岡山理科大学紀要第42号App85-93(2006)
最大クリーク問題に対するlO-opt局所探索法の解析
貞松政史・片山謙吾*・南原英生*・成久洋之*
岡山理科大学大学院工学研究科情報工学専攻
*岡山理科大学工学部情報工学科
(2006年10月2日受付、2006年11月6日受理)
1.まえがき
頂点(vertex)の集合V={1,…,、}とそれらの頂点の対を両端とする無向辺(undirectededge)の集合
ECVxVが与えられた時,G=(ⅨE)を無向グラフという.特に,全ての2頂点間に1つの辺が存在す
る無向グラフを完全グラフという.vの部分集合v'cvによる誘導部分グラフG(v')=(v',Env'×v')
が完全グラフの時,すなわち,vi,jEv',i≠jに対して(j,j)GEである時,v'をクリークと呼ぶ.最大 クリーク問題(MaximumCliqueProblem,MCP)')とは,与えられたグラフGに含まれるクリークKの
中で,次の目的(評価)関数
九。P(K)=|K’
を最大にするクリークを求める問題である.
MCPは,通信ネットワーク,符号理論,並列計算,パターン認識等の分野にあらわれる実用上重要な組 合せ最適化問題として知られており1),Np_困難2)である.従って,多項式時間で厳密解を算出するアルゴ リズムは存在しないであろうと考えられている.またずMCPの良質な近似解を得ることすらNP-完全のク ラスに準じるほど困難であることが知られており3),その他にもMCpの難しさを示す否定的な報告がなさ
れている4)5).
最近我々は,MCPに対して,可変深度探索(VariableDepthSearch,VDS)6)7)に基づくA-opt局所探索 法(A-optLocalSemch,KLS)8)を提案した.KLSは,各反復において,現在のクリーク(解)を対象に複数 個の頂点を連鎖的に追加もしくは削除する操作(それぞれをAdd移動,Drop移動と呼ぶ)により構成され,
現在の解からそれらの操作によって生成可能な解の集合を改めて近傍と捉えることで,局所探索を行うアル ゴリズムである.その特長は,比較的大きな近傍を効率よく探索する巧妙な近傍探索処理を施しているにも 関わらず,パラメータ値の設定を必要としないシンプルさである.KLSの性能を検証するために,第2回 DIMACSImplementationChallengeWbrkshop9)で利用されたベンチマークグラフに適用した結果,多く のグラフにおいて,そのワークショップで報告されていた最適解と同等以上の良質な解の算出に成功した.
更に我々は,MCPに対する高性能なメタ戦略アルゴリズムとして知られている,Marchioriによる遺伝的 局所探索法と反復局所探索法'o),タブー探索法にもとづくBattitiらのReactiveLocalSearch11)との比較 を通して,それらと同等もしくは平均的により高品質の近似解を比較的短時間で算出できることを示した.
上述のように,KLSは,他の近似解法との比較においてその性能を検証しているが,探索の動作特性な ど,内部的な解析については,未だ十分になされていない.本論文では,MCPに対するKLSの解析の一 端として,KLSにおける近傍探索処理を打切る操作の検討,および与えられたグラフ中でのKLSの探索範
囲について調査する.
