中学校国語科における「発見」型文法教育に関する 一考察
著者 津田 智史, 鯨井 綾希, 坂喜 美佳, 廣瀬 絢
雑誌名 宮城教育大学紀要
巻 55
ページ 25‑43
発行年 2021‑01‑29
URL http://id.nii.ac.jp/1138/00001135/
中学校国語科における「発見」型文法教育に関する一考察
* 津 田 智 史・ ** 鯨 井 綾 希・ *** 坂 喜 美 佳・ **** 廣 瀨 絢
A Study on Japanese Grammar Education to Discover by Students Themselves in Junior High School
TSUDA Satoshi, KUJIRAI Ayaki, SAKAKI Mika and HIROSE Aya
要 旨
本稿は、詰め込みや暗記、反復練習に偏重しがちな文法授業について、「発見」型の授業方法・言語活動の提案 を行うものである。具体的には、「る」ことばを用いて動詞の活用規則を見つけ出す活動、一見すると不自然な文 を助詞や主述関係の理解から読み解く活動、詩に用いられる接続語句の効果を体験的に考察する活動、動画字幕の 書き換えの実体験により話し言葉と書き言葉の特徴を見出す活動を提案した。また、ここでの言語活動は、従来の 文法授業の方法や対象から逸脱していたり、教科書から離れた内容であったりするものという点で新規的なもので ある。それらの言語活動を通して、生徒自身が考察し、体験することによって文法規則を「発見」していくことが できると考える。
Key words:Japanese Teaching(国語科教育)
Conjugation(活用)
Particles(助詞)
Predication(主述関係)
Conjunctive Expressions(接続語句)
Spoken Language and Written Language(話し言葉と書き言葉)
* 国語教育講座
** 上越教育大学大学院学校教育研究科
*** 山形大学地域教育学部
**** 上越教育大学大学院学校教育研究科教科・領域教育専攻
₁.はじめに
文法教育の方法論の検討は、実は古くから続く課題 である(廣瀨2020など)。長らく文法教育の方法論の 改善が訴えられ続けているにも関わらず、明瞭な打開 策は打ち出されてはいない。文法教育については、国 語科の主軸となるほかの技能、例えば「書くこと」、 「読 むこと」、「話すこと・聞くこと」などが小説文や評論 文の単元の中で意識して扱われるのとは異なり、個別 の単元として独立して扱われることが多い。加えて、
文章読解に時間が多く割かれ、文法教育の時間数確保 自体が難しい状況のようである。また、大きな問題は、
その方法について課題が多く見られることである。暗 記偏重の指導や、練習問題の反復指導がそれである。
そして教師自身の文法への興味・関心の低さによっ て、それらが絡み合い、袋小路に迷い込んでいるよう な状況であることは想像に難くない。それでは、長く 課題であり続ける文法教育の改善は図れないのであろ うか。
本稿は、平成31(令和元)年度宮城教育大学重点支
援研究「中学校における「発見」型文法教育に関する 準備研究
1」に基づく試験的な文法教育の方法を提案す るものである。私たちは日常生活において日本語を問 題なく使用している。お互いに不都合なく理解し合え るということは、そこには何らかの共通認識やルール が存在しているということである。そのルールが、言 い換えれば「文法」である。つまり、「文法」は私たち の言葉の中に存在するのである。本稿では、そのよう な言葉のルールである「文法」に注目することにする。
そして、国語学の知識を生かしつつ、「暗記」中心の 教育法から自身の言語生活に基づく「発見」型の教育 法への転換を目指して、その文法教育の方法を検討し、
具体的なテーマに沿って方法論の提案を行っていく。
₂.文法教育のあり方をめぐって
