排尿障害地域連携パス
診療マニュアル
排尿障害連携パス目次
p. 2
-はじめに
-排尿障害診療に必要なツール -過活動膀胱
-尿路感染症 -前立腺肥大症 -神経因性膀胱 -薬剤と排尿障害 -夜間頻尿
-高齢者の排尿障害 -男性の排尿障害 -女性の排尿障害 - 尿 失 禁
-緊急時の対応
p. 3
排尿障害とは
■腎臓と尿管を【上部尿路】と総称します。
■膀胱と尿道を【下部尿路】と総称します。
■下部尿路の形態・機能的は異常に起因する排尿の異常
・ おもに尿をためる機能に異常がある場合:
蓄尿障害と呼びます。
・ おもに尿を排出する機能に異常がある場合:
排尿(排出)障害と呼びます。
■排尿障害の原因は様々です。
l
下部尿路をコントロールする神経に原因がある場合l
精神機能に原因がある場合l
下部尿路自体に原因がある場合l
尿量の問題l
原因がはっきりしない場合(生活習慣など)p. 4
排尿障害の例
■膀胱・尿道自体に原因が無い場合:
膀胱や尿道を支配する神経の問題で排尿障害が認められること があり、神経因性膀胱と呼びます。
・ 脳梗塞による神経障害
・ 脊髄疾患による神経障害
・ パーキンソン病など神経変性疾患による排尿障害
・ 下腹部手術既往(婦人科や外科手術後など)による神経障害
■膀胱・尿道自体に原因が無い場合:
認知症でトイレの習慣が損なわれている場合など、機能性尿失禁 (機能性の排尿障 害)と呼ぶことがあります
■前立腺肥大症:
尿道が前立腺によって狭小化し、排尿障害をおこします
■膀胱・尿道を支える支持組織の脆弱性:
女性の腹圧性尿失禁の原因となります
■膀胱の細菌感染症:
膀胱の知覚過敏によって尿意切迫間、 頻尿の原因となります
■原因の有無にかかわらず、尿意切迫感を主症状とする症候群を 過活動膀胱と呼びます。頻尿・夜間頻尿・切迫性尿失禁をしばし ば伴います
p. 5
排尿障害診療に必要なツール
最低限必要な診断ツール
■病歴をとる
■理学所見
■検尿
■採血
■残尿測定
必要な治療ツール
■薬剤
■症状の推移の観察
■手術
p. 6
排尿障害診療に必要なツール病歴をとる
■蓄尿障害を示す症状の例
・尿が近い、トイレまで我慢できない感じ、尿失禁
■排尿(排出)障害を示す症状の例
・尿が出にくい、尿の勢いがない、尿腺が途中で止まる、排尿開始時にいきむ
■過活動膀胱を疑う症状
・尿意切迫感 :急に起こる強い、我慢しがたい尿意
・夜間・昼間の頻尿 :夜間1回以上、昼間8回以上
・切迫性尿失禁 :尿意切迫感とともに尿がでてしまう(失禁)症状
■腹圧性尿失禁を疑う症状
咳やくしゃみの際に尿が出てしまう(失禁)症状
■排尿障害に関連しそうな基礎疾患
脳血管障害・脊髓疾患・神経変性疾患・認知症
■内服している薬剤リスト
p. 7
排尿障害診療に必要なツール 理学所見
■下腹部の膨満
・膀胱に多量の尿がたまっている可能性があります。
■陰嚢内容の腫大
・発熱、痛みがあると精巣上体炎を疑います。ときに頻尿などを伴います。
・痛みがない場合陰嚢水腫や稀に精巣腫瘍の場合があります。
■直腸診
・弾性のある腫大は肥大症を疑います。
・骨、石のように硬い前立腺は悪性腫瘍を強く疑います。
■直腸診で異常が無くても前立腺癌は否定できません。
p. 8
排尿障害診療に必要なツール 検尿・採血
検尿
・膿尿は尿路感染を疑う最も確かな診断ツールです。
・膿尿の放置(加療しない)の是非には専門医の診断を必要とします。
・膿尿が持続・再発する場合にはご紹介ください。
・血尿は結石・悪性腫瘍の危険性があります。ご紹介ください。
採血
・クレアチニン、尿素窒素の上昇は腎機能障害を意味します。
