革新的技術による霊長類の神経回路機能 全容解明構想の推進方策について
(中間取りまとめ) 概要
平成25年7月26日
革新的技術による霊長類の神経回路機能全容解明 に関する作業部会
資料2
1
脳解析
(脳システム)
脳解析
(構造・回路)
マクロレベル
ミクロレベル
①既存技術の高度化と革新的技術開発
(高速・広範囲・高解像度の脳情報読み出し)
②ヒトにつながるトランスレータブル脳・行動指標の開発
(ヒト脳との回路の対応付け)
③情報科学の活用
(ヒト脳機能と関連した重要回路の抽出)
脳機能 ネットワーク の全容解明
現在 5年後 10年後
マーモセット全脳回路に 関するマクロレベルの構 造と活動のマップを完成
ヒトの精神活動にとって重要な神 経回路に対応するマーモセット神 経回路機能のニューロンレベル
での全容解明
階層のギャップ
ギャップを 埋める 脳研究の次のブレイクス
ルーをつくるためにはマク ロレベルとミクロレベルの 間のギャップをうめる研究
が必要
ギャップを 埋める
様々な実験動 物・ヒトの研究 成果を結集
実験データベースと シミュレーション マーモセット脳
ヒトの高次脳機能とその障害としての精神神経疾患の理解と治療戦略 脳の情報処理理論の確立と応用
・回路構造
・神経活動マップ
・行動データ これら網羅的データを 基盤とした新しい脳の 物質・情報科学の創出
大規模網羅的 解析技術による
脳科学研究の パラダイムシフト
=
革新的技術による霊長類の神経回路機能全容解明構想
はじめに
◆脳科学研究は、脳の発達障害・老化の制御や、精神・神経疾患の病因解明及び予防・治療法の開発を可能にするとともに、
失われた身体機能の回復・補完を可能とする技術開発をもたらし、医療・福祉など国民生活の質の向上に最も貢献できる研究 分野の一つ。
◆脳科学研究の分野における世界的な大きな動きとして、米国では2013年4月にオバマ大統領によるブレイン・イニシアティ ブが発表され、欧州では2013年1月にヒューマン・ブレイン・プロジェクトがEUフラッグシッププロジェクトに採択されるなど、10年 計画の大型プロジェクトが始動。
◆欧米における動向を踏まえ、我が国の強みを生かした革新的技術による脳科学研究を戦略的に推進するため、「革新的技 術による霊長類の神経回路機能全容解明」を基本的な構想とし、本作業部会にて具体的な推進方策について調査検討を実施。
中間取りまとめ 概要(
1
)革新的技術による霊長類の神経回路機能全容解明に関する作業部会 委員名簿
伊 佐 正 大学共同利用機関法人自然科学研究機構生理学研究所 教授 石 井 信 京都大学大学院情報学研究科システム科学専攻 教授
大 隅 典 子 東北大学大学院医学系研究科 教授 岡 野 栄 之 慶應義塾大学医学部 教授
◎岡 部 繁 男 東京大学大学院医学系研究科 教授 尾 崎 紀 夫 名古屋大学大学院医学系研究科 教授 笠 井 清 登 東京大学大学院医学系研究科 教授 見 学 美根子 京都大学大学院生命科学研究科 教授
合 田 裕紀子 独立行政法人理化学研究所脳科学総合研究センター シニアチームリーダー 佐々木 えりか 公益財団法人実験動物中央研究所応用発生学研究センター センター長 祖 父 江 元 名古屋大学大学院医学系研究科 教授
津 本 忠 治 独立行政法人理化学研究所脳科学総合研究センター 副センター長・シニアチームリーダー 銅 谷 賢 治 学校法人沖縄科学技術大学院大学神経計算ユニット 教授
本 田 学 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター神経研究所疾病研究第七部 部長 柚 﨑 通 介 慶應義塾大学医学部 教授
吉 峰 俊 樹 大阪大学大学院医学系研究科 教授
計16名(敬称略 50音順)
◎主査
中間取りまとめ 概要(
2
)1.我が国で神経回路全容解明を目指す意義
1-1 精神活動、高次機能の理解
◆脳は、人間が人間らしく生きるための根幹をなす「心」の基盤であるとともに、身体全体を統合的に制御する機能をもつ。人間 の精神活動や高次脳機能を脳の仕組みに基づいて理解することは、「人間とは何か?」という哲学的問いに対する科学の挑戦。
◆人間の精神活動・高次脳機能において、特に 1.創発的意思・意識・思考・自我・創造性 2.社会性・コミュニケーション能力
といった「人を人たらしめている特性」がどのようにして形作られているのかを科学的に解明することが重要。
◆本構想では、外界からの刺激に対する応答の仕組みだけでなく、自発的に湧き起こってくる1.のような特性が、脳のどこか らどのようにして生まれ、さらに2.のような能力を形成するのかを明らかにすることを大きな目標。
第1段階:全脳のマクロレベルでの活動記録によって精神活動・高次脳機能を支える脳活動を全脳レベルで明らかにする。
第2段階:鍵となる部位の活動及びそれらの部位間の相互作用の解析をもとに、高次脳機能の創発機構をニューロン(ミクロ)レ ベルで徹底解明する。
◆前世紀にはとても手が届かないと考えられてきたこのような目標が、現在、様々な研究手法の発展により次第に射程に入りつ つあり、また、そのような目標を掲げることで飛躍的な技術の進歩がもたらされる。さらにこうした「人を人たらしめている特性」が神 経回路のレベルで理解されることにより、精神・神経疾患の理解と治療戦略の開発が飛躍的に加速されることが期待。
中間取りまとめ 概要(
3
)1.我が国で神経回路全容解明を目指す意義(続き)
1-2 脳の理解のブレイクスルーになぜ神経回路の全容解明が必要なのか
