[虫ぼし抄] 関西大学所蔵「村田春門家集」(原題
『藤門雑記 近代和歌』) (2)
著者 関西大学図書館手紙を読む会
雑誌名 関西大学図書館フォーラム = Kansai University Library forum
巻 23
ページ A1‑A33
発行年 2018‑06‑30
URL http://hdl.handle.net/10112/00021913
一 関西大学所蔵
「村田春門家集」 (原題『藤門雑記 近代和歌』 )⑵
関西大学図書館 手紙を読む会 ● ● ● ●し
抄 ぼ 一はじめに 虫
この「村田春門家集」は、『関西大学図書館フォーラム』第二十二号(二〇一七)に掲載した一~三十丁表の続きにあたる。その解説については、第二十二号をご参照いただきたい。今回は三十丁裏~七十六丁裏の最後までを翻刻した。 なお、関西大学図書館手紙を読む会のメンバーは、以下の通りである。森川彰(助言者)、池尻孝子、鵜飼香織、田中純子、中川敏子、長谷章子、瓢野由美子、福嶌真奈、八尾奈緒美 二 凡例
翻刻については、次の要領に従った。◦漢字は、原則として常用漢字に改めた。◦仮名は、原則として片仮名及び平仮名を用い、変体仮名は平仮名に改めた。◦踊り字はそのままにした。◦破損、虫害、判読不能は□で示した。推測できる場合は□の中に字を入れた。◦難読字は( )でかなを付した。◦丁移りは 」で示し、上に丁数と表(オ)、裏(ウ)と明記した。 よのひとの わりなくくもの いとはれて さすかにすめる 月そかたふく同猫ふるころも つみゆるされぬ ものとてや ねつミならへる ねこまなるらむ同山家秋興山さとの かきほにかゝる つたかつら にほひてあそふ けふにもある哉同紫蓮尼のいほりハ日下の山のなかハにありてにしき色目路かきりなく海かけて見わたされたり 松のこの間にさくらかへて枝をかハしとりのさへづりむしの声まていとあハれふかき所なりけり おのれかつねにおもふにかなふ所又ほかにハあらしうら山し よしのゝたけの おくまてと さすかによをハ おもひすてねハ
同おなし庵にて月を見てなにハより はるかなりつる いこまねの このまの月を かそへてそミる同秋の山に松たてり
同 月のよころをあやにくにふる雨のおとのみしけきまとのくれたけ 雨夜思月 同 わけゆけハ今そ鳴なるみちなきかたに床かへてかたのゝうづら 同 つゆそみにしむ秋のさかのゝみしかさニうつらころもの声たつる 名所鶉 同 しかもなきあきさひにけり松のいろさへ外山なるもみちもせねと 31ウ」
二
月のため あたらこすゑを はらハせし かひなくそゝく よはのあめ哉同暁天渡雁つら〳〵に つらねきにけり 春の雁 なきてわかれし よこくもの空同松間月さよなかと かけハふけても 軒ちかき 松をはなれぬ あきのよの月同月前恋されハよと おもふもうれし 月いるゝ けしきハかりに さゝぬねやの戸同
古寺月 同 ひさかたのミつほたるらん月のひかりを千万にわけてとしある 寄月祝 同 かたたつねてんいるかけ見えしおひしきて月人男しをりせよ 月前尋恋 同 庭ハ野とつゆのしけさにあれつるあきもうれしかりけり月やとる 庭前月 同 月のミふねそしつまりてかけとゝめけるそらの海くものうき波 雲収月行辺 同 まあものかつきつくらさうてを秋くたらしの月づましにまみなてへ 浦月 32オ」 花路月 同 しきみたくけふりハそらニさはらすて月の光のミつのおほてら
隣家紅葉 同 のハなへてひとけもミえす荻薄声をあハせて秋風そ吹 秋風満野 同 のこりなく秋ハ来けりこさまさるもミちをゝしむこゝろまきれニ 惜秋 同 ましるかミねのゆくくもニふくにまかせてさをしかの声秋風の 山鹿 同けり いろにそめもミち葉ハうへしもゑへるミわのこのまのうまさけを 紅葉如酔 同 くやしくかけてしりなから月の心と契りつる哉はれくもる 寄月変恋 同 くもゝなく月あかきよはかさなるみねもやへ山とさたかなりけり 山月 同 秋の宮人たちうかるらん花陰に月のかつらのをりかたき 32ウ」
さそひきにしくれをさへニさかなさはかせのこゝろのもみちふく 紅葉厭風 同 をしまるゝかな心にしみてもみちはもとなりのそのゝわかならぬ 33オ」
三 けり同紅葉送秋もみち葉ハ つゆしもふかき ミ山より くれゆくあきを まつおくるらん同秋樹もミちせぬ 松ももみちに ましりてハ 中ゝあきの いろをそへけり同秋井あきのよは 井のへのかつら つゆちりて 月のひかりを たゝへつる哉同山路菊山ひとの やとハとゝへと しらつゆの ミたれてきくの にほふたにかけ同山ふかく きくをしをりて いるまゝに そてのかさへも 秋さひにけり同待恋
同 水の上にも月さえてはふきなく也あしかもゝ霜やおくらむ 霜夜月 同 さをしかもまはきさく鳴よはるらし暁の霜あきハゆめのゝ 初冬暁 同 ミねのしくれをはるれハかゝるこゝに松陰やしほりてそてのつゆ 山路時雨 同 のを かならすあすとまたれけるこよひさへにそわすれてハたのめしも 33ウ」 東宮 同 薄くくれけりしほづすかうらミるめハおひぬ海士の刈夕けふり 水郷眺望 同 よはの山かせこのはしくるゝしもなからいよゝさやけし月かけハ 同 月のひかりハ霜そこほるゝかせのまに〳〵それなから松の葉の 同 おなし色なる月そしつけきおくしもゝたか〳〵とをのへをかけて
時雨晴陰 同けり ふりそゝくあめのなこりのふかミとりとほやまちかくはれわたり 雨後遠山 同めや あやのみけしのうまひとのみにおハぬこひをハこひぬためしなら 寄衣恋 同 日かしほ山なてるたくわくるかゆふつあめのきためなさしれのあく 名所時雨 けり同 ゆるされていろに見えつゝむたもとのうれしさハみはしをのほる 殿上人 同けり かけひろくつかさなりあふくもたかきふちなミハむらさきにほふ 大臣 同 わかやかにミやのうちかなのとけきはるの出入もたもとつらねて 3オ」
3ウ」
四
かさやとり たちいてはやと おもふまに またかきくらす むらしくれ哉同夢逢恋あハれとハ わか中神も おもふらん さすかにゆるす ゆめのかよひち同庭空草わかやとの かけにもせんと たのミしを 霜さやくなり 庭の枯荻同落葉帯霜おく霜の あさひにゝほふ ぬれ色ハ ちりてもこさの まさるもみち葉同寄海恋いへと〳〵 ひとのこゝろハ いさなとり 海さへあさき わかおもひかな同海辺千鳥おきなミの うへより風にあらハれて いそつたひして ちとり鳴なり同寄衣恋よにしのふ 下のにほひも あらはれて うきまつハしの うへのきぬかな同
露 同 雪の下いほつもるミやまのいたつらに春こハくあらましことも 山家雪 同 ろりけにきにれまもけこあかすならぬ吾名ハれときみか名のをしの 依忍稀恋 3オ」 田残雁 同 のまふけ夕うしらやのろむしりひましりけりさハのをとひもおにや けふりたちたるかた薄のうへより 同 かりこものさミたれはるゝそらいろ見えてめづらしくよとの沢水 五月雨晴 同 てえのはゝきゝのおもかけきなそハらぬかミすか夕かわもやせふや 名所霞 同 かたしくそての暁のつゆくらへ見むおきいててくさのたもとに
