近畿大学工学部研究報告 No.48,2014年,pp.1-11 Research Reports of the Faculty of Engineering, Kinki University No.48 2014, pp.1-11
間伐材精油の化学成分とその生理活性について
岡村 健司
1),村上 結城
1),岡田芳治
2),野村正人
2)Chemical Components and Physiological Activities of
Essential Oils from Thinned Wood
Kenji OKAMURA
1),
Yuki MURAKAMI
1),
Yoshiharu OKADA
2)and Masato NOMURA
2)Abstract
In this study, the authors investigated essential oils that were extracted from timber from thinning for antibacterial activity, bacterial elimination, and antioxidant activity aiming for effective use of the oils. The oils were found to be antibacterial against gram positive (Staphylococcus aureus) and gram negative
(Escherichia coli and Pseudomonas aeruginosa) bacteria. The antibacterial activities of the oils were
re-examined by classifying the oils in Groups A to D ; and the chemical components of Group A, which showed antibacterial activity to all three bacteria, were analyzed. The main component was identified to be (+)-α -pinene (GC: 96.73%), which was shown to be involved in the expression of antibacterial activity. Bacterial elimination by the oils was tested by the hand washing method. The viable cell count was 88 in Group A compared to 668 in the control, showing strong bacterial elimination by the oils.
The authors then tested the availability of (-)-Epicubenol, which is a terpenoid contained in the oils, as a cosmetic ingredient. In a whitening effect test, which measured the inhibition of L-DOPA oxidation, (-)-Epicubenol showed an inhibition rate of 7.7%, which is higher than that of Arbutin (4.0%). The authors also disclosed that (-)-Epicubenol inhibits the enzymatic activity of tyrosinase between L-DOPA and DOPA quinine. The results suggest that essential oils from thinned wood contain useful components and are likely useful in many fields.
Key words : Thinned wood, Antibacterial activity, Bacterial elimination, Antioxidant activity, (-)-Epicubenol
1) 近畿大学大学院システム工学研究科
2) 近畿大学工学部化学生命工学科
Graduate School of Systems Engineering, Kinki University. Department of Biotechnology and Chemistry, Faculty of Engineering, Kinki University.
1. 緒 言 森林には8つの機能が備わっており,生物多様性保全機 能,地球環境保全機能,土砂災害防止機能/土壌保全機能, 水源涵養機能,快適環境形成機能,保健・レクリエーショ ン機能,文化機能および物質生産機能がある。これらの機 能を最大限に発揮するには適切な管理が必要である。一般 的に森林の管理には,苗木づくり,植栽,地ごしらえ,下 草刈り,つる切り(除伐),枝打ち,間伐があり1),その中で も間伐は必要不可欠なのである。これを怠ると樹木が密集 し,やせ細った樹木しか育たず,太陽光が林床に届かず下 層植生が生育できなくなり,土砂災害などを引き起こす要 因となっている。森林環境を守るためにも間伐は非常に重 要な作業であり,その際,廃出される間伐材は,経済価値 がないとの理由から,未利用のまま林内に放置されていた 2)。しかし最近,地球温暖化防止の面から間伐材はカーボン ニュートラルの考えの下,バイオマス燃料の素材として注 目され,多くの事業が行われている3-5)。たとへば,バイオ エタノール製造工程で,間伐材をチップ化し,水蒸気蒸留, 糖化,発酵を経て製造される。今回,この工程の中でチッ プの水蒸気蒸留で得られる疎水性成分である精油について の利用を目的に本研究を行った。すなわち,著者らはすで に,多くの精油中に含まれているC10のモノテルペノイド を含む化合物を化粧品,医薬品および食品添加物などへの 利用を前提に利用可能な化合物に誘導・変換し,また,簡 便な手法により殺虫剤,忌避剤,誘引剤,芳香剤,浴用剤 などに適合できる化合物に変換しその効果発現については すでに報告6-9)した。本研究では,これらの関連研究の一環 として間伐材の水蒸気蒸留により得られた精油中の含有成 分を明らかにし,その中で興味ある化合物を単離した後, 抗菌活性,除菌効果および抗酸化活性試験を行ったところ, 新しい知見を得ることができたので報告する。 2. 実 験 2-1. 実験材料 広島県庄原市山間部で平成19年度に伐採(生育期間約20 ~30年)した杉および約5%程度のヒノキを含む混合間伐材 をチップにした後,水蒸気蒸留により得られた精油を再度, 減圧蒸留(bp.63~100℃/50mmHg,比重 1.429)したものを 用いた。 2-2. 機器分析 単離した化合物の旋光度はP-1020 型旋光計(日本分光株 式会社製)を用いて測定した。分画油分中の成分分析は,
GC-MS [Hewlett Packerd HP 6890 GC ,Hewlett Packerd HP 5972 MSD , Column;TC-WAX(60m× 0.25mm),Column Temp.:70℃(5min hold) ~ 240℃(3℃ /min),Injection Temp.:240℃]を使用した。分画した油分
の成分については,同機種を使用しカラム[TC-1
(30m×0.25mm)とカラム温度[50℃(5min hold) ~ 240℃ (3℃/min)],Injection Temp.:240℃]に変更し,化合物の 検索は NIST (National Institute of Standards and Technology)のWeb Book により行った。単離した化合物の 構造確認は,1H-および13C-NMR (JNM-EX400WB型FT, 日本電子株式会社製)により,テトラメチルシラン(TMS)を 内部標準として,重クロロホルム溶媒中で測定した。 2-3. 生理活性試験 a) 抗菌活性試験10)
使用したグラム陽性菌はBacillus subtilis (ATCC 6633)
およびStaphylococcus aureus (ATCC 6538)であり,グラ
ム 陰 性 菌 は Escherichia coli (ATCC 8739) および
Pseudomonas aeruginosa (ATCC 9027)である。使用した
培地は,Bacillus subtilisおよびPseudomonas aeruginosa
