Revised at 22:07, July 4, 2016 数学特論A 第12回 http://my.reset.jp/˜gok/math/advanced/ 1
2次元一次変換の不動直線
2次正方行列Mが表現する一次変換で動かない(自分自身に移る)直線を考えます。
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不動直線であるための条件点 を通り、ヴェクター 6= に平行な直線: = +t (tはパラメーター)が 一次変換M で不動であるための必要条件を求めてみましょう。
まずM を計算してみると
M =M +tM
となりますね。パラメーターtにいろいろな値を入れれば直線上の全ての点の像がこれ で求まったわけですが、M がゼロヴェクターでなければこの像はまた直線になってい る事が分かります。
1.1 方向ヴェクター
元の直線が一次変換M で自分自身に移ると仮定すると、少なくともこれらの直線の 方向ヴェクターは平行でなければなりません。すなわちある定数pが存在して
M =p
となっていなければなりませんが(M 6= なのでpも0ではない)、これは即ち、
がM の固有ヴェクターである事を示しています。
必要条件その1: 直線の方向ヴェクター は、Mの、0でない固有値pに対応し た固有ヴェクターでなければならない。
もしもM = ならば(すなわち、 はM の固有値0に対応した固有ヴェクター であるならば)、元の直線の像はM 1点となってしまいますし、そもそも固有ヴェク ターでなかったら、像は直線ですが方向の違った直線になってしまいます。
1.2 通る点
これで像直線の方向は決まりましたから、あとは通る点です。
像直線は点M を通りますから、この点M はやはり元の直線上になければなりま せん。そのためには、
M = +t0
となるようなパラメーターの値t0が存在しなければなりません。
必要条件その2:
M = +t0
となるようなt0が存在しなければならない。
ここで、式を
(M−E) =t0
と変形してみると、もしもM−Eが正則(即ち、1はM の固有値ではない)ならば、
=t0(M−E)−1
と云う風にある程度 を追い込んでやる事が出来ます。だから固有値1があるかない かが一つの判定基準になりそうです。
1.3 まとめ
この様に必要条件を見て来ましたが、直線は通る点1点と方向ヴェクターを指定すれ ば確定しますので、今挙げた2つの条件を満たせばその直線は不動直線である事が分か ります。実際、
M =M +tM
= +t0 +tp
= + (t0+pt)
となっていて、tが全ての実数を動くときt0+ptも全体としては全ての実数を動きま すから(p6= 0に注意)、像直線は元と同じ直線である事が分かります(同じ点を通り、
方向ヴェクターが一緒)。
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事実 1.1 (必要十分条件) 直線: = +t (tはパラメーター)が一次変換M
で自分自身に移るための必要十分条件は、 がM の固有値p6= 0に対応した固有 ヴェクターであって、かつ、
M = +t0
となるようなt0が存在する事である。
2
固有値の様子による不動直線の違い以下、M の固有値・固有ヴェクターによって分類して不動直線を求めてみましょう。
2.1 固有値がない場合・固有値が0のみの場合
この場合、明らかに不動直線は存在しません。
2.2 固有値が0とp6= 0の場合
固有値0に対応した固有ヴェクターを 、固有値pに対応した固有ヴェクターを とします。この場合、少なくとも = +t の型の直線でなければ不動直線にはなり ませんが、 , は平行ではありませんので任意の は
=l +m と書き表す事が出来ますが、そうして考えてやれば
M =M(l +m ) =mp となりますから、像直線は
M =M +tM =mp +tp = (m+t)p
となって原点を通る直線になっています。従って元の直線も原点を通らねばならず、不 動直線は
=t (tはパラメーター)
の1本のみである事が分かりました。
2.3 固有値が1のみの場合
このケースは固有ヴェクターの様子で2つに分けて考えます。
2.3.1 固有値が1のみの場合で、固有ヴェクターが2本ある時
このとき、任意のヴェクターが固有ヴェクターですから即ちM =Eの場合です。明 らかに全ての直線が不動直線です。
2.3.2 固有値が1のみの場合で、固有ヴェクターが1本しかない時
この場合はM 6=Eです。固有値1に対応した固有ヴェクターを とします。
当然、不動直線は少なくとも = +t の型の直線でなければなりませんが、通る 点の方の条件はどうでしょうか(あとはM が元の直線上にありさえすれば良いわけ です)。
この場合、固有値は1が重解ですから、Cayley-Hamiltonの定理から、M2−2M+E=O が成り立っていますので(M −E)2=Oです。従って任意の に対して
(M −E)2 = となっているわけですが、これは
(M−E){(M−E) }=
を意味しますから、(M−E) はMの固有値1に対応した固有ヴェクターであり、従っ て の定数倍です。これはつまり、
(M −E) =m
となる様な定数mが存在すると云う事ですが、これは正に不動直線であるための の 条件に他なりません。任意の がこれを満たすわけですから結局不動直線は、任意の に対して
