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社 会福 祉 にお け る社 会 と個 人 の価値 対立 岡村理論 と三浦理論 の批判 的検討
岩 崎 晋 也
〔要 約 〕
社 会福 祉 が対 象 とす る問 題 は、社 会 が 問題 解 決 に一 定 の責 任 を有 す る と い う 有 責 性 と普 遍 的 なサ ー ビス のみ で は解 決 で きな い とい う対 処 の個 別 性 を特 徴 と して い る。 しか しこの こ とは、 不可 侵 領 域 と され て き た個人 の価 値 レベ ル に社 会 が援 助 と い う形 で介 入 す る こ とを伴 い、 個 人 の主体 性 との関 係 で 不 可 避 的 に 社 会 と個人 の価 値対 立 が 発 生 す る。
これ に対 して 、 岡村 理 論 は この価 値 対 立 を止 揚 しよ う と試 み 、三 浦 理 論 は結 果 と して この 問 題 を社 会 福 祉 か ら切 り離 そ う と して い る。 しか しこれ らの試 み は いず れ も限界 を有 して い る。 社 会福 祉 が価 値 対立 の問 題 に対 処 す るため に は、
個 人 の 価値 レベ ル に介 入 す る価 値 的正 当性 を 自 らの論 理 の 中 に組 み入 れ る必 要 性 が あ る。
〔キ ー ワ ー ド〕
社 会 福 祉 理 論 、 価 値 的 正 当性 、 主 体 性 、市 民 、契 約
1.は じ め に
社 会 福 祉 は 、社 会 の価 値 レベ ル で の問 題 設 定 と個 人 の価 値 レベ ルで の問 題 設 定 とい う二 つ の視 点 を統 合 す る こ とを理 論 的 な課 題 と して きた。 例 え ば、 吉 田 久一(1974)は そ の著 「社 会事 業 理論 の歴 史 」で 、「社 会 事業 理論 にお いて 歴史 的社 会 的 視点 と主 体 的 内在的 視 点 の統 一 は極 めて 困難 な課題 で 」(p.333)あ り、
「『問題 』 と 『人間 』 の関 係 に は深 淵 が 横 たわ り、 そ の理 論 的説 明 が 容 易 で な い こ とは事 実 で あ る」(p.5)と 記 して い る。
この課 題 に対 して 、 岡 村重 夫 は 「社 会=個 人相 互責 任 の原 則 」 を も とに社 会
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人 文 学 報Na272(社 会 福 祉 学12)1996.3と個 人 の価 値対 立 を止揚 しよ うと試 み 、三 浦 文夫 は対象 を 「need」 と 「needy」
に分 け、前 者 に 「契 約 」 の論理 を持 込 む こ とに よ って 、結 果 と して 価 値 対立 を 社 会 福 祉学 か ら切 り離 そ う と した。
本 稿 は 、 岡村 ・三 浦 の いず れ の理 論 を採 用 して も、社 会 と個 人 の価 値対 立 状 況 を止 揚 また は切 り離 す こ とが で きず 、 これ に対 処 す るた め に は価 値 的正 当性 とい う基 準 を理 論 に組 み 込 ま ざ るを得 な い こ とを 論 じよ う とす る もの で あ る。
社 会福 祉 に限 らず 現 実 へ の介 入 を必 要 とす る領 域 に お いて は、 その 対象 とな る問題 を発 見 す る論 理 だ けで な く、問 題 を解 決 す る論 理 が 必 要 で あ る。
一 般 的 な社 会 サ ー ビス の場 合 、 そ の問 題 発 見 の 論理 は、 あ くまで社 会 の価 値 レベ ル で問 題 が 認 識 され る過 程 を 明 らか に し、 問 題解 決 の 論 理 は、 その問 題 を 有 す る抽 象 化 され た個 人 を想 定 して、 そ の者 が 問題 を解 決 で きる よ うにサ ー ビ
スを用 意 す る と ころ まで を 明 らか にで きれ ば よ い。つ ま りそ のサ ー ビス を用 意 した事 に よ って 、 社 会 の 価値 レベ ルで 問 題 が 減少 したか ど うか が 問題 とな るの で あ る。 こ う した論 理構 成 に お いて は、 具 体 的 に問題 を 抱 え る個 人が 、個 人 の 価 値 レベ ル で 問 題性 を認 識 し、 用 意 され たサ ー ビスを 利用 して 実 質的 に問 題 を 解 決 で きるか ど うか と い う点 は、 次 元 が 異 な る問 題 と して 、 切 り離 され る。
しか し社 会福 祉 サ ー ビス の場 合 、 その 対象 者 は 、置 か れ て い る社 会 的 環 境 や 自 らの能力 の 障害 に よ り、 単 にサ ー ビス を準 備 しサ ー ビス の情 報 を提 供 す るだ けで は、個 人 の 問題 発 見 か ら解 決 に至 る系 が 十 分 に機 能 しな い事 を前 提 と して きた。 っ ま り社 会 福 祉 にお いて は 、本 来 個 人 の主 体 性 とい う点 か ら社会 が介 入 しな い領 域 とされ て きた個 人 の 問題 発 見 か ら解決 に至 る系 に、 援 助 とい う介 入 を盛 り込 む こ と、言 いか えれ ば 「他 人 ごとでは な い」(一 番 ケ瀬1976,p.19)問 題 と して、社 会 が一定 の責 任 を 持っ 必 要性 を認 め て きた ので あ る。 その結 果 、社 会 福 祉 実 践 にお いて は 、 い った ん 社 会 の価 値 レベ ル で 問題 が 発 見 されれ ば 、個 人 が 問 題 と認 識 して いな い場合 で も、社 会 は その 認識 を迫 り、 問 題 解 決 に個人 が主 体 的 に参 加 す る こ とを求 め て きた。
しか し問 題 発 見 か ら解 決 に至 る系 が十 分 に機能 して いな い とい う前 提が あ る とは いえ、 個 人 は あ くまで個 と して の独 自性 を保 持 しよ う とす る主 体 で あ る こ とに変 りは な い。 こ こに不可 避 的 に社 会 と個 人 の価 値 対 立 が 発生 す る1}。
社会福祉における社会と個人の価値対立
一岡村理論と三浦理論の批判的検討
59社 会 福 祉 学 は 、個 人 の主 体 性 を ま った く無 視 して 社 会 の価 値 レベ ル の判 断 を 個 人 に押 しっ け る こ と も、 個 人 の価 値 レベ ル を尊 重 して 他 の 一般 社 会 サ ー ビス と同様 にそ の 領域 に踏 み込 ま な いで済 ます こ と もで きず 、社 会 と個 人 の価 値 対 立 が 不 可避 的 に起 こ る状 況 の中 で論 理 を構 築 して きた ので あ る。
こ う した状 況 に対 処 す る理 論 的態 度 と して 、 い くつ か の立 場が 取 り得 る。
第一 は、社 会 の価 値 レベ ルか ら個 人 の価 値 を統 合 しよ う とす る立 場 で あ る。 こ の場 合 の社 会 の 価値 レベ ル とは、必 ず し も体 制的 な価 値 に個 人 を順 応 させ よ う とす る もの で は な く、歴 史 的 社 会 的 に規 定 され る価 値 が 個 人 の 価 値 レベ ル に与 え る影 響 を 重 視 す る立 場 で あ る。 この立 場 に立 っ もの と して は孝橋 正 一 らが あ げ られ る2}。