同 のまるくかちゝむつ荷もおとさめくなか関るへかてやはもてしおも 来不留 同 おもひくたくるかきおこし埋火のたまあられかなふけゆくねやの 寒閨聞霰 同 りけちたきしけりの冬いろふかきもミちもきくもそれなからそらよ 初冬 同 はやくわかれしあへりけり川島のミつ又ゆくりなくなかれてハ 同ける にハたつミにはかにあめのふりいててなかれあふせそうれしかり 俄逢恋 同 わたりきぬらむ冬田にかりの刈果しおもひのとめておハれしと 3ウ」
五 春日山鹿かすかやま ミねのさをしか 鳴なへに にほふゝもとの ゝへの秋萩同かんきくはしはみ 物名 名所炭竈 同 からひとの雪のあけほのほそたに河の山陰やあとをそおもふ 冬遠情載安道故事 同 片恋の岡つれなきひとをとしをへてなけきそしけるこゝろから 片恋 けき同 つゆそしつかれはのしものかしは葉のつみのこしたるもとつ葉ハ 橋上霜 らむ同 いかていふしゝまひみよとのゝしるをおとりたちまひひとさハに しゝまひ らむ同 かきけちていくたひけふハうちしくるミねのけふりをすミかまの 同なし はやくおひしくむらしくれふるほとミゆるうきくもゝミねわきて 遠山時雨 同 もはいさゆかむめきくのミならてよとしの河いしは見てこそハよし 3オ」
つは風そるなかふとなはのハよくてくみつかきにかるよしめなハうちはへかのへつね冬ふるあめのおとさにけれふるかハはつうと〵〳 冬雨社頭祝 同けき同 けふりに見えてすミかまのつくは山かたそはるまよひゆくなる風そミたるゝたひころもみやこをハそゝろにいててこのもかのもの 3同ウ」 ゆめのまくらのつゆはらふ也みつるミやこの朝あらしさめかたき 羇旅 3オ」 同 われてあひみるおともなく水のしら波川なミのよしもあらなむ 同 ミなるつおきてりまあもにふたゆ哉まにりこなのめのぬてはもれし 忍恋 同 え雪ほらミるひともくてきけりおなハさらのさけとのしにりふしの 名所雪 同 おなしくハちかくなかなむ山ほとゝきす三日月のひかりほのめく 同 44 そら ほとゝきすあすはたいかにまたすらむ夕くれの声いまきゝそむる 夕郭公 同 とハくこ春にまかせくささてらハ花すかそめあるへたもまめしとお 同つゝ 日をかそへこゝろもとなくしりなからつねなるものとはなハよの 待花 同
六
同もろひとの よむことの葉も ひかりある いほつゝとひの たまつしま山同遠炭竈山つミの たつるみつきと たか〳〵に けふりたえせぬ をのゝ炭竈同松雪つくしわた あたゝかけにも みゆるかな 風ハそらふく 松のしら雪同春ことに きゆとハすれと 松かえの ちよつむものハ 雪にそありける同寒日経詹短ふゆのひの のきはの柳 ちりはてゝ いともミしかく くれかゝりけり 同行路氷
むくらふハよひ〳〵の朝しもきえぬつゆにとゝめて月のひかりを 朝霜 同 軒の山風たつとはかりの冬ハまたさそひもはてすもミち葉は 山亭冬到 同かな せきのゆきかひいとまなくうまやのすゝのふるしくれあつまちの 関時雨 同 わかさとの岡へのまつの朝嵐しもゝおかしと吹はらふらむ 松霜 同 くたけなからにまたむすひつゝ朝氷かよふ市路のをくるまの 3ウ」 冬野 同 たらしとひくむろともなしあついてミち葉のしたるも庭のこけしミ 閑庭紅葉 同
初冬日 同てそきる かさねこのはころもをこけのうへにいはほのかたのかせをいたミ 冬苔 なり同 あられふるまきの葉しのきさむしろによはのあらしのさらぬたに 冬莚 同 こふまくす葉の風うら見んとお山ものよきしれ折りうたしれあそこ 人伝恨恋 同 ものさわかしきにはのゆふ風中ゝにこのはみたれて冬くれハ 閑庭落葉 同 にこふすまかつきふしたるあるかなきかの埋火の声さへもうき 同 よをもるいぬの月更て見すてゝとさす声そひまなきすさましミ 冬動物 同 りてれかももとミゐなれくくおゝしるなかへの冬へもかにきろしの 38オ」
初冬衣 同 り跡のあしみのしかゝりけりかたも冬はになもちミかるこのハ日の 38ウ」
七 かせさむき 冬のけしきも しられけり くち葉かさねの 衣手の杜同冬野かくれたる みちハかた〳〵 あらはれて ひとかけもなき かれの原かな同落葉満流いまもなほ あきのなこりの ありてゆく おち葉か下の あさ川のミつ同鳥さしといふものゝ絵にのかれきて すむかひもなし もちとりの かゝるうきよの さかの山さと同未不言恋ひとやりの なけきならめや 我心 うしとやさしと いひもやらねハ 同初恋ことにてゝ なにゝたとへむ からころも むねあひそむる よはのこゝろを同月前水鳥
同戸を きませわかせこおしあけてさゝぬいたなにたゝくらむまれにしも 寄催馬楽恋 同らむ としころもおもひたゆとハなにいまさらのなかりしをなみたなる 同 そるなていひもおう名ろ通いにしきのかたしそもきさはのもりしな むかしをおもふ恋 同 はりやすの池月やむかしのかけこほるいまもむれゐてをしかもハ 3オ」 寄水恋 同 あさ川そむすふてのけさハますミの雫もこほるかゝみなしける 物名筆墨紙 同 そねかよるあ声たにもしかかきひふいくるそはたつくねさめのまら 冬夜難明 同 こゝろなるらむ吹かせのみさをミたさす秋をへてさゆるや松の たまくしけ同松の下陰霜吹こほす風さえてあくるミやまの 寒松
同 吹かへすらんはるのこゝろをあら玉のこよひハわさとものゝ音も 道堪か家にて冬至の日 同 風のしきたるなきやとにたまあられかなたれまつとしも冬こもり あられ 同 とねらなちハろもたきるに身とそひなかへうのきひたかれら忘てつ 片恋 同けれ みこそやせおほつかなさにつゆのまのこのあかつきのわかれしハ 後朝切恋 同 ひさかたのそらゆく月もひかりしみつく庭のくまさゝおくしもに 霜夜月 同 このろゝみふもおとしなくなつさめにひとりかすかくつくきの跡れ 3ウ」
八
川千鳥むらちとり ミたれなくなり ときつ風 ふくやなミこす 野田の玉川同
芦花似雪 同 ミてふきもしとき駒ハしああひとのむらくゆやひまちいふかりうの 同 たてまつる弓弭のミつき冬そにきはふあまりある御代のいちちの 冬市 同 つのふりたつるさをしかのむらしくれかな冬のゝ原にあらはなる 冬野鹿 同 ほらぬかたむにしろやかふらこりのはあらしふよくにさわきて水と 夜水鳥 同 おとにのミきくの浜風ひとにきせはやよるなミのぬれきぬをたに 聞恋 同 いとへたゝ吾こゝろかはおもひやむへき死かハりいとへハとても いとはるゝ恋 同 下つミくゆきのけこゝつひのくのあとみるのミそいのちなりけるし 忍てこゝろをかよハすこひ オ」0
夕かせそ吹たゝひともとのほのにゆきちるあしのほの刈のこす 同 そらにミたるれあしの花こそふくまゝにゆきのしま風名にしおふ ウ」0 寄笛恋 同つゝ かきかそへほこらハしけにかすをのミわかミのとしのつもりたる 同かな めつらしけなくことのはもおもひはるくるつもるとしくやしさを 同 れくこそハにあとおもへといたかくつそるけりかしやら日月るもつ あれ同 ひとのよハたゝかくこそハうつせミのさのミなけかしくれぬとも 同けり いまハくれことの葉のかよふミとせもあとゝめてみちのしをりの はやくとしへたることをおもひてよめるつらねうた いふことをひと〳〵とゝもによみたるにこゝにかよひそめしより 喜里川のさとにてふみよみとけるついてにとしのくれと 同 かすミそむらん沖浪かけてけふりよりうらのしほやのあまのたく しほかまのかた 同 かならす来ゐる梅あれハ鶯ハたかいさめをかわすれさるらむ 梅に鶯のきゐるかた 同
