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P-01 慢性期脳卒中患者に対し短時間の 歩行神経筋電気刺激を短期間実施し 歩行能力の改善を認めた症例 P-02 秦 彩佳 河村 考真 前田 貴志 ウォークエイドを用いた歩行練習を 通して 立位姿勢の安定化を認めた 症例 前田 貴志 河村 孝真 秦 彩佳 社会医療法人清風会 廿日市記念病院 社会医療

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01

○秦 彩佳、河村 考真、前田 貴志 社会医療法人清風会 廿日市記念病院 【はじめに】 歩行神経筋電気刺激装置ウォークエイドⓇ(以 下ウォークエイド)は装着者の歩行パターンに合わせた電 気刺激が可能な装置であり、腓骨神経への電気刺激によっ て歩行中の足関節背屈を補助し、中枢神経障害による下垂 足・尖足患者への歩行改善効果が示されている。今回、慢 性期患者に対して週2回1回5分程度のウォークエイド治 療を2週間行い、歩行能力の改善を認めた為、その結果を 報告する。 【症例紹介】 約1年前に前交通動脈瘤破裂によるくも膜下 出血を受傷し、右片麻痺を呈した60歳代男性。10ヶ月前 からリハビリは実施していない。BRS は右上肢Ⅵ、手指Ⅵ、 右下肢Ⅴであり、独歩可能であったが、段差昇降時の不安 定感や長距離歩行での下肢倦怠感を認めた。MAS は右下 腿三頭筋1+ であり、10 m 歩行速度(快適)は12秒16、歩 数22歩であった。カナダ作業遂行測定(以下 COPM)は 歩行遂行度6/10点、歩行満足度4/10点であった。The Rivermead Visual Gait Assessment(以下 RVGA)は14 点であった。 【倫理的配慮、質問と同意】 症例報告を含む医学論文及び 学会研究会発表における患者プライバシー保護に関する指 針を遵守した。 【経過】 発症後345病日から、週2回1回5分程度ウォーク エイド治療を実施した。14病日後、MAS は1、10 m 歩行 速度(快適)は10秒03、歩数19歩となり、改善を認めた。 COPM では歩行遂行度7/10点、歩行満足度6/10点と主 観的にも向上を認めた。RVGA は2点と改善を認めた。 【考察】 本症例のように発症後約1年経過した慢性期脳卒 中患者であっても、短期間・短時間の実施で MAS、10 m 歩行速度・歩行率の向上を認め歩行能力の改善がみられた。 運動学習では運動の正確性や効率性を高める必要があり、 知識を得ただけでは運動スキルを習得することが出来ない。 運動スキルの習得には感覚フィードバック、すなわち内在 的フィードバックが必要とされている。ウォークエイドを 用いた歩行練習を行う事でより正常に近い運動パターンで 適切なタイミングで筋収縮の学習がなされ、内在的フィー ドバックが促進されたと考える。それによりフィードフォ ワードモデルが形成され、意識化の過程から無意識化の過 程へ移行できたと考えられる。より効率的に運動学習がな され、短期間で歩行安定性・対称性の改善を認め、遂行 度・満足度など歩行の質の向上に繋がったと考えた。 【結語】 慢性期脳卒中患者に対してウォークエイドを用い た歩行練習を短期間・短時間実施することで歩行能力の改 善を認め、遂行度・満足度の向上に繋がり、QOL の向上 が可能となった。介入時間の短い外来リハビリや通所リハ ビリを利用されている患者に対しても使用することで歩行 能力の改善、QOL の向上に繋がることが示唆された。

