DEAによるファンド・オブ・ファンズのポートフォリオ分析
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(2) A ࣥࣉࢵࢺ. 38. 横浜国際社会科学研究 第 15 巻第 1・2 号(2010 年 8 月). (38) ᅗ1. Malmquist Index 㸦➹⪅సᡂ㸧. ᅗ2. アウトプット. Luenberger Index 㸦➹⪅సᡂ㸧. アウトプット 生産可能性 フロンティア. 生産可能性 フロンティア C. B A (筆者作成). インプット. 図 1 Malmquist Index . ᅗ2. インプット. (筆者作成). 図 2 Luenberger Index . Luenberger Index 㸦➹⪅సᡂ㸧. ࢘ࢺࣉࢵࢺ いインプットでより多くのアウトプットを生産. しているほど,効率性が高いと考えられる.効. パフォーマンス評価となる.しかしそれは投資 11 家にとっても上述したファンドの運用目的から. ⏕⏘ྍ⬟ᛶࣇࣟ 率指数 に は 様々な種類があるが,ファンドパ. しても現実的な評価手法とは言えない.. フォーマンスの分析における先行研究において. 一方,Luenberger Index は,距離関数 を 求. は,Morey & Morey( 1999) の Malmquist . める際に,インプット距離関数とアウトプット. Index タイプのモデルを用いた分析がある.こ. 距離関数を選択する必要がない.Luenberger. の Malmquist Index の 測定 に は ア ウ ト プット. (1992)によって提案された短縮関数(shortage. 距離関数またはインプット距離関数という関数. function)に よって,イ ン プット の 節約 と ア. が用いられる.ここでいう距離とは,観察され. ウトプットの増大の両方を考慮できるように. るデータと生産可能性フロンティアの距離を意. なった た め で あ る(こ の 関数 は 指向性距離関. 味する.アウトプット距離関数は,所与のイン. 数( directional distance function) と し て も. プットのもとでアウトプットをどれだけ増やす 11. 知られる).インプットかアウトプットのどち. 余地が残っているか,という観点から生産可能. らかを所与とする必要が無く,図 2 で見ると. 性フロンティアとの距離を測定(図 1 で見ると. C のように測定が可能である.よってリスク. B に該当)する.一方インプット距離関数は,. の減少とリターンの増加を同時に考慮できる. 所与のアウトプットをどれだけ少ないインプッ. Luenberger Index のほうが現実的であると考. トで生産できるか,という観点から生産可能性. え,本稿ではこちらを採用した.次節でより詳. フロンティアとの距離を測定(図 1 で見ると. 細な説明を行う.. ࣥࢸ. C. ࣥࣉࢵࢺ. A に該当)する. Malmquist Index を用いるためには,アウト プット 距離関数 と イ ン プット 距離関数 の ど ち. 2―2.Luenberger Index によるファンド分析へ の応用. らを使うかを選択する必要がある.Morey &. 図 3 を 参考 に 本稿 で 用 い る モ デ ル を 説明. Morey(1994)は イ ン プット を ファン ド の リ. す る.上述 し た よ う に 本稿 で は Luenberger. ターンとし,アウトプットをファンドのリスク. Index を用いてファンドのパフォーマンスを評. と仮定することでファンドのパフォーマンスを. 価 す る.Morey & Morey(1999)と 同 じ く イ. 分析している.Malmquist Index の場合,リス. ンプット(小さいほど望ましいもの)をファン. クを一定にしたリターンの最大化(図 1 で見る. ドのリスクとし,アウトプット(大きいほど望. と B に該当)か,リターンを一定にしたリス. ましいもの)を平均リターンとする.なお,本. クの最小化(図 1 で見ると A に該当)による. 稿におけるリターンとリスクという概念は通常.
