• 検索結果がありません。

大津 友紀 学 位 の 種 類

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "大津 友紀 学 位 の 種 類"

Copied!
10
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

氏 名 おおつ ゆき

大津 友紀

学 位 の 種 類

博士(医学)

報 告 番 号

甲第

1870

学位授与の日付

令和

3

3

16

学位授与の要件

学位規則第

4

条第

1

項該当(課程博士)

学 位 論 文 題 目

Assessment of inter-rater agreement between physicians and their patients regarding medication adherence in a clinical questionnaire study

(医師と患者間の服薬アドヒアランスにおける認識不一致の要 因分析に関する研究)

論 文 審 査 委 員 (主 査) 福岡大学 教授

川嵜 弘詔

(副 査) 福岡大学 教授

田代 忠

福岡大学 講師

前田 俊樹

内 容 の 要 旨

【目的】

慢性疾患の治療において、薬物治療は重要な役割を占めているが、服薬アドヒアラ ンスは不良なケースが多い。ノンアドヒアランスは医療資源の浪費、病状の悪化、薬剤 費の増加、入院リスクの上昇に繋がる。また、ノンアドヒアランスの要因として、治療 の長期化、服薬回数の多さ、用法の煩雑さ、認知機能の低下、病識や予防的服用に対す る理解の低さ、治療実感の希薄さ、他者からのサポート不足などが報告されているが、

医療従事者と患者間の服薬アドヒアランスに対する認識の乖離も要因の一つと考えられ る。本邦での調査では、医療従事者と患者間で服薬アドヒアランスに対する認識にギャ ップが存在することが報告されているが、主治医とその患者間で直接調査した研究は殆 どない。そこで、本研究では循環器疾患患者とその主治医を対象とした服薬アンケート 調査を実施し、主治医‐患者間の服薬アドヒアランスの認識の違いについて検討を行っ た。

【対象と方法】

2017 年 1 月から 2017 年 5 月までに、福岡大学病院循環器内科で慢性疾患に対し 6 カ

月以上かつ 1 種類以上の薬を処方されている 20 歳以上の外来患者 300 名を登録した。薬

剤師がスクリーニングを行い、電子カルテから無作為に対象患者を抽出した。選択バイ

(2)

アスを避けるために、主治医は患者の選択には関与せず,診察を実施後に患者と同じ内 容の自記式質問紙に回答した。なお、全ての患者及び主治医にインフォームド・コンセ ントを行い、書面による同意を得た。

アンケートは、継続可能な 1 日の服薬数や服薬回数、自宅での服薬管理者、直近 6 か 月での服薬忘れ、自己減量・中断、自己増量、残薬の取り扱いに関する内容とした。服 薬遵守の項目においては、“全くない”“殆どない”を「なし」、“たまにある”“よくあ る”を「あり」とした。許容可能な1日の薬剤数は「0~5 個」「6~9 個」「10 個以上」の 3 カテゴリーに、許容可能な1日の服薬回数は「1 日 1 回」 「1 日 2 回」 「1 日 3 回」 「1 日 4 回以上」の 4 カテゴリーに分類し解析を行った。主治医と患者間の回答の一致度は名義 尺度をκ係数、順序尺度を重み付きκ係数で評価し、Landis and Koch の基準に基づき判 定した。回答一致群と不一致群に分け、患者背景因子等を用いて単変量ロジスティック 回帰分析を行い、危険率(P)<0.05 となった因子について多重ロジスティック回帰分析 を行った。P<0.05 を有意とした。

【結果】

患者 300 名とその主治医 23 名がアンケートに回答した。患者の年齢は 70.6±12.3 歳、

61.0%(n=183)が男性であった。高血圧、脂質異常症、心不全の割合が高く(各 91.3%、

76.0%、62.3%) 、併用薬は、ARB、β遮断薬、高脂血症用薬が多かった(各 57.3%、51.3%、

66.3%) 。当科からの処方薬剤数は 1 日あたり 9.0 錠(6.0-12.0 錠) 、1 日の服薬回数は 2.0 回(2.0-3.0 回)、一包化は 84 例(28.0%)であった。主治医の平均年齢は 45.6±8.5 歳、91.3%が男性(n=21)であった。各主治医は 13±2.8 名の患者について質問紙を記入 した。