慢性期脳卒中患者に対し短時間の

歩行神経筋電気刺激を短期間実施し

歩行能力の改善を認めた症例

Key word:慢性期脳卒中患者、歩行神経筋電気刺激、歩行練習

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02

○前田 貴志、河村 孝真、秦 彩佳 社会医療法人清風会 廿日市記念病院 【はじめに】 回復期脳卒中患者に対し、歩行神経筋電気刺 激装置ウォークエイドⓇ(以下 WA)を使用した結果、歩 行のみでなく、立位の安定化により移乗とトイレ動作獲得 を認めた症例を経験した為、報告する。 【症例紹介】 症例は右中大脳動脈領域での脳塞栓症により 左片麻痺を呈した60歳代の男性。発症より65病日での BRS は左上肢Ⅲ、手指Ⅱ、下肢Ⅲであり、下腿三頭筋の MAS は3で背屈角度が -10度と筋過緊張を認めた。短下 肢装具・T 字杖使用での10メートル歩行速度は26.39秒で、 上肢の連合反応も強く、左腋窩介助を要した。立位を要す 場面では左足底は接地せずに右上下肢の過剰努力を認め、 FIM は72点でトイレ動作は4点、移乗は5点であった。 【倫理的配慮、質問と同意】 症例報告を含む医学論文及び 学会研究会発表における患者プライバシー保護に関する指 針を遵守した。 【経過】 発症より35病日に当院へ入院し、同日より理学療 法介入を実施。  左上下肢への感覚入力と他動介助運動を行い、損傷脳の 活性化での半球間抑制の均衡化を図るも、連合反応の抑制 が困難で立位の安定化には繋がらなかった。65病日より WA を使用した歩行練習を開始。WA 使用下では左下腿 三頭筋過緊張の軽減と左下肢への荷重量増大を認めた。  1回20分の WA 使用にて、10日後より左下腿三頭筋の MAS が2まで軽減した為、左下肢への重心誘導と右上下 肢の使用方法の指導を実施。経過に伴い、電気刺激非実施 下での荷重時も右側過剰使用の軽減と連合反応の抑制を認 めた。  100病日に最終評価を実施。BRS は変化を認めなかった が、左足関節背屈角度は10度まで向上し、MAS は1+ に 軽減。10メートル歩行速度も監視下で18.44秒と、速度と 安定性の改善が認められた。また、装具未装着下の場面で も左下肢の足底接地が可能となり、立位姿勢も安定化を認 めた。伴って、移乗とトイレ動作は修正自立まで向上。 FIM は84点となった。 【考察】 症例は下腿三頭筋の過緊張により左下肢への荷重 が困難であった状態に対し、WA を使用する事で筋緊張 の軽減を認め、同時に荷重練習や右上下肢の過剰使用抑制 を図った事で損傷脳の潜在能力が発揮でき、歩行のみで無 く、立位動作でも安定性の向上を認めたと考える。  WA による電気刺激下での歩行を行う事で、下腿三頭 筋への相反性抑制や CPG の賦活、麻痺側荷重に伴う身体 正中軸の認識による身体図式の改善が出現したと考える。 また、身体図式の改善や筋緊張の軽減に伴い、右上下肢の 使用方法の指導といった患者自身が適切に麻痺側の残存機 能を使用できるような課題を取り組んだ事で、移乗やトイ レ動作といった電気刺激非実施下での立位場面でも安定性 の向上が出現したと考えられる。 【結語】 脳梗塞によって麻痺側筋の過緊張が出現した症例に 対し、WA での歩行練習を実施し、適切な荷重や筋過緊張 抑制を図る事で、装具装着下での歩行のみで無く、訓練以 外の生活場面でも立位安定化が認められる事が示唆された。