・排尿障害に伴う腎機能障害はきわめて重篤な排尿障害を意味します。
・排尿障害と腎機能障害が共存する場合にはご紹介ください。
・50歳以上の男性では一度
PSA
(前立腺特異抗原)の採血を行ってください。・正常範囲内であれば1回/年の
PSA
採血を継続してください。・正常範囲を超えている場合には前立腺癌の可能性があります。
泌尿器科専門医・専門クリニックにご紹介ください。
(参考値:50~64歳:3.0 65~69歳:3.5 70歳以上:4.0 (ng/ml))
ご紹介いただきたい検査異常
・繰り返す膿尿
・治ら な い膿尿
・ 血尿
・腎機能異常(原因が判明している場合は別です)
・ PSA
高値p. 9
排尿障害診療に必要なツール 残尿測定
保険請求
・前立腺肥大症、神経因性膀胱
(神経疾患に起因すると判断される排尿障害)
・月 2 回を限 度
・超 音 波検査に よ る も の : 5 5 点
・導尿 に よ る も の : 45点 実際の手技
排尿後に患者を仰向けとする 下腹部に超音波プローベを当てる 膀胱を描出
横断面で
a
(cm
):横径、b
(cm
) :深 さを 測 定 縦断面でc
(cm
) :縦 径を 測 定残 尿=
7 r
/6-a
-b
-c
(ml
)n
/6は0.5で近似も可能結果の判断
・正常であればほぼゼロ
・ 常 に1 0 0
ml
以上残尿があれば専門医にコンサルトを・水腎症があれば専門医にコンサルトを
p. 10
排尿障害診療に必要なツール 治療ツール
蓄尿障害によく使われる治療薬(商品名
)
抗コリン薬オキシブチニン(ポラリス、ネオキシテープ)
プロピベリン(バップフォー)
イミダフェンシン(ウリトス、ステーブラ)
ソリフェナシン(ベシケア)
トルテロジン(デトルシトール)
フェソテロジン(トビエース)
β
3
アドレナリン受容体作動薬 ミラべグロン(ベタニス)ビベグロン(ベオーバ)
排尿(排出)障害によく使われる治療薬(商品名)
α1アドレナリン受容体遮断薬(α1遮断薬)
タムスロシン(ハルナール)
ナフトビジル(フリバス)
シロドシン(ユリーフ)
テラゾシン(バソメット・ハイトラシン)
ウラピジル(エブランチル)
PDE
(ホスホジェステラーゼ)5阻害薬 タダラフィル(ザルティア)5
a
還元酵素阻害薬デュタステリド(アボルブ)
p. 11
過活動膀胱(OAB)
※尿意切迫感を有し、通常は頻尿および夜間頻尿を伴い、切迫性尿失禁 を伴うこともあれば伴わないこともあります。
■症状が診断に最も大切な診断ツールです。
■専門医に紹介していただきたい場合
・膿尿 ・ 血 尿
・ PSA
高 値・ 残 尿 が1 0 0
ml
以上・初期治療で症状が良くならない
・神経疾患が関与している場合
診療上の注意点
・薬剤加療で残尿量が多くなることがあります。薬剤を中止し、専門医に ご紹介ください。
・薬剤に伴う副作用:口渴、便秘、排尿困難の憎悪
・ポラキス・バップフォー・デトルシトール・べシケア・ウリトス・ステーブラは抗 コリン薬です。閉塞隅角緑内障等、使用禁忌や併用注意にご留意ください。
・中高齢男性では前立腺肥大症をしばしば合併します。専門医での診断後 抗コリン剤を開始されることをお勧めします。尿閉・排尿困難の出現に注意く ださい。
■ 治療ツール
薬剤名 推奨グレード
抗コリン薬
オキシブチニン(ボラキス)
A
プロピベリン(パップフォー)
A
トルテロジン(デトルシトール)
A
フェソテロジン(トビエース)
A
ソリフェナシン(ベシケア)
A
イミダフェナシン(ウリトス・ステーブラ)
A
オキシブチニン経皮吸収型製剤(ネオキシテープ)A
