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製造業者による卸売統合の パネルデータ分析

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(1)

1.序   論

 製造業者による流通業者の行動の統制は,流通系列化と呼ばれる慣行に よってなされてきた。製品流通をめぐって製造業者と流通業者の意図は対 立する。製造業者は自社の製品の排他的な取扱を求める一方で,流通業者 は特定の製造業者の製品に偏らず,消費者や最終顧客が求める製品を取り 揃えようとするからである(風呂,1968)。流通系列化の下で製造業者は,

独立した卸売業者ないしは小売業者に対して,その自由な行動を制約し,

あたかも自社の販売組織であるかのように彼らを扱おうとする。

 製造業者は,卸売業者の行動をコントロールすることによって,川下の 二次卸売業者や小売業者の行動をコントロールし,マーケティングを完成 させる。したがって,製造業者による卸売統合は,流通系列化の橋頭堡と なっている(田村,1996)。なぜ製造業者が卸売統合を進めるのかを検討し

 395 商学論纂(中央大学)第

59

巻第3

4号( 2018

年3月)

製造業者による卸売統合の パネルデータ分析

久 保 知 一

   目   次

1.序   論

2.既 存 研 究

3.デ ー タ

4.仮   説

5.分   析

6.結   論

(2)

た久保(2003

b

は,サーベイデータによるクロス・セクション分析を行 い,製造業者による卸売統合は,資産特殊性,外部の卸売業者の相対的有 能性,そして卸売機能の暗黙知度によって決定されることを見出した。し かし,サーベイ調査の限界として,様々な産業にわたる網羅的なオブザベ ーションを得ることができていなかった。一方,流通分野の代表的統計で ある商業統計表データを用いた卸売統合の代表的な実証研究である田村

(1996)は,製造業者による流通系列化の橋頭堡を,彼らによる卸売業者 の統合に求めて,業種別の卸売統合の規定因分析を行った。

 かつて,日本の消費財産業のリーダー企業は,日本型マーケティングと 呼ばれる定石を採用していた。それは,流通系列化によって流通業者の行 動をコントロールして売り場を確保し,売り場を満たすためにフルライン の製品を展開し,大規模なプロモーションを伴って,結果として高い価格 を維持するものであった(石井,1993)。しかし,1982年の172万事業所を ピークとして日本の小売事業所数が減少に転じたことで,流通系列化を支 える基盤が徐々に失われ,現在では流通系列化は崩れてきている(三村,

2011)

 しかし,製造業者にとって,最終顧客は多数かつ分散して立地している ため,製造業者には卸売業者を用いた間接チャネルを用いる根拠がある。

流通系列化が本当に崩壊したのであれば,製造業者による卸売統合も減少 しているはずであろう。しかし,田村(1996)以降,商業統計表を用いた 卸売統合の研究は行われておらず,現状を正しく把握する必要がある。し たがって,本論では,⑴流通系列化を支える卸売統合が本当に低下して いるのか,そして 製造業者による卸売統合の規定要因はどのように変 化しているのかを問う。そして,流通系列化を支える製造業者による卸売 統合の動向とその規定要因について,新たなデータを用いて検討する。

(3)

2.既 存 研 究

⑴ 取 引 費 用

Williamson

(1975)

Coase

(1937)に 基 づ い て, 技 術 的 に 分 割 可 能

technologically separable

な活動同士の取引を分析単位として,取引が企

業内部に垂直統合される現象を説明すべく,取引費用モデルを構築した。

この考え方に従うと,製造業者が果たす機能と流通業者(卸売業者や小売業 者)が果たす機能を技術的に分割することが可能であり,市場を用いる取 引費用が高い場合に,製造業者ないしは流通業者は取引相手を垂直統合し たり,中間組織を作り上げることになる。

 すると,製造業者が卸売業者への垂直統合度を高めるのは,卸売業者が 行う小売業者への配送やリテールサポートの提供などを,製造業者の意に 沿う形で行わせるためと考えられる。卸売業者が小売業者へ提供する流通 機能を,個々の製造業者の製品を優遇する形にカスタマイズさせること は,市場取引では難しい。市場取引には,3種類の取引費用がかかるため である。すなわち,誰が,どこで,何を,いくらで売っているのかを調べ る探索費用

search costs

,取引条件に合意するためにかかる交渉費用

bargaining costs

, 合 意 さ れ た 取 引 を 確 実 に 実 行 す る た め の 執 行 費 用

enforcement costs

の3つの取引費用が生じうる

Coase, 1937)