は標準寒天培地(日水製薬株式会社製)を,Escherichia coli はデゾキシコレート寒天培地(日水製薬株式会社製)を, Staphylococcus aureusはマンニット食塩培地(日水製薬株 式会社製)を用いた。試験方法としては,所定量の供試体を ろ紙(8mm)に塗付し,35°C で24 時間培養後,生育阻止円 の半径(ディスクの内径を減じたもの)を測定した。 b) 除菌効果試験11) 使用した培地は,new-パームチェック(PL)一般細菌 (SCDLP)寒天培地(株式会社日研生物医学研究所製)のもの を用いた。試験方法は,試験液の濃度を0.1%に調整した後, 界面活性剤であるTween 40を0.5%重量添加し,滅菌水を 用いて100mL に調整した。試験液をスプレー容器に入れ て,手に10 回(0.88g)吹き付け 30 秒間放置後,水道水(流 水中)で5秒間洗い,軽く水気を飛ばした。その後,手形培
1. 緒 言 森林には8つの機能が備わっており,生物多様性保全機 能,地球環境保全機能,土砂災害防止機能/土壌保全機能, 水源涵養機能,快適環境形成機能,保健・レクリエーショ ン機能,文化機能および物質生産機能がある。これらの機 能を最大限に発揮するには適切な管理が必要である。一般 的に森林の管理には,苗木づくり,植栽,地ごしらえ,下 草刈り,つる切り(除伐),枝打ち,間伐があり1),その中で も間伐は必要不可欠なのである。これを怠ると樹木が密集 し,やせ細った樹木しか育たず,太陽光が林床に届かず下 層植生が生育できなくなり,土砂災害などを引き起こす要 因となっている。森林環境を守るためにも間伐は非常に重 要な作業であり,その際,廃出される間伐材は,経済価値 がないとの理由から,未利用のまま林内に放置されていた 2)。しかし最近,地球温暖化防止の面から間伐材はカーボン ニュートラルの考えの下,バイオマス燃料の素材として注 目され,多くの事業が行われている3-5)。たとへば,バイオ エタノール製造工程で,間伐材をチップ化し,水蒸気蒸留, 糖化,発酵を経て製造される。今回,この工程の中でチッ プの水蒸気蒸留で得られる疎水性成分である精油について の利用を目的に本研究を行った。すなわち,著者らはすで に,多くの精油中に含まれているC10のモノテルペノイド を含む化合物を化粧品,医薬品および食品添加物などへの 利用を前提に利用可能な化合物に誘導・変換し,また,簡 便な手法により殺虫剤,忌避剤,誘引剤,芳香剤,浴用剤 などに適合できる化合物に変換しその効果発現については すでに報告6-9)した。本研究では,これらの関連研究の一環 として間伐材の水蒸気蒸留により得られた精油中の含有成 分を明らかにし,その中で興味ある化合物を単離した後, 抗菌活性,除菌効果および抗酸化活性試験を行ったところ, 新しい知見を得ることができたので報告する。 2. 実 験 2-1. 実験材料 広島県庄原市山間部で平成19年度に伐採(生育期間約20 ~30年)した杉および約5%程度のヒノキを含む混合間伐材 をチップにした後,水蒸気蒸留により得られた精油を再度, 減圧蒸留(bp.63~100℃/50mmHg,比重 1.429)したものを 用いた。 2-2. 機器分析 単離した化合物の旋光度はP-1020 型旋光計(日本分光株 式会社製)を用いて測定した。分画油分中の成分分析は,
GC-MS [Hewlett Packerd HP 6890 GC ,Hewlett Packerd HP 5972 MSD , Column;TC-WAX(60m× 0.25mm),Column Temp.:70℃(5min hold) ~ 240℃(3℃ /min),Injection Temp.:240℃]を使用した。分画した油分
の成分については,同機種を使用しカラム[TC-1
(30m×0.25mm)とカラム温度[50℃(5min hold) ~ 240℃ (3℃/min)],Injection Temp.:240℃]に変更し,化合物の 検索は NIST (National Institute of Standards and Technology)のWeb Book により行った。単離した化合物の 構造確認は,1H-および13C-NMR (JNM-EX400WB型FT, 日本電子株式会社製)により,テトラメチルシラン(TMS)を 内部標準として,重クロロホルム溶媒中で測定した。 2-3. 生理活性試験 a) 抗菌活性試験10)
使用したグラム陽性菌はBacillus subtilis (ATCC 6633)
およびStaphylococcus aureus (ATCC 6538)であり,グラ
ム 陰 性 菌 は Escherichia coli (ATCC 8739) および
Pseudomonas aeruginosa (ATCC 9027)である。使用した
培地は,Bacillus subtilisおよびPseudomonas aeruginosa
は標準寒天培地(日水製薬株式会社製)を,Escherichia coli はデゾキシコレート寒天培地(日水製薬株式会社製)を, Staphylococcus aureusはマンニット食塩培地(日水製薬株 式会社製)を用いた。試験方法としては,所定量の供試体を ろ紙(8mm)に塗付し,35°C で24 時間培養後,生育阻止円 の半径(ディスクの内径を減じたもの)を測定した。 b) 除菌効果試験11) 使用した培地は,new-パームチェック(PL)一般細菌 (SCDLP)寒天培地(株式会社日研生物医学研究所製)のもの を用いた。試験方法は,試験液の濃度を0.1%に調整した後, 界面活性剤であるTween 40を0.5%重量添加し,滅菌水を 用いて100mL に調整した。試験液をスプレー容器に入れ て,手に10 回(0.88g)吹き付け 30 秒間放置後,水道水(流 水中)で5秒間洗い,軽く水気を飛ばした。その後,手形培 地に手を押しつけ,37℃で 24 時間培養し生菌数の測定を 行った。比較対照試験としては,水道水のみで手洗いを行 った以外,同様の操作を行い,生菌数を測定した。 c) 活性酸素抑制効果(SOD)試験12) 試料0.714mM を溶解したDMSO 溶液0.1mLにキサン チン0.40mM とニトロブルーテトラゾ二ウム 0.24mM を 0.1M リン酸緩衝液(pH8.0)144.7mL に溶解し調製した発 色試液1.0mL を加え,さらに0.049mM のキサンチンオキ シダーゼリン酸緩衝液0.2mLを加え,37℃の恒温水槽中で 20min 放置した。その後,反応停止液として 69mM の硫 酸ドデシル二ナトリウム2.0mL を加え,スーパーオキシド ア二オンとニトロブルーテトラゾリウムの反応によって生 成するジホルマザンを560nm に設定した分光光度計を用 いて測定した。一方,コントロールとして試料の代わりに DMSO 溶液0.1mL のみを用いる以外は同様の操作を行い, 以下に示す次式に従って活性酸素の阻害率を計算した。吸 光度は3回の測定結果からそれぞれ平均値を算出した。 d) 脂質酸化抑制効果試験 (AAPH 添加ロダン鉄法)13) 1.3%リノール酸/エタノール溶液2.5mL,0.2Mリン酸緩 衝液(pH 7.0)2.5mL,蒸留水1.0mL,各試料のエタノール 溶 液(0.2mM) を 0.5mL , 92.8mM AAPH[2,2-azobis- (2-amidinopropane)dihydrochloride]水溶液 0.25mL を混 合したものを反応液とし,50℃の恒温水槽中で遮光保存し た。つぎに,この反応液0.1mL に 75%エタノール溶液 4.7mL,30%チオシアン酸アンモニウム水溶液0.1mLおよ び3.5%塩酸溶液に 0.02M の第一塩化鉄を溶解した混合液 0.1mL 添加し,3 分経過後に 500nm に設定した分光光度 計(V-530 型,日本分光株式会社製)で測定した。以後,同反 応液を用いて,2 時間間隔で 8 時間まで同様の操作を行っ た。なお,測定は3連で行い,数値は平均値で表す。 e) チロシナーゼ活性阻害試験14) 1) チロシンを基質とした場合 試料0.08mM をジメチルスルホキシド(DMSO)溶液 1.0mL に溶解した混合溶液を Mcilvaine 緩衝溶液 [L-Tyrosine 1.66mM,クエン酸(一水和物)4.7806gおよび リン酸水素二ナトリウム(無水物)21.9382g を水 1,000mL に溶解しpH6.8に調整したもの] 0.9mLに加え,予め37℃ に設定した恒温水槽中で5分間予備加温を行った。