β3アドレナリン受容体作動薬ミラべグロン(ベタニス)
A
ビベグロン(ベオーバ)
A
p. 12
尿路感染症
※膀胱炎で頻尿、尿失禁を認めることがあります。
※膿尿があり、頻尿・排尿時痛・血尿時に尿失禁があれば膀胱炎を疑います。
発熱はありません。
※抗菌化学療法で検尿、症状が改善すれば急性膀胱炎と判断します。
※抗菌化学療法で検尿、症状が改善しない場合、何らかの基礎疾患を疑い ます。専門医にご紹介ください。
膀胱炎のような症状を訴える基礎疾患
膀胱がん :膿尿・血尿が断続的に認められます。
膀胱結石 :膿尿・血尿が断続的に認められます。
肝質性膀胱炎:排尿時痛を訴えます。膿尿はありません。
抗菌化学療法は多くの場合無効です。
p. 13
前立腺肥大症
排尿障害:蓄尿障害、排尿(排出)障害を訴える50歳以上の男性では前立腺 肥大症の可能性を考えます。
■一般医家(家庭医)では基本的評価をおこなってください。
基本的評価:病歴
① 排 尿 後 に 残 っ た 感 じ2時間以内の頻尿
② 排尿が途中でとまる
③ 尿意切迫感
④
尿の勢いが悪い⑤
排尿開始時に力む⑥
夜間頻尿・ 理 学 所 見 : 弾 性 の あ る 腫 大 は 肥 大 症 を 疑 い ま す 。
・検尿、採血(腎機能検査・
PSA
)・ 残 尿 測 定
専門医を紹介していただきたい場合
・尿閉
・残尿が100
ml
以上・繰り返す尿路感染
・血尿
・ PSA
高値・腎機能異常
・初期治療で症状が良くならない場合
・神経疾患が関与していると考えられる場合
p. 14
神経性膀胱
※神経疾患に原因があると判断される排尿障害を神経因性膀胱と 呼びます。
■代表的な基礎疾患
・脳 血 管 障 害
・ 脊 髄 障 害
・ 変性疾患(パーキンソン病など)
・
末 梢
神 経 障 害※排尿障害の原因が神経疾患に起因する可能性があると判断された 場合、可能なら専門医にご紹介ください。
p. 15
神経因性膀胱 畜尿障害
■一般医家での初期治療
・初期治療として以下の薬剤を投与できます。
【抗コリン薬】
オキシブチニン(ポラリス、ネオキシテープ)
プロピベリン(バップフオー)
ソリフェナシン(ベシケア)
イミダフェナシン(ウリトス、ステーブラ)
トルテロジン(デトルシトール)
フェソテロジン(トビエース)
【β3アドレナリン受容体作動薬】
ミラべグロン(ベタニス)
ビベグロン(ベオーバ)
・常に尿路感染が無いかどうか確認ください。
・1回は、専門医への紹介をしていただけることを希望します。
p. 16
ウラピジル(エブランチル)
シロドシン(ユリーフ)
タムスロシン(ハルナール) ナフトピジル(フリバス)
…男性、女性
…男性(前立腺肥大症)
…男性(前立腺肥大症)
…男性(前立腺肥大症)
神経因性膀胱 排尿(排出)障害
■一般医家での初期治療
・初期治療として以下の薬剤を投与できます。
・常に尿路感染がないかどうか確認ください。
・1回は、専門医への紹介をしていただけることを希望します。
p. 17
薬剤と排尿障害
※薬剤によって排尿障害(蓄尿障害あるいは排出障害)がおこされる ことがしばしばあります。
しばしば排尿(排出)障害をきたす薬剤
・ 感
冒
薬・抗コリン 薬
・抗
ヒ
ス タ ミン 薬・抗 精 神 薬
・抗
不 安
薬・麻 薬
薬剤による排尿障害を疑ったら、薬剤投与を中止され、ご紹介いただくこ とをお勧めします。
p. 18
夜間頻尿
夜間頻尿を訴える患者さまは大変多いです。
原因は様々ですが、大きく以下の3つに分類されます。
1蓄 尿 障 害 : 過 活 動 膀 胱 前立腺肥大 神経因性膀胱
2夜間多尿:睡眠中の尿量が1日尿量の33%以上
3