ウォークエイドを用いた歩行練習を

通して、立位姿勢の安定化を認めた

症例

Key word:ウォークエイド、脳卒中、立位姿勢

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03

○伊藤 拓也、林 真央、島田 大資、宍戸 健一郎、 大内田 友規 社会医療法人 清風会 五日市記念病院 技術部 リハビリ技術科 【はじめに】 脳卒中治療ガイドラインにおいて歩行能力改 善に対して訓練量や頻度を増やすことが強く勧められ、装 具療法や電気刺激療法を用いることも推奨されている。今 回、脳梗塞により片麻痺を呈し、装具や電気刺激、運動学 習を用いた訓練を行う中で歩行能力の改善を認め、在宅で の歩行機会を導入する事ができた症例について報告する。 【症例】 左前頭葉の梗塞により右片麻痺を呈した70歳代の 女性。Brunnstrom Recovery Stage(以下 Brs)は上肢Ⅳ手 指Ⅴ下肢Ⅲ。足関節背屈角度は他動運動にて10°まで可能で Modified Ashworth Scale(以下 MAS)は1+ であった。下 肢は屈曲共同パターンが強く出現し、寝返りは最小介助で あったが、起き上がり・移乗においては重度介助が必要であ り、起立・歩行は動作時の筋緊張の増大を認め同様に重度 介助を要した。FIM の運動項目は25/91点であった。 【方法】 日常生活において屈曲共同パターンの出現が基本 動作や歩行場面で介助量増大を引き起す最大の要因となっ ていた。そのため早期より長下肢装具、短下肢装具を用い た積極的な歩行訓練とともに、低周波治療器 ESPURGE と電気刺激装置 IVES を使用しながらリハビリ介入を行う ことで機能向上・痙性抑制を図った。長下肢装具期間(3 ~42病日)は筋出力の向上を目的に立位・歩行訓練を中 心に行い、大腿四頭筋への ESPURGE(EMS モード)を 併用した。短下肢装具期間(43~138病日)は歩行量を重 要視した介入を行い、それにより麻痺側下腿三頭筋の痙性 の出現が予測されたため、IVES の外部アシスト、センサ トリガーモードを用いて足関節の機能改善を図った。 【倫理的配慮、説明と同意】 本報告にあたり、対象者には 報告の趣旨を説明し同意を得た。また、倫理的配慮に関し て厚生労働省による医療研究指針を遵守して実施した。 【結果】 Brs 下肢Ⅲ、足関節背屈角度は他動運動で10°、 MAS は1+ でそれぞれ変化を認めなかった。寝返り・起 き上がりは完全自立、移乗は把持物を用いて自立、歩行は ピックアップ式の歩行器を用いて3動作揃え型の歩行で自 立した。歩行については立脚初期で爪先接地から足底接地 へ改善し、また立脚中期の麻痺側股関節・膝関節、体幹の 伸展活動の向上、遊脚後期の関節運動の改善、歩幅の拡大 を認めた。一方で、重度の屈曲共同パターンは残存し、 40 ㎝以下の座面からの立ち上がりは縦手すり、もしくは 介助を要した。 【考察】 歩行時の各関節角度の変化は、歩行量の増加に 伴って内在的なフィードバックが行われ運動学習が促進さ れた結果であると考える。また、筋緊張の改善に対する 様々な方法の中から、本症例は電気刺激療法と装具療法の 併用を行った。重度の屈曲共同パターンに対して電気刺激 療法を用いたことで、歩行周期における立脚期の意識付け や足関節角度の維持につながり、歩行量の増加という形で 運動学習機会を多く取り入れることができた結果、歩行を 獲得できたと考える。

重度の屈曲共同パターンを呈したが

電気刺激療法の併用により歩行を

獲得できた症例

Key word:運動学習、装具療法、電気刺激療法

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04

○新免 利郎1)、山下 昌彦1)、山崎 諒1)、山中 咲1)、 津田 陽一郎1)、上利 崇2) 1)倉敷平成病院 リハビリテーション部 理学療法科、 2)倉敷平成病院 脳神経外科 【はじめに】 脊髄刺激療法(SCS)は、脊椎の硬膜外腔に電 極を留置し、脊髄後索を約5~20Hz(tonic 刺激)で刺激 することで疼痛を軽減させる治療法である。2017年6月 には、新しい刺激方法(burstDR 刺激)が日本で認可され た。今回、慢性疼痛を有するパーキンソン病(PD)患者に 対して、刺激方法の違いによる疼痛・歩行機能を評価し、 検討したので報告する。 【説明と同意】 対象者には、口頭と書面にて説明し、同意 を得た。 【対象と方法】 SCS 施行し、burstDR 刺激可能な PD 患者 8名(平均年齢71.6歳、自立歩行可能6名、歩行困難2名) を対象とした。疼痛部位は腰部4名、腰部・下肢4名で あった。8名のうち、tonic 刺激からの切り替えが2名、新 規の患者が6名であった。評価項目として、疼痛評価には、 Visual Analogue Scale(VAS)を用い、各刺激前後の変化 の比較は、共分散分析により検討した。運動機能評価は、 10 m 歩行、Timed up & Go test(TUG)、片脚立位時間、 3分 間 歩 行 距 離 を 測 定 し、 刺 激 な し・tonic 刺 激 中・ burstDR 刺激中の3条件による違いは、一元配置分散分析 を用いて検討を行った。歩行困難2名は運動機能評価のみ 除外した。 【結果】 運動前の VAS の平均値は、刺激なし7.3/tonic 刺激 中3.5/burstDR 刺激中2.4であり、tonic 刺激中・burstDR 刺激中において有意に疼痛の軽減を認めた。運動後の VAS の平均値は、9.2/6.3/4.0であり、burstDR 刺激中により 疼痛の軽減を認めた。10 m 歩行速度は14.3秒 /12.8秒 /12.4秒であり、TUG は、17.3秒 /16.2秒 /14.6秒であった。 片脚立位時間は1.8秒 /2.2秒 /3.3秒であり、3分間歩行距 離は133.3 m/135.9 m/141.7 m であった。 【考察】 burstDR 刺激は、tonic 刺激と異なり、延髄後索 の薄束核を刺激することなく視床の VL 核を刺激し、視床 の burst 発火を誘発する刺激方法である。tonic 刺激と比 較し、高い除痛効果があるとされ、本研究においても同様 の傾向となり、この疼痛軽減が運動機能を向上させたと考 えられる。加えて、burstDR 刺激は脊髄後角第Ⅴ層から 始まる前脊髄視床路を刺激し、背側前帯状皮質や左背外側 前頭前野を活性化させると報告されていることから、直接 的に運動機能の向上に寄与している可能性も示唆された。 【結語】 PD に対する SCS では、tonic 刺激・burstDR 刺 激で疼痛軽減を認め、burstDR 刺激の方がより効果が高 く、運動機能の改善が得られた。このことから、従来積極 的な理学療法が困難な患者に対して介入の幅を広げること ができ、結果的に運動機能向上に相乗的な効果を発揮し得 る可能性が考えられた。今後はさらに症例を重ね、継時的 な運動機能の維持、改善に関する検討も行う予定である。