(3) DEA によるファンド・オブ・ファンズのポートフォリオ分析(伊藤・馬奈木・松田) (39) ᅗ 3.. X2. マルコビッツ平均分散フロンティア. 求め,ファンドのパフォーマンスを評価する.. . 次節で用いたモデル式を簡潔に説明する.. D. 効率的なファンド. 平均 リターン. . 2―3.平均分散ポートフォリオの最適化モデル. . Briec, Kerstens and Lesourd( 2004) の 平. . 均分散 ポート フォリ オ の 最適化 モ デ ル を 説明. 非効率なファンド. す る.ファン ド が ポート フォリ オ を 組 む 期間. X1. リスク. (筆者作成). 2.5. 39. Luenberger Index ࡼࡿࣇࣥࢻࣃࣇ࢛࣮࣐ࣥࢫࡢศᯒ 㸦➹⪅సᡂ㸧. t に 選 ぶ 資産 を i, j,そ の 種類 を n,収益率. Eª ª tRºt ,º , i t ^1,... º¼ , i Ri^1,..., を R と す る と,各期間 の 資産 ご と の 期待 E リ¬ R¬i ¼iE¼iª¬. 図 3 Luenberger Index による ᅗ 4. ⡿ᅜ 㸦➹⪅సᡂ㸧 ファンドパフォーマンスの分析 . ターン は E ª¬ Rit º¼ , i ^1,..., n`,平均分散行列Ω :ti , j Cov ª¬ Rit , R tj º¼ , i, j ^1,..., n` t t tR t , tR t º , i, j ^1,..., n` ª Cov , ª º i , j 1,..., n :: Cov R , R t t t ^ ` j¼ iは , j i , j , : ¬ ¬Cov i i jª i, j ¬¼ Ri , R j º¼ , i, j ^1,..., n` とおける.こ t t t こで,ポートフォリオに組み込む資産の比率. :ti , j Cov ª¬ Rit , R tj º¼ , i, j ^1,..., n` のファイナンスにおける分析で利用されている 2.0. t. 1.0 t t t 概念を用いる.リターンとは一定期間に得られ ࣜࢱ࣮ࣥ(%). x. t. x. t. t ) xtx (xx(t1tx,..., )n はとおける. 1 ,..., ( xx1tnx,..., xnt ). 1.5. ( x1 ,..., xn ). § · t · ¨ ¦ xi 1¸ §§ t x t ·1 § · i 1...tn に © ¹ x 1 ¦ t ここで とする.ここから期間 i ¨ ¸ i ¨ ©¦ ¸ x 1¸ i 1... E ª¬ Rit º¼ , i ^1,..., n` n n ¨ ¦¹ ¹i © i 1... © i 1...n ¹. ( x1 ,..., xn ). 0.5 た収益をその開始時点で投資した額に対する比 0.0 § · 率(利回り) で表したものであり, t 本稿ではファ ¨ ¦ xi 1¸ -0.5 © i 1...n ¹ ンドの基準価格を用いる.リスクとは未来に対. Rt ( xt ) t t t tおけるファンドのリターンは t tR t t t¦x x tE ªt Ri º , i ^1,..., n` RR ( x(tx)R) t (¦ R i i x) x R¬ ¼. ¦. ¦ xR t. i 1...n. t i. t i ^1,..., n` i ª1... nt º , i, j :ti , j Cov i 1... -1.0 j ¼n ¬nRi , iR1... となるため,このファンドの期待リターンと分 t t t t t して予想されるその利回りの不確実性の大きさ ª º , i 1,..., n E R R ( x ) x R ^ ` E ª R t ( x t ) t º¼t P tt (t i i ¬ ¼ -1.5 t t t t t ( xt t ) º t t ( xt t ) ¬ , 散は以下のようになる. ª º i , j 1,..., n : Cov R , R ^ ` ª ª E R P x E 1... i n を表し,過去の利回りの分散から求められる. i, j 8 t ª R ( x t) º t P ( x t) ª t RR iº x E ¬ 10i j ¼ 12 i 0 2 4 6 14 E. ¦. ࣜࢫࢡ(%) t t t ª¬ Rビッツ º , i,平均分散ポートフォリオはポー j n` t ( x t ) º : マル Covコ i , Rj ¼ ª¬ R E^1,..., ¼( x t ,...,Px t )( x xt 期待収益率(リ ト フォリ オ を 選択 す る 際 に 1 n t i, j. t. ¦ ¦i x¬i ¬E i ª¬¼ ¬x¬t E (ª¬x tR,..., (x¼tx¼) ) º¼ P ( x )¦ i i 1 .1. .. n. . n 1 n i 1 ...n t t t ) x E ª¬ R i º¼ t Vt a r ª Rt ( xt t )2º E ª ( Rt t (t ¦ t t ti t t t t t ¬ ¬ xt xt ª º ª Var R ( x ) E ( R ( x ) P ( x ))2 ¼º. V a r iª¬VR ) tº¼(x¼tx t 1E xi j Cjx ¬1a. .r.(n xª§¨ R º¦x i ¦ )·¸º¼ ª¬ (¬RE (ª¬x( R) t( xPt ) (x P))t ( xº¼ t¼)) 2¦ ¦ i ¬ i ,¼ij , j t (1.1) i n 1... © ¹ i, j V a r ª¬ R ( x ) º¼ §E ª¬ (xtR 1(· x ) P ( x t )) 2 º¼ ¦ x it x tj C ov ª¬ R it , R tj º¼ 1 n 小化 を 同時 に 目指す多目的最大化問題として ¨¦ i ¸ t t t t. t ス ク)のt 最 t t xターン)の ( xt ,..., 極大化 xt ) と そ のt 分散(リ. ©i. R (x ). ¹. ¦ x R i, j. ^. DR t Var , E
(4) R 2t :t t xt. ª¬ R( x(ªx) DR DR Var , E
(5) VartVar Var tVar t Var
(6) ,RER