第二 は、個人 の価値 レベ ルか ら社 会 の価 値 を統 合 しよ うとす る もの で あ る。 こ の場 合 の個 人 の価 値 は、 後述 す るよ うに個 人 が 多 様 に有 す る価 値 とい う意 味 で は な く、す べ て の個人 に共通 す る主 体 的統 一 の貫 徹 に価値 を置 くもの で あ る。 こ の視 点 か ら社 会 との 関 係 を と らえ る もので あ り、 この 立場 に は、 岡 村 重 夫 らが あ げ られ る。
第 三 は、 個 人 と社 会 の価 値対 立 を理 論 問題 か ら解 き放 ち、社 会 福 祉 が個 人 の 価値 領 域 に介入 す る こ とを停 止 して 、社 会 福 祉 に も一 般 社 会 サ ー ビス と同 じ様 に 「契 約 」 の 論理 を 持込 もう とす る もの で あ る。 この立 場 に は、社 会 福 祉 の 介 入 を 人 権 問 題 と と らえ 、 サ ー ビスを 利 用 す る当事 者 の主 体 性 の尊 重 や 権 利 保 障 を主 張 す る運 動 や 、 社 会 福祉 の供 給 体 制 を多 元 化 しよ うとす る三 浦 文 夫 らが あ げ られ る。
本 稿 で は 、 これ らの立 場 の 内 、第 二 の立 場 を と る岡 村 理論 と、 第 三 の立 場 を と る三 浦 理 論 お よび そ こに見 られ る 「契 約 」 の論 理 を 検 討 し、各 理 論 が社 会 と 個 人 の 価値 対 立 を止 揚 ま た は切 り離 す こ との妥 当性 を検 討 す る。
2.岡 村 重 夫 の 「社 会 福 祉 学 原 論 」 の検 討
岡村理論 にお いて、社会福祉 の問題 を発見す る論理を理解 す るには、その特
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有 な意 味 付 けを もっ 「主 体性 」 とい う概 念 を理 解 しな けれ ば な らな い。
岡 村(1983)が 「主 体性 」を 重要 視 す るの は 、「普 遍 的 な所 得 保 障や 国 家 の提 供 す る社 会 的 サ ー ビス の充 実 だ けで 、個 人 の道 徳 的 責 任 の実 行 を期 待 した 『社 会 一個 人 相互 責 任 の 原則 』」(p.57)が 貫 徹 しえ な い所 に由来 す る。 「最 低 の文化 的 生 活 を普 遍 的 に維 持 す る こ とは、 社 会 の た めで もあ り、 ま た個 人 の た めで も
あ って 、両者 の共 同責 任 で あ る」(p.53)と い うこの原 則 を実現 しう るた めに は、
「『普 遍 的 処 遇 の 原 則 』 を前 提 と しなが ら も、漠 然 と した福祉 概 念 を限 定 して福 祉 国 家 に対 して相 対 的 独 立 性 を もった個 人 の主 体 的存 在性 に注 目す る新 しい社 会福 祉 の概 念 を 提 起 せ ざ るを得 な いの で あ る」(p.64)。 その上 で 「個 人 の もっ 社会 関係 が 、(1)客 体 的 、制 度 的 側面 と、(2)主 体 的 、個 人的 側 面 とい う二 重 の構 造 を もっ こ とが 明 らか にな って み れ ば 、(1)の 側 面 は、 そ れ ぞれ の 『社 会 生活 の基 本 的要 求 』 に対応 す る専 門分 業 制 度 な い し生 活 関 連 施策 に よ って規 定 され るが 、(2)の 側 面 は、 これ らの専 門分 業 制 度 に よ って と らえ る こ との で き な い部 分 」(p.90)で あ り、 この社 会 制 度 と個人 の関 係 を 社 会福 祉 が 「主体 的、
個 人 的 側 面 」 の 立場 にた って問 題 を発 見 す るのが 、 岡 村 理 論 の 問題 発 見 の論 理 で あ る。
で は社 会 福祉 が 「主 体 的 、 個 人 的 側面 」 の立 場 に立 つ と い うこ との意 味 す る ところ は 、個 人 の価 値 的 レベ ル と同 一・な ので あ ろ うか 。社 会 福 祉 は 「生 活 関連 施策 のサ ー ビスが 、サー ビスの利用 者 の 自己決定 によ って選択 され るこ とや、サ ー
ビスの運営 や 基 本方 針 の決定 に対 して生 活主 体 者 の参加 が保 障 され 」(p.100)る よ うに援 助す る とい う記述 をみ る とそ う とも解釈 が で きるが 、岡村 の考 え る 「主 体 性 」は個 人 の価値 的 レベ ル と必 ず しも一致 しな い。 この記 述 の 後 に続 けて 「社 会 関 係 の主 体 的側 面 の論 理 は、 生 活主 体 者 の権 利 主 張 の根 拠 とな るだ けで は な
く、 同 時 に生 活 主 体 者 が 社 会人 と して の責 任 主 体 者 で あ る こ とを示 す もの で あ る」 と記 して い る。 岡村 の主 体 性 は 、あ くまで 「社 会e個 人 相互 責任 の原 則 」を 貫 徹 す る上 で 問 題 とな るの で あ る。 個 人 は 「社 会 的承 認 」 を 受 け るや り方 で 社 会 生 活 上 の基 本 的要 求 を充 足 せ ね ば な らず 、 こう した 「社 会 福祉 の ね らう社 会 的 人 間 像 」(p.98)に そ ぐわ な い場 合 は、 「保 護 的 機能 」 に よ って 一 時 的 に 自己 決 定 が 制 限 され て も仕 方 が な い こ とにな るの で あ る。
社 会 福祉 に お け る社 会 と個 人 の価 値 対立
一岡村 理 論 と三 浦理 論 の批 判 的 検 討 61
っ ま り岡村 理 論 に お け る問題 発 見 の論理 は、 「社 会=個 人 相互 責 任 の 原則 」 の 貫 徹 が 社 会 に と って も個 人 に と って も必 要(機 能 的 条 件)で あ る とい う前 提 に 立 った上 で 、 この原 則 を 貫 徹 し うる理 念 型 と して あ るべ き社 会像 、 あ るべ き個 人像 を設 定 し、 そ こか らの偏 りを 問題 と して社 会 福 祉 が 発 見 す る と い う構造 を もって い る と いえ る。 この ことは 、社 会 の価 値 レベ ル と も個 人 の価 値 レベ ル と も異 な る社 会 福 祉 の論 理 的 基準 を設 定 す る事 に よ って 、 問題 発 見 の論 理 に お い て 、社 会 と個 人 の価 値 対 立 を止 揚 す る もので あ る といえ よ う。
岡村 理 論 の 問題 解 決 の論 理 にお け る個 人 の位 置 付 け は、 問題 発見 の論 理 に見 た よ うに、 「社 会 二個 人 相互 責 任 の原 則 」 を前提 と して、生 活 主体 者 の権 利 を主 張す るだ けで な く 「社 会 人 と して の責 任 主 体者 」 と して 、「個 人 は 自分 の生 活 上 の 困難 の解 決 につ いて 責 任 を回避 す るの で は な くて 、 む しろ あ らゆ る機 会 や制 度 を利 用 した り、選 択 して解 決 にあ た る と い う自主 的 な態度 を もたね ば な らな い」(P.100)と し、問 題 解決 の責 任主 体 た る こ とを要求 して い る。 そ して個 人 の 「社 会生 活 の基 本 的 要 求 」 を 実現 す る こ とは社 会 に と って も機 能 的 条 件 で あ る と して 、社 会 も問題 解 決 の責任 主 体 と して い る。 そ して 個 人 と社 会 の関 係 は、
