研究成果有体物提供契約における非保証・免責条項 に関する一考察
著者 村田 真稚惠
雑誌名 同志社法學
巻 60
号 7
ページ 693‑725
発行年 2009‑02‑28
権利 同志社法學會
URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000011652
研究成果有体物提供契約における非保証・免責条項に関する一考察六九三同志社法学 六〇巻七号
研究成果有体物提供契約における 非保証・免責条項に関する一考察
村 田 真 稚 惠
(三七一一)
一 はじめに二 研究成果有体物提供契約が有する特性と意義
1検討の趣旨
2研究成果有体物の定義と特色
3研究成果有体物の提供
旨三趣のそと項条責免・証保非 4意の約契供提物体有果成究研義
1検討の趣旨
2非保証・免責条項の規定事項
3非保証・免責条項の趣旨
研究成果有体物提供契約における非保証・免責条項に関する一考察六九四同志社法学 六〇巻七号
四 完全性利益侵害事例における契約責任と非保証・免責条項の機能
1提題問るす対にれそと義疑のいてつに能機の項条責免・証保非起
2瑕と題問的在内の物体有果成究研疵
3責約契の上則義信と為行供提の物体有果成究研任
五おわりに 4従来の議論の修正
一 はじめに 近年、科学技術基本法の制定及び科学技術基本計画の策定を契機として日本の産学連携が活発化し、さらに、知的財
産基本法及び知財産基本計画が大学における知的財産に言及したことにより、大学とその研究成果を取り巻く環境に変化が生じた。また、二〇〇四年四月の国立大学法人化に際し、国立大学法人法において研究成果の普及とその活用が国
立大学法人の業務として定められ (
究進てしと貫一の促知用活・及普の果、的のにるいでん組り取的財極積に用活の産成 ( 、た。るいてれさとっのなと命使な要重こよ研の、在現、は学大本う日、下の況状な 1)
。 2)
ここで、大学の知的財産という場合、必ずしも、特許権のようないわゆる知的財産権としての権利化が可能なものに限られず、もっと広く、研究の成果として普及・活用することが可能な財産的価値を有するものを含めるのが一般であ
る (
は。るたあに産財的知がいなでの権産財的知のそ、てしそも 3)(
h rceaesl’iaerat‘R‘M(、物の体有果成究研が例表代 4)
Material (
’プ携二一世紀型産学官連法手業の構築に係るモデル﹄備事省)といえる。文部科学の﹁﹃大学知的財産本部整 5)
ログラム﹂においても、複数の大学が﹁大学におけるマテリアルトランスファーの現状と問題点﹂をテーマとして調査
(三七一二)
研究成果有体物提供契約における非保証・免責条項に関する一考察六九五同志社法学 六〇巻七号 研究を行っており (
。在るあでろことなん盛が論議、現、、はていつに物体有果成究研 6)
小職は、現在、大学職員としての立場で産官学連携に関する法務業務を行っており、その一環として、研究成果有体 物提供契約(‘Material Transfer Agreement’﹁MTA﹂と略される (
。し解法るじ生て因上起に性特の供釈ののこたい付気にとる論す在存く多が点提そ研及体自物体有果成究び 携てっわ。)もに務実のるい、。その中で同契約には、 7)
本稿は、そのうち、検討の対象を非保証・免責条項に絞ることとする。同条項は、リスク回避のために重要な条項として認識されてきたもので、同契約の標準的な条項として扱われるに至っている (
有一果成究研、で部、らがなしかし。 8)
体物の内在的問題による完全性利益侵害事例においては、同条項によっても意図されているリスク回避が不可能な場合があるのではないかという疑義が呈されている。この疑義は従来の議論をそのまま同契約に当てはめることができるな
ら当を得ているともいえる一方で、大学における研究成果有体物提供の現場感覚からすれば違和感を持たざるをえない点において非常に興味深い。そこで、本稿では、まず、研究成果有体物提供契約が有する特性と意義及び非保証・免責
条項の趣旨について概観する。そして、これらを踏まえたときに、研究成果有体物の内在的問題による完全性利益侵害事例における契約責任について、従来の議論がそのまま妥当し非保証・免責条項で意図されたリスク回避機能に限界が
生じるのかを検討することにより、実務的な観点から問題意識を示したい。
なお、本稿で検討の対象とする研究成果有体物及びその提供契約は以下のものに限定することとする。まず、本稿で、﹁研究成果有体物﹂という場合には、製品と評価しうる物は除くものとする。研究成果有体物の定義は後述するが、一
言で﹁研究成果有体物﹂と言っても広く様々な種類の様々な段階の物を含む。そのため、﹁研究成果有体物﹂の定義に該当するものの中には製品としての販売に馴染むものも含まれうる。しかし、この種の物は通常の製品販売の議論が妥
当すると思われ、研究成果有体物提供契約の特性に着目した議論の対象とはならないからである。次に、本稿において
(三七一三)
研究成果有体物提供契約における非保証・免責条項に関する一考察六九六同志社法学 六〇巻七号
検討の対象とする﹁研究成果有体物提供契約﹂は、大学が、研究成果の普及・活用促進を目的として他大学・研究機関、
企業等に対し研究成果有体物を提供する場面での、日本法を準拠法とした契約とする。もっとも、検討の過程においては、準拠法による相違点が生じない範囲において、アメリカでの議論も参考とする (
。 9)
二 研究成果有体物提供契約が有する特性と意義 1検討の趣旨 ここでは、研究成果有体物提供契約の非保証・免責条項について検討するにあたり、まず、研究成果有体物及びその提供について概観することによって、研究成果有体物提供契約が有する特性を示した上で、同契約の意義について述べ
ることとする。
2研究成果有体物の定義と特色
⑴定義 研究成果有体物提供契約の対象である研究成果有体物とはいかなるものであろうか。 文部科学省の﹁研究開発成果としての有体物の取扱いに関するガイドライン (
に果物体有のてしと成発開究研、はで﹂ 10)
ついて、﹁①研究開発の際に創作又は取得されたものであって研究開発の目的を達成したことを示すもの、②研究開発の際に創作又は取得されたものであって①を得るのに利用されるもの、③①又は②を創作若しくは取得するに際して派
生して創作又は取得されたもの﹂のいずれかに﹁該当する、学術的・財産的価値その他の価値のある有体物である(論
(三七一四)