(7) : :Rx xࠉZLWK DR , E Var R Var :ࠉZLWK R x t ࠉZLWK tª¬Var t t t t (1.2) E ª¬ R ( x ) º¼ t Pt ( x ) R it º¼¬ ¦ t 2 t t t x i E ª ¬ t t t t DR Var , E
(8) R : x ࠉZLWKVar t Var ª¬ R ( x ) º¼ , E d E ª¬iR 1 (. .x. n ) º¼ R (ク,縦軸にリターンをとってそれらを平面上 x ) ¦ x Ri 12. 1... n. · である(Markowitz, H., 1952, 定式化§し たxtも 1の ¨¦ i ¸ R t ( xt ) ¦ xt Rit i 1... n © ¹ 1959).よって,図 3 にあるように横軸にリス i 1...n. ^E. t t. ^^ ^ i 1...n. i. 22 . t t 2 t. `. (x t) t ¦ x it E ª¬ t R itt º¼ t t 2 t V a r ª¬ R ( xi 1).º¼. . n E ª¬ ( R ( x ) P ( x )) º¼ x it x tj C o マルコビッツの平均分散ポートフォリオの概念 t t ª¬ R t ( x t ) º¼ ª º を i , j E 効率的フロンティアとなる.ここで,DMU P t(xt) x E R ¦ i i ¼ t V a r ª¬ Ri t (1 x. . .t n) º¼ E ª¬¬ ( R tを数式で定義すると以下の式になる. ( x ) P t ( x t )) 2 º¼ x it x tj C ov ª¬ R it , R tj º¼ ファン ド と 仮定 し,効率的 な ポート フォリ オ i, j ª¬ R it , R tj º¼ V aを組んだファンドと非効率なポートフォリオ r ª¬ R t ( x t ) º¼ E ª¬ ( R t ( x t ) P t ( x t )) 2 º¼ x it x tj C ov t 2 DR Var , E
(9) R : xt ࠉZLWKVar t Var ª¬ R t ( x t ) º¼ を組んだファンドが存在すると仮定する. i , j DR t x t ࠉZLWKVar t Var ª¬ R t ( x t ) º¼ , E d E ª¬ R t ( x t ) º¼ Var , E
(10) R 2 : ここで,フロンティア上にあるファンドは効 t (1.3) DR率的な運用がされており,それより下にあるも x t ) º¼ , E d E ª¬ R t ( x t ) º¼ Var , E
(11) R 2 : xt ࠉZLWKVar t Var ª¬ R t ( のはすべて非効率な運用がされているといえ 短縮関数 は,分析 に お い て あ る 単位(た と る.よって ファンドごとのパフォーマンスを えばファンド)から効率的フロンティアまで 比較する場合,その評価はフロンティアまで の 距 離 を 表 す( Luenberger, 1995).本 研 究 の距離が近いほど高い.本稿では Luenberger で は Briec, Kerstens and Lesourd( 2004) の Index を フ ァ イ ナ ン ス に 応 用 し た,Briec, 平均分散 ポート フォリ オ の 最適化 モ デ ル を Kerstens and Lesourd(2004)の平均分散ポー t トフォリオの最適化モデルを用いてこの距離を 元 に 短縮関数 S g t を パ フォーマ ン ス 指標 と し ª¬ R t ( x t ) º¼ P にプロットしていったときに表される曲線が i 1...n. t. ¦. ¦. ^. ^. ^. xt. gt. St. `. `. gt. xt. ¦. ( g Vt , g Et ) ( R ) u R . S gt t.
(12) 40. 横浜国際社会科学研究 第 15 巻第 1・2 号(2010 年 8 月). (40). S gt t. 2). て 用 い る .期間t に お け る 方向 ベ ク ト ル を. S gt t. t. 表 1 各地域のファンドカテゴリーと本数 . t t ( g Vt , g Et ) (SgRt ) u R ,観測 さ れ たgファ ( g Vt , g E ) (R ) u R t t ンドを x とする.このベクトル g を用いてファ カテゴリー t tt t Sg Et t ) ( R ) ut R S t S t tS t tg ( gSV t,を測定する.期間tにお Agg Growth S ンドごとの効率値. gt. gt. gx. g. t. g. g. g. g. t. g. ファンド数(本) . t. t Blue Chip S gt t S g t はポートフォリオ xt に対して以下のよ いて t t t S t t tgt t t t t tt t t t t t x うに表すことができる. , gRER ) ( xR g) ug R ( g V , g E ) ( Emerging g g ( (gV g, Vg ,ESg)gtE) ((R (gR)V u R )u R )u g t tt tt t t Env g ( g , g ) ( R ) u R S g ( t g V , gVE ) ( R ) u R gEt Income t xt ) º¼ g Gt ggt Vt , E Sª¬xtRt (t (xgxttt )t ) º¼ G gGEt Var DRStªt tSRttt (gxt t ) º GSggt t t , E ª Rt ( xt ) º Equity sup G g Et S DRt g g V gt ¼ ¬ ¼ Geography g t¬ t t t g g g t t ( g Vt , gt Et )tSg (t SgRt ) u t t t R t Growth t g t , E ª R ( x ) º G g t DR º t ªt R ( x ) G Var (1.4) x x¬ ¼ x SVg t ¬ ¼ xE Growth & Income t t t xt x St t S t ( xt ) 0 g t Sgt ( x ) 0 Dž.
