一 、 は じ め に 筆 者 は か つ て 個 人 の 知 り う る 範 圍 で 蒐 集 し た 俄 藏 の 禪 籍 の 一 部 を 、 ﹁ 俄 藏 敦 煌 文 獻 中 に 發 見 さ れ た 禪 籍 に つ い て ﹂ ︵ 以 下 、 前 稿 ︶ と 題 し て 紹 介 し た︵ 1 ︶ の で あ る が 、 す で に そ の 結 び に お い て 關 説 し た︵ 2 ︶ よ う に 、 そ れ は 決 し て 俄 藏 敦 煌 文 獻 に あ る 禪 籍 の す べ て を 網 羅 し た も の で は な い 。 す な わ ち 、 そ の 後 、 ﹃ 俄 藏 敦 煌 文 獻 ﹄︵3 ︶ ︵ 以 下 、 ﹃ 俄 藏 敦 煌 ﹄ ︶ の 中 に あ る 神 會 關 係 の も の を は じ め と す る 一 部 の 禪 籍 に つ い て は 、 す で に 論 じ ら れ て い た︵ 4 ︶ こ と が 判 明 さ れ 、 ま た 拙 稿 と ほ ぼ 同 じ 時 期 に 、 も っ ぱ ら ﹃ 俄 藏 敦 煌 ﹄ の 禪 籍 を 中 心 に 考 察 し た す ぐ れ た 研 究 成 果 が 公 に さ れ て い た こ と︵ 5 ︶ も あ り 、 さ ら に 拙 稿 を 発 表 し た 後 、 新 た に 數 種 の 禪 籍 の 存 在 も 確 認 さ れ た こ と な ど を 受 け て 、 こ こ に 續 篇 と し て 考 察 を 試 み た の が 本 小 論 で あ る 。 以 下 、 箇 箇 の 禪 籍 の 紹 介 に 入 る が 、 そ の 分 類 方 法 や 順 序 な ど に つ い て は 、 前 稿 と 同 様 に 、 か つ て 田 中 良 昭 氏 が さ れ た 分 類︵ 6 ︶ に 從 う も の と す る 。 す な わ ち 、 ︵ 一 ︶ 傳 燈 ・ 嗣 承 に 關 す る 文 獻 、 ︵ 二 ︶ 禪 法 ・ 修 道 に 關 す る 文 獻 、 ︵ 三 ︶ 銘 ・ 箴 ・ 讃 ・ 偈 類 、 ︵ 四 ︶ 教 理 問 答 ・ 綱 要 書 類 、 ︵ 五 ︶ 經 注 ・ 經 序 類 、 と い う 五 項 目 の 分 類 順 に 紹 介 し て い き た い 。 な お 、 筆 者 の 構 想 と し て は 、 そ の 存 在 が 知 ら れ る よ う に な っ た 禪 籍 を そ の つ ど 紹 介 し 、 最 終 的 に は ﹃ 俄 藏 敦 煌 ﹄ の 禪 籍 に 關 す る 目 録 の 作 成 を 目 指 す も の で あ る が 、 そ の た め に は 、 他 の 研 究 者 に よ っ て す で に 紹 介 さ れ た も の に 關 し て も 、 す べ て 小 論 に 取 り 入 れ 、 そ の 文 獻 の 發 見 さ れ た 經 緯 な ど に つ い て も 紹 介 す る こ と に し た い 。 目 録 の 作 成 は 、 と う て い 筆 者 一 人 で は な し え な い も の で あ り 、 諸 賢 の ご 教 示 を 乞 う 次 第 で あ る 。 三 七 七 駒 澤 大 學 佛 學 部 論 集 第 三 十 九 號 成 二 十 年 十 月
俄
藏
敦
煌
文
獻
中
に
發
見
さ
れ
た
禪
籍
に
つ
い
て
︵
二
︶
程
正
