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区分所有建物の建て替え : その立法課題

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区分所有建物の建て替え : その立法課題

その他のタイトル Reconstruction of Condominium : Some Problemes relating to the Revisions of the Relevant Act

著者 月岡 利男

雑誌名 關西大學法學論集

巻 52

号 4‑5

ページ 1009‑1059

発行年 2003‑03‑20

URL http://hdl.handle.net/10112/00023510

(2)

区分所有建物の建て替え

ー そ の 立 法 課 題 ー

̲

二区分所有建物の建て替え問題ーー盆竺次法改正

三平成一四年第二次法改正の動向

昭和三七年に制定された﹁建物の区分所有等に関する法律﹂︵以下︑建物区分所有法という︶によって導入された

区分所有建物︵いわゆるマンション

1

三階建て以上の中高層・分譲・共同建てで︑鉄筋コンクリート︑鉄骨・鉄筋

コンクリートまたは鉄骨造の住宅︶は︑平成七年以降は年二

0

万戸程度が供給され︑そのストックは︑平成︱一年度

末で約三七0万戸︑平成︱二年末で三八五万戸近くにのぼっていると推計され︑そのうち築後三0年を超えるものは︑

月岡

(1

00

九 ︶

(3)

第五二巻四・五号

( 1 0 1 0 )  

( 1 )  

平成―二年で約―二万戸、二0年を超えるものは約九三万戸になるとされている(日本経済新聞•平成一四年九月一

の連載記事「高齢マンション再生」①||_プリズム現代第五集ー~によれば、不動産情報会社の調ぺで

は、築三

0

年を超えるマンションは、三大都市圏で現在ニ―万戸ー~全体の五・九%あり、

旧建設省の平成︱一年度﹁マンション総合調査﹂によれば︑区分所有建物でのトラブル発生状況は︑駐車場︑ペッ

ト︑騒音︑バルコニーの使用方法︑専有部分のリホーム等﹁居住者間の行為︑マナー﹂に関するものが有効回答者中︑

︱ニ・五%︑また︑雨漏り︑水漏れ等の﹁建物の不具合﹂に関するものが︑

二三・五︑三三・八%にのぼるなど︑比較的高いものの︑建物の建て替え等につながる直接的な悲鳴は聞こえてこない︒

しかし︑国土交通省によれば︑建て替えニーズを想定し︑区分所有建物﹁高齢化﹂のメルクマールとして﹁築後三〇

年﹂をあげているのは︑築三

0

年前の約︱二万戸︵昭和四一年前の一・六万戸︑昭和四一年から同四五年までの一〇.

は︑いずれも住戸面積が五

0

平米未満のものが三分の一を占め︑構造的にも床や壁が薄く︑配管も埋め込み

式で修繕工事が困難であるという事情のほか︑設備・機器の老朽化・陳腐化︑四ー五階建ての九六%もにエレベー

( 2 )  

ターが着いていないなど︑居住環境として満足できるものではないからである︒また︑これまでの老朽マンション建

て替え事例として︑同省の掲げる資料によれば︑六八件の建て替え工事のうち︑三

0

0

年未満が一六件︵二三・五%ーニ五年!二九年までのものが一三・ニ%︶という数字によっても︑三

0

年を超え

ることが︑区分所有建物老朽化の︱つの﹁目安﹂であることは︑わが国マンションの否定しがたい実状のように思わ 三六•四、四五・四、五

二 ︑

万戸にのぼると推計している︒なお︑連載は︑

1 0

月七日まで九回にわたっている︶︒ 関法

1 0

年後には一︱八

(4)

を四九平米から七五平米に拡張して︑

西

しかし︑いわゆる老朽化マンションの建て替えの進捗は︑必ずしもスムーズに進んでいるとは言えないようである︒

前掲新聞連載の記事によれば︑ある意味で典型的な建て替え成功例︑計画挫折例に次のものがある︒

建て替

x

0

年超︑鉄筋コンクリート︑三階建て︑五棟︑

(大阪府吹田市)—|築三五年、鉄筋コンクリート、五階建て、五棟、

米ー一四階二六三戸︵ニー四

LDK

︑六五ー九

0

五階建て八棟︑二七

0

戸︶において︑各戸面積 の高層化

ニ ︱

1 0

戸︑約三

0

年超︑五階建て︑三七棟︑九九

0

D

K︑約四九平米ーー増床分売却

益で工事費をまかなう建て替え決議後︑地価下落︑住宅需要減のため開発業者撤退︑計画放棄︒

︵千葉市︶ー築三五年︑五階建て︑二七棟︑七六八戸増床分売却益で自己負担分な

しの当初案は︑地価下落︑住宅需要減による開発業者撤退のため断念︑自己負担案は二七棟中八棟で決議

要件充足せず計画放棄

なお︑ここで紹介されている建て替え例には︑団地型マンション

0

0

万円の自己負担をもとめ︑かつ一部敷地を売却する計画の下に︑

一棟ごとに時期をずらして︑建て替え希望者を同一棟にまとめて実施する﹁一棟先行型﹂を採用しようとしている六

0

平米市街地再開発事業として三五階建て高層化

( I  0 1

)  

0戸︑約六0

(5)

