貿易構造の変化による産業構造への影響分析
−輸出誘発輸入と輸入制約耐性から測る空洞化の進捗−
藤 田 渉
Abstract
Two-way and multi-stage trade of intermediate goods has been in- creasing rapidly. For example, fragmentation in trade corresponds to this. In these intermediate goods sectors, the hollowing out of industry is generally caused by a deviation from the center of international trade linkages. Progress of hollowing is not only appearing in the share of production value. Signs appear in import and export structure in ad- vance. By evaluating the import induced by export and estimating the interrupted import shock in each sector, it is possible to measure the strength of the international linkage. These are the subjects of the input-output analysis. The former is a backward linkage effect, and the latter is a front linkage effect. Hollowing is characterized by these and changes in exports and imports. These analyses are used easily accessi- ble competitive import type input-output tables.
Keywords: trade, hollowing out of industry, input-output analysis, Ghosh model
1 はじめに
20世紀末から世界の貿易,特に東アジアにおける貿易量は凄まじいほどの 伸張を見せた。世界銀行による
World Development Indicator
の東アジア途 上国集計データ系列(East Asia & Pacific
(developing only
))では,リーマンショックとそれに続く世界金融危機(2007年)の前には,その貿易量(輸 出入合計額)の対
GDP
比率は約74%(サービス貿易も含めれば86%)まで に達していた。それに対して,わが国の貿易量の対GDP
比率は,長期に渡 って10数%台であったが,2000年代になって上昇を始め,2008年には31.8%にまでなっている(図1.1)(注1)。いずれも世界金融危機の後には一旦低下し たものの,再び伸長を始めている。しかし,2011年までのデータでは東アジ ア途上国集計データ系列は他地域と比較して低迷している。
図1.1 Merchandise trade(%of GDP)(World Development Indicator/The World Bankより作成)
この貿易量の激増の現象にはフラグメンテーション(
fragmentation
)が あるとされる。すなわち,「国境を越えたプロセスの細分化」が貿易量を増 大させたと考えられる。実態としては国際化した企業のアウトソーシングや 社内取引であるものが,国境を越えることにより,貿易として浮かび上がっ(注1)World Development Indicator/The World Bankの貿易量の対GDP比については,
Trade(%of GDP)はサービス貿易を含み,わが国で通常言われる貿易量の対GDP比
は,Merchandise trade(%of GDP)の方の系列である。財務省貿易統計「年別輸出入 総額(確定値)」を内閣府「国内総生産(支出側)及び各需要項目」の名目暦年値で除 せば,ほぼ同じ値になっていることが確認できる。
てくるわけである。これまで筆者は,この地域におけるフラグメンテーショ ンについて(藤田(2006
a
,2007)),さらに国境を越えてサプライチェーンが 形成されていることについて(藤田・福澤(2010)),考察を継続的に行って きた。問題は,このようなフラグメンテーションの存在は安定的な貿易形態なの か,それとも過渡的な現象であるのかということである。国境を越えたプロ セスの細分化は技術的理由や経済的理由で一方向的に進捗していくのか,あ るいは過渡的な現象であり,プロセスの拠点は次第にコスト優位性があった り市場に近いところへ集約されて行き,コスト的に劣位で,なおかつ市場の 有望性が薄れていくような地域は技術的な優位性が残存していたとしても次 第にサプライチェーンから迂回されて行き,結果フラグメンテーションは弱 まっていくのか,そういった動的な傾向についての計測や考察はほとんどな されていない。
以前の研究の期間では貿易量が増大する局面であり,長期での状況は把握 はできなかった。それでも,これまでの研究のサーベイでとりあげた多くの 事例では,日本の関与する国境を越えたサプライチェーンは最終仕向地は北 米向けが多く,中間生産地は中国から他のアジア地域に移転するなど安定的 なものではなく,また日本にはマザー工場が残るとされるが,そのマザー工 場も研究開発拠点というより,シワ取りのために残置の傾向があり,いずれ 現地化に収束していく可能性を示唆している(田(2009),山崎(2010)等)。
フラグメンテーションを形成する複数の端点は常に移動していくとすれ ば,わが国はそのネットワークからどのような位置づけに変化していくので あろうか。産業の空洞化という術語が人口に膾炙して久しいが,フラグメン テーションの世界から国境線を消してみたときに,空洞化は産業の盛衰のよ うな平面的なイメージではなく,濃密に絡み合った国際産業構造の高気圧が 地表を這って移動して去った後のような,あたかも天気図のような,立体的 なイメージで見る必要があるのではないだろうか。
フラグメンテーションの研究では,輸出にどれだけ輸入の付加価値が含ま れているかが一つの関心であり,また国際産業連関表を用いることでその循 環的構造を見ようとする分析方法が有効であった。これは,単なる貿易量の 増加というだけではなく,フラグメンテーション,すなわち中間財の往復を 定量的に把握しようとしたものである。前述の藤田(2006
b
,2007) において はHummels et al