ついで, マッシュルームから調製した市販チロシナーゼ1.67mg を 蒸留水3.80mLに溶解した水溶液(1,500unit/mL) 0.1mLを 加えて,37℃の恒温水槽中で 1 分間放置した検体と 11 分 間放置した検体を475nm に設定した分光光度計を用いて 吸光度を測定し,1 分間放置した検体の吸光度を c,11 分 間放置した検体の吸光度をb とした。一方,コントロール として試料のかわりに蒸留水0.08mM を用いる以外,同一 操作により検体の調製を行い,37℃の恒温水槽中で1分後 と11分後の検体について,それぞれ吸光度を測定し,1分 後の吸光度をa,11分後の吸光度をd とし,以下に示す方 法でチロシナーゼ活性阻害率を計算した。阻害率は3 回の 測定結果からそれぞれ平均値を算出し,次式に従ってチロ シナーゼ活性阻害率を求めた。 2) L-DPOA を基質とした場合 L-DOPA1.66mM を溶解した水溶液 1.0mL にリン酸水 素二ナトリウム0.4247g とリン酸二水素ナトリウム 0.3600g を添加し,さらに,リン酸水素二ナトリウム (2.135g/L)とリン酸二水素ナトリウム(1.800g/L)から調製 した30mM のリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.8) 1.8mL を 加え,この混合溶液に試料0.08mMを溶解したDMSO 溶 液0.1mLを添加した後,攪拌した。その後,直ちにマッシ ュルームから調製したチロシナーゼ1.67mg を蒸留水 3.80mL に溶解したチロシナーゼ水溶液(1,500unit/mL) 0.1mLを加え,15秒間攪拌した後,25℃で培養し475nm に設定した分光光度計を用いて,3 分後における吸光度の 測定を行い,1分45秒 から2 分45 秒間の傾きを求めた。 一方,コントロールとして試料のかわりにDMSO 溶液 0.1mLを用いる以外は同様の操作を行った。チロシナーゼ 活性阻害率の計算は,以下の次式に従って算出した。傾き 活性酸素阻害率 (%) = (コントロールの吸光度) – (検体の吸光度) (コントロールの吸光度) × 100 チロシナーゼ活性阻害率 (%) = (d - a) – (b - c) (d - a) × 100
は3回の測定結果からそれぞれ平均値を算出し行った。 3. 結果および考察 3-1. 間伐材精油の化学成分とその抗菌活性 入手した間伐材の精油成分について,GC-MS 分析を行 った。その結果をFig.1 に示す。また,MS ライブラリー データ(NIST)から,精油中の主な化学成分として 57 成分 を確認した(Table 1)。 つぎに,間伐材の精油に対する抗菌活性の予備試験をグ ラム陽性菌(B. subtilis,S. aureus)およびグラム陰性菌(E. coli,P. aeruginosa)を用いて,ペーパーディスク法により 活性の有無を検討した。その結果,B. subtilisでは10μL,
S. aureusでは5μL,E. coliでは60μL,P. aeruginosaで
は40μL の試料量で抗菌活性を発現することが確認できた (Table 2)。このことから間伐材の精油は,グラム陽性菌に 比べてグラム陰性菌の方が抗菌活性を発現しにくいことが 分かった。その理由としては,グラム陰性菌の細胞膜の外 側には外膜があるため,油性である精油の透過性が抑えら れ細胞膜まで精油が浸透できないことから,抗菌活性の発 現に大きな相違が現れたものと考察した15)。そこで,間伐 材の精油中に含まれている化学成分中から,より高い抗菌 活性を発現する化合物の特定をFig.2に示した分画方法(カ
ラムクロマトグラフィー;Silica gel 60 (MERCK))を用いて
行った。すなわち,精油(10g)をヘキサン抽出部(2.8g)と酢 酸エチル抽出部(5.6g)に分画した。ヘキサン抽出部について, 減圧蒸留を行いGroup A (~75℃/ 40mmHg,0.91g)と Group B (75℃/40mmHg~,1.72g)に分留した。また,同 様に酢酸エチル抽出部についても減圧蒸留を行い,Group C (~65℃/ 0.5mmHg,1.81g)とGroup D (65℃/ 0.5mmHg~, 3.02g)に分留(Fig. 2)した。これら分留したGroup A~D の 油分に対して, B. subtilis,S. aureus,E. coliおよびP.
aeruginosasに対する抗菌活性の強弱を検討した結果を
Table 3に示す。分画部Group A~D のいずれも,抗菌活
性を発現することが確認でき,S. aureusに対する抗菌活性
はGroup AおよびB に強い活性があることを確認できた。
E. coliに対する抗菌活性は,Group Aに強い活性がある結
果を得ることができた。一方,P. aeruginosaに対する抗菌
活性は,Group Aのみが抗菌活性を発現することが確認で
きた。これらの結果から,Group AがB. S. aureus,E.coli
およびP. aeruginosaの4 つの菌に対して,いずれも高い
抗菌活性が発現することを確認した。そこで,Group Aに
Fig. 1 Gas Chromatogram of Essential Oil of Thinned Wood.
40 R.T. (min)
Column:TC-WAX (60m × 0.25mm)
Column Temp.:70°C [5min hold] ~ 240°C [3°C / min]
Injection Temp:240°C (2) (11) (8) (27) (39) (37) (33) (56) (53) (52) (51) (42) 10 20 30 50 チロシナーゼ活性阻害率 (%) = (コントロールの傾き) – (検体の傾き) (コントロールの傾き) × 100
は3回の測定結果からそれぞれ平均値を算出し行った。 3. 結果および考察 3-1. 間伐材精油の化学成分とその抗菌活性 入手した間伐材の精油成分について,GC-MS 分析を行 った。その結果をFig.1 に示す。また,MS ライブラリー データ(NIST)から,精油中の主な化学成分として 57 成分 を確認した(Table 1)。 つぎに,間伐材の精油に対する抗菌活性の予備試験をグ ラム陽性菌(B. subtilis,S. aureus)およびグラム陰性菌(E. coli,P. aeruginosa)を用いて,ペーパーディスク法により 活性の有無を検討した。その結果,B. subtilisでは10μL,
S. aureusでは5μL,E. coliでは60μL,P. aeruginosaで
は40μL の試料量で抗菌活性を発現することが確認できた (Table 2)。このことから間伐材の精油は,グラム陽性菌に 比べてグラム陰性菌の方が抗菌活性を発現しにくいことが 分かった。その理由としては,グラム陰性菌の細胞膜の外 側には外膜があるため,油性である精油の透過性が抑えら れ細胞膜まで精油が浸透できないことから,抗菌活性の発 現に大きな相違が現れたものと考察した15)。そこで,間伐 材の精油中に含まれている化学成分中から,より高い抗菌 活性を発現する化合物の特定をFig.2に示した分画方法(カ
ラムクロマトグラフィー;Silica gel 60 (MERCK))を用いて
行った。すなわち,精油(10g)をヘキサン抽出部(2.8g)と酢 酸エチル抽出部(5.6g)に分画した。ヘキサン抽出部について, 減圧蒸留を行いGroup A (~75℃/ 40mmHg,0.91g)と Group B (75℃/40mmHg~,1.72g)に分留した。また,同 様に酢酸エチル抽出部についても減圧蒸留を行い,Group C (~65℃/ 0.5mmHg,1.81g)とGroup D (65℃/ 0.5mmHg~, 3.02g)に分留(Fig. 2)した。これら分留したGroup A~D の 油分に対して, B. subtilis,S. aureus,E. coliおよびP.
aeruginosasに対する抗菌活性の強弱を検討した結果を
Table 3に示す。分画部Group A~D のいずれも,抗菌活
性を発現することが確認でき,S. aureusに対する抗菌活性
はGroup AおよびB に強い活性があることを確認できた。
E. coliに対する抗菌活性は,Group Aに強い活性がある結
果を得ることができた。一方,P. aeruginosaに対する抗菌
活性は,Group Aのみが抗菌活性を発現することが確認で
きた。これらの結果から,Group AがB. S. aureus,E.coli
およびP. aeruginosaの4 つの菌に対して,いずれも高い
抗菌活性が発現することを確認した。そこで,Group Aに
Fig. 1 Gas Chromatogram of Essential Oil of Thinned Wood.