第五二巻四・五号

浦台住宅︵横浜市金沢区︶

の例や︑諏訪二丁目住宅︵東京都多摩市︶︵築三一年︑五階建て二三棟︑六四

0

戸 ︶ うに︑敷地を建て替えゾーン︑建て替え見送りゾーン︑売却ゾーンに分けて︑建て替えゾーンには自己負担のできる 希望者が入居し︑見送りゾーンには現在の建物を補修して残し︑売却ゾーンは分譲して建築・補修費に当てることを 予定するなど︑建て替えを希望しない居住者への選択肢を用意することによって︑合意形成の方法を模索する例もあ

しかし︑築後三0

年という年月の経過は︑必ずしも建て替えをもって合理的なマンション再生方法とするものでは

ない︒国土交通省の調べによると︑マンション居住者のうち六

0

歳以上のみの世帯は一九%あり︑しかも築三

0

年以

上のものでは︑この割合は三六%にのぼっている︒また︑築三

0

年以上のマンションでは︑四ー五階建ての中層住宅

でありながらエレベーターのないものが九

0

%を超えていることから考えれば︑建物の老朽化と関係なく︑その陳腐 化ともいうべき現象が進行していることになる︒ここには︑建て替えによるある意味では抜本的な方法を居住者が担 いうるかという問題︑および建て替えに代わる陳腐化解消の方法を選択せざるをえない事情とともにその合理性いか んの問題が提起されていると考えるべきであろう︵国土交通省の推計によれば︑昭和五

0

年以前に建築された東京都

内の民間マンションの六割程度は︑現行の容積率を超えた﹁既存不適格﹂建物である︶︒前記の新聞記事によれば︑

柿の木坂東豊エステート︵東京都世田谷区︑築三二年︑

ため︑建て替えを断念して︑大規模修繕で大がかりな耐震補強工事を施すことを選択し︑また︑これは県営賃貸建物

の例ではあるが︑播磨野添団地︵兵庫県播磨町︑築二九年︑五階建て五棟︑ る ︒

関法

0

戸︶は︑建物のコンクリート艦体

(1

0

ー ニ ︶

の例では︑容積率や日影規制が厳しい

だけを残し︑間仕切り︑天井︑床︑給排水管︑電気配線などの付属物をすぺて取り払い︑内部から設計しなおす改修

(6)

けでも明らかにしたい︒ 滑に移行させる﹁権利変換手続き﹂︑﹁住宅弱者﹂ を各棟ごとに随時行おうとするもので︑改修費用は建て替え費用の半分程度と見込まれている︒

これらの例の示唆するところは︑築後︱︱

1 0

年は建物老朽化の︱つのメルクマールではあっても︑建て替えは高齢マ

ンション再生の最も合理的な手法とは限らないということである︒しかし︑それにもかかわらず︑築三

0

年マンショ

ンにおいては︑五

0

平米未満の住戸が︳︱‑五%を占め︑その上︑空家率が︱‑%という調査結果︵国土交通省︶もまた

無視しえないことであり︑都市コミュニティーの崩壊を防止し︑都市再生の契機を見いだすためにも︑

修繕ないし建て替えのルールと社会的支援の必要が再認識されねばならない︒

本稿では︑区分所有建物に建て替え手法を導入した昭和五八年改正法を振り返りながら︑平成一四年三月五日の

﹁建物区分所有法改正要網試案﹂を経てその﹁改正要網案﹂

滑化に関する事項﹂に関する議論をとりあげ︑その意義を検討する︒さらに︑平成一四年六月一九日に公布された

﹁マンションの建替えの円滑化等に関する法律﹂︵以下︑建て替え円滑化法という︶が︑建て替え﹁事業の実施段階

における法整備﹂として導入した﹁建て替え事業の主体の確立﹂︑区分所有権などの権利を再建したマンションに円

マンションの

へ至る立法過程において展開されている﹁建て替えの円

への配慮として導入された﹁居住安定措置﹂について︑その概要だ

(l

)

(2

)

調

0

0

Ju

ne

 

I︱ ‑

︳ 頁

(1

0

一 三

(7)

第五二巻四・五号

区分所有建物の建て替え問題|—第一次法改正

昭和五八年改正法の概要

所有等に関する法律﹂がようやく修正されることになった︒

(1

0一 四 ︶

昭和五八年︑﹁建物の区分所有等に関する法律及び不動産登記法の一部を改正する法律﹂が成立し︑同年五月ニ︱

日公布︑翌五九年一月一日から施行されたことによって︑昭和三七年に民法の特別法として制定された﹁建物の区分

その改正点は︑第一に︑区分所有者団体の団体性の明確化と管理組合法人制度を導入するなど︵法三条︑四七条な

いし五六条︶︑管理の主体を法律上明確化する端緒をひらいたことである︵法七条︑八条︑二九条︶︒第二に︑専有部

分と敷地利用権の一体性の原則を導入︵法二二条︶したことなどである︵敷地の共用部分化に関する法二条五項︑五

三一条︶︑管理に関し集会中心主義︵多数決主義︶を採用し︑集会の権限強化とその運営の合理化を図ったことであ

一七ー一九条︶︒第三に︑共用部分の変更および規約の設定・変更・廃止要件の緩和など︵法一七条︑

一八︑ニ一条︑法二五条一項︑法二六条四項︑法四七条一項︑五五条一項三号︑法四九条七項︑五

0

三項︑二五条一項︑法五七条二項︑三項︑六

0

条一項︑二項︑法六一条三項︑五項︑法六二条一項など︶︒第四に︑

管理者の権限を拡大して︑強化をめざしたことである︵法二六条二項︑法二六条四項︑五項︶︒第五に︑区分所有者

区分所有者または占有者に義務違反があった場合の措置として︑行為の差し止め請求︵法五七条︶︑専有部分の使用

禁止︑区分所有権の競売の判決を求める訴訟を提起することを認めていることである︵法五八条︑五九条︑六

0

条 ︶

関法

(8)

