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日本金属学会誌第 65 巻第 8 号 (2001) 銅基二元系状態図の液相線および固相線におよぼす合金元素の影響 須藤雄一郎 1 矢島健児 1 前義治 1 岩田修一 2 1 三菱マテリアル株式会社総合研究所 2 東京大学人工物工学研究センター J. Japan Inst. Metals

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銅基二元系状態図の液相線および固相線に

およぼす合金元素の影響

須藤雄一郎

1

矢 島 健 児

1

義 治

1

岩 田 修 一

2

1三菱マテリアル株式会社総合研究所 2東京大学人工物工学研究センター

J. Japan Inst. Metals, Vol. 65, No. 8(2001), pp. 688694  2001 The Japan Institute of Metals

Effects of Alloying Elements on Liquidus and Solidus Lines of CopperBase Binary Phase Diagrams

Yuichiro Sudo1, Kenji Yajima1, Yoshiharu Mae1and Shuichi Iwata2

1Central Research Institute, Mitsubishi Materials Co. Omiya 3308508

2Research into Artifacts Center for Engineering, The University of Tokyo Tokyo 1538904

Various copper alloys applied to electric and electronic use undergo the casting process as the first step of production. But a fully systematic investigation of their castability has not yet been attempted. In this work, liquidus gradients and solidification temperature ranges were acquired from phase diagrams of binary copper alloys and were arranged on the periodic table. As a result, it became clear that the liquidus gradients of the same group on the periodic table are almost constant, and elements that enlarge the solidification temperature range exist in the continuous areas around 2A and 6B groups on the periodic table. This result shows that these characteristics above mentioned seem to stem from the nature of the added elements and it is considered that they are also practically useful for estimating the castability of new alloys.

(Received October 27, 2000; Accepted June 12, 2001)

Keywords: copper alloy, liquidus, solidus, castability, solidification temperature range, periodic table, phase diagram

1. 緒 言 リードフレーム,コネクターなどの電気・電子部品に代表 される伸銅品の大部分は製造の第一歩として鋳造を経なけれ ばならない.銅合金の設計においては,強度と導電率のバラ ンスなどに主眼が置かれ,鋳造性はほとんど考慮されていな いのが現状と思われる.しかしながら,鋳造性は鋳塊のみな らず熱間加工材等の歩留りすなわち生産性におよぼす影響が 大きく,工業的には極めて重要である. 合金化が鋳造性にもたらす影響としては,合金成分と炉 材,雰囲気との化学反応および凝固収縮率,熱伝導率その他 の物性変化などが挙げられる.他方,冶金学的に重要な因子 としては,その添加元素濃度における凝固温度範囲が考えら れる.凝固温度範囲での固液共存相においては液相の流動性 が固相により阻害され1),鋳肌割れ,芯割れなどのマクロ組 織的鋳造欠陥および収縮ポロシティなどのミクロ組織的鋳造 欠陥が発生しやすくなる.したがって,凝固温度範囲の大き い合金ほど鋳造が難しくなる.しかし,銅合金に関しても, この種のデータを系統的に取り扱い比較検討した文献等は見 当たらない. 純銅に合金元素を添加すれば,平衡状態図上に例外なく液 相線と固相線に挟まれた固液共存相が発現する.二元共晶型 であれば,この液相線と固相線の温度差すなわち凝固温度範 囲は合金元素添加量の増加とともに増加し,添加量が共晶温 度における合金元素の固溶限となるとき最大となる. 本研究では,可能な限りの添加元素の種類について単位原 子濃度当たりの液相線の温度勾配と凝固温度範囲に相当する 液相線と固相線の温度勾配の差を銅二元系平衡状態図から調 査し,周期律表上において整理したところ,非常に興味深い 結果を得たので以下に報告する. 2. 液相線および固相線の温度勾配の定義 ここでは,液相線と固相線の温度勾配は,純銅に対する合 金元素濃度を徐々に大きくしていった際に最初に現れる共晶 点や包晶点などの反応点を規準とし,そこまでの液相線およ び固相線を直線で近似した. Fig. 1 に共晶型の CuP 二元系の状態図2)の液相線と固相 線と,それを直線で近似した図を示した.Fig. 2 には包晶型 の CuSn 二元系の状態図2)の液相線と固相線と,それを直 線で近似した図を示した.これら 2 つの図は直線からの乖 離が特に大きいものであるが,本論文では二元状態図上で銅 の融点と共晶あるいは包晶などの特異点間の平均的な勾配を 議論の対象とすることとして直線の勾配を採用した.