40 R.T. (min)
Column:TC-WAX (60m × 0.25mm)
Column Temp.:70°C [5min hold] ~ 240°C [3°C / min]
Injection Temp:240°C (2) (11) (8) (27) (39) (37) (33) (56) (53) (52) (51) (42) 10 20 30 50 チロシナーゼ活性阻害率 (%) = (コントロールの傾き) – (検体の傾き) (コントロールの傾き) × 100 ついてGC-MS 分析を行った結果,主成分はα-ピネン (GC:96.73%)であり,その他,β-ミルセン(GC:1.69%), d-リモネン(GC:1.58%)が含有していることを明らかにし た。α-ピネンについては単離後,比旋光度を測定したとこ ろ,[α] = +35.1° (c 1.00,CHCl3)を示したことから,Fig.3 に示した (+)-体の構造であることを確認した。そこで,(+)-体および(-)-体のα-ピネン(1),(2)のB. subtilis,S. E. coli aureus, およびP. aeruginosaに対する抗菌活性発現の相違を検討 した結果をTable 4 に示す。(+)-体では,B. subtilis,S. aureusおよびE. coliに対して抗菌活性が発現することを 確認することができたが,(-)-体では,B. subtilisに対して のみ,僅かに抗菌活性が発現しただけであった。このこと から,(+)-体と(-)-体の光学活性の相違が抗菌活性の発現に 大きく関与していることが明らかとなった。 Peak No. R.T.a) Compounds Peak Area (%) Peak No. R.T.a) Compounds Peak Area (%) 1 6.40 Tricyclene 0.125 30 28.15 β-Copaene 0.141 2 6.69 α-Pinene 15.942 31 28.57 Pinocarveol 0.031 3 7.28 α-Fenchene 0.056 32 29.34 α-Humulene 1.095 4 7.46 Camphene 0.232 33 30.10 α-Amorphene 4.990 5 8.38 β-Pinene 0.528 34 30.25 α-Terpineol/Terpinyl acetate 4.368 6 8.67 Sabinene 0.121 35 31.11 Germacrene D 1.498 7 9.43 δ-3-Carene 0.078 36 31.27 β-Selinene 1.521 8 9.72 β-Myrcene 1.157 37 31.51 α-Muurolene 8.290 9 9.90 α-Phellandrene 0.014 38 31.79 Bicyclogermacrene 0.198 10 10.33 α-Terpinene 0.055 39 32.89 δ-Cadinene 21.863 11 10.96 Limonene 1.726 40 32.97 γ-Cadinene 3.853 12 11.29 β-Phellandrene 0.063 41 33.94 α-Cadinene 1.515 13 12.49 γ-Terpinene 0.082 42 35.35 Calamenene 2.177 14 13.41 p-Cymene 0.341 43 35.67 p-Cymene-8-ol 0.100 15 13.85 Terpinolene 0.397 44 37.24 cis-Muurol-5-en-4-β-ol 0.348 16 17.52 α-Pinene oxide 0.021 45 37.70 α-Dehydro-ar-himachalene 0.031 17 18.42 Fenchone 0.026 46 38.22 α-Calacorene 0.582 18 20.04 Dehydro-p-cymene 0.134 47 39.00 cis-Muurol-5-en-4-α-ol 0.342 19 20.94 α-Cubebene 0.324 48 39.66 β-Calacorene 0.235 20 21.26 Fenchyl acetate 0.014 49 42.19 Nerolidol 0.626 21 22.39 α-Copaene 0.922 50 42.91 1,10-Di-epicubenol 1.821 22 23.52 Camphor 0.137 51 43.16 Epicubenol 1.820 23 24.19 β-Cubebene 0.170 52 46.42 T-Cadinol 3.327 24 24.67 Linalyl acetate 0.063 53 46.93 T-Muurolol 4.183 25 25.43 Longifolene 0.048 54 47.97 α-Eudesmol 0.065 26 25.74 Bornyl acetate 1.144 55 48.05 Cadalin 0.044 27 26.29 β-Elemene 3.332 56 48.30 α-Cadinol 5.285 28 26.59 Terpinen-4-ol 2.086 57 48.89 Intermedeol 0.295 29 27.73 Myrtenal 0.017 ― ― Total 100.0
Gram-Positive Organisms Gram-Negative Organisms
B. subtilis S. aureus E. coli P. aeruginosa
Conc. (L) Inhibitory Zone (mm) Conc. (L) Inhibitory Zone (mm) Conc. (L) Inhibitory Zone (mm) Conc. (L) Inhibitory Zone (mm) 10 20 40 3 5 7 5 8 10 4 8 16 20 40 60 - - 1 20 40 60 - 1 2 Table 1 Element Composition in Essential Oil of Thinned Wood.
a) Retention Time (min).
Table 2 Antibacterial Activity of Essential Oil of Thinned Wood.
24 D
Group Conc. (μL)
Gram-Positive
Organisms Gram-Negative Organisms
B.subtilis S.aureus E.coli P.aeruginosa
(A) 5 3a) 10 6 2 10 5 15 10 3 20 9 20 12 4 40 12 24 16 6 (B) 5 5 20 2 0 10 6 20 3 0 20 7 20 4 0 40 9 20 5 0 (C) 5 5 2 0 0 10 8 2 0 0 20 10 3 0 0 40 15 5 0 0 (D) 5 5 5 0 0 10 8 6 0 0 20 10 8 0 0 40 14 11 0 0 a) Inhibitory zone (mm). つぎに,除菌効果について検討した。日常的な手洗いで は通過菌(Transient flora)の除去を衛生学的手洗いでは,常 在菌(Resident flora)の除去を目的とする。そこで今回は, コントロールとして通常の水道水で手洗いを行った後,寒 天培地に接触させて37℃/24 時間培養したところ,常在菌