2.MCPに対するh-opt局所探索法
本節では,我々が既に提案しているMCPに対するh-opt局所探索法(KLS)の概要などに関して述べ
る.なお,KLSの詳細については文献8)を参照されたい
貞松政史・片山謙吾・南原英生・成久洋之
86
h-opt-Local-Search(CO,PAPMdegc(pA))
begin repeat
OCp…=CO,D:=CCp…,P:={1,…,冗},g:=0,9,…:=O;
repeat
iflPAnP|>Othen//AddPhase
findavertexUwithmqzひE{pAnp}{degc(pAnp)(u)};
ifmultipleverticeswiththesamemaximumdegreearefbund thenselectonevertexuamongthemrandomly;
CO:=oou{u},g:=g+1,P:=P({u}
ifg>9m…thengmanG:=9,OObest8=CO;
else
//DropPhase(if{PAnP}=0)findavertexuE{OOnP}suchthattheresultinglPAnPlismaximized;
ifmultipleverticeswiththesamesizeoftheresultinglPAnPlarefbund
thenselectonevertexuamongthemrandomly;
CO:=OCW)},g:=9-1,P:=ハ{u};
ifuiscontainedinOCpreuthenD:=DW};
endif
updatePA,○M,anddegc(pA)(i),ViEPAnP;
untilD=0;
ifgm…>OthenOC:=COb…elseCO:=OCbreU;
untilgmQ⑩≦O;
returnoO;
end;
123456 78901
1123456789 11111111
図1MCPに対するルーopt局所探索法の擬似コード
21KLSの基本アルゴリズムKLSは,可変深度探索(VDS)のアイデアにもとづいている.VDSとは,与えられた解に対して比較的 小さな近傍操作を連鎖的に適用することで到達可能な解の集合を改めて大きな近傍と捉える近傍探索のア イデアである.KLSは,各反復において,現在のクリーク(解)から複数個の頂点を連鎖的に追加および削 除する操作(それぞれAdd移動,Drop移動と呼ぶ)により構成され,現在の解からそれらの操作によって 生成可能な解の集合を改めて近傍と捉えることで,局所探索を行うアルゴリズムである.
KLSの擬似コードを図1に示す.KLSは外ループ(Linel-18)と内ループ(Line3-16)の処理を有する.
以下において,外ループに関しては「反復」,内ループに関しては「繰り返し」と呼び区別する.
まず,本論文で頻出する,図1の中の重要な記号を説明する.CO(')は内ループの繰り返し【の時点にお ける解(クリーク)である.PA(【)はCO(')の全頂点に隣接する,CO(1)に追加可能な頂点の集合
PA(J)={u:uE(VIOO(1)),(u,j)EE,VEOC(')}
である.0M(J)はPA(')の定義を若干緩和した1辺不足集合と呼ぶ辺集合
○M(1)={(u,j):uEWeoc(u),(u,j)翅,(uDEE,yjEcc('),j≠i}
である.なお,○M(')はCO(U)に含まれる頂点群の中のいずれか一つの頂点iECC(')だけに辺が存在し
ない頂点の集合と捉えることもできる(なお,CO二○M)(図2参照).de9c(pA('))はPA(u)により誘導
される部分グラフG(PA(J))内の各頂点UePA(`)の次数である.
次いで,KLSの各反復における基本アルゴリズム(lD-opt局所探索処理)について簡潔に説明する.まず,
与えられた初期クリーク(初期解)CO(o)を対象として,複数個の頂点を連鎖的に追加する操作(Add移動
操作)および削除する操作(Drop移動操作)により到達可能な近傍解の集合cc('),…,CO(ん),...,CO(「)
を得る.(その生成途中では,移動候補頂点集合P(Line2)を利用することで,追加または削除された頂点
最大クリーク問題に対するルーOpt局所探索法の解析 87
●
●
PA cc
●
0M
●図200,PAおよび○Mの集合の一例
は再び追加・削除されることはない).その近傍解の集合から最良解CO(ん)(1≦ん≦γ)を選び(Line8),
次反復の初期クリークCO(o):=CO(ん)とする(Linel7).KLSは常に実行可能領域を探索空間としており,
各反復の初期クリークに応じて,h-opt近傍のサイズ(上記のrに対応)が適応的に変動する.
上記のAo-opt近傍探索処理は,Add移動操作を施す「Addフェーズ」(Line5-8)とDrop移動操作を施 す「Dropフェーズ」(LinelO-13)の二つのフェーズで構成される.以下では,それぞれのフェーズにおい て核となる頂点選択方式(Line5-6およびLinelO-11)について記述する.
21.1Add移動頂点選択方式
PA(』)nPの中で次数degc(pA(1)(u))が最大の頂点uを選択する.但し,同じ最大次数の頂点が複数個存
在する場合は,それらの頂点群からランダムに-つの頂点を選択する.
2.1.2Drop移動頂点選択方式
CO(1)の中で,l+1の時点で得られるlPA(!+')|が最大となる頂点uを選択する.但し,|PA('+')|を最
大とする頂点が複数個存在する場合は,それらの頂点群からランダムに-つの頂点を選択する.
