 系で 水耕 系よ り高 く, トマ トでは両系間に大差なかった。単 位根当たりのP吸 収能は水耕系ではルーピン>>トマト>ナタネであり,土壌系ではルーピン>ナタネ>冫トマ トであった。ルーピン,ナタネの単位根当たりのP吸収能は,土壌系で水耕系より高く,
トマトでは両系間に大差なかった。
3)低P条件で単位根当たりの酸性フオス ファターゼ分泌能とクエン酸分泌能はルーピ ンと ナタ ネで ほぽ 同程 度に 高く ,ト マトで低く,これらがルーピンと ナタネのP吸収能 が土 壌系 で水耕系より高かった原因のーつ であると考えられた。トマトでは根の生育が 低P条件 で著 しく 劣 った ため に単 位根当た りの酸性フオスファターゼ分泌能とクエン酸 分泌能が個体当たりP吸 収に及ぽす貢献度は小さかった。
≧:佐物堕鎚慰蛙量慰蛙ヒおけ歪壷毯酸Q盤劃
1) A耐性は,水耕系ではルーピン冫冫ナタネ与トマトであり,土壌系ではルーピン冫ナ
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夕ネ冫冫トマトであった。ルーピンとナタネのAl耐性は土壌系で水耕系より高く,トマト では両系間に大差なかった。
2)根に よるクエ ン酸の 分泌はナ タネと ルーピン で心に よって誘 導され,トマトで誘 導されなかった。クエン酸分泌能はナタネ冫ル・ーピン冫冫トマトの順であった。リンゴ酸 の 分泌はAlに よって3作物 ともに誘 導され なかった 。ナタ ネの生育 および根の伸長に対 す る心の阻 害作用が クエン 酸とりン ゴ酸を添加することによって軽減され,その効果は クエン酸でりンゴ酸より大きかった。このことは有機酸はAlイオンとキレートを形成し,
培 地中のモ ノマー態 心濃度 を低下さ せることと,クエン酸のキレート形成能がりンゴ酸 より大きいことに起因した。
!:使 物生宣! 三壷LするPとAlc担璽佐 恩 1) 低P耐 性に対す るAlの影 響
(1)低P耐性は 心の共存 によって低下したが,土壌系と水耕系を比較すると,3種の 作 物 と も に 土 壌 系 で 水 耕 系 よ り 高 く , 特 に ル ー ピ ン , ナ タ ネ で 高 か っ た 。 (2)心の 共 存 によ っ て 単位根当 たりのPの吸 収能と 地上部へ の移行性 が低下 し,根か らPが漏出し た。低P耐性 の低下を もたら す心の害 作用は ナタネとトマトでルーピンより 大きく ,3作 物とも に土壌系 で水耕系 より軽 減された 。これ らの結果 から,Al障害の機 構 の 中 に , Alに よ る Pの 吸 収 ・ 移 行 阻 害 が 含 ま れ る と 考 え ら れ た 。 (3)低P.Al培地における単位根当たりのクエン酸分泌能はルーピン冫ナタネ冫冫トマ トであ った。ナ タネの 生育およ びP吸 収能に 対するAlの 阻害作 用はクエ ン酸と りンゴ酸 を添加 すること によっ て軽減さ れた。 このこと は有機酸 が培地中に固体として存在する AIP04の心 と キ レー ト を 形成し1可溶 性P濃 度を増加 したこ とに起因 した。 低P耐 性の低 下をも たらすAlの 害作用 が土壌系 で水耕 系より軽 減され たことは,主に根から分泌され たクエ ン酸が根 圏土壌 に溶存す るAlを解 毒すると 同時に ,難溶性リン酸化合物からりン 酸 を 可 溶 化 し た こ と に 起 因 し , 両 作 用 に は り ン ゴ 酸 も 関 与 し た 。 2) AI耐性 に対す るPの 影響