﹁物理的に一体不可分の一棟の建物の各部分を独立の所有権の対象とするという﹂区分所有法の法律構成自体が︑

( 5 )  

建物の区分所有制度のある種の﹁欠陥﹂であるとすれば︑この欠陥は︑建物の建て替えという問題に直面したときに

( 6 )  

﹁最も先鋭に現れる﹂ことになり︑これに備えるため︑建物の建て替え制度を導入するに至ったのは︑立法当局者に

た制度であることは否定できない︒ 特別決議によってしかこれを決定しえないなど 本稿の課題である区分所有建物の建て替えについて︑昭和五八年改正法は︑はじめて法律上の制度としてこれを導入した︒もともと物理的には一体不可分の建物の各部分を独立の所有権の対象とする区分所有建物においては︑法六分の一を基準とする︶滅失においてその復旧権を無制限に許容できかねる性格をもちながら︵同条はこのことを明記していない︶︑他方では︑建物の他の区分所有者は︑滅失した共用部分の復旧についしてしか関与できないだけではなく︑その共用部分の復旧についても︑建物︵共用部分も含めて︶の価格の二分の一を超える︵いわゆる大規模滅

( 4 )  

失︶部分の滅失があった場合においては︑区分所有関係の解消︵敷地利用権の処分︶との選択肢を残しつつ︑集会の 一条が建物復旧について規定するように︑ 2第一次改正法における建て替えの法理

第七に︑集会決議に基づく一部滅失した共用部分の復旧および建物の建て替え制度を導入したことである︵法六一条

五項︑六項︑七項︑八項︑九項︑法六二条︑六三条︑六四条︶︒第八に︑団地の管理団体︵組合︶の成立と管理権限

( 3 )  

規定を設けたことである︵法六五条︑六六条のほかに︑団地共用部分の制度を新設した法六七条︶︒

一方では︑専有部分ですら一定程度を超えた︵同条一項は︑建物価格の二

︵同条五項︶︑建物自体の危機に際しては︑制度上のジレンマを抱え

(1

0一 五

(9)

第五二巻四•五号

よれば︑﹁マンションの建替えの時期を迎えるに先立ち︑あらかじめその場合の区分所有者の利害調整の方法を講じ

ておくことが︑区分所有制度の維持のためには不可欠である﹂と考えられたからにほかならない︒もちろん︑区分所

有者の利害調整の方法としては︑区分所有者の集会における特別決議によって︑建物と敷地利用権とを一括売却する

という︑ある意味では簡明な方法も考えられるが︑それにもかかわらず同一敷地上での建て替えという方法を選択し

たのは︑﹁わが国の国民︵区分所有者︶の意識としては︑同一場所への建替えという志向が強い﹂という認識の上に︑

しかし同時に︑﹁既存の権利への制約はできるだけ少なく︑という配慮から﹂であった︒それ故︑改正法は︑﹁極めて

( 7 )  

限定的な﹂性格を免れず︑﹁将来︑この制度の拡充を検討すべき﹂ことはすでに折り込み済みであった︒

五八年法の内容は︑第一に建て替え決議による区分所有建物の建て替え開始要件︵法六二条一項︶︑第二に︑建て

替え決議に反対した少数の区分所有者との利害調整方法としての︑賛成者から反対者に対する区分所有権および敷地

利用権の売渡請求権の規定︵法六三条︶︑第三に︑決議賛成者等の間に建て替え事業の遂行者団体の成立を認めるた

めの︑建て替えを行う旨の合意擬制の規定︵法六四条︶にわたっている︒

第一の建て替え決議規定の特徴は︑その決議に区分所有者および議決権の各五分の四以上の特別決議要件を課した

だけではなく︑建物が存在すること︑建物の物理的効用の減退があること︑費用の過分性︵建物の効用を維持し︑又

( 8 )  

は回復するために過分の費用を要するに至ったこと︶といういわば実質的要件が必要とされたことであり︑また︑決

議の内容とされる︑既存建物の取壊しと再建建物の建築については︑さらに敷地の同一性ならびに主たる使用目的の

同一性の要件が課されていることである︒なお︑建て替え決議においては︑①再建建物の設計の概要︑②建物取壊

しおよび再建建物建築費用の概算額︑③必要費用の各区分所有者間における分担事項︑④再建建物の区分所有権帰 関法

(1

0一 六

(10)