3.KLSの解析に関する検討事項
本節では,本論文の目的である,KLSの解析における2つの検討事項について記述する.まず,KLSに おける近傍探索処理の打切り操作について3.1節で記述し,次いでKLSの探索範囲について3.2節で記述
する.
3.1近傍探索処理の打切り操作
KLSの処理における内ループの終了条件はD=0である(図1Linel6).Dは外ループの各反復におけ る初期クリーク,すなわち前回の反復によって得られた最良解(Cq,…)で初期化されている(Line2).前
回の反復によって得られた最良解のクリークサイズが大きくなるほど,Dのサイズが大きくなるため,内 ループの繰り返しの回数も比例して増加する可能性が高いしかし,繰り返しの回数が増加しても,KLS では移動候補頂点集合P(Line2)を利用しているため,一度移動操作を行った頂点は,その反復内で再び移 動操作を行うことはできない.そのため,後半の繰り返しでは移動可能な頂点群が大幅に減少しており,改 善解が発見される可能性は低いと考えられ,この部分はKLSの探索において効率的でない.そこで,探索 の効率化を図るために,繰り返しをある程度の回数で打切る操作を考える.本論文では,、,CCI,reUのサ
イズを基準に以下の2パターンの打切り操作を提案する.
・打切り1:|D|が|CCI,…|のもになったとき,内ループを終了する.
●打切り2:lDlがlOCbrcUlの;になったとき,内ループを終了する.
貞松政史・片山謙吾・南原英生・成久洋之
88
3.1.1実験Iの詳細
上述2パターンの打切り操作の効果を検証するために実験を行う.打切り操作を行わない従来のKLSと 2パターンの打切り操作(打切り1と打切り2)をそれぞれ有する2タイプのKLSの計3タイプのKLSを 比較検討する.対象とするグラフは,MCPの標準的なベンチマーク問題としてよく知られるDIMACSベ ンチマークグラフ(最大頂点数4000,最大辺数5506380)から大規模もしくは厳密解の算出が困難な37グ
ラフを対象とする.
本実験では,以下のマルチスタート法を採用する.与えられるグラフGに含まれる1頂点をクリークと 見なす時,|vl(=、)個の異なる初期クリークが生成可能であることから,n個の異なる(質の悪いクリー ク)解をそれぞれ初期解とする.従ってマルチスタート法の1試行あたり,n回のKLSが実行され,n個の 局所最適解が得られる.KLSに与える初期クリークは,各頂点の次数にもとづき予めソートし,次数の高 い頂点から非増加順に与える.KLSの純粋な性能を検証するためには,マルチスタート中,既に得られた クリークの情報を後のKLSの実行の際に利用するべきではないため,KLSの各実行はそれぞれ独立させ,
得られるクリーク群から最良解を選び出力する.なお,同じクリーク重みの最良解が複数個得られる場合 は,最初に得られる最良解を出力する.3タイプのKLSをそれぞれ有するマルチスタート法を各10回試行
する.
全てのKLSはC言語によってコード化し,使用コンパイラは,最適化オプション-02を付加したgcc (Ver、4.1.1)である.全ての実験は,Hewlett-Packard社の計算機HPxw4300WbrkstationCPU:Pentium4
3.4GHz,4GBRAM,OS:FMoraCore5上で行う.
3.1.2実験Iの結果
結果を表1に示す.DIMACSbenchmarksの欄には,問題例名(Instance)を示した.打切りなしの欄に は,打切り操作を施さない従来のKLSを有するマルチスタート法の各試行によって得られた最良解値の平 均値(Avg),最良解を得るまでの平均計算時間(Time(s)),平均移動操作回数(step),平均LS回数(ls-n)
を示した.打切り1,打切り2の欄には,打切り1,打切り2をそれぞれ施したKLSを有するマルチスター
ト法の結果を打切りなしの欄と同様の形式で示した.