研究成果有体物提供契約における非保証・免責条項に関する一考察六九七同志社法学 六〇巻七号 文、講演その他の著作物等に関するものを除く)﹂とされている。各大学の規程等における研究成果有体物の定義はそれぞれ若干異なるものの、概ね同ガイドラインの定義に沿ったものである。したがって、この定義が現在の研究成果有
体物の標準的な概念を示すものといえると思われる。具体例を挙げると、微生物、細胞株、マウス、化合物、新材料、土壌、岩石、植物新品種、試作品、モデル品などがこれにあたる。
⑵「物」としての特性
研究成果有体物については、法令上特別の定めがあるわけではなく、民法に定める﹁物﹂として取り扱われることとなる。しかしながら、研究成果有体物は、民法が通常想定していると思われる﹁物﹂とは異なる特色を有する。
その特色としては、まず、研究成果が化体した物である点に価値を有する物であるということが挙げられる。大学の知的財産という場合、特許等の知的財産権のみならず、研究成果有体物も含まれるのは一で前述のとおりである。しか しながら、同じ研究成果であっても、特許等の場合と異なり、研究成果有体物には特別の法令があるわけではない点で、しばしば、その価値の部分をどのように捉えるかが問題となる (
こがるあも合場るなと等明発果成究研るす連関、たま。 11)
とから特許等との関係も問題となることが多い (
。 12)
次に、研究成果有体物はその物の種類と使用方法によっては、複製、増殖、分裂、改変等、民法が想定していた範囲を超える状況が生じるということも特色といえる。具体的には、例えば、細胞株、マウスなどを想定すればその数が次々
と増える可能性があることは容易に想像できる。そのため、研究成果有体物提供契約では、当該提供を行う物のみならず、複製物や改変物の定義、それぞれについての所有権取得その他の扱い等についても事前に合意をするのが通常であ
る。
(三七一五)
研究成果有体物提供契約における非保証・免責条項に関する一考察六九八同志社法学 六〇巻七号
さらに、研究成果有体物は、いわゆる製品とは異なり必ずしも完成品とはいえないということが特色として挙げられ
る。すなわち、大学の研究過程で作製された研究成果有体物は最新の研究成果である。したがって、その性質の全てが解明されているとは限らず、その後の研究によってさらに発展していく可能性があるものであって、いわば発展途上の
物であるといえる。この点においても、民法が通常想定している物とは異なる側面を有すると考えられる。
以上のように、研究成果有体物は、法律上、民法上の﹁物﹂として扱われるものの、その特性ゆえに民法が当初予定
していた範囲には収まりきらない部分を有する﹁物﹂である。
3研究成果有体物の提供 研究開発においては、製品として市販されている物を購入することもある一方、その特性や最新性から特定の研究者 が作製した物が必要となることも多い (
化をで常通がとこう行究る研のそ、てっよにとあ。るるが果成究研の新最けこおに学大、にうよのこけを供提の物体受 か究業企、関機大研、学、、めたのはら他償有果成究研で無機はたま償有。関そ 13)
体した研究成果有体物が提供されることによって他機関における研究開発が促進されることになる。
そして、この研究開発の促進という目的から、しばしば、最新の研究成果を早い段階で迅速に提供することが求めら
れるのが実情である。
さらに、研究成果有体物の必要性についてはどの機関における研究においても共通するところである。そのため、一
つの研究成果有体物に着目するのではなく広い観点で見てみれば、大学、研究機関、企業が相互に有する研究成果有体物を提供し合うことによって研究開発が行われているという関係となっている。このように、いわゆる製品についての
製造業者と消費者という画一的な関係とは異なり、研究成果有体物の提供者と受領者は固定されているわけではない。
(三七一六)
研究成果有体物提供契約における非保証・免責条項に関する一考察六九九同志社法学 六〇巻七号 また、研究成果有体物の提供に際しては所有権を移転せず、契約書上に記載されている使用目的内では一定の制限事由にかからない限り受領者による使用を認め、契約終了時に残存分の返還・廃棄が求めることが多い。この点で、提供
契約の法的性格が問題となるが、これについては一般にライセンス契約に類似する契約ないしライセンス契約の一種であると理解されているものと思われる。
4研究成果有体物提供契約の意義 サンドラ・ショットウェル博士 (
、に例のそ、しとるなとしこつ持く多を由理つとてを的いたし用利を値価な業、商の物体有果成究研持心関ていつにか 有るす有所を物体学果成場研が学大、究は合体るじ生が何に物有大果成究研のそらは 14)
研究成果有体物が誰かに害を与えた場合に訴訟から大学を守りたいということを挙げる。そして、これらのために、大学は研究成果有体物提供契約を通して研究成果有体物の使用及び流通をコントロールするとする (
。ここで指摘されてい 15)
る大学の関心事は研究成果有体物やその提供状況の特性に由来するものであってアメリカと日本で異なるものではなく、そのコントロールの必要性は共通する。
前述のように、研究成果有体物自体にも、その提供状況にも様々な特色があることに鑑みれば、いわゆる製品販売に
比べ、研究成果有体物の提供に際しては、契約により当事者間の認識を共通にし、また、コントロールすることの重要性は高い。そのため、研究成果有体物提供契約においては、一般に、研究成果有体物の定義・権利の所在から、複製物、
改変物の定義と取扱い、使用目的・方法の制限、発明の取扱い、非保証・免責、返還等様々な事項を定める。それぞれの条項は、研究成果有体物とその提供状況の特性を踏まえ、大学が研究成果有体物について有する関心事につきコント
ロールを及ぼすものである。このうち、非保証・免責条項については、ショットウェル博士らが指摘する研究成果有体
(三七一七)
研究成果有体物提供契約における非保証・免責条項に関する一考察七〇〇同志社法学 六〇巻七号
物が誰かに害を与えた場合に訴訟から大学を守るという意味でのコントロールにおいて重要な条項と認識されているも
のである。これについては、三において、詳述する。
三 非保証・免責条項とその趣旨 1検討の趣旨 ここでは、まず、実際の契約において、非保証・免責条項としていかなる事項が規定されるかについて見た上で、同
条項が置かれるに至った趣旨について検討をする。
2非保証・免責条項の規定事項
⑴UBMTAにおける非保証・免責条項