◆近年、神経細胞の機能については、分子生物学や遺伝子操作技術などの進歩により、ミクロレベルでの理解が飛躍的に進 みつつある。同時に、脳イメージングや脳刺激法の進歩により、さまざまな精神活動とその異常を脳のマクロな構造と機能に結 びつけて理解することが可能になりつつある。
◆しかしながら、この両者の間には未だ大きな断層があり、ミクロな機能素子がどのように相互に結びつき、それぞれがどのよ うな情報処理を行うことによって、全体として人間の精神活動を実現しているか、というギャップが埋められていない。これが脳の 本質的な理解を進める上での大きなボトルネック。
◆したがって、神経細胞がどのように神経回路を形成し、どのように情報処理を行うことによって、全体性の高い脳の機能を実 現しているかについて、その全容を明らかにする研究が必須。
◆脳の高次機能の計算論的解明は、病気の予測や治療指針を提供するのみならず、ヒトと共生し、人間の精神活動を支える 新たな人工システムの構築に向けて大きなブレイクスルーとなることが期待。
中間取りまとめ 概要(
4
)1.我が国で神経回路全容解明を目指す意義(続き)
1-3 脳科学研究の国際動向と本構想の関連性
◆米国では、2013年4月にオバマ大統領により「ブレインイニシアティブ」が発表され、個々の脳細胞や複雑な神経回路の瞬時 の相互作用で脳が活発に機能する様を理解するための新技術の開発を応用を進める10年計画。この展開により、アルツハイ マー病、てんかん、心的外傷など脳神経疾患を治療し、治癒し、予防する方法の発見を支えることを究極の目的。
◆欧州では、2013年1月にEUフラッグシッププロジェクトに、グラフェンプロジェクトともに採択。ICT統合基盤研究プラットフォー ムをコアとし、データ取得、理論、応用コンピューティング、倫理の5つのサブプロジェクトからなる、ICTを用いて脳の理解を目指 す10年計画。
◆欧米における新規の大型計画の背景には、過去10年間に脳科学分野における様々な要素技術が著しく発展し、これまでは 不可能と考えられていた大規模かつ高精度な脳内情報の読み出し、記録、解析が可能となった事実が存在。これらの要素技術 のスピードを考えると、タイミングは今を逃すべきではなく、数年間放置すれば、我が国の国際競争力が著しく低下する危険性も 高い。
1-4 我が国の独自性を活かした推進方策-マーモセットを対象とした神経回路の全容解明
◆線虫やげっ歯類などの生物と人間とを繋ぐブリッジとして、霊長類の脳を対象とした検討は必須。マーモセットは、人間の社 会行動を調べる上で適した行動特性を持つほか、人間で高度に発達した前頭葉が非常に発達していること、脳全体が8グラムと 小さく全容解明の射程に捉えやすい。また、遺伝子操作技術を適用することが比較的容易であり、我が国はこの分野で世界を リードする位置にある。
◆現代脳科学の中で細分化、分断されて進められている研究諸領域を結びつけ統合することを可能にすることによって大きな ブレイクスルーを導き、我が国の独自性を活かしつつ脳の理解を飛躍的に前進させることが期待。
中間取りまとめ 概要(
5
)1.我が国で神経回路全容解明を目指す意義(続き)
1-5 本構想の社会的貢献-精神・神経疾患の理解と克服
◆ヒトや精神・神経疾患患者を対象とした研究では、非侵襲的な脳計測による指標と行動の間の相関関係を示すことは可能で あるが、因果関係を示すことは困難。精神・神経疾患における創薬研究では特定の受容体や情報伝達系に作用するシード・リー ド化合物を展開し、動物実験による薬理作用の検討、更に安全性の評価、ヒトにおける薬効といった多数のステップを経て実用 化に至るが、その過程には、ヒトと動物で共通に計測・評価できる脳・行動指標が必要。
◆本構想の実施により、ヒト疾患患者の脳障害と関連する回路を、マーモセットが社会性を持つ特長を生かして同様な計測技 術(トランスレータブルな脳指標)で同定し、革新的回路操作技術によって回路と脳機能障害の因果関係を証明することが可能。
また、マーモセットとヒトで共通に計測・評価できるトランスレータブル脳・行動指標を開発することで、マーモセットでみられた薬 効のヒトでの検証が効率化する。さらに、マーモセット脳機能マップを、疾患関連データ・臨床データと融合することにより、in silicoでの脳疾患シミュレーションや創薬シミュレーションなどの革新的技術の創出が可能。
(1)精神疾患
(2)神経疾患
(3)脳神経外科領域
(4)リハビリテーション・BMI技術領域
中間取りまとめ 概要(
6
)1.我が国で神経回路全容解明を目指す意義(続き)
1-6 本構想の社会的貢献-情報科学分野
◆脳の高次情報処理機能の計算論的解明は、その破たんによる精神・神経疾患の機序の理解や治療指針の提供につながる とともに、未だ人間でないとできないとされる創造性を有する機械、ヒトと共生するロボットの開発、新しいコミュニケーションツー ル、超低消費エネルギーの計算機システムなど、将来的に新しい社会の創成に貢献する技術の開発につながることが期待。ま た、このようなヒト脳の情報科学的理解は、教育、訓練、危機管理、組織運営、メディア理論、経済、産業など様々な領域におい て応用可能であり、人間社会の発展につながることが期待。
◆脳のモデュールが同定され、それらを動的に操作する機構が解明されれば、BMI(機能補綴)の洗練化、あるいは、脳の機 能代替をする新たな人工システムの開発が可能である。また、その機構を利用することで、外部から操作機構自体を操作する(
