• 検索結果がありません。

修 士 学 位 論 文

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "修 士 学 位 論 文"

Copied!
118
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

別紙様式1

修 士 学 位 論 文

指差行 為 が文字情報 の

誤認識 防止 に与 え る効果 の検討

平 成24年1,月6日 提 出

首都 大 学東 京 大 学 院

人 間健 康 科 学研 究 科 博 士 前 期 課 程 人 間健 康 科 学 専攻 ヘ ル ス プ ロモ ー シ ョンサ イ エ ンス 学域 学 修 番 号:10899605

名:三 戸 部 純 子

(指 導 教 員 名:樋 貴広 准 教 授)

(2)

要 旨

本 研 究 で は,文 字 認 識 に 対 す る指 差 行 為 の 効 果 に つ い て3つ の 実 験 を 行 っ た.複 数 の 文 で 構 成 され る文 章(実 験1),単 文(実 験2),お よ び 単 語(実 験3)の レベ ル で 文 字 刺 激 を 構 成 し,指 差 し行 為 の 効 果 に つ い て 検 討 した.ま た 指 差 し行 為 に よ っ て 作 業 成 績 が 変 化 し う る背 景 要 因 と し て,指 差 しに よ る文 字 認 識 中 の 眼 球 運 動 の 変 化 が,い わ ゆ る 読 み 飛 ば し な ど の 眼 球 運 動 特 性 を抑 制 す る とい うこ と を想 定 し, 作 業 中 の 眼 球 運 動 を解 析 した(実 験1と3).

実 験1で は,文 章 を 実 験 刺 激 と して,内 容 理 解 課 題,誤 字 検 出 課 題 に対 す る指 差 行 為 の 効 果 と,作 業 中 の 眼 球 運 動 を 計 測 した.内 容 理 解 課 題 で は 指 差 行 為 に よ り,

注 視 の 延 長 や サ ッカ ー ド距 離 の短 縮 逆 行 サ ッカ ー ドの減 少 とい っ た 眼 球 運 動 の誘 導 が 見 られ た が,作 業 成 績 に は 有 意 差 を認 め な か っ た.一 方,誤 字 検 出 課 題 で は, 指 差 行 為 に よ る 眼 球 運 動 は 限 定 的 で,作 業 成 績 に も差 を認 め な か っ た.誤 字 検 出課 題 で は,指 差 行 為 に よ る 眼 球 運 動 の 誘 導 が 可 能 とな れ ば検 出 力 が 上 が る と考 え た.

実 験2で は,誤 字 検 出 課 題 に 対 し以 下 の 点 を 変 更 し実 験 を行 っ た.1つ は 実 験 刺 激 を 文 章 か ら文 へ と変 更 し,も う1つ は指 差 方 法 に つ い て ス ラ イ ド条 件 と,ポ イ ン ト 条 件 の2条 件 を 設 定 した.し か し,文 に 対 す る誤 字 検 出 で も指 差 の 有 無 ・ま た 指 差 方 法 の 違 い に よ る 差 は な か っ た.内 容 理 解 や 誤 字 検 出 の よ うな課 題 で は,文 脈 との 関 係 で 文 の整 合 性 を判 断 す る た め の 読 み 返 しが 必 要 で あ り,指 差 行 為 に よ る 眼 球 運 動 の誘 導 は 効 果 的 で な い 事 が 示 唆 され た.実 験3で は,意 味 の影 響 を 排 除 し,カ タ カ ナ の 単 語 の 医 薬 品 名 を 実 験 刺 激 と して 視 覚 探 索 課 題 を 行 っ た.そ の 結 果,類 似 す るデ ィ ス トラ ク タ の 医 薬 品 名 と,非 類 似 の デ ィ ス トラ ク タ の 医 薬 品 名 が 混 在 す る 場 合 に,指 差 行 為 が エ ラー 低 減 に効 果 的 で あ る こ とが 示 され た,ま た,眼 球 運 動 計 測 か ら,指 差 行 為 に よ り,1回 あ た りの 注 視 時 間 が 延 長 し,各 単 語 内 の 注 視 回 数 が 増 大 した.指 差 行 為 の 効 果 の 要 因 と して,単 語 内 の 注 視 の 増 加 と,注 視 時 間 の 延 長 に よ り 中 心 視 で の 処 理 が 進 み,各 単 語 の識 別 が 容 易 とな る こ と が推 察 され る.以 上3 つ の 実 験 結 果 か ら,文 字 情 報 に対 す る誤 認 識 軽 減 を 目的 と し た 指 差 行 為 は,文 字 形 態 の識 別 の よ うな,意 味 情 報 を含 ま な い 対 象 に 対 して 効 果 が あ る こ と が 示 唆 され た.

(3)

目 次

第1章 緒 言

第2章 第1節 第2節 2.1.

2.2.

第3節 3.1.

3.2.

第4節 第3章

第1節

1.1.目 1.2.方 1.3.結 L4.考 第2節

2.1.目 2.2.方 2.3.結 2.4.考 第3節

3.1.目 3.2.方 3.3.結 3.4.考 第4章

謝 辞

本研 究の理論的背景お よび方法論的背景 読みの認知的情報処理

読み と眼球運動

読み における眼球運動 の一般的特性

日本語の文章を読んでいる最 中の眼球運動特性 指差行為の有効性

指差呼称 とは

(∠440/0

読み における指差行為 本研究のね らい と仮説 実験 と考察

実験1(文 章に対す る指差行為の有無による効果の検証)

実験2(文 に対する指差行為の有無による効果の検証)

0357777260004811111112233333

実 験3(カ タ カ ナ 単 語 に 対 す る指 差 行 為 の 有 無 に よ る 効 果 の検 証).̲.41

総合考察

引用文献

付 録1実 験1:誤 字 検 出 課 題 刺 激 文 網 掛 け は 誤 字 位 置 を示 す 付 録2実 験1:内 容 理 解 課 題 刺 激 文

付 録3実 験2:誤 字 検 出 課 題 刺 激 文

付 録4.実 験3:タ ー ゲ ッ ト医 薬 品 名 に 対 す る デ ィ ス トラ ク タ の 類 似 度 指 数105 付 録5.実 験3:実 験 刺 激(タ ー ゲ ッ トー選 択 課 題 組 み 合 わ せ)111

付 録6.実 験3:質 問紙ll5

12936015114446677789

(4)

第1章 緒 言

本 研 究 で は,文 字 情 報 に対 す る指 差 行 為 が,見 逃 しや 見 間 違 い か ら く る誤 認 識 を軽 減 し,エ ラ0防 止 に 効 果 的 な 役 割 を果 た す か を検 討 した.

日常,自 分 の 書 い た 文 書 を何 度 読 み 返 して も,後 か ら読 み 返 す と文 の矛 盾 や 誤 字 脱 字 を 見 つ け る 事 が あ る.ま た,業 務 遂 行 中 の指 示 書 や マ ニ ュア ル の 見 逃 しや 見 間 違 い は,指 示 の 遂 行 が 正 確 に行 わ れ な い だ け で な く,人 身 の 生 命 を脅 か す よ うな 重 大 な 事 故 に っ な が る 恐 れ が あ る.こ の よ うな 見 逃 し ・見 間 違 い の 予 防 と して,日 常 的 に は 文 字 列 を 指 や ペ ン で な ぞ る とい っ た 行 為 が あ り,業 務 中 に は 指 差 呼 称 とい う, 対 象 に 向 か っ て 指 を さ し,意 識 を 意 図 的 に 向 け る と い う,確 認 行 為 が 推 奨 され て い

る.

経 験 的 に は,指 差 行 為 に よ り着 実 な確 認 が な され て い る 印 象 を持 つ.ま た,指 呼 称 に 関 して は い くつ か の 実 験 的 な 検 証 が な され て い る.し か しな が ら,指 差 行 為 の 効 果 を実 験 的 に 検 討 した も の の 多 くが,図 形 の よ うな 単 純 刺 激 を対 象 と して い る た め(芳 賀 ら,1996;篠 原 ら,2009),文 字 情 報 へ の 誤 認 識 防 止 に 効 果 を持 つ か は, ほ とん ど 明 らか に な っ て い な い.そ こ で 本 研 究 で は,文 書 を 見 る 際 の 指 差 行 為 の 効 果 を,内 容 理 解,誤 字 検 出,単 語 の 視 覚 的 探 索 の 観 点 か ら検 証 した.