まず、アメリカにおける例として、‘Uniform Biological Material Transfer Agreement’(以下、﹁UBMTA﹂という (
大た生研究所により作成されフ立ォームであり、アメリカ衛国てカ非保証・免責条項を見みる。UBMTAはアメリの 。) 16)
学技術管理者協会 (
ににおいて広く参考さ動れていると言われる活いメの認証を受け、アリ転カの大学の技術移て 17)(
。あの条項例と同様の条項でる以ことが多いように思われる下、際目実際、契約検討のもににする契約書において 。、たま 18)
①非保証条項
‘Any MATERIAL delivered pursuant to this Agreement is understood to be experimental in nature and may have hazardous properties. The PROVIDER MAKES NO REPRESENTATIONS AND EXTENDS NO WARRANTIES OF ANY
(三七一八)
研究成果有体物提供契約における非保証・免責条項に関する一考察七〇一同志社法学 六〇巻七号 KIND, EITHEREXPRESSEDORIMPLIED. THEREARENOEXPRESSORIMPLIEDWARRANTIESOF
MERCHANTABILITY OR FITNESS FOR A PARTICULAR PURPOSE, OR THAT THE USE OF THE MATERIAL WILL
NOT INFRINGE ANY PATENT, COPYRIGHT, TRADEMARK, OR OTHER PROPRIETARY RIGHTS.’(﹁本契約に基づき提供されるいかなる研究成果有体物も本質的に実験的な性質を有するものであり、有害な性質を有す
る可能性があるものであると理解されている。提供者は、明示または黙示を問わず、いかなる事実表明を行わないし、また、いかなる種類の保証もなさない。明示または黙示を問わず、商業性、特定目的適合性、または研究成果有体物の
使用が特許権、著作権、商標権若しくはその他の権利を侵害しないことについて、一切の保証をしない (
②免責条項 。﹂) 19)
‘Except to the extent prohibited by law, the RECIPIENT assumes all liability for damages which may arise from its use, storage or disposal of the MATERIAL. The PROVIDER will not be liable to the RECIPIENT for any loss, claim or demand made by the RECIPIENT, or made against the RECIPIENT by any other party, due to or arising from the use of the MATERIAL by the RECIPIENT, except to the extent permitted by law when caused by the gross negligence or
willful misconduct of the PROVIDER.’(﹁法により禁止される範囲を除き、受領者は本研究成果有体物の使用、保管または廃棄により生じうる一切の責任を負うものとする。提供者は受領者に対し、受領者による本研究成果有体物の使用に帰責または起因して、受領者によりな
される、または第三者から受領者に対してなされた、いかなる損失補填の要求、権利主張または要求についても、提供者の重過失または故意による場合で法が認めている範囲を除き、責任を負わないものとする (
。﹂) 20)
(三七一九)
研究成果有体物提供契約における非保証・免責条項に関する一考察七〇二同志社法学 六〇巻七号
⑵国内の研究成果有体物提供契約における条項例
次に、国内の研究成果有体物提供契約において、どのような非保証・免責条項がおかれているかにつき、具体例 (
る。 を見 21)
①﹁研究開発成果としての有体物の取扱いに関するガイドライン (
﹁(非保証) ﹂別添五 22)
第一二条 本成果物は研究の過程において生み出された実験的・研究的性質を有するものであり、甲は乙に対して明示・黙示を問わず一切の保証をしない。また、甲は乙の本成果物の使用・保有によって発生した如何なる結果についても一 切その責任を有せず、かつ如何なる損害賠償義務(直接、間接損害を問わない。)を負わない。﹂②九州大学 有体物譲渡契約書(案 (
本る験的又は研究的性格を有すもたのであり、甲は乙に対し、実れは甲第四条本件有体物ら、の研究過程において得 )証保﹁( ) 23)
件有体物について如何なる保証も行わない。また、甲は、乙の本件有体物の使用又は保有によって生じた如何なる結果についても一切その責任を有せず、且つ直接又は間接を問わず如何なる損害賠償の責任も負わない。﹂
③奈良先端科学技術大学 試料提供契約書(研究試料取扱規程実施細則様式第四号の一 (
﹁(保証否認及び免責等) ) 24)
第八条 甲は乙に対し、本試料、本派生試料及び本秘密情報に関して、有効性、安全性、特定目的への適性、使用可能性及び知的財産権など第三者の権利の非侵害などに係るいかなる明示的又は黙示的保証もしていない。
2は乙の責任のもとで行われるべきものとし、乙は甲用の使料本研究の実施又は本試、報本派生試料及び本秘密情に
(三七二〇)
研究成果有体物提供契約における非保証・免責条項に関する一考察七〇三同志社法学 六〇巻七号 責任を負わせないものとする。
3試料及び本秘密情報を使用することにより、自己、生本派る乙は、本研究を実施すこ、とにより、又は、本試料第
三者、乙に所属する人、組織及び財産に、損失、クレーム、損害、病気及び傷害等の問題が生じた場合、甲にいかなる損失及び損害も及ぼさないものとし、かかる問題から甲に何らかの損失及び損害が及んだ場合、乙はこれを補償する。﹂
④契約サンプル例﹁(非保証・免責)
第●条 本研究成果有体物は、大学の研究の過程において得られた実験的及び研究的性質を有するものであって、甲は、乙に対し、本研究成果有体物について、明示、黙示を問わず、一切の保証をしない。なお、本項において排除されてい