ニューロフィードバック)ことで、機能不全である精神・神経疾患の治療につながることが期待。
◆脳機能は、遺伝子、分子、神経細胞、回路、領野、脳全体、個体の集団という階層性の中で論じるべきものであるため、計測 データは必然的にマルチモーダルである。また、構造決定のための現状での主要な技術である、統計的因果推定、トラクトグラ フィなどの情報学的手法は、必然的にビッグデータとなる霊長類に適用するためには、精度、スループットともに不十分であるた め、国際協力を図りつつ、我が国独自のデータ処理技術の開発が必要。特に、実験研究との強固な連携の下で、我が国の強い 実験技術(光プローブ開発、顕微鏡計測)をさらに発展させるための技術開発が必要。
中間取りまとめ 概要(
7
)2.我が国における目標設定
2-1 本構想の達成目標
◆ヒトの神経回路機能の全容を解明することができれば、ヒトの精神活動を理解できるだけでなく、精神・神経疾患の理解や克 服、更には脳の情報処理理論を利用した桁違いの省エネで複雑な情報処理が可能なコンピュータの技術確立を実現することが 可能。
◆ヒトの神経回路機能の全容解明に迫るために、まずよりヒトに近いモデル生物として霊長類コモンマーモセットが注目されて いる。ヒトに近い社会性や音声による高度に発達した音声によるコミュニケーションを持つとともに、我が国発、世界初の技術革 新として、トランスジェニックマーモセットの作出に成功しており、我が国が世界をリードする分野でもある。よりヒトに近いモデル 生物であること、遺伝改変技術が利用可能な唯一の霊長類であるという点を生かし、マーモセットにおける詳細な神経回路マッ プを作成することは、ヒト脳の理解、精神疾患克服への貢献が期待。本構想は、マーモセットでのヒトの脳機能と対応付けた神 経回路機能の全容解明を目指す。
◆本構想の成功に向けては、マクロレベルの脳解析とミクロレベルの脳解析間の階層のギャップを埋めることが必須。そのた め、機能・構造イメージング、光遺伝学、ウイルスベクター、神経構造解析、神経活動記録などの既存計測技術の高度化を行う と同時に、MRI撮像原理、3次元イメージング、遺伝子改変霊長類、生体透明化技術、回路の大規模シミュレーション手法、構造 生物学的神経活動記録法、ゲノム・エピゲノム操作・解析技術などの革新的技術開発を行うことが必要。また、本構想の成果を 役立つものにするため、マウス等の実験動物脳、マカクなどの霊長類脳、更にヒト脳とマーモセットの脳の間で、構造・機能を対 応付ける研究を推進することも重要。マーモセットで明らかにされた回路機能について、様々な階層レベルでの詳細な検証を行 うためには、多種類のモデル動物を駆使した効率の良い技術開発、ヒトとマーモセットの脳機能をつなぐための研究推進など、
多面的な研究体制が必須。
◆5年後の目標
マーモセット全脳に関するマクロレベルの構造と活動マップの完成
◆10年後の目標
ヒトの精神活動にとって重要な神経回路に対応するマーモセット神経回路機能のニューロンレベルでの全容解明
中間取りまとめ 概要(
8
)2.我が国における目標設定(続き)
2-2 目標達成のための具体的戦略
◆マーモセット脳の神経回路機能について得られた知見を集約、データベース化して研究者に提供することにより、脳高次機 能の解明、精神・神経疾患の克服、高次脳情報処理機構の解明を飛躍的に加速させることを目指す。
◆前期(1-5年)のロードマップ概要
最先端の神経回路の構造と活動の読み出し技術を駆使し、
マクロレベルでの構造と活動マップを作成。これと平行して革 新的計測・解析技術の開発、ヒト脳の構造・機能との対応付け を行うための比較研究、大規模情報処理技術と神経回路デー タベースの統合プラットフォームの開発、の三項目に重点を置 く。
1.マクロレベルのマップ作成
2.機能モデュールと線維結合の同定 3.脳活動との対応付け
4.ヒト脳との対応付け・疾患研究への貢献 5.脳情報解析とデータベース
6.脳情報処理モデルの高度化 7.技術開発
◆後期(6-10年)のロードマップ概要
前期に作成したマクロレベルでの構造・活動マップを元に、並行して新たに 開発された革新的技術を応用することによって高度化し、マクロとミクロの間 に存在するギャップを埋めていく。またマーモセット脳とヒト脳での機能の対応 付けを明確化し、最終的には重要なヒト高次脳機能に対応するマーモセット神 経回路機能の全容をニューロンレベルで記録・解析。このような全脳レベルで の活動データを大規模情報処理技術と大規模シミュレーションを活用して解 析し、得られた結果からヒト脳における情報処理過程についての新しいモデル を提案。さらに大規模活動データのヒト脳活動との比較、その数理解析、病態 モデル動物との比較により精神・神経疾患研究に貢献。
1.マーモセット脳のマクロレベルのマップとヒト脳機能の対応付け 2.脳の構造マップ、活動マップ、行動指標の統合
3.ヒト高次脳機能にとって重要な神経回路に対する集中的解析 4.脳情報解析とデータベース
5.脳情報処理モデルの高度化 6.技術開発
7.全脳レベルの神経活動情報のヒト疾患研究への応用
ミクロ レベル
脳 解析
情報科学の活用
ヒトにつながるトランスレータブル 脳・行動指標の開発
階層の ギャップ
今の技術で100年以上 かかる霊長類全脳解明を
可能にする
革新的 技術開発が 必要不可欠
高速、広範囲、高解像度の 脳情報読み出し
革新的技術開発
網羅的回路データ取得ヒト脳との対応回路解析技術開発情報科学の活用
10年後