睡 眠
障 害・1では抗コリン薬、β作動薬が有効な場合があります。
・2では夕食後の水分をセーブしていただきます。また、減塩や日中 の利尿剤が有効な場合もあります。
・3では睡眠薬が奏功する場合があります。
・治療の効果が無ければ専門医へのご紹介をお勧めします。
p. 19
男性の排尿障害
・50歳以上の男性では前立腺肥大症を疑います。
・必ず
PSA
を測定してください。(参考値:50~64歳:3.0 65~69歳:3.5 70歳以上:4.0 (ng/ml))
・検尿・残尿を定期的にチェックしてください。
・治療の効果が無ければ専門医への紹介をお勧めします。
・前立腺肥大症の内服治療
α
1ブロッカーを使用します抗男性ホルモン剤を用いる場合、PSA値が下がって癌を見落と すことがあります。必ずPSAを測定してください。
頻尿など蓄尿障害を訴えた場合、抗コリン薬の併用は可 能です が、排尿困難、残尿の出現に注意が必要です。
p. 20
① このアルゴリズムは、何らかの下部尿路症状(頻尿、夜間頻尿、尿意切迫感、尿失禁、排尿困難、膀胱痛など)を訴える中高年男性(50歳以上)を対象とする。若年男 性と要介護 高齢男性は対象としない。原因となる疾患•病態は多数ある*。
*前立腺肥大症、前立腺炎、前立腺癌、過活動膀胱、低活動膀胱、膀胱炎、間質性膀胱炎、膀胱癌、膀胱結石、尿道炎、尿道狭窄、神経疾患、多尿、夜間多尿など
② 一般医が行う基本評価には、必ず行うべき評価(基本評価一般)として、症状と病歴の聴取、身体所見、尿検査、血清前立腺特異抗原(PSA)測定がある。症例を選択し て行う評 価(選択評価一般)としては、質問票による症状*QOL評価、排尿記録、残尿測定、尿培養、尿細胞診、血清クレアチニン測定、前立腺超音波検査などがある。下 部尿路症状の全容を 知るには定型的な症状質問票(CLSS§など)が勧められる。
③ 問題ある症状•病歴•所見すがある場合は専門的診療(専門医への紹介)を考慮する。
卞症状:重度な症状、膀胱•尿道の疼痛•不快感
病歴:尿閉、再発性尿路感染症、肉眼的血尿、前立腺•膀胱を含む骨盤部の手術•放射線治療、神経疾患 身体所見:下腹部膨隆(尿閉を示唆)、前立腺の異常(硬結、圧痛、著明な 腫大)
検査所見:血尿、有熱性の膿尿、PSA高値(4ng/mL以上を目安)、尿細胞診陽性、多い残尿量(100mL以上を目安)、膀胱結石、画像検査異常、腎機能障害
④ 発熱を伴わない膿尿は尿路感染症として適切な抗菌薬により治療する。ただし、男性の尿路感染症には基礎疾患があることが多く、たとえ尿路感染症が治癒したとして も基礎疾 患の可能性に注意する。再発する場合には専門医に紹介する。
⑤ 夜間頻尿のみが症状である場合は、夜間多尿や睡眠障害が原因であることが多い。原因となる状態•疾患には、飲水過多(特に夕方以降)、心不全、腎機能障害、高血 圧、糖尿 病、尿崩症、睡眠時無呼吸症候群などがある。これら下部尿路と直接関係のない疾患•病態があれば、その治療を行う。治療によっても夜間頻尿が改善しない場 合は、夜間頻尿診療 ガイドライン4)を参照するか、専門医に紹介する。夜間多尿を明確に診断するには、24時間の排尿記録を用いるのが望ましい。
⑥ 以上の項目にあたらない症状は、前立腺肥大症もしくは過活動膀胱(OAB)などの膀胱の機能障害、およびその共存が主要な病態と推定される。治療に先立って、患者に 治療の 希望を確認する(症状があっても有意な疾患がないならば治療を望まない患者も多い)。治療を行う場合は、症状*QOL質問票、排尿記録、残尿測定などの検査を行 うことが望ましい。