 製造業者が自らにカスタマイズされた卸売機能を調達するためには,い ずれの取引費用も高くつくであろう。製造業者にとって満足のいく能力を 持った卸売業者を探す探索費用や,卸売業者に担わせたい卸売機能や取引 条件を特定する交渉費用がかかるだけでなく,仮にカスタマイズされた卸 売機能の提供に卸売業者が合意したとしても,本当にそうした機能を提供 しているのかモニタリングし,もし違反があった場合には適宜に執行を行 う必要がある

Kashyap and Murtha, 2017)

。したがって,流通系列化を望む

(4)

製造業者は,高い取引費用に直面して,卸売業者を垂直的に統合すること になるものと考えられる。

取引費用モデルに基づく実証研究は数多いが,その多くは製造業者に対す るサーベイデータを用いたものである1)。二次データを用いた分析として,

Majumdar and Ramaswamy

(1995)が挙げられる。彼らによると,チャネ ル構造の決定には,流通業者から調達される流通サービスの最大化と,そ の取引にかかる取引費用の最小化という2つの要因が働いている。そして 彼らは米国の製造業者が直接販売に乗り出すのはなぜかを解明すべく,

PIMS

データを用いて実証分析を行った。資産特殊性を製品のカスタマイ ズと補助的サービスの2つの変数によって代用することで取引費用要因と して扱い,それらが製造業者の直接販売,すなわち垂直統合度を高めるこ とを見出している。

⑵ 組織能力と動的取引費用

 取引費用モデルは企業境界の分析における重要な業績であるが,いくつ かの理論的問題も指摘されている。その1つが,取引費用モデルでは,同 一産業に属する企業が同じ技術を持っていると想定されていることである

Nelson and Winter, 1982 ;

 

Langlois and Robertson, 1995 ;

 

Ghosh and John, 1999)

Williamson

(1985)は,代替的な組織形態間で技術が一定と仮定して経済

取引の組織化を検討しており

pp. 92‑94)

,「同一産業内の企業間で存在す る差異を強調していない」のである

Demsetz, 1988 , p. 149)

  企 業 間 の 異 質 性 を 明 示 的 に 扱 う 枠 組 と し て, 組 織 能 力 モ デ ル

organizational capabilities approach

がある。企業成長の歴史的経緯に依存し

て,企業の組織能力は多種多様である

Nelson and Winter, 1982)

Langlois

1) 詳しいレビューについては久保(2003 a,2003 b,2011)を参照のこと。

(5)

and Robertson

(1995)は,同一の相手との取引を継続するならば,取引費 用が高い取引であっても,企業間にルーティンが形成されるため,長期的 には取引費用は低下し,市場取引が行われると指摘した。そして,ルーテ ィンが形成される長期において重要な取引費用は,組織能力を企業間でや りとりする費用,すなわち動的取引費用

dynamic transaction costs

である と主張する。動的取引費用とは,「企業が必要な組織能力を必要な時に保 有していない」がゆえに生じる費用,あるいは組織能力の移転にあたって

「 取 引 相 手 と 交 渉・ 調 整・ 教 育 す る 費 用 」 と 定 義 さ れ る

Langlois &

Robertson 1995 , p. 35)

。動的取引費用モデルにしたがうと,企業間取引にお

いて,取引相手の組織能力を利用するための動的取引費用が高い場合,企 業は垂直統合を行い,逆であれば垂直分離が行われることになる。久保

(2003

a, b

は,製造業者による卸売統合の動的取引費用分析を行い,卸売 業者が相対的に高い組織能力を持つほど製造業者は卸売段階の垂直統合度 を低めること,卸売業者の組織能力が暗黙知的で移転が困難であるほど,

製造業者による卸売機能の調整が困難になることを見出している。

⑶ 小 売 構 造

 製造業者による卸売統合がチャネル戦略として有効な条件として,小売 業者の販路の集中度がある(住谷,1992)。小売構造が小規模分散型の場合,

卸売業者の統合が流通チャネルのコントロールに有効である。しかし,小 売構造が大規模集中型に変化するにつれて,小売業者にパワーがシフト し,卸売業者は製造業者の販売代理店から小売業者の購買代理店へとその 性格を変えている