具体的な文法教育の方法の提案の前に、ここで現状 の文法教育の問題点を明らかにし、そしてそれを受け て、文法教育がどのようにあるべきかについて簡単に 述べておきたい。
実際の国語科の教育現場においては、文章読解な ど、国語科の年間指導計画の中心となる教材や単元に 指導が集中し、それらの内容を重点的に教えていく傾 向にあるだろう。また、そういった中で、文法を扱う 単元にかけられる時間数は必然的に少なくなる。一方 で、研究者は言葉をより重視し、言葉を正確に理解す ることから始め、そこから内容理解につなげていくこ とを求めている。文法に関して言えば、文法の知識が 文章内容の理解に一役買うと信じ、現行の学校文法批 判を展開してきた。しかし、それは教科書や現場の実 態からは遠く、理論展開に終始するものが多い。両者 の関心や主張が異なる以上、どこかで妥協点を探る必 要があり、より現場教諭と研究者の歩み寄りが必要に なると思われる(津田2018も参照)。
校種に限らず文法教育の実践報告や提案を見渡せ ば、国語学的な知見からのアプローチは少なくない数 見られる(安部2001、小柳2008、山田2009、津田2020 など)。しかし、それらが教育現場で活用され、成果 を挙げているとは言い難い。その要因については、以
下の₃点が考えられる。
a.「文法」嫌いの多さ b.指導方法の不明確さ c.「文法」への関心の低さ
これらは教師側、生徒側どちらにも言えることであ ろう。そもそも「文法」自体を嫌いだとか苦手と捉え ている割合が多いということである(a)。また、暗記 に偏重し、練習問題やドリルを繰り返す方法も問題で ある。具体的な方法論が分からないために、そういっ たものに頼らざるを得ない(b)。すぐれた研究理論が あったとしても、具体的な教育の方法とつながらなけ れば実践に生かされないということがあろう。さらに は、そもそも「文法」に関心があるかという点も問題 である(c)。「文法」が何に役立つのか、どのような意 味があるのかなど、「文法」を学ぶ意義がはっきりし ない上に、暗記や繰り返しという教育方法のために、
ある種の作業(そこから何を学ぶかではなく、やるこ と自体が目的)となってしまっているのが現状である。
これらが、負のスパイラルのように繰り返され、これ までの教育の中でその輪を大きくしてきたことが考え られる。執筆者(津田)の担当の大学講義内で文法の 好き嫌いを問うても、学生の多くは文法を「嫌い」も しくは「苦手」だと捉えており、文法教育の記憶を問 うと、記憶にないと答える学生が非常に多い。これ は a ~ c の傾向が顕著であることを表している。そも そも文法教育に充てられる時間が少ない以上、暗記や 反復練習に頼らざるを得ないという状況は理解できる し、苦手意識や関心の低さが顕著であることも理解で きる。しかし、そうであるならば、それを取り払うこ とができれば大きく情勢が変わることも期待できるで あろう。
さて、ここで学習指導要領についても見てみたい。
平成29年告示の新学習指導要領には、国語科の目標の 項に次のような記載がある。
国語科で育成を目指す資質・能力を「国語で正確 に理解し適切に表現する資質・能力」と規定すると
₁ メンバーは、津田智史(国語教育講座;研究代表者)、佐野幹(国語教育講座)、大木一夫(東北大学)、鯨井綾希(上越教育大学;
以上、研究分担者)。成果については、津田・鯨井編(2020)にまとめている。
ともに、「知識及び技能」、「思考力、判断力、表現 力等」、「学びに向かう力、人間性等」の三つの柱で 整理した。また、このような資質・能力を育成する ためには、生徒が「言葉による見方・考え方」を働 かせることが必要であることを示している。
(『中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 国語 編』p.₆-₇;下線は執筆者)
「書くこと」、「読むこと」、「話すこと・聞くこと」