(13) `. ^ .
(14) `.
(15) `. ª¬gGRg º¼x
(16) )`Gº
(17) x )(DR g DR ` ( x ) º G g ( xG( )xg^º¼G),º¼E GVar DR )º¼GSgª¬GRg,((E , ª¬E ª¬(R xx この式は,観測された点からマルコビッツフ ))Rº¼ª¬ R sup ^xG()x º¼Var. ¼ ` G g , E ª¬
(18) R ¼ S ( x ) 0 SDR (
(19) x
(20) )`! 0 ª¬(Rx ()xº ) º¼GgG g DR xº¼ ) º¼GgG ,gxE ,ª¬ERロンティア上に移動するために必要な方向ベ ` ¼ クトルの係数δの上限値を示している.つま S (x ) ! 0 S (x ) 0 S ,SE ( xª()R 0 ならばそのファンドは効率的であ S (x ) 0 R ( x ) º¼ G gり ¬ x )( x 0) º¼ G g DR
(21) ` S (x ) S S(り,マルコビッツフロンティア上にあることを x ()x )0 0 tt. t. t. t V. t. t tt t t t t Vt V g tt t tt V. t. t gt. t. t t t t t V g gt tt gt. tt V. tt. Dž. t. tt. g. t t t tt tt t Et E t tt tt t t t g gt E E. t. t gt. t t. t E. t gt t. t. E. t. t V. t gt. t. g. t. t. t gt. t. t. t. t. 意味する.また, S g tS(gtxt ()x t!) 0!ならばそのファン 0 S g t ( x ) t ! 0t t t tt t S (x ) t t t S g t ( x ドは非効率であることを意味し,フロンティア ) 㸻0.05 S t ( x ) 0S g t S( xg t ()x!)0! 0 S t gt t( xt ) 㸻0.05 t. t. g. g. に対してリターンの増加とリスクの減少が同. S t ( xt ). t. t. t (x ) xt (0)xt ) 3Sで見る gt 時にあと何 %㸻0.05 可能なのかを表す(図 S t t (Sxgt tS)(g! gt t. g t gt. tt gt. t. t. x )0 に近いほど効 と D に該当) .よって S S( x ()が. t t t t t t t t t t t 㸻0.05 㸻0.05 㸻0.05g t 㸻0.05 g = 0.05 の g t g t 率的であるといえる.例えば gt tt t t t 㸻0.05 t 㸻0.05 ファンドであればフロンティアまで必リターン g gt t t gt の増加とリスクの減少が 5% 必要であることを. S S( x ()x ) S gt t S( x ()x ). S (x ). SS ( (xx) ) S (x ). S (x ). Index. t t E Market. DR Sector SRI.
(22) `. S gt t ( x t ) ! 0. Value 合計 t t (筆者作成). Sgt ( x ) ! 0. t gt. t. S (x ). 米国. EU. 19. -. 16. 45. 37. 80. 4. 13. -. 31. 240. 192. 302. 129. 46. 113. 18. 79. 3. -. 113. 88. 29. 33. -. 26. 827. 829. リターンは,基準価格の各月の収益率を平均し. S gt t ( xt ) た値を使用し,リスクも同様に各期間のリター ンから求めた標準偏差を用いた. . 表 1 に米国,EU ごとにファンドカテゴリー S gt t ( xt ). と そ こ に 含 ま れ る ファン ド 数 を 示 す.Agg. Growth とは Aggressive Growth のことであり,. t t 意味する. 㸻0.05 gt. S (x ). 産業の市場が小さく設立まもない会社や地域を S gt t ( xt ) 対象に投資するファンドである.分析に用いた S gt tS(gtxt t()xt ) S gt t ( xt ) 本稿ではこのモデルの実用例として米国とE tt. t. S g t S( xg t ()x ) Uの二地域で得られたファンドのデータを用 t. いてそれぞれの地域で FoF を組んだと仮定し, t gt. t. ファンド数は米国では 19 本で,EU では 0 本で ある.. 同モデルを用いてカテゴリーごとに S ( x )(以 下 PE;Portfolio Efficiency)を 求 め,比 較 を. Blue Chip とは収益性,成長性,安定性の揃っ. 行う.. 米国においてはニューヨーク株式市場の代表的 3.データ. た優良企業を投資対象としたファンドである. な株価インデックスであるダウ工業株 30 種平 均に採用されている銘柄が該当する.米国では. 本稿で用いるファンドデータはブルームバー. 16 本,EU では 45 本を分析に用いた.. グ(Bloomberg, http://www.bloomberg.com/). Emerging と は Emerging Market の こ と で. から取得した.これらのデータはすべて,手. あり,成長の初・中期段階に位置する国や地域. 数料と配当を考慮した値を用い実質化されて. の市場,新興成長市場(国)を対象としたファ. いる.利用する期間は 1997 年 1 月から 2006 年. ンドである.高い成長が期待されている反面,. 12 月までの 10 年間の月ごとのデータが整合的. 急激 な イ ン フ レ,政権交代,通貨暴落 な ど と. に得られる 1656 本をサンプルファンドとした.. いった,政治,経済,社会情勢に関するリスク.