1 日の許容できる薬剤数は、患者側回答者 269 名中、0~5 錠が最も多かったが(183 名,68%) 、主治医は 132 例(49.1%)の患者に対し、1 日 10 錠以上が許容されると考えてい た。許容可能な薬剤数について、医師-患者間で有意な一致があったが、その一致度はわ ずかであった(重み付きκ係数 0.12、95%CI 0.04-0.19、P<0.01) 。

服薬回数においては、患者 137 名(46.3%)、医師 153 例(51.7%)で 1 日 2 回なら許 容できると考えていたが、許容可能な服薬回数に関する両者間の一致はなかった(重み付 きκ係数 0.09、95%CI 0.02-0.20、P=0.09) 。

自宅での薬剤管理については、患者、主治医共に患者自身が管理していると回答した 割合が高く(各 89.1%、88.5%) 、医師-患者間で中等度の一致がみられた(κ係数 0.44、95%CI 0.27-0.62、P<0.01) 。

残薬の取り扱いについては、自宅で保管しておくと回答した患者が多く(195 名、

65%) 、次いで自宅で廃棄が多かった(30 名、10%)。医師においては、自宅で保管(227

例、77.5%) 、薬局へ持参(31 例、10.3%)の順で多かった。残薬の取り扱いに対する、医

師-患者間で認識の一致はみられなかった。

(3)

意図的に自己中断・減量したことがあると回答した患者は 16 名であったが、医師は 19 例を推測していた。自己中断・減量に対する医師-患者間の回答一致度はわずかであった

(κ係数 0.18、95%CI -0.01-0.37、P<0.01)。一方、自己増量したことがあると回答 した患者はいなかったが、主治医は 8 例の患者が自己増量していると予測した。

また、直近 6 ヶ月で薬の飲み忘れがあると回答した患者は 95 人(31.7%)であったの に対し、主治医は 40 例(13.3%)の患者が飲み忘れありと予測していた。主治医は、服 薬し忘れた 95 例の患者のうち、76 例(80%)を特定できなかった。患者と主治医の回答 が一致していたのは 203 組(67.7%)、不一致は 97 組(32.3%)であった。服薬忘れに関 して、両者間の回答は一致していたが、その一致度はわずかであった(κ係数 0.12、

95%CI 0.01-0.22、P=0.02) 。

服薬忘れの有無において、回答不一致群は一致群と比べ、患者の年齢が低く、高血圧 の合併が少なく、ビグアナイド系薬及びβ遮断薬の使用率が有意に高かった。多重ロジ スティック回帰分析により、医師側は、高血圧症患者の服薬忘れは把握し易いが、ビグ アナイド系薬やβ-blocker を使用している患者の服薬忘れは把握し難いことが判明し た。

【結論】

医師と患者で服薬アドヒアランスの認識にはある程度の一貫性はあったが、その程度 はわずかであった。多重ロジスティック回帰分析では、高血圧症の欠如、β-blocker 及び ビグアナイド系薬剤の使用は、医師と患者の間の服薬忘れに関する回答不一致の独立した 予測因子であった。これらの結果を踏まえ、両者の服薬アドヒアランスに対する認識の違 いを明らかにし改善することは、治療を遂行するために重要である。

※捕捉

【Strength of agreement ( Landis and Koch(1977) 】

【選択基準】

患者:①20 歳以上

②性別不問

③心血管疾患の患者

Value of Kappa Strength of agreement

< 0.00 Poor

0.00-0.20 Slight

0.21-0.40 Fair

0.41-0.60 Moderate

0.61-0.80

Substantial

0.81-1.00

Almost perfect

(4)

④当科外来を 6 カ月以上定期受診している患者

⑤当科の処方薬(自己調節薬を除く)を 6 ヶ月以上継続服用している患者

⑥本研究に関する説明文書を用いた説明を受けて、自由意思により文書で研 究参加に同意した患者

医師:①福岡大学病院循環器内科外来にて診察を行っている医師 ②性別不問

③本研究に関する説明文書を用いた説明を受けて、自由意思により文書で研究 参加に同意した医師

【除外基準】

患者:①認知症等により本人からの同意取得が困難な患者

②日本語の理解が困難な患者

③研究担当者が研究対象者として不適切と判断した患者

審査の結果の要旨

本論文は、福岡大学病院(以下、当院)循環器内科を定期受診している慢性疾患を併存す る患者及びその主治医を対象とし、同時直接比較という統計手法を用いて服薬アドヒアラ ンスに対する認識を検証した成果を論述している。申請者は、循環器疾患患者 300 名及び その主治医に対して、 「薬の管理」 「服薬忘れ」 「意図的自己減量・中断」 「意図的自己増量」