同らん とけぬなるいけのこゝろのたかためにかたくむすひて日もかゝミ 池氷 同 おもふゆふへにのるこまふえの声そきこゆる吾せこかこまほしく 同 つま琴にふきあハすめる契りともかなふえたけのもとすゑとほる オ」1
九 芦花似雪をりかさし ミせはやひとに あしのほの ゆきとミたるゝ そてのけしきを同風のむた 雪かなからふ いなをかも 長江の岸に あしか花ちる同河水鳥もミち葉ハ 庭にくちゆく 谷川に なほいろ見ゆる をしのむらとり同冬の日も のとかにうつる 玉しまや なゝせのよとに うかふミづとり同窓前雪したをれハ いとふものから おもしろく 雪こそつもれ まとのくれたけ同雪ふかく ふりしもしるく さよなかに まとのいたとの ひましらみけり同1ウ」嶋雪たくひなき ミるめなりけり あさひかけ たゝさすしまに つもるしら雪同なみのゆふ あはちしま山 しろたへの ゆきのころもを かさねきにけり同ちかのうらや ちかき笆の しまさへも とほくミるまて 雪そつもれる同寒山月ゆきもよふ あらしハたえて ミ山木の こすゑにこほる 有明の月同山さとハ 雪もこほりも てる月も ひとつにさゆる 軒のよあらし同遠山雪おほひらや をひえにかゝる 雲はれて けさみそめけり ミねのしら雪 同ありま山 ミねのしら雪 をり〳〵ハ あらしの庭の 花とちりなむ同都雪小車の ワたちも見えす 白雪の けさこゝのへに ふりつもりてハ同ふりにきと とものみやつこ まをすらし 雪の花さく あけかたのそら同2オ」椎柴こりつみて 冬こもりする 山さとハ よにゆたかなる 軒のしひしは同花もみち さそひつくせし 山風の つひのよるへの ミねのしひ柴同人のもとより色よききぬをおくりけるよろこひに山ひめの 心つくして これそこの 秋へておれる にしきなるらむ同寄魚恋川よとの こひのいろこの かす〳〵に おもひしづめる 我ミなりけり同あゆさへも 時をしくれハ 山河の うれしきせをも のほらすやある同井岡春蔭かをとのこうませたるをいはひてたちならふ 松のときはの かけこそハ よこもるかめの すミところなれ同氷冬なから 日のさすかたハ あつ氷 さすかにとくる おとのさひしさ同
一〇
水たまる いけの下ひも ふゆの日ハ こほりのくさひ さしかためけり同立春
早春 同のミ ときそまたるゝそめてきむかすミのころもいつしかとさくら色に 早春待花 同 冬かけてさきつる梅の花なからミるひとたれか花にあくへき 登梅 同 つとさたかすミそめしもるはけきよらハりのふハちかきミ雪ねのし 風光日ゝ新 同 なミの下草やゝあをみゆくみしまえやはるかせわたる柳かハ 初春水辺 同 立むらいきもとしのうちにかすミもになとてその春りかかいすへあ 年内立春 同 けふとくれてハ月も日もこむ春をなくさめもなしまつよりほかの としのくれニ 同 たそなには江のあまたとしなミきたちかへりしたちかへりつゝの春 ウ」2
かるあのニふなひくそなたにけきけとさし柳もなねひ青柳のえたとくつゝるうくひすのは鶯のなく春のひかりののとかなる 正月七日きのえ子の日なりけれハ鶯声隔樹 同同 しなかわ花さか声さやかなり鶯ハま春の夕くれかすミはてたるミねもをもついむをむらなけもやはきゆらしのへのハりよま オ」夕鶯3 同 なのもの冬つかりきふゆるミハしらつくそはるのおとをたてけるも 同 はるのはつ風さそひきぬらむ吹ときてたかねのミゆきこほりゐし む月の三日四日うちつゝき雪のふりけれハ ウ」3 同 おなしいろなるうめの初花あやまたす風こそかをれ月雪も 雪のゝち月あかきよ梅のかをりけれハ 同 うくひすハさとゝひておのか古巣をあこからすらんこすゑ春めく 里鶯 同 むら山のけさハ見えけりかすむかうすくほの〳〵と雪のひかりも 同 かすミそめつゝいつしかけさハしら雪もとやまの松のあけにけり 同 ち声くなゝてすくねらか山らもたとしのはしめハことにしありけり はるのはしめに 同 ミならしのまほるたわれは沖〳のしつはのらうやさもむすかと〵け 霞 同
一一 同はるかすみ たなひきわたる 小松原 うへこそけふハ はつねなりけれ同ちつこかことしも若菜をうつくしきひけこにいれておくりけれハことの葉の 其色かへす はつわかな かたミに春を つむそうれしき同山霞春霞 ふかくなるらし 日にそへて とほくなりゆく むこの山のは同賭弓オ」あつさゆミ はるのかすミの たちいてて こゝろいらるゝ けふのもろ人同あやまたぬ けふのもろやの かちさひに 春のしらへを 吹かへすらむ同梓弓 とりてならへる とねりらか そてもゆたかに 春かせそ吹同おほきミの ちかきまもりと とるゆミの とものおとたかき くものうへかな同はなつやに おのか心も のりゆミの かへりあるしそ ゆたけかりける同春氷春の日の 光にとけぬ つれなしと ふゆハみえつる いけのこゝろも同こほりゐし 春の下根の 忘れ水 さすかに春は おとをたてけり同魚始躍山河の なひくうきもに ふす鮒も はるのひかりを けふやしるらむ 同紅梅映日春ふかき 梅のさかりハ ことさらに 朝日夕日そ こそめなりける 同くもはるゝ あめのなこりの つゆさへも 夕栄ふかく にほふうめかな同閑中春曙ウ」しつけさハ まくらにちかく 百千鳥 ちとりさへつる 春のあけほの同しはの戸ハ 風もたゝかて はなとりの いろねにあくる 春のよのゆめ同谷早蕨いかにして をりしりぬらむ 春の日の ひかりもうすき 谷のさわらひ同もえいてし かひハなになり ひとしれす 春もたけゆく たにのさわらひ同梅薫風 以下丗首文政三年正月廿二日夜詠春風の かつ吹さそふ 梅かゝも つねにことなる あけほのゝそら同あたらしと をしむかきつの 梅かゝを 心のまゝに さそふはるかせ同梅かゝと ともにつたへる 春風は みせはや人にと おもふ心を同おほつかな たかすむさとの 梅ならん かをり来にけり よはの春風同さと〳〵の 梅さくころの 春風は 庭のたまさゝ かにゝほふまて同おひしかむ よしたにもなく 吹過ぬ いかにかせまし 梅の春風
一二
同このあさけ 風かをりけり 鶯の 声する岡の 梅やさくらむ同梅かゝを ほのかをりとて たまたれの をしむかひなく 過るはる風同オ」かをさそふ 風をしるへに 梅の花 ゆきてや見まし 道とほくとも同うめの花 こゝろにしミて おもへとも かハはるかせに まかせてそやる同余寒月まきの葉に しもやおくらむ 春のよの 月かけしろく さえかへりけり同月かけも さらに氷て 山のはの かすミ吹とく 春のよあらし同さしなから 月そはるなる 山河の 岩こすなみハ さえかへりても