両 者 が 存続 の ため に支持 せ ざ るを得 な い論 理 的基 準 に よ って 統 制 され る こと に な る。
岡 村 理 論 で は、 問 題 発 見 の論 理 にお いて 個 人 と社 会 の価 値 対 立 の 問 題 は論 理 的 に は一 応 止 揚 され て い る。 しか し社 会 福 祉 を社 会 か ら切 り離 して と らえ て い るた め3)、個 人 と社 会福 祉 の関係 、社 会 福 祉 と社会(一 般 的 な社会 制 度)と の関 係 に お け る価 値 対 立 の問 題 が発 生 す る。
社 会 福 祉 と社 会(一 般 的 な社 会 制 度)と の関 係 にお いて は、 「す べ て の専 門分 業 制 度 の効 果 的 な運 営 の た あ には 、生 活 の全 体 性 を認 識 し、 これ を援 助 す る社 会福 祉 の協 力 を不 可 避 とす る」(p.99)と して 、仮 に価 値 対立 が 発生 して も社会 福祉 の優越 的 な立 場 を前 提 と して い る。 しか し、個 人 と社 会福 祉 の関係 で は、「社 会 関 係 の主 体 的 側面 を 固有 の視 点 とす る社 会 福祉 は、生 活 問 題 の 当事 者 の 立場 と同 じ立場 で あ る」(p.101)と し、基 本 的 に価 値 対 立 発 生 その もの を想 定 して い な い。
で は、 個 人 と社 会 福 祉 との価 値 対 立 は本 当 に起 こ り得 な いの で あ ろ うか。 社
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会 福 祉 の機 能 を 実 施 す る側 は 、個 人 を 「社会 福 祉 の ね らう社 会 的 人 間像 」 に従 って評 価 を し場 合 に よ って は 自己決 定 を制 限 す る一 方 、 他方 で は 「主 体 性 の原 理 」 に基 づ いて 「受 動 的 存在 」 と してで はな く 「生 活 主 体者 」 と して 自己決定 を尊 重 しな けれ ば な らな いの で あ る。 この矛 盾 は 「社 会 福祉 は、 生活 問題 の 当 事 者 の立 場 と同 じ立 場 で あ る」 とい う一 言 で解 決 しうるの だ ろ うか。 岡村 の枠 組 みで は社 会 福 祉 は 当事 者 と同 じ立 場 で あ る ことが求 め られ て いて も、 そ うで な けれ ば な らな い必 然 性 は見 っ け られ な い。 も し社 会 福 祉 が 当 事 者 の立 場 と同 じ立 場 を有 し得 て いな いの に、当事 者 の 自己決定 が 制 限 され 、 「正 しい現実 認識 と現 実 的 な生 活 態 度 を持 つ よ うに援 助 」(p.102)さ れ た ら、 問題 を抱 え る個 人 は ど うす れば よ いのだ ろ う。 「社会 生 活 の基本 的要求」が 不当 に制 限 され る と 「反 社 会 的 あ る いは非 社 会 的 な方 法 を使 って で も、 自己 を貫 徹す る強 いエ ネル ギ ー を もつ 」(p.101)も の な らば、 そ の エネ ル ギ ー は社 会福 祉 に 向 け られ る ことは な いの だ ろ うか 。
岡 村 理論 は 、仮 に その前 提 とす る 「社 会e個 人 相 互 責 任 の原 則 」や 、 社会 と 個 人 の 機能 的条 件 が 承 認 され た と して も、社 会 福 祉 が 当事 者 との 同 じ立場 性 に 必然 性 を見 いだ さ な い限 り、 個 人 と社 会 の価 値対 立 は止 揚 で きて も、 個 人 と社 会福 祉 の価 値 対 立 か らは逃 れ られ な い もの と思 わ れ る。
3.三 浦 文 夫 の 「社 会 福 祉 政 策 研 究 」 の検 討
三 浦(1995)は 、現 実 の社 会 福 祉 の 政策 と実践 は制 度 的枠 組 み の なか で統一 され るが 、 「認 識 論 的 な次 元 な り、研 究 アプ ロー チの視 点 か らい う と」(p.8)分 け る こ とが 必 要 で あ る と し、 政 策 の 立場 か ら問 題 を発 見 す る こ とを明 示 して い る。 具 体 的 に は 「社 会 福 祉 の 実践 で は、 この要援 護 性 が具 体 的 に体 現 され た人 間 を実 践 対 象 とす る とい うよ うに考 え る ことが で き る。 これ に対 して社 会 福 祉 の政策 対 象 と い うこ とで は、 この要 援 護性 を具 体 的 に体 現 した人 間 で はな く、政 策 的 視 点 か らこの要 援護 性 を もつ 人 間 を 何 らか の形 で 集 合 的 ・範 疇 的 に く切 り
と り〉、そ の範 囲 内 で の集 団 を政 策 対 象 にす るので あ る」(p.12)と し、 サ ー ビ ス の利 用者 を 直接 的 に問題 にす るの で は な く、 その 問題 性(need)の 集 合 を媒
社会福祉における社会と個人の価値対立
一岡村理論と三浦理論の批判的検討
63介 と して、 政 策 主 体 が 問 題 を認 識 す る と して い る。
そ して この ニ ー ドの認識 に は、「あ る種 の状 態 が 、一定 の 目標 な り、基 準 か ら 見 て乖 離 の状 態 に あ る」(p.60)と い う依 存 的 状 態 を前 提 と して 、 「回 復 、 改 善 な どを行 う必 要 が あ る と社会 的 に認 め られ た もの 」 と い う要 救 護 性 に よ って 行 わ れ る。 そ して この依 存 的状 態 の判 断 は 「暗 黙裡 に社 会 的 価 値 体 系 に左右 され る もので あ り」(p.61)、 また要 救 護性 の判 断 も 「す ぐれ て価 値 的 内容 を 含 む も の で あ るだ け に、 その 限 りに お いて この判 断 は 、人 に よ り、 あ る いは立 場 に よ り必 ず しも同 じ もの に な る保証 は な い」(p.74)。 よ って 「政 策 当 局 は可 能 なか ぎ り、 対象 者(利 用 者)や 学 識 経 験者 あ る いは サ ー ビスの実 施 に あ た る人 び と の 参 加 を求 め 、 その判 断が 、社 会 的 な コ ンセ ンサ スを 得 るよ う努 力 す る必 要 が あ る。 この意 味 か らい う と、社 会福 祉 分 野 に お け る 『運動 』 が この社 会 的 判 断 を形 成 す る うえで 重 要 な役割 を もつ こと にな るので あ る」(p.74)と 論 じて い る。
っ ま り、 三 浦 の 問題 発 見 の論 理 に お い て は、 社 会 的 な コ ンセ ンサス を得 られ る判 断 を行 うた あ に、問題 を抱 え る個 人 の参 加 や運 動 の影響 を認 め る もの の、そ の参 加 や影 響 も社 会 の価 値 レベ ル で の認 識 過 程 に組 み 込 まれ た もので あ り、 個 人 の価 値 レベ ル で の 問題 発 見 とは次 元 が 異 な る といえ よ う。