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Fig. 1 CuP phase diagram (Eutectic reaction type).

Fig. 2 CuSn phase diagram (Peritectic reaction type).

図(Phase Diagrams of Binary Copper Alloys)2)から上述の方

法 によ り求 め た各 二元 系 の液 相線 と固 相 線の 添加 元 素 1 mol当たりの温度勾配を示した.Table 1 中の 1~11 列は 下記の通りである. 1. 元素名, 2. 原子番号Z 3. 元素の族 4. 反応型 5. 反応温度 6. 反応温度と純銅の融点の差DT 7. 反応温度における液相線濃度 8. 液相線の温度勾配DT/CL 9. 反応温度における固相線濃度 10. 固相線の温度勾配DT/CS 11. 液相線と固相線の温度勾配の差DT/CL-DT/CS また,以下にデータ整理上の注意点を記す.   反応温度については実用性を重視し,°C にて示した.   全率固溶型については共晶点などの特異点が存在しな いため,収録されているデータの都合上,Mn, Ni, Au につ いては表中に示した特定温度における液相濃度および固相濃 度から決定し,Pd, Pt については任意に選択した濃度にお ける液相線温度および固相線温度から決定した.   Bi については単純共晶型であるが,99.5 molBi で の反応であるため,濃度 1.05 molにおける液相線温度お よび 800°C における固相濃度から決定した.   表中に~で示される概略値はその値を採用した.また, Y と Se の共晶温度での固溶限はそれぞれ 0.04以下および 0.1以下となっているが 0 と見なした.   二元系状態図が存在しない元素および必要データが欠 落している元素については除外した. 3. 結果および考察 3.1 液相線の温度勾配 液相線の添加元素 1 mol当たりの勾配(Table 1 中の第 8 列)を縦軸に,添加元素の原子番号を横軸にとり,かつ周期 律表での A 族と B 族の原子に分けてそれぞれ Fig. 3 および Fig. 4 に示した.この結果,A 族,B 族ともに同族元素を結 んだ線はほぼ平行になり,族ごとの傾向すなわち周期性が存 在することが判明した. 銅に合金元素を添加すると,多くの場合液相線温度は純銅 の融点より低下し(凝固点降下),それゆえ液相線の勾配は負 の値となる.Fig. 3 に示した A 族では全体的に対象となる 元素の数は少ないが,液相線の勾配は 3A, 2A, 4A, 7A, 6A 族(5A 族についてはデータが無い)の順に負側から 0 に近付 き,純銅に対する影響が小さくなる.8 族元素については, すべての元素で液相線の勾配が正の値をとる.液相線温度を 上昇させるのは B 族元素も含めて 8 族元素のみである.2A を除くと 3A~8 族までの族番号と液相線の勾配におよぼす 影響の順序がほぼ一致している. Fig. 4 に示した B 族元素については,まずマトリクスの 銅と同族の 1B 元素である Ag と Au は液相線温度をほとん ど変化させない.しかし,2B, 3B, 4B, 5B 族と銅との価電子 数の差が大きくなるにしたがい,液相線の勾配の値は小さく すなわち負側に大きくなり,液相線の勾配は急峻になる. 5B 族元素で最小となり,6B 族になると再び上昇する. 代表例として,第 4 周期の元素について A 族および B 族 を通しての液相線勾配の原子番号による変化を Fig. 5 に示 す.A 族でかつ遷移金属である Sc から Ni に至るまで,途 中 Mn を除いて,単調に増加している.B 族元素については Cu から始まるが,Se を除いて単調に減少する. A 族元素については第 4 周期は K から始まるが,そのと き 3d 軌道電子よりも先に 2 つの 4s 軌道電子が充填され, 3A 族の Sc 以降は順に 3d 軌道電子が充填される.これが遷 移元素の発生原因であるが,遷移金属では 3d 軌道に電子が 充填されるのに符合するかのごとく液相線勾配が負の値から 正の値に増大している. B 族元素については第 4 周期は Cu から始まるが,これら の 3d 軌道には既に 10 個の電子が充填されており,そこか ら 4s, 4p 軌道に順次電子が充填されていく.B 族元素では, 4s, 4p 軌道に電子が充填されるのに符合するかのごとく液相 線が今度は負の方向に低下している. Fig. 6 に周期律表上における液相線の勾配のマッピングを 示す.周期律表の両側にそれぞれ 3A および 5B をピークと