る保証は、本研究成果有体物の商品性、特定目的適合性、非毒性、安全性その他欠陥がないことの保証のほか、本研究成果有体物の商業利用の適正の保証、本研究成果有体物の提供又は使用が第三者の有する特許権又は著作権その他の権
利(営業秘密を含む)を侵害しないことの保証を含み、かつ、これらに限定されないものとする。
2、その事由のいかんを問わず、一切の責任を負わなしに関成甲は、乙による本研究果能有体物の使用及び使用不い
ものとし、また、乙は、甲、作製者その他本契約に直接又は間接的に関与した甲の従業員を、本契約の履行又は本研究
成果有体物の使用、保管又は廃棄に起因又は関連して生じる一切の権利主張、損害又は責任から防御、補償又は免責するものとする。﹂
⑶非保証・免責条項の規定事項
ショットウェル博士らは、研究成果有体物提供契約について、非営利機関である提供者は①当該研究成果有体物につ
(三七二一)
研究成果有体物提供契約における非保証・免責条項に関する一考察七〇四同志社法学 六〇巻七号
いて非保証だけではなく、②当該研究成果有体物の特定目的適合性についての非保証、③第三者の特許権非侵害につい
ての非保証といった特定の非保証を加えるのが通常であるとする (
。かつに求請のら者て三第、ずらない免の点るあで様同もる責いてし定規もみ者た受、ていつ責免、領 日契の本も、は点の例約同において。様である。まこ 25)
3非保証・免責条項の趣旨 ショットウェル博士らは、非保証条項が設けられる理由として、非営利機関は、①通常、提供する研究成果有体物について、受領者が興味を持っている特定目的適合性の検査または完全に十分な検査を行った上で提供をするわけではな
いこと、②しばしば保証に対応できる保険に入っていないこと、訴訟において防御するための資金源を有していないこと、③一般に特許調査を行うだけの財源または人的資源を有しておらず、非侵害を行うための保険も有しないことを指
摘する (
が合。また、受領者に企業である場 26)(
果い研が業企⑤、とこな成きでルーロトンコ究果学だ成究研はたまきとん有込み組に品製を物体が大いつにかう扱にて 業定と由理るす条規を項て責免なしが、体うよのどを物有④果成究研完企全 27)
有体物を用いて製品開発をおこなったときには、企業は大学の責任を増大させる可能性があること、⑥企業はその財政的構造や保証方針からすれば多くの場合広範な免責の負担を負う財政的基盤や保証体制を有していることを指摘する (
。 28)
これらのうち、②、③及び⑥は大学と企業の体制に起因する問題であり、これらについてもアメリカと日本で共通するが、将来、状況の変化に伴い変化する可能性もある。
一方、①、④及び⑤については、研究成果有体物及びその提供の特性と関連するより本質的な問題と考えられる。 すなわち、二
2にであって、提供時必成ずしもすべての性質果究⑵究で前述のように、研成研果有体物は、最新のに
ついて解明されているとは限らず、いわば発展途上の物である。さらに、二
3の供提の果成究研学で大、にうよたみに
(三七二二)
研究成果有体物提供契約における非保証・免責条項に関する一考察七〇五同志社法学 六〇巻七号 よる研究開発の促進という目的からすれば、最新の研究成果を早い段階で他機関に提供することが求められる。この点、研究成果有体物の性質について研究をつくした状態で他機関に提供するとなれば相当時間がかかり、研究開発の促進の
目的から要請される早期の提供に応えることはできないばかりか、提供できるようになるのかすら不明である。また、当該研究成果有体物を使用した研究開発は様々なことが考えられるところ、そのすべての目的について適合性を提供者
が検証することは現実的に不可能であるし、学術機関である大学での研究の性質上大学での検証に馴染まない事項もあると考えられる。これらのことからすれば、大学において、必ずしも全てについて研究がつくされているわけではない
状態で研究成果有体物を提供するという事態が生じるのは避けられないと思われる。このように、大学は、実際のところ、実験的・研究的な性質を有し有害な性質をもつ可能性がある物とした上で、研究成果有体物を提供せざるを得ない
状況にある。
また、研究成果有体物の使用目的について契約で定めるにしてもそれはあくまで一定の限度に止まり、受領者が具体
的にどのような態様で研究開発または製品化を進めていくかについて、大学がコントロールを加えられるわけでも監督ができるわけでもない。提供後の使用については受領者のコントロールの方が圧倒的に強く及び、提供者である大学に
は、提供後は、現実問題として、危険性について判明したときには受領者に情報提供するなどのごく一定の範囲を除い
て損害発生を防止する可能性は考えがたいと考えられる。
以上のように、非保証・免責条項は、単に大学の体制を理由とした条項ではなく、研究成果有体物の性質、研究成果
有体物提供による研究開発の促進についての社会的要請、大学のコントロール可能性といった研究成果有体物提供契約における本質的な問題を背景として必要不可欠な条件として生まれてきたものであるといえる。それゆえ、非保証・免
責条項は、研究成果有体物提供の契約実務上、標準的な条項として認識され、受け入れられてきたものと考えられる。
(三七二三)
研究成果有体物提供契約における非保証・免責条項に関する一考察七〇六同志社法学 六〇巻七号
四 完全性利益侵害事例における契約責任と非保証・免責条項の機能 1提題問るす対にれそと義疑のいてつに能機の項条責免・証保非起 ショットウェル博士らが指摘するとおり研究成果有体物が誰かに害を与えた場合の問題は、研究成果有体物提供における大学の関心事の一つである。そして、この関心事が、単に大学の体制上の要請に由来するにすぎないものではなく、
研究成果有体物提供契約の特性に起因するものであることは前述のとおりである。この点、研究成果有体物の内在的問題によって受領者の完全性利益が侵害された事例は、研究成果有体物が誰かに害を与えた場合の例の一つであり、非保
証・免責条項によるリスク回避が期待される代表的場面の一つであるといえる。具体的には、提供時には判明していなかった研究成果有体物の有害な性質によって受領者である機関に所属する研究者が受傷した場合が考えられる。
これに対し、近時、研究成果有体物の内在的問題による完全性利益侵害事例については、一部において、非保証・免責条項が規定されていたとしても提供者は責任を免れ得ないのではないかとの疑義を呈する見解がみられる。この見解 は完全性利益侵害事例で、人的損害が発生した場合には免責条項が公序良俗違反として無効となり、提供者が責任を負うことになるとする (