え・・同ふりつみし 雪ハさそへと 春のよの 月ハくもらぬ ミねのよあらし同月さえぬ またやハそらに 冬をしも 春の山風 ふきかへすらむ同春やゆめ 冬やうつゝと ことゝへと こたへぬ月そ そてにこほれる同さらにまた かくしも月の さえぬらん かすミそめしハ ゆめならなくニ同梅かゝハ 春のものとて かをれとも またさえかへる よはの月かな同川風ハ なほさえなから 柳原 けふるか月の かけかすか也 同あらたまる ひとのけしきも おもハすて いかてか月の さえかへるらん同初逢恋 ウ」とこなめの あやうきせをも 初瀬河 おもへハこそハ わたりそめけれ同くさまくら むすひそめけり 草つゆに ぬれての後の 心しらねと同きのふまて あふにかへむの あらましも おもへハあさき 吾こゝろ哉同こよひしも ゆるしそめたる たまくらの かひある末の ちきりともかな同なみた河 わたりそめてハ なか〳〵に うきせにたてる みをつくしかな同春のよの はかなきゆめを 見てしより こゝろの外に ミたれそめつゝ同かきくつし 見せはやこよひ かす〳〵に つもるおもひの かたはしをたに
ら4同あらかしめ いまゆくすゑの よかれをも かこちそめたる ねやのたまくら同うらワかき のきはのをきハ 吹風の かたゝかへとも おもハさるらむ同けふよりハ ひとをまつにや かゝらまし あハぬほとこそ さてもありしか同をみなの春駒といふまひまふかたはるのよの ゆめにみてたに よしといふ そのワかこまの 声そいさめる同東大寺晩鐘
一三 ひむかしの みてらのかねの 声のうちに ゆふ日いさよふ 山のはのくも同オ」国山とほく かへすたところ うちはれて たみゆたかなる ひたかみの国同なかのはるこもりのミ をるへき時か はるかすミ たちててのへの すみれつまゝし同翠之池塘柳かけ見えて ふかきみとりの 水たまる いけのつゝみに なひく青柳同つゝみなる 柳なひきて はらのいけ のかものあをはも はる風そ吹同風わたる いけのつゝみの 古柳 はるのみとりハ なミやそむらん同かしのやのつとひに翠之池塘柳といふことをよまれたるうたともをかきてとこひたるにおの〳〵かゝれたるを見めてゝことの葉の ミとりもそひて なひきあふ いけのつゝミの 柳ハらかな同賭弓たちまひて かよるたもとも 梓弓 かへりあるしの よそほしきかな同ウ」梓弓 おたしきみよは くもの上の 春のミものと けふやひくらむ同春日望山 あさ日かけ かすミてにほふ ひきまゆの みとりもうすき をちの山のは同列見あきのいろを 心にかけて たちいつる そてのみとりに はる風そふく同国山のはの ひかりのとかに くにハらハ けふりたちたつ 夕くれのそら同鼯鼠 山さとの しの吹さわく よあらしに みねよりおつる むさゝひの声同松残雪けふもなほ くもたちまよひ 山さとハ 友まつかえに のこるあわゆき同晩風催恋たまたれの をちかたひとを こひをれハ 心うこかし ゆふ風そふく同晩霞隔浦 すまあかし かすミへたてゝ くれにけり しほやきころも まとほならねと同オ」帰雁春風や 吹おくるらん この朝け すゝろになきて かへるかりかね同寄嶋恋はるかなる えそかちしまの かす〳〵に おもひわたれと そのかひもなし同水郷柳
一四
老にけり さほのさとひと 青柳の はるハわかゆる かけをむすへと同野菫すミれさく のへのあハれを しりかほに つむもやさしき はなの色かな同燕来つはくらめ ならふ軒はの 春霞 たちもまよはす けさそきにける同亀のゑに
え4山川の とこなめきよき なかれこそ かめのよをへむ ところなりけれ同おのかへん よろつよしめて 岩淵の 水のみとりの かめそあそへる同河内国鷲尾山の花見に行けるにやう〳〵うつろひてウ」いまハのこりすくなゝるにあめもをり〳〵ふりあられさへましりたりけれハなこりなき ミやまの花の このまより ものおもはせに ちるあられかな同花見んと けふ分のほる 山吹の ミのなきものを あめさへそふる同雲雪と ミねのさくらに 春雨の ふりぬることも めづらしきかな同おもほえす あられふりきぬ 山さくら くもと見つるハ そらめならすて同蛙声幽かはつ鳴 声もおほろに きこゆ也 さく山吹の 花かけにして同 遅日小田かへす 牛のあゆミの おそきひも なほくれをしき 春のゝとけさ同深夜帰恋ともともに なきてわかるゝ さよなかの そらうらめしき ちきり也けり同竹裏鶯梅うゑて 吾まつとしも しらさらむ うくひすきなく よそのたかむら同8オ」仏光寺のいまの君のよろこひしたまひたるに青松千年といふことをみほとけの ひかりもそひて わかみとり やちよの春の 松そさかゆる同山吹をうゑて井出へとハ おもふものから 道とほミ うゑて吾見る 山吹のはな同春暁夜帰雁変恋のうたをあハせて便しけるに返しつかハすとて三題をひとつによめるあけほのに かへるかかりの 春秋と かはるこゝろは うらみられける同寄花無常山風を うらむもあやな おほかたも 花ハこてふの ゆめのよの中同満ち子かむつき廿日あまり二日のひ身まかりけるに去年河内集といふものえらひつるにはやくその名のミとゝめしことのはかなくてあわゆきの はかなくきえし 春のゝの かたみのなこそ つゆけかりけれ
一五 同8ウ」弥生の廿日あまり一日やう〳〵雨はれてそらのとかなりけれハきり川のさとにゆきてやとりけるにつとめて又しもかきくらしあめのふりいてけれハ若葉さす えたのかハつハ ふりつゝく あめにもあかて なほもこふらん同とくおそき 花のさかりも このはるハ おほかたあめの 吹さひはてけり同浜臣かとふらひ来けるときまちえても かひなきやとハ なか〳〵に たましかむとも おもハさりけり同おなしときおもふこゝろありてよめるなにはえに なまりもをして あしかにの よにはひわたる ことそやさしき同つゝしかけろふの ほのかに見えて 朝附日 むかひの岡の につゝしのはな同幽栖花いきたなく ぬるこてふかな ゆめのまも をしきのきはの 花のさかりを同まとのとの 花かけさらぬ てふとりそ おなしこゝろの ともにハありける同山吹
オ」うちしなひ やへ山吹の花咲て ほと〳〵春も くれんとそする同曲水宴 みそのふの もゝのしたてる 水かゝみ うつるおもわも にほふけふかな同書はしたての たかきほくらの むなきにも つみあまりたる くにつふみかな同虫音す也 月毛のこまの くつはむし あハれよふかき 山陰にして同琴としへても わすられかたく 吾おもふ あつまのことを けふそきゝつる同重孝主一日百首よまんと催されけるに ひと〳〵いとまちとほなるほと かめにさしたる芍薬をことの葉の 花にたはるゝ てふをけさ くやくやとのミ またれける哉同新樹妨月ウ」しけりてハ かせのたよりそ たのミなる はなのかならぬ 月の光も同匠ひとすちも やひろにおよふ すミなはの 心たくミそ かしこかりける同野外雲雀なくひハリ かすみにきえぬ あめなるや さくらのをのに ゆきかよふらむ同羇中恋なほさりの 心なくさの ひとふしも たひかさなれハ わりなさそそふ同雨中新樹