.(1999,2001) によるvertical specialization share
を拡張して
ASEAN
・東アジアにおける中間財貿易の循環的連結構造を分析している。
中間財貿易の増大を,輸出とそれによって誘発される中間財輸入の
chain
ととらえ直したときには,国際的な垂直分業構造は産業連関分析の対象とな ることから,Hummels et al
.はOECD
主要国の非競争型産業連関表を用い,vertical specialization share
(VS
,またはVSS
と略記される) なる指標を提 示した。しかし,それは国別の産業連関表を用いたものであったため,sin-
gle-stage
のモデルであったが,藤田はアジア国際産業連関表(アジア経済研究所(1998,2001,2006)) を用いることにより,
Hummels et al
.によるvertical specialization share
(VS
) をmulti-stage
化できることを示し,同時 に拡張された中間財のmulti-stage VS
を計測することによりASEAN
・東ア ジアにおける中間財貿易の循環的連結構造を分析した。また行列の要素和で あったVS
について,要素に還元することにより輸入国部門別・当該国部門 別・輸出国部門別VS
へ拡張することができた。この研究分析の方法は現在でも有用であり,新たな国際産業連関表の発表 が待たれている状態であるが,多国間の関係を分析することではなく一国の 産業構造の変化や空洞化を分析する場合は,よりシンプルな分析が産業連関 分析により可能である。また,
VS
の分析では産業連関表が非競争輸入型で あることが重要であったが,信頼のおける非競争輸入型の産業連関表は毎期 公表されるわけではなく,小回りの利く分析には競争輸入型産業連関表を用 いざるを得ない。フラグメンテーションの進捗による変化は,まず同部門や近接部門間の中 間財貿易量が増加することがあげられる。藤田(2006
b
,2007) においては,このパターンは,産業連関表の三角化と類似の考え方で可視化できることを 示した。産業連関表の三角化においては上三角がゼロに近い場合に一方的連 結関係を確認することになる(完全三角化)。逆に上三角に係数が残存する 場合に循環的連結関係とする。フラグメンテーションの存在が予想される部 門では,非競争型産業連関表における輸入による投入係数表を見る限り,三 角化は直感的には容易でないように感じられる。しかしながら
VS
の水準の 大きいものから要素を順に出現させていった場合,下三角がほぼ皆無で一方 的な連結関係をもたず,部分的に小さな上三角部が出現して,局部的に強い 循環的連結関係のみを表示できる。このような利点は精度の高い非競争輸入 型産業連関表から分析を始めることによって得られるものであり,入手しや すい競争輸入型産業連関表からでは困難がある。競争輸入型による分析は,安定した非競争輸入型産業連関表が入手できないことによるある種の便法の 側面がある。
このために,利用できる産業連関表の特性に合わせ,次のような視点で分 析手法を選択することにする。
・まず輸出入ともに貿易量の大きな部門をチェックする。とくに中間財生 産部門に着目する。
・そして,輸入制約が引き起こす可能性を調べる。これはそのチェーンが 致命的な重要性を持っているかどうかを調べることになる。またこれを 時系列的に見ることにより,わが国が重要なチェーンに組み込まれてい く,あるいは脱落しつつある,といったことを見る。
・次にその部門は水平分業の可能性があるのか,垂直分業の可能性がある のかを,輸出による輸入誘発を調べることによって検討する。これも同 様に時系列的にその変化を見る。
空洞化は資本や雇用データの側面から見るだけではなく,国際的に重要な
リンケージやチェーンから脱落することとして見ることができる。最重要な チェーンは北米向けであることは変わらないとしても,そのチェーンがわが 国を迂回し始めるのかどうかが重要である。輸出のための中間財輸入誘発が 多く,輸出自体も大きく,そして中間財輸入のリンクが切れると国内経済に 甚大な影響を及ぼす。このような部門,あるいはかってこのようであった部 門はどのような推移をたどっているのかを分析するわけである。
2 フラグメンテーション再考
分析の前に,藤田(2006
b
,2007) における整理に従って,経済のグローバ ル化にともない進む現象として考えられていたフラグメンテーションについ て,その定義の歴史的な経緯から現在の現象までを俯瞰してみよう。1990年頃まででも実質的な経済統合が急速に拡大し,たとえば貿易額の対
GDP
比率の伸張が,当時の大半のOECD
諸国で観測することができた。こ ういった現象の理由としては,伝統的な貿易理論においてはサービス貿易の 増大,またはそのシェアの増大や,関税自由化・撤廃による効果などをあげ てきた。これに対して
Jones and Kierzkowski
(1990) は,生産活動が貿易によって 大きく影響を受けるとして,新たな議論を提示した。ここでは生産ブロック(
production block
)とサービスリンク(service link
)なる概念を導入し,収益増大と特化の優位性が成長企業をして,その生産工程をサービスリンク で接続されている寸断された(
fragmented
)(注2)生産ブロック群に転換する ことを促進させること,またこのサービスリンクは調整や管理,運輸,金融 サービスやなどからなる活動をまとめたものであるが,生産工程のフラグメ ンテーションが別の場所にある生産ブロック間を結合しているものならば,( 注 2 ) 初 期 の 邦 文 の 文 献 に お い て は ,fragmen tは 「 分 断 」 と し て い る も の が 多 い
(Wakasugi(2003a),Wakasugi(2003b))。ただし,fragmentationは,もはや「生産 工程の分断」とはせずに,そのまま「フラグメンテーション」とすることが多い。
このリンクの需要はますます増大するものになる。そしてこのようなフラグ メンテーションは,国際市場にあふれ出ることとなり,国同士で比較して生 産性や要素価格が相違していれば,ある生産工程を構成する生産ブロックは 多くの国々に立地を広げていくことになる。
なお,フラグメンテーションが生じる原因として,サービスリンクのコス ト低下と,サービス活動における規模の経済が重要であるとしている。
また,こういった生産工程の変化においては,もとの生産工程が単一企業 のものであったとしても,寸断化した個々の生産ブロックやサービスリンク が依然,単一の企業のものである必要は無い。極端な状況では,すべての生 産ブロックやサービスリンクが別個の企業になっているかもしれないし,ま たこの生産の連鎖の末端にある最終生産者は必要な中間財やサービスをすべ て市場で調達することもありえる。さらに,この複雑な垂直的国際分業化