1 2 3 4 5年後
5年目 マーモセット脳
3次元 構造・活動
マクロ マッピング
脳の線維結合と 活動のマップ作成
マクロ レベル
脳 解析
脳情報処理 モデルの高度化
ヒト脳との 回路の対応付け
革新的脳情報 読み出し技術
マクロ レベル
脳 解析
ミクロ レベル
脳 解析
情報科学の活用
ヒトにつながるトランスレータブル脳・行動指標の開発
階層の
ギャップ “階層のギャップ”の解消
今の技術で100年以上 かかる霊長類全脳解明を
可能にする
革新的 技術開発が 必要不可欠
高速、広範囲、高解像度の 脳情報読み出し
革新的技術開発
網羅的回路データ取得ヒト脳との対応路解析技術開発情報科学の活用
10年後
1 2 3 4 5年後
5年目 マーモセット脳
3次元 構造・活動
マクロ マッピング
ヒト脳機能と 関連した 重要回路の
抽出
ヒト脳機能に関連付けた行動課題
課題実行中のマクロレベルの脳活動マップ
機能モデュール毎のミクロレベルの活動・構造マップ 機能モデュール
シナプスレベル 構造マップ 細胞レベル
活動マップ
細胞レベル 構造マップ
行動
マクロレベルの 網羅的 脳活動記録
回路構造に 基づいた ミクロレベルでの
神経細胞活動 10年目の
目標達成 イメージ
行動
マクロレベルの 網羅的 脳活動記録
回路構造に 基づいた ミクロレベルでの
神経細胞活動
感覚
運動 意志
の 創発
ミクロレベルの 活動・構造マップ
が取得済み
脳全体の機能と 個々の神経細胞 の活動の対応が
解析可能 記憶
情動
機能モデュール
脳機能ネットワークの 全容解明
・回路構造
・神経活動マップ
・行動データ これら網羅的データを 基盤とした新しい脳の 物質・情報科学の創出 マクロ
レベル 脳 解析
ミクロ レベル
脳 解析
情報科学の活用
ヒトにつながるトランスレータブル脳・行動指標の開発
階層の
ギャップ “階層のギャップ”の解消
今の技術で100年以上 かかる霊長類全脳解明を
可能にする
革新的 技術開発が 必要不可欠
高速、広範囲、高解像度の 脳情報読み出し
革新的技術開発
網羅的回路データ取得ヒト脳との対応回路解析技術開発情報科学の活用
10年後
1 2 3 4 5年後
5年目 マーモセット脳
3次元 構造・活動
マクロ マッピング
ヒト脳機能と 関連した 重要回路の
抽出
脳機能
ネットワークの 全容解明
中間取りまとめ 概要(
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)2.我が国における目標設定(続き)
2-3 中核となる技術目標
◆マーモセットの神経回路機能の全容解明を目指すにあたり、開発すべき様々な技術革新が求められている。回路構造の解 析には非侵襲的脳画像解析技術、顕微鏡技術、光遺伝学的解析手法や透明化技術などの技術革新が必要。また、モデルマー モセット作製のための新たな遺伝子改変技術や、神経回路のアウトプットとしての行動評価のための新たな行動解析法の確立 などが求められている。これらの開発を効率的に行うためには、研究分野や大学・企業の垣根を超えた共同研究が不可欠。また 必要に応じて、マーモセット以外の霊長類やヒト、マウスなどの関連研究分野も積極的に支援し、オールジャパンの研究体制構 築を目指す。
◆5年後の目標
1)ニューロンレベルでの大規模活動計測技術の開発
2)超多チャンネルアレイ電極などを含む新たな電気生理学的手法の開発 3)高解像度MRIによる脳構造解析技術の開発
4)革新的な脳画像計測装置の開発(超高解像度MRI装置など)
5)神経回路の網羅的計測技術開発(電子顕微鏡など)
6)光遺伝学などによる電気活動の伝搬パターンの大規模トレース手法の 開発
7)行動指標の計測技術開発
8)新しい遺伝子改変マーモセット作製技術の開発
9)大量データを処理する情報工学、数理科学的手法の確立
◆10年後の目標
1)マーモセット脳の構造・機能マップを活用した脳の正常・病態数理モデルの開発と計 算機シミュレーション
2)マクロ構造マップを基盤としたヒトの成体、加齢、発生脳の正常及び病態の数理モデ ルの開発と計算機シミュレーション
3)トランスレータブル脳・行動指標の開発により同定された精神・神経疾患モデルの責 任回路に対する細胞・シナプスレベルでの構造・機能解析技術
4)作製した遺伝子改変マーモセットの性成熟を待たずに動物数を増やす技術の開発 5)マーモセット脳機能解析で開発されたリソース(高解像度MRI装置、非侵襲的計測・解 析法など)のヒトへの応用
6)疾患モデルマーモセットにおける脳機能マップの作成とその精神・神経疾患の予防・
治療への利用
中間取りまとめ 概要(
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)◆5年後の目標
1)ヒト・マカクに連結できるマーモセットのトランスレータブル脳・行動指 標の開発(その1 全脳レベルでの神経活動記録(血流、電気信号)):
fMRIやPETでの脳血流記録、全脳レベルでの超多チャネルECoG記録 法などの技術開発(既に大規模神経回路の研究が進んでいるマカクザ ルと比較)
大規模神経活動記録の間の網羅的な因果関係の解析技術の開発(
Granger因果など)
2)ヒト・マカクに連結できるマーモセットのトランスレータブル脳・行動指 標の開発(その2 全脳レベルでの神経回路の構造解析):
拡散テンソル画像の結果を解剖学的トレーサー解析と照合、妥当性を検 討
3)ヒト・マカクに連結できるマーモセットのトランスレータブル脳・行動指 標の開発