第二の区分所有権等の売渡請求権の成立は︑建て替え賛成者間での合意の擬制とともに︑建て替え決議の法律上の

効果であり︑建て替え決議自体は︑区分所有者全体に対する直接の拘束力を有するものではなく︑期限付きの売渡請

求権の成立をもたらす効力を有するにすぎない︒建て替え決議の賛成者は︑決議の反対者に対して︑建て替えに参加

するか否かの意思を確認した上ではじめて不参加者に対して︑形成権としての売渡請求権を行使することができる︒

建て替え不参加者に対し建て替え事業から離脱する自由を保障するとともに︑利害関係調整の一環としての売渡請求

権行使の前提となる売渡請求の当事者を確定するため︑建て替え参加者と不参加者とを分別する手続きを明らかにし

ようという趣旨である︒したがって︑売渡請求権を有するのは︑建て替え参加者とその承継人であり︑相手方は︑建

て替え不参加者またはその承継人である︒注目すべきは︑建て替え参加者全員の同意のあるときには︑買受指定者と

いう第三者が︑建て替え不参加者等に区分所有権および敷地利用権の売渡しを請求することができることである︒立

法当局者によれば︑建て替え参加者だけでは不参加者の区分所有権等を買い取る資力に問題が生じるおそれがあり︑

( 9 )  

これへの配慮が建て替えを容易にするために必要とされたものであり︑その意味では現実的な選択であったと評して

よい︒しかし︑そのことが再建建物の使用目的同一性の要件との間で矛盾を生じることがないか︑少し楽観的すぎた

第三の︑建て替えに関する合意の擬制によって︑そこに再建団体を想定する構想は︑まず︑売渡請求権行使の結果

として確定した建て替え参加者の間に建て替え合意が成立していないと解し︑あらためて法律によって建て替え参加

者間にその合意を成立させるとともに︑さらにそこに再建団体としての機能を付与する趣旨であると解される︒

属に関する事項が決定されなければならない

(1

0一 七

(11)

第五二巻四・五号

(1

0

なお︑管理組合︑すなわち法一︳一条所定の建物の区分所有者団体がいつまで存続しているのか︑法律上は明記されて

いないが︑学説は︑売渡請求権の行使によって建て替え不参加者が排除されたときに消滅し︑建て替え参加者間に組

( I O )

1 1

)  

合的再建団体が成立すると解し︑また︑区分所有建物の取壊し時に消滅すると解する︒しかし︑管理組合と再建団体

との関係については︑必ずしも明らかではないが︑大方は︑管理組合は清算団体に転換し︑それぞれの団体の性格に

よって︑組合または社団法人の清算手続きによって処理されると解するものと考えられる︒また︑管理組合法人の場

合には︑法五五条一項三号の集会の決議によって清算法人となって残務整理をするか︑さもなくば建物の滅失時︵建

物全部の滅失または専有部分の滅失時︶には同条一項一ないし二号によって解散され︑法五六条の適用を受けること

( 1 2 )  

建て替え決議からその不参加者が売渡請求権の行使によって排除されるまでには︑少なくとも四ヵ月を要し︑さら

に引渡が特別に猶予される一年間を考慮しても一年四ヵ月の間には︑建て替え事業の開始の必要条件が整うことが期

待されている︵法六三条二項︑四項︑五項参照︶︒したがって︑建物の取壊しに着手しなくても︑すでに管理組合と

しての事務は終了することが見込まれるから︑建物取壊しまで管理組合を存続させる理由に乏しいであろう︒しかし︑

建て替え不参加者が排除される時点を参加・不参加回答時とすれば︵法六四条参照︶︑その間はニヵ月しかなく︑管

理組合を消滅させるにはやや早すぎる嫌いがある︒むしろ建て替え決議をした管理組合は︑管理組合としての事務を

( 1 3 )  

何時終了するのがより現実的であるかの判断をみずから決定するのが最も常識的な推移ではなかろうか︒

なお︑﹁区分所有法改正要綱試案﹂︵昭和五七年︶において︑管理組合をして建て替え事業の主体とすることの是非

を問いながら︑その後に法六四条を導入したことから判断すれば︑再建団体の成立後は管理組合の存続を不要とする 関法

10

 

(12)

のが立法の趣旨であろうとしながら︑管理組合と別組織の再建団体に建て替えを行わせることの非現実性を指摘する

( 1 4 )  

ものがある︒それによれば︑法六二条において建て替え決議をすべきものとされる集会が︑同三条所定の区分所有団

の集会なのかどうか疑問があるとする︒しかし︑法六二条の集会が同三条の集会だとしたら︑そこに は論理的整合性がないというものの︑逆に︑そうでないとしたら法六二条の集会はどんな集会をいうのかが明らかに

︹カーサ西新宿事件・区分所有建物および敷地利用権売渡請求事件︺

昭和五四年竣工のカーサ西新宿の管理組合が建て替え決議と同時に︑建て替えが開発事業の一環として等 価交換方式で行われるため︑敷地変更の決議を行った場合に︑決議賛成の

Xが︑建て替えに不参加を回答したY

対し︑法六三条四項の売渡請求を行い︑Y

ら所有の各区分所有建物につき所有権移転登記手続きおよび明渡しを請求

Yらは︑本件決議が︑決議の要件である﹁老朽︑損傷︑

はなく︑﹁敷地の同一性﹂の要件を欠いているとして︑決議の無効を主張した︒

①建て替え決議の内容が区分所有権および敷地利用権の譲渡を包含するから︑これは敷地の変更に該当 し︑法ニ︱条の準用する法一七条の特別多数決により律することはできず︑この敷地変更の決議は無効である︒

②再建建物の敷地がカーサ西新宿の敷地上にないことは明らかである︒また︑本件建て替え決議は︑等価交換方 ︹ 事

実 ︺

0

頁 ︒

3昭和五八年法の下での裁判例と問題点 ならないという困難に直面することになろう︒

(1

0

一 九

一部の滅失その他の事由﹂を欠いているだけで 東京地判平成九・︱ニ・︱︱判夕九七

0

号二八

(13)