慢性疼痛を有するパーキンソン病患者

に対する脊髄刺激療法が疼痛・歩行機

能に及ぼす影響

Key word:脊髄刺激療法、burstDR 刺激、疼痛

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05

○吉野 開1)、松浦 晃宏1)、篠田 亮平1)、石川 衛1)、 苅田 哲也1)、森 大志2) 1)医療法人社団昌平会 大山リハビリテーション病院、 2)県立広島大学 保健福祉学部 【目的】 経頭蓋直流電流刺激(tDCS)は、非侵襲的かつ簡 便に大脳皮質を促通または抑制することができる。近年、 中枢神経疾患患者の治療に対する有用性についての研究が 進められており、その一つに姿勢障害に対する tDCS によ る刺激(前庭 tDCS)の介入効果を検証する試みがある。 しかし、歩行中の前庭 tDCS が歩行にどのような影響を及 ぼすかについての研究報告は少なく、姿勢歩行障害への介 入の有用性についての結論は得られていない。本研究では、 健常成人への前庭 tDCS に対する歩行応答を調べることで、 本法の姿勢歩行障害への介入の可能性を検証することを目 的とする。 【方法】 対象は健常成人8名(24.6±4.1歳)である。対象 者は、7 m 前方の目標物を正対視認後、目隠しをした状態 で目標物に向かって歩行する課題を tDCS 施行中と施行後 に実施した。電極は、左右の乳様突起に配置(右:陽極、 左:陰極)し、2 mA の刺激電流(実刺激)または無電流 (偽刺激)で20分間刺激した。解析は、対象者の両踵部に 設置したマーカーによって記録された歩行軌跡をもとに、 開始地点から目標物までを結ぶ直線と3 m、6 m 地点にお ける左右偏倚量(左を正値、右を負値)を計測し、刺激の 実・偽、刺激の実施中・後、歩行地点の3要因による反復 測定分散分析を行った。有意水準は5% とした。 【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は大山リハビリテー ション病院倫理審査委員会の承認を受け、実施にあたって は全ての対象者に同意を得て行った(承認番号:1801)。 【結果】 偽刺激中の歩行では、3 m と6 m 地点におけるそ れぞれの偏位量の平均が1.35±1.69 ㎝, 3.08±5.35 ㎝で あったのに対し、実刺激中では -0.43±1.84 ㎝, -3.90± 5.84 ㎝ であった。一方、偽刺激後の歩行では、0.24± 1.81 ㎝, 1.38±5.47 ㎝であったのに対し、実刺激後では 1.36±1.90 ㎝, 2.83±6.28 ㎝であった。分散分析の結果、 刺激の実・偽と刺激の実施中・後の間に有意な交互作用が あり(f(1, 7)= 6.79, p= 0.04)、歩行中の前庭 tDCS は進 行方向を優位に右側へ偏倚させた。 【考察】 静止立位中の前庭 tDCS は、陰極側への重心偏倚 をもたらすことが報告されている。しかし、本研究では陽 極側への偏倚が生じた。これは、刺激によってもたらされ た陰極側(左側)への重心偏倚に対し、歩行に伴う動的な 姿勢応答が発現したためと考えられる。この結果は、歩行 中の前庭 tDCS による姿勢応答は、静止立位時とは異なる 可能性を示唆するものであり、さらなる検証が必要である。 しかし、前庭 tDCS は歩行制御応答に変調を加えることが でき、姿勢歩行障害のリハビリテーションへの応用が期待 できる。