有的、おそらく、内在問解題を有する研究成果は見明のの具体的な論拠はら。かではないが、こそ 29)
体物を瑕疵ある目的物と評価し、いわゆる瑕疵ある目的物の給付による拡大損害の事例として位置づけた上で契約責任を認めるか、または、不法行為責任を認めた上で、人的損害についての免責合意は公序良俗違反で無効となるとの立場
をとることにより、提供者の責任を認めるものと推察される。仮に、このような従来の議論がそのまま研究成果有体物提供契約にも妥当するとすれば、前述の疑義は当を得たものと考えられ、非保証・免責条項の機能には一定の限界があ
るということになるであろう。
(三七二四)
研究成果有体物提供契約における非保証・免責条項に関する一考察七〇七同志社法学 六〇巻七号 しかしながら、この見解は、前述のように大学の研究成果有体物提供の契約実務上の一般的な認識とは異なるものであって、現場感覚からすれば違和感があると言わざるを得ない。
そして、この違和感は、研究成果有体物提供契約に存する特性の問題についての検討を行うことなく、従来の議論をあてはめていることにより生じているものと思われる。
確かに、研究成果有体物の内在的問題による完全性利益侵害事例は、目的物として提供された物により損害が生じた点で、瑕疵ある目的物の給付による拡大損害の事例と類似性は認められることから、一定の範囲においては同様の議論
が妥当するものと考える。
しかし、一方で、瑕疵ある目的物の給付による拡大損害についての従来の議論は通常の製品を想定してなされてきた
ものであると考えられるところ、これまで見てきたように、研究成果有体物の提供と通常の製品の売買等では状況は大きく異なる。また、免責条項の有効・無効については、公序良俗違反が基準となることからすれば具体的に状況を検討
した上で判断されるべき事項である。したがって、研究成果有体物提供契約の特性と非保証・免責条項の意義を考慮してもなお、従来の議論が研究成果有体物提供契約にそのまま妥当するのかは別途検討が必要であると思われる。しかる
に、前述の疑義を呈する見解はこの点について何ら指摘がなく、特性についての考慮がされているように思われない。
そこで、以下、研究成果有体物提供契約の特性を踏まえ、非保証・免責条項が存在する場合の、研究成果有体物の内在的問題よる完全性利益侵害事例における契約責任に関し、瑕疵ある目的物の給付による拡大損害及び免責についての
従来の理論の妥当性について検討する。
なお、完全性利益侵害に関する契約責任の構造については、判例・学説において諸説あるところである。しかしなが
ら、本稿は、実務的な観点から研究成果有体物提供契約の特性に着目した各論的な検討を行うものである。したがって、
(三七二五)
研究成果有体物提供契約における非保証・免責条項に関する一考察七〇八同志社法学 六〇巻七号
完全性利益侵害に関する契約責任構造論については、本稿では直接触れないこととする。
また、不法行為責任については製造物責任の問題 (
。検こでは契約責任の討に限るものとする ここ、らかとるめな約責任との競合も含別、途広く検討が必要と契 30)
2瑕と題問的在内の物体有果成究研疵
⑴問題の所在
給付された目的物に起因する拡大損害においては、従前、当該目的物が瑕疵ある物である場合を想定して議論がされ てきている。そして、これについては、給付義務違反の問題とする見解とそれ以外の義務違反の問題とする見解が存在する (
。 31)
この点、通常の製品の場合と異なり、研究成果有体物は実験的・研究的性質を有するいわば進化途上の物であることからすれば、そもそも内在的問題が存在する場合にもそれが直ちに瑕疵と評価できるかについて検討を要するところと
考えられる。
そこで、まず、この点について検討する。 ここで、瑕疵とは、﹁目的物の物質的な欠点 (
が例採用するのこ判・れ通説の立場であるを ( い、がるあが争をはいう。主観的瑕疵概念採﹂用するか否かについてを 32)
、行任、債務不履責保任の場面では責担﹂。瑕るなと題問が疵疵瑕、﹁点のこ 33)
その趣旨からして契約上予定されていた性質を有さない物が給付された点が問題となるのであるから、﹁瑕疵﹂の有無は当事者の意思に基づく給付義務と表裏の議論と言い得る。したがって、主観的瑕疵概念を採用する判例・通説の見解
は相当であると考える。
(三七二六)
研究成果有体物提供契約における非保証・免責条項に関する一考察七〇九同志社法学 六〇巻七号 以下、①その物としての一般的性質を欠くことにより客観的に欠点が認められるか(以下、﹁客観的基準﹂という。)、及び②契約において予定された使用目的に適さないことにより主観的に欠点が認められるか(以下、﹁主観的基準﹂と いう。)の基準により (
。に評価しうるかつ疵いて検討すると瑕物、題問的在内のを体有果成究研 34)
⑵客観的基準による検討
まず、客観的基準により、研究成果有体物の内在的問題を瑕疵と評価できるであろうか。
二
べるで物の上途展発ばわいする有を性能可るれさ製作あ。物究するす有が物体有果成研まもしず必に時供提、たが良改 2るあで品成完、は物体有果成究研、にうよたべ述でこ⑵が、てっよに究研の後のそり通な異はと品製るあで常と
ての性質について研究がつくされているわけではない。このことからすれば、むしろ、未だ解明されていない問題があることが通常の状態であり、一般的であるとも考えられる。このように研究成果有体物の場合には、何をもって一般的
性質というのかは明確ではない。
さらに、製品の場合、通常、その規格、用途及び安全性の基準等が決まっていることから、何らかの問題が発見され
たときに、それを客観的に欠点と評価しうるか否かは比較的明確である。一方、研究成果有体物の場合は、何か問題が
見つかったとしてもそれが必ずしも欠点であるとは言えない。一見欠点とみられる問題であっても、研究開発という視点から見れば、新たな発明や研究の成果といい得るという側面を持つ。例えば、同一の問題が、各受領者の意図する使
用目的によって欠点といいうることも逆に新たな効用等と評価されることもありうる。また、受領者の意図する使用目的にその物が適合しないということ自体が価値のある発見と評価される場合も考えられる。したがって、研究成果有体
物の場合、そもそも、内在的問題について客観的に﹁欠点﹂という捉え方ができるのか自体が明らかではない。
(三七二七)