は「思考力、判断力、表現力等」といったスキル的な 力としてまとめ直され、知識だけでなく国語への関 心、興味についても育成する必要があると述べられて いる。また、その育成の課程では、言葉をどのように 観察するのかといった点を重視する必要性も述べられ ている。しかし、松崎(2019)は、新学習指導要領に ある「見方・考え方」とはどのようなものであるのか が具体的に示されていない点を課題とする。それに答 えることができるのは、知識を体験的に得ることので きる方法論の提案であろう。どのように言葉を観察し、
どのような点に注目すればいいのか、そういった点を 研究者が現状以上に働きかけ、提案していかなければ ならない。言葉の規則やルールである「文法」におい ては、それは行いやすいように思われる。
それでは、実際に暗記や反復練習に頼らない文法教 育のためには、どのような授業実践方法を考えるべき なのであろうか。
繰り返しになるが、現状の文法教育においては、そ の実践方法にそもそもの問題があるように思われる。
用意された枠組みの穴埋めや、詳細が説明されない用 語の暗記、練習問題の繰り返しが行われている。限ら れた授業時間の中では仕方ない側面もあるものの、簡 易化・効率化は必ずしも文法理解にはつながらない。
多くの参考書や副読本も見られるが、教科書よりも多 少説明が加えられていたり、カラフルな紙面になって いたりするものの、それが「分かりやすい」か、理解 の補助となりうるかは別問題である。最も大きな問題 は、文法を何のために学ぶのかが分からないことであ ろう。文法教育の意義が明確に示されないので、なぜ 穴埋めを行っているのか、なぜ用語を覚え(させられ)
ているのか、なぜ練習問題を繰り返しているのか分か らず、単なる作業となってしまう。一方、教師の面か ら見ても、参考書や副読本には実践的な方法が提示さ
れているものは少なく、それらを利用して授業の改善 を図ることができるようには思えない。教師側にして 見れば、どのように文法の授業を進めればいいのか、
その手立てが見えてこないのである。
言葉について学ぶという時には、覚えたり、教えら れたりするのではなく、日常の言語生活を振り返るこ とで見えてきたり、ふとした瞬間に気付いたりする、
そういった体験が必要である。そのような体験を意図 的に経験できるような活動を、授業に導入することが 文法教育においても望ましいように思われる。活動を 通して学びを自覚したり、考えを共有することで知見 を広げたり、深めたり、高めたりすることが重要とな る(児玉2017)。言い換えれば、活動が目的ではなく、
その活動により何を学ぶのかが重要であるということ である。活動は文法の規則を見出すための過程である。
授業の活動を通して、文法的な発見が得られるという ことが重要になろう。
そのためにも、生徒自ら、規則を「発見」できるよ うな授業の実践はできないだろうか。「文法」を、よ り身近なものとしての、また生活言語としての言葉を 通して学んでいくことはできないだろうか。そのよう な実践方法のアイデアを本稿では提示する。具体的に は、₃節で津田が動詞の活用を、₄節では廣瀨が助詞 を、₅節では鯨井が接続語句を扱う。そして、₆節で は坂喜が話し言葉と書き言葉を扱う。これらは、前者
₃つが微視的な視点での個別の文法項目を、後者₁つ が巨視的な視点で文法的な知識を活用した言語運用上 の内容を扱うものと言うことができる。また、これら は全て、「正しい・美しい日本語」といった規範意識 を越えて言葉について考えること、また規範だけが正 解ではないという事実を認識することを念頭に置いた ものである。教育現場では「正しい」ものが教えられ ており、それ以外が間違いであるかのような印象を与 える。しかし、私たちの言葉やコミュニケーションは、
規範的な日本語のみで形成されているわけではない。
本稿は、そういった自分たちの言語実態、言語生活に 意識を向かわせる文法教育の方法を提案する。
なお、以降で提示する文法教育の方法に関するアイ
デアと内容については、それぞれの執筆者が検討して
提示するものであり、文責は執筆者各人にある。