前庭への経頭蓋直流電気刺激による

歩行制御応答について

Key word:経頭蓋直流電気刺激、前庭、歩行制御

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○三浦 正和1)、村田 和弘1)、川端 悠士3)、加藤 聡純1) 河野 有亮1)、椎木 栄一2)、田中 浩2) 1)山口県立総合医療センター リハビリテーション科、 2)山口県立総合医療センター 整形外科、 3)JA山口厚生連周東総合病院 リハビリテーション科

【はじめに、目的】 当院では Total Knee Arthroplasty (TKA)患 者 全 例 に 術 後 Continuous Passive Motion (CPM)を実施している。日本理学療法士協会作成の「理 学療法ガイドライン(第1版)」では術後短期使用は推奨グ レード B、エビデンスレベルⅠで膝関節可動域(ROM)の 改善には有効だが、術後長期使用は推奨グレード D、エビ デンスレベルⅠに留まっている。本研究では CPM 実施・ 非実施が術後2週目の膝 ROM, Quality Of Life(QOL)、 歩行速度に影響するか明確にする事を目的とする。なお本 研究は(一社)山口県理学療法士会の助成制度を利用した 研究である。 【方法】 対象は変形性膝関節症の診断で整形外科医1名が 初回片側 TKA を実施した65歳以上の患者で取り込み基準 (HDSR21点以上、術前術側膝屈曲 ROM100°以上、術前 Timed Up and Go test(TUG)13.5秒未満)を満たす7例 (年齢77歳、男4名、入院日数25日)とした。研究デザイ ンは単純ランダム化比較対照試験とし乱数表を使用して患 者を CPM 実 施(Zimmer 社 製 Persona2例、Medacta 社 製 Sphere2例)・非実施(MDM 社製 BKS1例、Medacta 社製 Sphere2例))に振り分けた。CPM 実施群は当院クリ ティカルパス(CP)通り術翌日は理学療法士(PT)により 設定角度約50°で実施、術後2日目以降は看護師により設 定角度110°になるまで1日3時間実施した。CPM 非実施 群は術翌日から PT により自動介助膝屈伸運動を疼痛のな い範囲で50回実施、術後2日目に歩行器歩行を行うが、 歩行実施前に膝関節屈伸運動を50回実施、術後3日目以 降は両群ともに患者の状況に応じて理学療法を実施した。 アウトカムは他動膝 ROM, 最大 TUG, Japanese Knee Osteoarthritis Measure(JKOM)とし術後2週目に測定 を行い、CPM 実施・非実施の2群間で比較した(p <0.05)。 【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は「ヘルシンキ宣言 (2013年10月改定)」を遵守し当院倫理委員会の承認を得 た。患者には十分な説明を行い同意書に署名をいただいた。 【結果】 CPM 実施・非実施の患者背景を2群間比較した結 果、性別に有意差を認めた(n, CPM 実施 vs CPM 非実施、 1 vs 3, p= 0.047)。アウトカムの2群間比較では、膝伸展 ROM(°, -17.5 vs -14.3, 効果量 r 0.208, p= 0.463)、膝屈 曲 ROM( °, 110.0 vs 119, 95%Confidence Interval(CI) -0.599-2.659, 効果量 d 1.027, p= 0.171)、TUG(秒,10.9 vs 11.4, 95%CI -1.346-1.654, 効果量 d 0.154, p= 0.820)、 JKOM(点,44.0 vs 38.0, 95%CI -1.876-1.151, 効果 量 d 0.363, p= 0.597)、疼痛(㎜, 37.0 vs 23.7, 95%CI -1.965-1.086, 効果量 d 0.435, p= 0.529)となった。 【考察】 CPM 実施・非実施において術後運動機能・QOL に有意差はなかった。術後膝屈曲 ROM は効果量が大だが 2群の差は5°未満と誤差の範囲内と考えられる。しかし、 対象患者数が少なくデータがばらつている可能性があるた め症例数の蓄積が必要である。

