• 検索結果がありません。

神経系の発生・分化の微量生化学

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "神経系の発生・分化の微量生化学"

Copied!
25
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

157・   

神経系の発生・分化の微量生化学  

金沢大学医学部第二病疫学教室(主任 石川大刀雄教授)  

橘   武   彦  

(昭和33年12月20日受付)   

M、icrobiochemicalStudyonthe Development and the  

Di鮪rentiation of the Nervous System  

TAKEHIKO TÅCH=BANA  

皿甲州個扉げP摘曲馴(Ⅱ),ぶe如け上げ∬8d eよ乃β,gα乃α方α郷αUれiu8rβ軸  

(かゎ扉0γ‥Prげ一Dr・ヱ .Jβ九す鳥α彿α)  

ABSTRACT   

Neurulationis brought about by theinductive actionofthe subjacent archenteric roofand   resultsin the remarkable morphologicalappearance of the neuraltube and neuralcrest.It  

is the cellular and tissue differentiation of these structures which results in the formation of  a11the elements of the nervous system.   

On th占assumption that such morphologicalalterations are based on phenomena at the  

molecularlevel,this study was designed to examine certain biochemicalaspects of the di任e−  

rentiationof thenervous system utilizing Trituシuspyrrhogasier embryos,Stage18−36,  

and the ventraland dorsalnerve roots,and some sympathetic and para−SymPathetic nerves   of the adult dog.   

The Cartesian diver techniqueisapplicable here for the necessary microquantitative analy−  

sis.The routinelaboratory usage and application of this technique under the conditions of   thislaboratory are discussed.   

Theneuralplate andneuralcrest of the embryo were excised and measurementsofrespi−  

ratory rate(Qo2),anaerObic glycolysis(Q‰2),SuCCinoxidase,Cholinesterase,and DOPA−  

,decarboxylase activity were compared.The neuralplateand crest maintain similarlevels of  

thefirst three types of activity;Cholinesterase was found to be three times as activein the   neuralplate asin the neuralcrest.In view of the relationship of ChE to motor nerve  

function,thislatter observation becomes signi£cantasanearlyindicationoffunctionalnerve   differentiation,eSPeCia11y asit precedes the appearanCe Of motilityin the embryo.   

The formation of dopamine,PreSumably anintermediatein the metabolism ofnorepine−  

phrine and epinephrine,neCeSSitates the catalyzingaction of DOPA−decarboxylase on DOPA.  

The demonstration of this enzyme and dopaminein the adrcnalmedulla andin the sympa−  

thetic nerve and ganglion(Holtz et al)suggestedits utilizationas anindicatorof sympa−  

thetic function.However,if present,the activity of DOPA−decarboxylasein the neural   plate and crest of theneurula was toolow to detect.   

Theaboveobservations oncholinesteraseledtoaninvestigationofthesequenceofappear−  

ance of cholinesterasein the centralnervous system andin the adjacent somites(neuro−  

muscular junction)whichindicated.  

1)MaximalChE activity of the spinalcord was foundattheleveloftheIstq6th somites   and decreasedin both the cranialand caudaldirectionsin allstages studied.   

2)With the appearance of muscular responsein the embryo,the cholinesterase activity   begins toincreasein somites at thelevelof theanterior part of the spinalcord;Shortly  

(2)

thereafter a sharp increase in activity occurs in the lower part of the spinal cord, the rate of which is approximately the same as that of the upper region of the cord.

 The signi五cance of these arld other data, in comparisoll with the histochemically deter−

mined enzyme activity of the celltral nervous system alld at the neuromuscular junction alld to the curve of the resting potential of developing somites, is discussed.

 To verify the validity of the technique, the cholinesterase and DOPA−decarboxylase activi−

ty of the ventral and dorsal, nerve roots of the adult dog were also studied. The ventral root was found to possess a cholinesterase concentration three times as much as that of the dorsal root. In contrast, the DOPA−decarboxylase was found only at the dorsal root.

DOPA−decarboxylase activity of sympathetic nerve and ganglion, and parasympathetic nerve produced results similar to that reported by Holtz 6 σ1.

 It is concluded from the observations that the differing distribution of speci石。 enzymes ill the neural plate and neural crest is associated with functional differentiation.

ま え が き  従来,教室同入は 初期発生における外・中・内胚

葉系への細胞分化の過程を,誘導並びに反応系におけ る蛋白錯体の立体構造及びその作用基の連鎖的転換の 上に求め,生化学,組織化学,免疫化学的見地より追 求し来った.

 胚体に基本的な自律分化系が成立する頃より,最も 興味をひかれるものは神経系の分化である.神経系の 成立に注目する時,当然外胚葉,就中 神経胚におけ る神経板と神経冠の分化起点が間題視されねばならな い.それにも拘らず,従来この方面の研究は困難を極 めて,殆んどふれられることがない.形態学的には神 経板,神経冠共に胚体背方域に位置する外胚葉であり ながら,中胚葉系(脊索,中胚葉節)の何れに近似し,

その誘導をうけるかにより,神経管を経て,中枢神経 系め遠心性脳脊髄神経原基となる神経板と,求心性神 経,副腎髄等の原基となる神経冠とに区別される.換 言すれば,遠心性,求心性:或いは交感・副交感神経

系の機能分化の契機はここにあるといえよう.

 この方面の実験的研究材料としては,両棲類初期胚 の神経板及び神経冠を発生に伴って追究すると共に成 熟動物の交感副交感神経を用いざるを得ないが,共に 材料が極微に制約されるために,その生化学的定量法 には当然,超微量定量法が必要となる.

 組織内 無機物,有機物,酵素等の超微量定量法と して今日までに幾多の優れた方法が考案されている が,就中検圧法として生化学的領域に一般化されてい るワールブルグ検圧法を適用した超微量定量法として のカーテシアン・ダイバー法が推挙されよう.本法は 厳密な実験条件と特殊技術を期する故に,特殊な研究 室においてのみ使用されているに過ぎないが,本報告 においてはこのカーテシアン・ダイバー法を吟味・改 良し,それを用いてコリンエステラーゼとドーパ脱炭 酸酵素を中心に,神経系分化の生化学的解析を試み

た.

第1編 カーテシアン・ダイバー法の吟味  著者はカーテシアン・ダイバー法を用いて,神経系

分化の生化学的解析を試みたが,その結果を述べろ前 に,カーテシアン・ダイバー法の概要を記載し,併せ て日本の実験室において本実験に適用すべき点を述べ ることにする.