Maruyama, 2000)

。彼らの研究は,小売構造の集中度が 高まるにつれて,製造業者による卸売統合が減少していることを示唆して いる。実際,図表1に示されるように,我が国では,小売構造は小規模分 散型から大規模集中型へと変質している。

(6)

⑷ ライフサイクル

 産業のライフサイクルと企業境界の関連を扱った

Stigler

(1951)による と,産業の黎明期には市場規模が小さいために,垂直的に分離して特定の 流通機能に特化した企業が操業できず,製造業者は流通機能を垂直統合し て自ら担うことになる。しかし,産業が成長して市場規模が大きくなるに つれて,各種の流通機能に特化した企業が登場し,製造業者の垂直統合度 は低くなる。その後,産業が衰退して市場規模が小さくなると,黎明期と 同様に特定の流通機能に特化した企業が操業できなくなるため,製造業者 は垂直統合度を高めていく。

Stigler

のこの仮説は,縦軸を垂直統合度に,

横軸を時間にとったグラフで

U

字型の関係として示される。

Stigler

仮説 図表1 小売事業所数と売り場面積の推移

200 180 160 140 120 100 80 60 40 20 0

160 140 120 100 80 60 40 20

1964 1966 1968 1970 1972 1974 1976 1979 1982 1985 1988 1991 1994 1997 1999 2002 2004 2007 2012 2014 0

事業所数(万)

出所:商業統計表より作成。

売場面積(

km

2

(万)

km

2

(7)

を卸売統合に当てはめると,市場規模が小さいうちは卸売統合が進展し,

市場規模が大きくなると卸売統合は解消されることになる2)

⑸ 商業統計データを用いた実証研究

 田村(1996)は,商業統計表データを用いて,製造業者による卸売統合 度が産業間で異なっていることを説明すべく実証分析を行った。この研究 の従属変数は統合卸販売額シェアであり,それは商業統計表流通経路別統 計表における「その他の卸(販売先が同一企業内である卸/仕入先が同一企業 内である卸/自店内製造品を販売する卸)」の販売額が各産業の卸売業全体に 占めるシェアと定義されている。そして,統合卸販売額シェアを高める要 因として,需要成長率,卸事業所の従業者規模,輸出経路率の3点を,逆 に低める要因として経路分岐性,在庫率の2点を見出している。

 この研究は日本の複雑な卸売業者の動向を描き出す流通経路別統計表を 駆使して行われたものであり,日本の流通研究の到達点の1つである。し かし,分析期間が1991年と古く,それ以降の日本の流通環境の変化を踏ま えた分析が行われていない。また,単年度の分析であるため,パラメータ が観察されない異質性の効果を含んでいるという実証面での問題点も指摘 される。そこで本論では,田村(1996)を修正しつつ,新しいデータを用 いて実証分析を行うこととする。

3.デ ー タ

 データソースは商業統計表の二次加工統計表である「流通経路別統計編

(卸売業)」である。商業統計調査の最新版は2014年度に行われた。商業統 計調査は事業所対象の調査であり,個々の事業所が流通チャネル上で果た

2

) 田村(

1996

)による解釈は逆

U

字型を想定しており,Stigler(

1951

)の 解釈としては誤っている。

(8)

図表2 流通経路別統計表による卸売業者の分類

流通段階 流通経路

仕入先 販売先

次卸 直接 取引卸

他部門直取引卸 取引先が他の産業 である直取引卸

小売直取引卸 取引先が小売業者 である直取引卸

生産業者 生産業者 国外 国外 生産業者 国外

産業用使用者 国外 産業用使用者 国外 小売業者 小売業者

元卸 生産業者

国外

卸売業者 卸売業者

次卸

中間卸 卸売業者

卸売業者

卸売業者 産業用使用者

最終卸 卸売業者

卸売業者

国外 小売業者

その他の卸

販売先が同一企業 内である卸

生産業者

生産業者のうち親会社 生産業者のうちその他の 生産業者

卸売業者 国外から仕入れ

同一企業内の本支店 同一企業内の本支店 同一企業内の本支店 同一企業内の本支店 同一企業内の本支店 仕入先が同一企業

内である卸

同一企業内の本支店 同一企業内の本支店 同一企業内の本支店 同一企業内の本支店 同一企業内の本支店

同一企業内の本支店 卸売業者

小売業者 産業用使用者 国外 自店内製造品を販

売する卸

自店内製造 自店内製造 自店内製造 自店内製造 自店内製造

同一企業内の本支店 卸売業者

小売業者 産業用使用者 国外  出所:流通経路別統計表

(9)