特に超音波検査による残尿測定は勧められる。もし残尿が100mL以上あれば、専門医に紹介する。
⑦ 前立腺肥大症を想定し行動療法やa1遮断薬もしくはPDE5阻害薬による薬物療法を行う。PDE5阻害薬処方時には、適切な検査により前立腺肥大症と診断する。OAB の改善が得られない場合は、抗コリン薬や石3作動薬などの併用も可能であるが、排尿症状の悪化(残尿量増カロを含む)の可能性もあるので専門医に紹介することが望まし い。
⑧ 症状が改善しても漫然と治療を継続することなく、定期的に評価を行い、薬剤の中止や減量を含めて治療の変更•修正を考慮する。
§CLSS:Core Lower Urinary Tract Symptom Score (主要下部尿路症状スコア)
4)日本排尿機能学会夜間頻尿診療ガイドライン作成委員会編:夜間頻尿診療ガイドライン.ブラックウェルバブリッシング,2009日本泌尿器科学会編:男性下部尿路症 状•前立腺肥大 症診療ガイドライン.リッチヒルメディカル,2017より転載
p. 21
過活動膀胱 腹圧性尿失禁
(咳やくしやみと共に尿がでてしまう)
骨盤臓器脱
:頻尿・切迫性尿失禁の頻度が高いです。抗コリン 剤、β3アドレナリン受容体作動薬が有効です。
:女性に特に多い排尿障害で、手術が奏功 します。専門医での評価をお勧めします。
:中高齢者では排尿障害の原因となります。
重症になると排尿障害から水腎症をきたすことが あります。一度、専門医での評価をお勧めします。
・検尿・残尿を定期的にチェックしてください。
・治療の効果が無ければ専門医への紹介をお勧めします。
他の重要な疾患が隠れている可能性があります。
p. 22
① このアルゴリズムはなんらかの下部尿路症状(頻尿、夜間頻尿、尿意切迫感、尿失禁、排尿困難、膀胱痛など)を訴える成人女性を対象とする。未成年女性と要介護高 齢女性は 対象としない。女性の下部尿路症状の原因となる疾患•病態は多数ある'
*原因となる疾患•病態の例:過活動膀胱、細菌性膀胱炎、間質性膀胱炎、膀胱癌、膀胱結石、尿道炎、尿道狭窄、骨盤底の脆弱化(尿道過可動、骨盤臓器脱など)、骨 盤部手術•放 射線治療後遺症、膀胱•尿道睦瘻、多尿、夜間多尿、各種神経疾患(神経因性膀胱)など。
② 基本評価には、必ず行うべき評価(基本評価1)として、症状と病歴の聴取、身体所見、尿検査がある。症例を選択して行う評価(基本評価2)としては、症状*QOL質問 票による評 価、排尿記録、残尿測定、尿細胞診、尿培養、血清クレアチニン測定、超音波検査などがある。これらの所見と治療方針を患者に説明し、治療に関する希望を 確認する。
③ 問題ある病歴•症状•検査所見がある場合は、専門的診療(専門医への紹介)を考慮する。すなわち、尿閉、再発性尿路感染症、肉眼的血尿、骨盤部の手術や放射線治 療、神経 疾患、下腹部膨隆、生殖器(卵巣、子宮、膣、外陰部)の異常、睦外に突出する骨盤臓器脱、膀胱•尿道睦瘻が示唆される場合、発熱を伴う膿尿、尿細胞診陽 性、腎機能障害、多い残 尿量(50mL以上を目安とする)、膀胱結石、超音波検査異常などである。
なお、症状が重度の場合や膀胱痛•会陰痛を認める場合も、専門的診療(専門医への紹介)を考慮する。頻尿とともに、尿が膀胱にたまったときに強くなる膀胱痛•会陰 痛を認める場合 は、間質性膀胱炎の可能性がある。
④ 発熱を伴わない膿尿は尿路感染症として適切な抗菌薬により治療する。ただし、治癒した場合も基礎疾患が存在する可能性に注意する。
⑤ 排尿•排尿後症状が主体の場合には、専門的診療(専門医への紹介)を考慮する。排尿症状と蓄尿症状の両者がある場合には残尿測定を行う。残尿が50mL未満であれ ば、蓄尿 症状の診断•治療を優先させ、残尿が50mL以上であれば、専門的診療(専門医への紹介)を考慮する。