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Table 1 The data for the gradient of liquidus and solidus.

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11

Element Z Group Reaction Type Temp. (°C) DT (K) liquidus solidus DT/C L–DT/CS (K/mol) mol DT/CL mol DT/CS Be 4 2A Peritectic 863 -221.6 24.1 -9 13.7 -16 7 Mg 12 2A Eutectic 725 -359.6 23.1 -16 6.93 -52 36 Ca 20 2A Eutectic 917 -167.6 ~10 -17 ~0 -∞ ∞ Sr 38 2A Peritectic 845 -239.6 17.3 -14 ~0 -∞ ∞ Ba 56 2A Peritectic 670 -414.6 36.8 -11 ~0 -∞ ∞ Sc 21 3A Eutectic 865 -219.6 ~13 -17 ~0.5 -439 422 Y 39 3A Eutectic 860 -224.6 9.3 -24 <0.04 -∞ ∞ La 57 3A Eutectic 865 -219.6 ~9.0 -24 ~0 -∞ ∞ Ce 58 3A Eutectic 876 -208.6 9.0 -23 ~0 -∞ ∞ Ti 22 4A Peritectic 885 -199.6 23 -9 8 -25 16 Zr 40 4A Eutectic 972 -112.6 8.6 -13 ~0.12 -938 925 Hf 72 4A Eutectic 988 -96.6 7.75 -12 ~0.4 -242 229 Cr 24 6A Eutectic 1076.6 -8 1.56 -5 0.89 -9 4 Mn 25 7A ― 873 -211.6 38.0 -6 38.0 -6 0 Fe 26 8 Peritectic 1096 11.4 3.5 3 4.6 2 1 Co 27 8 Peritectic 1112 27.4 5.1 5 8.4 3 2 Ni 28 8 ― 1118 33.4 5.1 7 7.8 4 2 Pd 46 8 liquidus 1093 8.4 6.2 1.4 1 solidus 1088 3.4 6.2 0.5 Ir 77 8 Peritectic 1138 53.4 ~4 13 ~8 7 7 Pt 78 8 liquidus 1152 67.4 7.5 9 5 solidus 1114 29.4 7.5 4 Ag 47 1B Eutectic 779.1 -305.5 60.1 -5 4.9 -62 57 Au 79 1B ― 910 -174.6 56 -3 56 -3 0 Zn 30 2B Peritectic 902 -182.6 36.8 -5 31.9 -6 1 Cd 48 2B Peritectic 549 -535.6 44.4 -12 2.07 -259 247 B 5 3B Eutectic 1013 -71.6 ~13.3 -5 ~0.29 -247 242 Al 13 3B Eutectic 1032 -52.6 17.0 -3 15.8 -3 0 Ga 31 3B Peritectic 915 -169.6 21.3 -8 16.3 -10 2 In 49 3B Peritectic 710 -374.6 21.0 -18 10.05 -37 19 Tl 81 3B Monotectic 968 -116.6 14.5 -8 ~0.28 -416 408 Si 14 4B Peritectic 852 -232.6 16 -15 11.15 -21 6 Ge 32 4B Peritectic 824 -260.6 17.5 -15 12.0 -22 7 Sn 50 4B Peritectic 798 -286.6 15.5 -18 7.7 -37 19 Pb 82 4B Monotectic 955 -129.6 15.5 -8 ~0 -∞ ∞ P 15 5B Eutectic 714 -370.6 15.7 -24 3.5 -106 82 As 33 5B Eutectic 685 -399.6 18.2 -22 6.8 -59 37 Sb 51 5B Eutectic 645 -439.6 19 -23 5.8 -76 53 Bi 83 5B liquidus 1072.1 -12.5 1.05 -12 94855 solidus 800 -284.6 0.003 -94867 O 8 6B Eutectic 1066 -18.6 1.7 -11 0.03 -620 609 S 16 6B Eutectic 1067 -17.6 1.48 -12 0.023 -765 753 Se 34 6B Eutectic 1063 -21.6 ~1.8 -12 <0.1 -∞ ∞ Te 52 6B Eutectic 1050 -34.6 3 -12 0 -∞ ∞ する領域が現れることが明確に分かる. 以上の通り,銅合金では液相線の勾配は同族の添加元素で ほぼ一定となり,原子番号の増加とともに周期的に変化する ことを発見した.