 その1 カーテシアン・ダイバー測定法の概要  カーテシアン・ダイバー註)(浮沈子)を微量検圧法 に初めて応用したのはLindenstrφm−Lang(1937)1)

であり,その後Lindenstrφm−Lang&Glick(1938)

 2);Boe11, Needham&Rogers(1939)3)及びBoe11,

Koch&Needham(1939)4),更:にRocher(1942)5)

.によって方法の検討・改良・応用等が試みられ,1943 年に至って,Lindenstrφm−Lang 6)がカーテシアン・

ダイバー法の理論を展開し,続いて:H:01ter(1943)7)

が本法の使用法を詳細に記載した.その後schwartz  8)及びWaterlow&Barrow g)によって改良されて いる.なお本邦では今日まで中川10),岡田11)によっ て,測定法が簡単に記載されている.

(3)

神経系の発生・1分化の微量生化学 159

 註)・力ニテ.シアン・ダイバー(Cartesian diver)は Raffaele Magiottガレリオ学派)が1648年に水の非 圧縮性に関する小著の中でダイバーを図示したに始ま っている.それ以来 カーテシアン〃なる言葉は,

科学的〃又は 機械的〃という意味の同義語として 使用されているに過ぎないのであって,デカルト学派

(Cartesian)とは無関係である. Boe11, Needham&

Rogers 3))

 カーテシブン・ダイバー法は,反応容器であるダイ バー(第1(A)図)中に生ずる微小なガス量の変化 によつで,そのダイバーを入れる浮游液中での浮力が

変化し,浮沈するが,この浮沈を外圧を適当に加減す ることによって,浮游液中に静止せしめることができ る.換言すれば,外圧を調節してダイバー内ガス量を 定常に保つことができる.この操作によって得られる 外圧の変化から,ダイバー内のガス変化量を知るとい う原理に基いている.この操作に必要な装置の概略を 次に図示する(第1(B)図).

 ダイバー法は,constant・ volume manometryであ る点,ワールブルグ検圧法と同様で弟り,マノメータ ー測定の正確度を1nomとすれば,これはBrodie液

第1図 カーテシアン・ダイバー装置及びダイバーの概略図

d

e

C e b

(A)

e

δ

(B)

三一

一一

甥2寺。。z)「「

G

1K

N

H

L J

1

0 9

P

C

(A);ダイバー

 a:Bottom drop(底部液滴)

 b::Neck sea1(頸部シール)

 c:Oil seal(オイルシール)

 d: Mouth sea1(封口液シール)

 e:ガス腔、

(B)・;・.撫ヘ一(恒温槽内は特に鉢大して記載)

盃:マノメーター液圧調節器(肉厚ゴム管よりな    る)

 B:.粗動調節ネジ  c:微動調節ネジ  D:マノメーター  E1;E2:三方活栓

 F:分岐管

  G:ゴム管

  H;浮游管スリ合せ結合部.

  1:浮游管

  J:浮游管の環状マーク   K:1浮游液ガス飽和用ガラス管   工:嫌気用側枝付浮沈管

  M:ゴム管   Nゴゴム栓

  0:空気瓶(2〜41容量)

  P:恒温槽.

反応容器となるダイバーは;標準型とされるもので は全容量10μ1程度の硬質ガラスで作つた有尾フラ スコ型の容器(第1(A)図)であるが,その他第2 図に示した如き型もある.

(4)

第2図 ダイバーの諸型

(Holter 7)より抜駆)

a  り

o ゑ 4・6 8 εo

」_一mm

a:長頸標準型 b:円 筒 型

。:円 錐 型

の使用によって1気圧の1/104となる,ダイバーは標 準型で101α1の容量を有するから,ガス容積の精度は 1/103」μ1となる.従って1/102,μ1/hr程度のガス消 長の測定に好都合である.

 次に操作法の概略を記す(呼吸の測定を例にとって 記す;第1図参照).

 1)恒温槽を実験温度に0.01。Cの精度で調節して おき,恒温槽内の空気瓶はE2活栓によって外界に通

じておく.

 2)ダイバー内にマイクロ・ピペットを用いて第韮

(A)図の如く,諸兄を充填する.a又はbに組織片や 酵素液を置き,b又はaにアルカリ(通常0.1NNa OH)を置く.或いは第3図の如き充填法に従って,

side droP(懸滴)をneck sea1(b)の近くに設置し,

:l

mm

第3図 Side drop充填模式図

a,

a:neck sea1の下部に   置く

b:neck sealの上部に   置く,mouth seal内   にglass stopperを   入れてある(ガス漏   出防止法)

温度平衡後に反応せしめる酵素の基質や,阻害剤その 他を置く.

 3)neck sea1の上部にoil seal(c)を置く.

 4)mouth sea1(d)は浮游排中でダイバーがうけ

る浮力及びダイバー重量と平衝を保つように調節され るに必要な量を充填する(浮游液は硝酸ソーダと食塩 とコール酸ソーダとからなり,比重(実験温度におけ る)は1.325程度となっている).

 5)ダイバーを恒温槽内浮游管(1)中に入れる.

 6)空気瓶(0)を外界と遮断し,マノメーターに 接続する(E2活栓).

 7)分岐管(F)とマノメーターとをE1活栓を介 して接続する.

 8)マノメーターによる測定開始前,曽通常10分間を 温度平衡に充てる.

 9)分岐管に附属するコックを開き,液圧調節器

(A)の粗動(B)及び微動調節ネジ(C)によってダ イバ「を浮かせ,浮游管(1)の環状マーク(J)にオ イルシール上部メニスカスを一致せしめ,10秒間ダイ バーが静止する如く液圧を調節する.マノメーターを 0.5mmまで読んで平衡圧を記す.,

 10)液圧調節と読みを繰返す.

 11)平衡圧より3−5cm過圧(基礎圧)にし,ダイ バーを浮游二二に沈下せしめる.

 12)次いで分岐管コックを閉ず.

 13)定刻後に読みを繰返す場合は,メーター液圧を 基礎圧にし,分岐管コックを開いて,,9)一12)の操作 を繰返す.

 嫌気的条件を必要とする場合の操作法に関しては,

脚aterlow&Barrowの方法9)が適当である.その要 点を,二,三挙げれば次の如くである.