表1のAvgに注目すると,全体的に見て,打切り1,打切り2共に,打切りなしと同程度の解を算出でき ていることがわかる.しかし,部分的に見ると,打切り操作を施したKLSの方が悪質な解,良質な解を算 出している問題例があることがわかる.2パターンの打切り操作は,繰り返し回数をある程度の回数で打切
表1DIMACSベンチマークグラフに対する3タイプのKLSによる実験結果
DnUHAC己
benchmarkB
■、 ̄ ̄L八, ̄、ツー ̄■--- ̄ ̄■ ̄
丁」ヅリツタ訳し 丁j百uリ」 『」ヅlソ=
Ⅱ回巳tance AvpTmne【BDBzePⅡ写一m AV圧Ⅱ、iXne(S】SEepロ&=、 Ava,エ、me【s】Bzep旦已=皿
C125.9
C250.9 C500.9 C1000.9 C2000.9
、SJC500.5
、SJC1000.5 C2000.5 C4000.5
Ⅲ△、UⅢnzT 1n△mU-n4B HAHpLa81 brock2002 brock200-A brocMOOユ brock400」
broch8002 broch800A
ge巫OO-pO、9弓44 8⑥n200子0.9-55 9⑥n400-pO、9-55 80魂00_P0.9△5 80,400_p0.9.5ha四,1屯8-4 ha■minglO-4
kOユユ⑥r4 上⑨ユユ③r5 kO11⑧z6 PLat300=1
P上at300-2 PLat300-3 P上at700-1 P上aWOO-2P 上2t700-3
p△唾1500-1 P上atl500-2 p上atl500-334
44 56 66 74 13 14 16 17 126 343 1098
一可L【m】八『EUFLTLjn『E』■■■己旧凸5ミゲロミ刊JQIQ■q●6■160曰qdddd0dI0J
112222455671412523146169 0000000000000000000000000000o00000000 IllLilJjLj3lJj93750050000005000000000 7
12 nU(UnUaL民)nUnU■Lロ)(u▲■(U【U、】【Umu〔四一m】mLFLTLrLTLTLTLTLJLFdFLT&l■Iqlq88勺。1001 101Z4ZL
)28571432 96539371159)7675261245 )15113040309 )1873719 2644966117 [216696143 38733796655 )30428311
〕53331493297 2341302682368 ]0251817
〕0167612
〕56736787 コ058169 27310720162 44217305267
,18690442 00416269 20240460170 0631314051 035723726 000461 108426633 000361
020951
642127147001113
0001020061186 0641930 004354 006646
34612463 0281003 2661291663
14 792 03519222035
34
44 56 66 75 13 15 16 17 126 343 1098 11 16 24 25 zC zC 44 55 52 6[
7[
1〔
4(
1]
211
5【
〔
2【3(
1:
4」
61 11 61
94 0000000000000000000000000000000000000 11.IljljJj3jJj5j73j010000006000000000
11 3 00009001403400000cC0CtItIIIf 〃■、卓■■・a■■『〃■由二口■q■■■■『『■■■|■■可・■■■『 1001491
113346131 .07138538812448372249 119144603632 )1978432 L125638z12 l357287246 28816566507 )1118987 314238997348 183240631109
〕0233717
〕0366021
〕585502100
〕0876913 2647010166 55214713349
〕18559752 コ04144412 061987666 0601008763 024436425 000271 177459157 000261 01962511 8851328351079 001926
000751
006113113059118671
0031851 0055283 2947857390 0308894 24494132934
44 56 66 74 13 14 16 17 126 343 1098
二可Lnm】几訂■■Fしぶ■》●A『田LB凸伍巴倶L-SLf■●1Jロー■q■■■0q0qqQjd0ddql04
112222455671412523146169 0000000000000000000000000000000000000 11111、J7‐、JJjH尹、〃ぬJTJ3mJq】房□〔J【UnU0nu(U0(UnUPD(UnxUn)(UnXU0nU 1
13 0001300040380000000CCCにtfff8 グロ■■|〃■■早■■『の■■『|〃■■△■■『■■4■■凸■■『 )00141Z
)14315135 )99114029122655068364
〕6547573267
〕1448723 2703239141 )033140122
11414240514
〕18295514 ヨ62210869368 371282724154
〕0127816
〕0349017
〕655522123
〕0749911 1924442127 44310361296 024697883 006213822 09213417112 07310958gO O6glO52382
000231
088208430000261
02468314 4661060401000 001705000801
008111916 055101268 0031912 0063952 2806928390 0327564 3441125843最大クリーク問題に対するルーopt局所探索法の解析 89
ろうとする単純な操作なので,問題例によっては良質な解を発見する前に繰り返しが打切られ,悪質な解を 算出してしまうと考えられる.良質な解を算出している問題例については,KLSにおける探索の動作自体 が打切り操作を施すことによって変化していると推測される.次にtime(s)に注目すると,全体的に見て,
打切り1,打切り2共に,打切りなしの探索時間に対して改善が見られない.そこでstep,ls-nに注目する と,Stepは打切り操作を施すことによって全体的に減少しているが,問題例によっては,lS-nが打切り操作 を施すことによって増加している.このことからも,打切り操作を施すことによって探索の動作自体が変化 していることが推測され,また,それによって,打切り操作が効率的に働いていないと考えられる.以上の 結果より,KLSの効率化のためには,単純な繰り返し回数による打切り操作ではなく,より巧妙なルール
による打切り操作の設計が必要であると考えられる.