・三 浦 は、 そ の研 究 ア プ ローチ を政 策 と実 践 に分 け、 問題 発 見 の論 理 に お いて 価値 対 立 の問 題 を切 り離 して い るた め、 当然 、解 決 の 論理 にお いて も価 値 対 立 は 問題 とな らな い。 「社 会福 祉 実 践 レベ ル に お いて は、 「ニ ー ド」 の解 決 と い う
ことだ けが問 題 なの で は な く、あ くまで も、 その者 に と って の 『自立 』 な り 『社 会 的統 合 』 は何 か とい う こ ととの関連 にお いて 、 『ニ ー ド』の 解決 とか その取 り 組 みが 問題 と されて い くので あ る」(p.56)。 これ に対 して 「社 会 福祉 施 策 で は、
一 般 的 な意 味 で の 『自立 』 な り 『社 会 的 統 合 』 を妨 げて い る要 援 護 問 題(政 策 ニ ー ド)に 着 目 し、 そ の問 題(ニ ー ド)の 除 去 な り解 決 な りを いか に 図 るか と い うこ とが課 題 とな り、そ の政 策 ニ ー ドの解 決 が っ ま る ところ 『自立 』な り 『社 会 的統 合』 にっ なが るの で あ る」(p.56)と 、 そ の立 場 を説 明 して い る。
しか し三 浦 理 論 にお いて も、政 策 に よ って準 備 され たサ ー ビス の供 給 場 面 を 説 明 す る際 には 、 サ ー ビス の供 給主 体 と個 人 の関 係 を論 じざ るを 得 な い。 その 関係 を規 定す る もの と して三 浦 は 、本 書 の1995年 改 訂 で追加 され た第13章 「福
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祉 改革 と社 会福 祉概 念 の再 検 討 」 に お いて 「契 約 」 の論理 を 提 唱 して い る。
「在 宅福 祉 にみ られ る新 しい社 会福 祉 サ ー ビス は、従 来 のニ ーデ ィ(要 援護 者 needy)に 即 して 必 要 な援 助 ・サ ー ビスを提 供す ると い う方式 で はな く、ニ ー ド
(要 援 護 問題need)に 着 目 して必 要 なサ ー ビスを提 供 す る方 式 とい うこ とがで き る。 す なわ ち前 者 の方式 で は、 精 神 的 ・身 体 的 あ る い は社 会 的 な障害 によ っ て 、 自立 した生 活 が で きない個 人 ・世帯 を選 別 し、 その 自立 を 助長 す るた め に、
必 要 な助 言 、指 導 と援助 を行 う こ とで あ り、 要 援 護 者 を包 括 的 に 『管 理 』 す る 側 面を もっ 。 これ に対 して後 者 の考 え方 の基 礎 は、 個 人 は原 則 と して独立 の居 宅 生 活 を送 り、 そ の 生活 の過 程 で 生 ず る種 々 なニ ー ドが発 生 す るが、 その ニ ー ドが この 独立 した生 活 を脅 か す こ とにな る と して 、 この ニ ー ドの解 決 ・充 足 を 図 る こ とに よ って 、 その 自立 ・発 達 あ る いは社 会 的 アイ デ ンテ ィテ ィの確 保 が な され る とい う思 想 が 含意 され て い るので あ る。」(p.288)。 そ して 「自力 で居 宅 で の 生 活 が 可能 で あ る とい う条 件 はす べ て の人 に与 え られ て い るわ けで もな く、 ニ ー ド充 足 に対 応す る各種 サ ー ビス の利 用 を 主体 的 に選 択 す るこ とので き な い もの も多 数 残 る」(p.289)の で 、need‑orientedな アプ ロ ーチが拡 大 し て も、needy‑orientedな アプ ローチ は な くな らな い と して い るので あ る。
この論 に従 え ば 、 社 会 福祉 は 問題 解 決 の 論理 を二 っ 有 し、 これ に よ って 対象 を二 群 に 「選 別 」 しな けれ ば な らな い。
needy‑orientedな アプ ロー チの対 象者 は 「自力 で 居宅 での生 活が可 能 」な条 件 が な い、 また は 「サ ー ビスを 主 体 的 に選択 で きな い」 が ゆ え に、社 会 福祉 の 目的 で あ る 「社 会 的 自立 」 と 「社 会 的統 合 」(p.285)に む けて 「管理 」 され る こ とに な る。 そ して 「サ ー ビス を主 体 的 に選択 で きな い」場 合 は、 「個人 の 自立 だ けで は な く、 社 会 の一 員 と して の位 置 と役 割 を もっ とい う意 味 での アイ デ ン テ ィテ ィの確 保 を含 意 す る」社 会 的 自立 を要求 され 、 自立 助 長 に向 けて 「管理 」 され る。 サ ー ビス の 選択 と い う具 体 的 行 為 にお い て主 体 的 に選 択 で きな い こと は、 そ の者 が個 と して の主 体 性 を 有 しな い こ と とイ コ ール で は な い。 そ して社 会 が要 求す る 「社 会 的 自立 」 の方 向 性 はすべ て のneedyに 支 持 され る とは限 ら
な い。 っ ま りneedy‑orientedな アプ ロー チ にお いて は、 社 会 と個人 の価 値対 立 の 問 題 は 、切 り離 せて いな い といえ よ う。
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一岡村理論と三浦理論の批判的検討
65これ に 対 してneed‑orientedな ア プ ロ ー チ の 対 象 者 は 、 「極 端 な い い 方 を す る と、 通 常 の 市 場 メ カ ニ ズ ム の な か で 、 需 給 関 係 に も とつ い て 、 欲 求 充 足 が 行 わ れ る よ う に 、 ニ ー ドが 生 じた 場 合 に そ の 人 は 、 自 らの 意 志 で 必 要 な サ ー ビス の 利 用 を 図 る 」(p.285)こ とを 前 提 と して い る。 こ の 問 題 解 決 の 論 理 は 、 あ き らか に 「 契 約 」 を 前 提 と した もの で あ り、 他 の 社 会 サ ー ビス 同 様 、 個 人 の 価 値 レベ ル の 問 題 解 決 に は 踏 み 込 ま な い内 容 に な って い る。 「 契 約 」 で あ れ ば 、 社 会 と個 人 の 価 値 レベ ル の 対 立 が あ っ た 場 合 、 理 論 上 は 、 個 人 は 「契 約 」 を 解 除 す る こ とが で き、 自 己 の 主 体 性 の 貫 徹 が 図 れ る か らで あ る。
しか し三 浦 理 論 の 問 題 点 は 、needとneedyの 区 別 が あ い ま い な点 に あ る。 た とえ ば 「自 力 で 居 宅 で の 生 活 が 可 能 」 な 条 件 を 有 しな い もの が(そ の 中 に は 当 然 「サ ー ビス を 主 体 的 に選 択 で き る 」 もの も い る の に)、 何 故 にneed‑oriented な ア プ ロ ー チ か ら排 除 さ れ る の で あ ろ うか 。 も し 「要 援 護 者 中 心(needy‑