す役割については,「年間商品仕入額の仕入先別割合」と「年間商品販売 額のうち卸売販売額の販売先別割合」の中から,その最も大きい割合の仕 入先と販売先によって分類される3)(図表2)

 商業統計表は日本標準産業分類によって定義された業種毎に集計された データである。したがって,個々の企業や事業所についてのミクロデータ ではなく,集計値であることに注意が必要である。データに含まれる業種 は51業種である。

 データセットに含まれる年度は1994,1997,2002,2007の4期間であ る。7年ぶりに行われた2014年度調査でも流通経路別統計表が作成されて いるが,本論では2014年度データは含めていない。2014年度調査では,日 本標準産業分類の第12回改訂と調査設計変更が行われた結果,前回までの データと接続不可能なためである4)。そこで,4年度分を接続してバラン ス・パネルデータを構築した。

4.仮   説

⑴ 従属変数:統合卸シェア

 従属変数は,田村(1996)の統合卸シェアを用いる。これは,その他の 卸の年間販売額と,一次卸および二次卸の年間販売額の比率で定義され る。ここで注意すべきことに,商業統計表流通経路別統計表では,統合主 体が製造業者なのか,卸売業者なのかまでは分からない。しかし,田村

(1996)によると,統合主体が卸売業者の場合であってもその多くは製造 業者の資本の入った販売会社の支店である。そこで本論でも田村(1996)

3

) 商業統計表「利用上の注意」より。http://www.meti.go.jp/statistics/tyo/

syougyo/result- 2 /h 26 /pdf/ryutsu/ryuturiyou 1 .pdf

4

) 金額のデフレータには民間最終消費支出を用いた。http://www.esri.cao.

go.jp/jp/sna/data/data_list/kakuhou/files/h 27 /h 27 _kaku_top.html

(10)

図表3 卸売統合の現状

業 種

1994 1997 2002 2007

平均 標準偏差 農業用機械器具卸売業

0 . 64 0 . 64 0 . 60 0 . 65 0 . 63 0 . 02

味噌・しょう油卸売業

0 . 61 0 . 54 0 . 73 0 . 60 0 . 62 0 . 06

家庭用電気機械器具卸売業

0 . 55 0 . 65 0 . 59 0 . 64 0 . 61 0 . 03

自動車卸売業

(二輪自動車を含む)

0 . 79 0 . 83 0 . 32 0 . 48 0 . 61 0 . 19

医薬品卸売業

0 . 62 0 . 64 0 . 74 0 . 41 0 . 60 0 . 11

事務用機械器具卸売業

0 . 57 0 . 60 0 . 56 0 . 52 0 . 56 0 . 02

建設機械・鉱山機械卸売業

0 . 51 0 . 52 0 . 47 0 . 48 0 . 50 0 . 02

電気機械器具卸売業

(家庭用電気機械器具を除く)

0 . 50 0 . 55 0 . 47 0 . 45 0 . 49 0 . 03

化粧品卸売業

0 . 44 0 . 46 0 . 46 0 . 51 0 . 47 0 . 02

石油卸売業

0 . 52 0 . 50 0 . 42 0 . 43 0 . 47 0 . 04

菓子・パン類卸売業

0 . 43 0 . 45 0 . 49 0 . 42 0 . 45 0 . 02

医療用機械器具卸売業

(歯科用機械器具を含む)

