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学 位 の 種 類 博士(歯学)

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Academic year: 2021

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全文

(1)

ふ り が な

氏 名

かんだ りゅうへい

神田 龍平

学 位 の 種 類 博士(歯学)

学 位 記 番 号 甲 第 862 号 学 位 授 与 の 日 付 令和 2 年 3 月 6 日

学 位 授 与 の 要 件 学位規則第 4 条第 1 項に該当

学 位 論 文 題 目 Reference range for periodontal mechanosensitive thresholds in molars stimulated from the buccal and occlusal directions in healthy subjects with natural dentition

(健常有歯顎者における頬側面および咬合面方向からの歯根 膜触・圧覚閾値の基準範囲の設定)

学 位 論 文 掲 載 誌 Journal of Osaka Dental University 第 54 巻 第 1 号 令和 2 年 4 月

論 文 調 査 委 員 主 査 岡崎 定司 教授 副 査 馬場 俊輔 教授 副 査 髙橋 一也 教授

論文内容要旨

本研究では咬合違和感症候群(以下,ODS)患者の知覚異常を検出する検査法を確立するために,

まず,臼歯部咬合面方向からの刺激を可能とする改良型

SW

モノフィラメントを製作し,健常成人有 歯顎者における臼歯部頬側面および咬合面方向からの

PMT

の基準範囲を設定すること,および中高 年健常有歯顎者における各刺激方向からの

PMT

を計測し,得られた基準範囲と比較することを目的 とした.

実験に先立ち,従来型

SW

モノフィラメント(TOUCH TEST®:North Coast Medical 社)のフ ィラメント部およびヘッド部を切断した改良型

SW

モノフィラメントを製作した.

被験者には,矯正治療の既往がなく,咬合接触検査により異常を認めず,咬合違和感を認めない健常 成人有歯顎者

50

名(男性

38

名,女性

12

名,平均年齢

25.7±2.3

歳)を選択した.対象歯は上下顎 左右側第一小臼歯から第二大臼歯までの計

16

歯とした.計測条件は座位,閉眼状態とした.頬側面 方向からの

PMT

の計測には従来型

SW

モノフィラメントを用い,刺激方向は頬側面から舌側方向と した.咬合面方向からの

PMT

の計測には,改良型

SW

モノフィラメントを用い,刺激方向は咬合面 から歯根方向とした.PMT の計測は本法を熟知した歯科医師

1

名が行った.フィラメントによる刺 激速度は可及的緩徐とした.各刺激方向における閾値の決定には精神物理学的測定法の上下法を用 い,PMT の基準範囲の設定には,飯塚・久米の方法を用いた.

加齢変化の影響を調べるために,健常中高年有歯顎者における

PMT

を計測した.被験者には自他

(2)

覚的に顎口腔系に異常を認めず,個性正常咬合を有する

40

歳以上の中高年健常有歯顎者

12

名(男性

7

名,女性

5

名,平均年齢

51.3

±

6.8

歳)とした.各刺激方向からの

PMT

の計測方法は前述の手法 を用いた.各刺激方向から得られた中高年健常有歯顎者における

PMT

を各基準範囲上にプロットす ることにより比較した.

その結果,製作した改良型

SW

モノフィラメントにより臼歯部咬合面方向からの刺激が可能となっ た.頬側面方向からの刺激時における

PMT

の基準範囲は,上顎では第一小臼歯から第二大臼歯まで それぞれ

1.12

3.77g

1.34

5.63g

2.28

12.05g

2.96

16.19g

であり,下顎では

1.04

4.13g

1.36

5.73g

2.38

14.34g

3.27

16.87g

であった.咬合面方向からの刺激時における

PMT

の基 準範囲は上顎では第一小臼歯から第二大臼歯までそれぞれ

1.75

8.90g

2.20

10.81g

5.72

22.60g

5.30

29.9g

であり,下顎では

2.10

9.72g

2.88

15.03g

6.67

26.90g

7.62

31.83g

であった.各刺激方向からの

PMT

とも,後方歯へ行くに従って大きい値を示した.また,頬側面方 向からの刺激時における

PMT

と比較し,咬合面方向からの刺激時における

PMT

は大きい値を示し た.また,健常中高年有歯顎者における

PMT

はいずれの被験者においても各歯種ともに基準範囲内 へ収まった.

臼歯部咬合面方向および頬側面方向からの刺激時における

PMT

の基準範囲が設定された.また,

中高年健常有歯顎者の

PMT

は加齢変化の影響が少ないことが明らかとなり,ODS 患者への評価の一 助となることが示唆された.

論文審査結果要旨

本論文は,比較的簡便に用いることができる

SW

モノフィラメントを用いて,咬合違和感症候群患 者に対する知覚検査法確立を目指し,器具の改良,歯根膜触・圧覚閾値の基準範囲の設定,および加齢 変化の影響を検討したものである.

咬合違和感症候群は器質的,知覚的,精神的要素など多岐にわたる病因が関連するものの,それぞ れの病因に対する検査方法は確立しておらず,明確な治療方針が存在しない.これまで歯科医師が評 価可能であったものは,咬合接触検査を代表とする器質的検査のみであった.しかしながら,器質的 検査にて異常が認められないにも関わらず違和感を訴える患者群の存在が指摘されており,知覚異常 を疑っても,その客観的指標は存在せず,まさに歯科における難症例と言われる所以である.そのよ うな状況下患者の訴えのみによる不可逆的な咬合治療を行ってしまうことにより,術者と患者との信 頼関係が揺るがされてしまうこともしばしばである.

そこで,器質的検査と併せて行うべき知覚的検査の客観的指標を確立する必要があると考えられ

る.それにより,病態の把握を容易にし,その客観的指標を用いることで,①器質的および知覚的に

異常を認めなければ,精神的要素の関連を推定できる.②臨床的に感覚の異常を伴う患者を定量的か

つ客観的に評価できる.③病態(鋭敏あるいは鈍麻など)の把握に有用である.④経時的評価を行う

ことにより,病態の変化や治療効果の判定に利用できる.⑤患者への説明に利用でき,モチベーショ

ンのアップにつながる.⑥専門科(精神科など)への対診の根拠となり,患者の理解も得られやす

い,等多くのメリットが挙げられる.このことにより、治療方針の決定に咬合治療が有効であるかを

症例ごとに検討可能となり、患者が訴える症状のままに治療を行うことで生じていた過剰診療を抑制

するのみならず、歯科的に咬合治療が必要であるにも関わらず処置を避けてしまうといったことを防

(3)

止できる可能性がある.

こういった背景から,本研究では健常有歯顎者における歯根膜触・圧覚閾値(

PMT

)の基準範囲の 設定を行い,咬合違和感症候群患者の多くは中高年者であることから,

PMT

の加齢変化を検討し,

考察を行っている.今後,咬合違和感患者への適応や治療方針の決定など,本分野の展望を大きく開

くための足掛かりとなる内容である点において,本論文は博士(歯学)の学位を授与するに値すると

判定した.

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