oriented)の ア プ ロー チ か ら、個 別 的 な要 援 護 問 題(need‑oriented)ア プ ロ ー チ へ の 転 換 と い う仮 説 」(p.288)を 推 し進 め る な ら、need‑orientedア ブm チ の 対 象 を よ り拡 大 した方 が 理 論 の 一 貫 性 は 高 ま る。 そ の 際 、needy‑oriented ア プ ロ ー チ が 残 る とす れ ば 、 ま っ た く自 己 の 意 志 を 表 明 で き な い か 生 命 に 関 わ る緊 急 性 が あ る場 合 の 「保 護 」 に 限 定 した 方 が 、 基 本 的 人 権 を 守 る 上 か ら も望 ま しい4)。
も し そ の よ う な理 論 構 成 とす れ ば 、 「 社 会 的 自立 」 を 要 求 さ れ た 個 人 と 「 管 理 」 す る社 会 との 間 で 必 然 的 に価 値 対 立 が 発 生 す る と い う問 題 か ら、 理 論 的 に は 解 放 さ れ る で あ ろ う(「 保 護 」 に お い て は 個 人 の 価 値 レベ ル は 考 慮 す る必 要 性 は な
い とす る こ とが 可 能 で あ る5》)。
4.主 体 性 を 尊 重 す る 論 理 と して の 「契 約 」
三 浦 が 「契 約 」 を主 張 したの は 、社 会 の有 責 性 を軽 減 し 「それ まで の公 主 私 従原 則 に かわ って 、民 間 の積 極 的役 割 を示 す」(三 浦1995,p244)意 図 か らな され て いるが6》、サ ー ビス を利 用す る当事 者 の主 体 的 な運 動 や 、そ の権利 性 を守 ろ う とす る立 場 か ら も、 社 会福 祉 に 「契 約 」 の論 理 を導 入 すべ き とす る積 極 的
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な主 張 が な され て い る。
た とえ ば障 害 者 の 当事 者 運動 で は、 身体 障 害 者 の1970年 代 のIL運 動 に始 ま って 、 知 的 障害 ・精神 障 害 の各 分 野 で も当事 者 団 体 が 結成 され 、管 理 され るの では な く自 らの手 で サー ビスを コ ン トロール しよ う とす る主 張 を掲 げて きている。
ス ウ ェー デ ンの 自立生 活運 動 の代 表 者 は 「ノー マ ラ イゼ ー シ ョンとは、 だ れ か他 の人 が"私 に と って の ノー マ ル"を 決定 す る こ とで す 。 私 は ノー マ ル に な りた くあ りませ ん 。」 「私 の生 活 を 価値 の な い もの と考 え る社 会 に"統 合"さ れ た くあ りませ ん」 と述べ 、完 全 な 自己決 定権 を取 り戻 す ことを主 張 して いる(ア
ドル フ ・ラ ツカ1992,P.115)。
この こ とは、 これ まで は 「サ ー ビス を主 体 的 に選 択 で きな い」 とされ て 「管 理 」 され て きた 障害 者 が 、 自 ら も 「サ ー ビス を主体 的 に選 択 をす る」 とい う市 民 と して 当然 の権 利 を主 張 して きた こ とを意 味 して い る。
ま た法学 者 か らは 、要 援 護 者 の権 利保 障 とい う観 点 か ら 「契約 」 の 採 用 に向 けて 積 極 的 な提 案 が な されて い る。 河 野正 輝(1991)は 「社会 福 祉 の要 援護 者 は何 らか の福 祉 サ ー ビス を要 す る人 び とで あ るだ けで は な い。 そ れ と同 時 に援 護 の 実施 機 関 、福 祉 従 事者 に従 属 す る人 び とで もあ る」(p.111)と して 、「問題 は、 この よ うな従 属 性 が 人権 侵 害 を生 みや す い とい う こ とで あ る」(p.112)と 指 摘 して いる。 そ の上 で、サ ー ビス利用 者 に請 求権 を認 あ て い く方 向 と して、「援 護 請 求 権 を み とめ た うえ で利 用 者 の 申請 に対 す る行 政 庁 の応 答義 務 を定 め 、援 護 の要 否 の調 査 、決 定 お よ び通 知 にか んす る手 続 保 障 を整 備 す る方 式 」「法 に定 め る客 観 的 要 件 を充 足 しさえす れ ば 行政 庁 の決 定 を待 つ ことな く受給 権 とその 援 護 内容 が 決 ま る とす る方 式 」 「公 権力 の行 使 で あ る行 政 処分 に よ らず、サ ー ビ ス提 供 者 と利 用 者 の 当事 者 間 の意 思 の合 致 に よ って 受 給権 を 発生 せ しめ る、 い わ ゆ る契 約 方 式 」(p.271)を 挙 げ て い る。 そ の上 で 、契 約 方 式 が 「政 策 的 にみ て 、 契 約方 式 の導 入 が 短 絡 的 に公 的責 任 の棚 上 げ と有 償 性(受 益 者 負 担)の 強 化 に通 ず る危 険性 は な いか、 あ る いは理 論 的 にみ て契 約 構 成 の前 提 に は当事 者 が 自主 性 を もった人 間で あ るこ とが予 定 され て い るが 、福 祉 の受 給者 には そ れ が な い場合 が少 な くな いので は な いか。 ま た形 式 的 に契 約 と構 成 して み て もそ の実質 は附 従性 で あ って、契 約 は一 っ の フ ィク シ ョンにす ぎな いので はな いか 」
社 会福 祉 にお け る社会 と個 人 の価 値 対 立
一岡村 理 論 と三 浦理 論 の 批 判 的検 討 67
(p.272)と い う難 点 が あ る もの の、「それ で も福 祉 の措 置 を契 約 と構 成 して い く こ とが 、 いま の被 措 置者 の個 性 、 自主 性 、尊 厳 性 の向 上 に と って 望 ま しい と も 考 え られ る」(P.272)と 論 じて い る。
これ らの主 張 は 、利 用 者 の主 体性 の尊 重 や権 利 保 障 とい う観点 か らな され て お り、三 浦 が福 祉 の供 給 体 制 の多元 化 を推 進 す る立 場 とは異 な る。
しか しど うい う意 図 か らの主 張 で あ れ、 「契 約 」の 論理 は、近 代市 民 社 会 にお いて 関係 を規 定 す る一般 的 な論 理 で あ り、 そ の意 味 で一 定 の正 当 性 を 有 して い る。 この一 般 的 な論 理 に対 して 、 関係 を規 定 す るな ん らか特 殊 な論 理 を 社 会 福 祉 が主 張 す るの で あ れ ば 、 そ の理 由を説 明 す る責 任 は主 張 す る側 に あ る といえ よ う。
5.社 会 福 祉 に お け る 「契 約 」 の論 理 の 限 界 性
社 会 福 祉 に 「契 約 」 の論 理 を導 入 した 場 合 、 そ の位 置づ け は、 他 の 一 般 サ ー ビス と同 じよ うに、 社 会 の価値 レベ ル の 問題 発 見 か ら問題 解 決 に至 る系 と個 人 の価 値 レベ ル の それ を完 全 に切 り離 し、 両 者 の 系 を解 決 の段 階 で 結 ぶ 形 式 と し て位 置 づ け られ る。 この前 提 に は 、問 題 を解 決 す る際 に不足 す る資源 を社 会 の 責 任 で 準 備 す る こ とを否 定 す る もの で は な いが 、 基 本 的 には 自 らの責 任 に お い て問 題 を発 見 し解 決 す る人間 像 が期 待 され て い る。