(23) DEA によるファンド・オブ・ファンズのポートフォリオ分析(伊藤・馬奈木・松田) (41). 41. もある.米国では 37 本,EU では 80 本のファ. Sector と は,例 え ば 金融 サービ ス,ヘ ル ス. ンドを分析に用いた.. ケア,天然資源,テクノロジー,公益など,特. Env と は Environmentally Friendly の こ と. 定の業種や分野に投資してキャピタル・ゲイン. であ り,評価機関によって環境に配慮してい. の獲得を追及するファンドのことである.米国. ると認められている有価証券を投資対象とした. では 113 本,EU では 88 本を分析に用いた.. ファン ド で あ る.米国 で 4 本,EU で 13 本 を. SRI と は,Socially responsible Sector fund の. 分析に用いた.. ことで,社会的責任行動を評価機関によって認. Equity & Income は配当の期待できる企業に. められている有価証券を投資対象としたファン. 主に投資してインカム・ゲインの獲得を目指す. ドである.米国では 29 本,EU では 33 本を分. ファンドである.分析に用いたファンドは EU. 析に用いた.. で 31 本である.米国でこのカテゴリーに該当. Value は,ある企業の利益や資産などから,. するファンドのデータは得られなかった.. 同業他社と比べて優れているのにもかかわら. Geography は地政学リスクを主に考慮する. ず,市場に低く評価されていると思われる株に. ファンドである.地政学リスクとは,特定の地. 投資するファンドである.分析に用いたファン. 域における政治や軍事的緊張が経済の行方を不. ド数は EU で 26 本である.. 透明にするリスクのことである.米国では 240. カテゴリーごとのリターンとリスクの平均値. 本,EU では 192 本を分析に用いた.. を表 2,表 3 に,それらをプロットしたものを. Growth はキャピタル・ゲインの期待される. 図 4,図 5 に示す.これらより,効率的なファ. 企業を主な投資対象とするファンドである.分. ンドと非効率なファンドが存在し,効率的フロ. 析に用いたファンド数は米国で 302 本,EU で. ンティアが存在していることが分かる.. は 129 本である.Growth & Income は安定し た配当が期待できる成長企業を投資対象とした. 4.分析結果と考察. ファンドである.米国では 46 本,EU では 116. 分析結果から得られた PE の値をカテゴリー. 本を分析に用いた.. ごとに平均したものを米国,EU ごとに表 4,5. Index とは,例えば日本においては日経平均. に示す.上述したように,PE はフロンティア. 株価や東証株価指数(TOPIX) ,米国において. まで必要なリスクの減少とリターンの増加の割. は ダ ウ 平均株価 や S&P500 と いった 株価指数. 合である.よってカテゴリーで比較した場合,. (インデックス)と,ファンドの基準価格が同. PE の値が小さいものほどパフォーマンスの高. じ値動きをすることを目指した運用をするファ. いファンドが多く含まれているといえる.. ンドのことである.通常はベンチマークとする. はじめに米国の結果について説明する.カ. 株価指数に採用されている銘柄群と全く同様の. テゴリーごとにみると,米国のファンドで仮. 銘柄構成を採り,各企業の株式のファンドへの. 定した FoF のうち最もパフォーマンスが低い. 組み入れ比率も,株価指数への影響度に比例し. も の は PE が 0.83 の Geography で あ る.平均. た割合となっている.分析に用いたファンド数. するとフロンティアまで約 83% リスクの減少. は米国では 18 本,EU では 79 本である.. とリターンの増加が必要であり,フロンティ. Market と は マーケット・ニュート ラ ル(市. ア か ら 最 も 離 れ て い る.ま た,PE の 分散 も. 場中立型)のことで,市場に対して中立なポジ. 他のカテゴリーに比べて小さいことから,フ. ションを取る運用手法をとるファンドのことで. ロンティアからの乖離が同程度であると考え. ある.分析に用いたファンド数は米国で 3 本で. られる.この結果は言い換えると他のファン. ある.. ドと比較した場合,同程度のリスクをとって.