もそも法六二条の適用は困難である︒ えの範疇を逸脱している︒したがって︑客観的要件の存否を判断するまでもない︒

第五二巻四・五号

(1

0

0)

式により︑旧建物の敷地を処分して新たな土地を取得し︑その土地上に再建建物を建築する建て替えを目的とするも

のであり︑旧建物の敷地を処分するには共有者全員の同意が必要であることとあいまち︑法六二条の予定する建て替

再建建物の敷地同一性の要件は︑多少の場所的移動があっても︑同一敷地といえる程度であれば︑充

たされていると解されるから︑﹁隣接地の追加取得・隣接地との一部交換などによって面積・形状を変更する場合に

は﹂︑敷地が完全に同一でないことをもって直ちに不適法とはいえないものの︑かかる場合の﹁本条の適用にはなん

らかの制限が設けられるべきである﹂とし︑隣接地上の建物建築のために﹁過大な費用の分担﹂を招く場合には︑費

用分担のできない区分所有者排除につながる︑﹁弱者切り捨て的な建替え﹂になることを理由として︑法六二条の建

て替えに当たらないと解されてい酎︒しかし︑もっぱらこの趣旨から同一性の要件を説明しようとすれば︑等価交換

( 1 6 )  

方式を否定的に解しても︑本件のように︑﹁区分所有者に過大な費用負担がないといえそうな事案﹂では︑﹁その判断

( 1 7 )  

は微妙﹂であり︑本件の建て替え決議無効の理由は︑区分所有者全員の同意を要する敷地処分が多数決で行われたこ

とに求められることになろう︒しかしまた︑敷地変更による建て替えが制限される理由が︑過分費用の負担回避にあ

るならば︑それに抵触しない敷地買い増しはともかく︑敷地処分を伴う一部売却と併用された買い増しも︑費用過分

の要件をクリアーしたところで︑多数決による建て替えになじまないし︑費用が過分と評価される買い増しには︑そ

一方では︑建て替え決議が真に建て替えのために利用されるように制度の合理性担保のために設けられた要件であ

る﹁主たる使用目的の同一性﹂が︑居住用専用マンションを店舗・事務所用建物に建て替えることを制限するだけで 関法

(14)

はなく︑居住・店舗ないし事務所用の併用建物への建て替えをも制限し︑他方では︑敷地同一性の要件が︑ひたすら 費用負担能力のない区分所有者排除のおそれに配慮して︑敷地の買い増し建て替えを否定し︑せいぜい敷地を一部売 却してその資金で買い増しをするしか認めないでは︑そこに許される建て替えとは︑敷地面積︑

二戸当たりの専有面

積ともに建築当時の狭少なままの再築しかないことになろう︒もちろん容積率に余裕があり︑かつ敷地の一部売却や その他によって資金手当てをしたうえ︑既存の建物敷地上に高層化を図れるならば︑両要件を満たして比較的満足で きる建て替えが実現しうるであろうが︑そのような想定は多くのケースには妥当しない非現実的な期待でしかなく︑

また︑それが可能であったとしても︑かえって立法当局の危惧した費用分担のできない区分所有者排除の危険を招い てしまうことになろう︒このジレンマの行き着くところは︑﹁スラム化を助長するか︑﹃地上げ﹄の恰好の標的をつく

( 1 9 )  

り出すこと﹂になる︒

しかし︑﹁敷地の買増し﹂による建て替えであれば︑敷地の同一性を欠くことがないことを条件に︑﹁公的助成措

( 2 0 )  

置﹂の実現を期待して現行法の下でも解釈論として是認できるであろうが︑﹁隣接区分所有建物等との一体的建替え を是認する解釈﹂を導くには︑さらに︑対内的に︑﹁再建建物の割当面積の調整その他の代替手段によって高齢者や その他の低所得者の費用負担を回避させる﹂等の配慮が建て替え決議実現の条件とされることが必要であるだけでは

( 2 1 )  

なく︑敷地処理の問題が残るのではなかろうか︒したがって︑立法当局が︑現行制度を極めて限定的な制度と性格付 けて︑将来における制度拡充の可能性を容認していたとしても︑また︑﹁建替え制度の拡充に関する検討を具体的日

( 2 2 )  

程にのせる機は熟してきた﹂と考えるにしても︑いずれにせよ多数決による敷地共有持ち分の処分を是認するために は︑反対者に対する区分所有権および敷地利用権の売渡請求権をもってその間の利害調査を図ることが必要であろう︒

(1

0ニ ︱

)

(15)