を形成している長桿菌(Long bacteia)と短桿菌(Short bact- eria)の混合物としての生菌数 668 個を確認した。しかし, 間伐材の精油を使用した場合には,生菌数176 個となり, その生菌数は約1/4 分に減少し,間伐材の精油に強い除菌 効果があることを確認した。そこで,分画したGroup A~D についての除菌効果を検討した結果をFig.4および5 に示 す。Group A~D において,生菌数がいずれも減少する傾向 が認められ,除菌効果があることを確認することができた が,その中でも,とくにGroup Aの生菌数は88個と最も 少なく,高い除菌効果があることを確認することができた。 Group Aの主成分は(1)であることから,その存在が除菌効 果に関与しているものと考え,(1)の除菌効果を検討した。 その結果,(1)単体での除菌効果は,GroupA の生菌数(88 個)と比べると約2 倍量(176 個)の生菌数が確認され,(1)の みが除菌効果の発現に関与しているのではなく,Group A に微量成分として含有しているβ-ミルセン(GC;1.69%)お よびd-リモネン(GC;1.58%)などの C10-モノテルペン炭化 水素類にも除菌効果を持っていることからも,これら化合 物が相乗的に働き除菌効果の向上に関与しているものと考 察した。 3-2. 抗酸化活性について 間伐材精油の抗酸化能活性評価として活性酸素阻害試験 を行った結果,市販の抗酸化剤であるアスコルビン酸 (SOD=7.2%)と比較したところ,ほぼ同程度の SOD 活性 (7.6%)が発現することを確認した。そこで,抗酸化能活性 発現の化学物質を特定する目的で,間伐材精油を分画した Group A~D 留分の活性酸素阻害試験を行った。その結果, とくにGroup D は比較物質であるアスコルビン酸よりも 高い阻害率(9.2%)を有していることが確認できた(Fig.6)。 そこで,Group D(1.25g)留分をシリカゲルを充填したカラ ムクロマトグラフィー(展開液;CHCl3)で Fr.-1~4(Fr.-1 = 119.2mg,Fr.-2 = 372.8mg,Fr.-3 = 682.5mg,Fr.-4 = 75°C / 40mmHg~ ~75°C / 40mmHg Column chromatography Silica gel 60 (MERCK) Essential Oil of Thinned Wood
Hexane Extract Ethyl Acetate Extract
65°C / 0.5mmHg~
Group B
Group A Group C Group D
Distillation under reduced pressure
~65°C / 0.5mmHg
Fig. 2 Partition Scheme for Essential Oil of Thinned Wood. Table 3 Antibacterial Activity of Group (A)~(D) for
Group Conc. (μL)
Gram-Positive
Organisms Gram-Negative Organisms
B.subtilis S.aureus E.coli P.aeruginosa
(A) 5 3a) 10 6 2 10 5 15 10 3 20 9 20 12 4 40 12 24 16 6 (B) 5 5 20 2 0 10 6 20 3 0 20 7 20 4 0 40 9 20 5 0 (C) 5 5 2 0 0 10 8 2 0 0 20 10 3 0 0 40 15 5 0 0 (D) 5 5 5 0 0 10 8 6 0 0 20 10 8 0 0 40 14 11 0 0 a) Inhibitory zone (mm). つぎに,除菌効果について検討した。日常的な手洗いで は通過菌(Transient flora)の除去を衛生学的手洗いでは,常 在菌(Resident flora)の除去を目的とする。そこで今回は, コントロールとして通常の水道水で手洗いを行った後,寒 天培地に接触させて37℃/24 時間培養したところ,常在菌
を形成している長桿菌(Long bacteia)と短桿菌(Short bact- eria)の混合物としての生菌数 668 個を確認した。しかし, 間伐材の精油を使用した場合には,生菌数176 個となり, その生菌数は約1/4 分に減少し,間伐材の精油に強い除菌 効果があることを確認した。そこで,分画したGroup A~D についての除菌効果を検討した結果をFig.4および5 に示 す。Group A~D において,生菌数がいずれも減少する傾向 が認められ,除菌効果があることを確認することができた が,その中でも,とくにGroup Aの生菌数は88個と最も 少なく,高い除菌効果があることを確認することができた。 Group Aの主成分は(1)であることから,その存在が除菌効 果に関与しているものと考え,(1)の除菌効果を検討した。 その結果,(1)単体での除菌効果は,GroupA の生菌数(88 個)と比べると約2 倍量(176 個)の生菌数が確認され,(1)の みが除菌効果の発現に関与しているのではなく,Group A に微量成分として含有しているβ-ミルセン(GC;1.69%)お よびd-リモネン(GC;1.58%)などの C10-モノテルペン炭化 水素類にも除菌効果を持っていることからも,これら化合 物が相乗的に働き除菌効果の向上に関与しているものと考 察した。 3-2. 抗酸化活性について 間伐材精油の抗酸化能活性評価として活性酸素阻害試験 を行った結果,市販の抗酸化剤であるアスコルビン酸 (SOD=7.2%)と比較したところ,ほぼ同程度の SOD 活性 (7.6%)が発現することを確認した。そこで,抗酸化能活性 発現の化学物質を特定する目的で,間伐材精油を分画した Group A~D 留分の活性酸素阻害試験を行った。その結果, とくにGroup D は比較物質であるアスコルビン酸よりも 高い阻害率(9.2%)を有していることが確認できた(Fig.6)。 そこで,Group D(1.25g)留分をシリカゲルを充填したカラ ムクロマトグラフィー(展開液;CHCl3)で Fr.-1~4(Fr.-1 = 119.2mg,Fr.-2 = 372.8mg,Fr.-3 = 682.5mg,Fr.-4 = 75°C / 40mmHg~ ~75°C / 40mmHg Column chromatography Silica gel 60 (MERCK) Essential Oil of Thinned Wood
Hexane Extract Ethyl Acetate Extract
65°C / 0.5mmHg~
Group B
Group A Group C Group D
Distillation under reduced pressure
~65°C / 0.5mmHg
Fig. 2 Partition Scheme for Essential Oil of Thinned Wood. Table 3 Antibacterial Activity of Group (A)~(D) for
B.subtilis,S.aureus,E.coli and P.aeruginosa.
61.7mg) で分画した後,それぞれの分画部に対する活性酸 素阻害試験を行った。その結果,Fr.-2 の油分は阻害値 11.6%を,Fr.-3 は 8.5%の阻害値を示し,いずれもアスコ ルビン酸よりも高い阻害値を有することが確認できた。そ こで,最も高い阻害値を示したFr.-2 の留分を再度,シリ カゲル(MERCK 60)を充填したカラムクロマトグラフィー
(Hexane:Ethyl acetate = 9:1)で再分画[Spot 1(Rf = 0.70,
Fig. 3 Chemical Structure of Major Components.
668 88 141 141 193 0 200 400 600
Control Group A Group B Group C Group D Viable bacteria count (cfu)
Group A Group B
Group C Group D
Fig. 5 Bacterial Colony Growth of Group A~D after Washing Hand. Fig. 4 Antimicrobial Activity of Group A~D.
Table 4 Antibacterial Activity of (+)- and (-)-α-Pinenes.
Gram-Positive Organisms Gram-Negative Organisms
Bacillus subtilis Staphylococcus aureus Escherichia coli Pseudomonas aeruginosa
Conc.