0 . 45 0 . 44 0 . 44 0 . 42 0 . 44 0 . 01

茶類卸売業

0 . 42 0 . 40 0 . 39 0 . 50 0 . 43 0 . 04

酒類卸売業

0 . 37 0 . 42 0 . 42 0 . 36 0 . 39 0 . 02

家具・建具卸売業

0 . 34 0 . 39 0 . 41 0 . 42 0 . 39 0 . 02

その他の一般機械器具卸売業

0 . 41 0 . 41 0 . 39 0 . 34 0 . 39 0 . 03

精密機械器具卸売業

0 . 41 0 . 38 0 . 38 0 . 35 0 . 38 0 . 02

塗料卸売業

0 . 32 0 . 42 0 . 38 0 . 36 0 . 37 0 . 03

金属加工機械卸売業

0 . 39 0 . 38 0 . 33 0 . 34 0 . 36 0 . 02

肥料・飼料卸売業

0 . 49 0 . 26 0 . 35 0 . 33 0 . 36 0 . 08

油脂・ろう卸売業

0 . 47 0 . 30 0 . 32 0 . 32 0 . 35 0 . 06

その他の化学製品卸売業

0 . 39 0 . 33 0 . 32 0 . 30 0 . 33 0 . 03

輸送用機械器具卸売業

(自動車を除く)

0 . 39 0 . 38 0 . 18 0 . 39 0 . 33 0 . 08

スポーツ用品・娯楽用品・

玩具卸売業

0 . 33 0 . 38 0 . 26 0 . 34 0 . 33 0 . 04

室内装飾繊維品卸売業

0 . 34 0 . 27 0 . 35 0 . 33 0 . 32 0 . 03

(11)

婦人・子供服卸売業

0 . 24 0 . 28 0 . 27 0 . 41 0 . 30 0 . 06

鉄鋼卸売業

0 . 28 0 . 32 0 . 26 0 . 30 0 . 29 0 . 02

その他の什器卸売業

0 . 26 0 . 28 0 . 24 0 . 39 0 . 29 0 . 05

紙・紙製品卸売業

0 . 26 0 . 28 0 . 27 0 . 30 0 . 28 0 . 01

非鉄金属卸売業

0 . 30 0 . 31 0 . 27 0 . 21 0 . 27 0 . 03

染料・顔料卸売業

0 . 31 0 . 38 0 . 21 0 . 14 0 . 26 0 . 08

荒物卸売業

0 . 29 0 . 17 0 . 24 0 . 30 0 . 25 0 . 04

食肉卸売業

0 . 26 0 . 21 0 . 24 0 . 25 0 . 24 0 . 02

金物卸売業

0 . 29 0 . 24 0 . 25 0 . 18 0 . 24 0 . 03

缶詰・瓶詰食品卸売業

(気密容器入りのもの)

0 . 27 0 . 29 0 . 15 0 . 20 0 . 23 0 . 05

男子服卸売業

0 . 24 0 . 22 0 . 20 0 . 26 0 . 23 0 . 02

乾物卸売業

0 . 22 0 . 23 0 . 20 0 . 25 0 . 23 0 . 02

陶磁器・ガラス器卸売業

0 . 21 0 . 21 0 . 24 0 . 24 0 . 22 0 . 01

靴卸売業

0 . 20 0 . 17 0 . 18 0 . 30 0 . 21 0 . 05

その他の衣服・身の回り品卸

売業

0 . 24 0 . 19 0 . 19 0 . 17 0 . 20 0 . 02

かばん・袋物卸売業

0 . 21 0 . 16 0 . 15 0 . 13 0 . 16 0 . 03

織物卸売業

(室内装飾繊維品を除く)

0 . 15 0 . 18 0 . 13 0 . 13 0 . 15 0 . 02

木材・竹材卸売業

0 . 12 0 . 13 0 . 13 0 . 13 0 . 13 0 . 00

寝具類卸売業

0 . 12 0 . 16 0 . 10 0 . 12 0 . 12 0 . 02

生鮮魚介卸売業

0 . 09 0 . 10 0 . 11 0 . 11 0 . 10 0 . 01

履物卸売業(靴を除く)

0 . 09 0 . 07 0 . 11 0 . 08 0 . 09 0 . 01

畳卸売業

0 . 06 0 . 10 0 . 08 0 . 09 0 . 08 0 . 01

古紙卸売業

0 . 07 0 . 05 0 . 06 0 . 15 0 . 08 0 . 04

野菜卸売業

0 . 13 0 . 04 0 . 06 0 . 06 0 . 07 0 . 03

果実卸売業

0 . 04 0 . 05 0 . 09 0 . 03 0 . 05 0 . 02

鉄スクラップ卸売業

0 . 05 0 . 04 0 . 03 0 . 06 0 . 05 0 . 01

平均

0 . 33 0 . 32 0 . 30 0 . 31

標準偏差

0 . 17 0 . 18 0 . 169 0 . 155

 出所:商業統計表流通経路別統計表より作成。

(12)