4)マーモセット、マカクザル、ニホンザルのゲノム情報の比較研究 5)神経回路特異的な操作技術の開発
◆10年後の目標
1)5年目までの成果を踏まえ、全脳レベルでの神経活動記録、神経回路の構造解析デ ータを統合し、更に開発されたトランスレータブル脳・行動指標も組み合わせることで、ヒ トで重要な高次脳機能に対応するマーモセット神経回路を同定し、その回路について細 胞レベルでの活動の網羅的記録を行う。
2)ゲノム情報の解析に関する研究を引き続き行い、高次脳機能の基盤となる遺伝子を 同定する。
3)神経回路の特異的な操作に関する革新的技術の実用化を推進し、1)における全脳 規模の活動記録とそれらの神経活動の問題とする高次脳機能への寄与を実証する研究 に活用する。
2.我が国における目標設定(続き)
2-4 ヒトの高次脳機能の理解につなげる研究
◆ヒト高次脳機能の脳内基盤を理解するには、豊かな社会性といったヒト類似の高次脳機能と霊長類特有の脳の構造的特徴 を有し、かつトランスジェニック動物の作製が可能となったマーモセットを本研究では対象とするべき。
◆基本方針として、ヒトに外挿可能な脳・行動計測を網羅的に行い、意識や社会性からその基盤となる基本的な感覚運動機能 などの高次機能に重要と考えられる回路を絞り込み、それらに対して回路機能の操作実験を行うことで、重要な回路機能を解明 する。このようにして、ヒトのこころを成り立たせる回路についてその全容解明をすることで、ヒトの意識や社会性の理解が格段と 進歩する。さらに、マーモセットとマカクザル・ヒトの神経機能マップやゲノムの比較により、ヒト特有の自己意識や言語の神経・分 子基盤の解明に向けて大きく踏み出すことができる。
中間取りまとめ 概要(
11
)◆5年後の目標
1)ヒト・マカクに連結できるマーモセットのトランスレータブル脳・行動指標の開 発(マクロレベル)
特にMRI(resting state fMRI connectivity, diffusion tensor imagingなど)、
ECoG・EEG(oscillationなど)、PETを用いた大規模神経活動記録・解析技術を 開発する
2)トランスレータブル脳・行動指標のミクロレベルでの回路・分子基盤の同定。
特にマーモセットにおいて、社会性やコミュニケーションに関わる機能モデュー ル、 それらの機能的結合及びその基盤となる線維結合、さらに感覚運動回路 の絞り込みを実施する
3)マーモセットとヒトの双方向性の研究で明確となったヒト疾患に関連したトラン スレータブル脳・行動指標を活用する研究を実施する
4)ヒト、マカクザル、マウスゲノム構造との比較
マーモセットのゲノム配列・ゲノム構造を解析し、特にヒト精神神経疾患関連遺 伝子についてマカク、ニホンザル、ヒト、げっ歯類とのSynteny Analysisを完成さ せる
5)4)の情報をもとにヒト精神疾患(前頭前野の社会性が関わる統合失調症と発 達障害など)のモデルマーモセットを作成する技術の開発を開発する。特に患 者サンプルから同定された効果の大きいゲノム変異、特に大規模な欠失・重複 について、その遺伝子改変モデル動物をマーモセットで作成出来る技術を開 発など、疾患モデルマーモセット作成技術を開発する
◆10年後の目標
1)精神・神経疾患の回路・分子病態の解明、治療標的回路・分子の同定
マーモセット神経機能マップとトランスレータブル脳・行動指標の間の因果関係を解 明
マーモセット・マカク・ヒト・疾患データを比較することにより、ヒトの高次脳機能(創発 的意思、意識、思考、認知、運動等)とその障害の基盤となる神経回路とマーモセッ トの神経機能詳細マップの対応を明確化
2)精神・神経疾患の神経回路バイオマーカー確立
ヒト精神・神経疾患のゲノム解析の結果に基づき作製した疾患モデルマーモセット を対象とし、症状と神経機能マップを対応付けて、脳病態の理解へ連結する 3)疾患モデルマーモセットとヒト疾患における薬効評価
疾患モデルマーモセットと疾患モデルマウスに薬物投与実験を行った際のトランス レータブル脳・行動指標の変化の対応を確認する
対応付けた疾患モデルマウスのトランスレータブル脳・行動指標による創薬研究の 効率化を図る
2.我が国における目標設定(続き)
2-5 精神・神経疾患の病態解明や治療薬開発につなげる研究
◆本構想においては、マーモセットにおける全脳機能マップとして霊長類の各機能モデュールの同定、構造・機能両面での結 合マップが進行し、これらのデータを有効に活用して疾患研究を加速することは社会的な意義が大きい。この目的を達成するた めに以下の様な目標設定を行い、この研究を通じて、精神・神経疾患の病態解明・治療薬開発の基盤となる生物学的指標を整 備。最終的にはヒトにおいて真に効率的な創薬(前臨床、臨床試験、proof of concept試験)の流れを確立することにつながるこ とが期待。
中間取りまとめ 概要(
12
)◆5年後の目標
1)マーモセット全脳のマクロレベルの構造と活動マップの作成に必要な、
拡散テンソルMRIと神経線維トレーサーのデータを統合する手法、多数の 個体での知覚・行動・認知・コミュニケーションなど各種の課題中のfMRIデ ータを統合し検索可能にする手法などを確立する。
2)機能マップ化の実現に向けた革新的基礎技術(統計的画像処理、機 能コネクトミクス法、トラクトグラフィの高度化など)の開発とそれらのハイス ループット化を達成する。