(
vertical international specialization
)および垂直統合生産工程化(verti- cally integrated production processes
)の過程で,新しい企業やビジネスの 生起も考えられる。その結果として,生産ブロック間を移動する部品や半製品といった中間財 が貿易量の増大という形で観測されることになる。
なお,藤田(2006
b
,2007) は,このフラグメンテーションに近い概念であ る,垂直的国際分業を観測するひとつの方法として提起された指標である,Hummels et al
.(2001) によるvertical specialization share
を発展させ,国 際産業連関表を用いて中間財貿易の状況を観測することを目的としていた。上述のように,フラグメンテーション概念は,
Jones and Kierzkowski
(1990) による。その後のJones and Kierzkowski
(2000)(注3)において,用語 としてのフラグメンテーションとは,以前は統合されていた生産工程が,ふ(注3)Jones, Ronald W. and Henryk Kierzkowski(2001) A Framework for Fragmenta- tion, in by Sven W. Arndt and Henryk Kierzkowski eds. Fragmentation:New Production Patterns in the World Economy:Oxford University Press.として,出版さ れている。
たつあるいはそれ以上の構成要素(これを
fagments
という)に分裂するこ と(spliting up
)としている。ある意味では,かなり曖昧な定義であり,ひとつの問題は何を指している のかについて,非常に広義で拡大解釈が可能なことである。たとえば生産の モジュール化や,インターネット調達などのひとつひとつはフラグメンテー ションにきわめて密接な事象であろう。また企業にとっては海外直接投資に よる生産拠点における工程や製品の変更,納入先の転換や,外注,請負の選 択といったこと,また部門分離や国際提携など。さらには規制緩和によるネ ットワーク産業の水平,垂直の分離や統合,またバイパス企業の出現なども,
密接な関連事象であるといえる。産業融合という用語で説明される事象の大 半も,フラグメンテーションの一側面と見ることも可能ではないかと考えら れる。わが国の元請・下請制度も,もしかしたらフラグメンテーション的で あったのかもしれないし,カンバン方式やジャストインタイム方式も,自分
が
fragment
するのではなく,協力企業をfragment
させるものとして解釈できるかもしれない。
もうひとつの問題は,理論の検証の問題であろう。実際に移動する中間財 は企業レベルの取引であるはずであり,個々の取引の様相は金額・数量的に も貿易統計という規模では把握しきれない可能性があるし,またサービスリ ンク・コストの分析や,生産関数を用いたサービス活動の規模の経済性の分 析も,対象が小規模で多様・多数であることから課題が多いと考えられる。
また,国際的な物質移動を対象に議論される領域,たとえば環境問題を対 象とする学問領域などにおいては,根本的な視点の変化が求められる可能性 がある。完全に国際化して分断化して拡散した生産プロセスを環境負荷とし て分析しなければならないからである。
この曖昧な定義,したがって類似概念が多数あることに対する交通整理は,
Jones
ら以降の多くの研究者が通過する作業になっている。たとえば,Hummels et al
.(1999,2001) は,それらの類似概念を以下のように列挙している(注4)。
・
fragmentation
(of production
)・
vertical specialization
・
slicing up the value chain
・
outsourcing
・
multi-stage production
・
intra-product specialization
Hummels
は,フラグメンテーションについてはJones and Kierzkowski
(1990) ではなく,1997年のworking paper
を引用している(注5)。Hummels
らはvertical specialization
を採り,これはBalassa
(1967) での造語であろうとし,
Findlay
も1978年の論文から,早い時期にこの述語を用いていたとする(注6)。そのため
vertical specialization
を採用しているようである(注7)。 なおHummels
は以下のようにvertical specialization
を定義している。(
a
) 財は2つあるいはそれ以上の連続したステージで生産される。(
b
) 財の生産の間に2つまたはそれ以上の国々が付加価値を付与する。(注4)Hummels et al.(2001) において列挙された類似概念の内,multi-stage production はHummels et al.(1999) においては列挙されていない。ただし,それを用いたDixit and Grossman(1982) は引用している。またフラグメンテーションはfragmentation of productionとしている。短い期間に fragmentation という多少ともインパクトのあ る用語が普及したものと考えられる。
(注5)Jones, Ronald W. and Henryk Kierzkowski(1997) Globalization and the Conse- quences of International Fragmentation, manuscript, University of Rochester and Graduate Institute of International Studies, Geneva.これは現在入手できないが,
Calvo, Guillermo A.,Maurice Obstfeld and Rudiger Dornbusch(2001)Money, Capital Mobility, and Trade: Essays in Honor of Robert A. Mundell, The MIT Press.の中に所収 されている。
(注6)Hummelsらは,以下の文献をあげている。Findlay, Ronald(1978) An Austrian Model of International Trade and Interest Rate Equalization, Journal of Political Economy, Vol.86,pp.989‑1008.