「残薬の取り扱い」 「許容可能な一日の薬剤数」 「許容可能な一日の服薬回数」について自 記式質問紙調査表を用いて調査を行い、患者と主治医の回答をκ係数にて対比させること によって、主治医が患者の服薬状況や服薬に対する希望を把握できているか、つまり患者 と主治医は服薬について共通認識を持っているかという仮説を検証した。その結果、ほと んどの項目において一致度は低く、服薬アドヒアランスに影響を及ぼす薬剤数は、患者側 の希望と医師が考える許容数との間で大きな解離があることを示した。また、主治医の多 くが飲み忘れの現状を把握できていないことを明らかにした。さらに多重ロジスティック 回帰分析の手法を用いて、医師は、高血圧患者の服薬忘れは把握しやすいが、β遮断薬と ビグアナイド系薬剤の服薬忘れは把握しづらいことを明らかにした。この結果は、教育的・

行動的介入が患者の服薬意識を高め、服薬アドヒアランスを把握しやすい状況を作り出せ ることを示唆する。さらには、目的が患者にとって分かりにくい薬剤や用法用量が頻繁に 変更される薬剤などの服薬状況は把握しづらい可能性も示した。

医療従事者、特に医師と患者やその家族との間の認識差は、長期薬物治療を継続する慢

(5)

性疾患において、アドヒアランスを左右する原因の一つと考えられる。両者の認識の違い がどこにあり、原因は何かを調査することは、服薬アドヒアランスの向上に重要である。

したがって、患者と主治医の回答を直接対比・検討した本論文の学問的意義は極めて高く、

大変興味深い。

1. 斬新さ

これまで服薬アドヒアランスに対する共通認識を調査した先行研究はあったが、多くは Web 調査などで、殆どが医師と患者が対応していない研究であった。本研究は患者とその 主治医に同じ質問調査を実施した点は非常に興味深く、また、回答一致・不一致の 2 群に 分け、認識解離の原因を明らかにした点に斬新さがある。

2.重要性

服薬アドヒアランスの向上・継続は、期待する治療効果の達成と治療継続のために、患 者を含めた関係者全員が取り組むべき課題である。そのためには先ず患者の希望や服薬状 況を把握することが必要である。その点において本研究は、患者と主治医両者間の服薬ア ドヒアランスの認識を直接対比し、処方した薬剤は基本的に服用されていると考えている 主治医と、その患者の服薬実態が大きく解離していることを示した点で重要性が高い。さ らに、医師側が自身の患者の服薬アドヒアランスを把握できている・できていない要因が どの部分にあるかを検証しており、患者の真の服薬アドヒアランス状況を知る上で、貴重 な知見になり、服薬アドヒアランスを向上させるための一助となり得る点で本検討の重要 性は高い。

3.研究方法の正確性

本研究は一般的に確立された統計手法を用い、検者間の回答一致を評価した。症例数(患 者 300 名)及び自記式質問紙数(患者 300 枚、医師 300 枚)は、一般的に sample size と して大きく、統計解析に充分な症例数であり、本研究のプロトコールの妥当性は、「福岡 大学医に関する倫理委員会」で承認されている(承認番号:2016M024) 。また、ヒトを対象 とする医学研究に関する倫理指針を遵守している点、κ係数の解釈は Landis & Koch 基準 に基づき判定している点、統計ソフトは SPSS Statistics 24(IBM, Armonk NY) 、JMP14(SAS Institute Inc., Cary NC)を用いている点、本論文は査読を経て既に Medicine に掲載さ れている点より、研究方法やデータの正確性及び信頼性は担保されている。

4.表現の明確さ

目的、方法、結果は正確かつ詳細に表現されている。結果に基づいた考察に関しては、

これまで報告された過去の論文を十分検討した上で、対象者間における服薬アドヒアラン

スの認識の乖離となる因子と原因を検討し、服薬アドヒアランス向上の一助となり得る可

能性を明確に示している。

(6)

5.主な質疑応答

Q1:服薬コンプライアンスという言葉と、服薬アドヒアランスという言葉があるが、同 異義語として使用されるのか?