しか し社 会 福 祉 の 歴史 は 、問 題 を抱 え る個 人が そ う した期 待 に応 え よ うに も 応 え られ な い状 況 を 抽 出 して き た。 まず 問題 状 況 の発 生 に社 会 が 密 接 不 可 分 に 関 わ って い る問 題 領 域 が あ り、 そ の解 決 には 社会 が 関 わ らざ るを得 な い必 然 性 を見 いだ した(社 会 の有 責 性)。 そ して さ らに は、普 遍 的 な一一般 社 会 サ ー ビス に よ って 問 題 解 決 に不 足 す る資源 を分 配 す るだ けで は解 決 で きず、 個 別 的 に対 象 の主 体 性 に まで 介 入 して対 応せ ざ るを得 な い問 題 を見 いだ した の で あ る(個 別 性)。
た とえ ば 嶋 田 は 「国家 が、 そ の制 度 的 対 応 に よ って 、 国民 の基 本 的 欲求 の充 足 に責 任 を負 いは じめた こ とは、民主 主 義 の偉大 な る勝利 で はあ るけれ ど も、そ れ は同 時 に また 『機 械 化 の危 険 』 を もた ら した。 個 人 は、 社 会 保 障 制 度 の 前 で
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は一 っ の記 号 で あ るに過 ぎず 、彼 の欲 求 はた だ一 つ の公 式 に従 って扱 われ るの みで あ る。制 度 的処 遇 の もとにおけ る人 間 の この機 械化 現 象 に対 す る修 正 が、人 間 関係 へ の 関心 を不 可 避 な ら しめ たの で あ る」(嶋 田1980,P.28)と 論 じて い る。 岡村 は、 福 祉 国 家体 制 を 批判 す る ロブ ソ ンの 主 張 を 引用 しな が ら 「国 民 に 機 会均 等 を保 障 す る 『普 遍 的 処遇 の原 則 』 だ けで は 、 国民 の 間 に敵 意 や怒 りを な くす こ とは で きて も、『積極 的 な満 足』を与 え るこ とはで きなか ったの で あ る。
普 遍 的 な所 得 保 障 や 国家 の提 供 す る社 会 的 サ ー ビス の充 実 だ けで 、 個 人 の道 徳 的責 任 の実 行 を期 待 した 『社 会=個 人 相 互 責 任 の 原則 』 は、 この よ うに して 新 しい課 題 を生 み だ した といわ ね ば な らな い」(岡 村1983,p57)と 論 じて い る。
っ ま り 「契 約 」 の論 理 に は、 その前 提 と して 自 らの責 任 に お いて意 思 決 定 を 行 うと い う人 間 像 が あ るが 、 個 人 の 問題 発 見 か ら解 決 に至 る系 が 十分 に機 能 し て いな い者 に まで あ て はめ て しまえ ば、 結 果 と して社 会 の有 責 性 を放棄 す る こ と にな るので あ る。
とす れ ば社 会 福 祉 に 「契 約」 の論 理 を導 入 す る際 に は、 「契 約 」が前提 とす る 人 間像 を修 正 しな け れば な らな い。 つ ま り個 人 の 問題 発 見 か ら解 決 に い た る系
に社 会 の有 責性 の発動 と して の介入 を認 め た上 で(「契 約 」の人間 像 の修 正)、 「契 約 」 の論 理 は、 問 題 解 決 を行 うた め に社 会福 祉 を含 む社 会 サ ー ビスを利 用 す る 段 階 にお いて 、 その 関係 性 を規定 す る もの と して のみ 適用 され る(「 契 約 」の形 式 性 の 適用)こ とに なろ う。
具 体 的 な過 程 に即 して いえ ば、 社 会福 祉 の援 助 者 側 の評 価 で は そ こに改善 す べ き問 題性 を認 め て も、何 らか の 理 由 で個 人 の価 値 レベ ル で は 問題 状 況 を認 識 し得 て いな い場 合 、 社会 福 祉 の 援助 者 側 は、 対 象 者 に問題 状 況 を認識 させ よ う と働 きか け 、改 善 の方 向性 を提 案 す る。 その 結果 、 問題 状 況 を認 識 し改善 の方 向性 を 了承 す れ ば、 それ が契 約 内容 とな る。 対象 者が 解 決 の提 案 内容 を変 更 す る こ とは 当然 あ り得 る し、解 決 に向 け た提 案 を拒 否す る こ と も認 め られ な けれ ば な らな い、 とい う構 成 で あ る。
こ う した 「契 約 」 の形 式 を社 会 福 祉 に導入 す る試 み は、実 際 ソ ー シ ャル ワ ー クの過程 に お いて 、 「介入 」 の前 提 に 「契 約 」 を取 り入 れ る こ とが短期 の援助 を 中心 に行 わ れ て い る(ア ン ・フ リー ド1988)7)。
社会福祉における社会と個人の価値対立
一岡村理論と三浦理論の批判的検討
69しか し 「契 約 」 の 論理 は あ くまで 形式 と して 、 問題 解 決 の段 階 を 規 定 す る も の と解 釈 す べ きで あ る。 も し問 題 発 見 の 段 階 に まで 「契 約 」 の 論 理 を 貫 徹 して
しまえ ば、 「契 約 」の 論理 が 背景 とす る人 間像 を承認 す る他 な くな り、問 題 発 見 か ら解 決 に至 る系が 充 分 に機 能 しな い人 の 問題 は、 自己の 意 思 が 表 明 で きな い 場 合 に誰 が その 権利 を代 理 し擁 護 す るか と い う法 律 的 な問題 とな ろ う。
社 会 福 祉 は 、 自 らの責 任 にお いて意 思 決 定 を行 う市 民 に よ って構 成 され て い る と い う近 代 市 民 社 会 の虚 構 性 が現 実 社 会 で生 じるほ ころ び に対 処 して きた の で あ り、少 な くと も問題 発 見 の論 理 に お いて は、 個 人 と社 会 の共 同責 任 性 を措 定 せ ざ るを得 な い。
よ って 「契 約 」 を 社 会 福祉 に導 入 す る こ との限 界 性 は 、問 題 発 見 の論 理 の個 人 と社 会 の 共 同責 任 性 に あ る。 ま た 「契 約 」 の形式 性 を 問題 解 決 の 論 理 に導 入 す る こ とは可 能 で あ って も、問 題 発 見 の 論 理 にお いて 介入 的 要 素 を社 会 福 祉 か ら排 除 す る こ とはで きず 、社 会 福 祉 にお いて 社 会 と個 人 の価 値 対 立 の 問 題 は不 可 避 的 に発生 す る と いわ ざ るを得 な い。
6.社 会 福 祉 に お け る価 値 的 正 当 性 に つ い て
岡 村 理論 に見 られ た社 会 と個 入 の 価値 対 立 を 止揚 しよ うとす る試 み は、 個 入 と社 会 福祉 とい う価 値 対 立 を理 論 的 に止 揚 で きず 、 問題 は形 を変 え て 残 され て い る といえ よ う。
三 浦 理 論 に見 られ た 「契約 」 を導 入 して 結 果 と して社 会 と個 人 の価 値 の次 元 を切 り離 そ う とす る試 み は、 「契 約 」 の前 提 とな る人 間像 と社会 福 祉 が これ まで 対 象 と して きた人 々に大 きな乖 離 が あ る以 上 、採 用 す る こ とはで きな い。 また、
仮 に 「契 約 」 に一 定 の有 効 性 を見 い だ しそ の形 式 を 導 入 した と して も、 価 値 対 立 の問 題 を 排 除 す る こ とはで きな い。
とす れ ば 依 然 と して 、 社 会福 祉 の領 域 に不 可 避 的 に発生 す る社 会 と個 人 の価 値 対 立 に対 して 、社 会 福 祉 の理 論 は なん らか の解 答 を 見 いだ す こ とが 求 め られ