(24) 42. ᅗ 3.. Luenberger Index ࡼࡿࣇࣥࢻࣃࣇ࢛࣮࣐ࣥࢫࡢศᯒ 㸦➹⪅సᡂ㸧. 横浜国際社会科学研究 第 15 巻第 1・2 号(2010 年 8 月). (42). X2. Agg Growth. ࣐ࣝࢥࣅࢵࢶᖹᆒศᩓࣇࣟࣥࢸ. . 表 2 米国ファンドのリスクとリターン平均 D. Blue Chip. Emerging. 0.85. 0.51. 0.36. 0.26 . 6.14. 6.75. 4.77. 5.21. 4.01. リターン. 0.45. ᖹᆒ 0.34 ࣜࢱ࣮ࣥ0.70. リスク. 6.75. 7.24. Env. Geography Growth. Growth & Income. Index Market Sector ຠ⋡ⓗ࡞ࣇࣥࢻ 0.48. 3.94. SRI. Total. 0.65. 0.63. 0.11. 0.45. 4.22. 5.39. 3.85. 5.04. SRI. Value. Total. . (筆者作成). 表 3 EUファンドのリスクとリターン平均 㠀ຠ⋡࡞ࣇࣥࢻ. Blue Chip. Emerging. Env. Equity Growth & Geography Growth Income Income. リターン. 0.48. 0.83. 0.52. 0.48. 0.60. リスク. 4.53. 6.77. 5.99. 3.50. 5.48. Index. Sector. ࣜࢫࢡ 0.61 0.71. 0.98. 0.66. 0.40. 0.71. 0.67. 4.54. 7.89. 5.58. 3.60. 4.37. 5.27. 10. 12. 4.17. X1. (筆者作成) ᅗ 4. ⡿ᅜ 㸦➹⪅సᡂ㸧. 2.5 2.0. リターン(%). 1.5 1.0 0.5 0.0. -0.5 -1.0 -1.5. 0. 2. 4. 6. 8. 14. リスク(%) (筆者作成). 図 4 米国 . ᅗ 5. EU 㸦➹⪅సᡂ㸧 3. 12. 2.5. リターン(%). 2 1.5 1 0.5 0 -0.5 -1 -1.5 0. 5. (筆者作成). 10. 15 リスク(%). 20. 図 5 EU ⾲ 1. ྛᆅᇦࡢࣇࣥࢻ࢝ࢸࢦ࣮ࣜᮏᩘ 㸦➹⪅సᡂ㸧 . ࣇࣥࢻᩘ㸦ᮏ㸧. ࢝ࢸࢦ࣮ࣜ. ⡿ᅜ. EU. Agg.Growth. 19. 㸫. Blue Chip. 16. 45. Emerging. 37. 80. 25.
(25) DEA によるファンド・オブ・ファンズのポートフォリオ分析(伊藤・馬奈木・松田) (43). 43. 表 4 米国 PE. PE の分散. Agg Growth. 0.71. 0.29. 個数 19. Blue Chip. 0.67. 0.32. 16. Emerging. 0.72. 0.32. 37. Env. 0.65. 0.45. 4. Geography. 0.83. 0.25. 240. Growth. 0.75. 0.30. 302. Growth & Income. 0.70. 0.31. 46. Index. 0.46. 0.32. 18. Market. 0.22. 0.14. 3. Sector. 0.82. 0.40. 113. SRI. 0.72. 0.29. 29. Total. 0.74. 0.11. 827. 個数. (筆者作成). 表 5 EU PE. PE の分散. Blue Chip. 0.79. 0.30. 45. Emerging. 0.68. 0.36. 80. Env. 0.37. 0.28. 13. Equity Income. 0.59. 0.36. 31. Geography. 0.52. 0.29. 192. Growth. 0.55. 0.19. 129. Growth & Income. 0.73. 0.45. 113. Index. 0.56. 0.27. 79. Sector. 0.65. 0.26. 88. SRI. 0.60. 0.28. 33. Value. 0.63. 0.29. 26. Total. 0.62. 0.17. 829. (筆者作成). い て も Geography の ほ う が リ ターン が 小 さ. 大災害などが原因で景気が悪化するリスクを低. い,または,同程度のリターンは得られるが,. く抑えようとすることから,そういったリスク. Geography のほうがリスクを大きくとってい. がもともと小さい地域を対象に多くの地域に. ることを意味している.このような結果となっ. 分散投資していると考えられる.しかし米国. た理由として Geography の特徴と,同時多発. で 2001 年に起きた同時多発テロは地政学リス. テロの影響が考えられる.Geography は上述. クが比較的小さいと考えられていた米国で発. したように地政学リスクを主に考慮したファン. 生し,その影響が広範囲に及んだため,ポート. ドである.よって,政治や地理的条件,戦争や. フォリオに組み込まれている銘柄の多くがマイ.