単 語 や 文 の 読 み に 関 す る 言 語 処 理 研 究 に お い て,眼 球 運 動 計 測 は,読 み の認 知 処 理 を 探 る1つ の 指 標 と して 昔 か ら用 い られ て き た(Rayner,1998).ま た,指 差 行 為 に は 眼 球 運 動 誘 導 の 効 果(芳 賀,2007)が あ る と され て い る.こ れ ら の 先 行 研 究 の 知 見 に 基 づ き,以 下 の 作 業 仮 説 を 立 て た.具 体 的 に は,「 読 み に対 して 指 差 行 為 を行 う こ と の機 能 的 意 義 は,文 字 列 に 沿 っ た ス ム ー ズ な 眼 球 運 動 を 引 き 起 こ し, 解 像 度 の 高 い 中 心 視 へ 誘 導 す る事 に よ り,文 字 情 報 に 対 す る 認 知 的 処 理 を促 進 させ

る こ とで あ る」 とい うこ と で あ る.以 上 の仮 説 を 元 に,3つ の 実 験 を 行 っ た.

実 験1で は 文 章 に対 す る指 差 行 為 の 効 果 を,内 容 理 解 課 題 と漢 字 の誤 字 検 出 課 題 を用 い て 検 証 し た.実 験2で は 文 に 対 す る 指 差 行 為 の 効 果 に つ い て,漢 字 の誤 字 検 出 課 題 を 用 い て 検 証 した.ま た,指 差 の 方 法 に よ る効 果 の 相 違 を検 証 す る た め,指

(5)

を ス ラ イ ドさせ な が ら読 む ス ラ イ ド条 件 と,指 定 の 場 所 に ポ イ ン テ ィ ン グ しな が ら 読 む ポ イ ン ト条 件 を設 定 した.実 験3で は,単 語 に対 す る指 差 行 為 の 有 効 性 を,視 覚 探 索 課 題 を用 い て 検 証 した.な お,こ の 実 験 で は,文 の 文 脈 や 漢 字 の 持 つ 意 味 の 影 響 を排 除 す る た め,カ タ カ ナ 単 語 と して,医 薬 品 名 を 実 験 刺 激 と した.

本 研 究 で は,以 上 の3つ の 実 験 結 果 に基 づ い て,文 字 情 報 に 対 す る 指 差 行 為 は 有 効 性 が あ り,そ の 要 因 と して 眼 球 運 動 の 誘 導 に よ る認 知 処 理 の促 進 が あ る とい う仮 説 が 正 しい か 否 か を検 証 した.

(6)

第2章 本研 究の理論 的背景 お よび方法 論的背景

本 章 で は 、 第1節 に 読 み の 認 知 情 報 処 理 に つ い て,第2節 に 読 み と眼 球 運 動 に つ い て,第3節 に 指 差 し行 為 の 有 効 性 に つ い て,第4節 で は 本 実 験 の ね ら い と仮 説 に つ い て 述 べ る.

第1節 読 み の 認 知 的 情 報 処 理

読 み に お け る文 字 認 識 の 認 知 情 報 処 理 過 程 に は,視 知 覚 過 程 と言 語 処 理 過 程 に 大 別 され る(McConkieetal.,1992;中 條,1999).比 較 的 低 次 な 視 覚 的 語 彙 処 理 過 程 で は,網 膜 上 に 投 影 され た 光 刺 激 が 文 字 パ タ ー ン 列 と して 知 覚 され,そ の 形 態 的 特 徴 ・音 韻 的 特 徴 が 処 理 され る.こ の よ うに 視 覚 的 に 処 理 され た 文 字 情 報 は,そ れ に 続 く比 較 的 高 次 の 言 語 処 理 過 程 で,単 語 間 の 文 法 的 処 理 や 単 語 や 文 の 意 味 処 理 が な され,文 字 情 報 の 理 解 へ と至 る.言 葉 を構 成 す る 単 位 と して,単 語,句,文,文 が あ る(Shimomura&Yokosawa,1995).視 覚 的 語 彙 処 理 は 主 に 単 語 や 句 を 対 象 と

し,文 法 的 ・意 味 的 処 理 は 文 や 文 章 が 対 象 とな る.

読 み にお け る認 知 処 理 は,文 字 単 位 で 行 わ れ る事 は少 な く,単 語 や 句 と い っ た ま と ま り と して 知 覚 され る(Healy,1981).Hadley&Healy(1991)は,文 を読 み な が ら̀the'の 綴 りを 探 索 す る課 題 で,左 か ら右 へ 読 み 進 め る条 件(通 常 の 読 み)と, 右 か ら左 へ 読 み 進 め る(逆 行 しな が らの 読 み)条 件 で,探 索 エ ラー 率 の 比 較 を した.

そ の 結 果,左 か ら右 へ 読 み 進 め る 条 件 の 方 が,右 か ら左 へ 読 み 進 め る 条 件 よ り探 索 エ ラー 率 が 高 か っ た.右 か ら左 へ 逆 行 しな が ら読 む 条 件 は,左 か ら右 へ 読 み進 め る 通 常 の 読 み と異 な り,文 と して の 意 味 を 持 た な い た め,無 意 味 綴 りの 文 字 列 の 探 索 課 題 とな る.そ の た め 単 語 や 事 して の ま と ま りが 形 成 され に く く,各 文 字 へ の 注 意 が 向 き や す くな る と推 察 で き る.ま た,Shimomura&Yokosawa(r995)は 漢 字 誤 字 を刺 激 と し て,1回 の 呈 示 単 位 を 文 ・句 ・単 語 ・文 字 と した 場 合 の 正 検 出 率 を 測 定 した.そ の 結 果,呈 示 単 位 が 大 き くな る ほ ど検 出 率 が 高 く な る と い う結 果 で あ っ た.

1文 字 ず つ 独 立 して 呈 示 され る よ り,単 語 や 句 の よ うに言 葉 の 構 成 単 位 が 大 き くな る ほ うが 確 実 な 処 理 が され や す い 事 が 示 され た.

(7)

第2節 読 み と 眼 球 運 動

読 み の 最 中 の 眼 球 運 動 計 測 は,言 語 処 理 や 言 語 構 造 に 対 す る認 知 処 理 を オ ン ラ イ ン で 理 解 す る の に 役 立 っ て い る(Carreiras&Clifton,2004).そ の た め,読 み の 認 知 情 報 処 理 過 程 に 関 して 眼 球 運 動 計 測 を用 い て ア プ ロ ー チ し よ う と い う研 究 は 昔 か

ら盛 ん に行 わ れ て き た が.研 究 に は 大 き く分 け る と次 の2つ の 方 向 性 が あ る (Liversedge&Findlay,2000).1つ は 眼 球 運 動 の 量 的 変 数 の 測 定 に よ り,視 覚 的 語 彙 処 理 に ア プ ロー チ す る も の で あ る.具 体 的 に は 注 視 回 数 や 注 視 時 間,視 線 移 動 の 回 数 や 距 離 を従 属 変 数 と し,単 語 の 文 字 長 や,出 現 頻 度,予 測 可 能 性 と い っ た も の を 独 立 変 数 と して 検 証 を 行 う.も う1つ は 眼 球 運 動 の 質 的 な 変 数 を 測 る こ とで 単 語 と文 の 構 造 上 の 関 連 性 の 評 価(文 法 処 理)と,文 や 文 章 の 意 味 理 解 の探 索 な ど, 高 次 機 能 で あ る 文 法 的 ・意 味 的 処 理 に ア プ ロー チ す る も の で あ る.以 下 に読 み に お け る 眼 球 運 動 の 一 般 的 特 性,低 次 機 能 で あ る視 覚 的 語 彙 処 理 で の 眼 球 運 動 の 特 性, 高 次 の 文 法 的 ・意 味 的 処 理 で の 眼 球 運 動 の 特 性 につ い て 述 べ る.