俄 藏 敦 煌 文 獻 中 に 發 見 さ れ た 禪 籍 に つ い て ︵ 二 ︶ ︵ 程 ︶ 三 七 八 二 、 俄 藏 敦 煌 文 獻 中 か ら 發 見 さ れ た 禪 籍 に つ い て ︵ 承 前 ︶ ︵ 一 ︶ ﹃ 楞 伽 師 資 記 ﹄ ︵ 斷 片 、 二 種 ︶ ﹃ 俄 藏 敦 煌 ﹄ に お け る ﹃ 楞 伽 師 資 記 ﹄ の テ キ ス ト に つ い て は 、 前 稿 で Д х 〇 一 七 二 八 號 と Д х 〇 五 四 六 四 號 、 Д х 〇 五 四 六 六 號 の 二 種 の 存 在 を 紹 介 し た の で あ る 。 ︵ 7 ︶ と こ ろ が 、 Д х 〇 一 七 二 八 號 に つ い て は 、 す で に 中 國 人 學 者 の 榮 新 江 氏 に よ っ て そ の 存 在 が 指 摘 さ れ て お り 、 そ の 論 文 は 衣 川 賢 次 氏 に よ っ て 日 本 語 譯 も な さ れ て い る 。︵8 ︶ ま た 、 中 西 久 味 氏 も 前 稿 で 紹 介 し た Д х 〇 一 七 二 八 號 と Д х 〇 五 四 六 四 號 、 Д х 〇 五 四 六 六 號 に つ い て の 紹 介 を さ れ て お り 、 し か も 中 西 氏 は 、 こ れ ら の 三 種 と は 別 に 、 新 た に Д х 〇 八 三 〇 〇 號 と Д х 一 八 九 四 七 號 R の 二 種 の 存 在 を 指 摘 さ れ た の で あ る 。 ︵ 9 ︶ す な わ ち 氏 の 論 文 に よ れ ば 、 次 の 二 種 が あ る と い う 。 1 、 Д х 〇 八 三 〇 〇 號 ︵ 斷 片 ︶ 2 、 Д х 一 八 九 四 七 號 R ︵ 斷 片 ︶ し か も こ の 二 種 は 、 も と 同 一 文 書 で あ る 可 能 性 が 高 い と い い 、 氏 に よ っ て 示 さ れ た 本 文 の 内 容 を 示 せ ば 、 次 の 通 り で あ る 。 Д х 一 八 九 四 七 號 R Д х 〇 八 三 〇 〇 號 1 ︻ 斷 缺 ︼ 略 辯 大 乘 入 道 四 行 弟 子 曇 林 序 ︻ 斷 缺 ︼ 2 ︻ 斷 缺 ︼ 婆 羅 門 國 王 第 三 之 子 也 神 慧 □ □ ︻ 斷 缺 ︼ い ず れ も 罫 入 り の 紙 に 書 寫 さ れ た 斷 片 で あ る が 、 Д х 〇 八 三 〇 〇 號 に は わ ず か に 九 字 が 、 Д х 一 八 九 四 七 號 R に は 一 六 字 が 存 す る の み で あ る 。 な お 、 中 西 氏 は 兩 者 を 接 合 さ せ る こ と に よ っ て 比 定 さ れ た 結 果 、 も と の 寫 本 は 一 行 が 二 五 字 程 度 の も の で あ っ た と い う 。
俄 藏 敦 煌 文 獻 中 に 發 見 さ れ た 禪 籍 に つ い て ︵ 二 ︶ ︵ 程 ︶ 三 七 九 ︵ 二 ︶ ﹃ 州 忍 和 上 導 凡 趣 聖 悟 解 脱 宗 修 心 要 論 ﹄ ︵ 斷 簡 、 一 種 ︶ ︵ 以 下 、 ﹃ 修 心 要 論 ﹄ ︶ ﹃ 修 心 要 論 ﹄ に つ い て は 、 前 稿 で 關 説 し た︵ 10 ︶ よ う に 、 ﹃ 俄 藏 敦 煌 ﹄ に は す で に L 一 二 七 七 ︵ Д х 〇 〇 六 四 九 號 V ︶ と L 二 六 四 二 ︵ Д х 〇 一 九 九 六 號 B 、 Д х 〇 二 〇 〇 六 號 B ︶ の 二 種 が 存 在 し て い る 。 ︵ 11 ︶ ﹃ 修 心 要 論 ﹄ に 關 連 す る 内 容 に つ い て は 、 Д х 〇 〇 六 四 九 號 V ︵ 斷 簡 ︶ は 、 わ ず か ﹁ 導 凡 趣 聖 脱 宗 修 心 成 佛 要 論 ﹂ の タ イ ト ル と そ の 下 に 記 さ れ て い る ﹁ 州 忍 禪 師 譯 ﹂ の み で あ り 、 一 方 の Д х 〇 一 九 九 六 號 B 、 Д х 〇 二 〇 〇 六 號 B ︵ 斷 簡 ︶ は 、 補 修 材 料 と し て 利 用 さ れ た 同 じ テ キ ス ト の 違 う 部 分 で 、 お よ そ 三 五 字 前 後 の 斷 簡 で あ る 。 