A1:服薬コンプライアンスは、医療者の指示に患者がどの程度従うかという、医療者が 主体となった服薬遵守を示す。一方、服薬アドヒアランスとは、患者が治療につい て十分な説明を受け納得し、主体的・積極的に治療方針の決定に参加し、その決定 に従い治療をうけることと解釈されている。つまり、服薬コンプライアンスが医療 者から患者への一方向の指導関係であるのに対し、服薬アドヒアランスは医療者と 患者との相互理解が重視される。本論文でも、患者の自発的な協力により処方通り に服用するという意味で使用している。

Q2:今後の事で構わないが、服薬アドヒアランスから見た患者教育や、患者が薬物治療 へ参加するといった点からみた結論などはあるか?

A2:本研究は今回の発表内容以外に、WHO 提唱の5つの領域に関係する患者意識や因子 もアンケート調査している。どのような要因が服薬アドヒアランスに影響を及ぼす かを検証し、服薬アドヒアランス向上のために効果的な介入を検討している。また、

多くの指導介入は、医師側が患者の服薬状況を把握しやすくなるだけでなく、患者 の薬物療法への関心を引き付けることも示唆されたため、多職種で介入を継続的に 行い、患者の行動変容を促すことが大切と考える。今後は、これらのことを実施す ることで、服薬アドヒアランスの向上が認められるかを検討したい。

Q3:今後、高齢者も増えてきて、生活習慣病も必ずいくつかもっていますよね。そうな ると薬剤の投与量は増えると思われ、そういった意味では非常に重要な研究だと感 じる。

A3:ありがとうございます。

Q4:対象者を 300 人にした根拠は?

A4:先ず、今回は 2 群間の有意差を証明したり、期待される効果に一定の閾値を設定し、

閾値より大きいことを証明する研究でないため、症例数は統計的に算出していない。

300 症例の根拠は、年間の当院循環器内科外来患者数などから算出した。循環器内 科において、年間の外来患者数は2万人前後、1 日 70 人程度であり、研究対象期間 を 3 ヶ月とした場合、約 5000 人となる。ただし、初診や同患者の再受診が含まれ、

研究期間内の適格被験者の推定総数は 1500 人程度と考えられる。しかし、研究目

的などの説明が困難な場合や不同意の場合等も想定される。また、本研究は日常診

療下の観察研究であり、同時に担当医師へのアンケート調査も実施するため、医師

の負担を最小限に抑えることも勘案し、研究対象期間で実施可能な症例数として

(7)

300 例を設定した。症例数 300 は、一般的に sample size として大きく、様々な検 討を行うのに十分な症例数であると考えた。

Q5:κ係数において、重みづけをする意味合いは?

A5:カテゴリカル変数の順序尺度に重み付けκ係数を適用した。患者と主治医の回答が 一致していない場合、回答が互いに近い場合と遠い場合を考慮する必要がある。そ こで重みづけκ係数を用いることで、回答が一致している場合を1とし、一致はし ていないが回答が近い場合を 1 に近い値で、離れるごとに低い値となり、互いの回 答がより離れている場合を0とするような重みをつけ、評価することができる。

Q6:κ係数 0.12 でも有意差があった場合に、κ の値と検定ではどちらを優先するか?

A6:まず P 値を確認し、次に κ 係数を Landis & Koch の基準に基づき判定した。つま り、P 値が 0.05 未満のものは両者間の回答の一致度が 0 でないことが証明できた と考え、そこで算出されたκ係数の値を Landis & Koch の基準に基づき判定した。

しかし、一致という意味では意義は薄いと解釈した。

Q7:nが大きいと有意差が出やすい。よって、κの値を重視すべきで、κ係数 0.12 は ほぼ一致していないと理解するほうがよいと思われるがどうか?

A7:今後は P 値に関わらず、Landis & Koch の基準に基づき判定する。ご指摘いただい たことは、今後の研究に活かしたいと考える。

Q8:発表内容と異なっているかもしれないが、ビグアナイドやβ遮断薬について、poor compliance の原因と言われていたが、単に一致していなかったことを示唆するも のであり、compliance とは関係ないように思うがどうか?つまり、ビグアナイド系 などは回答が一致していなかった有意な要因であって、poor compliance の要因と は違うのではないか?