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Fig. 3 The gradient of liquidus per 1 mol addition of al-loying element (A group elements).

Fig. 4 The gradient of liquidus per 1 mol addition of al-loying element (B group elements).

Fig. 5 The gradient of liquidus per 1 mol addition of al-loying element in the 4th period.

Fig. 6 Mapping of the gradient of liquidus on the periodic table.

Fig. 7 The solidification temperature range per 1 mol addi-tion of alloying element (A group elements).

Fig. 8 The solidification temperature range per 1 mol addi-tion of alloying element (B group elements).

3.2 凝固温度範囲 固相線については固溶限がほとんど 0 の元素から全率固 溶の元素まで存在するため,固相線の温度勾配は無限小から 正の値まで広範におよぶ.ここでは,問題とする液相線と固 相線の勾配の差のみを表示する.これは,1 mol当りの凝 固温度範囲に相当する.ただし,最大固溶限が 1 mol以下 の元素については外挿値であり,実際の凝固温度範囲は液相 線温度と反応温度の差であることに注意を要する. 液相線の場合と同様に A 族と B 族に分けて Fig. 7 と Fig. 8 に示した.縦軸は対数表示とした.欄外は固溶限が 0 のた め無限大となる元素であり,点線で結んだ.また,値が 0 となる Mn と Au についてはその値を 1 として図示した.

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Fig. 9 The solidification temperature range per 1 mol addi-tion of alloying element in the 4th period.

Fig. 10 Mapping of the solidification temperature range on the periodic table.

Fig. 11 The solidification temperature range versus Zunger's pseudopotential radius ratio.

Fig. 12 The solidification temperature range versus Allred Rochow electronegativity ratio.

Fig. 13 The solidification temperature range versus the rela-tive ordering number.

Fig. 7 に示した A 族元素については,同族を結んだ折れ 線は族番号が大きいものほどグラフ中で下側に位置する.す なわち,同一周期内では,族番号が大きくなるにしたがい縦 軸の凝固温度範囲の値は急激に小さくなる.例えば,第 4 周期では原子番号 20 の Ca 以降 Sc, Ti, Cr, Mn まで単調に 減少し(図中点線◯),Fe, Co, Ni は 0 に近い値でほぼ一定と なる.一方,液相線の勾配とは異なり,凝固温度範囲は同族 元素でも一定値とはならない.また,Fig. 3 と Fig. 7 を比 較すると,2A 族を除いて同一周期では液相線の勾配を急峻 にする元素ほど凝固温度範囲を大きくする傾向にある. 一方,Fig. 8 に示した B 族原子では族番号が小さくなる ほど凝固温度範囲の値は小さくなる.ただし,1B 族の原子 番号 47 の Ag と 2B 族の原子番号 48 の Cd は例外的に大き い.第 3 周期の原子番号 13 の Al 以降 Si, P, S まで(図中点 線◯)と第 4 周期の原子番号 29 の Cu 以降 Zn, Ga, Ge, As, Se まで(図中点線◯),凝固温度範囲の値は単調に増加する. B 族元素についても Fig. 4 と Fig. 8 を比較すると,6B 族を 除いて同一周期内では液相線の勾配を急峻にする元素ほど凝 固温度範囲を大きくする傾向にある. Fig. 9 に特に第 4 周期元素の凝固温度範囲におよぼす影響 を A 族および B 族元素を通して示した. 液相線と固相線の勾配の差すなわち凝固温度範囲は,同族 元素においても一定とはならないため,凝固温度範囲では, 液相線勾配の場合以外の要因も作用していると考えられる. また,添加元素種による液相線の勾配の変化に比べ,固相線 の変化は極めて大きいことから,凝固温度範囲を決定するの