(26) 44. (44). 横浜国際社会科学研究 第 15 巻第 1・2 号(2010 年 8 月). ナスのパフォーマンスだったと考えられる.そ. やダウは上向きのトレンドであったことからリ. のため Geography のパフォーマンスが低かっ. スクをこちらも同様に安定的にリターンが得ら. たと考えられる.. れたと考えられる.Index の次にパフォーマン. 米国のカテゴリーで次にパフォーマンスが低. スの高いカテゴリー BlueChip で PE は 0.67 で. い の は Sector の 0.82 で あ る.PE の 平均値 は. あった.ポート フォリ オ が 主 に Index に 採用. Geography とほとんどかわらないが,分散の. される優良株で構成されていることと,景気が. 値が大きいといえる.上述したように,Sector. 上向きのトレンドであったことから,Index と. は特定の産業に特化して投資するファンドであ. 同様にリスクを小さく抑えつつ安定したリター. る.そのため産業ごとの違いがそれぞれのファ. ンが得られたため,パフォーマンスが高かった. ンドのパフォーマンスに影響したため分散が大. と考えられる.以上の結果から米国で FoF を. きくなったと考えられる.また,同産業に特化. 組む場合,Market の中でのカテゴリーを中心. することからリスク分散が効率的にできなかっ. に,または複数のカテゴリーを横断して考える. たため,パフォーマンスが悪かったと考えられ. 場合は平均的には Market,Index,Blue Chip. る.. のウェイトを高め,Geography や Sector に該. 次にパフォーマンスが低いカテゴリーは PE. 当するファンドのウェイトを減らしたほうがパ. が 0.75 の Growth である.Growth は成長株に. フォーマンスの高いポートフォリオを組むこと. 投資し,キャピタル・ゲインを得ることを目. ができると考えられる.. 的としたファンドである.本研究の 2000 年は. 次 に EU の 結果 に つ い て 説明 す る.EU の. 成長株と思われていた IT 産業の株価が暴落し. ファンドで仮定した FoF のうち平均的に最も. た時期であり,当時,Growth はその特徴から. パフォーマンスの低いカテゴリーは Blue Chip. IT 産業の銘柄をポートフォリオに多く組み入. で PE が 0.79 であった.これはフロンティアま. れていたと考えられる.そのため暴落の影響が. でにリスクの減少とリターンの増加が約 79%. パフォーマンスの低さに反映されたと考えられ. 同時に必要であることを表している.欧州の代. る.. 表的な Index である FTSE100 はアメリカに比. 逆に最もパフォーマンスの優れていたカテゴ. べてより多様な国籍の企業から指標が作られて. リーは PE が 0.22 の Market である.分散が小. いることから,Blue Chip として組まれたポー. さいことから,多くのファンドがフロンティア. トフォリオによっては地域ごとの特色が反映さ. の近くに位置していると考えられる.Market. れやすいため,PE の分散が大きくなったと考. はその特徴から市場全体の値動きに左右され. えられる.. ず,銘柄選定効果(アルファ)のみを積み上げ. 次 に パ フォーマ ン ス が 低 い の は Growth &. ていくリターン特性を持つため,最もリスクが. Income で PE が 0.73 で あった.成長率 の 高 い. 低く安定した運用手法の一つとされている.ま. 企業は再投資を優先させるため,配当性向が低. た,伝統的な資産クラスとの相関が低いため,. くなると考えられる.一方配当性向の高い企業. 既存の伝統的ポートフォリオに追加した際に得. は成長のピークを超えている可能性があること. られる分散効果が最も高いと言われており,以. か ら,配当収入 を 重視 し た Growth & Income. 上のことから安定したリターンを得ることがで. は成長の鈍化した企業へ投資した可能性があ. きたのではないかと考えられる.. る.そのためリターンが小さくなり,パフォー. Market の次にパフォーマンスが高いカテゴ. マンスの低下につながったと考えられる.次に. リ ー は Index で,PE が 0.46 で あ っ た.2001. パフォーマンスの低いカテゴリーは Emerging. 年 の 同時多発 テ ロ 以降,2006 年 ま で S&P500. で,PE が 0.68 であった.上述したように新興.