₃.「る」ことばから考える動詞の活用
本節では、用言の活用のうち、動詞の活用について 取り上げる。動詞化接尾辞「る」によって造語される 語(「タピる、ググる、オケる
2」など)、いわゆる「る」
ことばを用いて動詞の活用についての理解を深める活 動を提案する。活動の概要は、上記の通りである。
用言の活用の配当時間は、中学校₂年生のいずれの 教科書でも₂ ~ ₄時間となっている。ここで扱う内 容は₂時間とするが、その前段階にも₂時間程度要す るものと考えられるため、用言の活用全体としては₄ 時間確保することが望ましい。ただし、形容詞、形容 動詞の活用については、その₄時間に含むことが可能 なのか、動詞と同様に扱い、理解できるかなど、それ らは今後の課題としたい。
また、ここで目標とするのは、活用表を埋めたり、
用語を覚えたりするということではなく、日常的に使 用されている動詞の活用について理解を深めるという ことである。その手段として、若者言葉や俗語として の動詞を利用する。動詞化接尾辞の「る」による造語 は多く見られ、一時的にのみ流行するものから、一般 化し受け入れられるものまで様々である。そして、新 しい「る」ことばも常に生み出されている。その点で、
生徒たち自身が「る」ことばを探したり、創作したり することは、若者言葉や俗語の理解を深めることにも つながる。
₃.₁ 指導にあたって
動詞の活用をはじめ用言の活用は、文法教育の中で も暗記や練習問題の繰り返しに偏重しやすいものであ
る。活用の種類を覚え、活用表の穴埋めを行い、それ とともに活用形を暗記していく。練習問題においては、
例えばある動詞の形から活用形を答えさせたり、逆に 活用形から動詞の形を答えさせたりなど、一対一で対 応する答えを求めるようなものが多く見られる。しか し、日常生活において活用形を問われる場面はないし、
動詞を使用する時に活用形から考えることもない。そ のため、なぜそれを学んでいるのか、なぜ暗記しなけ ればならないのかという漠然とした問いを生徒たちは 持つことになる。
それに答えるためには、高校で学ぶ古典文法などの 知識も必要になる。現行の口語文法の大枠は、古語の 文法理解への段階的知識として設定されているためで ある。それでは、中学校の国語科において、こういっ た文法知識はどのように、どこまで学ぶべきであろう か。また、ここで提示する内容は、動詞活用の理解の ためのどの段階に位置づけられるのか。
ここでは、生徒に動詞の活用についてより身近な 形で意識させ、そして理解を深めることを目指す。具 体的には、活用表を覚えるのではなく、自分たちの手 で活用表にまとめることを目指すのである。活用する 動詞の形でまとめていくとともに、活用形の名称や分 類、そしてその数について、なぜそのように示される のかを明確に示す必要がある。そういったことを伝え、
活用を学ぶ意義を生徒に感じさせることが重要となろ う。また、「る」ことばを対象として扱うことにより、
授業内で見出したその活用ルールに従えば、新しい未 知の語に遭遇した際に、その活用を予測できたり、対 応できたりすることに気づかせる。
ところで、口語文法における動詞を含む用言の活用
₂ 「タピる」は「タピオカミルクティーを買う、飲む」、「ググる」は「Google をはじめとしたサーチエンジンで検索する」、「オ ケる」は「カラオケをする、カラオケに行く」という意味を表す。
[テ ー マ] 「る」ことばから考える動詞の活用
[配当時間] ₂時間
[目 標]
日常の言語生活において、動詞が様々な形で使用されることを理解するとともに、「る」ことばの活用の実態像をつかむ。
また、「る」ことばが基本的に五段活用であることに気付く。
[活動内容] :①②(₁時間目)、③④(₂時間目)
① 少人数班に分かれて「⃝⃝る」の言葉を探し(もしくは、新しく考え)、取り上げる一つを選ぶ
② 選んだ「⃝⃝る」を使った文を考え、共有する(後接する表現を例示するなどして、できるだけ多くの形を探す)