a2KLSの探索範囲
従来のKLSでは,実験Iで用いたマルチスタート法を採用しており,n回のKLSを繰り返し適用する.
このマルチスタート法によるKLSの各試行はそれぞれ独立であり,KLSによって得られたクリークの情報 を全く利用していない.そのため,純粋なKLSの探索性能が重要であり,その動作特性を調査することは 有益な検討事項であると考えられる.本節では,KLSの動作特性を調査する一端として,与えられたグラ
フ中でのKLSの探索範囲について調査する.
32.1実験Ⅱの詳細
実験Ⅱでは,3.1節で検討した打切り操作がKLSの探索に与える影響も付加的に調査するために,上述 の3タイプのKLSを対象とし,与えられたグラフ中での各KLSの探索範囲について調査する.対象グラフ は実験Iと同様に,DIMACSのベンチマークグラフから37グラフを対象とする.各タイプのKLSは,実 験Iと同様のマルチスタート法を採用し,各1回試行する.実験環境は実験Iと同様である.
探索範囲を表す指標を,対象グラフの頂点数に対する,各KLSにおける移動操作(Add移動操作,Drop
移動操作)の対象となった頂点数の割合,すなわち以下のように定義する.
移動操作の対象となった頂点数
探索範囲=
対象グラフの頂点数 ×10o[%]
322実験Ⅱの結果
結果を表2に示す.DIMACSbenchmarksの欄には,問題例名(Instance),各問題例の頂点数(Nodes),
辺密度(Density)を示した.打切りなしの欄には,打切り操作を施さない従来のKLSを有するマルチスター
ト法の試行における,KLSの各試行による探索範囲の最大値(Max),平均値(Avg)とその標準偏差(sdev),
最小値(Min)を示した.なお,単位は全て%である.打切り1,打切り2の欄には,打切り1,打切り2を それぞれ施したKLSを有するマルチスタート法の結果を打切りなしの欄と同様の形式で示した.
表2の結果を見ると,KLSの探索範囲は,全体的に,対象とするグラフの頂点数,辺密度に関連する傾 向が観測できる.辺密度が同程度のグラフでは,頂点数が多いグラフの方が探索の割合は小さい.すなわ ち,探索の対象となる頂点の数が同程度のため,グラフの頂点数に対する探索範囲の割合が低くなっている と考えられる.頂点数が同程度のグラフでは,辺密度が高いグラフの方が探索範囲の割合が大きい.つま り,探索の対象となる頂点数は,辺密度に比例して増加する傾向にあると考えられる.頂点数,辺密度共に 同程度であるにもかかわらず,探索範囲に差が見られるグラフに関しては,各頂点の次数に偏りがあるな ど,グラフの構造の違いが影響していると考えられる.また,打切りなしと打切り1,打切り2の結果を比 較すると,全体的に見て,打切りのタイミングが早い打切り操作を施すほど,探索の割合が小さくなってい ることがわかる.このことから,3.12節で述べている推測と同様に,打切り操作を施すことで探索の動作
自体が変化していると推測される.