Total Knee Arthroplasty

患者における

Continuous Passive Motion

使用の

有無が術後運動機能に与える影響

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07

○坂本 隆徳1)、島谷 康司2)、濵﨑 厚志1)、 土石川 勝司1)、松本 眞人1) 1)医療法人紅萌会 福山記念病院、2)県立広島大学 保健福祉学部 【はじめに】 骨盤骨折は全骨折の2割と多くはない。高齢 者の場合では保存療法が選択され、場合により免荷期間が 設けられることもある。今回骨盤骨折後、膝関節の疼痛が 歩行獲得の阻害因子となったが、適切な体性感覚情報の抽 出と処理に着目し介入した結果、良好な経過を示した症例 を経験したため報告する。 【症例】 転倒により右骨盤骨折(AO 分類 typeB)を呈した 96歳女性。HDS-R は28点で認知機能低下は認めなかっ た。両側変形性膝関節症があり、入院以前より軽度ではあ るが、右膝関節に疼痛がみられていた。 【倫理的配慮、説明と同意】 本症例には学会発表への趣旨 の説明を行い、書面にて同意を得た。 【経過】 医師の指示により、約1ヶ月間の免荷期間後、約 2ヶ月間の理学療法を実施。離床開始時点で右膝関節の荷 重時痛を認めた。この時点で右下肢筋力は徒手筋力検査(以 下 MMT)で2~3であり、疼痛による著明な筋力低下は認 めなかった。離床開始より約1ヶ月後、右下肢筋力の MMT は4~5に改善した。しかし、約10 m の歩行をすると右膝 関節に疼痛が出現し、左下肢はすり足様の歩容を呈した。 【体性感覚情報に対する評価】 足部に対して単軸側方不安 定板を用いて評価した。症例は右足部において「わから ない」と認識が困難な場合と、認識できたとしても正し くできておらず、側方傾斜位で水平位と回答する場面が見 受けられた。 【介入】 単軸側方不安定板を用い、足底感覚と足関節深部 感覚に注意を向け、水平位を認識する課題を提示し、徐々 に難易度を上げた。 【結果】 水平位の認識:認識及び自己修正可能。疼痛:介 入前-「痛くてそれどころではない」と発言し、評価困難。 介入後-疼痛評価が可能。NRS は0~1。歩行距離:疼痛 がなく約50 m 歩行可能。歩容:左下肢遊脚期のフットク リアランスの確保が可能。歩行補助具:介入前-4点杖。 介入後-独歩。 【考察】 西上らは変形性膝関節症患者において、歩行時の 内側広筋の筋活動開始時間の遅延、更に、これにより相対 的に外側広筋の筋活動が早くなることで膝蓋大腿関節の接 触部位が外側に偏位し、疼痛が生じる可能性を示唆してい る。そして、この要因を小脳の内部モデルによるフィード フォワード機構の破綻であると述べている。本症例の疼痛 の原因として、長期的な免荷に加えて下肢アライメント変 化によるフィードフォワード機構の破綻が考えられた。ま た、長期的な免荷により、足底感覚刺激に対する応答が制 限されていたこと、さらに骨盤骨折により下肢アライメン トが変化し、適切な体性感覚情報を抽出、処理する過程に 問題が生じていた可能性がある。今回、適切な体性感覚情 報の抽出と処理に着目し介入した結果フィードバック誤差 学習が起こり、小脳の内部モデルの更新によるフィード フォワード制御の改善が得られ、疼痛が軽減したのではな