 (1) ダイバー内ガス充填法(第4図参照):ダイ バー支持器(A)がガラス円筒管(B)内にはめこ、ま れている.ダイバー支持器は把持棒(C)でガラス二 三を上下に移動させることができる.この容器内に水 を豪し,ダイバーの上端が水面下2〜3mmの位置に くるように支持器にかける.次いで通気用ピペットを 水を介してダイバー内に挿入し,数分間通気してガス で空気を置換する.

 ダイバー内に充填するシールもすべて同様の操作で 行い,嫌気的条件を作る.なお,ガスの漏出を防止 するために第3図bの如くmouth sea1内にglass stopper(内空型)を入れる.

 (2) 浮游液にガスを飽和させることによって,ダ イバー内のガス漏出を更に防止するが,このために は,第1(B)図の嫌気的実験に用いる特殊側枝付浮 游管(L)及びガス飽和用ガラス管(K)を装置し,

Kを通じて浮游液に通気し,それらのガスはしの側枝

(5)

神経系の発生・分化の微量生化学 161

第4図

 i

ダイバー内ガス充填装置

C

     G伽 0  霊  2

B A D

A:ガラス円筒

B:ダイバー支持器(真鍮

  製)

C:把持棒

D:ダイバー押え(鋼鉄製)

E:マイクロ・ピペット   (ダイバー内挿入を図   示)

を介して分岐管を経て、マノメーターE1活栓から外界 に排気する.この操作によって,これら毛細管内の換 気もできて好都合である.

 (3)測定に関しては好気的な場合と全く同一であ

る.

 次に計算に必要なダイバー恒数について簡記しよ

う.

 ダイバー恒数とは,与えられた外圧(P),温度(t)

において,ダイバーが平衡圧(筆圧)において示す全 ガス腔(第1(A)図のe)の容量:(VG)である.こ の求め方に次の二法がある.

 1)幽ダイバー内の各溶液の容積の総和を全ダイバー 容積から差引き,ある外気圧と温度で得られた値を,

Pとt時に補正して得られる.

 2)VGを次式によって求める.

   V・一9D+舳 柳 聯1鑑一V・φM

      一(9DφM/φ91)

 ここに9D:ダイバー重量, V。n:oil sea1の容 積,φ。i1:0i1の密度, Vw:水溶液の容積 bottom droP, neck seal, side droP等の容積の総和),φ、・:

水溶液の密度,φM:浮游液の密度,φg1:ガラス(ダ イバー)の密度を現わしている.

 一般に2)でダイバー恒数を求める方が1)で求め るより正確であるとされている.

 ダイバー内のガヌ変化量(△V).はガスの溶解度を補 正する必要のない場合は次式で与えられる.

    △V・=VG・△P/po・273/273十t

 ここにAPは平衡圧の変化(cm), Po:正常圧(プ ローディー液柱103cm)・t:恒温槽の感度である.

 その他,ガス溶解度を考慮する必要ある場合につい ては,Lindenstrφm−Lang 6)又1まHolter 7)が詳細に 記載している.

 その2 カーテシアン・ダイバー法に関する二,三      の考察

 カーテシアン・ダイバー法の操作法の概要は上述の 如くであるが,ガス容量の消長を10一3μ1の精度で計 測するには,実験条件に幾多の制約があり,これによ』

つてダイバー法の精度が決定されるともいえよう.

 この測定誤差を最小とするために,Holterは実験 条件並びに方法について詳細に検討している.しか し,吾〃の実験室においては,これらの条件を満足さ せるに足るだけの設備に欠けている.この不備な設備 下でダイ六一を操作する場合について二,三検討を試

みた.

 (1) 温度条件について

 a.恒温槽の放熱防止のための被覆箱設置:Holter 7)はCorlsberg研究所においては,21。Cの恒温室 で,室温より2。C高い恒温槽を用い,恒温槽の精度 を0.01。Cとして調節している.

 実験室の温度を恒温にし,且つ実験温度と2QCの 差を保つことは,恒温槽の精度0.01。Cの保持に必要 であると同時にダイバー充填操作にも好都合である.

しかし,著者の実験を行うに際しては,実験室の温度

.は気温に左右され,四季を通じて大凡17。C−28QCと 変動した.一方実験温度は大部分の実験において,そ の実験目的から30。Cとした.このように実験温度と 室温との差が,かなりな範囲で変動する環境でダイバ ー法を実施するため,恒温槽に木製被覆箱をもうけ た.その概略図は第5図の如くである.測定時には上 蓋(B)を開いて分岐管コックの開閉を行う以外は,

すべて閉じておく.この被覆籍によって形成される内 部環境の気温は,かなり実験温度に近くなり,気温 17−20。Cでは内室の温度は26−27。C,20−250Cの 気温では28−290Cとなり,かなりに熱の放散を防止 するζとができる.

 b.熱源調節:Holter 7)は40ワット・ランプを単

一一M源として用いているが,300Cの実験温度でダイ バー操作を行ったWat母rlow&Barrow 9)は熱源を,

断続熱源15ワットとろうイダップで電圧調節できる 200ワットの電源を用いている.著考も後者の方法に 従って,恒温槽の大きさに応じ,断続熱源を20ワット 刃し,継続熱源は300ワットを,その時の実験温度と

(6)

第5図 恒温槽被覆木製保温箱 C     o

oO@o

B 多A

D

 恒温槽被覆部(A)は恒温槽周囲を被い,前回(D)

は恒温槽前面ガラス部分に相対している.このAの上 部にB,Cからなる上蓋部があり, B, G間及びC, A 間は蝶番で可動するように組立てられている.この B,C部の厚さはダイバー浮游管とマノメーターとの 分岐管接続部を包含するに必要な最小限のものとし た.Eはマノメーターと分岐管並びに空気瓶とをつな

ぐ肉厚ゴム管並びに恒温槽概伴装置用の窓である.

室温との差によって電圧を調節して使用した.或る実 験温度と室温で必要とする電圧は,予備テストで求め

た.

 以上のような改良により,室温20。C前後の条件下 でも,恒温槽の温度を0.01−0.02。Cの変動範囲内で 保持することができた.

 ダイバーの平衡圧の変動は,室温20.2−21。C,恒 温槽の温度300C,内室(被覆二二)の温度28.2−28.

5。Cという条件下で, L4mmの最大振幅を示した.

多数の実験を行った結果,1.5mm以下であるといえ る.又室温25。C以上での実験では,1.Olnm以下で あった.これらは,Waterlow&Barrowの得ている 0.6mmには及ばないが,ダイバー法を施行する上に 大きな誤差源とはならない.