与えられたグラフ中でのKLSの探索範囲について,さらに調査するために,打切りなしのKLSを有する
マルチスタート法をDIMACSベンチマークグラフから選出した最適解の算出が困難な4グラフ(C2000.9,
MANN-a81,keller6,p-hatl500-1)に各1回適用し,対象グラフにおける,各頂点毎の移動操作回数を調
貞松政史・片山謙吾・南原英生・成久洋之
90
表2DIMACSベンチマークグラフに対する3タイプのKLSによる探索範囲
査した.
その結果を図3に示す.横軸を対象グラフにおける各頂点の番号,縦軸を各頂点毎の移動操作回数および 次数とする.なお,このグラフは,各頂点の番号と,それに対応する移動操作回数および次数を移動操作回 数で降順にソートしてプロットしたものである.
図3の結果から,次数の高い頂点は移動操作回数が多くなっていることが観測できる.特にMANN-a81 とkeller6のグラフでは,次数が落ち込んでいる部分に対応して,移動操作回数も同様に落ち込んでおり,
KLSによって重点的に探索をする範囲が各頂点の次数に強く依存していることがわかる.従って,KLSの 探索は,各頂点の次数の影響を強く受けており,次数が多い頂点の周りを重点的に探索する傾向にあると考
えられる.
4.むすび
本論文では,MCPに対するA-opt局所探索法(KLS)を解析する一端として,KLSにおける近傍探索処理 を打切る操作の検討と探索範囲の調査を行った.KLSにおける近傍探索処理を打切る操作の検討では,内 ループの繰り返しをある程度の回数で打切る操作を2パターン提案し,打切りなしのKLSとの比較実験を 行った.その結果,単純な回数制限による打切り操作では,全体的な探索時間の効率化を実現することがで きないことを示した.KLSの探索範囲の調査では,対象グラフの頂点数に対する,KLSによる移動操作の 対象となった頂点数の割合を調べる実験を行った.その結果,KLSの探索では,全体的に見て,対象グラ フの頂点数と辺密度によって,探索範囲が増減する傾向があることを示した.また,上述の打切り操作に よって,探索範囲が小さくなる傾向を示した.さらに,対象グラフにおける,各頂点毎の移動操作回数と次 数を調査した結果,KLSが重点的に探索する範囲は,対象グラフにおける各頂点の次数が強く影響する傾 向を示した.以下では,今後の課題・検討事項について記述する.
(1)本論文で提案した打切り操作では,全体的な探索時間の効率化は実現できなかったが,今後,単純に
繰り返しの回数を制限するルールではなく,KLSの探索途中に得られる情報を利用した巧妙なルールの設
計について検討の余地がある.
(2)本論文で示したKLSにおける探索範囲の傾向を利用して,さらに良質な解を算出するために,対象
グラフに依存している探索範囲をうまく拡大するアイデアの検討も興味深い.
DIMACSbenchmarks
施一opLLocalごearcn
rjFuリ懇し 『j則リユ fI15UリZ
InBtance Nodes
DensityM且五AVE(s・dev)Mm Max Avg (s・dev)M1、 Max Avg(s・dev)Mn、
C125.9 C250.9 C500.9 C1000.9 C2000.9
、SJC500.5,
、SJC1000.5 C2000.5 C4000.5
1IAMLa27
1IADUDU里4BlIADmJ-角Rn
br、dE200-2brock200且
brock400-2 brock400-4 brock800-2brockBOOA
gon200 gBn200 gep400 gep400 gen400図鼬浬翅阿b』 》》》》》》》
と⑨1,⑨で4k曰11⑨r5》》》》》鋼叫 45555
と⑨l】□で6 P上at300-1 P上at300-2 P上at300-3 P△at700-1 P上at700-2 p上at700-3 P上atl500-1 P上atl500-2
P上at1500-3
125 250 500 1000 2000 500 1000 2000 4000 378 1035 3321 200 200 400 400 800 800 200 200 400 400 400 256 1024 171 776 3361 300 300 300 700 700 700 1500 1500
1500 00000000000000000000000ccCCC6tfにtftLI gg0ooO000gggg54454o0000324514844g4505 3399955559994677669999968678247247257 89010100006867981g0000098918384978363 75421 8881222 9837885212336521
(】》(溝〕刊△(印〕R]▲■【図]nご【己同凸〔団Ru【どん『■』■』
67455112
23
{次』j月ゲコ■デヨ』尹虫』1211 岸○の⑪⑦□●几 (⑥(c負)SLQL●L 1△4句】△缶貝)△4(■lnU』□R)〈。R)□》1-dLp4p4Q》、“7o)【U●几【l1R】n名■『Ru〔■【■命■内1つjC』因山
の⑪▲匙ウロ⑤。②】●上。上
口上⑦『っLQL
0000500051920000070055004036006115666