今 回 、 筆 者 は ﹃ 俄 藏 敦 煌 ﹄ か ら 新 た に ﹃ 修 心 要 論 ﹄ の 尾 部 に 相 當 す る テ キ ス ト 一 種 を 發 見 し た 。 す な わ ち 、 Д х 〇 五 九 五 五 號 ︵ 斷 簡 ︶ ︵ 12 ︶ で あ る 。 こ の 文 獻 は ﹃ 俄 藏 敦 煌 漢 文 寫 卷 敍 録 ﹄ ︵ 上 、 下 二 卷 ︶︵13 ︶ ︵ 以 下 、 ﹃ 敍 録 ﹄ ︶ に も 收 録 さ れ て い な い た め 、 ﹃ 俄 藏 敦 煌 ﹄ に 掲 載 さ れ た 一 枚 の 寫 眞 以 外 に は 、 そ れ を 知 る す べ が な い 。 ま ず 田 中 良 昭 校 訂 本 を ベ ー ス に そ の 全 文 を 示 せ ば 、 次 の 通 り で あ る 。 な お 、 字 數 を 比 定 す る た め に 、 句 讀 點 を 省 略 し た 。 1 無 明 昏 住 又 不 當 理 只 欲 不 正 心 不 縁 義 即 妄 取 空 2 雖 受 人 身 行 畜 生 行 爾 時 無 有 定 慧 方 便 而 不 能 得 了 了 明 見 佛 性 只 是 行 3 人 沈 沒 之 處 若 爲 進 起 得 到 無 餘 涅 槃 願 示 眞 趣 答 曰 會 是 信 心 具 4 足 至 願 成 就 緩 緩 靜 心 更 重 教 汝 好 自 閑 淨 身 心 一 切 無 所 攀 縁 端 坐 正 5 身 令 氣 息 調 懲 其 心 不 在 内 不 在 外 不 在 中 間 好 好 如 如 穩 熟 看 即 及 見 6 此 心 識 流 動 猶 如 水 流 陽 焔 葉 葉 不 住 既 見 此 識 時 唯 是 不 内 不 外 緩 緩 7 如 如 穩 看 熟 即 返 覆 融 消 虚 凝 湛 住 其 此 流 動 之 識 颯 然 自 滅 滅 此 識 8 者 乃 是 滅 十 地 菩 薩 衆 中 障 惑 此 識 身 等 滅 已 其 心 即 虚 凝 淡 泊 9 皎 潔 泰 然 吾 更 不 能 説 其 刑 状 汝 若 欲 得 知 者 取 涅 槃 經 金 剛 身 品 及 10 維 摩 經 見 阿 佛 品 緩 緩 尋 思 此 是 實 語 能 得 於 行 住 坐 臥 中 及 對
俄 藏 敦 煌 文 獻 中 に 發 見 さ れ た 禪 籍 に つ い て ︵ 二 ︶ ︵ 程 ︶ 三 八 〇 11 五 慾 八 風 不 失 此 心 者 是 人 梵 行 已 立 所 作 已 辨 究 竟 不 受 生 死 之 身 五 慾 者 12 色 聲 香 味 觸 八 風 者 利 襄 毀 譽 稱 譏 苦 樂 此 是 行 人 磨 錬 佛 性 處 甚 13 莫 怪 今 身 不 得 自 在 經 曰 世 間 無 佛 住 地 菩 薩 不 得 現 用 要 脱 此 報 身 14 衆 生 過 去 根 有 利 鈍 不 可 判 上 者 一 念 間 下 者 無 量 劫 若 有 力 時 隨 衆 生 性 15 起 菩 薩 善 根 自 利 利 人 莊 嚴 佛 道 要 須 了 四 依 乃 窮 實 相 若 依 文 16 執 即 失 眞 宗 諸 比 丘 等 學 他 出 家 修 道 此 是 出 家 出 生 死 家 是 名 出 家 17 正 念 具 足 修 道 得 成 乃 至 解 身 支 節 臨 終 命 時 不 失 正 念 即 是 佛 弟 子 18 上 來 集 此 論 者 直 以 信 心 依 文 取 義 作 如 是 説 者 實 非 了 了 證 知 若 乖 聖 19 理 者 願 懺 悔 除 滅 若 當 聖 道 者 迴 施 衆 生 願 皆 識 本 心 一 時 成 佛 聞 者 20 努 力 當 來 成 佛 願 在 前 度 我 門 徒 問 曰 此 論 從 首 至 末 皆 顯 自 心 是 道 21 未 知 果 行 二 門 是 何 門 而 攝 答 曰 此 論 顯 一 乘 爲 宗 然 其 至 意 導 迷 22 趣 解 自 免 生 死 乃 能 度 人 直 言 自 利 不 説 利 他 約 行 門 攝 若 有 人 依 文 行 23 者 即 在 前 成 佛 若 我 誑 汝 當 來 墮 十 八 地 獄 指 天 地 爲 誓 若 不 信 我 世 世 24 被 虎 狼 所 食 前 記 の 如 く 、 Д х 〇 五 九 五 五 號 は ﹃ 修 心 要 論 ﹄ の 尾 部 を 書 寫 し た 斷 簡 で あ る が 、 尾 題 は 存 在 し な い 。 