骨盤骨折後、膝関節の疼痛が

歩行獲得の阻害因子となった症例

―フィードフォワード機構に着目して― Key word:骨盤骨折、疼痛、運動学習

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○青木 辰徳1)、長岡 直1)、田部 伶佳1)、川口 将志1) 田中 正宏2)、井升 江美子3) 1)マツダ株式会社 マツダ病院 リハビリテーション科、 2)マツダ株式会社 マツダ病院 整形外科、 3)マツダ株式会社 マツダ病院 看護部 【目的】 骨粗鬆症予防・治療には、運動の習慣化が有効な 方法の一つとされる。しかし、骨粗鬆症患者への運動指導 も、運動機能の変化を実感できなければ、自主トレーニン グの継続は困難と予想される。また、当院は急性期病院で あり、頻回な運動指導は困難である。  当院では2017年6月より骨粗鬆症患者に対して6ヶ月に 1度の骨粗鬆症定期検診時に運動機能評価として片脚立位・ Time Up and Go Test(以下 TUG)・握力を測定し、評価 結果より運動指導を個別に実施し、最終的に整形外科医師 により骨密度の推移と転倒リスクという形でフィードバッ クを行っている。そこで今回、6ヶ月に1度の運動指導介 入でも、骨粗鬆症定期検診時に運動機能評価を加えること により、患者の危機意識を刺激して、転倒リスクの注意喚 起を促すことで、運動機能の改善が得られるか検証した。 【対象】 2017年6月から2018年4月の期間に当院で骨密度 検査と運動機能評価を実施した463例中、期間内に2度運 動機能評価を実施できた50例(男性11名、女性39名、平 均年齢は78.3歳)を対象とした。 【方法】 片脚立位・TUG・握力を評価し、それぞれの初回 (運動指導前)と2回目(運動指導後)の変化を算出検証し た。統計学的検定は片脚立位と TUG にはウィルコクソン 符号付順位和検定、握力には対応のある t 検定を用い有意 水準を0.05% 未満とした。 【倫理的配慮、説明と同意】 ヘルシンキ宣言に基づき、対 象者に不利益が生じないよう十分に配慮の上行った。 【結果】 統計学的検定の結果より、片脚立位の運動指導前 後の平均は指導前10.38、指導後14.77であり有意に改善 を認めた。TUG の運動指導前後の平均は指導前13.48、 指導後12.30、握力の運動指導前後の平均は指導前18.14、 指導後18.94であり、ともに有意差を認めなかった。 【考察】 歩く動作や物を持つ動作は日常生活で繰り返し 行っており、その中で自然と反復運動を行っている。本研 究においても短期間での単回介入では TUG と握力の改善 に有意差を認めなかったのではないかと考える。一方、片 脚立位のように非日常的な動作に関しては、評価結果の フィードバックと転倒リスクの注意喚起、個別で運動指導 が改善につながったのではないかと考える。今後は運動機 能の改善はもちろん、本当に自主トレーニングを継続して 行われているのか、またモチベーションが下がらないため にはどのように運動指導や注意喚起を行えば治療継続して もらえるかを検討し、更なる運動機能の維持・向上や治療 継続率の向上に努めたい。

骨粗鬆症患者に対する運動指導が

運動機能に及ぼす影響

Key word:骨粗鬆症、運動指導、運動機能

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09

○竹内 拓哉

広島大学大学院 医歯薬保健学研究科 スポーツリハビリテーション学研究室

【目的】 着地動作時の不十分な姿勢制御は足関節捻挫や膝 前十字靭帯(Anterior cruciate ligament:ACL)損傷の 発生との関連が報告されている(Alonso et al., 2009)。ま た、着地動作時の側方動揺は ACL 損傷につながるとされ ている。一方で、ACL 損傷が発生した対象は、損傷しな かった対象と比較して閉眼片脚立位時の単位軌跡長が大き かったとする報告もある(大島ら、2015)。姿勢制御の評 価指標のひとつに足圧中心(Center of Pressure:COP) がある。しかし、着地動作時の COP 軌跡に着目した研究 は少なく、静的な姿勢制御能力との関連、体幹の動揺との 関連も不明である。本研究の目的は対象を閉眼片脚立位時 間の長短により2群に分け、片脚着地動作時の COP 軌跡 ならびに体幹前額面上の動揺を比較することである。 【方法】 対象は過去6か月以内に外傷発生のない健常成人 男性18人(年齢:22.7±2.8歳、身長:172.0±4.4 ㎝、体 重:66.9±9.8 ㎏、BMI:22.7±3.3 ㎏/m2)の非利き脚と した。非利き脚はボールを蹴る際の軸足と定義した。対象 は全例左脚であった。  はじめに、裸足で60秒間の閉眼片脚立位を行い、30秒 以上できたものを高値群、30秒未満のものを低値群に群 分けした。  片脚着地動作時の COP 軌跡の測定にはサンプリング周 波数1,000 Hz の床反力計(テクノロジーサービス社)を用 い、20 ㎝台から前方へのドロップジャンプ着地を行った 後、5秒間、片脚立位を保持した。COP 軌跡は対象の足 長で除して正規化した。体幹の前額面上の振幅は、仙骨の 高さに装着したサンプリング周波数250Hz の加速度計(シ ステムフレンド社)を用いて算出した。加速度データの解 析区間は最大鉛直床反力発生時の前後0.05秒間とした。 両群の比較には対応のない t 検定を用いた。有意水準は 5% とした。 【結果】 高値群は12人(58.4±5.3秒)、低値群は6人(13.7 ±10.6秒)であった。COP 総軌跡長には両群に有意な差 を認めなかった。COP 軌跡の前額方向の振幅は高値群4.1 ±0.9 %、低値群5.0±0.9 % で有意差を認めた(p <0.05)。 体幹前額面上の振幅は高値群7.2±2.1 ㎝、低値群10.3± 2.2 ㎝で有意差を認めた(p <0.05)。 【考察】 閉眼片脚立位時間の低値群は着地動作時の COP、 体幹前額面上の振幅ともに大きかった。閉眼片脚立位時間 が低値のものは動作時の姿勢制御も不十分あり、外傷発生 につながりやすくなっている可能性が示唆された。 【倫理的配慮】 本研究はヘルシンキ宣言に従い、口頭にて 対象に十分な説明を行い同意を得て実施した。