2.1.読 み に お け る 眼 球 運 動 の 一 般 的 特 性

眼 球 運 動 中 の 視 覚 情 報 処 理 は,網 膜 の 解 剖 学 的 な 構 造 に よ る,知 覚 の 鋭 敏 さか ら 3つ の 領 域 に分 け られ る(Rayner,2009b).1つ は 最 も解 像 度 の 高 い 中 心 窩 領 域 で, 視 野 の 中 心 か ら視 角 に して2。 ま で の領 域 を 指 す.2つ 目は 傍 中 心 窩 領 域 で,中 心 窩 領 域 の 外 側 約5。 で あ る.3つ 目 は 周 辺 視 領 域 で,傍 中 心 窩 よ り外 側 を指 す.中 心 窩 か ら外 側 に 向 か っ て 鋭 敏 さが 劣 る た め,は っ き り と見 よ う とす る場 合 に は 眼 球 を動 か す.一 般 的 に 中 心 窩 領 域 か ら傍 中 心 窩 領 域 ま で の 範 囲 が 有 効 視 野 と され(Rayner

&Bertra,1979),読 み の 有 効 視 野 は 英 語 の場 合 は7か ら9文 字(Rayner,2009b)と され る.日 本 語 の 場 合 は,6か ら13文 字 と され る.有 効 視 野 は 読 み の 方 向 へ 向 か っ て 左 右 非 対 称 で あ り,左 か ら右 へ 読 み 進 め る英 語 の よ うな 言 語 読 者 で は,右 側 の 有 効 視 野 が 大 き く,イ ス ラ エ ル 語 の よ うに 右 か ら左 へ 読 み 進 め る言 語 読 者 は左 側 の 有 効 視 野 が 大 き い(Pollatseketal.,1981).読 み の 視 覚 情 報 処 理 は,中 心 窩 領 域 だ け で な く,傍 中 心 窩 で の 処 理 も重 要 で あ る.注 視 され,中 心 窩 領 域 で 単 語 が 処 理 され

(8)

て い る 間 に,読 み 進 め る 方 向 の 傍 中心 窩 領 域 の 単 語 につ い て も処 理 が 進 む こ と に よ っ て 単 語 の 読 み 飛 ば しの よ うな 現 象 が 生 じる(Rayner,2009a).

読 み に お け る基 本 的 な 眼 球 運 動 の 構 成 要 素 は サ ッカ ー ドと注 視 で あ る(Rayner, 2009b).サ ッカ ー ドと は,静 止 して い る対 象 に 対 して 起 こ る 急 速 な 眼 球 運 動 で あ る.

サ ッ カ ー ド中 は サ ッカ ー ド抑 制 と呼 ば れ る視 対 象 の 検 出 閾 値 の 上 昇 が 起 こ り,視 覚 情 報 処 理 が され に く くな る.注 視 は サ ッカ ー ド間 に 眼 球 運 動 が 静 止 した 時 間 を指 し, 注 視 対 象 に対 す る視 覚 情 報 処 理,な らび に意 味 処 理 が な され る(フ ィ ン ドレイ&ギ ル ク リス ト,2006).

前 述 の よ うに,サ ッカ ー ド中 は 文 字 に 対 す る 視 覚 入 力 が 制 限 され る と考 え られ る こ とか ら,あ る 注 視 点 か ら次 の 注 視 点 ま で の 移 動 距 離 す な わ ち サ ッカ ー ド距 離 を 測 定 す る こ と で,一 度 の 注 視 で 意 味 的 処 理 が な され る 区 間,あ る い は 文 脈 に応 じて 読 み 飛 ば しが 生 じ る 区 間 を推 定 す る こ と が で き る.従 っ て,文 章 を 読 ん で い る 最 中 の サ ッ カ ー ド距 離 の 測 定 は,そ の 認 知 情 報 処 理 に ア プ ロー チ す る うえ で 重 要 な 指 標 と な っ て い る.

一 般 的 な 視 対 象 に 対 す る サ ッカ ー ドの 距 離 は

,通 常,視 角 に よ っ て 表 され る.こ れ に 対 して,読 み に お け る サ ッカ ー ドの 距 離 は,よ り意 味 の あ る 単 位 と して 文 字 数 に よ っ て 表 す.英 語 の 場 合 に は1〜15文 字(Rayner,1998),日 本 語 の 場 合 は1〜

10文 宇 で,そ の ピー ク は3〜4文 字 で あ る(神 部,1986).し か し,サ ッカ ー ドの 大 き さ は様 々 な 要 因 で 変 化 す る.例 え ば,専 門書 の よ うな 難 解 な 文 書 で は,簡 単 な 文 書 よ りサ ッカ ー ド距 離 が 短 く な る な ど,文 書 の 難 易 度 が 影 響 す る(Rayner&

Pollatsek,1989).ま た,小 学 生 の よ うな 文 章 の 初 学 者 は,大 人 の 熟 練 者 と比 較 す る と,サ ッカ ー ド距 離 は 短 く な る(Spraginsetal,1976;Rayner,1980).な お 逆 行 サ ッ カ ー ドや 再 注 視 の 現 象 に 着 目す る研 究 に お い て は,通 常 の 流 れ に 沿 っ て 視 線 を 移 動 させ る サ ッカ ー ドを順 行 サ ッカ ー ド と表 現 し,逆 行 サ ッカ.̲̲̲ドと 区 別 す る 場 合 が あ る.本 論 文 に お い て も,実 験 の 従 属 変 数 に お い て は 両 者 を混 同 しな い よ うに, 順 行 サ ッカ ー ド と表 現 す る.た だ し本 章 に お い て 「サ ッカ ー ド」 と記 述 して い る場 合 は,順 行 サ ッカ ー ドの こ と を指 して い る.

(9)

読 み の 最 中 の 平 均 的 な 注 視 時 間 は,英 語 で は100msか ら500ms(Rayner,1998), 日本 語 で も100か ら500msで そ の ピ ー ク は250か ら300msで あ る(神 部,1986).

注 視 時 間 も サ ッカ ー ド距 離 と同 様,難 易 度 の 影 響 を 受 け る.具 体 的 に は,難 解 な文 書 の 方 が 簡 単 な 文 書 よ り注 視 時 間 が長 く な り(Rayner&Pollatsek,1989),初 学 者 の 方 が 熟 練 者 よ り注 視 時 間 が長 く な る(Spraginseta1,1976;Rayner,1980).ま 単 語 の 特 性 に よ っ て も特 徴 が あ る.注 視 時 間 は 高 頻 出 語 の 方 が 低 頻 出 語 よ り短 く な る傾 向 が あ る(Rayner&Fischer,1996).ま た,名 詞 や 動 詞 な ど意 味 の あ る 単 語(内 容 語)の ほ うが,接 続 詞 な どの 文 法 的 な 構 成 を す る 単 語(機 能 語)よ り注 視 時 間 は 長 い.こ れ は 単 語 の 文 字 長 と も 関 連 し,内 容 語 の 方 が,機 能 語 よ り文 字 長 が 長 い 事

が 多 く,注 視 時 間 の 差 を 生 じ る 要 因 とな る(McDonald,2006).

読 み の 最 中 に 見 られ る 特 徴 的 な 眼 球 運 動 特 性 の1つ に,逆 行 サ ッ カ ー ドと再 注 視 と い う現 象 が あ る.こ れ は い わ ゆ る 読 み 返 しの 現 象 を 指 して い る.逆 行 率 は,英 語 で は10〜15%(Rayner,1998),日 本 語 で は10%以 下 と され て い る(神 部,1986).

逆 行 は易 しい 文 書 よ り,難 解 な 文 書 で 起 こ る確 率 が 高 い.逆 行 が 起 こ る原 因 と して は,注 視 し た部 分 の 理 解 不 足 の 他 に サ ッカ ー ドの 着 地 位 置 が 不 適 切 で あ っ た 場 合 が あ る.必 要 以 上 に 大 き な サ ッ カ ー ドが 起 こ っ た 場 合 に,単 語 が 認 識 され や す い 位 置 か らず れ た 場 所 へ 眼 球 が 誘 導 され,そ の 単 語 の 処 理 が 不 十 分 な ま ま 次 の 単 語 へ の 注 視 が 起 こ る 事 に よ っ て,逆 行 や 再 注 視 が 起 こ りや す く な る と考 え られ て い る.サ カ ー ドに つ い て は,次 の よ うな 特 徴 が あ る.単 語 の 読 み 飛 ば し は 高 頻 出語 の 方 が 低 頻 出 語 よ り起 こ りや す く(White,2008),短 い 単 語 の 方 が 長 い 単 語 よ り起 こ りや す い(McDonald,2006).ま た,長 い 単 語 の 場 合 に は,逆 行 に よ る 再 注 視 が 起 こ りや す い.ま た,そ の 単 語 の 予 測 可 能 性 が 高 い 場 合 に も 読 み 飛 ば しが 起 こ りや す い

(Rayneretal.,2011)

こ の よ うに,認 知 的 負 荷 の 低 い 単 語 に 対 して は サ ッカ ー ドが 起 こ りや す く,注 視 時 間 が 短 縮 す る.一 方,親 近 性 の 低 い 単 語 や,文 字 長 が 長 い 単 語 な ど,認 知 的 負 荷 が 高 く な る と,そ の 単 語 の 処 理 に 時 間 が 掛 か る た め,注 視 時 間 が 延 長 し,サ ッカ ー

ド距 離 の 短 縮 や 逆 行 が 生 じや す くな る と考 え る.

(10)

文 法 的,意 味 的 な 処 理 は,視 覚 的 語 彙 処 理 過 程 に 対 して 高 次 の 認 知 過 程 と され る.