3)全脳のマクロレベルの構造と活動マップを、認知・学習・コミュニケーシ ョンの計算理論と照らし合わせることにより、重要な行動機能を実現する全 脳マクロレベルのネットワークモデルを構築する。その障害による病態の 予測を可能とする理論構築を目指す。
◆10年後の目標
1)各種の認知・行動に関わる機能要素と脳の各部位の機能単位との関連を明らかに する機能マップをデータベースとして完成する。
2)意思決定、推論、社会性などの重要機能について、ミクロコネクトームやニューロン 活動記録データから、その神経回路活動を細胞レベルで再現する数理モデルを構築 し、スーパーコンピューターや専用LSIによる機能予測と、その各回路要素の障害によ る病態の予測を可能にする。
3)マーモセットでの機能マップデータとモデルを、ヒトの正常時と疾患時の機能マップ へのマッピングを行うための情報基盤を確立する。
4)人型ロボットに搭載するなど、ヒトと共存する人工物への応用に展開する。
2.我が国における目標設定(続き)
2-6 脳の情報処理理論の確立と応用
◆脳の高次情報処理機能の計算論的解明は、未だ人間でないとできないとされる創造性を有する機械、ヒトと共生するロボッ トの開発、新しいコミュニケーションツール、超低消費エネルギーの計算機システムなど、将来的に新しい社会の創成に貢献す る技術の開発につながるとともに、その破たんによる精神・神経疾患の機序の理解や治療指針の提供につながることが期待。
◆脳の機能単位が同定され、それらを動的に操作する機構が解明されれば、BMI(機能補綴)の洗練化、あるいは、脳の機能 代替をする新たな人工システムの開発が可能。また、その機構を利用することで、外部から操作機構自体を操作する(ニューロ フィードバック)ことで、機能不全である精神・神経疾患の治療につながることが期待。加えて、教育や経済など社会科学を含め た広い範囲への波及効果がある。
3.ボトムアップに必要な技術開発
◆機能マップ作成のためには、様々なマーカー分子やセンサー分子、神経機能を外的に制御する分子などを脳の領域、時期、
細胞種特異的に発現させるための技術開発が極めて重要。
◆我が国はマーモセットへのトランスジェニック技術の適用についてはトップランナーであり、国際競争力を維持するためには、
新規技術の開発・応用を更に展開する必要有り。
3-1 マクロレベルでの技術開発
・透明化技術と線維連絡マクロトレーシング技術
・diffusion MRI技術革新とその生理的基盤の解明
・超多点電極による神経活動計測・解析技術の革新
・広範囲・高精度機能イメージング法の開発
・多様かつ行動特性に合致した行動パラダイムの開発
3-2 ミクロレベルでの技術開発
・電子顕微鏡によるミクロ構造マップ
・広範囲・大規模神経細胞活動の記録とデータ解析方法の開発
・神経回路操作技術の開発
・我が国発超解像光学顕微鏡の開発
3-3 機能マップ作成のための遺伝子導入技術の開発
・トランスジェニック動物の作成に関する技術開発
・体細胞への遺伝子導入法(子宮内電気穿孔法のような物理的方法と組み換えウィルス等の 生物学的ベクターを用いる方法)に関する技術開発
3-4 機能マップの分子基盤(遺伝子・エピゲノム修飾・蛋白質)確立のための技術開発
中間取りまとめ 概要(
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)4.霊長類からヒト・精神・神経疾患解明へ連結させる革新的技術開発
◆本構想の下で得られる霊長類の機能マップを、ヒトの高次脳機能の理解や精神・神経疾患の理解・克服につなげていくには、
霊長類のマクロレベルでの機能マップと、ヒトのマクロレベルでの機能マップの対応を比較検討する必要がある。そのため、霊長 類とヒトで共通の手法で計測出来る「トランスレータブル脳・行動指標」の開発が必要。
◆この技術が確立することにより、ヒト・疾患のトランスレータブル脳・行動指標と対応する霊長類の相同指標について、各種回 路操作実験を組み合わせて、ミクロレベルでの機能マップとの対応の検討を通じて、従来不明であった、ヒトの高次脳機能や精 神・神経疾患の認知行動障害とそのミクロ・マクロレベルでの神経基盤との対応の因果関係を明確にすることが出来る。
◆このようなトランスレータブル脳・行動指標の計測データから機能マップに対応する特徴量を抽出するには、空間解像度の極 めて高いデータの時系列解析や、さらにはゲノム・エピゲノムデータとの関連解析などの、ビッグデータの数理統計学的解析技 術の革新が必要。また、精神・神経疾患のゲノム・エピゲノム異常を再現したゲノム改変霊長類モデルの作出に必要な技術や、
これらのモデル霊長類の脳や精神・神経疾患患者の死後脳におけるゲノム・エピゲノムの解析技術の革新が必要。
中間取りまとめ 概要(
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)4-1 トランスレータブル脳・行動指標の計測技術の開発
・霊長類・ヒトの高解像度MRI計測技術の開発
・霊長類・ヒトの神経生理計測技術
・高次脳機能・行動を非拘束下で計測する技術
・死後脳と神経画像所見の関係性を検討する方法論の確立
・神経回路データベースの統合プラットフォームの開発
4-2 ビッグデータの数理的解析技術の開発
・高解像度MRIデータから特徴量を効率的に抽出するための解析技術
・長時間神経活動・行動データの解析技術
4-3 精神・神経疾患の霊長類モデルの開発
・霊長類とヒトのSynteny Mapの開発
・ゲノム改変霊長類モデルの開発
・人為的エピゲノム操作技術の開発