Al耐性は ,3作 物とも に培地P濃度 の低下に よって低 下した。作物のAl耐性は主に心そ のもの に対する 耐性に よって決 定され るが,低P培地 でAlの吸 収と移行 性が高 まること も 低P条 件 で のAl耐 性 が 高P条 件 よ り 低 い 原 因 の ー つ で あ る と 考 え ら れ た 。
以上の 結果から ,作物に よるPの吸収 と移行 はAlの存在 によっ て低下し ,心の吸収と 移行はP欠乏 によって 上昇す ることが 作物生育 におけ るPと心の相互作用の主要機構であ ることを 明らか にした。 さらに ,培地のP濃度 が低い 場合とAlが 溶存す る場合に根から 分泌され る有機 酸は土壌 からPを溶出 すると同 時にAlを 解毒する ことに よって,土壌系 におけるPとAlの相互作 用に影 響を及ぼ し,低P酸性 土壌における生育を改善することを 示した。 植物の 根から有 機酸が 分泌され る機能 の存在は ,低P酸性土 壌での作 物生育に お け るPとAlの 相 互 作 用 の 中 に 植 物 が 土 壌 に 及 ば す 影 響 も 含 ま れ る こ と を 示 す 。
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学位 論文審査の要旨 主査
副査 副査
教授 教授 助教授
但野 波多野 山口
学 位 論 文 題 名
秋利 隆介 厚一
作物生育におけるりンとアルミニウムの相互作用の解析
本 論 文 は , 図55, 表22, 引 用 文 献124を 含 む 総頁 数139の 和 文 論文 で あ り, 別 に 参 考 論 文6編 が 添 え ら れ て い る 。
本 研 究 は , 水 耕 系 と 土 壌 系 に お け る 低P耐 性 とAl耐 性 の 作 物 種 間 差 の 両系 間 差 異 を 明 ら か に す る こ と に よ っ て , 土 壌 系 で の 作 物 の 低P耐 性 とAl耐 性 に おけ る 根 分 泌 物 の 役 割 を 明 ら か に し た 上 で ,PとAlの 相 互 作 用 の 機 構 を 解 析 す るこ と を 目 的 と し て 実 施 し た 。 得 ら れ た 結 果 の 概 要 は 以 下 の 通 り で あ る 。
1. 低P耐 性 と そ の 機 構 の 水 耕 系 ・ 土 壌 系 間 差 異
1) ル ー ピ ン と ナ タ ネ の 低P耐 性 は 土 壌 系 で 水 耕 系 よ り 高 く , ト マ ト で は 両 系 間 に 大 差 な か っ た 。
2) 低P耐 性 の 作 物 種 間 差 は 主 にP要 求 性 と 個 体当 た り のP吸 収 能の 差 異 に よっ て 決 定 さ れ た 。P要 求 性 は ナ タ ネ ≧ ト マ ト 冫 ル ー ピ ンで あ っ た。 個 体 当た り のP 吸 収 能 は ル ー ピ ン と ナ タ ネ で は 土 壌 系 で 水 耕系 よ り 高く , ト マト で は 両系 間 に 大 差 な か っ た 。
3) 低P条 件 で 単 位 根 当 た り の 酸 性 フ ォ ス フ ァ タ ー ゼ 分 泌 能 と ク エ ン 酸 分 泌 能 は ル ー ピ ン と ナ タ ネ で ト マ ト よ り 高 く , こ れ ら が ル ー ピ ン と ナ タ ネ の 低P耐 性 が 土 壌 系 で 水 耕 系 よ り 高 か っ た 原 因 の ー つで あ る と考 え ら れた 。 ト マト で は 根 の 生 育 が 劣 っ た た め に 単 位 根 当 た り の 酸 性フ ォ ス ファ タ ー ゼ分 泌 能 とク エ ン 酸 分 泌 能 が 個 体 当 た り P吸 収 に 及 ぽ す 貢 献 度 は 小 さ か っ た 。 2.Al耐 性 と 耐 性 に お け る 有 機 酸 の 役 割