文 書 を理 解 す る過 程 で は,文 法 的 に 一 貫 して い る か(論 理 的 に矛 盾 が な い か),お よび 意 味 的 に矛 盾 が な い か とい う,2つ の 複 合 的 な 判 断 を 行 っ て い る.読 み の 最 中 の 眼 球 運 動 を測 定 した 研 究 は,こ の2つ の 過 程 の そ れ ぞ れ に 対 して 有 益 な 状 況 を 提 供 して い る た め,以 下 に そ れ ぞ れ ま と め る.文 書 内容 を 理 解 す る過 程 で は,文 を構 成 す る 単 語 の配 列 や 単 語 間 の 関係 を 認 識 し,そ の 構 成 が 文 法 的 に合 っ て い る か,文

中 の 単 語 が 文 脈 の 意 味 と合 致 して い る か とい っ た 解 析 が 必 要 と な る.Frayzier&

Rayner(1982)は,文 の 文 法 的 な 配 列 が あ い ま い で,ス ム ー ズ な 読 み が 妨 げ られ る 場 合 の 眼 球 運 動 を 測 定 した.そ の 結 果,文 法 的 な 構 造 が 複 雑 で 混 乱 を き た す 文 の 方 が,注 視 時 間 が 長 くな り読 み の 速 度 も遅 く な る事 を 明 ら か に し た.ま た,Sturt(2007) は,文 法 的 に あ い ま い な 文 は,そ うで な い 文 と比 較 して,そ の 構 文 を あ い ま い に し て い る 単 語 よ り前 の 単 語 へ の 逆 行 が 多 くな り,読 み 返 しが 増 え る こ と を確 認 した.

通 常,文 を 読 み 進 め る 際 に は 全 て の 単 語 を認 識 す る 必 要 は な く,文 脈 か ら予 測 して 読 み 飛 ば しな が ら,全 体 の 内 容 を 理 解 して い く.し か し文 構 造 が 複 雑 で あ っ た り, あ い ま い な 場 合 に は,読 み 飛 ば した 後 で 予 測 と反 す る 単 語 が 出 現 す る た め,注 視 時 間 が 延 長 し,読 み 返 しが 増 加 す る こ と が 示 唆 され る.

ま た,文 中 に 埋 め 込 ま れ た 単 語 の 種 類 に よ っ て,そ の 単 語 処 理 の 速 さが 異 な る こ とが 明 らか と な っ て い る.Duffy&Rayner(1990)は,文 章 中 の タ ー ゲ ッ ト語(e.g.

Bird)に 先 行 して,そ の 語 と対 応 す る単 語 を 設 定 し,そ の 対 照 語 が,タ ー ゲ ッ ト語 の カ テ ゴ リー で 典 型 的 か(sparrow)そ うで な い か(ostrich)か に よ っ て,眼 球 運 動 が 変 化 す る か を 検 証 した.典 型 的 な 場 合 の 方 が,そ うで な い 場 合 よ り,タ ー ゲ ッ ト 語 を 注 視 す る 時 間 が 短 縮 す る とい う結 果 で あ っ た.こ の 結 果 は,カ テ ゴ リー で 典 型 的 な 単 語 が 先 行 す る場 合,そ の 単 語 に よ る プ ラ イ ミン グ 効 果 が 発 生 し,タ ー ゲ ッ ト 語 の 処 理 が 速 く な る こ と を示 唆 し て い る.以 上 の よ うに,文 書 を 理 解 す る過 程 で は, 文 法 的 に 一 貫 し て い る か,意 味 的 に矛 盾 が な い か とい う,複 合 的 な 判 断 を 行 っ て い

る と言 え る.

(11)

2.2.日 本 語 の 文 章 を 読 ん で い る最 中 の 眼 球 運 動 特 性

日本 語 の 文 章 を 対 象 と し た 眼 球 運 動 の 検 証 も,ご くわ ず か で は あ る が 行 わ れ て い る.た と え ばOsaka(1992)は,漢 字 ひ らが な が 交 じ り合 っ て 文 書 を 構 成 す る とい

う 日本 語 文 書 の 特 性 が,眼 球 運 動 に 与 え る影 響 に つ い て 検 討 した.実 験 で は,漢 字 ひ らが な 混 じ り文,ひ ら が な の み の 文,英 文 の3つ の 刺 激 を 読 ん で い る 最 中 の 注 視 時 間 とサ ッ カ ー ド距 離 を比 較 した.そ の 結 果,漢 字 ひ ら が な 交 じ り,ひ らが な の み, 英 語 の 順 で 注 視 時 間 は短 くな り,サ ッ カ ー ド距 離 は ひ らが な の み,漢 字 ひ らが な 交

じ り,英 語 の 順 に短 くな っ た.ま た,Fukuda&Fukuda(2009)は,漢 字 ひ らが な 交 じ り,ひ らが な の み,カ タ カ ナ の み の 文 章 を読 ん で い る 際 の サ ッ カ ー ド距 離 か ら,1 回 の 注 視 あ た りの 平 均 知 覚 文 字 数 を算 出 した.そ の 結 果,漢 字 ひ らが な 交 じ りの 文 章 で 最 も 文 字 数 が 多 く,次 い で ひ ら が な が 多 く,カ タ カ ナ が 最 も 知 覚 文 字 数 が 少 な か っ た.こ れ らの 結 果 に つ い て 著 者 ら は,ひ らが な や ア ル フ ァベ ッ トは1文 宇 で は 意 味 を も た な い 表 音 文 字 で あ る が,漢 字 は ユ字 で 意 味 を 持 っ 表 意 文 宇 で あ る とい う 特 徴 を 要 因 と して 挙 げ て い る.漢 字 混 じ りの 方 が,1回 の 注 視 で の 有 効 視 野 は 大 き く な り,処 理 範 囲 が 拡 大 す る事 で,注 視 時 間 の 短 縮 と サ ッカ ー ド距 離 の 延 長 に つ な が っ た と して い る.

そ の ほ か の 日本 語 の 特 徴 と して,単 語 間 の ス ペ ー ス の な い こ とに よ る,英 語 との 眼 球 運 動 の違 い(Kajii,etal.,2001)や,横 書 き と縦 書 き で の 違 い(WitzeletaL,2011) に つ い て 検 討 され て い る.

第3節 指 差 行 為 の 有 効 性

産 業 場 面 に お い て は,エ ラ ー 防 止 の た め の 確 認 行 為 と して,「 指 差 呼 称 」,す わ ち,指 差 しに 合 わ せ て 指 差 し対 象 の 名 称 や 状 態 を 発 声 す る 作 業 方 法 が あ る.こ の 指 差 呼 称 が エ ラ ー 防 止 と して の 機 能 を有 す る こ とに つ い て は,わ ず か で は あ る が 実 証 的 デ ー タ が あ る(芳 賀 ら,1996;篠 原 ら,2009).こ れ に 対 して 文 書 の チ ェ ッ ク を す る場 合 に は,日 常 的 に も 指 や ペ ン で 文 字 を 追 う動 作 が しば し ば確 認 され る も の の,そ の 効 果 に つ い て の 研 究 は な され て い な い.そ こ で 本 節 で は,主 と して 指 差 呼

(12)

称 の効 果 を 検 討 した 研 究 を ま とめ る.研 究 の 中 に は,1実 験 条 件 と して"指 差 の み"

の 条 件 の 効 果 を 加 え て い る研 究 も あ る た め,そ こで 得 られ た 効 果 に 着 目 して 研 究 成 果 を 概 観 す る.残 念 な が ら文 書 を指 差 対 象 と した 研 究 は な い も の の,得 られ た 成 果

の 中 に は,文 書 を 読 む 際 の 効 果 に も応 用 で き る と期 待 され る も の も少 な く な い.

3.1.指 差 呼 称 と は

一 般 に指 差 呼 称 は,作 業 者 が 操 作 動 作 の 前 ま た は 後(あ る い は 前 後)に 操 作 す る ス イ ッチ や 確 認 す べ き 表 示 を 指 差 し,そ の 名 称 や 状 態 を 発 声 す る 作 業 方 法 を い う(芳 賀 ら,1996).指 差 呼 称 と は,鉄 道 の 運 転 士 が 慣 例 と して 行 っ て い た も の で あ る が, 中 央 労 働 災 害 防 止 協 会 が1981年 の 労 働 災 害 予 防 キ ャ ンペ ー ン の 一 環 と して 指 導 を 始 め た こ とか ら,産 業 界 で も 取 り入 れ られ る よ うに な っ た.現 在 で は航 空,原 子 力, 医 療 な ど様 々 な 業 種 で 推 奨 され る よ うに な っ て い る.芳 賀 ら(1996)の 室 内 実 験 に

よ る 検 証 で は,5色 の 信 号 機i様の 図 形 を用 い,指 差 呼 称 の 効 果 を検 証 した(図2‑3‑1).