4-4 ゲノム・エピゲノム解析技術の開発
・ニューロン・グリアにおける遺伝子発現・タンパク発現・エピジェネティック情 報の網羅的マップの作成
・霊長類モデルにおける脳神経ゲノム・エピゲノム解析技術の開発
4-5 臨床治験の死の谷を埋める革新的技術の開発
・多次元神経伝達様式可視化技術の確立
・神経変性過程可視化技術の確立
5.推進体制
◆実験動物の飼育供給、革新的技術開発、ヒトを含む脳機能の比較研究、情報科学との連携などの多様な研究開発を効率良 く推進する必要がある。そのために、中心的機関による集中型の研究組織とネットワーク型の研究組織の両方を取り入れたオ ールジャパンの研究体制を構築。複数の研究項目の間で緊密な連携を取り、達成目標への到達を短時間で実現するための推 進委員会を設置し、委員長と10名程度の委員が多角的な検討を行い機動的な運営を行う。外部評価委員会を設置し、研究の進 捗についての評価を受けるとともに、国外の大型脳研究に関与する外国人委員を含む国際連携に対応するための委員会の設 置も検討すべき。
◆実施にあたっては、研究における倫理的、法的、社会的課題(Ethical, Legal and Social Issues; ELSI)についての特段の配 慮が必要であり、この点に関して推進委員会の下に設置された組織による相談・支援を行うべき。霊長類の飼育・実験について は十分な知識と経験に基づいて、代替実験の可能性なども検討しつつ適切な環境・規模で実施することが求められている。適切 な動物実験を行うためのトレーニングコースの開設も検討すべき。
◆さらに本構想の実現には、医学生物学に加えて情報科学などのバックグラウンドを持つ研究者による分野横断的な研究が 必須であり、そのためには人材育成の促進、研究者の多様なキャリアパスの確保が求められる。
中間取りまとめ 概要(
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)5-6 大規模数理解析に関する体制
5-7 ヒト高次脳機能への理解に向けた体制 5-8 精神・神経疾患克服に向けた体制
5-9 霊長類での動物実験の実施を支援する体制 5-1 マーモセットの飼育・遺伝子操作に関する体制
5-2 脳構造・線維結合の解析研究に関する体制
5-3 脳活動計測に関する体制(大規模ECoG、 機能画像、
マルチユニット記録など)
5-4 生理機能・行動解析に関する体制
5-5 回路解析技術開発に関する体制(新規プローブ、
新規イメージング法など)
6.倫理的・法的・社会的課題(ELSI)
◆霊長類の神経回路機能の全容を解明し、ヒトの高次脳機能の理解、精神・神経疾患克服に向けた研究を推進する上で、特に 霊長類を用いた実験研究、ヒトの脳画像計測の侵襲性、ヒトの生体試料等の取扱い、精神・神経疾患の治療法の開発等につい ての倫理的、法的、社会的課題(Ethical, Legal and Social Issues: ELSI)を想定し、検討を進めていくことが必要。(動物福祉につ いては前項5-9を参照。)
◆実験動物の取扱いについては、我が国では「動物の愛護及び管理に関する法律」があり、各研究機関における動物実験等の 適正な実施に資するため文部科学省より「研究機関等における動物実験等の実施に関する基本指針」が告示、また、日本学術 会議により「動物実験の適正な実施に向けたガイドライン」が制定。各研究機関では、これらの法律、指針、ガイドラインを踏まえ た動物実験委員会が設置され機関内規定が定められており、霊長類の実験動物の取扱いについても、これに準ずることとなる。
◆しかしながら、霊長類の中でも特にマーモセットは実験動物研究の対象として歴史が浅く、取り扱い実績のある研究機関も限 られているため、マーモセットを用いた実験動物研究のあり方について、国際的な霊長類実験研究の動向とも連動したELSIの検 討やガイドラインの整備、研究従事者への研究倫理教育などを推進する必要がある。また、精神・神経疾患患者でみられたゲノ ム・エピゲノム変異をもとに霊長類のゲノムを改変する実験研究や、iPS技術等により樹立された患者由来神経細胞を霊長類脳 に導入する実験研究などについてもELSIの検討が必要。
◆ヒトの超高磁場MRI撮像に関しても、生体加熱効果による撮像時間の制限の問題や小児や精神・神経疾患患者等への適用 等、放射線医学専門家等を交えた実験ガイドラインの策定が必要。また、ヒト・疾患患者から得られたゲノム・脳画像などを統合 した詳細な機能マップのデータベースの公開についても、個人情報保護の観点から慎重な検討が必要。さらに、得られた脳機能 マップの改変を標的とした、薬理学的、神経モジュレーション的治療法を開発する場合、脳や行動に与える長期的影響、健常者 の認知エンハンスメントに利用される可能性などについてのELSIの検討が不可欠。
中間取りまとめ 概要(
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)ヒトの精神活動にとって重要な神経回路に対応する
マーモセット神経回路機能のニューロンレベルでの全容解明
マーモセット脳
中間取りまとめ 概要(17) 目標及びロードマップ
マーモセット全脳回路に関する
マクロレベルの構造と活動のマップを完成 本研究構想での目標設定
粗い全容解明
高解像度での 全容解明
5年後の目標
10年後の目標
アメリカ
BRAIN Initiative
○神経回路の全細胞の全 活動を記録・解析
○ナノテクノロジーを活用
○モデル動物を段階的に 解析