研究成果有体物提供契約における非保証・免責条項に関する一考察七一〇同志社法学 六〇巻七号
以上のことからすれば、研究成果有体物の瑕疵の存否について、客観的基準により決することは極めて困難であって、
主観的基準によらざるを得ないものと考えられる。
⑶主観的基準による検討
それでは、主観的基準により、研究成果有体物の内在的問題を瑕疵と評価できるであろうか。 この点、研究成果有体物提供契約においても使用目的が定められることから、一般的には、この目的に適するか否かのという主観的基準は想定しうるものと思われる。
しかしながら、研究成果有体物自体及びその特定目的適合性についての非保証について合意がある場合には、契約成立にあたり当事者は内在的問題が存在することや使用目的に適合しないことも想定されることを認識していたのであ
り、そのような事態が生じたとしてもそれも契約で予定されていた範囲内と考えられる。
この点、非保証・免責条項の記載が一般的に過ぎて、そのすべてについて受領者が認識しているとは言えないのでは
ないかという指摘も考えられる。しかし、研究成果有体物の特性からすればこれ以上の特定の方法はない。また、受領者の特性に鑑みると、受領者は一般的な記載であったとしても非保証・免責条項により意図されるところは十分理解、
認識し、契約を締結しているものと考えられる。
よって、非保証の合意に鑑みると、主観的基準によっても、内在的問題を瑕疵と評価しえないと考える (
。 35)
⑷小括 以上により、研究成果有体物及びその提供の特性並びに非保証の合意に鑑みると、研究成果有体物の内在的問題につ
(三七二八)
研究成果有体物提供契約における非保証・免責条項に関する一考察七一一同志社法学 六〇巻七号 いて瑕疵と評価できないと考えられる。
したがって、提供された研究成果有体物に内在的問題がある場合にも給付義務違反は認められない。 3責約契の上則義信と為行供提の物体有果成究研任
⑴問題の所在
完全性利益侵害については、給付義務自体に不履行が認められない場合においても、その他の義務違反が認められる ことによって一定の範囲で契約責任が発生することは、現在、判例及び学説において共通すると思われる (
。 36)
それでは、内在的問題が瑕疵と評価されないとしても、そのような研究成果有体物を提供する行為について提供者に
注意義務違反が認められるであろうか。
以下、給付目的物の瑕疵による拡大損害について信義側上の付随義務違反の問題として扱ったとされる三つの裁判例 (
37)
を概観した上で、それらの事案と比較しつつ、研究成果有体物の内在的問題により損害が生じた場合の責任について検討をする。何故なら、瑕疵の有無という相違があるものの目的物として提供された物により損害が生じた点で、なお、
事案に類似性が認められ、また、信義側上の付随義務違反の問題とされている点で給付義務自体に不履行が認められな
い場合にも同様の契約責任が認められる余地が残されているからである。
⑵裁判例についての検討
まず、給付目的物の瑕疵による拡大損害を信義則上の付随義務違反の問題として扱ったとされる裁判例について、注
意義務の発生根拠及びその内容に言及した部分を概観する。
(三七二九)
研究成果有体物提供契約における非保証・免責条項に関する一考察七一二同志社法学 六〇巻七号
①岐阜地大垣支判昭四八・一二・二七判時七二五号一九頁
本件は、サルモネラ菌に汚染された卵豆腐による集団食中毒に罹患したうちの死亡した二名の遺族が製造者、卸売業者、小売業者に対し、損害賠償請求を行った事案であって、売主である小売業者の責任において信義則上の付随義務が
問題となった。
本判決は、﹁売買契約の売主は、買主に対し、単に、売買の目的を交付するという基本的な給付義務を負っているだ
けでなく、信義則上、これに付随して、買主の生命・身体・財産上の法益を害しないよう配慮すべき注意義務を負っており、瑕疵ある目的物を交付し、その瑕疵によって買主のそのような法益を害して損害を与えた場合、瑕疵ある目的物
を交付し損害を与えたことについて、売主に右のような注意義務違反がなかったことが主張立証されない限り、積極的債権侵害ないし不完全履行(以下単に積極的債権侵害という)となり、民法四一五条により買主に対して損害賠償義務
がある。そして、そのような売主の契約責任は、単に買主だけでなく、信義則上その目的物の使用・消費が合理的に予想される買主の家族や同居者に対してもあると解するのが相当である。﹂とした上で、﹁食品の安全性は、直ちに人間の
生命・健康に影響を及ぼすもので極めて重大であるのに、消費者は、その安全性を確かめる適当な手段を持たず、食品販売業者である売主を信頼し、食品を安全であると信じて買う外ないのに対し、食品販売業者は、消費者より多くの安
全性確認・確保の措置を直接若しくは卸売業者を通じて製造業者等に対してとり得る立場にあり、食品販売を業としてそれによって収益を挙げているのだから、食品販売業者は売主として、買主の生命・身体・財産上の法益を害しないよ
う食品の安全性確認確保の極めて高度の注意義務を負っていると解するのが相当である。﹂として注意義務の内容を示している。
(三七三〇)
研究成果有体物提供契約における非保証・免責条項に関する一考察七一三同志社法学 六〇巻七号 ②横浜地判平三・三・二六判時一三九〇号一二一頁 本件は、ペットショップから購入し飼育していたインコがオウム病に感染していたため、買主ら家族がオウム病性肺
炎に罹患し、一名が死亡、他の者が治療を受けることになったことから、買主らがペットショップをテナントとしたスーパーに対し損害賠償請求を行った事案で、売主であるペットショップの責任に関して信義則上の付随義務が問題とな
った。
本判決は、①の判決と同様、﹁一般に、売買契約の売主は、買主に対し、売買の目的物を交付するという基本的な給
付義務を負う他に、信義則上、これに付随して、買主の生命、身体、財産上の法益を害しないように配慮すべき注意義務を負っており、瑕疵ある目的物を買主に交付し、その瑕疵によって買主の右のような法益を害して損害を与えた場合
には、積極的債権侵害ないし不完全履行として、民法四一五条により損害賠償義務があるというべきである(なお、右の契約責任は、信義則上その目的物の使用、消費等が合理的に予想される買主の家族や同居者に対しても及ぶと解する
のが相当である。)。﹂としている。そして、本件において、﹁動物の売主に課される買主及びその家族等の生命、身体、財産の安全性について配慮すべき注意義務の内容、程度については、売買の目的となった動物の種類、その動物が人間