一六
なかめふる 春ハきのふの 枝そゝく つゆうつくしき さくらゐのさと同立ならふ かへてもかしも かきくらし 水枝をしほる あめそさひしき同首夏小集さくはなに つとひなれたる このもとハ なつきてもなほ 立うかりけり同ほとゝきす おなしこゝろに 待友の つとふとたにも そらにしらなん同山さとの あろしの心 つくしなる めづらの魚と これもいはまし同かきほなる 卯花くたし しめやかに かたりもあかぬ つとひなりけり同
るとかミくたののひをきま斧富士ミおとにきはしきとのつくりかなやた 同匠 かしこかりけりすゝしのあやになつ衣あふきの風ハたまハれる同 ろうたてよ同なもかすこくなりゆくもなのつこみにすの色花をりしか あふきなりけりたかとのもおほきミの風心よきみなミにむかふ更衣 同同 夏衣けふあらためておほ君のみにおほえけるあつきめくみそおほゐ河なかるゝミづもふかみとりあとなき花のかすゑのみかは 首夏水旬 同同 かこたると夏ちたなかなの山りときもミつえのつゆのはふりまさるゐにふはのろさしかはさきにほふたいすにむきてかはつそなくあな 首夏木名所山吹 同同 朝夕によりもそハなむうこくやとくれんとそするしつかにけふもこゝろミかてら夕けふりまきのはしらにもゆるわらひの春の日に 女のうたかはしといひけれハ春山さとに人ゝなかめゐたるに 同0オ」 ふなちのとけき山そ明ゆくミやこにちかき春のよのゆめのまに 春のよふねにのりてよと河をのほりけるに かな同 ねをも見ぬなひきハすれとみやまのこすけことの葉ハやはらかに 言和不逢恋 0ウ」 同 ハねの国の御ほしらしふおはかみむけしミてたまてのはいてめほひ 富士 同 ミハや下はのこもよゝるたいぬづらゆつのへうのけこさとに月にや 新樹妨月 同
一七 ときしらぬ 不二の真雪に ちはやふる かみよのあとハ いまも見えけり同夏草 同らん うかひいつるおきつしほ合かひなくハからき世をしもいかてわた 海部 同 わかやとのうゑ木のミつえ夏ハきにけりつゆちりてこけの花さく 同 あさ風にわか葉そよきてにはそしつけきわかこゝろ夏にうつろふ 幽栖夏来 同 うくひすの声おいなから夏きてもしつけき庭はたちもはなれす 首夏鶯 同らむ けふをときとてまつりことなつはしつめのきこしめすさなへとる 旬 同 のくひかりゝもみえぬつこ夕のれさりにえ見にをけのたほるかする 同 そよくになりゆるそぬたすはし居して夕なかめるそてのかになれほ 蛍 同 しけくなりけりきこゆまて庭の夏くさきつねのよこゑをり〳〵ハ 同 たゝはむくつらそしけるな門さしてなしといふへきわかこゝろかは 同 みまつミしうのもとかもてれすらないさく夏のほぬれしさせふいて オ」1
同 たちさわくなるよのちりのいちなかも心からこそやすくすみけれ 市 同 ひすらなかゝよこすきりとほふゝいむ也ふてもめあよななときなか 待郭公 同 ミつのともうれしかりける枕ハかりそ老ぬれハいまはものうく まくら 同なハ よはのくひたゝきもやまぬさまさなむうきよのゆめもことならハ 同なハ ゆめさまたけるおもひねのそもなになれやたゝくくひうきひとの 水鶏驚夢 同 おひしける梢動かし夕かせハはなのおもかけふけともちらぬ 同 春花をいまもしたひてわか葉かけとひかふてふそ吾こゝろなる 対樹恋春花 同らむ ありとハかりのおなしよになくさめもはかなやひとはよそにきく むかしあへる女に ウ」1 野川に舟ハありなから棹なかりけれハ けり同 からいとのつまはほと〳〵たゆへしとみえてあふよもあれハあり 稀逢恋 2オ」
一八
わたりもり いかなるゆめか むすふらむ つなきすてたる のちの川船同わたせをと よふにこたへも なミの上に わかこゝろさへ たゝよへりけり同すゝめのこのすたちたるを見てあさるとて たちゆくおやを したふなる こゝろうつくしき ひなすゝめかな同すゝめこの またかたよわき は風にも なひくわか葉の かけそすゝしき同新竹わかたけの もとつ葉すゑ葉 しけりけり あさゆふ風の ふくとせしまに同おひそめて いくかならぬに 夏かけの うれしきいろを みするたけかな同石堪か前栽のとこ夏に ちりもはらハぬといふことをさしておくりけれハうるハしき きみかめつなる 床夏に ちりてふことは いかてかくへき同
青柳のいと立よりてひかハよりつく見えなから岸かけたかきのへの若草ゆくへしらるゝはる風のえたもしつけき青柳の 同同かな のへのはきハら春霞あきのにしきもおもかけにことよさにあさミとりなるいつもたゝよをわたるたゝよハしくてめづらしけなき 詞和悲野春草 同同 かりかねもゆく船の山さくら浪のぬれきぬはやも咲めとあとなき花のあやしむハかりかけてほすのこるしら雪岸こきはなれ 同同 さをとりなほしさしてゆく雪吾ふねのかたハたかへと花をしそミる ハむきついなりあかくふまけの〳く船中見花らしねみゆ〵ひそりとミとい 同2ウ」 いつとちるもゆる春へを嶺のしらゆきなほきえさらむかけろふの 同 水上の山雪なほふかしなりゆくをいはかねのなみの音たかく オ」3 同 おく山の真木の下根ハものともなしニいつとけむのこるしら雪 同 分ぬとはミえぬものから春の日の光にそむくミねのしら雪 同 はるかすミのこる白雪すてにあまねき八重山のあなたのミねに 同 みねの雪吾やとのなとゝけさらん松ハのとけき春風そふく 同 いつしかと春の日に花まちわたるつれなくみゆる山のしら雪 同 花のいろかな心にうかふあけほのハかすむたかねの雪なから 山残雪 同
一九 同かすミたつ のもりかいほを 春草の 花つミかてら けふやとハまし同つみて皆 かへるを見れハ 春のゝに すミれてふ名そ ことにし有ける同かすみたつ のへゆきかへり 若くさの あをきをふミて あそふのとけさ同はつわかな つミしやいつら 春ふかく いく田のをのゝ をくさおひけり同春のゝに さくやあさミの あさましく あさみはつへき くさのはもなし同たてよこに 春の大野を とひかひて わかくさむしろ てふやおるらむ同うつくしく 春の小草の うちなひき 霜のなこりも 見えぬのへかな同3ウ」あさミとり かすむおほのに うちなひく くさの色こそ 春のものなれ同望遠帆松かけハ やゝくれ行て 沖わたる ほのかにのこる 夕ひかけかな同つくしふね いまやはるかに よせつらん ほかけつらねて みえわたりけり同あさあらし ほとよくおちて もゝふねの ほかけつらなる 青海の原同むらさきの わたると見しも ときのまに おきつほたかく あらハれにけり同いり日さす とよはたくもと 見えつるハ なにはによする 真帆にそ有 ける同なみ風の おともしつかに おほふねの ほの見えそめて あくる海ハら同夕日さす しまねハはやく くれはてて おきつほかけそ 雲にまきるゝ同つくしかた 西やふくらん 朝ふねの ほのかに見えて あくるうら波同うちわたす あかしのとなみ たかゝらし まほにかたほに ふねのゆく見ゆ同まほたかく 吹上のはまの このまより 見えてなにはに はつる百船同おきつ風 おひて吹らむ ありそ波 ほのかにみゆる なたのうら風同故郷花 オ」あれぬれと 軒場の花は つはくらめ いくはるかよふ 栞なるらん同牛はなつ 野となりゆかハ 此はなや おのかゝきつの 名をのこすらん以下同いるひとも なくてのとけく 花見るそ よもきかそまの かひにハありけるふるさとに かくてわかよハ つくさなん のきはのはなの かれぬかきりハふりぬとて このさとをしも いてゝいなハ 心かろしと はなやおもはむそのかミの さかえしられて 風かをる たきのミやこの 山さくらはなさく花の いろそふりせぬ かすみたつ おほミやところ さたかならねとみやひとの かさしのさくら はなさきぬ しかの山もり いまはおかねといたづらに 花なちらしそ あすか風 おほミやひとハ よしめてすともあふミのや ミやきハふりて 咲にけり いまもそのよの はなのさゝなみ