て い る といえ よ う。
も し社会 福 祉 が固 有 の学問 領域 と して成 り立 つ の で あれ ば、その固 有 性 は、一
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般社 会 サ ー ビスが 前 提 とす る近 代市 民 像 とは異 な る人 間像 の提 示 と、 その対 象 に社 会 福 祉 が 介 入 す る価 値 的正 当性 を 自 らの 論理 の 中 に組 み 込 む こ とで しか な い と思 わ れ る。
岡村 重 夫 は近 年 の論 文(岡 村1990)で 、価値 合理 性 や倫 理 合 理性 の必要 性 を 提起 して い る。 「『社 会 関 係 の主 体 的 側 面 』 の理 論 構 成 にお いて は、 生 活 の主 体 性 や 全体 性 を明 らか にす る こ とに よ って 、 いわ ば生 活 の人 間 性 的 側 面 に着 目す る社 会福 祉 的援 助 の 固有 性 を 説 明 して きたが 、 しか しそれ らはす べ て 論理 的操 作 に よ る もので あ った。 一 言 に して言 え ば福祉 的人 間像 の論理 で あ った。」 「論 理 的 合理 性 だ け で は 、合 理 性 を貫 徹 す るた めの 行動 は起 動 しな い。 そ のほ か に 価値 合 理 性 な い し倫 理 的 合 理性 が な けれ ば な らな い。」 と論 じ、 その上 で、 岡村 は価 値 合理 性 を 「社 会 的 に承 認 され た 『基 本 的 人権 』概 念 」 に求 めて い る。
この 「論 理 的合 理 性 だ けで は、合 理 性 を貫徹 す るため の行 動 は起 動 しな い」 と 論 じた点 は、注 目に値 す る。 つ ま り社 会 福祉 と個 人 の 同 じ立 場性 につ いて も、個 人 が社 会 で生 活 す る上 で の 「社 会生 活 の基 本 的要 求 」 と い う論 理 的 必 然 に求 あ て いた が 、 そ う した 「論 理 的操 作」 に よ って 同 じ立 場 性 を実 現 させ る こ との困 難 性 を あ らわ して い る。 社 会福 祉 に価 値 対 立 が持 ち込 まれ る こ とが避 け られ な いの で あ れ ば、 社 会 福 祉 の理 論 に は 「論 理 合理 性 」 だ けで な く、 「価 値 合理 性 」 や 「倫 理 合 理 性 」 が 必 要 で あ る こ とを岡 村 の この論 文 は示 して い る8)。
しか し社 会 福 祉 の 理 論 に岡村 の言 う 「価値 合 理 性 」 や 「倫 理 合 理性 」 が 必 要 で あ る とす る指 摘 は 少 な い。嶋 田啓 一 郎 が 「社 会 福 祉 に お け る規 範 の問 題 を軽 視 す る こ とはで きな いの で あ るが 、 社 会事 業 界 で は ま だ その よ うな関 心 は意 外 と思 え るほ ど に少 な く」(嶋 田1980p.147)と 指 摘 した状 況 は、今 も変 わ りな い。 だ が この 問題 は 、単 に抽 象 的 な概念 操 作 か ら生 み だ され た 問題 な ので は な く、社 会福 祉 サ ー ビス の利 用 者 との 関係 や、 援 助 者 が 所属 す る機 関や 社会 との 関係 で 、常 に 自 らの価 値 的判 断 の正 当性 が 問 わ れ て い る者 に と って は、 ま さに 現実 的 で重 要 な 問題 で あ る。
社 会 福 祉 の理 論 に と って、 この問 題 は単 な る社 会 福 祉 援 助 者 の対 象者 に対 す る援 助 技 術 の問 題 に歪 小 化 す べ き こ とで は な く、社 会 福 祉 の固 有 性 や本 質 に関 わ る理 論 問題 と して と らえ、 社 会 の価 値 レベ ル に対 して も個 人 の価値 レベ ル に
社会福祉における社会と個人の価値対立
一岡村理論と三浦理論の批判的検討
71対 して も正 当性 を主 張 し得 る価 値基準 の検 討を深 め る ことが必要 で あ ると考 える。
注
1)嶋 田啓 一 郎(1980)は 、 ソー シ ャル ワー クの原 則 で あ る 「非 審判 的態 度 」が 「実 は社 会事 業 本来 の 目標 とは容 易 に合 致 し得 ない微妙 な問題 」(p.144)で あ り、ケ ー ス ワーカ ーは 「一 見 ま こ とに矛 盾 した心境 に立 た しめ られ る」 と しなが ら も、「攻 勢 的 社会 事 業」 の立場 を紹介 して 、「サ ー ビスを人 々に 強制 す る ことは 、人 々が 責 任 あ る態 度 で 、 自分 自身 の事 柄 に対処 す るの に 、必 要 な 自侍心 と内面 的 な力 との 再 建 を援 助 しよ うとす るわれ われ の 目的 を崩 す ことに な るか も しれ な い」、 しか し
「クラ イエ ン トが ケー ス ワー カー の もとへ くるので はな く、逆 にケ ー ス ワー カ ーが クラ イエ ン トの と ころへ 出て い くの で あ るJ(p.147)と 述 べ て い る。
2)孝 橋 正一 は、「資本 主義 制度 の もとで は、人 間(労 働)の 物 格(商 品)化 は さけが た いが 、 他 の 商 品 と異 な って人 間 は意 識性 ・主 体 性 を もっ と ころか ら、そ れ が 問 題 とな る と きはつ ね に物 格=人 格 、 客体e主 体 の矛 盾 的統 一 にお いて歴 史的 ・社 会 的 に存 在 し、また そ の よ うに認 識 され て い るの で あ って 、社会 事 業理 論 もま た、
この客観 的事 実 の基礎 の うえ に成 立す るので な けれ ば な らな い。」(孝 橋 正 一,1972,
『全訂 社 会 事業 の基本 問題 』 ミネル ヴ ァ書 房,p.30)と 述 べ て い る。孝 橋 の よ うに、
社 会 の価 値 レベ ル の問題 にす べ て を還 元 す る立場 に立 て ば 、本 稿 で 論 ず る個 人 の 価 値 レベ ル との対 立 は、理 論 上 は 問題 と な らな い。 この 立場 の妥 当性 にっ いて は 稿 を 変 え て 検 討 す るっ も りで あ る。
3)岡 村理 論 にお け る社 会福祉 と社会 が 、いか な る主体 を指 すの か不 明確 で あ るが 、社 会 とは一 般 的 な社 会 制 度 を意味 し、社 会 福 祉 は(生 活 問題 の当事 者 と同 じ立 場性 は有 して い る もの の)こ の社 会 の範 疇 には入 らな い第 三者 的 な存 在 で あ り、社 会 福 祉 の固 有 の機 能 を 体現 す る と論 理 的 に規定 され る もの で あ る と思 わ れ る。
4)「 保 護 」 は 、 現 代 社 会 福 祉 辞 典(全 国 社 会 福 祉 協 議 会,1982)で は 「生 活 能 力 あ る い は機能 が低 下 して いる もの、未熟 で あ る もの を 、外 部 の環 境 か ら守 りなが ら、一 定 の 生活 水準 の生 活 と能 力 の維 持 、成 長 を期 待 して 、生 活 要求 の充 実 実 現 を可 能 にす るサ ー ビス ・状 況 ・指 導 また は補 導 を ・ 体 的 に提 供 して い く援 助 活 動 を い う」