A8: 回答の不一致に影響を及ぼす因子と示唆されるものであるが、これまでの報告か ら、ビグアナイド系薬剤やβ遮断薬は服薬アドヒアランスが悪く、その理由として は投与目的を理解できていないことや頻繁な用量変更などが言われている。つまり、

服薬状況を把握し辛く、また、患者側も薬の目的などを理解できていないため伝え ていないことなどが想定される。このような、医師と患者のアドヒアランスに対す る 認識 が 異 な る 場合 、 服 薬遵 守 は 低 下 する こ と も報 告 さ れ て いる た め 、 poor compliance の要因と絡ませて考察を行った。

Q9:実際に患者が使用している薬剤の錠数が平均 9 錠、一方、患者が考えている許容可

能な錠数は 5 錠以下、そして主治医が許容可能だと考える錠数が 10 剤以上という

結果であるが、ここから先は推測或いは解釈になるが、どういう風にこれら患者-

(8)

医師間の不一致を解決していけばよいと考えるか?循環器の医師は 9 剤必要だと、

或いは不必要な薬を投与している状況なのか、或いはどうしても治療に必要だから 9 錠処方しているのか、どちらかといえば後者だと思うが、患者はそうは考えてい ない。患者希望の 5 剤以下に合わせるべきか、或いは何らかの形で 9 剤を許容して もらうか、どちらが正しいと考えるか?

A9:医師は治療に必要な薬剤だから処方しており、不要な薬剤を処方することは行って いないと考える。ただし、一時的に使用する薬剤や急性期に使用した薬剤の中止忘 れや他院・他科からの処方薬は変更・中止し難いことも考えられる。科学的に十分 根拠がない薬剤を漫然と使用することは服薬アドヒアランス低下に繋がり兼ねな いため、医師だけでなく、私たち薬剤師も薬剤的観点から、例えば多剤・重複投薬 や潜在的に不適切な処方(potentially inappropriate medications:PIMs)を抽出 するなど、薬物療法の適正化に取り組む必要がある。私見ではあるが、薬物治療に おける患者-医師間の不一致は、両者が情報を共有し、対等の立場で話し合い、医 師を含む医療者側は患者の価値観や生活スタイルなどを尊重すること、患者側は治 療に積極的に参加し意思決定を行うことで、一部を解消できると考える。

服薬アドヒアランスの低下が薬剤数の問題であれば、変更できるものは合剤にす る等で薬剤数は多少減らすことはできる。ただし、合剤にすることで薬剤費が上が る可能性もあるため、変更する際は費用も含めて説明と患者の納得が必要である。

一包化も有用な方法の一つである。患者希望の 5 剤以下がよいのか、9 剤を許容し てもらうかは、患者個々の状況・状態で対応が異なってくると思われる。循環器疾 患患者は様々な生活習慣病に対する薬物投与が多く、1 日あたりの総数が 5 錠以上 になることが多い。特に高齢者は、多疾患で薬剤数も多く、薬物有害事象が出現し やすく、服薬管理能力も低下する可能性があるため、薬の必要性・有効性・安全性 などを考えて薬物療法の計画や見直しを実施していく必要がある。

Q10: WHO が示した服薬アドヒアランスに影響を及ぼす因子の中で、患者の状態の部分に

精神疾患等があり、患者関連の部分に病識・薬識の理解とあるが、精神医学領域で

は、精神科の患者は病識がない、つまり、自分が統合失調症であるなどの認識がな

い。そのような患者に薬を飲んでもらうという事を常日頃やっており、そのための

工夫として、医師-患者関係を良好に保つとか、病識を抽出するようなコミュニケ

ーションを常に心がけている。そのようなことをやりながら、最も大きな、患者の

アドヒアランスに介入効果があると言われている、心理教育や薬剤に関連する服薬

指導を、患者の診察以外にも定期的に行っている。本論文を読むと、こんなに沢山

の薬剤が処方されていることに驚く。この錠数は治療に必要だと考え患者さんに飲

んでもらうためには、患者側は自分は病気であるという意識だけではなく、病気を

治そうとか、病気をもう少しコントロールしようとかする深いモチベーションを要

することなので、生活習慣病全体に対する心理教育みたいなものが、もっと一般的

(9)

に日常で行われていてもいいのではないかと思うが、今どのような状況になってい るのか?例えば糖尿病患者には昔から教育入院というものがある。このような教育 を行い、患者に服薬することのモチベーションを挙げていくみたいなことは循環器 関連の診療科やその他の内科領域でも、やられているのか?