(注7) our prefered label という表現をとっている。
(
c
) 生産工程のステージにおいて少なくてもひとつの国が輸入の投入を用い なければならない,そして産出されたもの一部は輸出されなければなら ない。slicing up the value chain
は,Krugman
(1995,1996) による。Krugman
はこれを,数多くの場所で,数多くの段階を経て商品を製造することであり,それぞれの段階でわずかずつ付加価値が付けられていることであるとしてい る。例として自動車製造をあげている。またこれが貿易に影響を与えるであ ろうことを示唆している(注8)。
outsourcing
は国際貿易理論以外でも多用されている用語である。Hum-
mels
らはFeenstra and Hanson
(1995,1997) を例としてあげている(注9)。この
outsourcing
は外部委託ではなく(多国籍企業等による)海外生産の輸入をさしていた。わが国でも「海外アウトソーシング」は「業務の海外移転」
や「海外部品調達」(
offshore sourcing
)の意味として用いられている。現 在では製造業部門だけではなく,ソフトウェア生産やコールセンター業務な ども含まれる。Feenstra
はoutsourcing
が国内で中間財または最終財として何度も取引さ れることが,国内工業統計のダブルカウントを引き起こしたり,当時の工業 統計は取引コストや外注コストを含まないことを指摘し,outsourcing
の影 響が適切に統計に反映していないことを議論している。この結果,たとえば ナイキの海外生産シューズは原材料が工業統計に計上されないことや,GE
社がGE
ブランドで販売する韓国Samsung
製電子レンジが,原材料も最終 製品としても工業統計に反映されないことを例にあげている。(注8)Krugman(1995) の,pp.333‑334参照。
(注9)Hummelsが引用したのはFeenstra and Hanson(1995) が公刊された,Feenstra, Robert C. and Gordon H. Hanson(1996) Foreign Investment, Outsourcing and RelativeWages, in G.M. Grossman R.C. Feenstra and D.A. Irwin eds.The Political Economy of Trade Policy: Honor of Jagdish Bhagwati, Cambridge, MA: MIT Press, pp. 89‑127.である。
本論のサーベイはほぼ同じ内容のFeenstra and Hanson(1995) に依った。
こういった雇用や賃金の評価に影響を与えかねない統計の是正の見地から
Feenstra
は,outsourcing
とは米国の多国籍企業の輸入に加えて,米国企業 の生産に用いられる,あるいは米国企業のブランドで販売されるすべての輸 入中間財と最終財を含むものという定義を提示した(注10)。さらに,Feenstra
らはFeenstra and Hanson
(1999,2001) などでoutsourcing
として研究を進 めている。disintegration of production
(process
) またはdisintegration
は,Feenstra
(1998) によって用いられているが,同論文においても基本的には(foreign
)outsourcing
を用いている。そしてこれは,integration of world markets
はdisintegration of production
によってもたらされると,対比的に使用された 用語であり,国外でなされた生産やサービス活動が,国内でなされたものと 結合することであるとしている。垂直統合された生産工程の分解を表し,フ ォード社がこの分野の論文において例示とされることが多いが,Fordist production
のことであるとしている。multi-stage production
は,Dixit and Grossman
(1981,1982) による。こ れはそれまでのBalassa
以来の中間財貿易に関する理論モデルは基本的に 2‑
stage
生産モデルであり,基本的に上段で中間財が生産され,他の中間財とともに下段で最終財になるという構造になっていたのに対し,多段の垂直 構造を導入した。これにより国境をまたぐステージのモデルも考察できると した。
intra-product specialization
は,Arndt
(1997) による。これは海外調達の モデルを考察するにあたって,標準的な貿易理論に生産工程の部品段階への 分解という修正を加えたので,国境を越えた製品間特化ということになるか らである。以上は,
Hummels et al
.(1999,2001) の列挙したものをあらためてサー(注10)Feenstra and Hanson(1995) の,pp.19‑20参照。Feenstra and Hanson(1997) で は,foreign outsourcingという表現もしている。
ベイしたものであるが,この中で前出の
Feenstra
(1998) はさらに類似の概 念をあげている。・
Kaleidoscope comparative advantage
(Bhagwati