実 験 課 題 で は,デ ィ ス プ レイ に5色 の い ず れ か の 色 が2秒 間 隔 で 次 々 と 呈 示 され た.

6.G 5.o

(4.o

領卜3。G

語2.o

ユ.◎

o.G

指差呼称 指差のみ 呼称のみ なし

̲。̲̲̲̲̲̲̲"̲̲̲̲̲̲α̲̲"̲臆̲"̲̲̲̲̲̲̲̲̲嘱̲̲曙"̲̲"̲"̲̲̲̲̲"̲̲"̲̲̲̲詳

図2‑3‑1.指 差 呼 称 実 験 で の 誤 反 応 率(芳 賀,1996)

(13)

参 加 者 は そ の 色 と対 応 す る キ ー を,出 来 る だ け早 く正 確 に 押 す こ と が 求 め られ た.

参 加 者 が 正 しい キ ー を 押 す と信 号 は 消 え る が,間 違 っ た キ ー を 押 した 場 合 に は 消 え ず に残 る.そ の 場 合 に は た だ ち に 正 しい キ ー を 押 して 信 号 を 消 す よ う教 示 され た.

実 験 条 件 は,信 号 を指 差 呼 称 して か らキ ー を押 す 「指 差 呼 称 」 条 件,信 号 の 指 差 の み を行 う 「指 差 」 条 件,信 号 の 色 名 の み を 呼 称 す る 「呼 称 」 条 件,指 差 も 呼 称 もせ ず に キ ー を 押 す 「指 差 呼 称 な し」条 件 の4条 件 で あ っ た.実 験 の 結 果,「 指 差 呼 称 」 条 件 が 最 も誤 答 率 が 低 く,次 い で 「指 差 の み 」 条 件 が 低 く,次 が 「呼 称 の み 」 条 件 で,「 指 差 呼 称 な し」 条 件 が 最 も誤 反 応 率 が 高 い とい う結 果 で あ っ た.平 均 反 応 時 間 は 「指 差 呼 称 」 条 件 が 最 も 反 応 時 間 が 長 く,次 が 「指 差 の み 」 条 件 で 長 く,次 が

呼 称 の み 」条 件 で,「 指 差 呼 称 な し」条 件 が 最 も反 応 時 間 が 長 か っ た.ま た,「 指 差 の み 」 の 場 合 で も,「 指 差 呼 称 な し」 条 件 や 呼 称 の み 」 条 件 と比 較 して 誤 反 応 率 が 低 下 した.指 差 呼 称 の う ち,「 指 差 」 と い う行 為 が,「 呼 称 の み 」 の 読 み 上 げ だ け の 場 合 よ り,エ ラ ー 防 止 に 効 果 が あ る 可 能 性 が あ る.ま た,こ の 実 験 で は,指 差 呼 称 に よ る 「つ り込 ま れ エ ラー 」 の 防 止 効 果 に つ い て も検 証 して い る.つ り こ ま れ エ ラ ー と は.あ る 刺 激 を 引 き 金 に して反 応 が 無 判 断 で 起 こ るエ ラ ー で,特 定 の 刺 激 に 特 定 の 反 応 が 条 件 づ け られ て い る 場 合 に 発 生 しや す い と され る.実 験 で は,出 発 合 図 とな る ラ ン プ を監 視 し,ラ ン プ が 点 灯 す る と信 号 を確 認 し,5種 類 の 信 号 表 示 の うち停 止 を表 す 赤 以 外 の 信 号 表 示 の 場 合 に 素 早 く反 応 キ ー を 押 す とい う課 題 を 行 っ た.本 試 行 中100試 行 ま で は停 止 以 外 の4種 類 の 信 号 が 表 示 され る が,101試 行 目 と111試 行 目 に 赤 信 号 が 表 示 され る.試 行 中 指 差 呼 称 あ り条 件 と,指 差 呼 称 な

し条 件 で 比 較 を行 っ た と こ ろ,指 差 呼 称 あ り条 件 で 指 差 呼 称 な し条 件 よ り,有 意 に エ ラ ー をす る参 加 者 が 多 か っ た.こ の よ うに ,指 差 呼称 に よって,慣 れや 焦 燥反応 に よ る エ ラ ー を抑 制 す る 可 能 性 が 示 唆 され た.

芳 賀(2007)は 指 差 行 為 と眼 球 運 動 の 関 係 に つ い て 実 験 を行 っ た(図2‑3‑2).こ こ で は,画 面 上 に7つ の 正 方 形 か ら な る枠 を 設 定 した.最 初 に 注 視 点 と して 中 央 の 枠 内 に十 字 形 を1秒 間 呈 示 し た の ち,第1刺 激 と して 左 右3枠 ず つ の い ず れ か の枠

(14)

63(回)⁝回⁝爾⁝翠

o蓬一 …一 ・

指差あり 指差なし

A)第 疎ll激への視線到達回数

1:曇

§旗 i

臨31 ャご

1甑6{

磐::翼

鼠。1̲̲̲̲̲

G5

§ α4

1住3

U.Z・

騒霜

U.1

‑一 一c

指差あり 8)第1刺激の視線停留時間

指差なし

指差あり 指差なし

c)第疎1撒到達しなかった場合の刺激までの距離

図2‑3‑2.指 差 行 為 と 眼 球 運 動 の 関 係(芳 賀,2007)

内 に 三 角 形 ま た は 四角 形 を0.75秒 呈 示 され た.続 け て,中 央 の 枠 内 に 第2刺 激 と して 三 角 形 ま た は 四 角 形 が1秒 間 呈 示 され た.参 加 者 は,第2刺 激 が 呈 示 され て い る1秒 間 の 間 に,第1刺 激 と第2刺 激 の 図形 が 同 じだ っ た か 否 か を判 断 し,同 じ場 合 に マ ウス を ク リ ッ ク し,異 な る場 合 に は反 応 しな い よ う教 示 され た.実 験 条 件 は, 指 差 あ り条 件 は 固視 点 も含 め,呈 示 され る 全 て の 図 形 に 右 手 で 指 差 を 行 い,指 差 な

し条 件 で は 課 題 遂 行 中 に 余 計 な 動 き を しな い よ う教 示 した.試 行 中,ア イ マ ー ク レ コー ダ ー を 装 着 し,眼 球 運 動 を 計 測 した.そ の 結 果,課 題 の 正 答 率 は 指 差 あ り条 件 で は97%,指 差 な し条 件 で は98%で 有 意 差 を 認 め な か っ た.一 方,眼 球 運 動 に つ い て は,指 差 行 為 に よ り,差 を認 め た.1っ は,60回 の本 試 行 中,第 一 刺 激 が 呈 示 さ れ た 枠 へ の 視 線 到 達 回 数 は,指 差 あ り条 件 で 有 意 に 増 加 し た(t(19)=2.35,pく05)

(15)

(図2‑3‑2‑A).ま た,視 線 が 到 達 した 場 合 の視 線 の停 留 時 間 も,指 差 あ り条 件 で 有 意 に延 長 した(t(19)ニ257,p<.05)(図2‑3‑2‑B).さ ら に,第1刺 激 へ 視 線 が 到 達 し な い 場 合 で も刺 激 ま で の 視 線 の 距 離 が,指 差 あ り条 件 で は 短 い とい う結 果 で あ っ た(t(19)ニ2.14,p<.05)(図2‑3‑2‑C).指 差 行 為 に よ り視 線 が 誘 導 され る こ と で,注 意 を能 動 的 に 確 認 対 象 へ 向 け る こ とに よ り,エ ラ0検 出 しや す くな る と考 え

られ る.

ま た,篠 原 ら(2009)は,指 差 呼 称 の 効 果 を 空 間 手 が か り課 題 に よ っ て 検 証 した.