(27) DEA によるファンド・オブ・ファンズのポートフォリオ分析(伊藤・馬奈木・松田) (45). 45. 市場は政治的, 経済的リスクが大きいことから,. Index,Blue Chip の ウェイ ト を 高 め,EU で. リターンに比べてリスクが高すぎたのではない. は Environmentally Friendly や Geography の. かと考えられる.. ウェイトを高めると,パフォーマンスの高い. 逆 に パ フォーマ ン ス が 高 い カ テ ゴ リーは. ポートフォリオを組むことができることが示さ. Env で PE が 0.37 であった.環境問題への世界. れた.パフォーマンス分析をする上で,本稿で. 的な関心によって,環境技術の優れている企業. 紹介したモデルは扱いやすさの面でも精度の面. や環境経営への取り組みが市場評価につながっ. でも有用であると思われる.. た結果,高いパフォーマンスが得られたと考え られる.二つ目にパフォーマンスの高いカテ ゴ リーは Geography で PE が 0.52 で あ り,パ フォーマンスが低かった米国とは逆の結果が得 られた.この理由として EU では米国に比べて 同時多発テロの影響が小さく,地政学リスクの 分散が効果的にできていたと考えられる.以上 の 結果 か ら EU で FoF を 組 む 場合 に は,Env や Geography の ウェイ ト を 高 め,Blue Chip や Growth & Income のウェイトを小さくした ほうがパフォーマンスの高いポートフォリオを 組むことができると考えられる. 5.まとめ 本稿では FoF のポートフォリオを構成する ファンドを選別するためのパフォーマンス評価 のモデルとして,DEA の考え方を発展させた Briec, Kerstens and Lesourd(2004)の 平均分 散ポートフォリオの最適化モデルの実証結果を 示した.先行研究にも DEA の考え方に基づい てパフォーマンスを評価した Morey & Morey (1999)があるが,リスクの減少かリターンの 増加のどちらか一方しか考慮することができて いなかった.本稿で紹介したモデルではそれら を同時に考慮できるため,より現実的にファン ドの評価をすることが可能である. ま た,Briec, Kerstens and Lesourd( 2004) ら は 26 本 の サ ン プ ル ファン ド を 用 い て パ フォーマンスの比較をしていたが,本稿では米 国で 827 本,EU で 829 本のサンプルファンド を用いてカテゴリーごとのパフォーマンスの 比較 を 行った.そ の 結果 か ら,両地域 で FoF をそれぞれ仮定した場合,米国では Market,. 注 1)たとえば傘下のファンドがある株を売って別 のファンドが同じ株を買っている場合,個々の ファンドは正しい判断であっても FoF として は無駄なことをしている可能性がある. 2)上式 の 部分集合 に お け る 基本的 な 性質 は, Briec, Kerstens and Lesourd(2004)の中でマ ルコビッツ平均分散ポートフォリオとともに説 明されているのでそちらを参照されたい. 参考文献 Briec, W., K. Kerstens, J. B. Lesourd(2004) , “S i n g l e P e r i o d M a r k o w i t z P o r t f o l i o Selection, Performance Gauging and Duality: A Variation on the Luenverger Shortage Function, ” Journal of Optimization Theory and Applications, vol. 120, pp. 1─27. Briec, W., K. Kerstens(2006) , “Multi-horizon Markowitz Portfolio Performance Appraisals: A General Approach,” International Symposium on Banking and Monetary Economics, vol. 23. Briec, W., C. Comes, K. Kerstens (2006) , “Temporal Technical and Profit Efficiency Measurement: Definitions, Duality and Aggregation Results”, International Journal of Production Economics, vol. 103, no.1, pp. 48─ 63. Farrell, M. J (1957) , “The Measurement of Productive Efficiency”, Journal of the Royal Statistical Society, vol. 120, no. 3. Markowitz, H. (1952) , “Portfolio Selection”, Journal of Finance, vol. 7, no.1, pp. 77─91. Markowitz, H. (1959) , “Portfolio Selection: Efficient Diversification of Investments”, New York, John Wiley. Morey, M. R., R. C. Morey (1999) , “Mutual Fund Performance Appraisals: A MutltiHorizon Pespective with Endogenous.
(28) 46. (46). 横浜国際社会科学研究 第 15 巻第 1・2 号(2010 年 8 月). Benchmarking”, Omega, 27, 241─258. Luenberger, David G.(1992), “New Optimality Principles for Economic Efficiency and Equilibrium,” Journal of Optimization Theory and Applications, vol. 75, no. 2, pp. 221─264. Luenberger, David G. and Robert R. Maxfield (1995), “Computing Economic Equilibria using Benefit and Surplus Functions,” Computational Economics, vol. 8, pp. 47─64.. [い と う ゆ た か 東北大学大学院環境科学研究 科博士課程後期] [ま な ぎ しゅん す け 東北大学大学院環境科学 研究科准教授] [まつだ あきみ 野村證券株式会社ポートフォ リオ・コンサルティング部].
(29)
図
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