 (2) ダイバーのシリコーン加工について  ダイバーにシリコーン・コーチングを行うことによ

り,実験に多くの利点を与えることはSchwartz 8)や Waterlow&Barrow 9),その他によって確i認されてい

るが,これらは殆んどDC−200(Dow−Coming Che・

mical Co.)を使用している.しかし,この入手が困 難であったたあ,著者はSimacone(島津製一NS−

200)を使用した.これは:Nakano 12)によって使用さ れているが,その記載が簡単なので二,三基本的考察

を試みた.

 〔1〕 コーチングの方法はSchwartzに倣った.即 ち10%NS−200トルエン溶液でダイバーを充し,外 側をもコーチングするために,溶液内に浸し30分間静 置する.溶液を除き,ダイバーを新鮮なトルエン溶液 で2−3回洗い,できるだけ溶液がダイバー内壁を均

一・ノ覆うようにトルエンを除き,直ちに乾燥せしめ,

1500Cの乾燥器に入れて,約1時間乾燥する.

 ζのようにしたダイバーは数回の実験に使用できる が,特にside dropを必要とする実験では,2回実 験使用後は必ず再びコーチングをした.

 〔2〕neck sea1のメニスカスの形状は, Schwartz の述べているものと等しかった.

 〔3〕過言及び減圧によるダイバーの平衡圧の変化

について.

 過二又は減圧によってダイバー内のsea1に大きな 動揺を与える.その平気圧の動きを測定したところ,

次の如くであった.

 (i)Brodie液圧20cm加圧2分間後の平衡圧の変動     加圧前  3分後  5分後  7分後

  △P   O,     一〇.10, 一〇.05,    0

 (ii)Brodie液圧20cm減圧2分間後の平衡圧の変    動

    減圧前 2分後 4分後 5分後 7分後

  P△    0   十〇.37 十〇.20 十〇.10 十〇.05  (iii)外圧を数回加温・減圧を繰返した後の平衡圧    の変動

    操作前  2分後  4分後  5分後

  △P    O    −0.05     0       0

 以上のように,平衡圧の変化はほぼ5分後には恢復 する.これらの圧変動は,DC−200を用いたダイバー について記載されたものと,かなりに一致している.

 (3)mouth sealの作り方

 mouth sealの作り方についても, Holter 7)の方法 に従って行われるのが一般であり,Waterlow&

Barrow 9)は,実験温度と室温との差が大きい場合に おいても,Holterの方式に倣っているが,次の点に・

考慮している.即ち,低い室温でダイバーに諸種溶液 をつめる場合,mouth sea1の量は,ダイバーの浮き 沈みの調節ともなるものであるから,特に注意し,実 験温度で平衡を保つように各ダイバーにつき計算され た長さより,幾分長くしておかねばならない.この必 要とされるmouth sealの余剰の長さは,次式で求あ られる.これによって正確に計算される.

(7)

神経系の発生・分化の微量生化学 163

    △m・u・h・eal(mm)一A將講。γ

 VG:ダイバー恒数(」α1), To:恒温槽の温度,

 A:neck s断面積(mm2),△T:恒温槽と        実験室との温度差  一方Boe11等13)は,実験温度と室温とにかなりの 差がある場合,この温度差によるダイバー内の溶液の ガス溶解度に差が生じるため,ダイバーを恒温槽に入 れて温度平衡せしめる場合に,ダイバー内ガス量に変 化を示すことがあるとして,ダイバー内に諸溶液をつ める;場合に実験温度と同一温度環境を作る特殊装置を 考案している.

 著者はこれらの点を考慮に入れて,mouth sea1の 設置に浮游法を用いて行った.

 即ち,Holtefの浮游液を3×5cmの共栓ガラス瓶 に入れ,予め実験温度と平衡にならしめておく.これ にダイバーを入れ,air pipetteで徐々にダイバー内 のガスを除去し,mouth sealを作り,丁度ダイバー が浮き沈みなく浮游液中に静止するか,もしくは徐々 に沈む程度とする.次いでダイバーを引きあげ,ダイ バー外側を蒸溜水で洗い,その長さを水平顕微鏡で計 測し,同時に室温をチェックし,上記のWaterlow&

Barrowの式から逆に実験温度と平衡になった時の長 さを求め,mouth seal容量を求めた.

 この方法によって,かなりの室温変動のある場合に おいても,平衡圧を2〜3Cm以内にすることは甚だ容

易であり,又Boe11等の考慮をも満すζとになる.

 ただ,この方法を用いる場合に,所要のmouth seal 量より,ある程度偏位した量が実験の都度得られるこ とが考慮され,これがダイバー恒数に誤差を与えるの ではないかと懸念されるが,これに対する測定誤差を 調べたところ,ダイバー恒数を,ダイバー全容量から ダイバー内につあた諸種溶液の全容量を差引くことに よって求めても,誤差は1%以内にとどまった.

 実際の測定値二,三を示せば次の如し.

        鱒値米1実測値米来

ダイノ・ミー  No.30

     No.24      No.31

5.70 6.15 5.51

5.68  5.73  5.70 6.14 6.21 6.10 5.55 5.49 5.48

5.69 6,12 5.52

 米ダイバー恒数の求め方(2)法による.

 米米〃        (1)法に準ずる       (本文参照).

 (4) ダイバー支持台及びマイクロピ・8ット支持器  好気的実験並びに嫌気的実験に共通したダイバー支 持台を下図の如く考案した.ダイバー支持器(第4図)

はWaterlow&Barrow 9)の考案せるものと同型のも のを用いた.支持台は上下三枚の真鍮板からなり,最 下部の固定板上の二枚の板は,互いに直角方向に水平 に動く遊走板で,これらは,更にネジで垂直面動ずる 構造になっている.これによって,ダイバー支持器に 保持されたダイバーを任意の方向に動かすことができ 第6図 ダイバー支持台並びにマイクロ・ピペット立て

0

A

A:ダイバー支持台  B:マイクロ・ピペット立て

(8)

る.ダイバー支持器は支持台に固定されていない.

 ピペット支持台の構造は第6図で示した如く,支持 棒を中心にして,すべてのピペットがほぼ同一円周上 を回転するようになっている.これによって,割合狭 い場所でダイバーのCenteringを行うことができる.

 大体以上の点について検討改良し,実験をかなり正 確に且つ迅速に行うことができた.