(μL) Zone (mm) Inhibitory Conc. (μL) Zone (mm) Inhibitory Conc. (μL) Zone (mm) Inhibitory Conc. (μL) Zone (mm) Inhibitory (+)-α-Pinene 5 10 20 12 18 26 5 10 20 12 20 28 5 10 20 16 21 30 5 10 20 - - - (-)-α-Pinene 5 10 20 - 3 6 5 10 20 - - - 5 10 20 - - - 5 10 20 - - -
H
O
H
H
H
OH
H
H
OH
H
H
OH
H
H
OH
5 7 11 14 15 12 13 8 6 4 3 2 1 10 9(+)-α-Pinene (-)-α-Pinene (-)-Epicubenol
(-)-T-Cadinol (-)-α-Cadinol (-)-δ-Cadinol
(-)-T-Murrolol
(1) (2) (3) (4)
31.5mg),2(Rf = 0.62,44.4mg),3(Rf = 0.56,37.8mg), 4(Rf = 0.52,53.5mg),5(Rf = 0.45,41.6mg),6(Rf = 0.44, 57.2mg)した。分画したSpot 1~6について,活性酸素阻害 試験を行った。その結果,とくにSpot 4は12.5%の阻害値 を示し比較物質であるアスコルビン酸よりも高い阻害値で あることを確認することができた。そこで,Spot 4の油分 に含まれる化学成分の1H-NMR[δ;0.80(3H, d, J =7.0Hz, -CH3(12 or 13)),0.87(3H, d, J =7.0Hz, -CH3(12 or 13)),0.96(3H, d, J =6.6Hz, -CH3(15)),1.70(3H, s, -CH3(14)),5.45(1H, m, = CH-)],およびMS [m /z (%) ;222[M]+,204(27),189(3), 179(14),161(62),119(100),105(59),95(30),82(40), 69(29),55(64),41(89)]を測定し,MS ライブラリーデー タ(NIST)および文献値1-4,16)と比較したところ,既知化合物 である(-)-エピクベノール(3){[α]24D = -110.5° (c 0.639, CHCl3)}であることを確認した。つぎに,(3)の抗菌活性
(Table 5)について,グラム陽性菌(B. subtilis,S. aureus) およびグラム陰性菌(E. coli,P. aeruginosa)を用いて行っ たところ,E. coliおよびP. aeruginosaに対しては抗菌活 性を発現しなかったが,B. subtilisおよびS. aureusに対 しては抗菌活性を発現することが確認できた。一方,活性 酸素阻害効果について検討したところ,Spot 4は12.9% の 阻害値を示したことから,その主成分である(3)の活性酸素 阻害効果発現に関わりについて,濃度依存性を明らかにす る目的で0.20mg/mL,0.10mg/mL および 0.05mg/mL に 調整し活性酸素阻害試験を行ったところ,比較物質である ア ス コ ル ビ ン 酸 で は 低 濃 度(0.20mg/mL=16.3% →0.10mg/mL=8.7%→0.05mg/mL=4.2%)になるにつれて, その活性が低下していく傾向が認められる(Fig.7)のに対し て , 化 合 物(3) で は 低 濃 度 (0.20mg/mL=14.5%→ 0.1mg/mL=12.9%→0.05mg/mL=12.4%)においても強い 活性が維持されていることを確認した。また,活性酸素阻 害以外の抗酸化能評価として,脂質酸化抑制効果試験を行 なった結果をFig.8に示す。コントロール(試料無添加)では, 時間の経過にともない吸光度が上昇するのに対し,アスコ ルビン酸では,吸光度の上昇を抑制していることが確認で きた。一方,化合物(3)では,アスコルビン酸に近い脂質酸 化抑制効果を発現することを確認した。一方,化粧品美白 剤としての機能である美白効果を検討するためにマッシュ ルーム由来の酵素チロシナーゼを用いた活性阻害試験 (Fig.9)を行った結果,L-チロシンを基質とした場合には, 化合物(3)では 6.7%の値を示し,比較物質として用いたア ルブチンの阻害率(17.6%)よりも低い値であった。しかし, L-ドーパを基質とした場合には,化合物(3)は 7.7%の値を 示し,アルブチン(4.0%)よりも高い阻害率を有しているこ とが分かった。本試験によるチロシナーゼ活性阻害では, L-チロシンおよびL-ドーパの段階でいずれも同等の活性阻 害値を発現したことから,酵素チロシナーゼの活性をL-チ ロシンとL-ドーパ間およびL-ドーパとドーパキノン間の 二つの過程を同時に阻害することが分かった。このことか ら,酵素阻害に関与しているチロシナーゼのドーパオキシ ダーゼ活性を選択的に阻害しているものと考察した。 つぎに,化合物(3)以外の化学成分の単離とその生理活性 について検討した。まず,分画したGroup D の油分(0.679g) を用いて,シリカゲル(MERCK 60)を充填したカラムクロ
マトグラフィー(展開液;Hexane : Ethyl acetate = 8 :2)によ り,二つの油分に再分画(Fr.3-1:0.20g およびFr.3-2:0.24g) した。順層系TLC(Kieselgel 60 F254,20×20cm)により, これらの油分のRf値を求めたところ,Fr.3-1 では 0.63, Fr.3-2 では 0.52 付近にスポットを確認することができた。 単離したそれぞれのスポット成分に対する活性酸素阻害
Gram-Positive Organisms Gram-Negative Organisms
Bacillus subtilis Staphylococcus aureus Escherichia coli Pseudomonas aeruginosa
Conc. (L) Inhibitory Zone (mm) Conc. (L) Inhibitory Zone (mm) Conc. (L) Inhibitory Zone (mm) Conc. (L) Inhibitory Zone (mm) 5 10 20 + + + 5 10 20 + + + 5 10 20 - - - 5 10 20 - - - Table 5 Antibacterial Activity of (-)-Epicubenol.
31.5mg),2(Rf = 0.62,44.4mg),3(Rf = 0.56,37.8mg), 4(Rf = 0.52,53.5mg),5(Rf = 0.45,41.6mg),6(Rf = 0.44, 57.2mg)した。分画したSpot 1~6について,活性酸素阻害 試験を行った。その結果,とくにSpot 4は12.5%の阻害値 を示し比較物質であるアスコルビン酸よりも高い阻害値で あることを確認することができた。そこで,Spot 4の油分 に含まれる化学成分の1H-NMR[δ;0.80(3H, d, J =7.0Hz, -CH3(12 or 13)),0.87(3H, d, J =7.0Hz, -CH3(12 or 13)),0.96(3H, d, J =6.6Hz, -CH3(15)),1.70(3H, s, -CH3(14)),5.45(1H, m, = CH-)],およびMS [m /z (%) ;222[M]+,204(27),189(3), 179(14),161(62),119(100),105(59),95(30),82(40), 69(29),55(64),41(89)]を測定し,MS ライブラリーデー タ(NIST)および文献値1-4,16)と比較したところ,既知化合物 である(-)-エピクベノール(3){[α]24D = -110.5° (c 0.639, CHCl3)}であることを確認した。つぎに,(3)の抗菌活性
(Table 5)について,グラム陽性菌(B. subtilis,S. aureus) およびグラム陰性菌(E. coli,P. aeruginosa)を用いて行っ たところ,E. coliおよびP. aeruginosaに対しては抗菌活 性を発現しなかったが,B. subtilisおよびS. aureusに対 しては抗菌活性を発現することが確認できた。一方,活性 酸素阻害効果について検討したところ,Spot 4は12.9% の 阻害値を示したことから,その主成分である(3)の活性酸素 阻害効果発現に関わりについて,濃度依存性を明らかにす る目的で0.20mg/mL,0.10mg/mL および 0.05mg/mL に 調整し活性酸素阻害試験を行ったところ,比較物質である ア ス コ ル ビ ン 酸 で は 低 濃 度(0.20mg/mL=16.3% →0.10mg/mL=8.7%→0.05mg/mL=4.2%)になるにつれて, その活性が低下していく傾向が認められる(Fig.7)のに対し て , 化 合 物(3) で は 低 濃 度 (0.20mg/mL=14.5%→ 0.1mg/mL=12.9%→0.05mg/mL=12.4%)においても強い 活性が維持されていることを確認した。また,活性酸素阻 害以外の抗酸化能評価として,脂質酸化抑制効果試験を行 なった結果をFig.8に示す。コントロール(試料無添加)では, 時間の経過にともない吸光度が上昇するのに対し,アスコ ルビン酸では,吸光度の上昇を抑制していることが確認で きた。一方,化合物(3)では,アスコルビン酸に近い脂質酸 化抑制効果を発現することを確認した。一方,化粧品美白 剤としての機能である美白効果を検討するためにマッシュ ルーム由来の酵素チロシナーゼを用いた活性阻害試験 (Fig.9)を行った結果,L-チロシンを基質とした場合には, 化合物(3)では 6.7%の値を示し,比較物質として用いたア ルブチンの阻害率(17.6%)よりも低い値であった。しかし, L-ドーパを基質とした場合には,化合物(3)は 7.7%の値を 示し,アルブチン(4.0%)よりも高い阻害率を有しているこ とが分かった。本試験によるチロシナーゼ活性阻害では, L-チロシンおよびL-ドーパの段階でいずれも同等の活性阻 害値を発現したことから,酵素チロシナーゼの活性をL-チ ロシンとL-ドーパ間およびL-ドーパとドーパキノン間の 二つの過程を同時に阻害することが分かった。このことか ら,酵素阻害に関与しているチロシナーゼのドーパオキシ ダーゼ活性を選択的に阻害しているものと考察した。 つぎに,化合物(3)以外の化学成分の単離とその生理活性 について検討した。まず,分画したGroup D の油分(0.679g) を用いて,シリカゲル(MERCK 60)を充填したカラムクロ
マトグラフィー(展開液;Hexane : Ethyl acetate = 8 :2)によ り,二つの油分に再分画(Fr.3-1:0.20g およびFr.3-2:0.24g) した。順層系TLC(Kieselgel 60 F254,20×20cm)により, これらの油分のRf値を求めたところ,Fr.3-1 では 0.63, Fr.3-2 では 0.52 付近にスポットを確認することができた。 単離したそれぞれのスポット成分に対する活性酸素阻害
Gram-Positive Organisms Gram-Negative Organisms
Bacillus subtilis Staphylococcus aureus Escherichia coli Pseudomonas aeruginosa
Conc. (L) Inhibitory Zone (mm) Conc. (L) Inhibitory Zone (mm) Conc. (L) Inhibitory Zone (mm) Conc. (L) Inhibitory Zone (mm) 5 10 20 + + + 5 10 20 + + + 5 10 20 - - - 5 10 20 - - - Table 5 Antibacterial Activity of (-)-Epicubenol.