⑥ 過活動膀胱症状(尿意切迫感を伴う頻尿や尿失禁)がある場合は、「治療:1.行動療法」ならびに「治療:2.薬物療法1)過活動膀胱の薬物療法」の項を参照された い。
また、過活動膀胱診療ガイドライン1、2)を参照してもよい。
⑦ 夜間頻尿が主たる症状である場合は、夜間多尿や睡眠障害が原因として考えられるので、夜間頻尿診療ガイドライン3)を参照されたい。
⑧ 一時的な治療で症状が改善することがあるので、症状が改善した後も漫然と治療を継続することなく、薬剤の中止や減量を含めて定期的に治療の変更•修正を考慮す る。
1) 日本排尿機能学会過活動膀胱ガイドライン作成委員会編:過活動膀胱診療ガイドライン.ブラックウェルバブリッシング,2005
2) 日本排尿機能学会過活動膀胱ガイドライン作成委員会編:過活動膀胱診療ガイドライン改訂ダイジェスト版.ブラックウェルパブリッシング,2008 3) 日本排尿機能学会夜間頻尿診療ガイドライン作成委員会編:夜間頻尿診療ガイドライン.ブラックウェルパブリッシング,2009
日本排尿機能学会女性下部尿路症状診療ガイドライン作成委員会編:女性下部尿路症状診療ガイドライン.リッチヒルメディカル,2013
p. 23
尿失禁
機能的尿失禁
精神機能の異常でトイレの習慣がなくなったり、身体機能の 異常でトイ レでの動作に障害があり、失禁する場合。トイレの環境を整えることで改 善する可能性があります。
切迫性尿失禁
急に強い尿意をもよおしてトイレまで間に合わず失禁する場合。 お もに抗コリン剤で内服加療を試みます。
腹圧性尿失禁
咳やくしゃみと共に尿を失禁する場合。
スピロペントなど内服を使います。手術が奏功することが多く、一度 はご紹介くださることをお勧めします。
溢流性尿失禁
大量の残尿がちょろちょろとあふれ出てくる状態。 尿路の荒廃が懸 念されます。即刻ご紹介ください。
行動療法
生活指導
適度な運動また、バランスの取れた食事による減量指導を行ってく ださい。
p. 24
緊急時の対処
排尿障害を診療されている過程での緊急時 以下の3つが多いです。
尿閉
急性・有熱性の尿路感染症 溢流性尿失禁
尿閉
男性患者のカテーテル留置時には、必ずカテーテルの根元 まで挿入してからバルーンの固定水を注入してください (※)無理なカテーテル挿入は避け、挿入困難時には専門医 へ相談してください
急性・有熱性の 尿路 感染症
即刻ご紹介ください
有熱性の尿路感染症は、敗血症の危険性があります。入院 加療をお勧めします。
溢流性尿失禁
大量の残尿がちょろちょろとあふれ出てくる状態。
腎機能障害など尿路の荒廃が懸念されます。 即刻ご紹介く ださい。
p. 25
資料提供
福井赤十字病院泌尿器科
參考資料
過活動膀胱診療ガイドライン[第2版] 2015年発刊 前立腺肥大症診療ガイドライン2011年発刊
男性下部尿路症状前立腺肥大症診療ガイドライン
2017年発刊 間質性膀胱炎・膀胱痛症候群診療ガイドライン
2019年発刊
p. 26
【お問い合わせ先・緊急連絡先】
浅田クリニック(木・土午後、第二土・日・祝日休診)
TEL :06-6266-1173
かきのき泌尿器科クリニック(水・土午後、日・祝日休診)
TEL :06-6963-4327
かただクリニック(土午後、水・日・祝日休診)
TEL :06-4790-6511
山口泌尿器科(土午後、水・日・祝日休診)
TEL :06-6764-8818
大手前病院 地域医療連携センター TEL:06-6966-5335
FAX :06-6966-5336