 ここで総括的に著者の行ったダイバー操作法の概要 を述べよう.

 i)用いたダイバーは実験目的に従い,感度を高め る必要上,すべてCylindrical diver(円筒型ダイバ ー)を用いた,そのneckの口径は0.95〜1・04mm,

長さほぼ12mm,全容積ほぼ10、μ1,ダイバー恒数は 5μ1程度である.使用せるダイバーはすべて前記の 如くシリコーン加工を施す.

 ii)好気条件でのダイバー充填は, Holterの記載す る如く行った.

 iii)嫌i気条件でのダイバー充填は, Waterlow&

Barrow 9》に準拠して実施した.

 iv)mouth sealは前記方法で設置し,長さを計測 し,室温をチェックする.

 v)恒温槽は30。Cに保ち,精度;を高めるために被 覆箱を置く.

 vi)浮游管は, Waterlow&Barrow 9)の記載せる 型のものを,好気・嫌気両条件下の実験に共用した

(第1図(B)L参照).

 vii)嫌気条件の実験には,予め浮游液をダイバー に充填するのと同じガスで飽和せしめる.又,ダイバ ーのmouth sea1内には,よく適合したガラス栓を常 用した(第1(B)図及び第3(b)図参照).

 その3 結 語

 1,本邦において,今日まで余り記載されていない カーテシアン・ダイバー法について,その概要を述べた.

 2.室温と実験温度との温度差の甚だしい条件下に おいて,カーテシアン・ダイバー法の感度を維持する ための,器具の改良を考案し,又,操作法についても 二,三の検討を試みた.

第2編 神経板並びに神経冠の発生生化学  神経の分化の基礎は,形態学的には神経胚における

神経板と神経冠として現われ,その後,神経板に由来 する細胞は,神経管を形成して脳・脊髄・運動性神経 となり,アセチールコリン代謝系をその生化学的特性 とするに至る.一方神経冠に由来する組織は,脊髄神 経節・交感神経節・副腎髄・知覚神経系となり,ノル アドレナリン代謝系をその特性とするに至る.かかる 桔抗的両神経系が,同一外胚葉を起源とし,その後の 誘導一反二二の相違に基いて分化し来る過程は,従来 多くの発生学者によって形態学的に実証されて来たと

ころのものである.

 かかる特定胚域内における形態二化に先行して,そ の機能を誘発し,或いは形態分化と平行して,細胞の 特性を発揮する生化学的分化を追究するために,第1 編に述べたカーテシアンダイバー法を用いて次の実験 を行った.

 1.神経胚における神経板並びに神経冠の微量生化

 まえがき

 初期発生過程において,嚢胚期に起る胚体の陥入運 動を経て,神経胚中期に至ると外胚葉四域は,神経

板,神経冠並びに表皮系の三四域の形態分化と,それ に伴う基質・酵素系の分化が現われ始めてくる.

 胚の背部中央に存する神経板と,その周囲に隆起し て縁堤を形成する神経冠は,この時期に至るとそれぞ れ自律分化能力を獲得し始める.即ち神経板は,将来 中枢神経系を体系づけ,運動性神経,副交感神経系の 機能的分化をとげていく.一方神経冠は,Ganglion Cfestとも呼ばれるもので,脊髄神経節を形成するが,

この他にも知覚性神経,交感神経等の神経機能を有す る組織,並びに副腎髄,色素細胞その他外胚葉性間充 織に分化してゆく.この神経板と神経冠との両神経系 の分化機作並びに形態学的分化に先向する生化学的分 化の有無について本実験を進めた.

 その1 実験材料並びに方法

 1.材料:愛知県産いもり(Triturus pyrrhogaster)

を人工池にて飼育し,産卵期に(水温18。C)日々産 卵した卵を採集して,実験室内で発生を進めさせ,実 験に供した,

 実験にあたっては,神経胚中期(岡田・市川第18 期)16)の胚を10個集め,卵殻膜を除去し,滅菌:Holt・

freter溶液で2回洗芋し,法に従って受精膜を除き,

(9)

神経系の発生。分化の微量生化学 165

ガラス針を用いて第7図め如く神経冠外縁に沿って,

他の胚:域から分離し,裏面に付着する中胚葉並びに脊 索を完全に除去し,手早く更に神経冠内縁に沿って神 経板と神経冠に分離した.

 10個の胚から分離した,神経板並びに神経冠からそ れぞれの測定材料を調製した.

一…(一1)呼吸丞び嫌気的解糖作用測定に使用する材料 は神経板並びに神経冠組織片の一・部をダイバーに適合 する大きさに切って用いた.

 (2) コリエステラーゼ並びにコハク平々化酵素液 の調製:

 分離した材料は,予めHoltfreter液(NaH:CO3を 除く)を充したミクロガラスホモゲナイザー(第8図 参照〉底部に静かにピペットで入れる.

   :第7図 神経板と神経冠との分離模式図        重    子!1

 。一。・q鴨『 2 ボノ     ロ 

!!   \.

1曜     1

、\   ノ.

Y、   !

.i ll

匙毒・

\l l.9

1:神経冠外縁における切断線 2:神経板と神経冠との切断線

3:尾音β切断糸泉

4:脊索,中胚葉との切断線 第8図 ミクロ・ガラスホモゲナイザー

               o

 更にピペットでHoltfreter液約1m1をホモゲナイ ザー底部にゆっくりと吹き込み,組織片の附加物を可 及的に除去する.次いで適当な濃度の酵素液を調製す るために過剰の溶液をピペットで吸いとる.ホモヂェ ナイズするには,氷水中に特殊なミクロ・ホモゲナイ ザー立てに立て,手でよ.く磨砕する.

 次いで底部にパッキングを有する円錐型ガラス遠心 沈澱彫上に,ホモゲナイザーを支持する適当な孔径の ゴム管片を置き,これにミクロ・ホモゲナイザーを固 定して遠心管上部をパラフィルムにて被い,冷凍室内

4

(40C)で4,000LP.m,20分間遠心し,その上清を 酵素液とする.勿論この酵素液の一部は蛋白N測定に

あてる.

 (3) ドーパ脱炭酸酵素液の調製=

 上記コリン・エステラーゼの項においてのHolt・

freter液使用を, N/15燐酸緩衝液に代えた以外は,

すべて同じである.

 2,方 法

 (1)呼吸の測定について

 呼吸の測定自体については,ダイバー法に関して特 記することはないが,材料が組織片である場合にその ダイバーへの充填法が問題である,この充填のため に,(1)Holterは Braking Pipette なる特殊ピペッ

トを:考案しているが,neckの狭いダイバーのneck sealに組織片を入れることは,ピペット操作ではか なりに技術的困難が伴う.