③ 「⃝⃝る」の形の変化を活用表にまとめる(各班で比較・共有し、基本的に五段活用になることに気づく)
④ 活用に関する理解を深める(活用形の名称とその数の由来、活用語尾の割振りについて知識を得る)
については、次のような流れで進めることが多い。実 際、教科書の記載でも、おおむねこの順序で情報が示 されている。
₁、活用とは(語幹と活用語尾)
₂、活用形
₃、活用の種類
本稿では、上記の内、₂、活用形に関わる内容を扱 う回の授業展開と活動を提示する。ただし、その前提 段階として、定義的な内容の₁と、₃について事前に 触れておく必要がある。通常、₁ ~ ₃は教科書にお いて見開きで全体が示され、用語が立て続けに目に入 り、そしてそれを覚えるという作業を課される。しか し、多くの用語を五月雨式に提示するよりも、活用に ついて段階的に学ぶことが望ましいと考える。そのた めには、従来の順序を変更した方が、その理解促進に 役立つと考えられる。つまり、₁・₃(先行の授業)
→₂(本稿で示す活動案)という流れを提案したいの である。また、₃、活用の種類を扱う際には、まずサ 行五段活用の動詞を例示し、使用場面によって様々に 形を変えることを、言語生活の中から例文を見ていく ことで理解させ、 「五段」活用と呼ばれるゆえんをはっ きりと示すことが重要であろう
3。サ行以外の五段活 用動詞は、音便形を持つためである。その際、活用形 にまでは触れず、この段階ではあくまで運用上、それ ぞれの動詞の活用語尾によって活用の種類と名付けが 行われていることを理解するにとどめる。その後、音 便形に触れながらほかの行の五段活用動詞に移り、上 下一段活用、変格活用へと話を広げていくことで、活 用を単純なものから変則的なものへと順を追って理解 していくことはできるだろう。この点については、別 稿で改めて授業法の提案を行いたい。
ここで提示する内容は、中学校₂年生の用言の活用
(とくに動詞の活用)について扱う₄時間のうちの後 半₂時間にあたるものである。生徒自身が活用表をま とめるため、また活用の規則を発見することを効果的 に支援するための方策の提示が、ここで目指す教育方 法の改善というところである。
₃.₂ 授業の流れ 第₁時
まず、活動①として、少人数の班に分かれて、「る」
ことばを探していく。「る」ことばは若者言葉や流行 語によく見られるものであり、体言(多くの場合、体 言の一部もしくは頭から₂拍)に「る」という動詞化 接尾辞を接続させた造語である。それを探すことに よって、生徒自身の言語生活の振り返りや身の周り の言葉の観察を行うことができる。「る」ことばには、
例えば以下のようなものが考えられる。
1 タピる、ググる、オケる、ディスる、バズる…
これらを見つけることが難しい班には、いくつか例 示して考えさせたり、体言+「る」という語構成を示 した上で新しく造語させたりすることで対応する。い わゆる「る」ことばの多くはいまだ辞書に掲載されて いない場合が多いので、「る」ことばかどうか判断に 迷う場合には辞書に記載されていない
4 4 4 4 4 4 4 4ことで判断させ る。「る」ことばがある程度出揃った後、各班で検討 する対象を一つに絞らせる(以下、本稿では「タピる」
を例として示す)。
活動②では、①で選んだ「タピる」について、それ を日常生活でどのように使用するのか、「タピる」を 使った文を考える。本時に先行する₂時間で動詞が 様々に形を変えることを学んでいるので、ここでは各 班で選んだ「る」ことばについて「活用させてみよう」
という発問で活動を進めて良いだろう。できるだけ短 い文を多く挙げるようにして、終止形ばかりの文にな らないように気を付けながら机間指導する。全体の様 子を見ながら、次のような後接する表現についてのヒ ントを提示しても良いだろう。
2 後接する表現の例示
―ない、―れる・られる、―せる・させる、―ます、
―ながら、―た・だ、―て・で、―。、―だろう、
―けれど、―と、―とき、―こと、―ひと、―ので、
―ば・れば、―!、―う・よう など