し か も 殘 存 す る 二 四 行 の う ち 、 一 行 目 か ら 一 七 行 目 ま で は 下 半 分 の 損 傷 が 著 し い 。 一 八 行 目 か ら 二 四 行 目 ま で の 内 容 は 辛 う じ て 保 存 さ れ て い る 。 こ れ ら の 行 か ら 推 察 す る な ら ば 、 本 來 こ の テ キ ス ト は 、 一 行 お よ そ 二 八 字 で 書 寫 さ れ て い た こ と が わ か る 。
俄 藏 敦 煌 文 獻 中 に 發 見 さ れ た 禪 籍 に つ い て ︵ 二 ︶ ︵ 程 ︶ 三 八 一 ︵ 三 ︶ ﹃ 頓 悟 眞 宗 金 剛 般 若 修 行 達 彼 岸 法 門 要 決 ﹄ ︵ 斷 簡 、 一 種 ︶ ︵ 以 下 、 ﹃ 要 決 ﹄ ︶ 現 在 の 學 界 に お い て は 、 從 來 ﹁ 南 頓 北 漸 ﹂ と 呼 ば れ て き た 圖 式 に 反 し て 、 南 宗 の み な ら ず 北 宗 に お い て も 、 か つ て 頓 悟 を 主 張 し た 一 派 が 存 在 し た と 考 え ら れ る よ う に な っ て い る 。 そ の き っ か け と な っ た の は 、 ﹃ 要 決 ﹄ と ﹃ 大 乘 開 心 顯 性 頓 悟 眞 宗 論 ﹄ ︵ 以 下 、 ﹃ 眞 宗 論 ﹄ ︶ の 二 種 の 北 宗 禪 文 獻 の 發 見 で あ る 。 そ の 經 緯 の 詳 細 に つ い て は 、 田 中 良 昭 氏 の ﹁ 敦 煌 の 禪 籍 ﹂ ︵ 14 ︶ に 詳 述 さ れ て お り 、 そ れ に 譲 る が 、 敦 煌 禪 宗 文 獻 で あ る ﹃ 要 決 ﹄ の テ キ ス ト の 情 況 に つ い て 紹 介 し て お こ う 。 ﹃ 要 決 ﹄ の 存 在 を い ち 早 く 學 界 に 紹 介 し た の は 、 柳 田 聖 山 氏︵ 15 ︶ で あ る 。 柳 田 氏 の 指 摘 に よ っ て そ の 存 在 が 明 ら か に な っ た の は 、 P 二 七 九 九 號 と S 五 五 三 三 號 で あ る 。 P 二 七 九 九 號 は ﹁ 頓 悟 眞 宗 金 剛 般 若 修 行 達 彼 岸 法 門 要 決 ﹂ と い う 首 題 を 有 し な が ら も 、 途 中 で 擱 筆 し 、 そ の 後 半 部 分 に ﹃ 觀 世 音 菩 薩 祕 密 藏 無 障 礙 如 意 心 輪 陀 羅 尼 經 ﹄ と 題 す る 經 典 が 連 寫 さ れ た も の で あ る 。 一 方 、 S 五 五 三 三 號 は 、 ﹃ 要 決 ﹄ の 途 中 か ら の 書 寫 で あ る が 、 し か し そ の 後 半 部 分 は 斷 缺 し て い る 。 前 述 の P 二 七 九 九 號 の 内 容 と は 重 複 し な い も の の 、 幸 い 兩 者 の 内 容 は ほ ぼ そ の ま ま 結 合 す る こ と が 可 能 で あ る 。 し か も そ の 後 、 P 三 九 二 二 號 に も ﹃ 要 決 ﹄ の 斷 簡 が 含 ま れ て い る こ と が 指 摘 さ れ た 。︵16 ︶ P 三 九 二 二 號 の ﹃ 要 決 ﹄ は 、 貝 葉 式 梵 筴 本 で 横 書 き の も の で あ る 。 ︵ 17 ︶ 僞 經 の ﹃ 法 句 經 ﹄ に 連 寫 さ れ た も の で あ り 、 首 題 は ﹃ 頓 悟 眞 宗 要 決 ﹄ で 、 そ れ に 續 い て ﹁ 侯 莫 陳 問 、 智 達 禪 師 口 決 ﹂ と あ る が 、 殘 念 な こ と に こ の テ キ ス ト は 、 わ ず か 二 紙 四 頁 の み の 斷 簡 で あ る 。 ︵ 18 ︶ と こ ろ で 、 ﹃ 俄 藏 敦 煌 ﹄ に も 、 ﹃ 要 決 ﹄ の テ キ ス ト ︵ 斷 片 ︶ の 存 在 し て い る こ と が 筆 者 の 調 査 に よ っ て 明 ら か に な っ た 。 す な わ ち 、 Д х 〇 五 八 三 〇 號 ︵ 斷 簡 ︶ ︵ 19 ︶ で あ る 。 こ れ も ﹃ 敍 録 ﹄ に は 收 録 さ れ て い な い も の で あ る か ら 、 以 下 に 上 山 氏 の 校 訂 本 ︵ 以 下 、 上 山 本 ︶ と 比 較 し な が ら 、 全 文 を 示 し て お こ う 。 た だ し 、 兩 者 の 異 同 に つ い て は ゴ シ ッ ク 體 で 傍 線 を 附 し て 表 し 、 缺 損 し た 部 分 を ︻ ︼ で か こ み 、 數 字 は 行 數 を 示 す 。 以 下 の 凡 例 は 、 こ れ に 準 ず る 。 ﹃ 要 決 ﹄ 本 文 ︵ Д х 〇 五 八 三 〇 號 ︶ ﹃ 要 決 ﹄ 本 文 ︵ 上 山 大 峻 校 訂 本 ︶ ︵ 20 ︶ ︻ 前 缺 ︼ 1 □ □ □ 大 宅 、 棄 之 走 ︻ 斷 缺 ︼ 有 清 淨 大 宅 、 棄 之 走 向 他 國 。 後 歸 本 國 、 宅 舍 荒 穢 、 心 中
俄 藏 敦 煌 文 獻 中 に 發 見 さ れ た 禪 籍 に つ い て ︵ 二 ︶ ︵ 程 ︶ 三 八 二 2 不 認 、 乃 向 洛 陽 道 上 、 五 ︻ 斷 缺 ︼ 不 忍 、 了 向 洛 陽 道 上 、 五 谷 澗 逼 、 三 壕 上 側 、 造 一 草 菴 、 隨 3 時 作 活 。 後 逢 善 知 識 、 指 ︻ 斷 缺 ︼ 時 作 活 。 逢 善 知 識 、 指 示 本 宅 在 長 安 極 清 淨 。 汝 今 4 在 此 艱 辛 、 遂 即 取 語 、 逐 ︻ 斷 缺 ︼ 在 此 艱 苦 、 遂 即 取 語 、 善 知 識 、 往 自 長 安 、 一 依 指 授 、 自 5 □ 本 宅 。 細 看 多 日 、 忽 然 ︻ 斷 缺 ︼ 求 本 宅 。 細 看 多 日 、 忽 然 省 得 。 智 本 宅 荒 穢 6 □ 時 、 即 修 堂 屋 、 未 成 就 。 ︻ 斷 缺 ︼ 多 時 、 即 修 堂 屋 、 未 成 就 。 且 向 草 菴 邊 寄 住 、 時 往 本 7 營 造 。 後 宅 舍 成 就 、 移 向 ︻ 斷 缺 ︼ 宅 營 造 。 後 宅 舍 成 就 、 移 向 長 安 宅 中 。 8 □ □ □ □ □ ︻ 後 缺 ︼ 其 五 谷 草 菴 上 記 の 通 り 、 Д х 〇 五 八 三 〇 號 の ﹃ 要 決 ﹄ の テ キ ス ト は 、 寫 眞 一 枚 に 收 め ら れ た わ ず か 八 行 の 斷 片 で あ る 。 こ の う ち 、 起 首 部 分 の 殘 さ れ て い る 二 、 三 、 四 行 目 を 基 準 に 上 山 本 の 該 當 部 分 と 照 合 し て み れ ば 、 も と も と 一 行 に 約 二 〇 字 前 後 で 書 寫 さ れ た テ キ ス ト で あ る こ と が 推 定 さ れ よ う 。 ま た Д х 〇 五 八 三 〇 號 の 出 現 に よ っ て 、 從 來 判 然 と し な い 二 行 目 、 三 行 目 の 意 味 が 明 ら か と な っ た 。 ︵ 四 ︶ ﹃ 絶 觀 論 ﹄ ︵ 斷 簡 、 四 種 ︶ 初 期 禪 宗 の 一 派 で あ る 牛 頭 宗 の 綱 要 書 と さ れ る ﹃ 絶 觀 論 ﹄ は 、 敦 煌 文 獻 し か 存 し な か っ た 貴 重 な 禪 籍 で 、 漢 文 文 獻 に 限 っ て い え ば 、 從 來 六 種 ︵ P 二 〇 四 五 號 、 P 二 〇 七 四 號 、 P 二 七 三 二 號 、 P 二 八 八 五 號 、 閏 八 四 號 、 石 井 積 翠 軒 舊 藏 本 ︶ の 存 在 が 確 認 さ れ て い た が 、 近 年 、 西 脇 常 記 氏 に よ っ て ド イ ツ 所 藏 の 敦 煌 文 獻 に も 一 種 ︵Ch 一 四 三 三 號 ︶ の 存 在︵ 21 ︶ が 指 摘 さ れ て い る 。 こ れ ら の う ち 、 最 初 の 六 種 の 敦 煌 本 の 書 誌 學 的 研 究 は 、 す で に 柳 田 聖 山 氏 に よ っ て な さ れ て い る 。 ︵ 22 ︶ 氏 の 研 究 に よ れ ば 、 こ れ ら の 六 種 に は 、 そ れ ぞ れ 二 種 ず つ 三 つ の 系 統 が 存 在 す る と い う 。 し か し 、 俄 藏 の 敦 煌 文 獻 に も ﹃ 絶 觀 論 ﹄ ︵ 斷 簡 ︶ に 四 種 の 存 在 す る こ と が 、 中 西 久 味 氏 に よ っ て 報 告 さ れ た 。︵23 ︶ 中 西 氏 の 敍 述 に 基 づ い て こ れ ら の 四 種 の 内 容 を 示 せ ば 、 下 記 の 通 り と な る 。
俄 藏 敦 煌 文 獻 中 に 發 見 さ れ た 禪 籍 に つ い て ︵ 二 ︶ ︵ 程 ︶ 三 八 三 1 、 Д х 〇 四 二 五 九 號 ︵ 斷 簡 ︶ ︵ 24 ︶ Д х 〇 四 二 五 九 號 は 、 薄 い 罫 入 り の 紙 に 、 一 行 一 六 字 前 後 で 書 寫 さ れ た 斷 簡 で あ る 。 内 容 的 に は 、 か つ て 柳 田 氏 に よ る 分 段 か ら す れ ば 、 第 二 段 の 末 か ら 第 三 段 の 前 半 部 分 に 相 當 す る 。 柳 田 本 と 對 照 す れ ば 、 次 の 如 く で あ る 。 Д х 〇 四 二 五 九 號 ︵ 中 西 本 ︶ 柳 田 聖 山 校 訂 本 1 □ □ □ □ 者 、 造 作 非 眞 。 問 曰 、 究 竟 云 何 。 若 修 成 得 者 、 造 作 非 眞 。 問 曰 、 究 竟 云 何 。 2 答 曰 、 離 一 切 限 量 分 別 。 於 是 縁 門 復 起 答 曰 、 離 一 切 限 量 分 別 。 縁 門 3 問 曰 、 凡 夫 有 身 、 亦 見 聞 覺 知 、 聖 人 有 問 曰 、 凡 夫 有 身 、 亦 見 聞 覺 知 、 聖 人 有 4 身 、 亦 見 聞 覺 知 。 中 有 何 異 。 答 、 凡 夫 身 、 亦 見 聞 覺 知 。 中 有 何 異 。 答 曰 、 凡 夫 5 眼 見 耳 聞 、 身 覺 意 如 知 。 聖 人 即 不 爾 。 見 眼 見 耳 聞 、 身 覺 意 知 。 聖 人 即 不 爾 。 見 6 非 眼 見 、 乃 至 知 非 意 知 。 何 以 故 、 過 一 切 限 量 非 眼 見 、 乃 至 知 非 意 知 。 何 以 故 、 過 一 切 限 量 7 故 。 問 曰 、 何 故 經 中 復 説 聖 人 無 見 聞 覺 故 也 。 問 曰 、 何 故 經 中 復 説 聖 人 無 見 聞 覺 8 知 者 何 也 。 答 曰 、 聖 人 無 凡 夫 見 聞 覺 知 、 非 知 者 何 。 答 曰 、 聖 人 無 凡 夫 見 聞 覺 知 、 非 9 無 聖 境 界 者 。 非 有 無 所 攝 、 離 分 別 。 