(SOD)試験を行った結果,Fr.3-1 では 12.6%,Fr.3-2 では 9.9%の阻害値を示し,比較物質のアスコルビン酸よりも高 い阻害値であることを確認した。そこで,活性発現した分 画油分Fr.3-1をTLCで精製した化学成分についてGC-MS を測定した。その結果,Fr.3-1 には2 成分が混在している ことを確認することができ,1H-NMR解析から,(-)-T-ムロ ロール (4){[α]24D = -75.1°(c 0.138, CHCl3)}, 1H-NMR [δ;0.82, 0.86(6H, d, J =7.2Hz, -CH3(12 or 13)), 1.15(3H, s, -CH3(15)), 1.64(3H, br.s, -CH3(14)), 5.51(1H, d, J =5.0Hz, = CH-)], 13C-NMR[δ;15.4(C(13)), 19.3(C(8)), 21.6(C(15)), 20.9 (C(2)), 21.6(C(12)), 23.6(C(14)), 26.6(C(12)), 29.2(C(15)), 31.2(C(3)), 34.5(C(6)), 34.7(C(9)), 46.1(C(1)), 72.3(C(10)), 124.6(C(5)), 133.4 (C(4)]およびMS[m /z (%) ;222(M+,12), 204(59), 189(8), 164(40), 161(72), 139(10), 121(69), 109(31), 105(29), 95(100), 94 (31), 71(29), 58(16), 43(66)] と(-)-T-カジノール(5) 1H-NMR[δ;0.78, 0.89(6H, d, J =7.2Hz, -CH3(12 or 13)), 1.17(3H, s, -CH3(15)), 1.62(3H, br.s, -CH3(14)), 5.48(1H, d, J = 5.0Hz, = CH-)], 13C-NMR[δ; 15.2(C(13)), 19.2(C(8)), 210.9 (C(2)), 21.6(C(12)), 23.4(C(14)), 26.8(C(11)), 29.4(C(15)), 30.9(C(3)), 34.8(C(6)), 35.0(C(9)), 44.1(C(7)), 46.3(C(1)), 72.1(C(10)), 124.8(C(5)), 133.8(C(4))]およ びMS[m /z (%) ;222(M+,9), 204(52), 162 (12), 161(100), 134(9), 121(11), 119(12), 105(12), 95(10), 81 (11), 69(12), 58(2), 43(21)]であることを文献値17-19)との比較により確認 した。また,分画油分Fr.3-2に含まれている化学成分につ いても機器分析を行ったところ,分画油分Fr.3-1 と同様, 2 成分が含まれていることを確認することができた。主成 分として単離した化合物(6)の1H-NMR[δ;0.77(3H, d, J = 6.8Hz, -CH3(12 or 13)), 0.92(3H, d, J =6.8Hz, -CH3(12 or 13)), 1.10(3H, s, -CH3(10)), 1.70(3H, br.s, -CH3(4)), 5.50(1H, br.s, =CH-(5))], 13C-NMR[δ;15.1(C(13)), 20.7(C(8)), 21.5(C(2)), 21.9(C(12)), 22.6(C(14)), 23.8(C(15)), 25.9(C(3)) ,30.9(C(6)), 39.8(C(9)), 42.1(C(7)), 46.6(C(1)), 72.4(C(10)), 122.2(C(5)), 134.7(C(4))]およびMS[m /z (%) ;204(M+, 19), 189(4), 179 (2), 161(26), 149(4), 137(10), 121(47), 105(26), 95(69), 81(30), 55(29), 43(100)]を測定し,文献値20-23)と比較したと ころ,既知化合物である カジノールの値に近似している
α
5.2 1.1 2.2 9.2 7.2 0.0 2.0 4.0 6.0 8.0Group A Group B Group C Group D Ascorbic acid Inhibition Rate (%)
Fig.6 SOD-like Activity of A~D Groups.
Fig. 7 SOD-like Activity of (-)-Epicubenol.
Fig. 8 Ferric Thiocyanate Assay of (-)-Epicubenol. Time (min) 14.5 16.3 12.9 8.7 12.4 4.2 0.0 4.0 8.0 12.0 16.0
(-)-Epicubenol Ascorbic acid
Inhibition Rate (%)
0.20mg/mL 0.10mg/mL 0.05mg/mL
(-)-Epicubenol
Fig. 9. Tyrosinase Inhibition Activity Assay of (-)-Epicubenol.
6.7 17.6 7.7 4.0 0.0 4.0 8.0 12.0 16.0 (-)-Epicubenol Arbutin Inhibition Rate (%) Tyrosine DOPA L-Tyrosine L-DOPA (-)-Epicubenol 0.20 0.25 0.30 0.35 0.40 0 15 30 45 60 Control (-)-Epicubenol Ascorbic acid Absorbance (500nm) Control (-)-Epicubenol Ascorbic acid
ことから確認した。なお,単離した化合物の比旋光度を測 定したところ,[ ]26D = -48.7°(c 0.118,CHCl3)を示したこと から(-)-体であることも確認した。一方,化合物(6)に少量成 分として含まれている化合物についても単離を試みたが構 造決定を行えるだけの量を単離することはできなかった。 しかし,化合物(6)を含むFr.3-2 油分の1H-NMR を測定し た結果から,δ-カジノール(7)であることを推定24,25)した。 今回,分画したFr.3-1 ((4)と(5)の混合物)とFr.3-2 ((6)と(7) の混合物)は,比較物質であるアスコルビン酸よりも高い抗 酸化能が発現することを確認することができた。 4. 結 言 今回容易に入手できた間伐材精油の有効利用を目的とし た生理活性試験を実施し,下記の結果を明らかにすること ができた。 1) 間伐材の精油に対する抗菌活性では,グラム陽性菌 (B.subtilis,S.aureus)およびグラム陰性菌(E. coli,P.