に対してもたらすおそれのある害悪の内容およびその防止方法、売主と買主それぞれが有しうる右害悪についての認識
および防止手段の程度など諸般の事情を総合的に考慮してこれを決すべき﹂とした上で、事実認定に基づき、﹁昭和五八年二月当時のペット販売業界では、オウム病の危険性が相当程度ポピュラーになっていたものと推認することができ
る。そして、これに対する業界の啓蒙活動や予防対策も始まっていたのであるから、インコなどの鳥類を顧客に販売する業者には、オウム病について感心をもち、機会をみつけては愛玩動物協会の講習会等に参加するなどしてその知識習
得に努め、送品である鳥の健康状態についてきめの細かい観察を行い、必要があればテトラサイクリン系薬剤入りの餌
(三七三一)
研究成果有体物提供契約における非保証・免責条項に関する一考察七一四同志社法学 六〇巻七号
を購入して鳥に与え、あるいは、卸売業者ないし生産業者に対し、かかるオウム病クラミジアの人に対する感染防止を
念頭においた飼育方法の説明を行う(たとえば、口移しで餌をやらない⋮⋮)など、自己の販売した鳥からの感染による顧客ないしその家族に対するオウム病の発症の予防に努めるべき注意義務があったというべきである。﹂と判示する。
③岐阜地裁高山支判平四・三・一七判時一四四八号一五五頁
本件は、家畜飼料中にトキソプラズマ原虫が混入していたことから飼育中の母豚にトキソプラズマ病が集団発生した
ことから、飼料の製造業者及び販売業者に対し損害賠償請求を行った事案であって、販売業者の責任について信義則上の付随義務が問題となった。
本判決は、﹁被告児島商店には、本件売買契約の売主として、本件商品の給付義務のほか、抽象的には、契約当事者の信義則上の付随義務として、商品である食肉用家畜飼料にトキソプラズマ原虫のごとき病気の原因体が混入しない状
態でこれを買主に引き渡すべき注意義務があったものと解するのが相当であり、売主において、右注意義務違反のなかったことを出張・立証しない限り、不完全履行として、民法四一五条により買主に対し損害賠償義務があると解するの
が相当である。﹂とした上で、﹁他方、商品に本件のごとき欠陥のあった場合であっても、民法の過失責任の原則からすると、売主が、商品の安全性を点検できる立場にない単なる小売業者に過ぎない場合には、その結果回避可能性がない
から、具体的には右注意義務は発生せず、その責任を認めるのは相当でない。これを本件につき検討するに、本件のごとく、本件商品に総発売元として自己の名を表示した販売業者である被告児島商店は、前期 ママ一認定の事実によれば、製
造者である被告日産化工との間において、本件商品の流通を支配する契約関係を締結していたものと認められ、従って、買い手に対しては、その商品につき、製造業者とともにその製造・販売の過程で生じた商品の瑕疵につき、責任を負う
立場にあったものというべきであり、他方、製造者である被告日産化工に対しては、製造過程において欠陥商品が生産
(三七三二)
研究成果有体物提供契約における非保証・免責条項に関する一考察七一五同志社法学 六〇巻七号 されることのないよう、指示・監督しうる立場にあったものと解するのが相当である。﹂として具体的に注意義務が発生するかについて認定している。
これらの裁判例は、いずれも﹁買主の生命・身体・財産上の法益を害しないよう配慮すべき注意義務﹂を信義則上の付随義務としており、瑕疵ある目的物の給付については注意義務違反の態様として扱っていると解される。また、抽象
的には売主・買主という関係性によって信義則上の付随義務が発生するとしながらも、それによって直ちに義務違反の問題として論じるのではなく、具体的な注意義務の発生について事案に即した検討を行うという二段階の構造をとって
いる点で共通する。この具体的な注意義務については、①の判決と②の判決は様々な観点から検討しているのに対し、③の判決では結果回避可能性のみが指摘されているが、これは③の事案において被告である販売業者からこの点に関す
る主張があり特に問題となっていたことによるものと思われる。
⑶研究成果有体物の提供者に生じる信義則上の注意義務について
⑵の裁判例はいずれも通常の製品の売買の事案である。しかしながら、当事者間に信義則に支配される関係が生じる
という点においては、研究成果有体物提供契約においても異ならない。また、そのため、売主と同様に、提供者にも、
抽象的には、信義則上、受領者及び提供された研究成果有体物を使用する研究者の﹁生命・身体・財産上の法益を害しないよう配慮すべき注意義務﹂が認められると考える。
もっとも、信義則が、﹁私権の行使や義務の履行は、相手の信頼を裏切らないように、誠意をもって行わなければならない (
者つ的目を節調の害利の間の⋮る立すに係関律法に互相﹁ういと﹂と 38)(
意が注な的体具、てったし。るあでのも﹂ 39)
義務の存否、内容及び程度については、⑵の裁判例のように事案に則して具体的に検討されるべきものである。
(三七三三)
研究成果有体物提供契約における非保証・免責条項に関する一考察七一六同志社法学 六〇巻七号
⑷具体的注意義務について
それでは、非保証・免責条項を定めた上で研究成果有体物提供を行った場合、提供者は信義側上いかなる注意義務を負うのであろうか。以下、⑵の裁判例で取り上げられている、目的物の種類、予想される害悪の程度、当事者の害悪に
対する認識及び防止可能性、提供者の収益の観点に、非保証・免責条項の存在を加えて、具体的な注意義務について検討をする。
第一に、目的物である研究成果有体物は実験的・研究的性質を有する物であり、その有害な性質を有する可能性がある物であるという点において危険性が認められる。しかし、これは研究または開発のために用いる物であり、未知の危
険も想定した状況のもとで使用されることが想定された物である。そのため、危険性が認められる物であるとしても、一般人が日常生活において使用する通常の製品とは同一に論じられない。
第二に、予想される害悪については、研究成果有体物の実験的・研究的性質からすればどのような害悪がどの程度の可能性で発生するかについては不明であると言わざるをえず、多大な損害が生じるおそれもある。他方で、研究成果有
体物が研究者により研究施設で使用される物であり、前述のように未知の危険も想定した状況のもとで使用されることが前提とされている。そうであれば、第三の点とも関係するが、使用者の適切なコントロールによって、仮に問題が発