問 曰 、 無 聖 境 界 。 非 有 無 所 攝 、 離 分 別 故 也 。 問 曰 、 ︵ 後 缺 ︶ 凡 夫 實 有 凡 境 界 耶 。 中 西 氏 に よ れ ば 、 Д х 〇 四 二 五 九 號 の ﹃ 絶 觀 論 ﹄ テ キ ス ト は 、 P 二 〇 七 四 號 、 P 二 八 八 五 號 と 同 じ 系 統 の も の で 、 P 二 八 五 五 號 に ほ ぼ 一 致 し て い る と い う 。 2 、 Д х 〇 五 八 八 一 號 ︵ 斷 簡 ︶ 3 、 Д х 〇 六 二 三 〇 號 ︵ 斷 簡 ︶ ︵ 25 ︶ Д х 〇 五 八 八 一 號 と Д х 〇 六 二 三 〇 號 は 、 も と も と 同 一 寫 本 で 、 し か も 兩 者 を 完 全 に 結 合 す る こ と が で き る 。 ま ず Д х 〇 五
俄 藏 敦 煌 文 獻 中 に 發 見 さ れ た 禪 籍 に つ い て ︵ 二 ︶ ︵ 程 ︶ 三 八 四 八 八 一 號 は 六 行 の 斷 簡 で あ り 、 Д х 〇 六 二 三 〇 號 は 一 六 行 の 斷 簡 で あ る 。 中 西 氏 は 兩 者 の 結 合 を 試 み ら れ 、 そ の 本 文 が P 二 〇 四 五 號 、 閏 八 四 號 の 系 統 に 屬 す る も の で あ る と し た 。 ま た 本 文 の 内 容 に つ い て は 、 柳 田 氏 の 分 段 の 第 一 段 の 末 か ら 第 二 段 に 相 當 し て い る こ と を 指 摘 さ れ て い る 。 兩 者 の テ キ ス ト の 復 元 は 、 既 に 中 西 氏 に よ っ て な さ れ て お り 、 今 は そ れ に 譲 り た い 。 4 、 Д х 〇 八 七 六 八 號 ︵ 斷 片 ︶ ︵ 26 ︶ Д х 〇 八 七 六 八 號 は わ ず か に ﹁ 絶 觀 ﹂ の 二 文 字 と ﹁ 論 ﹂ と い う 字 の 上 半 分 し か 殘 さ れ て い な い 碎 片 で あ る 。 ︵ 五 ︶ ﹃ 三 寶 四 諦 文 ﹄ ︵ 斷 簡 、 二 種 ︶ か つ て 鈴 木 大 拙 氏 に よ っ て ﹁ 三 寶 問 答 ﹂ の 擬 題︵ 27 ︶ で 呼 ば れ 、 後 に 田 中 良 昭 氏 に よ っ て ﹃ 三 寶 四 諦 文 ﹄︵28 ︶ に 統 一 さ れ た 、 ﹁ 三 寶 ﹂ 、 ﹁ 四 諦 ﹂ に 關 す る 問 答 體 の も の で あ る 。 こ の テ キ ス ト に つ い て は 、 田 中 氏 の 研 究 に よ れ ば 、 鈴 木 氏 が 紹 介 し た 龍 谷 大 學 圖 書 館 所 藏 ﹃ 西 天 竺 國 沙 門 菩 提 達 摩 禪 師 觀 門 法 大 乘 法 論 ﹄ ︵ 以 下 、 龍 谷 本 ﹃ 觀 門 法 大 乘 法 論 ﹄ ︶ と S 二 六 六 九 號 に そ れ ぞ れ 含 ま れ て い る 二 種 に 、 田 中 氏 が 發 見 し た S 一 六 七 四 號 、 S 二 九 二 八 號 、 S 四 二 三 六 號 、 S 六 一 〇 八 號 、 P 二 四 三 四 號 、 P 三 四 五 〇 號 、 P 四 六 二 七 號 、 人 七 二 號 の 八 種 を 加 え て 、 都 合 一 〇 種 の 存 在 が 確 認 さ れ て い る 。 各 お の の テ キ ス ト の 紹 介 は 田 中 氏 が 詳 述 さ れ て お り 、 そ れ に 譲 り た い 。 ︵ 29 ︶ と こ ろ で 、 筆 者 が ﹃ 俄 藏 敦 煌 ﹄ を 新 た に 調 査 し た と こ ろ 、 こ の ﹃ 三 寶 四 諦 文 ﹄ と 思 わ れ る 斷 簡 に 、 二 種 の 存 在 を 確 認 す る こ と が で き た 。 