空 間 手 が か り課 題 で は,中 央 の 注 視 点 を 挟 ん で,左 右 の い ず れ か に タ ー ゲ ッ トと し て ア ス タ リス ク マ ー ク(*)を 呈 示 した.タ ー ゲ ッ トが 出 現 す る 前 に,手 掛 か り と して 右 向 き の 矢 印,左 向 き の 矢 印,ま た は 矢 羽 根 の な い 線 を注 視 点 上 に 呈 示 し,タ ー ゲ ッ ト出 現 時 に キ ー 押 し反 応 を 行 う とい う課 題 で あ っ た.矢 印 は タ ー ゲ ッ ト側 に 正 し く 向 か う試 行 と,反 対 側 を 向 い て い る試 行,矢 羽 根 の な い 標 的 の 出 現 方 向 を示 さ な い 試 行 が あ っ た.手 掛 か りが 呈 示 され た 時 点 で 指 差 呼 称 をす る 条 件,指 差 の み を 行 う条 件,呼 称 の み を 行 う条 件,何 も しな い コ ン トロ ー ル 条 件 の4条 件 で 反 応 時 間 を 測 定 した.そ の 結 果,指 差 の み 条 件,指 差 呼 称 条 件 の 場 合 の反 応 時 間 が,何 しな い コ ン トロ ー ル 条 件 よ り有 意 に 短 縮 した.ま た,こ の よ うに 指 差 の み で も 指 差 呼 称 と類 似 した 結 果 が 得 られ た こ とか ら,指 差 行 為 が 視 覚 的 注 意 の 定 位 に影 響 を与 え て い る とい う こ と が示 唆 され る.

3.2.読 み に お け る 指 差 行 為

本 節 で は 作 業 中 の確 認 行 為 と して の 指 差 呼 称 の 実 験 的 検 証 を も と に,読 み の 場 合 の指 差 行 為 の 効 果 に つ い て 考 え て い く.指 差 呼 称 に 関 し て は,こ れ ま で の 実 験 的 な 検 証 で 用 い られ て い る刺 激 は,信 号 機 を模 した も の や,三 角 形 や 四角 形 の 図 形 とい っ た 比 較 的 シ ン プ ル な も の で あ っ た.こ れ は 指 差 呼 称 が も と も と鉄 道 か ら始 ま っ た こ と に よ る.し か し,現 在 で は 様 々 な 業 種 で 指 差 呼 称 が 推 奨 され て い る.そ の た め, 確 認 対 象 も信 号 や 計 器 だ け で な く,指 示 書 や マ ニ ュ ア ル な ど の 文 書 に も行 わ れ る場

合 が あ る.指 示 書 を想 定 した 指 差 呼 称 の 実 験 と して は,渡 辺 ら(2005)の 実 験 が あ

(16)

り,指 差 呼 称 条 件,指 差 条 件,指 差 な し条 件,呼 称 条 件 の 順 で エ ラー 率 が 低 い とい う結 果 で あ っ た.こ の 実 験 で 用 い た 刺 激 は,工 場 で の 確 認 場 面 を想 定 し,機 器 操 作 の 指 示 と して,「ll2A」 「121A」 「112B」 「121B」 と い う4つ の 機 器 番 号 と 「開 」

「閉 」 と い う指 示 をパ ソ コ ン上 に 呈 示 し,指 定 の キ ー を 押 す とい う課 題 で あ り,刺 激 が 限 られ て い た.文 字 情 報 の 場 合,図 形 を 刺 激 と した 場 合 と以 下 の 点 に お い て 違 い が あ る.1つ 目は 信 号 の よ うに 確 認 対 象 が 単 独 で あ る の で は な く文 中 に埋 め 込 ま れ て い る こ と,2つ 目は 単 語 の 意 味 や 文 脈 か らの 解 釈 の よ うに判 断 に複 合 的 な 要 素 が か らん で い る とい う こ とで あ る.指 差 呼 称 で これ ま で 有 効 性 が 検 証 され て き た 対 象 と は様 々 な 違 い が あ り,同 様 の 効 果 が あ る か 改 め て 検 証 す る必 要 が あ る.

芳 賀(2006)が 検 証 した よ うに(3.1.参 照),指 差 行 為 に よ っ て 視 線 が 対 象 に 誘 導 され,注 視 時 間 が延 長 す る こ とか ら,中 心 視 で 対 象 を見 や す く な り,詳 細 な視 覚 情 報 処 理 を行 う こ とが 考 え られ る.文 字 を対 象 とす る 場 合,細 か な 差 の 検 出 が 必 要 とな る た め,視 線 を 誘 導 す る こ との で き る指 差 行 為 が よ り効 果 的 とな る 可 能 性 が あ る.

誤 字 ・脱 字 検 出 の よ うな 校 正 作 業 や,指 示 書 ・マ ニ ュ ア ル 確 認 の よ う に重 要 語 句 を読 み と る よ うな 作 業 で は,文 書 内 の 文 字 の 中 か ら あ る特 定 の 文 字 や 単 語 を 検 出 す る 作 業 とな る.確 認 対 象 が1つ の 文 字 や 単 語 で あ る場 合 は,対 象 に 向 か っ て1点 指 差 す る 事 が 可 能 で あ る.し か し,文 書 に 対 して 指 差 行 為 を 行 う場 合 に は,文 字 列

に 沿 っ て 指 を 動 か す 必 要 が 生 じる.

文 を読 み 進 め る場 合 に,指 差 行 為 に よ り文 頭 か ら視 線 を誘 導す る 事 は,効 率 的 な 読 み に つ な が る 可 能 性 が あ る.誤 字 脱 字 検 出 に 関 して,Shimomura&Yokosawa

(1995)は 校 正 読 み に お け る誤 字 検 出 で,読 み の 速 度 に よ る違 い を 比 較 して い る.

そ れ に よ る と,読 み の 速 度 が 速 い 群 は 文 頭 か ら誤 字 を 逐 次 的 に検 索 して い る が,読 み の 速 度 が 遅 い 群 は 単 語 を 順 序 どお りに 追 わ ず,ラ ン ダ ム に 誤 宇 を 検 出 して い る傾 向 に あ る とい うこ と を 示 し て い る.通 常,誤 字 脱 字 を 検 索 す る場 合 に は,文 章 全 体 に ラ ン ダ ム に 視 線 を 移 動 させ て 検 出 し よ う とす る,視 覚 探 索 的 な 方 略 が と られ る こ とが 多 い.し か し,指 差 に よ り文 字 を文 頭 か ら追 うこ とで,読 み の 速 度 が 速 い 群 と

(17)

同様 に 逐 次 的 に 誤 字 を 探 索 す る こ と に な り,見 逃 が し を減 少 させ,検 出 時 間 の 短 縮 が 可 能 に な る こ とが 考 え られ る.

文 書 内 容 の 理 解 に お い て も一 定 の 効 果 が 得 られ る こ と が 考 え られ る.Duggan&

Payne(2009)は,飛 ば し読 み(Skimming)と 通 常 の 読 み の 速 度 で 読 ん だ 後 に 行 う 意 味 記 憶 テ ス トに よ り,文 章 の 理 解 度 の 比 較 を 行 っ て い る.意 味 記 憶 テ ス トは,文 章 の キ ー と な る 重 要 な 文 と,文 の 要 点 と関 連 の 低 い 重 要 で な い 文 とそ れ ぞ れ の ダ ミ ー と な る 文 を 設 定 し,そ の 文 が あ っ た か 否 か を 回 答 す る と い う課 題 で あ っ た.そ 結 果,飛 ば し読 み 群 で は,重 要 な 文 の 正 答 率 が 高 か っ た が,重 要 で な い 文 に お い て は,誤 答 す る 率 が 通 常 読 み の 場 合 よ り高 か っ た.飛 ば し読 み は,文 の 大 意 をつ か む の に 有 効 で あ る が,詳 細 な 内 容 の 理 解 に は 逐 次 的 に 文 章 を 読 む ほ うが 有 益 で あ る こ とが 示 され た.

マ ニ ュ ア ル や 指 示 書 を 読 む 場 合 に 問 題 と な る の は,見 逃 しや 見 間 違 い に よ る解 釈 の ず れ で あ る.飛 ば し読 み の 場 合,飛 び 飛 び に視 覚 入 力 され た 単 語 か ら文 脈 を判 断 し,読 み 手 が そ の 間 の 単 語 を埋 め な が ら文 を 解 釈 して い る 可 能 性 が あ る.指 差 を し た 場 合,文 頭 か ら文 字 を 追 う こ とに な る.こ の こ とか ら,よ り多 くの 単 語 へ の 注 意 が 向 きや す くな り,読 み 飛 ば しの 頻 度 が 減 少 す る 可 能 性 が 考 え られ る.

以 上 の こ と を ま とめ る と,指 差 を す る 事 に よ り,視 線 を 対 象 へ 向 け 易 く し,中 心 視 で 視 覚 情 報 処 理 が 出 来 る と考 え られ る.ま た,視 線 移 動 の 距 離 を短 縮 し,読 み 返 しで あ る 逆 行 サ ッカ ー ドを減 らす 事 に よ り,文 頭 か ら逐 次 的 に 効 率 よ く読 み 進 め る 事 が 出 来 る よ うに な る.こ の2つ の 効 果 に よ り,指 差 行 為 は 誤 宇 検 出 力 を 高 め,内 容 理 解 を 促 進 す る事 が 期 待 で き る.