生したとしても害悪を一定程度に止めうる可能性が存在する点において、通常の製品とは異なる。
第三に、研究成果有体物提供契約の当事者は前述のとおり大学、研究機関、企業同士(実際に取り扱う者は研究者同
士)であり対等の立場であって、製造者・流通業者と消費者というような立場に大きな相違が見られるケースとは異なる。したがって、研究成果有体物から生じる問題及び防止手段についての知識という点においては、提供者も受領者も
同等の立場にあると考えられる。この点、提供者が作製者である場合など提供者であることにより特に知りうる安全性
(三七三四)
研究成果有体物提供契約における非保証・免責条項に関する一考察七一七同志社法学 六〇巻七号 についての情報が存することも考えられるが、受領者の特性からしても、その情報を入手さえできれば、通常、自己において対策を取りうるものと考えられる。また、三
3後よのどに的体具が者領受、供で提、は者供提、にうよの述前う
に研究成果有体物を扱うかについてコントロールを及ぼせないし、研究成果有体物の内在的問題がどの程度の損害を引き起こすかについては受領者の具体的な使用方法が密接に関係することも十分考えられる。その意味では、提供後は、
提供者が害悪発生防止について直接コントロールを及ぼせる可能性がほぼないと考えられるのに対し、受領者のコントロール可能性は極めて高いと言える。さらに、提供者による提供前の安全性確認の可能性については、確かに、当該研
究分野において研究成果有体物を提供する際に通常なすべきと認識されている事項を無視した安易な提供は容認しえないが、それ以上の行為を提供者に求めることは現実的に不可能であると思われる。何故なら、理論上は可能であったと
しても実際にすべての安全性が確認しえるものであるか不明であるし、仮にそれがたとえ時間等をかければ物理的に手段はないとはいえないとしても、三
3成められる研究果ら有体物提供のス求かで研前述のような究請開発の促進の要ピ
ード性や学術機関である大学での研究の性質からして実情にそぐわないことは明らかであると思われるからである。
第四に、研究成果有体物の提供については有償で行われることもあるが、非保証・免責条項を規定する場合にはその 内容を前提とした価格が設定されるのが通常であると考えられる (
がも者供提、にち直、てっを点の益収、てっがたし。 40)
内在的問題の危険を引き受けなければならないとは考えられない。
これらの事情を併せて考えると、提供者に対し、信義則を根拠に、当該研究分野において研究成果有体物を提供する
際に通常なすべきと認識されている事項を無視した安易な提供を避けるというような注意義務を超えた高度の注意義務を課すことは当事者間の公平を欠くこととなると思われる。
以上に加えて、非保証・免責条項において、両当事者は、研究成果有体物を実験的・研究的性質の物であることを確
(三七三五)
研究成果有体物提供契約における非保証・免責条項に関する一考察七一八同志社法学 六〇巻七号
認した上で、提供者が研究成果有体物自体及びその特定目的適合性について何らの保証もしないことを定め、かつ、提
供者の免責について合意していることからすれば、受領者においても研究成果有体物の安全性についての信頼を有しているとは言えない。したがって、信義側によって図られるべき提供者と受領者の利害調節の問題は存在しないと言い得
る。もっとも、この点については、人的損害が発生した場合の免責条項の有効性とも関連するため、⑸において詳述する。
⑸免責条項の有効性
契約における免責条項は、人的損害については公序良俗違反によりその効力が認められないというのが一般的である (
、なに判断をしなければならい慎のは当然である。しかし重ははてかに、人的損害についてその重大性から免責につい確 。 41)
危険の引き受けの法理や製造物責任法において明文上定められている免責事由の存在から明らかであるように、人的損害であることのみをもって一切免責が認められないわけではない。したがって、免責条項が公序良俗違反として無効に
なるか否かについては、そのほかに、条項の内容及び趣旨、事案において有する機能等の具体的な事情も考慮して判断がなされるべきものと考える。
ここで、研究成果有体物提供契約における免責条項についてみてみると、これまで述べてきたように、研究成果有体物及びその提供の特性に基づく研究成果有体物提供契約における本質的な要請より生じたものである。そして、このよ
うな点に鑑みれば、研究成果有体物提供契約における免責条項は単に責任分担を定めたものではなく、その背景には、本来的な危険性という点で危険の引き受け法理と共通する考え方があり、また、研究成果有体物が最新の研究成果であ
る点に鑑みれば内在的問題は当時の科学・技術水準では認識し得なかったという事情が存すると言える。さらに、研究
(三七三六)
研究成果有体物提供契約における非保証・免責条項に関する一考察七一九同志社法学 六〇巻七号 成果有体物提供の特性と非保証・免責条項の意義を考慮してもなお提供者に責任が残るとすれば、研究成果有体物の提供は控えられるようになり、研究開発活動に多大な影響が及ぶ事態も考えられる。
以上の点からすれば、研究成果有体物提供契約における免責条項により社会秩序が破壊されるとは考えられず、また、その内容は不合理なものではないと考える。したがって、研究成果有体物提供契約においては、一般的には (
免責条項は 42)
公序良俗違反と認められず、有効であると解する。
なお、仮に、この点について批判が存在するとしても、少なくとも、⑷で検討したように、この条項の存在を除いて
も信義側上の注意義務について否定すべき事情がある場合に、これらと併せて、免責条項の存在を考慮するという範囲においては、その機能が否定される理由はないと思われる。
⑹小括 以上により、提供者が当該研究分野において研究成果有体物を提供する際に通常なすべきと認識されている事項を遵守せずに安易に研究成果有体物を提供したような場合を除き、信義側上の注意義務違反は認められず、研究成果有体物
の内在的問題により損害が生じたとしても、提供者に契約責任に基づく損害賠償義務が認められるわけではないと考え
る。
4従来の議論の修正 以上のように、まず、研究成果有体物の特性と非保証条項の存在に鑑みれば研究成果有体物の内在的問題が瑕疵と評
価しえない点において、瑕疵ある目的物の給付による拡大損害の議論とは状況が異なる。したがって、研究成果有体物
(三七三七)