二〇
暮春雨つゆおもく こすゑしけりて はなのくも いまハあとなき にはのはる雨うちしめり さめ〳〵とのミ さほひめや 春のわかれの そてしほるらん降雨に ミかさまされと はるハ今 いつちいくたの 川のしらなミウ」さのミなと あめハふるらん ちりのこる はなをゝしめる ひとにそむきてふりそゝく 雨のまかひに ゆく春ハ うめのミのをや とりてきつらむ春雨の けふさへふりて うのはなの かきねの雪と 日かすつみけりゆく春に はひまつハれる ふちなみの いろさへ夏に うつるあめかなけふもまた あめのふるえの もろ蛙 なきてをしめと 春そくれゆくかきくらし あめハなふりそ とゝまらぬ よのことわりの はるのわかれをあめそゝく わか葉のつゆに ぬれなから 老ハかくれぬ うくひすの声惜別恋むつましく つはさならふる ねくらとり なかてわかるゝ あかつきやあるおほかたハ ゆふへをうしと いふめれと あひてわかるゝ あかつきのそらをしみつる その暁の おもかけハ まきのはしらを たちもはなれすふしのまに あけんとそする なにはえや みしかきあしの よをハたのめハわかゝけを ひとに見えむハ うきものゝ さらにわかれん こゝち社 (こそ)せね玉ならハ 涙をぬきて きぬ〳〵の そてのかたみに とりかへてましオ」あひ見つゝ はるるこゝろハ しはしにて またたちかはる むねの朝霧かりそめの わかれもうしや しのふくさ われにのきはの つゆならねとも よこくもの わかるゝときは ふたなミの つくハの山の 名さへうらめしゆくすゑを おもへハこそハ 下のおひの けさハかた〳〵 たちもわかるれ晴後青山ぬれいろの ミとりうつくし しらくもの はるゝきのふの あめのかく山五日節会ためしとて あやめのつゆの たまかきに うかふちとせを きこしめすらむゆくミつの よとのゝあやめ ひかれてハ くものうへにそ けふハかをれるおほ庭に たちつらなりて たちはなを ちかきまもりの そてにかくらむ葵あふひくさ かさゝぬそても なかりけり かものミやちに つとふもろ人なにそとハ おもひやりなき さとのこも かさすことゝて あふひひくらむ遅桜 ウ」春はよの はな〳〵しとて 山かけに ひとりおくれて けふやさくらむ詞和恋たちよりて ひかハよるへく 見えなから きしかけたかき あをやきのいと百合おくつゆの いろうつくしき さゆり葉の ミつはよつはに 花も咲けり夏月涼いかてかく すゝしかるらん てる月ハ なつのほかなる そらハゆかしを聞声恋ひさの上に ならすもはかな からねこの 声きくのミを なくさめにしてものこしに そならぬ声を きくにたに まつうちさわく むねそくるしき乍臥無実恋
二一 なよゝかに そのくろかミハ うちなひき ふすとハかりに 明はてにけりよりそひし なかの衣の いかなれハ こよひたに猶 へたてはつらむオ」渡五月雨おほかたの わたりもいまや 絶ぬらん はれぬさつきの 天の河ふね窓前蛍かひなしと まとのほたるハ よるひかる たま〳〵きても とまらさるらむ空帰恋うちとけぬ ひとをハさのミ こりすまに またよるなミの たちかへる也菖蒲たちならふ 小屋のゝきハも あやめくさ ふきのこさしと けふやひくらむつきぬよの ためしもしるく あやめくさ ひきのこされて なほしけりけり大淀浦夏あまをふね ちれるこのハと うきみるの うきてもゝしき おほよとのうら玉江夏かりのこす つゆのたまえの あやめくさ すゑはミたるゝ さミたれのころ瓢ウ」としことに ちなりいほなり なりひさこ なりさかゆへき みにもあるかな山家五月雨さみたれに つねハミつなき いはまより たきなミこゆる 山かけのさとてつくりの 山すかみのも さみたれの くもゐへたつる さとのなかかきあひそめたる女に行末のこと何やかやとちきりて いたふらむ 心もしらす はつくさの ことの葉しけく ちきりつるかな山里にほとゝきすきゝにゆきたるにうの花のさかり也けれハほとゝきす わかたつねこし 山口に うらまさしくも さけるうの花夏のはしめつかた大ゐ川に船うけて嵐山のわか葉を見るさ月ニハ またもきて見む おほゐ河 うかひかてらに ミねのわか葉を幽栖首夏たれをかも たえすよふらむ よふことり なつのはしめの いほのしけみに早苗さくら人 さなへとるらし 千町田の たづらにたつの 声さわく也オ」遊女うかれめの みハうかひ火の かけなれや しつミもはてす よをわたりつゝ月前郭公声のミハ あかすおもふを ほとゝきす 月にもかけの 見えすなるらん閑中蝉なつのひは おきてもねても をりハへて せみの声のミ われをかたらふ樹陰納涼井のへなる 桐のひとはの 下すゝミ あかすもけふは むすひつるかな瓜あちきなく いろにいてたる 山畑の くろのほそちハ たれかとるらむ夏故郷春きてハ ゆきま見えたる ふるさとの ミちもあとなき 庭の夏くさ絶後恋人ウ」ひとたひハ をたえのはしの うきなから つきてわたらむ よしもあらなむ嫉妬恋
二二
いせの海に おりたつたこの とはかりは うらみとおもへと さわくあた波隠恋いるかたハ さすかにみせて かくれたる 月のおもわそ みにそはりける山居雨山さとの にはのしゝかき つまこめに くもたちのほる あめそさひしき窟こけむしろ しけるいはやハ 山ふしの あとをとゝめぬ ふしとなるらむ本居大刀自の八十賀寄鏡祝すゝかかは ちよへん松の かけ見えて きよきやそせの 水かゝみかな祇園臨時祭あやにしき とりよろひたる 山ほこの 車おほちを ひきわたしけり
萩の花つましかハつれなきなつの野のなひきそめても色にてゝ の花そてにちるさるゆをすゝしみつやおとたへきそとやきあくきと ひりけめそふほにのゆつしゆむははつらきのへのはまのお猶かきあ 野草先秋 をちこちにたづらのさとのかふちたの水せきワくる夏そすゝしき みなちあらかしめあきのたかミをうのむわれす夕のゝとるたかてさ おくつゆもこゝろよけ也風しりそむるうゑはててかとのわかなへ 田家夏興 しみなかるゝわきかへり松のした蔭せみのなくねもをりはへて きつゝなくなりあつきひにゆるくともなくせみのはころも梢たに ミな月のなかはもすきのこすゑよりひくらしの声秋をちかミか 蝉 てる日すゝしきみな月の神まつりかなゆふとりしてゝ榊葉ニ ひきつらねたる馬長かそてそにきはふ神のそのふにいさむとて オ」8