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Table 2 The calculated values of solidification temperature ranges of commercial copper alloys.

Chemical composition(mass) CDA No. DT

Cu C10200 0 Cu–0.04O C11000 17 Cu–0.03P C12200 5 Cu–0.1Ag–0.04O 20 Cu–0.1Ag 3 Cu–0.3Sn–0.04O 20 Cu–0.3Sn 3 Cu–0.5Te–0.008P C14500 33 Cu–0.1Zr C15100 64 Cu–0.8Cr C18200 4 Cu–0.3Cr–0.1Zr 66 Cu–2.3Fe–0.12Zn–0.04P C19400 9 Cu–3.2Ni–0.65Si–0.15Mg C70250 21 は固相線の勾配が支配的であることが分かる. Fig. 10 に周期律表における凝固温度範囲のマッピングを 示す.凝固温度範囲を大きくする元素は周期律表の両端にそ れぞれ 2A および 6B 近傍をピークとし連続して存在するこ とが判明した. 4 他の物性値との関係 このように,本報で定義した Cu 基二元系での液相線勾配 と凝固温度範囲は工業的な数濃度での平均的な値というバ ルクな数値でも周期律表上に明らかな傾向を示すことが判明 した. 次の段階として,凝固温度範囲を支配する因子抽出のため に,HumeRothery の法則3)との類推から原子寸法,電気陰 性度などを検討した.Fig. 11 に Zunger の擬ポテンシャル 原子寸法比4),Fig. 12 に AllredRochow の電気陰性度比5) と本研究の凝固温度範囲との関係をそれぞれ示す.相関があ るとすれば,いずれも横軸の値が 0 近傍において縦軸の凝 固温度範囲が小さい値をとるはずである.しかしながら, Fig. 11, Fig. 12 と も に そ の よ う な 相 関 は 見 ら れ な い . HumeRothery の法則では a 固溶体の固溶限のみを問題と しているが,固相線の勾配は a 固溶体の固溶限だけでな く,その反応温度も問題となる.このため,同様の議論では 説明が付かないものと思われる.さらに,AB 化合物の構造 の分類において成功を収めた Pettifor による相対的序列番 号6)での整理を試みた.相対的序列番号とは周期律表上の元 素を物理的および化学的性質が近い順に一列に再配列したも のである.Fig. 13 にこれを示す.相対的序列番号について も本研究の凝固温度範囲との間に良好な相関は見られなかっ た. 5. 鋳造性係数の提案 添加元素濃度が最大固溶限以下であれば,求めた 1 mol 当りの凝固温度範囲と添加量の積が,その濃度でのおおよそ の凝固温度範囲となる.この値から二元系銅合金の鋳造性の 概略を知ることが可能と考えられる.そこで,1 mol当り の凝固温度範囲を鋳造性評価のための実用的な意味から鋳造 性係数と呼び,k と表記することとする.鋳造性係数 k は, 分配係数 k0と幾何学的に次の関係がある. 鋳造性係数 k=GL-GS=GL(1-1/k0) ( 1 ) ここで GL液相線勾配(K/mol) GS固相線勾配(K/mol) したがって,鋳造性係数は,分配係数と固相線勾配(ある いは液相線勾配)の両方を考慮していることになる. 黄銅,青銅などの高合金を除けば,銅合金では導電率およ び熱伝導性が生命線であるため,これを害するような大量の 合金元素は一般的には添加されない.また,添加量はほとん どの合金において最大固溶限以下である.そこで,添加元素 同士の相互作用を無視し,二元系から求めた鋳造性係数を多 元系に適応可能と考えれば,多元系銅合金の凝固温度範囲 DT は各元素による寄与の和となり DT=kACA+kBCB+kCCC+… ( 2 ) と記される.ここで kAなどは元素 A などの鋳造性係数, CAなどは元素 A などの濃度(mol)を示す.ただし,最大 固溶限が小さいためそれ以上の添加量となる元素については 液相線温度と反応温度の差がその元素による凝固温度範囲に 対する寄与となる. 代表的な実用合金の組成とそれに相当する CDA(Copper Development Association Inc.)規格合金番号7)および求めた