aeruginosa)を用いて行ったところ,いずれの菌に対 しても抗菌活性を発現することが確認できた。その活 性発現に最も関与している化学成分としてはモノテ ルペン炭化水素である(1)(B. subtilis,S. aureusおよ びE. coli )であり,(-)-体ではほとんど活性を発現しな かった。このことから,(+)-体と(-)-体の構造の違いが 活性発現に大きく関わっていることが明らとなった。 2) 単離したセスキテルペンアルコール(3)のグラム陽性菌
(B. subtilis,S. aureus)およびグラム陰性菌(E. coli,
P. aeruginosa)に対する抗菌活性は,B. subtilisおよび S. aureusに対して,強い抗菌活性が発現することを 確認した。 3) 除菌効果については,手洗い試験により間伐材精油を 用いた場合には,生菌数176個となり,約1/4に減少 することが明らかになった。このことから,間伐材精 油には除菌効果があることを確認した。 4) 抗酸化活性について活性酸素阻害試験により検討した 結果,比較物質として用いた市販品のアスコルビン酸 (8.7%)よりも,化合物(3)の方が高い阻害値(12.9%)を確 認することができた。また,化合物(4)と(6)にも高い抗 酸化能があることを明らかになった。 5) 化合物(3)の美白効果を検討したところ,L-ドーパ基質 でアルブチン(4.0%)よりも高い活性阻害(7.7%)を発現 することを確認した。 以上のことから,間伐材由来の精油ならびにその油分中 に含まれる化合物(3)は,抗菌活性,抗酸化能,脂質酸化抑 制効果および美白効果を発現する機能を合わせ持つことが 明らかとなり,抗菌剤,除菌剤および抗酸化剤などの用途 開発資材として,十分可能であるものと考えられる。 5. 参考文献
1) B. A. Nagasampagi, L.Yankov, Sukh Dev,
Tetrahedron Letters, 16, 1913-1918 (1968). 2) Y. Ohta, Y,Hirose,, Tetrahedron Letters, 22,
2073-2075 (1967).
3) M. Suzuki, N. Kowata, E. Kurosawa, Bull. Chem. Soc. Jpn.,54(8), 2366-2368 (1981).
4) C. Solis, J. Becerra, C. Flores, J. Robledo, M. Silva, J. Chem. Soc., 49, 157-161 (2004).
5) T. Fujimura, T. Kawai, T. Kajiwara, Y. Ishida, Plant Tissue Culture Letters,11(1), 34-39 (1994).
6) M. Nomura, Y. Maegawa, Y. Fujihara, J. Oleo Sci., 54, 583-591 (2001).
7) K. Kasemura, A. Yamamoto, T. Gotou, Y. Fulihara, M. Nomura, Bokin Bobai, 30, 137-144 (2002). 8) S. Tachibana, Y.Ohno, Y.Fujihara, Y. Okada, M.
Sugiura, S. Takagi, M. Nomura, J. Oleo Sci., 55, 181-189 (2006).
9) S. Tachibana, T. Gotou, M. Nomura, J. Oleo Sci., 57, 107-113 (2008).
10) S. Ueda, H. Yamashita, M. Nakajima, Nippon Shokuhin Kogyo Gakkaishi, 29, 111-116(1982). 11) T. Abe, S. Tanimoto, M. Hisama, Y. Mihara, M.
Nomura, Bokin Bobai, 35,489-495 (2007).
12) S. Tanimoto, H.Tominaga, Y. Okada, M. Nomura,
YUKAGAKU ZASSHI, 126, 173-177 (2006).
13) A. Maeda, S. Tanimoto, T. Abe, S. Kazama, H. Tanizawa, M. Nomura, YAKUGAKU ZASSHI, 128, 129-133 (2008).
ことから確認した。なお,単離した化合物の比旋光度を測 定したところ,[ ]26D = -48.7°(c 0.118,CHCl3)を示したこと から(-)-体であることも確認した。一方,化合物(6)に少量成 分として含まれている化合物についても単離を試みたが構 造決定を行えるだけの量を単離することはできなかった。 しかし,化合物(6)を含むFr.3-2 油分の1H-NMR を測定し た結果から,δ-カジノール(7)であることを推定24,25)した。 今回,分画したFr.3-1 ((4)と(5)の混合物)とFr.3-2 ((6)と(7) の混合物)は,比較物質であるアスコルビン酸よりも高い抗 酸化能が発現することを確認することができた。 4. 結 言 今回容易に入手できた間伐材精油の有効利用を目的とし た生理活性試験を実施し,下記の結果を明らかにすること ができた。 1) 間伐材の精油に対する抗菌活性では,グラム陽性菌 (B.subtilis,S.aureus)およびグラム陰性菌(E. coli,P.
aeruginosa)を用いて行ったところ,いずれの菌に対 しても抗菌活性を発現することが確認できた。その活 性発現に最も関与している化学成分としてはモノテ ルペン炭化水素である(1)(B. subtilis,S. aureusおよ びE. coli )であり,(-)-体ではほとんど活性を発現しな かった。このことから,(+)-体と(-)-体の構造の違いが 活性発現に大きく関わっていることが明らとなった。 2) 単離したセスキテルペンアルコール(3)のグラム陽性菌
(B. subtilis,S. aureus)およびグラム陰性菌(E. coli,
P. aeruginosa)に対する抗菌活性は,B. subtilisおよび S. aureusに対して,強い抗菌活性が発現することを 確認した。 3) 除菌効果については,手洗い試験により間伐材精油を 用いた場合には,生菌数176個となり,約1/4に減少 することが明らかになった。このことから,間伐材精 油には除菌効果があることを確認した。 4) 抗酸化活性について活性酸素阻害試験により検討した 結果,比較物質として用いた市販品のアスコルビン酸 (8.7%)よりも,化合物(3)の方が高い阻害値(12.9%)を確 認することができた。また,化合物(4)と(6)にも高い抗 酸化能があることを明らかになった。 5) 化合物(3)の美白効果を検討したところ,L-ドーパ基質 でアルブチン(4.0%)よりも高い活性阻害(7.7%)を発現 することを確認した。 以上のことから,間伐材由来の精油ならびにその油分中 に含まれる化合物(3)は,抗菌活性,抗酸化能,脂質酸化抑 制効果および美白効果を発現する機能を合わせ持つことが 明らかとなり,抗菌剤,除菌剤および抗酸化剤などの用途 開発資材として,十分可能であるものと考えられる。 5. 参考文献
1) B. A. Nagasampagi, L.Yankov, Sukh Dev,
Tetrahedron Letters, 16, 1913-1918 (1968). 2) Y. Ohta, Y,Hirose,, Tetrahedron Letters, 22,
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4) C. Solis, J. Becerra, C. Flores, J. Robledo, M. Silva, J. Chem. Soc., 49, 157-161 (2004).
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7) K. Kasemura, A. Yamamoto, T. Gotou, Y. Fulihara, M. Nomura, Bokin Bobai, 30, 137-144 (2002). 8) S. Tachibana, Y.Ohno, Y.Fujihara, Y. Okada, M.
Sugiura, S. Takagi, M. Nomura, J. Oleo Sci., 55, 181-189 (2006).
9) S. Tachibana, T. Gotou, M. Nomura, J. Oleo Sci., 57, 107-113 (2008).
10) S. Ueda, H. Yamashita, M. Nakajima, Nippon Shokuhin Kogyo Gakkaishi, 29, 111-116(1982). 11) T. Abe, S. Tanimoto, M. Hisama, Y. Mihara, M.
Nomura, Bokin Bobai, 35,489-495 (2007).
12) S. Tanimoto, H.Tominaga, Y. Okada, M. Nomura,
YUKAGAKU ZASSHI, 126, 173-177 (2006).
13) A. Maeda, S. Tanimoto, T. Abe, S. Kazama, H. Tanizawa, M. Nomura, YAKUGAKU ZASSHI, 128, 129-133 (2008).
α
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