8にのきしさのしくるむそりはえみウ」てなつくれかゝるのへの夕つおゆ 草花先秋 のし家やめるらしとひとりまたあききのうへふくなつのゆふかせあ 谷風如秋 すかのはのはるゝ夕立うちミたれたる降ほとハつゆすゝしくも 夕立 かねのおとハうつゝなりけりとりもなほさぬ枕たにミしかよの月 すゝしみとめつるまもなくおくつゆの月も光もかけそ明行 夏夜易明 ゆめはかりなるみしかよの月かたしきのかけうすれけりなつ衣 夏月 オ」かな ゆふたすきかけてつかふるミゆるそてみやひとのおきなさひても 神祇 ける くるしかりひとこゝろあらのゝとらのくちのハにかゝるうきなそ 寄獣恋 のゝよりふきえゆくゆくもま光つりかりけりハけそのしくほのミね 照射 ゆく ほこうちふりてみをさきにみなつきのつらねてそかミのみゆきの 祇園臨時祭 夕たちのくもいつちゆくらむミねこして光りなからになるかミの に耳いまやもおちくとかなるとすみめはきしゝそあゝのもきこしか 夕立 のへなミつもうほとわよくかのちな也よもまいはさをたてしくひふ なくを聞て 水無月十日ハかり切川のさとにてしきりに時鳥の
二三 みそき川 岸にいろめく あき萩を おもへハはなの ときにそありける筆ひとなみに ふてハとれとも くちをしく あとハこゝろに まかせさりけりウ」晩夏風秋穂たる ほとをちかみか かとたもる いほりすゝしき 夕風そふくゆふかけて すゝしくなりぬ ミな月の なこしの山の ミねの松風つゆむすふ まかきにとなる 秋つはの うすきたもとに 夕かせそふく岩崎の網のうけを蓋置にして名をこハれけれハなたのしほちとつけてよめるうたはる〳〵と なたのしほちを こきくれハ ミるめになるゝ あまのつりふね岩本周道か加賀国なる山中のいてゆあみに行けるうまのはなむけにつゝみなく こしにありてふ しらやまの ゆきてかへらむ ほとをしそまつやまなかに きみかゆあみの かひありと ミねたちならし しかも鳴らむ連日夕立このころハ いこまかつらき かたワきて かゝらぬ日なく 夕たちそふる夕立の ふるひさまねミ つゆしけき 蓮のうき葉ハ たかくなりけり
やこハろゝ人のひふてすひおれなけりとくれハやかてむすひそこめ 寄帯恋 うちとけてゆふかほのかたるにあかぬ花の下ひもさとのかやり火 さとなミにきそふかやりのうちわたさるゝ山かけや夕けふりかな 里蚊遣火 さりけなく山のはにそらハはれたるかゝるやあすの夕たちのくも いふせかりけり日をかさねてハ夕立もふることわりの水無月ハ 0オ」 世治文事興 れる あふきのつまのこほれかゝまみのにほひそはつ〳〵にさしかさす 背面美人 さとそすゝしきうのゐかいそのつゆうちはふく鳴つとり 月なから 漁家夏月 風見えてさとのかやりひなひきてくるゝ一かたにけふりの末の 里蚊遣火 おもふ ゆきめくりてもあハんとそみちなれハなかちはのかみもいさめぬ
あきハうかめる水のうへにそ風まてハふねさしとめてなかつせに かよひきぬらんこゝにしも七夕のあまの川風ひれふきかへす 七月四日の夜船にせうようしけるに みそひいなさのてとしやいつ瓜もくりむらかなかとなとこるなのみ わかみしつえのぬれぬよそなき松の下つゆいたつらにいとはるゝ みのいやしきをいとひて人のつれなかりけれハ かたさゝかにのくもふぬきたる吹のま〵ゆのもくしせ〳とほそのを もくくとのいれすちゆそくきしつゆのたまぬらかけつむら雨のよに ハくゆふかしたまけてけ月かくもぬきてとゝめよおものゐのつゆな 蜘のいとにつゆのかゝりたるをみて 左手のしけるみよかなことはのはやしおたしくてゆみとるかたハ のきさわとくのみなハしはし浜りちおなかよるこみもたあしとにえ みち とものおとハちよのふることゝふみゝるひとことによもに絶つゝ ウ」0 せみの鳴梢うこかしこのゆふへそてにしたしきあき風そふく 初秋風 1オ」
二四
たなハたの おるいほはたの からにしき またきに秋の 風そたミける初秋露うす衣 そてにおほゆる すゝしさも またはつあきの のへのしらつゆきのふより けにそすゝしき 秋といへハ つゆのこゝろも おきかはるなり新秋月つはくらめ また軒場もる ゆふ月に かりのたよりや まちいそくらむきりの葉の 一は二はと ちるまゝに さやけくなりぬ のきの月かけ秋田露うちなひく かとたのいなハ あさゆふの つゆをふゝみて やつかたりけんうゑしより こゝろおきたる さとわたの いなはのつゆの あきとなりけり秋夕まはき咲 秋のゆふへハ おくつゆの 玉しくにはも さひしかるらむ
ふねよりさきにあまの川ゆくこゝろかまかちしゝぬきおしわたる 七夕船 庭の萩原風のおともさのみいとはしさひしとてきゝなしからの まし 萩ならハしらすやあらわかやとのかせのやとりのあきをあきとも 閑庭萩 かな はきのうへおのつからゆふへハふかきうつさぬつゆもねこしきて はましをにさせかたんかしくやしきにねこさ来のには秋へてのりけ 栽萩 しき いほそわひもるやかとたのゆふつゆのいまたなかねとあまつかり 1ウ」 庭虫 にほひなりけれ月こそはなのよるみれハ庭のつゆくさわかやとの のへの月かなひかりをくはる花ゝになひきあひたるつゆ見えて 草花映月 ふね あまのかはけふのみわたるのりなからひとひもおちすわかこゝろ な
広田秋月 さめ ミつのとまやのしほるらんあまのたもとやよはのむらぬるまたに 三津夜雨 いりあひのかねのなにハてら声くれてあハれさひしきをかの松風 荒陵晩鐘 かよませたる今宮の里の八景のうた貴山中間 りちいたのつらなから床はふらゝまけなけきハいとりたかにくなり なか海のことるゝつものおもふわか身をくしつく〳〵となミたにく 寄床恋 くも たむけのやまのたなはたのみねのよこわかれもゆくかはかなくて 七夕山 ひこほしのなけきのさきりなひけとも天の川ちハ明わたりけり 七夕霧 らむ あきをへてつゆにたへにしむしのなくわかやとのうきをさのミハ むしの鳴らむなとまとろみてつゆのまも下葉にむすふにはくさの オ」2 きちのしらゆきほのかにくれぬみねのあなたの七越のかせさえて 紀路暮雪 あきのよの月ひろたのもりの花とちるかへすたもとにはふりこか ウ」2