す な わ ち 、 Д х 〇 二 〇 七 八 號 ︵ M 二 六 四 四 號 ︶ と Д х 〇 六 二 五 五 號 で あ る 。 1 、 Д х 〇 二 〇 七 八 號 ︵ M 二 六 四 四 號 、 斷 簡 ︶ こ の テ キ ス ト に つ い て は 、 ﹃ 敍 録 ﹄ ︵ 下 卷 ︶ に 、 次 の よ う に 紹 介 さ れ て い る 。 問 答 式 經 卷 、 解 釋 佛 教 用 語: 別 相 。 殘 卷 、 14 × 11 。 1 紙 中 部 殘 片 。 7 行 、 不 全 。 紙 色 褐 、 紙 質 厚 而 硬 、 網 格 大 。 楷 書 。 無 題 字 。 ︵ 9 ︱ 11 世 紀 ︶
俄 藏 敦 煌 文 獻 中 に 發 見 さ れ た 禪 籍 に つ い て ︵ 二 ︶ ︵ 程 ︶ 三 八 五 從 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 答 [ 僧 ] ・ ・ ・ ・ ・ ・ 、 到 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 名 別 相 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 。 ︵ 三 七 三 頁 ︶ 鈴 木 氏 の 校 訂 し た テ キ ス ト と 比 較 し て そ の 内 容 を 示 せ ば 、 下 記 の 通 り で あ る 。 な お 、 波 線 の 部 分 は 新 出 の Д х 〇 二 〇 七 八 號 に 存 す る 部 分 で あ る こ と を 意 味 す る 。 Д х 〇 二 〇 七 八 號 ︵ 傍 線 は 筆 者 ︶ 鈴 木 大 拙 校 訂 本 ︵ 波 線 は 筆 者 ︶ 1 ︻ 前 缺 ︼ 答 僧 ︻ 斷 缺 ︼ 又 問 云 、 何 無 違 諍 。 答 、 僧 者 、 和 合 義 。 謂 法 身 體 中 無 違 諍 。 2 ︻ 斷 缺 ︼ 爲 僧 ︻ 斷 缺 ︼ 又 問 、 何 名 一 體 。 答 、 三 寶 名 殊 、 其 體 不 異 、 故 名 一 體 。 又 問 、 何 以 得 知 一 體 三 寶 。 3 ︻ 斷 缺 ︼ 即 是 ︻ 斷 缺 ︼ 答 、 名 殊 其 體 是 一 。 維 摩 經 云 、 佛 即 是 法 、 即 是 衆 。 是 三 寶 皆 無 爲 相 、 與 虚 空 等 。 4 ︻ 斷 缺 ︼ 名 一 體 問 何 名 別 相 三 寶 答 ︻ 斷 缺 ︼ 細 此 義 邊 。 故 名 一 體 。 問 、 何 名 別 相 三 寶 。 答 、 丈 六 化 身 、 以 爲 佛 寶 。 所 説 言 教 、 5 ︻ 斷 缺 ︼ 法 寶 大 乘 十 信 已 上 小 乘 初 ︻ 斷 缺 ︼ 以 爲 法 寶 。 大 乘 十 信 已 上 、 爲 僧 寶 。 又 問 、 何 名 別 相 。 6 ︻ 斷 缺 ︼ 一 一 相 殊 故 名 別 相 問 云 何 一 一 ︻ 斷 缺 ︼ 答 、 一 一 相 殊 、 故 名 別 相 。 問 、 云 何 一 一 相 殊 。 答 、 佛 不 是 法 。 法 不 是 7 ︻ 斷 缺 ︼ 故 名 別 相 □ □ □ □ ︻ 後 缺 ︼ 衆 、 形 状 不 同 、 故 名 別 相 。 新 た に 發 見 さ れ た Д х 〇 二 〇 七 八 號 の 二 行 目 、 五 行 目 の 二 箇 所 に 鈴 木 大 拙 校 訂 本 と の 相 違 の あ っ た こ と が 、 こ れ で 明 ら か と な っ た 。 2 、 Д х 〇 六 二 五 五 號 ︵ 斷 簡 ︶ こ の テ キ ス ト に つ い て は 、 ﹃ 敍 録 ﹄ に も 含 ま れ て い な い た め 、 掲 載 さ れ て い る 寫 眞 一 枚 以 外 に は 、 詳 細 な 書 誌 的 情 報 は 知 る