= +t (tはパラメーター)
となります(無限本ある)。
2.4 固有値がp6= 0,1のみの場合
このケースも固有ヴェクターの様子で2つに分けて考えます。
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2.4.1 固有値がpのみの場合で、固有ヴェクターが2本ある時
このとき、任意のヴェクターが固有ヴェクターですから即ちM =pEの場合です。明 らかに全ての原点を通る直線が不動直線です。
2.4.2 固有値がpのみの場合で、固有ヴェクターが1本しかない時
この場合はM 6=pEです。固有値pに対応した固有ヴェクターを とします。
当然、不動直線は少なくとも = +t の型の直線でなければなりませんが、通る 点の方の条件で、あとはM が元の直線上にありさえすれば良いわけです。
この場合、固有値はpが重解ですから、1は固有値ではありません。従って行列M−E は正則であり、(M −E)−1が存在します。
直線 = +t が不動であるためには M = +to
となる様なt0が存在すれば良いわけですが、これを変形すると、
(M−E) =t0 , すなわち =t0(M−E)−1 ですが、M =p によれば、
M − =p − (M−E) = (p−1)
1
p−1 = (M −E)−1 となっているので = t0
p−1 となってしまい、不動であるためには は元々 の定数 倍である必要があります。このとき元の直線は
= +t = µ t0
p−1 +t
∂
となって原点を通っていなければなりません。
以上により、この場合の不動直線は
=t (tはパラメーター)
の1本のみです。
2.5 固有値が1とp6= 0,1の場合
固有値1に対応した固有ヴェクターを 、固有値pに対応した固有ヴェクターを とします。
2.5.1 方向ヴェクターが の時
直線 = +t が不動であるとしましょう。このとき条件から (M−E) =t0
となる様なt0が存在していますが、Cayley-Hamiltonの定理から(M−pE)(M−E) =O ですので、
= (M −pE)(M−E) =t0(M−pE)
が成り立ちます。しかし は固有値1に関する固有ヴェクターなのであって固有値p に関する固有ヴェクターではありませんから右辺の(M−pE) はゼロヴェクターでは あり得ません。従ってt0= 0である事が分かり、
(M −E) =
すなわち、 は固有値1に関する固有ヴェクターであって の定数倍でなければなり ません。
以上により、不動直線は
=t (tはパラメーター)
の1本のみです。
2.5.2 方向ヴェクターが の時
直線 = +t が不動であるとしましょう。
Cayley-Hamiltonの定理から(M−pE)(M−E) =Oですから、任意の に対して (M−pE)(M −E) =
Revised at 22:07, July 4, 2016 数学特論A 第12回 http://my.reset.jp/˜gok/math/advanced/ 4 となっており、これは(M−E) が固有値pに関する固有ヴェクターである事を示して
いますから、
(M−E) =m
となる様なmが存在し、従って不動直線の条件を満たしています。任意の がこれを 満たすわけですから結局不動直線は、任意の に対して
= +t (tはパラメーター)
となります(無限本ある)。
2.6 固有値がp, r(どちらも0,1でない)の場合
固有値pに対応した固有ヴェクターを 、固有値rに対応した固有ヴェクターを とします。
2.6.1 方向ヴェクターが の時
直線 = +t が不動であるとしましょう。このとき (M−E) =t0
となるt0が存在しますが、1は固有値ではないため(M −E)−1が存在して
=t0(M−E)−1
ですが、M =p によれば、
M − =p − (M−E) = (p−1)
1
p−1 = (M −E)−1
となっているので = t0
p−1 となってしまい、元々 は の定数倍でなければなりま せん。従って不動直線は次の1本のみです:
=t (tはパラメーター).
2.6.2 方向ヴェクターが の時
全く同様に、不動直線は次の1本のみです:
=t (tはパラメーター).
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まとめ固有値 固有ヴェクター 不動直線
なし なし
0 なし
0, p =t p
1 2本
1本
任意の直線
= +t 1 ( は任意)
p 2本
1本
任意の原点を通る直線
=t p
1, p =t 1, = +t p ( は任意)
p, r =t p, =t r
ただし、ある原点を通る直線が原点に移るような場合にも、この直線は『不動直線で ある』とする流儀もありますから、編入試験等、他所様の試験を受ける可能性のある方 は『不動直線の定義』に注意して下さい。それは問題文に書かれているはずです。
Exercise
基本演習1 次の各行列の表す一次変換で自分自身に移る直線を全て求めて下さい
(上のまとめたものは使わずに計算して求めて下さい)。
(1)
√9 12 12 16
!
(2)
√1 2 2 −2
!
(3)
√2 1 1 2
!
発展演習 2 3次正方行列M の表す一次変換で不動な3次元空間内の直線につい て同様の事を考えてみて下さい。