体の老朽化は否定できない︒

︹ 判 旨 ︺

物の所有権移転登記手続きの請求と明渡請求をした︒ 第五二巻四・五号

(1

0

大阪地判平成――•三・ニ三判時一六七七号九一頁。大阪高判平成―ニ・

昭和四二年建設された鉄筋コンクリート造り四階建て建物ニ︱棟で構成される団地において︑各棟の区分

所有者集会が各棟の建て替え決議をし︑買受指定者が指定されたが︑各棟区分所有者で構成された団地管理自治会の

団地管理規約には︑建て替え決議は団地管理自治会の総会決議を経なければならないと規定されていた︒そこで︑建

て替え不参加者Xらが賛成の区分所有者Yらに対し︑決議には実質的要件︵老朽化等および費用の過分性︶を欠いて

おり︑かつ︑団地管理自治会の総会決議のないこと等を主張して建て替え決議無効確認請求訴訟を提起した︒これに

対して︑買受指定者z

は ︑

Xらに対し︑法六三条の売渡請求権を行使したうえ︑金銭の支払いと引換えに区分所有建

①﹁老朽﹂とは︑年月の経過によって建物としての物理的効用の減退はあるが︑いまだ社会的効用を維持

している状態であり︑社会経済的な事情︵経年的機能の陳腐化や建て替えの相当性など︶は考慮されない︒本件では︑

屋上防水︑外壁開口部の構造クラックが建物の各所に及び︑さらにベランダや窓庇部分の防水の劣化が相当に進み︑

さらに鉄筋の露出︑内部鉄筋の腐食による爆裂によりコンクリート塊の剥落事故まで発生している等からも︑建物艦

②﹁費用の過分性﹂とは︑当該建物価額その他の事情に照らし︑建物の効用維持回復費用︵改良費を含まず︑建築

時における住宅機能を回復するに必要な費用︶が合理的な範囲にとどまるか否かの相対的な判断である︒合理性の判

断では︑費用対効果を考える上で建物価額︵敷地および敷地内共用物件を除いた︑費用を投下すべき対象である各棟

九・ニ八判タ一

0

関法

(16)

遷への対応の程度をその他の事情として考慮することも許される︒

一 五

建物の財産価値︶は大きな要素であり︑また︑建物の機能の社会的陳腐化をはじめとする社会情勢や︑生活情勢の変

本件では︑区分所有建物二戸の建物価額が三

0

万円であり︑当面必要な補修費用は控え目に見て二戸あたり五〇

0

0

万円を要することや︑それをもってしても回復される建物の機能は︑建築当時の機能水準にとどまり︑専有部分の

狭陛さをはじめ生活上の不便は解消されず︑建て替えは過分の費用を要するに至ったというべきである︒

③法六六条は︑団地における建物区分所有に関する規定の準用において︑法六二条を準用していない︒各棟建物

の所有権は当該区分所有者に属するものであり︑団地管理組合の権限が各棟建物の区分所有者の所有権を排して建て

替えを強制しうるためには︑特別の立法を要する︒したがって︑本件団地管理組合の当該規約規定は法六六条に抵触

④法六三条四項によれば︑買受指定者の指定は︑建て替え参加の催告後二月を経過した後︑決議賛成者および建

て替えに参加する旨の回答をした区分所有者全員の合意によりなされるべきものであり︑本件のように︑買受指定者

の指定が建て替え決議と同時に付帯決議によりなされることは明らかな手続違背である︒しかし︑付帯決議を含む本

件建て替え決議は︑非参加者らが棄権し︑その余の区分所有者全員が賛成して行われており︑結局は︑決議に加わっ

た区分所有者と建て替え参加者とは一致しているから︑その手続的瑕疵は治癒される︒

⑤区分所有建物二戸あたり︑敷地の更地価格が三五八

0

万円︑建物価格が三

0

0

万円︑建物および土地の合計額

が四

0

七六万円と算定されていることを総合考慮すると︑区分所有建物価格は︑少なくとも四

0

0

したがって︑非参加者らは︑買受指定者に対し︑各四

0

0

万円の支払いを受けるのと引換えに︑所有権移転登記

(1

0

(17)

第五二巻四・五号

(1

0

建て替え決議の第一の実質要件は︑区分所有建物の効用が減退し︑しかもその原因が﹁老朽︑損傷︑

一部の滅失﹂のほか︑﹁その他の事由﹂︵建物の当初からの構造上の欠陥︑建物の利用上の不具合︑その他建物の現状︑

( 2 3 )  

建物の使用状況︑土地の利用に関する周囲の状況など︶によってもたらされたことであり︑老朽化は︑効用減をもた

らした原因の例示の︱つである︒原判決および控訴審判決によれば︑ここで問題となる効用とは物理的効用であり︑

社会的効用ではない︒したがって︑社会的効用の減退・喪失については建て替えをもって回復すべき効用の減退・喪

なお︑﹁その他の事由﹂に様々な事情を含めて︑ここでの効用の減退を社会的効用減にまで拡大すれば︑高層化等

による土地の有効利用を図る土地の効用増を目的とする建て替えも法六二条所定の手続によって可能とされるであろ

( 2 4 )  

うが︑この点については議論がある︒もともと﹁その他の事由﹂の立法当局の説明に曖昧さがあるところにこのよう

な解釈の生まれる原因があるのであろうが︑この解釈によると︑建て替え時における新築建物の水準に照らした機能

( 2 5 )  

面での劣化をも﹁老朽化﹂と認めることにもなり︑解釈論としては無理であろう︒

建て替え決議の第二の実質的要件は︑建物の効用維持または回復に過分の費用を要するに至ったことである︒判旨

( 2 6 )  

は︑﹁建物の効用を維持し︑または回復する費用﹂には改良費は含まれず︑費用投下によって回復される建物の機能

は建築当初のものであるとして︑ここでいう費用が補修費用であることを明らかにした上︑具体的に費用の過分性を

判断している︒費用が過分か否かは︑﹁建物の価額その他の事情﹂に照らして判断されるが︑その判断がその他の事

情を加えてなされる以上﹁相対性﹂を免れないから︑﹁建物にどの程度の効用を期待するかは︑相対的な価値判断の 失とは考えていない︒ をすべき義務を負担し︑かつ︑建物明渡しをすべきである︒