凝固温度範囲 DT の値を Table 2 に示した.ただし,Table 2 中の O および Te は最大固溶限以上の添加量であるので, 両者については液相線温度と反応温度の差をその元素による 凝固温度範囲に対する寄与とした. 定性的ではあるが鋳造現場においてマクロ組織的欠陥であ る鋳肌割れを生じやすいジルコニウム銅,クロムジルコニウ ム銅および C70250 合金,同じくマクロ組織的欠陥である芯 割れを生じやすいテルル銅などの DT は大きな値となって いる.最も一般的な銅であるタフピッチ銅 C11000 の DT も やや大きな値であるが,内部に多数のミクロ組織的欠陥とも 言えるミクロポロシティを含んでいる.一方,C19400 合金 は DT が小さく鋳造も容易であり,特性のみならず製造面 でも優れている. また,青山らによりタフピッチ銅鋳造材の熱間圧延割れに 悪影響をおよぼす不純物として Pb, S, Bi, Se, Te が報告され ている8).これらの元素はいずれも本論文の鋳造性係数の大 きな元素であり,熱間圧延割れにこれらの元素に起因する鋳 造欠陥も関与しているのではないかと推察される. 鋳造性には種々の要因が作用しているが,その一つ要因と してここで示した計算値としての凝固温度範囲をも考慮する ことは新規合金の開発に有効と考えられる. 6. 結 言 銅合金の鋳造性について評価するため,銅二元系平衡状態

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図から元素添加による液相線の勾配および液相線と固相線の 勾配の差すなわち 1 mol当りの凝固温度範囲を求め,周期 律表上で整理した結果,以下の知見を得た.  液相線の勾配は同族の添加元素についてほぼ一定値と なり,また原子番号とともに周期的に変化することを発見し た.  凝固温度範囲を大きくする元素は,周期律表上の 2A 族および 6B 族近傍の連続した領域に存在することを発見し た.しかし,その値は同族元素においても一定とはならな い.また,合金元素単体の物性だけでは説明できない.  本結果は,低濃度の新規銅合金設計におけるおおよそ の鋳造性の予測に実用上有益であると考えられる. 文 献

1) B. Chalmers:Kinzoku no gyoko, (Maruzen, 1971) pp. 217. 2) P. R. Subramaniam, D. J. Chakrabarti, D. E. Laughlin: Phase

Dia-grams of Binary Copper Alloys, (AMS International, 1994). 3) H. Sudo, I. Tamura and T. Nishizawa: Kinzokusoshikigaku,

(Maruzen, 1972) pp. 90.

4) A. Zunger: Structure and Bonding in Crystals, (Academic Press, 1981) pp. 73.

5) A. L. Allred and E. G. Rochow: J. Inorg. Nucl. Chem.5(1958) 264272.

6) D. Pettifor: Bunshikotai no ketsugo to kozo, (Gihodosyuppan, 1997) pp. 13.

7) Japan Brass Maker's Association: Shindohin data book, (Japan Brass Maker's Association, 1997) pp. 27.

8) S. Aoyama, T. Ichikawa and M. Watanabe: Proc. of the 40th Japan copper and brass association (2000) 101102.

Fig. 1 CuP phase diagram (Eutectic reaction type).
Table 1 The data for the gradient of liquidus and solidus.
Fig. 8 The solidification temperature range per 1 mol addi- addi-tion of alloying element (B group elements).
Fig. 10 Mapping of the solidification temperature range on the periodic table.
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