閉眼片脚立位時間と

片脚ドロップジャンプ着地時の

姿勢制御の関係

Key word:着地動作、足圧中心、姿勢制御

P-

10

○中島 幸生 医療法人社団伯瑛会 のぞみ整形外科ヒロシマ 【目的】 変形性膝関節症(以下:膝 OA)の治療を行ってい く中で、内反型 OA の症例で歩行時に患側立脚肢への体幹 側屈を呈する症例をよく目にする。この歩行時に患側立脚 肢への体幹側屈が起こる要因として、膝内反モーメントの 増大を防ぐ歩行戦略や股関節外転筋力の低下、股関節内 転・内旋の可動域制限が影響しているという報告がされて いる。股関節外転筋力と膝 OA の歩容や変形の進行につい ての報告はよく見かけるが、股関節内転・内旋の可動域制 限と膝 OA の関連についての報告はほとんど見かけない。 私自身、臨床を行っていく中で、膝 OA の症例では股関節 の内転・内旋の可動域制限が強まることで内反変形が強ま るのではないかと考える。以前、膝 OA の症例に対して股 関節内転や内旋の可動域を計測したが正常歩行に必要とさ れる可動域を満たしている症例が多かった。しかし、今回 は可動域を計測する際に R1(抵抗の出現)と R2(抵抗に よって制限される)という観点から得られた情報と変形性 膝関節症の症状との関連性についてここに報告する。 【倫理的配慮、説明と同意】 対象者は膝 OA と診断を受け、 本研究の説明に同意された症例15名(KL 分類 Grade0:1 名、Grade1:4名、Grade2:8名、Grade3:2名)。 【方法】 変形性膝関節症と診断を受けた症例を対象者に、日 本整形外科学会・日本リハビリテーション医学会が制定し た方法にて股関節内旋・内転の関節可動域の計測を行った。 【結果】 平均値 股関節内転 R1:4.3°、R2:9° 股関節内 旋 R1:21.7°、R2:28.7° 【考察】 今回の結果より、膝 OA の症例では股関節内転や 内旋の可動域制限はみられたが、正常歩行で求められる角 度より制限をきたしている症例ばかりではなかった。可動 域制限に問題が無いにも関わらず跛行を呈する症例がみら れ、股関節内転・内旋の可動域を最大限まで使えていない 歩行戦略となっていると考える。また、可動域の計測時に R1と R2で差がみられ、この影響もあるのではないかと 考える。今後、膝 OA のアプローチにおいて、可動域制 限が生じている場合はその部分を改善し、歩行動作の中で 股関節内転・内旋を使えるようにしていくことで膝 OA の跛行の改善や進行の予防も行っていけるのではないかと 考える。

変形性膝関節症の股関節内転・内旋の

可動域と歩行への影響について

R1

R2

を比較して― Key word:変形性膝関節症、関節可動域、股関節

参照

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