(18)

問題であり︑まず第一次的に区分所有者が判断すべきものですから︑区分所有者の大多数がこの要件を満たすものと

判断したということは︑それ自体十分に尊重すべきものと思われます︒すなわち︑その判断が不合理であるといえな

( 2 7 )  

い限り︑その決議を有効と認めてよいのではないか﹂と解されている︒

﹁その他の事情﹂につき︑﹁建物の機能の社会的陳腐化をはじめとする社会的情勢︑生活情勢の変遷への対応﹂を上

げている︒その趣旨は︑過分性の判断は建物価額と補修費用との﹁具体的な経済評価﹂︵費用対効果︶にとどまらず︑

補修の結果得られる﹁建築時における当該建物の住宅機能﹂とさらにその他の事情︑すなわち﹁社会的陳腐化をはじ

めとする社会情勢︑生活情勢への対応﹂度を考慮して判断すべきというものであり︑実現した結果によって得えられ

た満足度をも考慮してよいというものであろう︒控訴審判決は︑より端的に︑﹁建物にどの程度の効用を期待するか

は︑相対的な価値判断の問題であるから︑建物の効用の維持︑回復にどの程度の補修工事をするか︑どの程度の費用

を投じるかは⁝⁝この点はまずもって区分所有者が判断すべきことであると解されているから︑大多数の区分所有者

の判断は︑それが不合理といえない限りは︑これを尊重せざるをえないものと解される﹂と述べるに至っている︒こ

こには補修工事といいながら実質改良工事を行う費用を考えているのではないか︑と想像する余地が残されている︒

一審判決については︑建て替え議決が法定手続要件を大きく上回る区分所有者の賛成を得てなされたことを重く見て︑

( 2 8 )  

それが﹁実質要件を肯定する一要素となったであろうと推測﹂するものがある︒

Xらが︑過分な費用を要するに至った老朽化等の原因を物理的な事由に限定しながら︑過分性

要件の判断においては︑建物の価額と補修費用の比較だけではなく︑建物の社会的効用の減退による建物の利用価値

の減少︵建物の機能の社会的陳腐化をはじめとする社会情勢︑生活情勢の変遷への対応の程度︶を重要な要素とした

(1

0

一審判決は︑費用過分性の判断材料としての

(19)

一審判決には﹁論理矛盾﹂があると指摘し︑立法過程で否定された﹁効用増建替え﹂を容認することになると批判し

てはじめて前者の判断に至る関係にあって︑﹁場面を異にしている﹂として﹁論理矛盾﹂の指摘を退けている︒しか

し︑﹁効用増﹂を目的とする建て替えを否定しきれる論理であるか︑疑わしい︒

なお︑売渡請求の対価である﹁時価﹂については︑再建建物および敷地利用権の価額とそれに要する経費との差額

ではなく︑また敷地の更地価格と現在の建物の取壊し費用との差額でもなく︑敷地の更地価額と再建施行マンション

の価格との合計額として算定されているようである︒これについては︑後に掲げる︹グランドパレス高羽事件︺と併

補修案と建て替え案の検討を経た上︑管理組合Yの臨時総会において建て替え決議がなされた︒そこで︑Y

B

は︑決議の反対者Xらに対して建て替えへの参加を催告し︑決議の賛成者z

Xらに対し区分所有権等の売渡し

X

Yに対し建て替え決議の無効確認を請求し︑N

Xらに対し︑売渡請求にかかる売買

契約に基づき︑各専有部分の明渡しと区分所有権等の移転登記手続︑売渡代金の確定を請求した︒

. ︹ 判 旨

︹ 事

実 ︺

第五二巻四・五号

一審判決を支持して︑費用の過分性判断と建物の効用の減退の判断とは後者の判断を経

昭和五五年建築の︱二階建てマンションが︑平成七年一月の阪神・淡路大震災により損傷を受けたため︑

①費用の過分性とは︑区分所有建物が物理的効用の減退により建物の使用目的に応じた社会的経済的効 判平成――•六・ニ―判時一七

0

五号一―二頁。 たのに対し︑控訴審判決は︑ 関法

(1

0

神戸地

(20)

一 九

用を果たすために社会通念上必要とされる性能を損ない︑その損なわれた効用を維持・回復するための費用が相当な

範囲を超えるに至ったことをいい︑たんに建物の時価と建物の維持・回復費用の比較によることなく︑諸般の事情を

総合考慮して︑建物の維持が合理的か否かによって判断されるべきであり︑その判断に当たっては多数の区分所有者

②法六三条四項の売渡請求にかかる区分所有権等の時価は︑売渡請求権行使の当時における区分所有権および敷

地利用権の建て替えを前提とした客観的な取引価格であり︑具体的には︑建物を取り壊し︑更地として有効利用が可

能となった状態の敷地の価格から建物の除去費用を控除した金額によって算定されるべきである︒

③売渡請求にかかる時価は︑客観的に定まるものであるから︑Nらによる代金の提供がないことをもって売買契

約が無効となるものではなく︑原則として︑区分所有権等の移転登記︑専有部分の明渡しと時価相当額の代金支払い

は同時履行の関係にある︒しかし︑区分所有権等に抵当権等の登記がある場合にはてき除の手続が終了するまでZ

は代金の支払いを拒絶できるから︑Xらは︑代金の支払いがあるまで所有権移転登記ならびに建物専有部分の明渡し

ここでの争点は︑第一に︑区分所有建物の建て替え決議が法六二条所定の要件を具備しているか︑と

くに費用の過分性要件を満たしているかである︒判旨①は︑建物の﹁効用の維持︑回復に必要な費用が相当な範囲を 超えるに至ったか否かは︑建て替え決議当時における当該建物の時価と建物の維持︑回復費用との比較のみによって