の1994年の論文によ る(注11))・
delocalization
(Leamer
の1996年の論文による(注12))・
Intra-mediate trade
(Antweiler and Trefler
(2002))さらに,
Splintering
や,internationalization
も同様の概念に使われている。また,略語にする場合は,
IFP
(international fragmentation of production
) とするものもある(Helg and Tajoli
(2005))。これらはいずれもそれぞれの研究者が自分の視点で名づけたものであり,
工程に着目するのか,国境に着目するのか,財・サービスに着目するのかな どによって少しずつ変わったニュアンスを持つ。
さらに理論的な部分に関しては
Jones and Kierzkowski
(1997),Deardorff
(1998,2001),Cheng and Kierzkowski
(2001),Grossman and Helpman
(2005),Jones and Kierzkowski
(2005) 等に詳しい。このように,フラグメンテーションは比較的最近登場してきた新しい国際 経済の一様相でもあり,定義自体も,さらに用語でさえもいまだ確定したも のとは言えない。したがってその状況を観測するとしても,いかなる変数を 対象にするべきかは難しい問題である。貿易統計も工業統計も,それに対応 したものではない。また企業レベルで生じているとすれば,ミクロデータか らアプローチするしかないという考え方もできよう。
(注11)Feenstraは,Bhagwati, Jagdish N. and Vivek H. Dehejia(1994) Freer Trade and Wages of the Unskilled. Is Marx Striking Again?, in Jagdish N. Bhagwati and Marvin Kosters eds. Trade and Wages: Leveling Wages Down ?,Washington D.C.:
American Enterprise Institute, pp.36‑75.によるとしている。
(注12)同じくFeenstraは,Leamer, Edward E.(1996) The Effects of Trade in Serv- ices, Technology Transfer and Delocalisation on Local and Global Income Inequality. Asia-Pacific Economic Review, Vol.2,pp.44‑60.によるとしている。
前出の
Feenstra
(1998) では,広範囲で曖昧な定義に沿うような単一の指 標 は無 いと して ,い くつ かの 異な った 指標 の観 測に よる とし てい る。Feenstra
は長期データの分析により,1970年代からoutsourcing
が拡大して いるとしている。ここで彼は貿易の統合状態,生産の分解状態,賃金の不平 等化などから,間接的に判断を下している。もしfragmentation
が主として 量的な変化ではなく,質的な変化が主要なものであれば,このようなアプロー チが妥当であるかもしれない。以上が藤田(2006
b
,2007) において行われたフラグメンテーション概念の 考察とサーベイであったが,多国籍企業の行動に対する概念から国際貿易に おける概念に拡張されていった経緯が見える。しかしながらこれは再び多国 籍企業の行動の行動に収斂していく可能性が高い。3 輸出入の状況からみた循環的構造
3.1 使用するデータとその特徴
中間財貿易の循環的構造を見る端緒として,わが国の輸出入の状況を産業 連関表を用いて調べる。産業連関表は以下のものを用いた。
・総務省『平成7‑12‑17年接続産業連関表』(取引基本表,生産者価格表 102部門表),平成23(2011)年8月。
・経済産業省『平成22年延長産業連関表(延長表)』(平成17年(2005年)
基準,80部門,取引額表,時価評価),平成25(2013)年5月。
・経済産業省『平成21年延長産業連関表(延長表)』(平成17年(2005年)
基準,80部門,取引額表,時価評価),平成24(2012)年5月。
・経済産業省『平成20年延長産業連関表(延長表)』(平成17年(2005年)
基準,80部門,取引額表,時価評価),平成23(2011)年5月。
『平成7‑12‑17年接続産業連関表』は,接続表として長期にわたって同じ 部門分類が使用できることが選択の理由である。また,延長表は平成17年
(2005年)基準での部門分類が利用できる平成20年表以降を選択した。
接続産業連関表は統合102部門,延長表は統合80部門を用いている。基本 表をもとにしている接続産業連関表は生産者価格評価表であり運賃や商業 マージンを分離しているが,延長表は統合80部門であることと,運賃や商業 マージンを分離していないので数値を異にするが,分析結果の比較ではサー ビス部門を除外すれば同様の結果が得られ,また主要な製造業はほぼ対応で きる。
3.2 輸入‑輸出の関係
平成7年,12年,17年,20年,21年,22年表の輸出表と輸入表を抽出し,
横軸を輸入額,縦軸を輸出額とし,いずれも対数軸で散布図を描いた。なお,