にならって,統合卸シェアを従属変数に用いる。業種ごとの卸売統合の現 状は,図表3の通りである。

⑵ 経路分岐性

 この変数は卸売段階の多段階性を示すものであり,二次卸の年間販売額 を一次卸の年間販売額で除したものである(田村,1996)。日本の

W/R

率は1を超えており,その値は年々下がっているものの,多段階性は依然 として残っている(図表4)5)。卸売段階が多段階であると,製造業者にと っては一次卸を統合しても,小売段階への影響力は限定される。したがっ て,経路分岐性が高い業種では,統合卸のシェアは低くなるものと予想さ れる。

⑶ 輸出経路比率

 この変数は海外販売額を年間販売額で除したものである(田村,1996)

5

) W/R比率は以下のごとく算出した。W/R比率=(卸売業販売額─産業用

使用者・輸出向け販売額)/小売業販売額。

図表4 W/R 比率の推移

1985 1988 1991 1994 1997 2002 2007 2014 3

2 . 5

2

1 . 5

1

0 . 5

0

(13)

産業における輸出が多いと,卸売業者による危険負担機能が重視され,卸 売業者の介在が高まる(三村,2011)。したがって,田村(1996)とは逆に,

輸出経路比率は統合卸シェアと負の関係にあると考えられる。

⑷ 在 庫 率

 在庫率は商品手持額を年間商品販売額で除したものである(田村,

1996)

卸売段階での在庫率が高いことは,卸売段階において不確実性をプールす るために在庫が積み増しされていることを示唆している

Hall, 1948)

。し たがって,在庫率は統合卸シェアと負の関係にあると考えられる。

⑸ 売上規模と労働生産性

 事業所の規模を補足するために,売上規模(商品販売額/事業所数)と労 働生産性(商品販売額/従業者数)を用いる。売上規模は事業所の規模を測 定する尺度であり,事業所レベルでの規模の経済を示す。一方,労働生産 性は卸売業者の組織能力を示す尺度である。卸売事業所の売上規模が高 く,規模の経済が働く場合には,統合によってコントールしようと考える

であろう

Chandler, 1992)

。したがって,売上規模は統合卸シェアと正の

関係を持つ。一方,労働生産性が高い場合には,卸売業者の組織能力が高 く,製造業者が卸売段階を統合する合理性がない。したがって,労働生産 性は統合卸シェアと負の関係を持つ。

 本論と田村(1996)が異なっている点は,本論では,需要成長率を含め ていないことと,従業者規模を売上規模と労働生産性の2つに分解してい る点である。需要成長率を算出するためには1年度前のデータが必要であ るため,十分なサンプルサイズの確保を優先してこの変数は含めなかっ た。従業者規模については,売上規模と労働生産性に分解することによっ

(14)