 著者は次の方法を用いて組織片をdivefのneck seal内に導入した.

 i)neck sea1を設置せんとする高さからダイバーの 尖端口まで,組織片用のHoltfreter溶液(メジュー ムと略す)を満し,その量をチェックしておく.ζの 場合,ダイバー尖端ロとメジュームのメニスカスを拡 大鏡を用いて一致せしめておく必要がある.シリコー ン加工を施したダイバーでは,そのメニスカスはガラ ス壁に垂直となるから容易にできる.

 ii)ダイバーを予めメジュームを満したペトリー・

シャーレ中に二二し,組織片を含んだピペット(小型 駒込型ピペット:尖端ロ外径がダイバー内径よりや や小さいもの)尖端をダイバー口に僅かに入れ,徐々 に組織片をダイバー中に移行せしめる.この操作はメ ジューム中で行うと,容易である.

 iii)ダイバーをシャーレより取り出し,直立せしめ ると,ダイバー上部にあった組織片がゆっくり底部に 持って降下する.下部メニスカス上に組織片が横たわ ったら,ダイバーをダイバー支持器にかけ,所要の 皿eck sea1の容量:まで余剰のメジュームをピペットで 除去する.

 iv)組織片を含んだneck sealを設置して後,そ の上部に0.1NNaOHのneck sealを作り, oil seal, mouth sealを常法の如く設置する.

 (2)嫌気的解糖作用の測定について:

 嫌気的条件をつくるために,先ずダイバー内の空気 を窒素ガスで置換せしめる(第1編参照).次いで同 一装置内で,呼吸測定の時と同様にneck sealを作

(10)

る高さにメジュームを置き,ある程度メジュームを入 れたら(約2!ノ1)ピペットをダイバー内より抜き去 り,・ダイバー尖端を水中より上部に出して後,更にメ ジュームをダイバー内に入れ,尖端ロと上部メニスカ スとを一致せしめる.組織導入は呼吸の測定時と全く 同様にし,余剰のメジュームを除いて,neck sea1を 作る.次にneck sea1より上部のダイ.バー内空気を 再び排除し,oil sea1,1nouth sea1を嫌気的に設置す

る.mouth seal内にはglass stopperを入れる.

 (1),(2)の測定終了後は,各ダイバー内の組織片 を蛋白N測定用に,破壊することなく取出さねばなら

ない.

 ダイバー外側を蒸溜水でよく下洗し,mouth seal,

oil seal, alkaline sea1(呼吸の測定時)を常法に従っ て除去し,ピペットでメジュームを注意深くneck sea1に附加し,尖端までメジュームを充満せしめる.

この時,ピペット尖端部で組織片を破壊しないように 細心の注意を必要とする.

 次いでダイバーをメジュームを満したシャーレ中に 倒置せしめる.これによって組織片は下降し,シャー レ中に移行する.これを注意してピペットで吸い取 り,蒸溜水を充したシャーレ中に移して直島し,次に 小量の蒸溜水と共に,窒素測定用燃焼管の底部に置

く.

 (3) コリンエステラーゼ活性測定法:

 Lindenstrφm−Lang&Glik 2)の方法に基いて行っ

た.

 基質溶液組成は次の如くである.

    0.66 g/dl NaCl   20m1     1.51 g/dl:KCI   O.4m1     0.61 g/dl CaC12   0.4mI     1.30 g/dl NaHCO3 4.Oml

 Ringer−bicarbonate溶液に(95%N2十5%CO2)混 合ガスを充分に飽和せしめ,P:H 7.4にもたらした溶 液を用いて0.25%Acetylcholine溶液を作る,

 ダイバー操作法:先ずダイバーを混合ガス(95%

:N2十5%CO2)で充分満し(約2分間, air pipetteに より,ダイバー内空気と置換せしめる),上言己Acety1・

choline−Ringef−bicarbonate溶液0.75μ1をneck sea1とし,前記酵素液0.3、μ1を上記基質溶液に混 じ,これに混合ガスを吹き込んで(約30秒),二溶液 の混合を助成する.予め混合ガスで飽和しておいた paraffin oi1でsealし(0.75,μ1)mouth sea1(予め 混合ガスを飽和)を設置して,これにglasss topper を入れて,浮游管(浮游液は混合ガス飽和)に入れ,

温度平衡10分後にマノメーターの読みを開始する.上 記ダイバー充填操作に約10分を要した.

 酵素液を加えないControl diverを作り,このブラ ンクを補正して活性値を求めた.

 コリンエステラーゼ活性はQco2で表わす.即ち1 時間に蛋白窒素1、μ9当り遊離した.CO2のmμ1 値をもつて示す.

 (4) コハク酸・々化酵素活性測定法

 (4)Schneider&Potter 17)法に基いて行った.

 基質溶液は次の如くである.

 A):0.1M燐酸緩衝液pH 7.4    1.OmI     1×10−4MチトクロームC    O,4m1     4×10−3M CaC12         0.3ml     4×10−3M AIC13         0.3ml  B):0.5Mコハク酸ソーダ溶液(pH 7.4に修正)

 ダイバー充填については,気相は空気とし,先ず 0.1NNaOH O.75 μ1をBottom dropとしてダイバ ー底におき,次いで上記A)液と酵素液とを等量に予 め混合しておき,この混合液0.75μ1をneck seal とし,その上部にB)液(基質)0.13μ1をside

dropとして側壁に附し, oil sea10・75, 1, mouth sealは常法に従って設置する. Control diverでは side dfopを蒸溜水とした.温度平衡に達したら初回 の読みを行い,直ちにneck sea1(酵素液)とside drop(基質)とを混ずる.

 この方法による02消長は直線的であった.その一 例を次に図示しよう.(第9図)

 いもり神経胚における神経板と神経冠とを分離し,

その二領域の酵素活性を調べた.

 酵素液は0.1M燐酸緩衝液(pH 7.4)で適宜の濃 度とし,ホモヂェネートを4,000f. P. m.10分遠心

し,その上清をとった.

 (5) ドーパ脱炭酸酵素活性の測定法:

 脱炭酸酵素活性測定のダイバーへの応用は,Sch・

wartz 8)のダイバーのシリコン加工に関する報告の中 で,その応用例としてリヂン脱炭酸酵素活性をダイバ ニで測定し,ワールブルグ検圧計と比較し,かなり一 致した値を示したと述べているに過ぎず,ドーパ脱炭 酸酵素活性測定のダイバー法への応用は未だなされて いないと思われる.