第4節 本 研 究 の ね ら い と 仮 説

本 研 究 で は,文 書 に 対 す る 指 差 行 為 が,見 間 違 い や 見 逃 し,解 釈 違 い とい っ た 誤 認 識 の 予 防 に 効 果 的 で あ るか を検 証 す る 事 をね らい と した.文 書 に 対 し指 差 を す る とい うこ と で,次 の よ うな 効 果 が あ る と期 待 で き る.1つ は 視 線 を 単 語 ご とに 中 心 視 へ 向 け や す くな る こ と で,よ わ詳 細 な 処 理 が 可 能 に な り,誤 宇 脱 字 の よ うな エ ラ

(18)

一 の 検 出 が しや す くな る とい うこ とで あ る .も う1つ は指 で 眼球運 動 を誘 導 す る こ とで 冒頭 か ら逐 次 的 に読 み 進 め る こ とが で き る よ うに な る.そ の こ と で,読 み 飛 ば しに よ る 見 逃 しや,読 み 飛 ば した 部 分 の誤 認 識 に よ る解 釈 違 い を 減 少 させ,ま た 読 み 返 し を減 ら し効 率 よ く読 み 進 め る こ とが 可 能 に な る とい うこ と で あ る.こ れ らを 検 証 す る た め,実 験 を 行 っ た.

本 研 究 で は,文 書 認 識 中 の 眼 球 運 動 特牲 が,文 書 内 容 理 解,誤 字 脱 字 検 出 とい っ た 読 み の 目的 に よ っ て 異 な る とい う先 行 知 見 に 基 づ き,そ れ ぞ れ に 対 して の指 差 行 為 の 効 果 を 検 討 した.文 書 内 容 理 解 過 程 に お い て は,単 語 全 て を認 識 して い る の で は な く,文 脈 か ら予 測 し な が ら読 み 飛 ば して い る こ とが 考 え られ る.読 み 飛 ば され た 部 分 の 単 語 は,予 測 され た 単 語 に よ っ て 穴 埋 め され る こ とで,実 際 に 記 述 され て い る 単 語 と異 な る場 合 が 生 じ る.こ れ が 見 間 違 い や 解 釈 違 い とい っ た 誤 認 識 を 引 き 起 こ し,内 容 理 解 に 影 響 を 及 ぼ す こ とが 考 え られ た.従 っ て,内 容 理 解 を 目的 とす る文 書 の 黙 読 時 に 指 差 行 為 を 行 う こ とは,文 書 を 逐 次 的 に読 み 進 め る こ と を促 す こ と と な り,内 容 理 解 度 の 向 上 や 読 み 返 し行 為 の 減 少 に つ な が る こ とが 期 待 され た.

一 方,誤 字 脱 字 検 出 を 目的 とす る 文 書 の 黙 読 時 に は,一 般 に文 書 全 体 の あ ち こ ち に

視 線 を移 動 させ,で き るだ け早 く誤 字 脱 字 を 見 つ け よ う とす る,い わ ゆ る視 覚 探 索 的 方 略 が と られ る.と こ ろ が 実 際 に は 文 頭 か ら逐 次 的 に 読 み 進 め る ほ うが,文 書 全 体 に わ た る誤 字 脱 字 の 検 出 時 間 が 短 い とい う実 験 結 果 が あ る(Shimomura&

Yokosawa,1995;3‑2参 照).従 っ て,誤 字 脱 字 検 出 を 目的 とす る 文 書 黙 読 時 に お い て も,指 差 行 為 を行 うこ と は,文 書 を 文 頭 よ り逐 次 的 に 読 み 進 め る こ と を促 す と予 測 され,そ の 結 果,読 み 返 し の 行 為 を減 少 させ,誤 字 検 出 の 精 度 の 向 上 と所 要 時 間 の 短 縮 に 効 果 が あ る と期 待 され た.

以 上 の よ うな 問 題 を総 合 的 に 考 慮 し,文 字 認 識 中 の 眼 球 運 動 を 測 定 し,サ ッ カ ー ドや 逆 行 サ ッカ,̲̲̲ドの よ うな 読 み 飛 ば し ・読 み 返 しが 指 差 行 為 に よ っ て 減 少 す る か, ま た,読 み の 目的 や 指 差 を 行 う文 字 情 報 の 形 態 に よ っ て,影 響 を 与 え る か に つ い て 検 討 した.

(19)

第3章 実験 と考察

第1節 実 験1(文 章 に 対 す る 指 差 行 為 の 有 無 に よ る 効 果 の 検 証)

1.1.目

文 章 を 読 む 際 に,指 差 の 有 無 に よ り文 章 中 の 誤 字 検 出 と内 容 理 解 の 成 績 に 差 が 生 じる か を検 証 した.ま た,ア イ マ ー ク レ コー ダ ー を 用 い て 文 章 黙 読 中 の 眼 球 運 動 を 計 測 す る こ とで,注 視 と順 行 ・逆 行 サ ッカ ー ドの 頻 度 を 算 出 し,指 差 行 為 に よ る有 意 な 変 化 が 見 られ る か ど うか に つ い て 検 討 した.

1.2.方

1.2.1.実 験 参 加 者

実 験 参 加 者 は 本 学 大 学 生 ・大 学 院 生19名 で あ っ た.平 均 年 齢 は25.2歳(SDニ6.5), 女 性9名,男 性lo名 で あ っ た.参 加 者 は 右 利 き の 者 が18名,左 利 き の 者 が1名 あ っ た.ア イ マ ー ク レ コ ー ダ ー の 特 性 上,ハ ー ド コ ン タ ク ト レ ン ズ に て 視 力 を 矯 正 し て い な い 者 を 参 加 対 象 者 と し た.参 加 者 に は500円 の 図 書 カ ー ドに て 報 酬 を 支 払 っ た.

図3‑1‑1.実 験1装

(20)

1.2.1.実 験 装 置

実 験 中 装 置 に つ い て 図3‑1‑1に 示 す.机 の 上 に300に 傾 斜 させ た305mm×407mm の ク リ ップ ボ ー ド設 置 した.ク リ ップ ボ ー ドの 上 に 実 験 刺 激 と な るA4用 紙 に プ リ ン ト した 文 章 課 題 を 置 い た.自 然 な 状 態 で 文 章 を読 み 進 め る こ と が で き る よ うにす る た め,姿 勢 や 頭 位 に つ い て は 固 定 せ ず,参 加 者 が 文 章 を読 み や す い 姿 勢 で 作 業 を 行 っ た.試 行 中 の 様 子 に つ い て,参 加 者 の 正 面 に設 置 した1台 の ビデ オ カ メ ラ に て 撮 影 を行 っ た.作 業 中 の 眼 球 運 動 の 計 測 の た め,参 加 者 は ア イ マ ー ク レコ ー ダ ー EMR‑9,440レ ン ズ(nacimagetechnology社 製)を 装 着 した.眼 球 運 動 計 測 は 左 眼

の 単 眼 で 行 っ た.作 業 時 間 の 計 測 に は ス トップ ウォ ッ チ を用 い た.

1.2。3.実 験 刺 激 と 課 題

A4用 紙 に1行30文 字,21行 の 文 章 を 設 定 し た.フ ォ ン トサ イ ズ は14,文 字 は MS明 朝 体 と し た.刺 激 文 と し て,朝 日新 聞 社 論 説 委 員 室(2008)天 声 人 語2007年

1〜6月,2007年7〜12月 の エ ッ セ イ か ら 抜 粋 し,改 変 し た.練 習 用 と し て2編,本 試 行 用 と し て4編 使 用 し た.

〈誤 字 検 出 課 題 〉(巻 末 付 録1参 照)

誤 字 検 出 課 題 に お い て 誤 字 は2文 字 の 漢 字 熟 語 に 対 して 設 定 した.1試 行 の 文 章 に つ き 誤 字 を6か 所 埋 め 込 ん だ.誤 字 の種 類 は 音 韻 に よ る 効 果 を 考 慮 し,音 韻 の 一 致 す る 語 を3個,音 韻 の 一 致 しな い 語(音 韻 不 一 致 語)を3個 と した.異 音 語 に つ い て は 形 態 の 類 似 して い る 漢 字,部 首 違 い の 漢 字 を 用 い た.な お,誤 字 を漢 字 の み に 限 定 し,ひ らが な とカ タ カ ナ を加 え な か っ た の は,漢 字 が1文 字 で 意 味 を 持 ち う る 表 意 文 字 で あ る の に 対 し,ひ らが な とカ タ カ ナ は 単 独 の 文 字 で は意 味 を持 た な い 表 音 文 宇 で あ り,両 者 の 問 に 生 じ る と予 想 され る認 識 の 違 い の 影 響 を 排 除 す る た め, い ず れ か に 統 一 す る必 要 が あ っ た か らで あ っ た.