二五 湊江帰帆みなと江や かせもしつけき しほふねの ほかけならへて くれかゝりけり木津落雁いくつらか ともよひつれて 天つかり きつのさとわた あきふけにけり淡路夕照よるなミの おともさやかに 夕くれの ひかりたゝさす あハちしまやま清江晴嵐すみのえの おきへはるかに くも晴て 松のあらしの おとそしつけき釈奠海山の ものをつらねて おほ前に おきてまつれる けふにもあるかな こハはやくみたりしもミとせへにけれハかくよめるになんほしにかさなむ天の川くるれハやかてさしいつる月のみふねを けり新秋月 寺なからいらかふりたるたちましり松のしたかけしめのうちをまたゆるされてあきはきの花のにしきにひさもくつさぬ御佛ハ のゝよくいもしゆつにまふよのそハミのろい萩の花そのかをりてらの松しらせまほしきかえおなしくハなくなるしかにつまこふとし ゆひそへてあきもさかりに垣の小柴ににほふはきはらつゆなから古寺松 いたすゝなくつるのミひくちよ〳〵となきはしむらん萩の屋の萩のさかりにはひにか松え て也くたひのししぎつなおくのやまさとやさかま山田春思か子うませたるをいはひてまふよちたりきて あひけりきてこさみかもやみハまいきりふり山らかりけちみやなをかく 山霧オ」まつりなり御饌たてまつるあきのひのとくくれをしきふみつくり たてまつるらむ手長のみけに御こきのとこみらめすを食大めの川ゑひののきるつまへらなきおしふすんらさてさしわたしうちひとハ くくきこし秋かかゝにけつのしこひもかんけへたろミといかたは川鰕の れるけれ みのむしのからくにのあきのいろこそをしへのみちのこすゑより大人たちのみえそめにミかたつらねてけふそまつよふちゝのきの 葉月のはしめつかた法流寺にて人ゝとゝもにうたよみける時つかさひとかなならふふみやのうるハしくそてふきかへし秋風に 我たにもつんそらるけほあめとのミさゆるさらんさそてのあきかせまし みちをつたへてまつらるゝけふをうれしとおほくにゝたまやうくへハ 3つゆのゆくさかならめうきよのなかのさもこそハきえけんくさのオ」 ことちハのつはさならよふるりきこ風ふゆのきあのときしなむへさ かりおくる きく子か夫のおもひにこもりたりけるころよみてかたへのひとの くもはれてほのめくみねの松にこゑする夕月夜あきの初風 から衣たもとすゝしきこすゑのせみのあきのたつ夕月よかな 夕月のかつらのつゆをふく風やまつちらすらんあきのひかりを てしゆきなかすきそふみのあふきつきしゝすそのふくうにせ川よか ウ」3 もあきふともゆつかしついおきそそけめ月のてかむハしてあれみに けり あきハきにちゝにものおもふ夕つくよきりのこすゑのひとはちる
二六
又あるし みすてゝハ たれかゝへらんさくはきの つゆもえならぬ 夕月のかけ とよめるかへしあきはきの 花すり衣 たちわかれ わかゆくかたを いかてみるらむ初秋待雁かりハまた かけてもなかぬ ふみ月の そらなつかしき 声そまたるゝ月前虫馬草かる のかミのさとの くつわ虫 月におハれて こゝらなくらむ艶女遇他人我こそと おもひかけしを 女郎花 あこのおほのに なひくつゆかなウ」鹿ひとよかる 松かねまくら そはたてゝ きくともしらす しかや鳴らむおほえやま きりたちいてゝ さをしかの なきていくのに つまやこもれる南郷宗準 加藤照満 服部挙直 村田義堅このひと〳〵のなをかくして 収といふ字を句の末におきてよめる月のうたてりみちて みなミのさとハ くれはとり むらたつくもそ 月におさまる月照草花あかなくて くれにしのちハ つゆや花 はなやいろなる のへのはきはら日ころへたてたるたのめつる 朔日ころの 夕月よ いまハつれなき ありあけのそらあハすして いまハ日ころを ふる衣 うきあかつきを かさねきにけり風前鹿しかのねを 我につてけり を花ちる さとわのゝへの あきのゆふかせオ」八月十五夜こよひしもいたつらにねんハくちをしくて川つらゆくほとくもたちおほひて月いてぬとハかりほのかなりけれハ けにくもハ こゝろもなしや くにこそり 月まちいそく 夕くれのそら又大城の御門の外なる原にいてゝミワたすに人けいとまれにて月ハやう〳〵くもはなれてさしいてたりたゝひとり 月にうかるゝ わかゝけを 心あるさまに 人や見るらむ釈典あきのひの とくくれをしも からにしき あやにかしこき けふのみまつり水中月さてもちて すくひもあけよ 山川の やなせにかゝる 月のしらたまふたつなき 月のひかりを ちよろつに くはりてみかく たきのしらたま荒屋月やへむくら 軒とひとしく しけりてハ つひに月たに すますなりけり人のあしのはにさして しるやいかに なにはの秋の よはの月 このあかつきの つゆのあハれを といひこしけれハかへしありあけの 月をあハれと かそへきて いまハおいぬる われをしらすやウ」あしか花 なひくなにはの 川尻ハ ところからにや 月もすむらむ都擣衣風さむき 月のミやこの からにしき うつやくもゐに 声ひゝくらむころもうつ みやこおほちの たてよこに 声もみたれて あきそふけゆくあハれたる すさひなるらん とのへもり 身もはたさむく ころもうつ声うつおとも 秋ふけにけり かも河や きよきなかれの ときあらひきぬあきさむき おほうちやまの 山ひこハ そらに声して うつころもかな山家秋雨山さとハ つゆよりさきに にはさくら うつろひそむる あきのあめかなさらぬたに あきなるものを やまさとの あめしめやかに けふもふりけり薄の風になひきたる
二七 あき風の 吹にしたかふ 花すゝき いまいくかあらハ 雪とちらまし仙家ときのまと おもふにくちし をのゝえに うちおとろきて 家をしそおもふオ」寄秋恋はしめより あきてふもしハ いみつるを あやしやそてに かゝるしらつゆ遠村秋夕あきふかき きりのまかきの ひまもれて かねの音とほく くるゝやまさとをちかたや あきふけわたる 夕くれの あハれくらへて たつけふりかな萩のうつろひかたなるをつゆさむき 庭のはきハら うつろひて 下葉のいろそ ふかくなりける秋雲あきふかミ しくるゝまてハ あらねとも かゝりかゝらぬ ミねのうきくも野女郎花おひらかに のへのをはなに たちそひて そむくいろなき をみなへしかな深山鹿みにしめて ふけゆく月を なかむれハ くもよりをちに しかそなくなるよそに見て人をこふるウ」よそなから 見しとハかりを おもかけハ わかみにそへて たちわかれけりおにふれて催恋おほかたの ふるものかたり きくにたに わりなくひとの しのはるゝかな菊叢芳 たちならふ あたしくさはの つゆさへも あらそひかほに かをるむらきく撰虫はきにそひ すゝきによりて なくむしの なかきみしかき 声をわくらむむしたにも みことかしこみ 声のあやを 心のかきり けふやつくせるすゝきにみかつきかけるかたさつひとの ゆみなりつきの かけ見えて をしかふすのに 秋風そ吹菊のえになゝかへり もゝよへつるも 山かけの このしたつゆに よりてなりけり月前竹からひとの むかしのふての あと見えて たけの葉うつる 月の下まとオ」ある女のこのよにてハあひかたしのちのよをたのめといひけれハまことあらは しにもせましを のちのよの あひなたのみハ せんかたもなし田家冬興もみちゝる さとの翁か にひしほり にほひてあそふ ふゆそゆたけき冬山にしかのなきけれハゆくあきハ おくりはてたる 声のうちに しくれもよほす ミねのさをしか遠炭竃すみかまや ミねのけふりの なか絶て よこくもかゝる あかつきのやま霜月朔日のひとしありと かみにゝえする 月たえて しものあさけそ のとけかりける冬朝下さやく あさてをふすま ひきすてゝ まとのとてらす 朝日をそまつ大公望いとすちの なほきハりもて あめのした しらさんきみか