接続産業連関表によるものは平成7年,12年,17年を,延長表によるものは 5年間隔を意識して22年表によるもののみである(図3.1,3.2)。
グラフには輸入額,輸出額とも当該年の平均値を表す直線を記入してある。
この十字をなす直線で分けられた領域のうち,右上の第Ⅰ象限にプロットさ れていうるのが輸入・輸出ともに額が非常に大きい部門である。
各散布図を比較すると,20年という期間を考えてもそれほどパターンはそ れほど大きく変化はしていない。名目額のデータなので輸出入ともに微増し ている程度である。しかし微細に見れば各部門のプロットの位置は少しずつ ではあるが変化は生じている。
図3.1,3.2では,輸出入には弱い相関ががうかがわれる。このため,「輸 入額」と「輸出額」の積を計算して上位から並べ替えたのが表3.1である。
この表では延長表と接続表では若干部門分類が異なることや,接続表では運 輸部門や商業部門が上位に上がってくるのでそれを除外しているため,この 段階では別表に分けてある。また,接続表は生産者価格表であるため「輸入 額」と「輸出額」の積の上位には運輸部門などが上がってくるため,表3.1 ではサービス業を除外して作表してある。
図3.1 各部門の輸入と輸出の状況(平成7‑12‑17年接続産業連関表による)
図3.2 各部門の輸入と輸出の状況(平成22年延長表による)
表の読み方は左右ともそれぞれ平成17年と平成22年の順位で部門が並べら れており,他の年次の数値は,その年次における順位である。たとえば左側
(接続表での順位推移)の最上位の「半導体素子・集積回路」は,平成17年 には1位であるが,同様に12年も1位であったこと,しかし7年では3位で あったことが読み取れる。従って5年毎に3位→1位→1位という順位推移 していたということが分かる。
さらに,両表には相違があることを認識した上で,接続して同様の表を作 成したものが,表3.2である。
多少強引な接続であるが,主要な製造業部門はほぼ対応するので,比較は 可能である。また接続表側では商業や運輸部門が除去されているが,非サー ビス業の順位だけ見れば延長表側と対応できていることが分かる。
図3.1,3.2において,部門別輸出入の平均値に対しての第Ⅰ象限に入って いる部門は10部門前後である。それらは表3.2の上半分でほぼ網羅されている。
部門別の貿易量と順位の変化傾向を同時に見るためにこれらをプロットし た散布図を作成した(図3.4)。これをもとすれば,これら上位部門の順位の 変化傾向は以下のようになる。なお,図3.4においては両軸とも3分位(33.3 パーセンタイルと66.6パーセンタイル)でデータを区切っている。
接続表での順位推移 延長表での順位推移
No. 部 門 平成(年)
No. 部 門 平成(年)
7 12 17 20 21 22
55 半導体素子・集積回路 3 1 1 48 半導体素子・集積回路 1 1 1
46 特殊産業機械 4 3 2 39 特殊産業機械 2 5 2
57 乗用車 2 4 3 50 乗用車 3 4 3
54 電子計算機・同付属装置 1 2 4 52 自動車部品・同付属品 6 8 4
56 その他の電子部品 13 6 5 47 電子計算機・同付属装置 5 3 5
59 自動車部品・同付属品 9 10 6 22 石油製品 4 10 6
53 通信機械・同関連機器 5 5 7 53 その他の輸送機械 8 2 7
28 石油製品 16 16 8 46 通信機械・同関連機器 11 9 8
23 有機化学工業製品(除石油化学基礎製品) 6 9 9 49 その他の電子部品 7 6 9
62 精密機械 8 8 10 17 有機化学工業製品(除石油化学基礎製品) 10 7 10
49 産業用電気機器 7 7 11 34 非鉄金属製錬・精製 9 15 11
45 一般産業機械 10 11 12 42 産業用電気機器 12 11 12
38 鋼材 12 19 13 54 精密機械 14 12 13
50 電子応用装置・電気計測器 18 13 14 38 一般産業機械 13 13 14
27 化学最終製品(除医薬品) 15 14 15 5 食料品・たばこ 18 14 15
9 食料品 14 15 16 20 化学最終製品(除医薬品) 19 16 16
63 その他の製造工業製品 11 12 17 31 鋼材 15 20 17
41 非鉄金属製錬・精製 21 21 18 55 その他の製造工業製品 16 17 18
61 その他の輸送機械・同修理 20 18 19 43 電子応用装置・電気計測器 21 21 19
30 プラスチック製品 28 22 20 24 プラスチック製品 22 19 20
表3.1 輸入×輸出額の上位の変化,上位20部門
É
「その他の製造工業製品」(39),「精密機械」(47),「産業用電気機器」(40),「通信機械・同関連機器」(52),「電子応用装置・電気計測器」
(51),「鋼材」(34),「一般産業機械」(45),「電子計算機・同付属装置」
(53),「有機化学工業製品(除石油化学基礎製品)」(17),「化学最終製 品(除医薬品)」(38),「食料品・たばこ」(44) などはこの順で強く順 位が上昇している。
( ) の中の数値は平成22年における内生部門計の国内生産額に占める 割合の順位(図3.3参照)である。これが高い比率(順位が高い)の場 合は中間財生産が主であることを示している。あまりに高い場合はそれ
接続表での順位推移 延長表での順位推移
No. 部 門 平成(年)
部 門 No.