 測定方法:

 ダイバー内に設置する液の組成は次の如くである.

 0.3]N H2SO4      0.4μl side droP (1)

 酵素液(M/15燐酸緩衝液P:H6,8抽出液)

       0.75μ1neck sea1

(11)

神経系の発生・分化の微量生化学 167

cη7

0

0

第9図 神経板と神経冠とのコハク     三々化酵素活性

NP

N(:

NP(C)

N((C)

30       60 分 NC:神経冠 (c):対照

neck sea1の酵素液に混じ,窒素ガスを適当な強さで 流して混合を完全にし,又換気する(約30秒).ドー パ溶液をneck sea1上,約1mmのところに附し,

後は常法に従ってoil seal並びにmouth sea1を行 う.Mouth seal中にはよく適合したglass stoPPer を置く(第10図参照).

 ラッチの腎臓を用いて,ワールブルグ検圧計と本法 とを比較してみた.

第10図 ドーパ脱炭酸酵素測定のた   めのダイバー充填模式図

NP:神経板

 ピリドキサール燐i酸(1mg/m1)0.05」μ1 neck sea1  に混合

 0.025MLD−DOPA溶液

       0.12!ノI side droP(11二)

 oil seal      O.75μl

 mouth seal      所要量(3.5mmの長さ)

 ダイバーは円筒型ダイバーを用いた.

 ダイバーの充填法:先ずダイバーを,嫌気的にす るためのダイバー保持器にかけ,これに窒素ガスを 通じて空気と置換し(約2分目,次にH2SO4のside droPを置く.酵素液はAn丘nsen et a118)の方法に 従って,side drodの上方1mm程度のところに,そ の下のメニスカスがくるようにつくり,これを徐々に 下方にさげて約0.5mm程度にする.これは後に室温 より高い恒温槽中に入れた時に,かなり距離の開くこ とを考慮してである.次にピリドキサール燐酸溶液を

   ワールブルグ   CO2μ1/2.5ml/hr.

1.     84.5 2.     96.2 3.     95.5

ダイバー

:i

製罐

mOU十ね3eal gra需S Sナopper

一〇こlseal

DO舩液

ヒ。リドキヲ㌧ し犠酸

晒尋素液 H2∫0専

ワールブルグ法はHoltz ig)等に従って,次の如く.

フラスコ内に入れた.

主 室:

第1側室=

第2側室:

 実験温度:30。C この比較実験では,

つた.結果は次の如くである.

CO2mμ1/0.75μ1/hr.

   26.2    28.6    29.0 従ってかなり一致した値を示すことが判る.

 (6) 蛋白窒素測定法

諸種の酵素活性及び組織呼吸等の強さを比較するの に,一般に単位乾燥重量又は単位蛋白窒素を規準とし

て表わす.

M/15燐酸緩衝液(pH 6.8)2.5ml

蒸溜水      0.2ml

O.025MDL一ドーバー溶液 0.4m1 又は蒸溜水

2NH2SO4      0,3m1   気相:窒素ガス

  ピリドキサール燐酸を添加しなか

CO2μ1/2.5ml/hr.

 87.3 (103%)

 95.3 ( 99%)

 96.7 (101%)

 微量の乾燥重量を知るには,微量:の化学天秤又は Lowry 20)等によって考案された特殊な石英涙り秤が あるが何れも入手困難で.使用できなかった.蛋白窒

(12)

素微量定量法にも種4の方法があるが,本実験では,

Conway 21)の微量拡散定量法を用いた.以下その用法 を記す.

 i)蛋白質の微量キェルダール酸化法はBoell&

Shen 22》の方法に従った.即ち,10×75mm硬質ガラ ス管(柴田硝子会社製)の底部に試料を置き,26.OIμ の酸化液をマイクロ・ピペットで正確に加える.酸化 液は,次の組成を有する.

第1表 神経板と神経冠との   Respifatory Rate

:神経板(NP)

神経冠(NC)

Qo2(消費02量mμ1/60分/Nlα9)

4.36   4.57   4.92 4.05   4.90   4.26

平均値

4.61 4.40

50%H2SO4   CuSO4   K2SO4   SeO2

100mI 19 19 19

_埋≧_=1.05±0.11

NG

 電熱二上の砂浴中に約2cmの深さに試験管を立て,

試験管上端より2cm下方に,適合する有孔アスベス ト板を置いて,これを介して試験管を保持する.この 場合,有孔アスベスト板は甚だ効率のよい一定の還流 帯を作る.この酸化は,ほぼ3時間で完了する(Boe11

&Shen).

 ii)拡散法:酸化完結後,試験管を室温に放冷し,

冷却後200μ1の遊離 NH3を含まない蒸溜水を加え,

よく内容を混合して,ConwayのUnit No.1の二二 に正確に100μ1置き,内室には試料の含N濃度に応 じて,10−3N又は2x10−4N HCI標準溶液(田代指 示薬を含む)1.Om1又は0.7m1を入れ,外室に50%

KO二二1m1を注入して速かに密閉し(膠着剤は軟 パラフィンIn. P・420C:流動パラフィン=8=5),

外室内容をよく混合して後,40分間室温 19〜23。C で,静置拡散せしめる.拡散終了後,内室の標準HC1 溶液を,水酸化バリウム(その都度ファクターを検定)

で滴定し,この滴定値よりN量を求める.これら全 操作を通じて,適当な対照を置いた.なお滴定は,

Conwayの水平ビューレットを使用し,その大目盛1 目盛容量は13μ1であった.

第2表 神経板と神経冠との  Anaerobic Glycolysis

ネ申経1反 (NP)

神経冠(NC)

Qざる2(遊離CO2量m、μ1/60分/Nμ9)

2.85  3.29  2.63  2.48 2.42  3.23  2.52  2.17

平均値

2.81 2.59

聖_1.08±0.08

NC

 その2 実験成績並びに考案

 (1)Respiratory Rate並びにAnaerobic Glyco・

1isisについて

 神経板並びに神経冠における,呼吸及び解糖作用 の,分化に伴う差異が存するか否かを求めた.その結 果は次の通りであった.

 これらの結果からRespiratory Rate及びAnaero・

bic Glycolysisには顕著な差を見出すことはできな

い.