○2014年度に100億円の 政府予算を予定
○民間財団からの支援も 活用
欧州
Human Brain Project
○脳科学、情報通信技術、医 療を統合
○ICT統合基盤研究プラット フォームへのデータ統合
○10年計画
○予算総額11.9億ユーロ
○予算の20%を公募研究へ 充てる
日本
神経回路機能全容解明構想
○脳のマクロレベル・ミクロレベルの研究を 融合
○マクロとミクロの階層を結ぶ革新的な技 術を開発
○精神神経疾患の理解と克服に貢献する 神経回路データベースの開発
○霊長類モデル動物についてのリソース・
技術を活用
○10年計画
マクロ レベル
脳 解析
ミクロ レベル
脳 解析
ヒト脳の理解、
精神神経疾患 克服への貢献
マーモセット以外の 実験動物研究のヒトへの
対応付けを効率化 マウス等の実験動物脳
機 能 対 応
機 能 対 応
ヒト脳
ヒト脳機能と 対応付けた
マーモセットでの 神経回路機能の
全容解明
ヒト脳機能と 対応付けた
マーモセットでの 神経回路機能の
全容解明
マカク脳
・回路構造
・神経活動マップ
・行動データ これら網羅的データを 基盤とした新しい脳の 物質・情報科学の創出
10年後の達成目標:
ヒト脳機能解明へ向けた
マーモセット
神経回路マップの完成
情報科学の活用による種間共通性の抽出・
ミクロとマクロをつなぐ解析手法の開発 ヒトにつながる
トランスレータブル 脳・行動 指標の開発
マーモセット機能画像データ
ヒト疾患を起点とする モデル動物作出
階層の ギャップ
大規模数理解析技術
“階層のギャップ”
の解消
機能・構造イメージング、光遺伝学、ウィルスベクター
既存技術の高度化
5年目以降 マクロの活動マップと
ニューロンレベルの 活動マップの融合 今の技術で100年以上
かかる霊長類全脳解明を 可能にする
革新的技術開発が 必要不可欠
げっ歯類等モデル動物の活用による技術開発の効率化
脳情報処理 モデルの高度化
高速、広範囲、高解像度の脳情報読み出し
マーモセット脳解析への適用 脳構造解析
神経活動記録
革新的技術開発
MRI撮像原理 3次元イメージング 遺伝子改変霊長類
生体透明化技術
回路の大規模シミュレーション手法 構成生物学的神経活動記録法 ゲノム・エピゲノム操作・解析技術
網羅的回路データ取得ヒト脳との対応回路解析技術開発情報科学の活用
10年後
1 2 3 4 5年後
高解像 度化
5年目 マーモセット脳
3次元 構造・活動 マクロマッピング
ニューロンレベル 大規模活動記録
電子顕微鏡 コネクト―ム の効率化
相違点・類似点の対応づけ
マーモセット脳マップから ヒト高次脳機能への連結
マカクザルでの解剖・生理情報の活 用
ヒト機能画像データ 実験動物機能画像データ
(マカクザル・齧歯類)
マーモセット脳活動・機能マップ作成 ヒト高次脳機能理解への連結技術開発
ヒトにつながるトランスレータブル脳・行動指標の開発 精神神経疾患に対するニューロフィードバック治療への
生物学的エビデンス付与
10年後
1 2 3 4 5年後
マカクザルでの解剖・生理情報の活用 マカクで発達している能力で補完
ミクロマッピング
マーモセット脳の ニューロンレベルでの
神経回路機能
(正常・異常)
の全容解明
意思の創発・社会性などに関わる重要部位・回路を特定
マクロ-ミクロ回路モデル による大規模シミュレーション
マーモセット脳3次元構造・活動マクロマッピング(領野間の結合関係)
革新的ニューロンレベル大 規模網羅的計測によるハイ
スループット解析 疾患モデル動物の作製
パーキンソン病・自閉症統合失調症モデルなど
行動の網羅的大規模解析
• 家族行動・情動・注意の経時的大規模 情報抽出
マクロレベル全脳構造解析
• 拡散テンソル画像法による神経線維 構造解析
• 神経トレーサーによる経路全染色
• 遺伝子蛋白質発現・エピゲノム情報の マッピング
マクロレベル全脳活動解析
• 網羅的電気生理記録:超多チャネル ECoG(より広く、細かく)
• 詳細全脳活動計測:高磁場MRI
• 光遺伝学との組み合わせ ヒト疾患画像データとの比較 ヒト-サルの相違点・類似点の対応づけ
遺伝子改変霊長類作製技術の高度化
(トランスジェニック、ノックアウト等)
大規模情報解析技術
• connectivity解析、画像処理、
ビッグデータ処理
活動マップの構築
• 機能的単位の同定
• 信号の流れの推定
構造マップの構築
• 領野の構造的同定
• 領野間結合関係
• の3次元構築
ミクロマップ作成・活用革新技術開発
神経回路機能操作法の開発 顕微鏡的MRIの高度化(現在50μmの解像度)
超解像度電子顕微鏡コネクト―ム ニューロンレベル大規模活動記録 多光子Caイメージング、深部マルチユニット記録 線維連絡マクロトレーシング技術
STP tomography/fMOST、透明化技術
新規コネクトーム手法の開発
新しい深部イメージング手法の開発 超解像度光学顕微鏡
標準脳構築情報科学技術
アウトカム
大規模網羅的 解析技術による
脳科学研究の パラダイムシフト
より速く、より広く、より詳細に、より深く
精神神経疾患の異 常神経回路の解明
ヒトでの非侵襲脳画 像計測技術を高度
化
ヒトの高次脳機能とその障害としての精神神経疾患の理解と治療戦略
創発的意思・意識・思考・自我・創造性社会性・コミュニケーション、環境適応 統合失調症・うつ病・発達障害強迫性障害など
脳の情報処理理論 の確立と応用
ゲノム・エピゲノム操作・解析技術 ニューロン・グリア・血管
相互作用の4次元解析