図表5 変数リスト

変数名 定義

統合卸シェア その他の卸の年間販売額/一次卸と二次卸の年間販売額 経路分岐性 二次卸の年間販売額/一次卸の年間販売額

輸出経路比率 海外販売額/年間販売額 在庫率 商品手持額/年間商品販売額 売上規模 商品販売額/事業所数 労働生産性 商品販売額/従業者数

図表6 記述統計量

年度 統合卸

シェア

経路分岐

輸出経路

比率 在庫率 売上規模 労働生 産性

1994

最大値

0 . 79 2 . 64 0 . 22 0 . 14 38 . 88 1 . 92

平均値

0 . 33 0 . 67 0 . 02 0 . 07 10 . 02 0 . 78

最小値

0 . 04 0 . 18 0 . 00 0 . 01 2 . 12 0 . 23

標準偏差

0 . 17 0 . 50 0 . 04 0 . 04 7 . 10 0 . 39 1997

最大値

0 . 83 4 . 59 0 . 18 0 . 16 41 . 80 2 . 17

平均値

0 . 32 0 . 83 0 . 02 0 . 07 10 . 30 0 . 82

最小値

0 . 04 0 . 17 0 . 00 0 . 01 2 . 19 0 . 24

標準偏差

0 . 18 0 . 77 0 . 04 0 . 04 7 . 55 0 . 43 2002

最大値

0 . 74 3 . 63 0 . 56 0 . 16 32 . 67 2 . 43

平均値

0 . 30 0 . 85 0 . 03 0 . 06 10 . 26 0 . 83

最小値

0 . 03 0 . 08 0 . 00 0 . 01 1 . 59 0 . 15

標準偏差

0 . 17 0 . 72 0 . 08 0 . 04 7 . 22 0 . 48 2007

最大値

0 . 65 9 . 92 0 . 17 0 . 16 53 . 37 4 . 11

平均値

0 . 31 1 . 18 0 . 03 0 . 07 11 . 93 0 . 96

最小値

0 . 03 0 . 17 0 . 00 0 . 01 1 . 56 0 . 23

標準偏差

0 . 16 1 . 40 0 . 03 0 . 04 10 . 80 0 . 70

Total

最大値

0 . 83 9 . 92 0 . 56 0 . 16 53 . 37 4 . 11

平均値

0 . 31 0 . 88 0 . 03 0 . 06 10 . 63 0 . 85

最小値

0 . 03 0 . 08 0 . 00 0 . 01 1 . 56 0 . 15

標準偏差

0 . 17 0 . 92 0 . 05 0 . 04 8 . 28 0 . 52

(15)

て,それぞれ規模の経済と組織能力を代理的に測定する尺度として用いて いる。なお,変数リストは図表5,記述統計量は図表6の通りである。

5.分   析

 まず,年度ごとに

OLS

で推定した結果が図表7である。決定係数が年 を経るごとに低下していることがわかる。もっとも低い2007年では0

. 36で

あるが,クロス・セクション・データであることを考えればやや低いもの の許容範囲と判断されうる。統合卸シェアを高める要因は,輸出経路比 率,売上規模の2つであり,逆に低める要因は経路分岐性,在庫率,労働 生産性の3つであった。この単年度

OLS

の結果は田村(1996)と整合的で あった。

 次に4年度分を接続したパネルデータによる分析を行った。図表8の通

図表7 

OLS

1994

1997

2002

2007

経路分岐性

0 . 209

***

0 . 109

***

0 . 136

***

0 . 047

***

0 . 039

) 

0 . 026

) 

0 . 030

) 

0 . 015

)  輸出経路比率

0 . 746

1 . 361

**

0 . 301

  

1 . 275

** 

0 . 487

) 

0 . 581

) 

0 . 262

) 

0 . 571

)  在庫率

2 . 331

***

1 . 686

***

2 . 080

***

1 . 395

** 

0 . 598

) 

0 . 556

) 

0 . 636

) 

0 . 586

)  売上規模

0 . 011

0 . 016

**

0 . 013

0 . 010

** 

0 . 006

) 

0 . 006

) 

0 . 008

) 

0 . 005

)  労働生産性

0 . 194

*  

0 . 258

** 

0 . 263

** 

0 . 174

** 

0 . 103

) 

0 . 105

) 

0 . 121

) 

0 . 075

)  定数項

0 . 640

***

0 . 542

***

0 . 635

***

0 . 464

***

0 . 087

) 

0 . 086

) 

0 . 089

) 

0 . 071

)  決定係数

0 . 566

0 . 555

0 . 411

0 . 360

 注:括弧内は標準誤差。***

p

<0

. 01,

**

p

<0

. 05,

p

<0

. 1

(16)

り,卸売統合には業種間で相当にばらつきがあるため,業種の異質性をコ ントロールする必要がある。そこで,切片を定数とする固定効果モデル と,切片を確率変数とする変量効果のいずれが望ましいのかをチェックす るために

Hausman

検定を行った。その結果,χ2=152

. 34

p

<0

. 00)