 (2) コノハク坦々イヒ酵素

 コハク平々化酵素活性は,コハク酸脱水素酵素,チ トクロームC及びチトクローム酸化酵素からなる酵素 系に基くものであることは,いうまでもない.しかし て,Shen 23)はAmblystomaの尾南平以後の胚の中 枢神経系について該酵素活性を測定し,発生に伴って 増加する全蛋白質量(蛋白窒素として測定)とコハク 酸4化酵素活性の増加は,平行関係にあることを見出

している.

 上述の如く,呼吸酵素系の合成が成長の尺度となり 得るという観点から,該酵素活性を神経板と神経冠と について比較する(第3表).

第3表 神経板並びに神経冠における   コハク酸酸化酵素活性の比較

神経板(NP)

神経冠(NC)

Qo2(消費した02 mul/蛋白     :Nug/60分)

38.21  40.46   35.56 36,80   36.54   33,87

平均値 38.08 35.74

        皿=1.07±0,04         NC

 第3表から明らかなる如く,神経板と神経冠とに顕 著な活性の差は認められず,従って,呼吸率で求めた 結果とも一致する.十両胚域における蛋白質量にも殆 んど差がないと推定される.

(13)

神経系の発生・分化の微量生化学 169

 (3) コリンエステラーゼ(以下ChEと略記)

 呼吸,解糖,呼吸酵素系については両胚域に有意な 差を認めることができなかった.かかる両胚域を生化 学的分化の観点から比較する時,先ず成体の交感・副 交感神経系において相違のある,アセチールコリンに 関する酵素としてのChE活性が問題となる.

 ChE活性については,両棲類(Amblystoma)の胚 でBoe11&Sben 24)が測定しているが,彼等は尾蕾 期以後の発生後期の胚について,カーテシアン・ダイ バー法で測定しているに過ぎない.該時期は,神経系 細胞の形態的分化が成立した後であり,しかも両神経 系の成分を分離することはもはやできない.

 従ってこの時期では,神経板と神経冠由来の細胞に ついての差異を求めることは困難である.しかしてこ の時期より早期の胚におけるChE活性の存否は,全

く知られていない.

 神経胚における両神経系の該酵素活性の相違は,第 4表の如くであった.

第4表 神経板及び神経冠のChE活性

神経板(:NP)

神経冠(NC)

Qco2(発生したCO2 mul/蛋白     :Nug/60分)

14.88   12.92   12.21 4.02   4.84   4.64

平均値

13.33 4.50

       _⊇聖L=3.00士0.20

       NC

 第4表から明らかな如く,神経胚中期において,既 にChE活性が認められ,且つ,酵素活性に分布勾配

がある.

 しかも脳神経,運動神経の予定域たる神経板域に集 中し,神経冠の約3倍の活性度を示す.

 (4) ドーパ脱炭酸酵素

 ドーパ脱炭酸酵素は,Holtz 25)によって発見され,

アドレナリン・ノルアドレナリン合成に関連性が深い と考慮されている(第2章参照).

 アセチールコリンに関するChEは,神経胚におい てその活性の四域的分布が見られたので,これに対比 される酵素として,ドーパ脱炭酸酵素を測定した.

 しかし実験φ結果,著しく低い酵素活性のために確 実な結果を得ることはできなかった.

その3 総 括

神経胚における神経板並びに神経冠の胚域は,将来

機能的に対応する神経系に分化する能力を内在した,

最も初期の予定域である.この両二二において,呼吸 系や解糖系には差は認められず,従って成長は平行し て進んでいると思われる.しかし,ChEについては,

著明な分布の差を認め得た.

 形態形成過程における,生化学的性格を特徴づける 特殊な蛋白質の合成,或いは化学反応過程の錯雑さ は,発生に伴う形態の多様化と平行的に,益々複雑化 されるが,やがては成体としての形態と機能の特徴を 支配する.化学反応のチェーンとなるものであろう.

 成体形成の根本要因の一つが蛋白質に求め、られるな らば,形態形成の生化学的変化は,蛋白質の合成,転 換過程と見なされよう.

 この意味では,特殊蛋白質たる酵素の発生分化は,

とりもなおさず,形態機構や機能の分化に直結するこ とになる.

 この観点から考えるならばChEのパターンは, i)

現在の機能に関与するか,或いは又,ii)その胚域に 特有な蛋白質が,in vivOでは機能的に不活性な形で 存在し,in vitroではその蛋白分子が特殊機能を営み 得るものであるかであろう.

 前者については,更にこれに関する詳細な生化学的 知見を得なければ予測しがたい.

 何れにしても,分域神経細胞の形態分化に先行する 胚域内の生化学的分化が,既に早期胚において存在す

ることだけは確実である.

 その4 結 語    ・

 1.カーテシアン・ダイバー法を用いて,いもり神 経胚中期(第18期=岡田・市川)の神経板並びに神経 冠の,生化学的活性を測定した.

 2.上記両胚域における呼吸並びに解糖作用には,

意義ある差違は認められなかった.

 3.品品域のコハク酸々化酵素活性にも,差は認め られなかった.

 4.ChE活性には著明な差が存在し,神経板では Qco2=13.33,神経冠ではQco2=4.50であった.即 ち,前者は後者の約3倍の活性度を示した.

 5.ドーパ脱炭酸酵素活性測定法を,カーテシアン・

ダイバー法に応用し,ワールブルグ検圧法とかなり一 致することを認めた.

 該方法を用いて,両胚域における該酵素活性を測定 したが,両者とも実験誤差範囲内の低い活性を示した に過ぎない.

参照

関連したドキュメント

(注妬)精神分裂病の特有の経過型で、病勢憎悪、病勢推進と訳されている。つまり多くの場合、分裂病の経過は病が完全に治癒せずして、病状が悪化するため、この用語が用いられている。(参考『新版精神医

そればかりか,チューリング機械の能力を超える現実的な計算の仕組は,今日に至るま

コロナ禍がもたらしている機運と生物多様性 ポスト 生物多様性枠組の策定に向けて コラム お台場の水質改善の試み. 第

タンク・容器の種類 容量 数量 化学物質名称

次亜塩素酸ナトリウムは蓋を しないと揮発されて濃度が変 化することや、周囲への曝露 問題が生じます。作成濃度も

計量法第 173 条では、定期検査の規定(計量法第 19 条)に違反した者は、 「50 万 円以下の罰金に処する」と定められています。また、法第 172

電子式の検知機を用い て、配管等から漏れるフ ロンを検知する方法。検 知機の精度によるが、他

10 特定の化学物質の含有率基準値は、JIS C 0950(電気・電子機器の特定の化学物質の含有表