判断すべきではない﹂と強調したうえ︑まず︑当該建物を維持することが合理的かどうかを判断する︒その判断材料

が﹁建物の価額その他の事情﹂であり︑具体的には︑﹁建物の利用上の不具合その他建物の現状︑土地の利用に関す

の履行を拒むことはできない︒ の主観的な価値判断が尊重されるべきである︒

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0

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第五二巻四・五号

(1

0

る四囲の状況等︑建て替えの要否の判断に際して社会通念上検討されるべき諸般の事情﹂である︒したがって︑これ

らの事情の﹁総合考慮﹂のうえに合理性が判定される︒ついで︑費用の多寡について︑相当であるかを判断している︒

ただし︑ここでの費用とは︑﹁建物の効用の維持︑回復の費用﹂であるものの︑そこで想定されている建物の効用と

は︑﹁建物の使用目的に応じた社会的経済的効用を果たすために社会通念上必要とされる性能﹂であり︑しかも︑﹁区

分所有者の主観的な価値判断に左右される﹂ことのある﹁建物の使用目的や効用の要求水準﹂によって決定されるも

のである︒したがって︑費用が相当な範囲であるか否かの認定については︑﹁建物がその効用を果たすべき性能水準

についての多数の区分所有者らの主観的判断は可及的に尊重されるべきである﹂としているのが特徴である︒

前掲大阪地判平成一―•三・ニ三も論旨の構造において、まず当該建物の維持、つまり補修費用の投下が合理的か

否かを判断し︑その上に費用の過分性を検討している点では同様であるが︑これについては︑さしあたり建築当時の

建物の機能水準回復のための補修費用と要再建建物の価額とを比較しつつ︑期待される再建建物の機能回復を念頭に

おきながら︑効用維持回復費用の過分性を導いている︒ここではまだあまり明確でなかった再建建物の効用について︑

本判決は︑維持回復されるべき建物の効用を﹁社会通念上必要とされる性能﹂であり︑﹁社会的経済的効用﹂として

その客観性を前提としつつ︑その効用とは︑﹁最終的には︑本件マンションにいかなる品質︑機能を期待するかとい

う区分所有者の主観的判断によって決せられるものである﹂とし︑ここでは建物の美観および区分所有者間の公平の

維持と構造上の安全性の保障が回復されるべき建物の効用として重視されていた事情を指摘している︒とくに本件の

要再建建物が地震による被災建物である特殊性を︑さらに補修後の予期しがたい不具合発生の可能性やそれに対する

居住者の不安︑被災建物であることによる取引価格の低下等を﹁その他の事情﹂として勘案している︒

0

(22)

できない﹂として︑結論的には︑これを是認している︒ 再建建物の効用に対する区分所有者の期待等を含めた判断の主観性について、前掲大阪地判平成一―•三・ニ――一の控訴審である大阪高判平成︱ニ・九・ニ八は︑より率直に︑﹁建物にどの程度の効用を期待するかは︑相対的な価値判断の問題であるから︑建物の効用の維持︑回復にどの程度の補修工事をするか︑どの程度の費用を投じるかは︑⁝⁝まずもって区分所有者が判断すべきことである﹂として︑現在必要な費用だけではなく︑将来必要と見込まれる費用をも考慮すべきとしながら︑他方で︑﹁大多数の区分所有者の判断は︑それが不合理でない限りは︑これを尊重せざるを得ないものと解される﹂として︑主観的判断にもある種の制限の働くことを承認している︒

高裁判決のこのような判旨に関連して︑法六一一条の建て替え決議要件のうち︑手続︵多数決︶要件と実質要件︵建 物が効用を維持し︑または回復すするのに過分の費用を要するに至ったこと︶との関連構造を基本的に尊重すべきで あるという立場から︑費用が過分か否かの判断を基本的に区分所有者の判断に委ねるという相関判断説を退け︑区分 所有者の意思とは別に費用の過分性を判断するいわば独立判断説を是認しつつ︑両者の間には﹁本質的な乖離﹂のあ

( 3 0 )  

ることを指摘するものがある︒

山野目教授は︑高裁判決の論旨を分析して︑﹁過分性の全体は客観的な評価︵実際上︑裁判所の評価︶に服するも のということを前提としたうえで︑そのような客観的評価の際の比較の一方の要素である建物効用維持回復費用の見 定めの部分のみを区分所有者の主観的な評価に委ねるものである﹂として︑﹁そのような意味において︑ここで提示 されているのは﹃相関判断﹄ではなく︑︿緩やかな独立判断﹀の︱つの在り方であるから︑これを不当と見ることは もちろん︑過分性の評価を区分所有者の主観的判断に委ねることを明言する高裁判決とても︑効用増建て替えを否

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