12343700850055505085577051850006778644 65421000o2331222006745601100023C12f11 司岳ブ向jnう【ゾ44,Jや11房。〔団□〕9△4△4(□(◎〆、ロ]q)(U(U(己⑤□、)775(己》、ロ】(□22(Un》 220500875gggo53481125334827g1546o1805 くlくくくくlくlくくくくくIIくくくくlくくくくくIくくくくlllくlく □J冗色勺上 宜凹宜凹昼)■L 【二、二つ上aLaLロユ 、する缶R)(ごRUQJaL■LnU②)幻缶巨U貧)nUp】pQp】qUnUnupQpu【ごnURU■』ロ】〔出口」FL便』■j■LFdTLFL■巴
11
jjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjj 1
9320943434226650955430832420208665482 4323774216874411885795289494844450204 o000000575330000770005556892336788636 23J7528057745550335507217190336522818 54211 665111
1919915210008974556 1630271 553441
4(明〕■『】■〕がし引庁】ぬ『し
22
一展』■四利Ⅱ■沮伍』1211 23336J9690295050800577789073036222621 4321000000000111003523400000C12CJ1tf1 0000500555850000700055511309036888003 4211 4441 33222 1111 1 1681631009gg60883303112758423321L4E7に 7402619945913631323335069925767422939 7900427955454366449736233620012624847 lくlくくくくくくくくくくくくくくくくIくくくくくlくIくくくくくくくくく 4445932103967311△44』Q》29lb(U4一口員己3。L△4(己321.417(U 0000000027860005250050049401063405630 3323364846820057670020563868063108616 1875551167863155338212414915546441192 ljjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjJjjjjjjjjjj 口J、二口▲ 4八毛4 句己へ二勺上司▲□上
1 1203742100889586622445556458127217tに:7 5321 555111 4423311 1 2 56458421011294325529967704 635 7
■【」【『し
飼己二次』|可四F迫宅』
■LⅥ二
。、△
2433389685725505120570701000060174668 3211000000000100003422200000D11011CCC 0000000078810000250050535353060412000 (。⑦臼1- △44百迅 冗二句)1(1一勺し11 1 7△4』、q)』⑥句o1n)(Up4△4△4(CQ)旬I旬1口]ロ】70(Uロ】R]Q》【、△q【巳jqn■q】[盃[U屯1℃〕ロ』F几焦』こ』 90 7 58 7 2260409260232535653122271444317610 5507953102788115267188610104630877 lくくくくlくくくくくくlくくくくくlくくくくくくくくくIくlくくくくくく 7512718955671690440059897493422109186 7331331005657089331515916821469201168 0000000528740055000055040423033441660 4223144743680522555077061826033117642 jjJjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjJjjjjjjj 311 444 22111
1 0927421003335766222333464531z7216gC47
最大クリーク問題に対するルーopt局所探索法の解析 91
4000 7000
numberofmove-- degree-
■・
●■■。~◆q一・一c■・-.--.-b---b~-■-.b・――ロー◆--F■q・■・--..,--.F、---,.-◆...□-.G.|
…--…--……--.~…~---…--→-.-~.… ̄…~----一一一一~… ̄……… ̄……8..
コ亘ヨヶの「。『ョ○くの(Qの四、のの)
654321 000000 000000 000000
[Ⅱ「 コこヨワの「。『ョ○くの(○の、「の①)3 3 2 2
15 0 5 0 5
加伽的伽0 0
0 O200400600800100012001400160018002000 1000 nodenumber
(a)C2000.9
----←---‐‐-ユーー、一一一一一一一一一Ⅱ---二▲------二----ローーーーニーーーーーーーーーーL一一ニーーー--■___
0500 10001500200025003000
nodenumber(b)MANN-a81
3000 700
numberofmove…‐
degree-
mBlLnII
00000 00000 65432
コ亘ヨヮの「。『ョ○くの(□の、「0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 5 0 5 0 5 2 2
1 1 コこヨワの「。{ョ○くの(□の、「の①)numberofmove-- degree-
81001
scdや■ --!