A10:当院循環器内科において、入院患者であれば、ハート教室で服薬方法や飲食物との 相互作用など、循環器疾患患者を対象に薬剤師及び栄養士が集団指導を実施してい る。外来患者に対しては、血圧手帳への記載や家庭血圧測定の促進、運動への介入、

来院ごとの手帳確認など実施しており、服薬アドヒアランスの把握や医療者-患者間 のコミュニケーションがとれていると考える。心臓リハビリテーションも多職種で 実施しており、これら多くの介入が患者の服薬意識や日常生活への行動変容に繋が っていると考えられる。

薬剤師による外来患者への取り組みとしては、薬局薬剤師による服用期間中のフ ォローアップが義務付けられたため、次の受診までの服薬状況を一元的に把握した り、テレフォンフォローアップなどで継続的な服薬指導を実施することが可能とな った。それにより、服薬に対する理解やモチベーションを向上させていくことがで きると示唆される。更に、それらの指導内容や残薬、服薬状況を医療機関へフィー ドバックされるため、主治医も受診までの服薬状況が把握でき、共に患者を診てい くことが良好な服薬アドヒアランスを継続させる方法の一つになり得るのではと考 えられる。また、患者の行動変容を起こすツールとして、現在治験が実施されてい る高血圧症アプリなども、特にアプリの使用に抵抗がない年代の患者の教育に有用 と考える。

Q11: 回答の一致群は患者の年齢が高く、高血圧の合併がある患者が多いという結果だ が、このような患者は医師との関係性も良く、うまくいっているのではないかと、

そのような解釈で合っているか?

A11: その解釈通りである。外来の高齢患者は、年齢が若い患者と比べ、主治医との関係 性も長いと考えられ、また、高血圧合併は高血圧手帳の確認など多くの介入があり、

医師-患者間のコミュニケーションギャップが小さいと考える。

Q12:患者と医者との服薬アドヒアランスに対する様々な認識の不一致があれば、アドヒ アランスが悪いという結論にはならないのか?

A12:服薬アドヒアランスに関連する各質問に対し、両者間の回答が不一致だから服薬ア

ドヒアランスが悪いという結論ではなく、あくまでも、患者と主治医との認識がど

れほど異なるか、について今回調査した。服薬アドヒアランスに対する認識が異な

れば、医師側は服薬できていると考えていても実際は服薬できていなかったり、処

方目的を説明したと安心していても患者側は全く理解していない、或いは本調査の

ように、許容できる 1 日の錠剤数や服薬回数が両者間で大きく乖離していたりと、

(10)

服薬アドヒアランスの低下に繋がる可能性が考えられるということである。

その他の質問に対しても活発な討議が行われ、申請者は適切に回答した。また今後の取

り組むべき課題に対しても明確に言明していた。本論文は患者とその主治医に直接同じ質

問紙調査を実施したこと、回答一致・不一致の 2 群に分け認識解離の原因を明らかにした

点に、独創性があり、学位論文に値すると評価された。

参照

関連したドキュメント

こういった背景から,本研究では健常有歯顎者における歯根膜触・圧覚閾値( PMT )の基準範囲の

本研究のデータソースには JMDC 株式会社が提供している健康保険組合の大規模レセプトデータを用 い、対象期間は 2016 年 4 月~ 2017 年 3

本研究は,後ろ向きコホート研究である.対象集団は,本学附属病院口腔インプラント科と 6 件の 関連歯科診療所において,2000 年 1 月から

は院外心肺停止蘇生後に体温管理療法を受けた患者を対象とした。臨床所見や血液検査所見は電子カ

調査期間中に患者、介護者の双方から回答が得られたのは 2155 名であった。患者の平 均年齢は 70.7 ± 7.9 歳、性別は女性が

本邦における CD 患者の増加は顕著で、近年、長期経過例も増えたことで癌合併の問題

大腸ポリープ切除に伴う最も多い合併症である後出血は、CP 群は 0 例、EMR 群が 7 例、HB 群が 3 例であった。CP 群は HB 群と EMR

2018 年 5 月から 2019 年 11 月の間に特発性 TTS の外科治療を受けた 12 人の患者 (平均年 齢 77.9 歳: 男性 3 名, 女性 9 名) を対象とした。3