と定義 され て い る。 つ ま りあ くまで個 人 の主 体 的 な問題 解決 へ の参加 は 「 期 待 」さ
72 人 文 学 報Na272(社 会 福 祉 学12)1996.3
れ る もの で は あ るが 、 それ が な けれ ば 「保 護 」 の論 理 が な りた た な い とい う必 要 条 件 で は な い。 よ り正 確 に ここで使 った 「保 護」 の概 念 を 規 定 す るな らば 「職 権 保 護 」 と置 き換 え て もよ いが 、必ず しも行 政機 関 に限 定 され る もの を意 図 した訳 で は な い ので 単 に 「保 護 」 と した。
5)三 浦 の本 書 〈1995>の 中で 、今 回の 改 訂で 追加 され た本章 の記 述 と 「 第一 部 社 会 福祉 経 営 論 の基 礎理 論 」 の 記述 とは 、十 分 に整 合 性 が とれ て いな い。 第 一部 で 展 開 され た論 理 で は(社 会福 祉 は)「 社会 的 に援 護 が必 要 と考 え られ る人 び と(=
要援 護 者 、 ま たは ニ ー ドを持 つ人 び とneedy)の 自立 を 図 るた め に、 この 自立 を 妨 げて い る 問題(ニ ー ド)の 充 足 を図 る とい う機 能 を もつ もので あ ろ う」(p.45)
と い う記 述 に見 られ る よ うに、要 援 護 者 を 「サ ー ビス を主 体 的 に利用 で き る」 か 否 か で分 け る記 述 は な く、対象 を一 元 的 に と らえ て いた と思 わ れ る。潜 在 的 ニ ー ドを 説 明す る行 で は 「 社 会 福 祉 の分 野 にお いて は、 そ の対 象 者 が 精 神的 ・身 体 的 あ るい は社会 的 にハ ンデ ィキ ャ ップ を もった ため に 自 らのニ ー ドを表明 しが た い」
と い う記 述 が あ るが 、 そ れ に よ って 「契約 」 か 「 管 理 」 が 分 か れ る とい う記 述 は な い。 さ らには 「年 金 制度 や 医療保 障制 度 あ るい は教 育 制度 な ど と同 じよ うに、社 会 福祉 は全 国民 を 対象 とす ると い うこ とはで きな い」(p.41)と い う記述 が あ りな が ら、追 加 され た 章 で は 「何 らか の症 状 を感 じる と医者 に行 き、治 療 して もら う とい った利用 を行 うよ うに」(p.289)とneed‑orientedな ア プ ロー チを説 明 して い る。
6)三 浦(1995)は 「needy‑orientedな アプ ローチ で あれ ば 、needyの 自立 に必 要 な サ ー ビスや 資源 の活 用 あ る いは開発 を、 社会 福 祉 の側 が 主 と して行 わ な け れ ば な らな いで あろ う。」(p.289)と 述 べ 、need‑orientedな ア プ ロ ーチで あれ ば 「 通 常 の市 場 メ カニ ズ ム の なか で 、需給 関 係 に もとつ いて 、欲 求 充 足 が 行 わ れ るよ う に」な ろ うと論 じた上 で 、「 従来 の社 会福 祉 事業 は 、公共 的 福祉 供給 体 制の もとで 、 行 政 型 あ る い は 認 可 型 福 祉 供 給 組 織 が 社 会 福 祉 事 業 の 主 体 を な して い た が 、 社 会 福 祉 サ ー ビスの 多 様化 、重 層 化 の なか で 、非 公 共 的 福祉 供 給 体 制 に組 み入 れ られ て きた市 場 型 福祉 供給 組 織 が 、社 会 福祉 事 業 に参 入 して く る可 能 性 も拡 が って き て い る」(p.290)と し、公 共 セ クター と して の社 会 の責 任 を軽 減 す る意 味合 いか
ら 「 契 約 」 の論 理 を打 ち出 して い る。
社会福祉における社会と個人の価値対立
一岡村理論と三浦理論の批判的検討 73
公 共 セ クターの 責任 を軽 減 す る意 図 を持 っ この主張 は、「契約 」の導 入 が 場 合 に よ って は 利 用 者 に と って 多 大 な不 利 益 を も た ら し、権 利 擁 護 と相 反 す る可 能 性 を 有 して い る と言 え よ う。
7)た だ し 「契約 」 の形 式 を 問題 解 決 の論 理 に導 入 した場 合 、そ れが 単 な る形 式 にす ぎず 実質 的 な意 味 を 持 ち え な くな る可 能 性 が あ る。 社 会 福 祉 の サ ー ビスが 選 択 で き るほ ど資源 整備 が整 って いな い場合 や 、対 象 者 が 基本 的 に非 対 等 的 な 「従属 性 」 を 有 して い る場 合 で あ る。 示 され た提 案 を受 諾 す る以 外 に選 択 の余 地 が な い契約 は 、両 者 の合 意 と い う形 式 性 を有 して い た と して も、個 人 の主 体 性 の 尊 重 や権 利 擁 護 を担 保 す る方 法 とは な り得 な い。
ブ トゥ リム(川 田 誉音 訳,ゾ フ ィア ・T・ ブ トゥ リム,1986,『 ソー シ ャル ワー ク とは何 か 』 川 島 書店)は 、 ソー シャル ワー クにお け る価 値 を 検 討 す る中 で、 マ ッ クデ ル モ ッ トの 自己決 定 に関 す る論文 か ら 「(自己決 定 の)権 利 を本 当 に脅 かす も の は、 ソ ー シ ャル ワー カーが 自分 の価 値 を示 す こ とか ら くるの で は な く、 ソー シ ャル ワー カーが 、 権威 をふ りか ざ して 、 ク ライ エ ン トを操 作 しよ うと思 え ば で き る こ とか ら生 じて い る」(p.74)と い う主 張 を 引用 し、 こ う した非 対等 性 の検討 が
「ソー シャル ワー クにお け る 自己決 定 を め ぐって近 年 ます ます 大 き くな って きた混 乱 の雲 を 、 い くらかで も払 いの け る助 け とな る」(p.73)と して い る。
8)岡 村 は 「価 値 合 理 性 」 を 「基本 的 人 権 概 念 」 に求 めて い るが 、社 会福 祉 の対 象 者 が 有す る個 別 的 な問題 に対 して 、人 権 と い う普遍 的 な概 念が 、 ど こまで基 準 と し て効 力 を 有 す る ものか は検討 され な けれ ば な らな い。
また岡 村 理 論 に 「価 値 合理 性 」 を取 り込 む な らば 、論理 の一 貫 性 と い う点 で は 以 下 の点 が 問題 と な る。 まず 本 稿 で検 討 した よ うに 、そ もそ も岡村理 論 は 「 社 会
=個 人 相 互 責 任 論 」 とい う価 値 的前 提 を起 点 と した 「論理 的操 作 」 で あ る 。 とす
れ ば 「社 会=個 人相 互 責 任 論 」 とい う価 値 的前 提 自体 が検 討 され な けれ ば な らな
い で あ ろ う。 ま た 、通 時 代 的 に 設 定 さ れ た 社 会 と個 人 の 機 能 的 条 件 と、 「歴 史 の 所
産 」(p.5)で あ る 「基 本 的人 権 概 念 」 との関 係 も検 討 され な けれ ば な らな いで あ
ろ う。
74 人 文 学 報Na272(社 会 福 祉 学12)1996.3
文 献
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