であ り,係数の差は系統的でないという帰無仮説は棄却された。したがって,

以下では固定効果モデルを用いる。固定効果を用いることによって,個々 の業種について時間不変な要因はコントロールされる。

 パネルデータ分析の結果は,いくつかの点で

OLS

とは大きく異なって いる。とりわけ,経路分岐性と輸出経路比率の効果がマイナスに転じた。

OLS

と固定効果モデルの分析結果における符号の違いは,観察不可能な 変数に起因している。固定効果は,観測不可能な変数が持つ強い正の相関 を打ち消すため,符号が逆転する。

図表8 パネル分析

経路分岐性

0 . 014  0 . 014  0 . 014 

 0

. 016

** 

(0

. 009) 

(0

. 008) 

(0

. 009) 

(0

. 008) 

輸出経路比率 −0

. 399

*** −0

. 464

*** −0

. 415

*** −0

. 314

** 

(0

. 129) 

(0

. 129) 

(0

. 135) 

(0

. 125) 

在庫率 −0

. 950

**  −0

. 752

*   −0

. 924

**  −0

. 628  

(0

. 451) 

(0

. 450) 

(0

. 456) 

(0

. 422) 

売上規模  0

. 003

**   0

. 015

** 

(0

. 001) 

(0

. 003) 

労働生産性

0 . 009 

−0

. 225

***

(0

. 021) 

(0

. 048) 

定数項  0

. 374

***  0

. 331

***  0

. 365

***  0

. 382

***

(0

. 031) 

(0

. 035) 

(0

. 038) 

(0

. 035) 

決定係数

0 . 085  0 . 121  0 . 086  0 . 236 

 注:括弧内は標準誤差。***

p

<0

. 01,

**

p

<0

. 05,

p

<0

. 1

(17)

 経路分岐性が統合卸シェアと負の関係にあるとの仮説は,パネルデータ では棄却された。これは意外な結果であった。経路分岐性は,当該業種の 卸売段階の多段階性を測定する指標である。したがって,卸売段階が多段 階であるほど,製造業者による卸売統合が高いという結果となっている。

卸売構造が多段階となる要因は,小売業者や生産財ユーザーが分散立地し ていることや,製造業者が多種多様なために卸売段階での品揃え形成が重 要になることが挙げられる。その時,製造業者と小売業者・生産財ユーザ ーの間には複数の卸売業者が介在する。今回の分析結果は,卸売業者が多 段階に介在するほど,製造業者は流通を卸売業者に委ねようとするのでは なく,資本を必要とする卸売統合に乗り出し,川下の動きをコントロール しようとすることを示している。あるいは,多段階性が小さい場合には,

製造業者は卸売段階を統合するのではなく,卸売業者との取引関係の中で パワー関係を構築し,チャネルを管理しようとしていることが示唆される

(結城,2014)

 輸出経路比率については,輸出の際には独立卸売業者が果たす危険負担 機能が重視されるため,卸売統合が抑制されるという仮説を支持してい る。

6.結   論

 本論は,田村(1996)の分析以降の期間について,我が国における流通 系列化の橋頭堡である製造業者による卸売統合の分析を行った。こうした 追試研究は,当初の研究時点からの環境変化を踏まえたものであり,研究 知見を蓄積していく上で意義深いものと考えられる。

 本論は2つのリサーチ・クエスチョンを設定していた。まず,⑴の卸 売統合の変化については,図表3を見る限りでは1994年から2007年の間で ほとんど変化は見られなかった。次に⑵の卸売統合の規定要因の変化に

(18)

ついては,追試にとどまらず,新たな知見も得られた。単年度ごとの

OLS

では,田村(1996)による1991年度の分析とほぼ同じ結果が支持され ていた。しかし,パネル分析を行った結果,経路分岐性と輸出経路比率は 田村(1996)と異なる結果となった。このことは,分析者から観測できな い卸売業種の異質性が存在しており,その効果を固定効果によって取り除 くことで初めて見えてくる結果であった。

 ただし,本論では公開されている商業統計データだけを用いているた め,分析単位は集計された卸売業種となっている。したがって,個々の卸 売業者の行動を把握するミクロ的な分析は行えていない。現時点では,商 業統計データは公的統計調査の個票データ提供の対象となっていないが,

将来,個票データの利用が可能になった際にはミクロ分析を行い,本論の 結果との整合性をチェックする必要があるだろう。

 付記 本研究は

JSPS

科研費

JP 20730279の助成を受けたものである。

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参照

関連したドキュメント

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