(21)

〈 内 容 理 解 課 題 〉(巻 末 付 録2参 照)

内 容 理 解 課 題 に用 い た 刺 激 に 関 して は,本 文 の ま ま 使 用 した.文 章 読 了 後 の 内 容 理 解 を 測 定 す る た め,テ ス ト問 題 を設 定 した(斎 田,2004).テ ス ト内 容 は,要

点 理 解 度 テ ス トと して,文 書 の 要 点 に 関 す る 質 問 を1題 と,詳 細 理 解 度 テ ス トと し て,文 中 に 出現 した 単 語 か ど うか を 尋 ね る質 問 を1題 設 定 し,回 答 を 得 た.要 点 理 解 度 テ ス トで は 文 書 の 中 か ら そ の 要 点 を 回 答 す る よ うな 質 問 を1間 作 成 し,自 由 記 載 に て 回 答 を得 た.採 点 につ い て は0〜3点 の 範 囲 で 得 点 づ け を行 っ た.回 答 に よ り

以 下 の ポ イ ン トで 得 点 づ け を 行 っ た.0点 は 「わ か らな い 」 ・ 「忘 れ た 」 ・無 回 答 で,1点 は ひ と言 の 簡 単 な 回 答 や,間 違 っ て は い な い が き ち ん と読 ん で い な くて も 推 測 で 答 え られ そ うな 回 答 の 場 合 と した.2点 は か な り正 確 に答 え て い る が,1〜2 か 所 間違 っ た 内 容 や 単 語,勝 手 な推 測 が 入 っ て い る 場 合 で,3点 は 大 切 な ポ イ ン ト を 的 確 に答 え た 回 答 の 場 合 と した.採 点 に っ い て は,本 実 験 に 参 加 して い な い 者2 名 に 依 頼 し,2名 の 採 点 結 果 の 平 均 を得 点 と した.詳 細 理 解 度 テ ス トで は,文 書 中

に1度 しか 存 在 し な い 単 語 を10個 抽 出 し,文 書 中 に 存 在 しな い 単 語10個 と混 ぜ, 20問 と し て 質 問 用 紙 に 呈 示 し た.参 加 者 に は ○ × に よ っ て 文 中 に 存 在 した 単 語 か 否 か を 回 答 し て も ら っ た.そ の 正 答 数 を 得 点 と した.

1.2.5.手 続 き

参 加 者 が 着 席 し た 後,実 験 課 題 に っ い て 説 明 し た.具 体 的 に は,実 験 は 文 書 読 解 中 の 眼 球 運 動 計 測 と指 差 の 有 無 に よ る違 い を 観 察 す る こ と,内 容 理 解 課 題 と,誤 字 脱 字 検 出課 題 の2つ の 作 業 を行 うこ と を説 明 した.実 験 参 加 へ の 同意 を 得 た 後,ア イ マ ー ク レ コー ダ ー を 装 着 し,機 械 と刺 激 ま で の 視 線 位 置 を 同 定 す る た め の キ ャ リ ブ レー シ ョン 作 業 を 行 っ た.キ ャ リブ レー シ ョ ン は 内 容 理 解 ・誤 字 脱 字 検 出 の 各 課 題 開 始 前 に 行 っ た.ま た,各 課 題 の 試 行 間 に 視 線 の ず れ が 生 じた 場 合 に も適 宜 行 っ た.キ ャ リブ レー シ ョ ン後,各 課 題 試 行 前 に そ れ ぞ れ の 作 業 に つ い て の 説 明 を行 っ た.

(22)

〈誤 字 検 出 課 題 〉

誤 字 検 出 課 題 に つ い て は,誤 字 を 見 つ け た 時 点 で 非 利 き 手 を挙 手 して も らい,そ の 後 は そ の ま ま 読 み 進 め る よ う教 示 した.課 題 遂 行 中 は で き る だ け 早 く読 み 進 め る よ う指 示 した.同 じ個 所 を 意 図 的 に反 復 して 読 む こ と に よ る 正 答 率 へ の 影 響 を 排 除 す る た め,読 み 返 し は しな い よ うに 指 示 し,読 了 後 は利 き 手 で 挙 手 す る よ う求 め た.

作 業 時 間 は 参 加 者 間 で 一 律 と はせ ず,本 試 行 前 に 練 習 試 行 を1度 行 い,練 習 試 行 の 作 業 時 間 を 本 試 行 で の 作 業 の 目標 時 間 と した.そ の 理 由 は,各 参 加 者 で 読 み の ペ ー ス が 異 な る こ と が 想 定 され た た め,タ イ ム プ レ ッ シ ャー の 小 さい,通 常 の 読 み に 近 い 状 態 で の 指 差 行 為 の 有 無 を検 証 す る た め で あ っ た.作 業 中 は30秒 ご と に 時 間 を参 加 者 へ 知 らせ た.試 行 数 は 指 差 あ り ・な し条 件 で1試 行 ず つ 計2試 行 行 っ た.誤 字 脱 字 検 出 数 は,ビ デ オ 撮 影 に よ り挙 手 の 回 数 を実 験 後 に 測 定 し検 出 数 を算 定 した.2 試 行 の 本 試 行 終 了 後,誤 字 と して 認 識 し て い る か の 操 作 チ ェ ッ ク を 行 っ た.具 体 的

に は,文 書 中 に 埋 め 込 ん だ 誤 字 に 関 して,漢 字 テ ス トを 実 施 した.漢 字 テ ス トは誤 字 と して 設 定 し て い る漢 字 を 含 む 文 を1文 ず つ 作 成 し,誤 字 に あ た る 部 分 の 漢 字 を ひ ら が な 表 記 し,そ れ を 漢 字 に 変 換 す る とい う事 を 課 題 と した.1試 行6個 の 誤 字 が埋 め 込 ま れ て い る た め,2試 行 分 の12問 を課 題 と した.

〈 内 容 理 解 課 題 〉

内容 理 解 課 題 は,文 書 読 了 後,内 容 に 関 す る 質 問 に 回 答 して も ら う こ と を説 明 し た.で き る だ け 早 く読 み 進 め,読 み 返 し は しな い よ うに 指 示 し,読 了 後 は 利 き 手 で 挙 手 す る よ う求 め た.誤 字 検 出課 題 と同 様,各 参 加 者 の 通 常 の 読 み に 近 い 状 態 で の 指 差 行 為 の 有 無 に よ る効 果 を 検 証 す る た め,練 習 試 行 を1度 行 い,練 習 試 行 の 作 業 時 間 を 練 習 試 行 で の 作 業 時 間 を 参 加 者 の 目標 時 間 と した.参 加 者 へ は 練 習 時 間 と同 様 の ペ ー ス を 保 っ て 読 み 進 め る よ う教 示 し,作 業 中 は30秒 ご とに 時 間 を 知 らせ た.

本 試 行 で は,1試 行 終 了 毎 に,内 容 理 解 テ ス トを 行 っ た.本 試 行 は 指 差 あ り ・な し 条 件 で 各1試 行 ず つ,計2試 行 行 っ た.

参照

関連したドキュメント

Aの語り手の立場の語りは、状況説明や大まかな進行を語るときに有効に用いられてい

Rajan and Anil Menon 1988, “Cause-Related Marketing: A Coalignment of Marketing Strategy and Corporate Philanthropy” Journal of.. 1984, “Companies Change the Ways They Make

Arjen.H.L Slangen 2006 National Culture Distance and Initial Foreign Acquisition Performance: The Moderating effect of Integration Journal of World Business Volume 41, Issue 2,

2001 年に、米国財務会計基準審議会(FASB)から、SFAS 141 および SFAS 142 が公表 され、のれんの償却が廃止されてから、まもなく

また IFRS におけるのれんは、IFRS3 の付録 A で「企業結合で取得した、個別に識別さ

Cioffi, “Pilot tone selection for channel estimation in a mobile OFDM systems,” IEEE Trans.. Sunaga, “Rayleigh fading compensation for QAM in land mobile ra- dio communications,”

問題例 問題 1 この行為は不正行為である。 問題 2 この行為を見つかったら、マスコミに告発すべき。 問題 3 この行為は不正行為である。 問題

1)研究の背景、研究目的