7 12 17 20 21 22
55 半導体素子・集積回路 3 1 1 1 1 1 半導体素子・集積回路 48
46 特殊産業機械 4 3 2 2 5 2 特殊産業機械 39
57 乗用車 2 4 3 3 4 3 乗用車 50
59 自動車部品・同付属品 9 10 6 6 8 4 自動車部品・同付属品 52
54 電子計算機・同付属装置 1 2 4 5 3 5 電子計算機・同付属装置 47
28 石油製品 16 16 8 4 10 6 石油製品 22
61 その他の輸送機械・同修理 20 18 19 8 2 7 その他の輸送機械 53
60 船舶・同修理 33 35 36
53 通信機械・同関連機器 5 5 7 11 9 8 通信機械・同関連機器 46
56 その他の電子部品 13 6 5 7 6 9 その他の電子部品 49
23 有機化学工業製品(除石油化学基礎製品) 6 9 9 10 7 10 有機化学工業製品(除石油化学基礎製品) 17
41 非鉄金属製錬・精製 21 21 18 9 15 11 非鉄金属製錬・精製 34
49 産業用電気機器 7 7 11 12 11 12 産業用電気機器 42
62 精密機械 8 8 10 14 12 13 精密機械 54
45 一般産業機械 10 11 12 13 13 14 一般産業機械 38
9 食料品 14 15 16 18 14 15 食料品・たばこ 5
11 飼料・有機質肥料(除別掲) 54 53 58
27 化学最終製品(除医薬品) 15 14 15 19 16 16 化学最終製品(除医薬品) 20
38 鋼材 12 19 13 15 20 17 鋼材 31
63 その他の製造工業製品 11 12 17 16 17 18 その他の製造工業製品 55
32 なめし革・毛皮・同製品 39 41 42
50 電子応用装置・電気計測器 18 13 14 21 21 19 電子応用装置・電気計測器 43
30 プラスチック製品 28 22 20 22 19 20 プラスチック製品 24
表3.2 輸入×輸出額の上位の変化,上位20部門(強制的に接続)
がほとんど輸入に依存する中間財であることを意味する。またその値が 小さければ,その部門は主として最終需要向けの生産をしていることが わかる。平成22年の順位では,第37位の「石油製品」までが70%を超え るが,38位以降は急激に比率が下がり,内生部門計の国内生産額に占め る割合が低い部門になっている。
この中で中間財生産が主である部門は,「鋼材」(34),「有機化学工業製 品(除石油化学基礎製品)」(17),になるが,素材系である。鋼材など
図3.3 内生部門計/国内生産額(平成22年)
の素材系の部門では輸出入ともに大きいのは生産設備の能力から,内外 の需要に応じて品目別に輸出もあれば輸入もありえたためであると考え られる。残りの品目は主として最終財が主であるとともにそれらの多く は生産財である。これらも生産国の優位性や独占供給などのために,そ してわが国も主要な生産国であるために輸出入とも大きかったものであ ると考えられる。輸出入の積が増加するということは自国の投資も増加 し,また他国の投資も増加するか,国際競争力が強化するなどの要因が あげられる。
É
「乗用車」(55),「特殊産業機械」(49),「半導体素子・集積回路」(36),「その他の電子部品」(26),などはあまり順位の変動はない。上述のよ うに第37位をひとつのめやすにすれば,「その他の電子部品」と「半導 体素子・集積回路」が中間財が主の部門になる。これに対して「乗用車」
の内生部門計の国内生産額に占める割合はゼロであり,典型的な最終財 生産部門である。
É
「石油製品」(37),「非鉄金属製錬・精製」(4),「プラスチック製品」(23),「自動車部品・同付属品」(27),などはこの順で強く順位が低下 している。「その他の輸送機械」(42) も特に順位を下げているが,内生 部門計の国内生産額に占める割合はそれほど高くない。
中間財で順位が上昇している部門は,国境を越えた循環的な生産構造に組 み込まれ始めている可能性があり,また順位が下降している中間財部門はそ ういった生産構造から脱落,空洞化の可能性がある。また変化にかかわらず 上位にある中間財部門は,当然ながら国境を越えた循環的な生産構造に大規 模に組み込まれている可能性が高い。
伝統的な産業構造分析では,部門別の水準とシェア,そして順位の変動を 調べることが中心であるとすれば,ここまでのファインディングで主要な結 果は得られたことになろう。すなわち,国境を越えた加工組立系で「中間財」
の循環的な生産構造に近年強く組み込まれ始めた部門はほとんどなく,これ まで強く組み込まれていたと考えられる「プラスチック製品」,「自動車部品・
同付属品」はウェイトが下がっている傾向がうかがわれる。また「半導体素 子・集積回路」,「その他の電子部品」はあまり変化なく,それより以前にす でにすでに組み込まれていたことが示されている。またこれらの結果は他の 研究成果等と矛盾していない。
図3.4 「輸出額」×「輸入額」の部門別順位の傾向と貿易量
しかし本稿では,さらにこれらの「中間財」の循環的な生産構造が他部門 にまでどのような影響を及ぼしているかも研究対象にしている。これを調べ るために,
(
a
) 輸入制約によるショックの程度(前方連関効果から見た国際的生産構造)(
b
) 輸出による輸入誘発の程度(後方連関効果から見た国際的生産構造)を分析し,後方連関的な産業構造と,前方連関的な産業構造の両面から海外 との生産上の結びつきを計測する。その上で,表3.2などから把握される重 要性と合わせて,その産業部門が現在置かれている状況を推測するとともに,
わが国の産業構造上の問題点を考察することになる。
なお,全部門を機械的に順位と年次による単回帰でその傾向を測ったもの は,図3.5にその結果を示す。このグラフの値は,順位と年次の単回帰の傾 きでなので,順位が上昇=順位数が減少,すなわち負数の絶対値が大きいほ ど急速に順位が上昇したことを示している。順位の傾向の判断はこれをもと に行っているが,目視を合わせて総合的に判断している。
4 サプライチェーン切断の影響:輸入制約波及の分析
4.1 供給制約と産業連関分析:
Ghosh Model
の導入まず始めに,前方連関効果の考え方による輸入制約によるショックの程度 を計測する。
産業連関分析を用いた輸入制約によるショック分析は,最終需要の変化に 対して総産出の変化を求める均衡産出高モデル(
Ax
+f
=x
)に対して,均 衡価格モデル(A
′p
+v
=p
)によって価格波及を分析する方法がよく知ら れている。ここで,x
,f
,v
,p
,A
はそれぞれ,生産額,最終需要,付加 価値,価格のベクトル,および投入係数行列である。ただし後者の均衡価格モデルは費用構成に基づくコストの価格波及を分析 するものであり,供給制約を分析するものではない。
これに対し,需要から作用するモデルである
Leontief
型モデルと同じデー タを用いた,1958年にGhosh
により提起された別なモデルは以下のように 記述される(以下,Miller and Blair
(2009) による)。まず基本的なモデルの枠組みを整理する。原著の
notation
に従うが,原図3.5 「輸出額」×「輸入額」の部門別順位の傾向(年平均変化傾向)
著の
n
部門に対して論点を明瞭にするため,一般化を失わない範囲で2部 門で議論する。また,本稿はGhosh
によるモデルの利用を前提にしている ため,原著に沿った解説ではない。まず,
x
i,f
iをそれぞれ第i
部門の生産額および最終需要,z
ijを第i
部門 から第j
部門への中間投入とする(注13)。産出方向の均衡から,
x
1=z
11+z
12+f
1x
2=z
21+z
22+f
2これを行列表示すれば,
x
=]
^ _ x
1x
2` a b
,Z
=] ^ _
z
11z
21z
12z
22` a b
,f
=] ^ _ f
1f
2` a b
として,原式は以下のようになる。x
=Zi
+f
(4.1)ここで,
i
=]
^ _
1 1` a b
は,
summation
(総和)ベクトルであり,行列の右からかけて,行和からなる列ベクトルを生成する(注14)。また同様に,転置行列である
i
T=(1 1)は,行列の左からかけて列和からなる行ベクトルを生成する
summation
(総和)ベクトルとして定義できる。
さらに,支出方向の均衡は,
v
iを第i
部門の総付加価値支出とすれば,(注13)通常使用されるnotationでは,取引額はzijではなく,xij,また生産額はXiで表記 されることが多い。本節ではMiller and Blair(2009) の表記に沿って記述している。
(注14)すなわち,
Zi=]
^_ z11 z21
z12 z22
`a b ]^ _ 1 1
`a b=]
^_
z11・1+z12・1 z21・1+z22・1
`a b=]
^_ z11+z12 z21+z22
`a b
x
1=z
11+z
21+v
1x
2=z
12+z
22+v
2これを行列表示すれば,
v
T=(v
1v
2)として,原式は以下のようになる。
x
T=i
TZ
+v
T (4.2)ここで,列ベクトルの対角化記号として
âx
を用いることにする。すなわ ち,âx= ]
^ _ x
10 0
x
2` a b
対角要素を逆数にした行列はこの行列の逆行列になる。
âx
‑1=]
^ _
1/x
10 0 1/
x
2` a b
,âx
‑1
âx= âx âx
‑1=]
^ _ x
10 0
x
2` a b ] ^ _
1/
x
1 00 1/
x
2` a b
=] ^ _
1 00 1
` a b
=I
これを用いれば,投入係数行列
A
=[a
ij]=[z
ij/x
j]は以下のように記述でき る。A
=Z âx
‑1=]
^ _ z
11z
21z
12z
22` a b ] ^ _
1/
x
1 00 1/
x
2` a b
=] ^ _
z
11/x
1z
21/x
1z
12/x
2z
22/x
2` a
b
(4.3)A âx= Z âx
‑1âx= ZI
=Z
なので,(4.1),(4.3)より,産出方向の均衡式は以 下のように表すことができる。x
=Ax
+f
(4.4)よって,
det
(I
−A
)≠0 でLeontief
の逆行列L
=(I
−A
)−1を用いて以下 の結果を得る。x
=(I
−A
)−1f
=Lf
(4.5)このなじみ深い
Leontief
型のモデルに対して,次の行列B
を考える。B
=]
^ _ b
11b
21b
12b
22` a b
=] ^ _
z
11/x
1z
21/x
2z
12/x
1z
22/x
2` a b
=] ^ _
1/
x
1 00 1/
x
2` a b ] ^ _
z
11z
21z
12z
22` a b
=âx
‑1
Z
(4.6)行列
B
と,投入係数行列A
の違いは,後者は行列Z
の部門別の列要素を 当該部門の生産額(総投入)x
jで除したものであり,求められた行列A
の 要素はある部門の1単位の産出に対して,各部門からの投入比率であり,産 業技術を意味する。また仮定としてそれらの係数は安定的(固定的)である とする。これに対して,行列
B
の要素は,行列Z
の部門別の「行要素」を当該部 門の総産出で除したものであり,これは行列A
の各部門からの投入係数概 念に対して,各部門への分配概念,あるいは(直接)産出係数(direct- output coefficients
)とも言うべきものである。本稿では,行列B
の呼称に ついては下田・藤川(2012)など同様,Miller and Blair
(2009)においてb
ijをallocation coefficients
とするのに従って,「配分係数」とする。従って行列B
を配分係数行列とする。(4.6)より,
âx B
=âx âx
‑1Z
=IZ
=Z
なので,(4.2)より,x
T=i
TZ
+v
T,に代入して(注15),
x
T=i
Tâx B
+v
T=x
TB
+v
T (4.7)以下,
Leontief
の逆行列導出の時と同様の手法で,G
=(I
−B
)‑1を導入すれ ばx
T(I
−B
)=v
Tx
T=v
T(I
−B
)‑1=v
TG
(4.8)(注15)iTâx=(1 1)]
^_ x1 0
0 x2
`a
b=(x1 x2)=xTを用いる。