₃ ₅社(学校図書、教育出版、三省堂、東京書籍、光村図書)の₂年生の教科書を比較すると、いずれも動詞の活用では五段
活用から説明が始まる。そのうち₂社が五段活用としてサ行の動詞を例示し、ほかの₃社はカ行の動詞を例示していること
が分かる。
2は、先行する授業の中ですでに活用の種類を見分 けるものとして例示している(前提な)ので、復習と して提示する。それ以外にも、複合的な後接表現につ いて例示されていても問題ない(「―ないでしょう、
―なかっただろう、―ませんでした」など)。各班の 進捗を見ながら提示する用例を選んでも良いだろう。
ただし、提示するのは2のようなシンプルな後接表現 でも十分であろう。その提示により、様々な形の文を 各班が考え、集めていく一助とする。例文が十分に集 まった班もそうでない班も、「る」ことばの観察を通 して、生徒自身が身の周りの言葉へ興味・関心を持つ ように導いていく。
本時の最後には、各班が収集した例文と、授業外で 収集した例文を班ごとで共有する。その後、各班の代 表者が黒板などに書き出し、生徒全員が確認できるよ うにする。お互いにほかの例文が考えられないか、意 見を出し合い、例文を補充する。
第₂時
活動③として、前時で収集した例文をもとに、3 のような枠を示したワークシートを配付し、班ごとに
「る」ことばの活用表を埋めていく。
3 活用表の枠の例
表中の「後に続く表現」は、第₁時で挙げた例文と 先行する₂時間で得られたものを利用するようにし、
各班でどのようにまとめられるのかを考えていく。枠 は多めに提示し、各班で自由なまとめ方を促す。
まとめた表の、語幹と活用語尾を確認し(すでに学 習した活用の種類と照らして)、「タピる」の活用の種 類を判別する。「タピる」は活用語尾にア段からオ段 まで全て見られることから、五段活用であることが分 かる。全ての班の活用の種類を共有し、「る」ことば はいずれも五段活用であることに気付かせる。同時に、
語幹がイ段もしくはエ段で終わる「る」ことばを示し つつ(各班の動詞で選ばれていない場合には、改めて
示して)、 「* タピない」のような形が自然かどうか問う。
「る」ことばは基本的に五段活用になるので、このよ うな上一段型の活用は不自然となる。同時に、 「ペソる」
など無意味な「る」ことばを例示し、全く未知のもの でも活用、つまり形の変化を類推できることに気付か せる。
そして、ここで新たに4を提示し、口語文法の五段 活用の活用表の全体像を示す。そして、各班の「る」
ことばについて、そこに改めてまとめさせる。なお、
4の網掛けは、「タピる」について埋めたものである。
4 五段活用の活用表
表を埋めることができたら、活動④に移る。4に示 している活用形の名称の説明を行っていくのである。
語幹が動詞の意味の部分を担い、活用語尾が文法的な 役割を示しており、活用形の名称は主な意味や文法的 な役割によって名付けられていることを理解できるよ う、単なる用語として提示するのではなく、必ず名称 の解説を行う。なお、5は、奥津(1981)、小柳(2008)
を参考にした。
5 未然形:動きが未だ実現していないことを意味 する形
連用形:用言に続くことを主な役割とする形 終止形:文が終止することを主な役割とする形 連体形:体言に続くことを主な役割とする形 仮定形:順接仮定の条件を意味する形 命令形:動きの命令を意味する形
ただし、これらの名称については主な意味・文法的 役割によって名付けられており、名称と中身が合致し ない場合があることを説明しておく必要がある
4。加 えて、4および5を見ていくと、様々な疑問が生まれ る可能性が大いにある。例えば、次のような疑問を生 徒たちが持つことになるだろう。
₄ 詳細については、奥津(1981)などを参照のこと。
動 詞 後に続く表現
語 幹 活用語尾
動 詞 語 幹 活用語尾
未然形 連用形 終止形 連体形 仮定形 命令形 タピる タピ ら
ろ り っ
る る れ れ
後に続く表現 ナイ ウ
マス テ タ
。 トキ コト
バ !