 ̄■■ ̄ご■■■■■
P ̄~● ̄●'■P1■■P-S◆守一ら。いの■●■■■●,■■_■ ~~●や ̄●
 ̄び■●--■■ ̄の ̄P●+
OL-------』-----=ニェーーニュー--…------
 ̄■ ̄●▲●。---■●
0 0500
100015002000250030000200400600800100012001400nodenumbernodenumber
(c)keller6 (d)p-hatl500-1 図3対象グラフにおける各頂点の移動操作回数および次数
参考文献
1)IBomze,M・Budinich,PPardalos,andM、Pelillo,``Themaximumcliqueproblem,,,inHandbookofCom- binatorialOptimization(suppLVOLA),,.-ZDu,P、M.P虹dalos(Eds.),pp,1-74,K1uwer,1999.
2)M・Garey)andD、Johnson,“Computersandlntractability:AGuidetotheTheoryofNP-Completeness,,,
Freeman,NewYork,1979.
3)U、Pbige,S、Goldwasser,L・Lovdsz,SSafra,andM・Szegedy)"Approximatingcliqueisalmostnp-complete,,,
Proc,the32ndAnnualSymposiumonFbundationsofComputerScience,SanJuan,PuertoRico,pp2-12,
1991.
4)S・Arora,C・Lund,R・Motwani,M・Sudan,andM・Szegedyi``Proofverificationandtheh麺dnessofapproxi- mationproblems,,,Proc、the33rdAnnualSymposiumonFbundationsofComputerScience,Pittsburgh,PA,
pp、14-23,1992.
5)』、HAstad,`Cliqueishardtoapproximatewithin〃'一e,,,ActaMathematica,voL182,pp、105-142,1999.
6)BKernighanandSLin,``AnefTicientheuristicprocedurefbrpartitioninggraphs,,,BellSystemTbchnical
Journal,vol、49,pp291-307,1970.
7)SLinandBKernighan,``AneflbctiveheuristicalgorithmfbrthetraN'elingsalesmanproblem,,,Operations
ResearCh,voL21,pp498-516,1973.
numberofmove‐
degree-
、ロも
 ̄ ̄
 ̄SF■ ̄、●。←・ ̄. ̄L■■● ̄Tひじ ̄● ̄--●■■■● ̄●--。■・▲・少■-▽ ̄-.p可● ̄o-~ ̄-℃ ̄りご-
F
貞松政史・片山謙吾・南原英生・成久洋之
92
8)K・Kataiyama,A・Hamamoto,andHNarihisa,``AnefIectivelocalsearchfbrthemaximumcliqueproblem,,,
InfbrmationProcessingLetters,voL95,no、5,pp、503-511,2005.
9)DJohnsonandM、Trick,`Cliques,coloring,andsatisfiabilityi,,SecondDIMACSImplementationChallenge,
DIMACSSeriesinDiscreteMathematicsandTheoreticalComputerScience,AmericanMathematicalSociety,
1996.
10)EMarchiori,``Genetic,iteratedandmultistartlocalsearchfbrthemaximumcliqueproblem,,'Applications ofEvolutionaryComputing,LNCS2279,ppll2-l21,Springer,2002.
11)RBattitiandM.Protasi,“ReactivelocalseaJrchfbrthemaximumcliqueproblem,,,Algorithmica,voL29,
no、4,pp61卜637,20OL
最大クリーク問題に対するk-opt局所探索法の解析
93
Analysesofん-optLocalSearchfbrMaximumC1iqueProblem
MasaShiSADAMATSU,KengoKATAYAMA*,HideoMINAMIHARA*
andHiroyukiNARIHISA*
GmdMeSchoolqfEn9i"eerjn9,
*mpqrtmentqfIn/brmqtjo〃qMCOmputerEn9ineerd"9,
FhcultZ/q/En9伽eerjn9,OAqMLmaUniue噸tZ/qfScjence・
Z-ZRjdqj-cho,OAqWmu初0-0005,J〃α、.